JPH0961396A - 陰イオン選択性電極 - Google Patents

陰イオン選択性電極

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JPH0961396A
JPH0961396A JP7217424A JP21742495A JPH0961396A JP H0961396 A JPH0961396 A JP H0961396A JP 7217424 A JP7217424 A JP 7217424A JP 21742495 A JP21742495 A JP 21742495A JP H0961396 A JPH0961396 A JP H0961396A
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JP
Japan
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anion
formula
sensitive
selective
acid
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JP7217424A
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English (en)
Inventor
Osamu Ozawa
理 小沢
Kotaro Yamashita
浩太郎 山下
Yuji Miyahara
裕二 宮原
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】有機水銀系の感応物質に基づく陰イオン選択性
電極の安定性を高める。また、長期的に電極性能が維持
される塩素イオンセンサを提供する。 【解決手段】有機水銀系の感応物質に基づく陰イオン選
択性電極において、金属に配位して錯体を形成する配位
化合物を加えて用いる。または前記陰イオン選択性電極
において、感応物質と共通の水銀残基を有する第2の水
銀化合物を加えて用い,さらに好ましくは芳香族系の可
塑剤を用いる。さらに、有機水銀系の塩素イオン感応物
質、可塑剤及び硼素化合物系の添加剤を含む高分子支持
膜型の塩素イオン感応膜と、前記感応膜を設けた内部溶
液収容容器とこの容器内に配置された内部電極を備えた
塩素イオンセンサを提供する。 【効果】金属の反応性が低下し、血液中の妨害物質によ
る影響を受けにくくなり、電極の安定性が高まる。ま
た、第2の水銀化合物が,単独,もしくは芳香族系の可
塑剤と共同して,水銀残基の補給庫として作用し,感応
物質の分解による損失を補い,安定性が高まる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は陰イオン選択性電極
に係り、特に生体中の塩素イオンを分析するに好適な,
有機金属化合物を感応物質として用いる高選択性の陰イ
オン選択性電極に関する。さらに、生体液中の塩素イオ
ンをポテンショメトリックに測定する分析に使用するに
適したイオンセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高選択性の陰イオン選択性電極と
しては,ETH9009に代表される有機金属化合物を感応物
質として用いるものが報告されている。例えば,Analyt
ica Chimica Acta, 271, 135 (1993)によれば,ETH9009
即ち[μ-[4,5-ジメチル-3,6-ビス( オクチルオキシ) -
1,2- フェニレン]]ビス( トリフルオロアセテート-O)ジ
マーキュリーやその類縁化合物であるETH9011を用いた
陰イオン選択性電極が検討されており,高い塩素イオン
選択性が報告されている。また同じ著者から,上記の有
機金属化合物やその類縁化合物を感応物質として用いる
陰イオン選択性電極に関する特許が,EP-560137として
出願されている。
【0003】なお,前者の報文においては,可塑剤とし
て主にDOS(セバシン酸ジエチルヘキシル),イオン性
添加剤として第4級アンモニウム塩の一種であるMTDA
(メチルトリドデシルアンモニウム塩,別名トリドデシ
ルメチルアンモニウム塩)を用いると良好な結果が得ら
れるとしている。可塑剤としてはその他にDBS,o-NPO
E,ETH469,BBPA,ETH2112,ETH2041,TOTM,TEHPなど
も検討しているが,これらでは満足な結果は得られない
としている。添加剤としては上記MTDAの濃度を変えた場
合の影響について記述されているが,その他の種類の化
合物については記述されていない。
【0004】また、イオンセンサは溶液中の特定のイオ
ン濃度を選択的に定量できるという特徴があり、特定イ
オンの濃度モニタ、水質分析などの広い分野において使
用されてきた。特に、医療分野では血液中や尿などの生
体液に含まれるイオン、例えば塩素イオン、カリウムイ
オンなどの定量に応用されている。これは、生体液中の
特定のイオン濃度が生体の代謝反応と密接な関係にある
ことに基づいており、該イオン濃度を測定することによ
り、高血圧症状、腎疾患、神経障症害などの種々の診断
を行なうものである。イオンセンサが測定対象とするイ
オンの活量aとイオンセンサが示す電位Eとの間には E=E0+2.303(RT/ZF)loga のような活量の対数と電位の変化とが比例する関係が成
立し、電位の測定値から目的とするイオンの活量が簡単
に計算できる。上式においてRは気体定数、Tは絶対温
度、Zはイオン価、Fはファラデー定数、E0は系の標
準電極電位である。このようにイオンセンサを用いれ
ば、電位を測定するだけで広い濃度範囲でのイオンの定
量が可能となる。
【0005】一般に、内部溶液を含むイオンセンサで
は、図1に示すように、センサ本体1に内部溶液2が満
たされ、この内部溶液2に銀/塩化銀の内部電極3が浸
され、センサ本体1の中央には生体液の流路に沿ってイ
オン感応膜4が固定されている。イオン感応膜中の塩素
イオン選択性リガンドには、従来から、第4級アンモニ
ウム塩が用いられており、選択性の向上を目的として様
々な研究がなされている(Mikrochimica Acta [Wien] 1
984 III,1-16)。なかでもテトラオクタデシルアンモニ
ウム塩を用いたセンサは選択性が優れている(特願昭6
4−23151)。第4級アンモニウム塩以外にもこれ
まで多くの研究がなされてきたが、最近、有機水銀を用
いる高選択性リガンドが開発された(Analytica Chimica
Acta, 271(1993)135-141) 。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の有機金属化
合物を用いる陰イオン選択性電極は、その性能の安定性
について詳細な検討がなされておらず,特に血液試料と
の接触により,感度が低下しやすいという課題があっ
た。そこで本発明の第1の課題は、有機金属化合物を感
応物質として用いる高選択性の陰イオン選択性電極の,
血液試料に対する安定性を改善することにある。
【0007】一方、塩素イオンセンサについてみると、
塩素イオンセンサは、一般に、支持膜用の高分子物質、
可塑剤、添加剤及びイオン感応物質(リガンド)から構
成される。特願昭64−23151に記載されているよ
うに、リガンドにテトラ型第4級アンモニウム塩を用い
ると、窒素原子の周囲にかさ高いアルキル基が4個存在
するため、かさ高い陰イオンによる攻撃を受けにくいと
考えられる。従って、この第4級アンモニウム塩をリガ
ンドとする塩素イオンセンサは親水性の炭酸水素イオ
ン、及び親油性の過塩素酸イオン等に対する選択性は高
い。しかし、生体液中の塩素イオン分析に使用する場
合、対炭酸水素イオン選択性が必ずしも十分ではない(L
ipke et al.,Clin.Chem.,39,364(1993))。上記の有機水
銀を用いる高選択性リガンド(Analytica Chimica Act
a,271(1993)135-141) は、第4級アンモニウム塩に比べ
て対親水性イオン選択性が優れている。しかし、このリ
ガンドを用いた塩素イオンセンサでは、添加剤に第4級
アンモニウム塩を用いるために添加剤自身がイオン感応
物質として作用するため、本来のリガンドにおけるイオ
ン配位サイトとしての機能が必ずしも十分に機能してい
ない。従って、電極感度や選択性などの電極性能が比較
的短時間で低下するという問題が存在する。そこで、本
発明の第2の課題は、実用的に使用する上で長期的に電
極性能が維持されるイオンセンサを提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題は、有機
金属化合物を用いる陰イオン選択性電極の感応膜におい
て,金属に配位して錯体を形成する配位化合物に代表さ
れる化合物を加えて用いることにより達成される。上記
第2の課題は、高分子物質、可塑剤、添加剤及び塩素イ
オンリガンドに有機水銀化合物を用いる塩素イオン感応
膜において、添加剤にテトラフェニルホウ素アニオン及
びその誘導体のアルカリ金属塩を導入することにより達
成される。
【0009】本発明は、有機金属化合物を感応物質とし
て含む陰イオン選択性感応膜において,次式(I)
【0010】
【化27】
【0011】〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリー
ル基またはそれらの誘導体からなる置換基あるいは水
素、Zは非共有電子対を有する原子を示す〕で表される
配位化合物を含むことを特徴とする陰イオン選択性感応
膜である。上記有機金属化合物としては、次式(II)
【0012】
【化28】
【0013】〔式中、R1 はアルキルまたはアルコキシ
ル基、R2 はアルキル基、R3 はハロゲン、チオシア
ン、過塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸、酢酸またはト
リフロロ酢酸残基を示す〕で表される有機水銀化合物、
有機金属化合物が次式(III)
【0014】
【化29】
【0015】〔式中、Rはアルキル基を示す〕で表され
る有機水銀化合物等が挙げられる。上記配位化合物とし
ては,中性の配位化合物、次式(IV)
【0016】
【化30】
【0017】〔式中、R1 、R2 、R3 はアルキル基、
アリール基またはそれらの誘導体からなる置換基あるい
は水素、Z1 、Z2 は非共有電子対を有する原子をを示
す〕で表される中性の多座配位化合物、次式(V)
【0018】
【化31】
【0019】〔式中、R1 、R2 、R3 、R4 はアルキ
ル基、アリール基またはそれらの誘導体からなる置換基
あるいは水素、Z1 、Z2 、Z3 、Z4 は非共有電子対
を有する原子をを示す〕で表される中性の環状多座配位
化合物等が挙げられる。さらに、本発明は、上記陰イオ
ン選択性感応膜に、次式(VI)
【0020】
【化32】
【0021】〔式中、nは6〜15である〕で表される
有機化合物を可塑剤として更に含有することを特徴とす
る陰イオン選択性感応膜である。さらに、本発明は、上
記陰イオン選択性感応膜に、次式(VII)
【0022】
【化33】
【0023】〔式中、nは6〜18である〕で表される
第4級アンモニウム塩化合物をイオン性添加剤として更
に含有するこ陰イオン選択性感応膜である。さらに、本
発明は、陰イオン濃度を測定する固体イオンセンサにお
いて,前記陰イオン選択性感応膜を用いることを特徴と
する陰イオン選択性固体イオンセンサである。
【0024】さらに、本発明は、有機金属化合物と,式
(I)
【0025】
【化34】
【0026】〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリー
ル基またはそれらの誘導体からなる置換基あるいは水
素、Zは非共有電子対を有する原子を示す〕で表される
配位化合物とを,感応膜原液(キャスト液)中で混合反
応させ,予め両者の錯体を形成してから感応膜を形成す
ることを特徴とする,有機金属化合物を感応物質として
感応膜中に含有する陰イオン選択性感応膜の製造方法で
ある。
【0027】さらに、本発明は、有機金属化合物と,式
(I)
【0028】
【化35】
【0029】〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリー
ル基またはそれらの誘導体からなる置換基あるいは水
素、Zは非共有電子対を有する原子を示す〕で表される
配位化合物とを反応させて得られる錯体を,感応物質と
して感応膜中に含有してなることを特徴とする,陰イオ
ン選択性感応膜である。さらに、本発明は、有機金属化
合物を感応物質として含む陰イオン選択性感応膜におい
て,次式(VIII)
【0030】
【化36】
【0031】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基を示す〕で表される水銀化合物、次式(IX)
【0032】
【化37】
【0033】〔式中、R8 、R9 、R10、R11はアルキ
ル基、アルコキシル基またはカルボキシルアルキル基、
ZはS、OまたはNを示す〕で表される水銀化合物また
は次式(X)
【0034】
【化38】
【0035】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基、R5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エス
テル基(カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示
す〕で表される水銀化合物を含むことを特徴とする陰イ
オン選択性感応膜である。前記有機金属化合物として
は、次式(II)
【0036】
【化39】
【0037】〔式中、R1 はアルキルまたはアルコキシ
ル基、R2 はアルキル基、R3 はハロゲン、チオシア
ン、過塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸、酢酸またはト
リフロロ酢酸残基を示す〕で表される有機水銀化合物、
次式(VIII)
【0038】
【化40】
【0039】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基を示す〕で表される有機水銀化合物、次式(X)
【0040】
【化41】
【0041】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基、R5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エス
テル基(カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示
す〕で表される有機水銀化合物または式(III)
【0042】
【化42】
【0043】〔式中、Rはアルキル基を示す〕で表され
る有機水銀化合物等があげられる。さらに、本発明は、
前記陰イオン選択性感応膜が、式(XI)
【0044】
【化43】
【0045】〔式中、R5 、R6 はアルキル基、アルコ
キシル基、エステル基(カルボキシルアルキル基)また
はニトロ基を示す〕で表される有機化合物または式(V
I)
【0046】
【化44】
【0047】〔式中、nは6〜15である〕で表される
有機化合物を可塑剤としてさらに含有することを特徴と
する前記陰イオン選択性感応膜である。さらに、本発明
は、式(VII)
【0048】
【化45】
【0049】〔式中、nは12〜18である〕で表され
る有機化合物を添加剤としてさらに含有することを特徴
とする陰イオン選択性感応膜である。さらに、本発明
は、式(X)
【0050】
【化46】
【0051】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基、R5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エス
テル基(カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示
す〕で表される有機水銀化合物を含むことを特徴とす
る,陰イオン選択性感応膜用の膜材料である。
【0052】さらに、本発明は、陰イオン濃度を測定す
る陰イオン選択性電極において,前記陰イオン選択性感
応膜を含むことを特徴とする陰イオン選択性電極であ
る。さらに、本発明は、マルチイオンセンサにおいて,
前記陰イオン選択性感応膜を含む陰イオンセンサを内蔵
することを特徴とするマルチイオンセンサである。さら
に、本発明は、陰イオン濃度を測定する生化学成分分析
装置において、前記陰イオン選択性電極または前記陰イ
オン選択性固体イオンセンサもしくはマルチイオンセン
サ内蔵の陰イオンセンサを備えたことを特徴とする生化
学成分分析装置である。
【0053】さらに、本発明は、陰イオン濃度の測定方
法において、前記陰イオン選択性感応膜を備えた陰イオ
ン選択性電極または前記陰イオン選択性固体イオンセン
サもしくはマルチイオンセンサ内蔵の陰イオンセンサを
用いて、陰イオン濃度を測定することを特徴とする陰イ
オン濃度の測定方法である。さらに、本発明は、式
(X)
【0054】
【化47】
【0055】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基、R5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エス
テル基(カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示
す〕で表される有機水銀化合物を感応膜中に含有する陰
イオン選択性感応膜において,式(VIII)
【0056】
【化48】
【0057】〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過
塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸
残基を示す〕で表される水銀化合物と,式(I)
【0058】
【化49】
【0059】〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリー
ル基またはそれらの誘導体からなる置換基あるいは水
素、Zは非共有電子対を有する原子を示す〕で表される
有機化合物とを,感応膜原液(キャスト液)中で混合反
応させることにより,式(X)で表される有機水銀化合
物を感応膜中に形成することを特徴とする,陰イオン選
択性感応膜の製造方法である。
【0060】さらに、本発明は、塩素イオン感応物質に
有機水銀化合物を用い、可塑剤及び添加剤を含む高分子
支持膜型の塩素イオン感応膜と、上記感応膜を設けた内
部溶液収容容器とこの容器内に配置された内部電極を備
えた塩素イオンセンサにおいて、上記添加剤が、式(XI
I)
【0061】
【化50】
【0062】〔R1 〜R5 はその一部または全部が H,
Cl, F, CF3, CCl3を示す〕で表される硼素化合物、テト
ラフェニルホウ素アニオン及びその誘導体のアルカリ金
属塩、式(XIII)
【0063】
【化51】
【0064】〔R6 〜R9 はCn 2n 1, (nは1〜1
2を示す)、XはNa,Kを示す〕で表される硼素化合
物、式(XIV)
【0065】
【化52】
【0066】〔R10〜R13はCn 2n 1, (nは1〜1
2を示す)で表されるアルキル基またはその一部または
全部が Cl, F, CF3, CCl3 で置換されたフェニル基、X
はNa,Kを示す〕で表される硼素化合物、またはこれ
らの混合物であることを特徴とする塩素イオンセンサで
ある。前記塩素イオンセンサにおいて、その感応膜中の
各成分の好ましい含有量は、塩素イオン感応物質が2〜
3重量%、可塑剤が64〜66重量%、上記添加剤が
0.02〜0.04重量%、高分子物質が31〜34重量
%である。
【0067】さらに、本発明は、前記塩素イオン感応膜
が存在することを特徴とする電界効果型トランジスタで
ある。さらに、本発明は、前記塩素イオン感応膜を、試
料流路の壁面に設けられた小孔に前記流路の内面に向か
って凸になるように一方向に湾曲した曲率をつけて、少
なくとも一部を露出させて配置したことを特徴とする塩
素イオンセンサである。
【0068】さらに、本発明は、塩素イオン感応物質に
有機水銀化合物を用い、可塑剤及び添加剤を含む高分子
支持膜型の塩素イオン感応膜と、少なくとも1種類の金
属から成る導電性層をその金属の不溶性塩の層と接触さ
せた金属/金属塩である内部固体電極とからなる固体イ
オンセンサにおいて、上記塩素イオン感応膜が、前記塩
素イオン感応膜から構成されることを特徴とする塩素イ
オンセンサである。
【0069】さらに、本発明は、塩素イオン感応物質に
有機水銀化合物を用い、可塑剤及び添加剤を含む高分子
支持膜型の塩素イオン感応膜と、少なくとも1種類の金
属から成る導電性層をその金属の不溶性塩の層と接触さ
せた金属/金属塩である内部固体電極と、イオン感応膜
と内部固体電極の間に設けた高分子中間層とからなる固
体イオンセンサにおいて、上記塩素イオン感応膜が、前
記塩素イオン感応膜から構成されることを特徴とする塩
素イオンセンサである。
【0070】さらに、本発明は、前記塩素イオン感応膜
を25〜40℃の温度下で製膜することを特徴とする塩
素イオン感応膜の製法である。以下に、本発明を詳細に
説明する。第2図は本発明が適用される陰イオン選択性
電極の構成断面図の一例である。電極筒1には10 mmol
/Lの塩化ナトリウムを含む内部液2が収納されてお
り、この内部液2内にAg/AgClから成る内部電極
3が浸漬されている。電極筒1の端部には感応膜4が形
成されている。この感応膜4はポリ塩化ビニルの如き高
分子物質を含み、感応物質や可塑剤,配位化合物などが
分散されている。
【0071】なお、本発明における陰イオンとしてはC
-,Br-,I-,NO3 -,SCN-,HCO3 -,HPO
3 -などが挙げられる。
【0072】本発明では感応物質として、式(II)
【0073】
【化53】
【0074】で表される化合物に代表される化合物が好
ましく用いられる。特に好ましくはその構造式(III)
【0075】
【化54】
【0076】で表され,この式(III)の化合物におけ
るアルキル置換基Rの炭素数が5乃至20の化合物が,
前記の公知例にも記載されている様に,感応物質として
特に好適に用いられる。この炭素数が短すぎると感応物
質の親油性が不十分となり,感応膜内に容易に溶解せ
ず,あるいは水溶液試料との接触により水溶液側に溶出
しやすい。また,この炭素数が長すぎると合成が困難な
ばかりでなく,分子の柔軟性が低下して溶媒に対する溶
解性が低下し,感応膜から分離しやすくなる。後述の実
施例では,感応物質として,前記式(III)
【0077】
【化55】
【0078】で表され,この一般式におけるアルキル置
換基Rの炭素数が8である,[μ-[4,5-ジメチル-3,6-
ビス( オクチルオキシ) -1,2- フェニレン]]ビス( トリ
フルオロアセテート-O) ジマーキュリーを使用した。も
ちろん,本発明においてはこの式(III)の化合物にお
けるアルキル置換基Rの炭素数は4以下或いは20以上
のものでも用いることができ,また直鎖アルキルばかり
でなく分岐鎖や各種置換アルキル基を用いることもでき
る。また,もちろん前記式(II)
【0079】
【化56】
【0080】で構造が表される化合物に代表される各種
の有機金属化合物を用いることもできる。本発明では従
来技術と比較して,配位化合物を感応膜に加えて用いる
ことが主たる特徴事項であるが,この配位化合物として
は,硫黄,窒素,燐,酸素など,感応物質の金属と親和
性の高い原子を配位原子として有する化合物が好ましく
用いられる。前記式(I)
【0081】
【化57】
【0082】で表され,硫黄を配位原子とする配位化合
物の例としては,各種アルキルチオール,フェニルチオ
ール,アルキルチアエーテル,チオフェン等のアリール
チアエーテル,チオ尿素等のチオカルボニル化合物,及
びこれらの誘導体等がある。同じく窒素を配位原子とす
る配位化合物の例としては,各種アミン,ピリジン,ア
ニリン,及びこれらの誘導体等がある。燐を配位原子と
する配位化合物の例としては,各種トリアルキルフォス
フィン,トリアルキルフォスフィン,及びこれらの誘導
体等がある。酸素を配位原子とする配位化合物の例とし
ては,各種アルコール,フェノール,アルキルエーテ
ル,アリールエーテル,ケトン,ニトロソ化合物,及び
これらの誘導体等がある。また,前記式(IV)
【0083】
【化58】
【0084】によって表される多座配位化合物は,配位
原子が複数含有され,複数のサイトで金属と配位するた
め,配位により形成される錯体の安定性が高く,より好
適に用いることができる。硫黄を複数含む配位化合物の
例としては,ビチオフェン、ジアリールジチオケトン,
アルキルジチオ−ル、フェニルジチオ−ル、窒素を複数
含む配位化合物の例としては,2,2’−ビピリジルや
ジエチレントリアミン,1,10−フェナントロリン、
酸素を複数含む配位化合物の例としては,1,1’−ビ
ス−2−ナフトールやビフェニル−2,2’−ジオー
ル,アセチルアセトンなどがある。勿論,複数種の配位
原子を混合して含む配位化合物も可能であり,例えば硫
黄と窒素を含むジアミノジエチルスルフィド,トリエタ
ノールアミン,チオ尿素、硫黄と酸素を含むキノリン−
8−チオレート,酸素と窒素を含むジエチレントリアミ
ンペンタ酢酸などを用いることができる。さらに,前記
前記式(V)
【0085】
【化59】
【0086】によって表される環状多座配位化合物は,
配位原子が環状の骨格内の適切な位置に配置されるた
め,形成される錯体の安定性がさらに高いため,さらに
好適に用いることができる。この様な環状多座配位化合
物の例としては,各種クラウンエーテル類,チアクラウ
ンエーテル類,ポルフィリン類,フタロシアニン類,カ
リクスアレン類,チアカリクスアレン類,クリプタンド
類,スフェランド類,環状ポリペプチド類,シクロデキ
ストリン類およびこれらの誘導体がある。つまり,本発
明における配位化合物としては,金属に対する錯体形成
能力の高い,即ち錯形成反応の安定度定数の大きい各種
配位化合物を一般に使用できる。なお,感応膜内に長期
間安定に保持されるためには,特に親油性が高く,水溶
液試料中に溶出しにくいものが好適に使用できる。ま
た,配位子として電気的に中性な配位子を用いれば,感
応物質の基本構造を変えずに,それに配位子が付加した
形で錯体が形成されるため,感応物質の目的イオンに対
する応答性はほぼ同等に保たれ,また親油性の点でも優
れるため,中性配位子を用いることは一般に望ましい。
帯電する配位子を用いることもできるが,この場合は感
応物質に含まれるイオン等と交換反応を起こして感応物
質の構造を一部変えてしまい,選択性が変化する可能性
もある。後述の実施例では配位化合物として,多座配位
化合物の一種で,配位原子として硫黄を2つ含むビチオ
フェンを使用したが,もちろん本発明における配位化合
物はビチオフェンに限定されるものではなく,上記した
各種化合物やその類縁体,誘導体,その他およそ金属と
錯体を形成しうる化合物群の中から適切なものを選択し
て,又は混合して,使用することができる。
【0087】イオン感応膜は、測定対象外のイオンを含
む物質から、特定のイオンのみを選択的に透過、または
それに感応することができる。また、イオン感応膜は、
試料溶液が水性液体であるので水不溶性でなければなら
ないが、水不溶性であれば親水性、疎水性を問わない。
イオン感応膜は、従来公知の方法により調製することが
できる。例えばリガンド、可塑剤、添加剤及び高分子物
質を溶媒に溶解させたものを基板の上に塗布、乾燥させ
る。リガンド濃度は、一般に0.05〜10g/m2 、イオン
感応膜の厚さは10〜500μmが好ましい。
【0088】イオン感応膜に使用する高分子物質には、
目的イオンが十分な透過性をもってリガンドと共に横切
ることができる薄膜を形成できる天然または合成の重合
体を用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニル、ポ
リ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタ
ン、ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマ−、ポリ
塩化ビニル/ポリ塩化ビニリデンコポリマ−、ポリ酢酸
ビニル、シリコンエラストマ−、ポリビニルアルコ−
ル、セルロ−スエステル、ポリカ−ボネイト等を挙げる
ことができる。
【0089】イオン感応膜に使用するリガンドは、目的
とする特定のアニオンと相互作用することができる物質
である。この場合には、イオン交換又はイオン配位によ
り生じる測定溶液中のイオン活量変化に起因する電位差
を測定することになる。リガンドの例としては、有機水
銀を用いる高選択性リガンド(Analytica Chimica Acta,
271(1993)135-141) があり、有用なリガンドの例とし
て、式(XV) の化合物
【0090】
【化60】
【0091】〔式中、xは1〜20を示す〕をあげるこ
とができる。本発明では可塑剤として芳香族系の可塑剤
が好ましく用いられ,その構造が前記の式(VI)
【0092】
【化61】
【0093】で表される化合物に代表される化合物を用
いることができる。特に好ましくはその構造が前記の式
(VI)
【0094】
【化62】
【0095】で表される化合物であって,この一般式に
おけるアルキル置換基の炭素数nが6乃至15の化合物
が,可塑剤として好適に用いられる。この構造に当ては
まり,前記の公知例で述べられている化合物としてはo-
NPOE(オルト−ニトロフェニルオクチルエーテル)があ
るが,この公知例ではo-NPOEを可塑剤として用いると,
感応物質が結晶化してしまうという問題があるとして,
詳細な検討は行っていない。しかしながら,本発明に至
る実験的検討の結果,結晶化の問題は必ずしも致命的な
欠点ではなく,公知例で最適としているDOSよりもむし
ろ選択性の安定性は高い。この式(VI)
【0096】
【化63】
【0097】の構造に当てはまり,前記の公知例で述べ
られていない化合物としてはオルト−ニトロフェニルデ
シルエーテル,オルト−ニトロフェニルドデシルエーテ
ル等があり,これらも本発明の電極の感応膜の可塑剤と
して好適に用いられる。なお,芳香族系の構造を有し,
前記の公知例で述べられていない可塑剤としては,DPP
(ジペンチルフタレート)があり,この可塑剤でも高い
安定性が得られる。本実施例では,可塑剤として,o-NP
OEを使用した。もちろん,本発明で使用できる可塑剤は
ここに列挙した化合物に限定されず,式(VI)
【0098】
【化64】
【0099】で表される化合物に代表される芳香族系の
化合物が好ましく用られるが,もちろん,それ以外の各
種公知の可塑剤を使用することもできる。その例として
は、ブロモフェニルフェニルエーテル、3-メトキシフェ
ニルフェニルエーテル、4-メトキシフェニルフェニルエ
ーテル、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ
ドデシルフタレート、ジオクチルフェニルホスフェー
ト、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、オクチルジ
フェニルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチ
ルセバケート、オルトニトロオクチルフェニルエーテ
ル、、オルトニトロデシルフェニルエーテル、オルトニ
トロドデシルフェニルエーテルを挙げることが出来る。
また、フタレート、セバケート、芳香族又は脂肪族のエ
ーテル及びアジペート等も用いられ、他の多数の有用な
溶媒も公知である。
【0100】本発明では上記の感応物質以外に,水銀化
合物を感応膜に含有させることを特徴とするが,その水
銀化合物としては,前記式(VIII)
【0101】
【化65】
【0102】で表される化合物に代表される化合物を用
いることができる。この式(VIII)の化化合物における
置換基R4は一般式中に記載した各種置換基であって良
く,また2つのR4は必ずしも同じ置換基である必要は
なく,種類の異なる置換基を1つずつ用いてもよい。後
述の実施例では,この水銀化合物として,ジトリフロロ
酢酸水銀(II)を使用した。
【0103】本発明では,イオン性添加剤として,前記
の式(VII)
【0104】
【化66】
【0105】で表される化合物に代表される化合物を感
応膜中に用いることが好ましい。この添加剤の効用は前
記の公知例中に詳細に記されている。本実施例ではこの
添加剤として,この式(VIII)の化合物におけるアルキ
ル鎖の炭素数nが12のMTDAを使用した。もちろん,この
一般式におけるアルキル鎖長nは12以上であっても良
く,16のメチルトリヘキサデシルアンモニウム塩,18の
メチルトリオクタデシルアンモニウム塩なども好適に使
用できる。
【0106】添加剤はアニオンの塩であることが可能で
あり、テトラフェニルホウ素アニオン及びその誘導体が
挙げられる。有用な添加剤の例として、ナトリウムテト
ラフェニルボーレイト(カリボール)、カリウムテトラ
フェニルボーレイト、テトラキスパラフルオロフェニル
ボーレイト(セシボール)、テトラキスパラクロロフェ
ニルボーレイト、テトラキス-3、5トリフルオロメチ
ルフェニルボーレイト(TFPB)を挙げることが出来
る。
【0107】一般に固体イオンセンサの内部固体電極
は、金属をその金属の不溶性塩と接触させる構造を有す
る。例えば、Ag/AgX(Xはハロゲン)で表すこと
ができ、銀の層をワイヤ−又はプレ−トとしてハロゲン
塩の水溶液中に浸漬することにより調製できる。金属塩
層が厚すぎると高分子中間層又はイオン感応膜とのイオ
ン平衡達成に時間を要する。このため、金属/金属塩に
おける金属層と金属塩層の厚さを500μm以下、金属
塩層の厚みを金属層の10〜50%とするのが好まし
い。また金属塩層は、金属層上を完全に被覆する必要は
なく、金属層の50%以下とすることが好ましい。金属
層はワイヤ−、プレ−ト以外に、絶縁性フィルム等の上
に金属を真空蒸着した薄膜であってもよい。絶縁性フィ
ルムとしてはセルロ−スアセテ−ト、ポリエチレンテレ
フタレ−ト、ポリカ−ボネイト、ポリスチレン等を挙げ
ることができる。
【0108】高分子中間層に使用する有機物には、イオ
ンが十分な透過性をもって薄膜を形成できる天然または
合成の重合体を用いることができる。詳細には、ポリア
クリロニトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ
ビニルアルコ−ル、セルロ−スエステル等である。高分
子中間層中に保湿性を有する有機化合物を含ませること
ができる。この化合物については水溶性であること、分
解しないことが必要である。また、揮発性に乏しいこと
が望ましい。特に有用な化合物の例として、グリセリ
ン、ポリエチレングリコ−ル、ポリメチレングリコ−
ル、ポリプロピレングリコ−ル等をあげることができ
る。これらの化合物は揮発性が特に乏しいため、長期間
にわたり安定な電極性能を維持することが可能である。
【0109】
【作用】ETH9009に代表される有機金属化合物が陰イオ
ンに対して応答する際は,金属原子が中心的な役割を果
たす。金属は,特に負に帯電した硫黄イオンに対する親
和性が高いため,硫黄イオンなどが試料中に共存する
と,それが金属と強固に結合してしまう。血液などの生
体液中には蛋白質が多く含まれるが,蛋白質を構成する
アミノ酸の一種であるシステインは,分子内に硫黄−水
素からなる官能基,即ちチオール基を有し,その一部は
解離して硫黄イオンとなる。従って,ETH9009に代表さ
れる有機金属化合物を感応物質としてそのまま用いる従
来の陰イオン選択性電極を,血液試料に接触させると,
試料中の蛋白質が感応膜表面に結合してしまい,試料の
迅速な交換が阻害され,応答が遅くなる。通常は測定時
間が限られているため,この様に応答が遅い場合は最終
的な出力電位に到達する前に電位を計測することにな
り,以前に測定した試料の濃度の影響を受けて,見かけ
上スロープ感度が低くなる。従来技術に基づく電極は,
この様なメカニズムにより,血液試料との接触によって
感度が低下しやすいと考えられる。
【0110】一方,有機金属化合物を感応物質として用
いる陰イオン選択性電極の感応膜において,金属に配位
して錯体を形成する配位化合物に代表される化合物を予
め加えておけば,この配位化合物が感応物質である有機
金属化合物の金属に配位して,錯体を作る。この様に配
位子によって周囲を包囲された金属は化学的に安定化さ
れ,イオンに対する親和性が低下する。従って,たとえ
システインなどから構成される蛋白質と接触しても,感
度が低下しにくくなるため,血液試料に対する安定性が
改善する。
【0111】また、本発明では、添加剤にテトラフェニ
ルホウ素アニオン及びその誘導体のアルカリ金属塩を導
入する。アニオンである塩素イオンは、有機水銀リガン
ドに配位する際にその対イオンとなるカチオンを必要と
するが、従来ではカチオン性添加剤として第4級アンモ
ニウム塩を用いていた。しかし、この添加剤を用いた塩
素イオンセンサでは、添加剤自身が塩素イオンリガンド
として作用するため、本来のリガンドにおけるイオン配
位の機能が必ずしも十分に機能していない。その点、本
発明の添加剤であるテトラフェニルホウ素アニオン及び
その誘導体のアルカリ金属塩は塩素イオンリガンドとし
ては作用しない。また、テトラフェニルホウ素アニオン
及びその誘導体のアルカリ金属塩は分子サイズが大きい
ため、対親水性イオン選択性が向上する。よって、本発
明の塩素イオンセンサは、血液、尿等の生体液中に存在
する炭酸水素イオンをはじめとする種々の妨害イオンに
対して塩素イオンの応答性が高いため、これを塩素イオ
ンセンサのイオン感応膜として使用することにより、血
液、尿等の生体液中に存在する塩素イオンの定量を極め
て正確に行うことが可能であり、その工業的価値は大き
い。
【0112】
【発明の実施の形態】
(実施例1)次に,本発明の第1の実施例の感応膜及び
電極の製法について説明する。感応物質として [μ-[4,
5-ジメチル-3,6- ビス( オクチルオキシ) -1,2- フェニ
レン]]ビス( トリフルオロアセテート-O) ジマーキュリ
ーを2wt%、可塑剤としてo-NPOEを約64wt%、配位化合
物としてビチオフェンを感応物質に対するモル比で200
%、高分子物質としてポリ塩化ビニルを33wt%となる様
に秤量した。これらとは別に,イオン性添加剤としてMT
DAを,所定の容量を分取した時にリガンドに対するモル
比で2.5%となる様にテトラヒドロフラン(THF)中に溶
解した溶液を用意し,このMTDAのTHF溶液の所定量を前
記の他の膜成分と混合した。適正な粘度が得られるよ
う,さらにTHFを加えて混和した後、この溶液(キャス
ト液)をガラス板上に載せたガラスリング内に流延(キ
ャスト)し,この溶剤を蒸発除去してイオン感応膜4を
製作した。これを図2の電極筒1の大きさに応じて適切
な大きさに打ち抜いて電極筒1の端部に接着した。
【0113】感応膜中に分散される感応物質の含有量は
応答性、選択性,膜インピーダンス及び感応物質と感応
膜との相溶性などの点から、1ないし5wt%が適正であ
る。また、本発明に基づく他の化合物を混合して感応物
質とすることができるが,その場合でも、上述の理由か
らその含有量は合計で1ないし5wt%が好ましい。上記
の製法においては,感応物質と配位化合物は別々に用意
して,感応膜原液(キャスト液)において両者を接触せ
しめた。配位化合物と金属との親和性が高い場合には,
この時点において直ちに配位化合物が金属に配位して錯
体が形成されるが,親和性がやや低い場合は,溶剤が蒸
散して濃度が高まるにつれて,徐々に錯体が形成されて
ゆく。なお,感応物質と配位化合物は必ずしも感応膜原
液に別々に導入する必要はなく,場合によっては予め両
者を適切な溶媒中で反応させて錯体を形成しておき,こ
の錯体の形で感応膜原液に一度に導入しても構わない。
この場合は見かけ上,配位化合物が金属に配位した錯体
を単独で感応物質として用いるかのごとくにみえるが,
これも本発明の精神を具現する一つの形態であることは
いうまでもない。
【0114】感応物質あるいは可塑剤を担持させる高分
子物質として、本実施例ではポリ塩化ビニルを用いた
が、その他の物質としてポリカーボネイト、シリコンゴ
ム、エポキシ樹脂,ポリウレタンなども使用可能であ
る。ところで、感応膜中の高分子物質の含有量が他の組
成物の関係から20wt%以下となると、感応膜の機械的強
度が弱くなる。一方、高分子物質の含有量が70wt%以上
となると膜インピーダンスが高くなり、安定した電極性
能を得ることが難しくなる。従って、高分子物質の含有
量は20ないし70wt%が好ましい。
【0115】次に,本実施例の動作を説明する。基本的
な動作は前述の公知例と同様であるが,本発明の主な特
徴事項である配位化合物として,本実施例ではビチオフ
ェンを感応膜に含有するのは上述のとおりである。この
ビチオフェンは感応物質である有機金属化合物の金属に
配位して,錯体を作る。この様にビチオフェンによって
周囲を包囲された金属は化学的に安定化され,金属の反
応性が低下する。従って,たとえシステインなどを構成
要素とする蛋白質と接触しても,感度が低下しにくくな
るため,血液試料に対する安定性が改善する。
【0116】本実施例特有の効果は,入手が容易なビチ
オフェンを配位化合物として感応膜製造時に膜成分の一
つとして添加するだけで良いため,製造が容易であるこ
とである。 (実施例2)次に,本発明の第2の実施例の感応膜及び
電極の製法について説明する。感応物質として [μ-[4,
5-ジメチル-3,6- ビス( オクチルオキシ) -1,2- フェニ
レン]]ビス( トリフルオロアセテート-O) ジマーキュリ
ーを2wt%、可塑剤としてDPPを約64wt%、水銀化合物
としてトリフロロ酢酸水銀(II)を感応物質に対するモル
比で100%、高分子物質としてポリ塩化ビニルを33wt%
となる様に秤量した。これらとは別に,添加剤としてMT
DAを,所定の容量を分取した時にリガンドに対するモル
比で2.5%となる様にテトラヒドロフラン(THF)中に溶
解した溶液を用意し,このMTDAのTHF溶液の所定量を前
記の他の膜成分と混合した。適正な粘度が得られるよ
う,さらにTHFを加えて混和した後、この溶液(キャス
ト液)をガラス板上に載せたガラスリング内に流延(キ
ャスト)し,この溶剤を蒸発除去してイオン感応膜4を
製作した。これを図1の電極筒1の大きさに応じて適当
な大きさに打ち抜いて電極筒1の端部に接着した。
【0117】感応膜中に分散される感応物質の含有量は
応答性、選択性,膜インピーダンス及び感応物質と感応
膜との相溶性などの点から、1ないし5wt%が適正であ
る。また、本発明に基づく他の化合物を混合して感応物
質とする場合においても、上述の理由からその含有量は
合計で1ないし5wt%が好ましい。感応物質あるいは可
塑剤を担持させる高分子物質として、本実施例ではポリ
塩化ビニルを用いたが、その他の物質としてポリカーボ
ネイト、シリコンゴム、エポキシ樹脂,ポリウレタンな
ども使用可能である。ところで、感応膜中の高分子物質
の含有量が他の組成物の関係から20wt%以下となると、
感応膜の機械的強度が弱くなる。一方、高分子物質の含
有量が70wt%以上となると膜インピーダンスが高くな
り、安定した電極性能を得ることが難しくなる。従っ
て、高分子物質の含有量は20ないし70wt%が好ましい。
【0118】次に,本実施例の動作を説明する。基本的
な動作は前述の公知例と同様であるが,本発明の主な特
徴事項である水銀化合物として,本実施例ではジトリフ
ロロ酢酸水銀(II)を感応膜に含有し,また本発明の副次
的な特徴事項である芳香族系の可塑剤として,本実施例
ではNPOEを,感応膜に含有するのは上述のとおりであ
る。NPOEに代表される芳香族系の化合物はジトリフロロ
酢酸水銀(II)で代表される水銀化合物と容易にかつ可逆
的に反応し,その一部は付加体となりうる。この芳香族
系可塑剤と水銀残基の付加体は,ジトリフロロ酢酸水銀
(II)で代表される水銀化合物と比較して親油性が高いた
め,感応膜内部に保持されやすい。従って,この芳香族
系可塑剤と水銀残基の付加体は水銀残基の貯蔵庫として
機能しうると考えられる。一方,感応物質の有機水銀化
合物も同様の反応を逆方向に行い,水銀残基を放出して
分解しうるが,感応物質から水銀残基が取れた分解生成
物も,水銀残基さえ供給されればこの反応を順方向に行
うことにより,感応物質として再生されうる。従って,
芳香族系可塑剤と水銀残基の付加体があれば,その分解
反応により水銀残基を放出し,これが感応物質の分解生
成物と反応して感応物質を再生するというメカニズムが
成立すると考えられる。つまり,芳香族系可塑剤と水銀
残基の付加体は水銀残基の補給庫としても機能すると考
えられる。以上により,本実施例によれば,ジトリフロ
ロ酢酸水銀(II)で代表される水銀化合物を感応膜に含有
し,芳香族系の可塑剤を用いることにより,感応膜内で
感応物質の機能のための必須の成分である水銀残基の貯
蔵と補給を効率よく行うことができるため,その感応膜
を用いる陰イオン選択性電極の安定性が改善される。こ
こで,芳香族系の可塑剤は,ジトリフロロ酢酸水銀(II)
で代表される水銀化合物を親油性の付加体として感応膜
内に保持するために特に好ましい効果を発揮するもので
あり,本発明の効果が発揮される上で重要な要素であ
る。
【0119】本実施例特有の効果は,上記ジトリフロロ
酢酸水銀(II)に代表される水銀化合物を感応膜製造時に
膜成分の一つとして添加するだけで良いため,製造が容
易であることである。この実施例では,感応膜に添加す
る水銀化合物として,前記の式(VIII)の化合物によっ
て構造が表される各種の化合物を主に例に取って説明し
たが,添加する水銀化合物はこれらに限定されることは
なく,式(X)の一般式
【0120】
【化67】
【0121】で表される各種の有機水銀化合物を用いる
こともできる。 (実施例3)本発明の第2の実施例は、配位化合物とし
て,式(V)
【0122】
【化68】
【0123】で表され,Z1,Z3が硫黄,Z2,Z4が酸
素,R1,R2,R3,R4がエチル基である1,7-ジチア-1
2-クラウン4を用い,その他は実施例1と同様の構成を
用いて,陰イオン選択性感応膜を形成し,陰イオン選択
性電極を作製した。この配位化合物は硫黄と酸素を配位
化合物として用いる中性の環状多座配位化合物である
が,本発明はこの特定の化合物に限定されるものではな
く,類似の各種化合物,例えば硫黄原子と酸素原子の位
置の異なる異性体,環の員数が9,15,18であり配
位原子を少なく又は多く含むジチア−9−クラウン−3
やジチア−15−クラウン−5,ジチア−18−クラウ
ン−6の誘導体,アルキル基部分が枝分かれしたもの
等,各種の環状多座配位化合物も用いることができる。
これらの配位化合物は,配位原子として硫黄を含む環状
の多座配位化合物であるため,金属と安定な錯体を形成
しやすい。また,分子全体として中性であり極性が低い
ため,水溶液試料中への溶出が起きにくく,感応膜内に
長期間留まりやすい。従って本実施例は,長期に渡って
安定な性能が得られるという特有の効果がある。 (実施例4)本発明の第4の実施例は、配位化合物とし
て,12-ドデシル-1,4,9- トリオキサ-10,14- ジチアシ
クロヘキサデカン(略称:ドデシル−ジチア−16−ク
ラウン−5)を用い,その他は第1の実施例と同様の構
成を用いて,陰イオン選択性感応膜を形成し,陰イオン
選択性電極を作製した。この配位化合物は硫黄と酸素を
配位化合物として用いる中性の環状多座配位化合物であ
るという点で上記第3の実施例と類似であるが,ドデシ
ル基という長いアルキル基を側鎖として有する点が主に
異なる。ドデシル−ジチア−16−クラウン−5に類似
した化合物としては,例えば硫黄原子と酸素原子の位置
の異なる異性体,環の員数が13や19であり配位原子
を一つ少なく又は多く含むドデシル−ジチア−13−ク
ラウン−4やドデシル−ジチア−19−クラウン−6の
誘導体,長鎖アルキル鎖の長さが炭素数12でなく8,
10,14,16,18等である,オクチル,デシル,
テトラデシル,ヘキサデシル,又はオクタデシル−ジチ
ア−16−クラウン−5等,各種の環状多座配位化合物
があり,これらを配位化合物として使用することも可能
である。この配位化合物は,長鎖のアルキル基を有する
ため,分子の親油性が高く,感応膜内に長期間留まりや
すい。従って本実施例は,長期に渡って再現性の良い結
果が得られるという特有の効果がある。 (実施例5)本発明の第5の実施例では、添加する水銀
化合物として式(X)で構造が表される有機水銀化合物
を用いる場合を例示して説明する。この第5の実施例で
は,この有機水銀化合物として,一般式が式(X)で表
され,その置換基R4がトリフロロ酢酸基(CF3COO),
置換基R5とR6がオクチルオキシ基(C8H17O)とニトロ
基(NO2)である化合物を用いた。ここで,この有機水
銀化合物において,水銀と芳香族環との結合の位置を限
定していないが,R5やR6が結合していない4つの芳香
族炭素の何れが水銀と結合していても構わず,また,異
なる位置で結合した異性体の混合物であっても構わな
い。この実施例はまた,感応物質として,式(III)で
表され,アルキル置換基R7の炭素数が14である [ μ-
[4,5-ジメチル-3,6- ビス( テトラデシルオキシ) -1,2-
フェニレン]]ビス( トリフルオロアセテート-O) ジマ
ーキュリーを使用し,可塑剤としてo-NPOEを用いる点
も,上記実施例2と異なる。即ち,本実施例では上記感
応物質として [ μ-[4,5-ジメチル-3,6- ビス( テトラ
デシルオキシ) -1,2- フェニレン]]ビス( トリフルオロ
アセテート-O) ジマーキュリーを2wt%、可塑剤として
o-NPOEを約64wt%、添加する有機水銀化合物として構造
が式(X)で表され,置換基R4がトリフロロ酢酸基(C
F3COO),置換基R5とR6がオクチルオキシ基(C8H
17O)とニトロ基(NO2)である化合物を感応物質に対す
るモル比で200%、高分子物質としてポリ塩化ビニルを3
3wt%,また,添加剤としてMTDAをリガンドに対するモ
ル比で2.5%使用した点以外は,実施例2と同様であ
る。
【0124】ここで一般に,この式(X)で表される有
機水銀化合物の水銀を含めた左半分は式(VIII) の左半
分と同じであり,水銀より右の半分は式(XI)と同じ芳香
族化合物の形式をとる。つまり,この式(X)で表され
る有機水銀化合物は,前記の実施例2において説明した
「芳香族系可塑剤と水銀残基との付加体」と同様の構造
を有する。従って,その機能もまた実施例2において説
明したものと同様である。つまりこの実施例が実施例1
と異なるのは,実施例1では「芳香族系可塑剤と水銀残
基との付加体」は水銀化合物と芳香族系可塑剤との反応
によって(感応膜内で)生成したものを利用したのに対
し,この実施例では化合物として予め用意しておき,感
応膜の材料の一つとして製膜時に加えた点である。反応
経路と反応生成物の複雑化を防止する観点からは,この
有機水銀化合物としては,使用する可塑剤と同じ置換基
5,R6を有するものを用いることが好ましい。従っ
て,本実施例では可塑剤としてo-NPOE,上記有機水銀化
合物としてo-NPOEとジトリフロロ酢酸水銀との付加化合
物を用いた。もちろん,これらの置換基を必ずしも揃え
る必要はなく,可塑剤と異なる骨格に基づく有機水銀化
合物を用いることも可能ではある。
【0125】本実施例特有の効果は,芳香族系可塑剤と
水銀残基との付加体の種類と量とを制御できるため,感
応膜の製造条件に左右されずに再現性の良い結果が得ら
れることである。 (実施例6)本発明の第6の実施例では、式(X)
【0126】
【化69】
【0127】で表される有機水銀化合物を感応物質とし
て用いて塩素イオン選択性電極を得た。即ち,本実施例
では上記感応物質として構造が一般式化4で表され,置
換基R4がトリフロロ酢酸基(CF3COO),置換基R5とR
6がドデシルオキシ基(C12H25O)とニトロ基(NO2)で
ある化合物を2wt%、可塑剤としてオルト−ニトロフェ
ニルドデシルエーテル(o-NPDDE)を約65wt%、高分子
物質としてポリ塩化ビニルを33wt%,また,添加剤とし
てMTDAをリガンドに対するモル比で2.5%使用し,上記
感応物質以外には水銀化合物を添加しなかった点以外
は,第2の実施例と同様である。なお,本実施例では可
塑剤,及び感応物質の骨格(水銀残基以外の部分)とし
てo-NPOEより親油性の高いo-NPDDEを用いたが,もちろ
んこれはo-NPDDEに限定されるものではなく,他のアル
キル鎖長を有するo-NPOEの誘導体,その他,親油性の高
い芳香族系の可塑剤を,可塑剤,および感応物質の骨格
として使用することができる。
【0128】この第6の実施例では,可塑剤と共通の骨
格を有する有機水銀リガンドを感応物質として用いる。
従って,例え感応膜内で感応物質が可塑剤と互いに水銀
残基を交換し合っても,新規な物質は生成せず,感応膜
の組成が単純に保たれ,性能の変化を抑制できることが
この実施例特有の特徴である。 (実施例7)本発明の第7の実施例では、添加する水銀
化合物として,構造が式(IX)
【0129】
【化70】
【0130】で表される有機水銀化合物を用いて塩素イ
オン選択性電極を得た。具体的には,前記の式(IX)の
化合物の置換基R8が2-ドデシル-2- メチル- プロピル
基,置換基R9,R10がそれぞれエチル基,R11がプロ
ピル基,4つの原子ZのうちR8とR10の間のものが S
即ち硫黄,その他3つの原子Zがそれぞれ O即ち酸素で
あるものを用いた。即ち,本実施例では感応物質として
[μ-[4,5-ジメチル-3,6-ビス( ヘキサデシルオキシ) -
1,2- フェニレン]]ビス( トリフルオロアセテート-O)
ジマーキュリーを2wt%、可塑剤としてo-NPOEを約64wt
%、添加する有機水銀化合物として構造が式(IX)で表
されその詳細を前述した化合物を感応物質に対するモル
比で100%、高分子物質としてポリ塩化ビニルを33wt
%,また,添加剤としてMTDAをリガンドに対するモル比
で2.5%使用した点以外は,第1の実施例と同様であ
る。
【0131】この第7の実施例では,水銀の貯蔵/補給
源として,式(IX)の化合物で表される水銀錯体を用い
ることにより,水銀の荷電数を保ったまま感応膜内部で
の安定性を高く保つことができる。特に,長いアルキル
側鎖を採用することにより親油性を高めて感応膜からの
溶出を未然に防止し,また水銀との親和性の高い硫黄の
数を1つに抑制することにより,水銀を安定に保持しつ
つ,必要に応じて容易に水銀を放出して感応物質に水銀
を補給できることが,本実施例固有の特徴である。 (実施例8)本発明の第8の実施例では、感応物質とし
て,構造が式(VIII)
【0132】
【化71】
【0133】で表され,その置換基R4が塩素に代表さ
れるハロゲンである無機水銀化合物を用いて塩素イオン
選択性電極を得た。即ち,本実施例では感応物質として
Dichloromercury(II)を2wt%、可塑剤としてo-NPOEを
約65wt%、高分子物質としてポリ塩化ビニルを33wt%使
用し,感応物質以外には水銀化合物を添加せず,また添
加剤も使用しない点以外は,第2の実施例と同様であ
る。
【0134】この実施例では,感応物質は無機の金属ハ
ロゲン化物であり,その動作メカニズムは古典的なイオ
ン交換反応に基づく固体膜イオン電極と同様である。し
かし従来の古典的固体イオン電極と異なり,可塑剤とし
て芳香族系のものを使用するため,水銀が一部可塑剤と
反応して感応膜内部に均一に分散されるため,感応物質
として単純な無機化合物しか必要としないにも関わら
ず,安定性が高く製造が容易で寿命が長いという高分子
支持液膜電極の特徴が発揮されることが本実施例固有の
特徴である。 (実施例9)本発明の第9の実施例は、感応物質とし
て,式(III)
【0135】
【化72】
【0136】で表され,この一般式におけるアルキル置
換基Rの炭素数が16である,[μ-[4,5-ジメチル-3,6-
ビス( ヘキサデシルオキシ) -1,2- フェニレン]]ビス
( トリフルオロアセテート-O) ジマーキュリーを使用し
た点以外は,第2の実施例と同様である。この感応物質
は,第2の実施例等で用いた化合物よりアルキル置換基
の炭素数が長く,感応中心である金属原子の周囲の立体
障害が大きい。従って,かさ高い妨害イオンに対する応
答が抑制され,これらのイオンによる妨害を受けにく
く,選択性が高いという特有の効果がある。
【0137】(実施例10)本発明の第10の実施例
は、可塑剤としてオルト−ニトロフェニルドデシルエー
テルを使用した点以外は,第1の実施例と同様である。
この可塑剤は,第1の実施例等で用いた可塑剤よりアル
キル置換基の炭素数が長く,親油性が高いため,感応膜
内に長期間留まりやすい。従って本実施例は,長期に渡
って再現性の良い結果が得られるという特有の効果があ
る。
【0138】(実施例11)次に、本発明の第11の実
施例によるマルチイオンセンサを図3を用いて説明す
る。図3は本発明が適用されるマルチイオンセンサの断
面模式図の一例である。フローセル型電極ボディ6内に
流路が形成され,この流路に対して曲面状に突出する開
口部が設けられ,この曲面に沿って1つ以上の感応膜
4,4’等が接着される。個々の感応膜の流路と反対側
の面には内部電解質層20を介して内部電極21が形成
される。内部電解質層20としては塩化ナトリウムなど
の電解質を含む高分子ゲルなどが好適に用いられ,この
高分子として好適に用いられるものの例としては,ポリ
ビニルアルコール,ポリエチレングリコール,アガロー
ス等が挙げられる。また,これらに多価アルコール類に
代表される保湿用材料を添加して用いても良い。内部電
極3としては銀塩化銀等からなる湾曲させた板状電極を
用いることができるほか,湾曲や接着の容易な網目状の
電極も用いることができる。図中には番号を付さなかっ
たが,リード線等をこの内部電極に結線して,マルチイ
オンセンサの外に信号を取り出す。個々の感応膜,内部
電解質層,内部電極はお互いに電気的に絶縁して形成さ
れるために,互いに独立したイオン電極として機能す
る。なお,これらの個々のイオン電極は内部電解質溶液
を用いず,固体状の内部電解質層を代わりに用いるた
め,固体イオンセンサとみなすことができる。本実施例
では1つの独立したイオン電極(またはイオンセンサ)
の感応膜として,第1の実施例における感応膜と同じ組
成の感応膜を用いたため,この電極(またはイオンセン
サ)は陰イオンに応答し,この電極自体(またはイオン
センサ自体)の性能は第1の実施例と同様である。もち
ろん本発明による他の組成による感応膜を用いてもよ
い。本実施例では他の独立したイオン電極(またはイオ
ンセンサ)として,ナトリウムイオン,カリウムイオン
用の感応膜を用いるイオン電極を同一のフローセル型電
極ボディに形成し,これら以外に塩素イオン用もしくは
カリウムイオン用の感応膜を用いる参照電極21も同一
のフローセル型電極ボディに形成し,総合的に陰イオ
ン,ナトリウムイオン,カリウムイオンの3項目を測定
できるマルチイオンセンサを形成した。本実施例特有の
効果は,測定試料が電極ボディの内部に設けられた流路
を流通するために,試料量が少なくてすむこと,複数の
独立したイオン電極(またはイオンセンサ)と参照電極
とを集積化して形成するために電極のサイズ,そして測
定装置全体のサイズとコストを低減できること,取扱が
容易になること,等がある。
【0139】(実施例12)次に、本発明の第12の実
施例による生化学成分分析装置を図4を用いて説明す
る。図4は本発明が適用される生化学成分分析装置の構
成概略図の一例である。この生化学成分分析装置は、本
発明の第1の実施例に示された陰イオン選択性電極2
2、参照電極21がフローセル23内に保持され、送液
装置24および弁25、26、サンプリング機構27、
計測制御装置28、参照電極液29、内部標準溶液3
0、外部標準溶液31、測定試料溶液32、および他種
の電極33などから構成される。つぎにこの装置の動作
の概略を説明する。送液装置24、弁25、26の働き
により、参照電極液29がフローセル23内の参照電極
21へ、また試料溶液として内部標準溶液30が陰イオ
ン選択性電極22へと送られ、フローセル内で合流し、
液絡が形成される。すると参照電極21と陰イオン選択
性電極22との間に内部標準溶液30中の目的イオンの
活量に応じた起電力が発生するので、それを計測する。
次にサンプリング機構を動作させて試料溶液として外部
標準溶液31もしくは測定試料溶液32を同様の手順で
測定する。外部標準溶液31の測定値を用いて作成した
検量線に基づき、測定試料溶液32に含まれる目的イオ
ンの活量を算出し、表示および印字などの出力を行う。
以上の計測及び制御は測定者の指示に基づき、計測制御
装置28によって自動的に遂行される。本実施例では本
発明による第1の実施例による陰イオン選択性電極を構
成部品として用いたが、もちろん本発明による他の陰イ
オン選択性電極を用いることもできる。また,陰イオン
選択性電極22,参照電極21,他種の電極33,フロ
ーセル23等の代わりに,第11の実施例によるマルチ
イオンセンサを用いても同様の生化学成分分析装置が構
成できる。
【0140】(実施例13) スティック型センサ 図1に、本発明による塩素イオンセンサの第13の実施
例を示す。円筒状のポリ塩化ビニル製センサ本体1の端
部にイオン感応膜4を接着し、センサ本体には内部溶液
2を満たしてある。銀/ハロゲン化銀からなる内部固体
電極3を内部溶液中に浸し、この内部電極3の金属部分
に信号取り出し用のリード線5の一端を接続し、他端を
外部測定回路に接続した。
【0141】(実施例14) フローセル型センサ 図5、図6に、本発明による塩素イオンセンサの第14
の実施例を示す。図5は、本実施例のフローセル型塩素
イオンセンサの斜視図である。直方体状のポリ塩化ビニ
ル製センサ本体6の一対の面に直径1mmの貫通孔7を
形成し、試料液の流路とする。また、本センサを複数個
重ねて使用する場合、センサの接合用に円柱状の凸部8
を貫通孔が形成された面の一方に設けた。凸部8の上面
には液洩れ防止用のOーリング9を設置した。
【0142】図6は、図5のa-a'線で切った断面図であ
る。センサ本体6の内部の一部に空洞10が設けられて
いる。空洞10の一方向に湾曲した内曲面11は流路
(貫通孔7)と交わっており、流路の側面に楕円形の小
孔12が形成されている。この小孔12を塞ぐように、
内曲面11に沿ってイオン感応膜4が流路側に凸になる
ように形成されている。イオン感応膜の流路の反対側の
空洞10には内部溶液2を満たしてある。銀/ハロゲン
化銀からなる内部固体電極3を内部溶液中に浸し、この
内部電極3の金属部分に信号取り出し用のリード線5の
一端を接続し、他端を外部測定回路に接続した。また、
本センサを複数個重ねて使用する場合、センサの接合用
に円柱状の凸部8に合うような凹部13を設けた。
【0143】この構造では、試料液を順次流路に導入す
ることにより、連続的にイオン濃度を測定できる。 (実施例15) 電界効果型トランジスタ 図7に、本発明による塩素イオンセンサの第15の実施
例を示す。本実施例では、シリコン基板14にソース1
5及びドレイン16を設け、シリコン基板表面を二酸化
シリコン17と窒化シリコン18の絶縁膜で被覆した電
界効果トランジスタにおいて、ソース15とドレイン1
6の間の窒化シリコン表面にゲート電極かつイオン感応
膜における電位検出電極として銀/ハロゲン化銀からな
る内部固体電極3を形成した。この内部電極3上にイオ
ン感応膜4を積層した。本実施例では塩素イオンセンサ
を半導体技術を用いて製作できるので、センサの小型
化、集積化が可能であり、また大量生産に適しているた
め安価なセンサを提供できる。
【0144】(実施例16) 固体イオンセンサ(中間層無し) 図8に、本発明による塩素イオンセンサの第16の実施
例を示す。円筒状のポリ塩化ビニル製センサ本体1の端
部にイオン感応膜4を接着、その上に銀/ハロゲン化銀
からなる内部固体電極3を接着した。この内部電極3の
金属部分に信号取り出し用のリード線5の一端を接続
し、他端を外部測定回路に接続した。
【0145】(実施例17) 固体イオンセンサ(中間層有り) 図9に、本発明による塩素イオンセンサの第17の実施
例を示す。円筒状のポリ塩化ビニル製センサ本体1の端
部にイオン感応膜4を接着、その上に高分子中間層19
を積層し、さらに銀/ハロゲン化銀からなる内部固体電
極3を接着した。この内部電極3の金属部分に信号取り
出し用のリード線5の一端を接続し、他端を外部測定回
路に接続した。高分子中間層はポリビニルアルコール、
塩化ナトリウム及び保水性有機化合物を重量比1:1:
2の割合で水を溶媒に用いて混合し、乾燥することで調
製した。保水性有機化合物にはグリセリンを使用した。
【0146】(実施例18)実施例13において作製し
た塩素イオンセンサを、Ag/AgClの外部参照電極
と飽和KClの塩橋を用いて接続し、外部参照電極とセ
ンサ間の電位差測定を行った。従来例の添加剤にはメチ
ルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDA)、
リガンドは「式(XV)」(x=12)を用いた。評価項
目は電極感度、対臭素イオン選択性、対重炭酸イオン選
択性である。各々の評価項目について電極感度の経時変
化を図10、対臭素イオン選択性及び対重炭酸イオン選
択性の経時変化を図11に示す。図11から明らかな様
に対Br-の選択係数は対数で約1であり、Cl-を基準
とするとBr-の応答性は対1桁大きい。従って、この
電極はBr-にも応答していることが理解できる。な
お、本発明の塩素イオンセンサの電位差測定を行う電池
全体は次のとおり表せる。
【0147】Ag/AgCl/飽和KCl/測定液/塩素イオン感応
膜/内部電解液/AgCl/Ag また、イオン感応膜組成を表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】「図10」及び「図11」の結果から、テ
トラフェニルホウ素アニオン及びその誘導体のアルカリ
金属塩を添加剤に用いることで、従来例の塩素イオンセ
ンサと比較して電極感度の長寿命化、対臭素イオン選択
性及び対重炭酸イオン選択性の向上を達成出来た。 (実施例19) 添加剤及びリガンドの変更 添加剤及びリガンドを変えて、実施例18において作製
した塩素イオンセンサを、Ag/AgClの外部参照電
極と飽和KClの塩橋を用いて接続し、外部参照電極と
センサ間の電位差測定を行った。評価項目は電極感度の
経時変化である。従来例の添加剤にはメチルトリドデシ
ルアンモニウムクロライドを用いた。可塑剤にはセバシ
ン酸ジオクチル、リガンドは「式(XV)の化合物(X=1
6)を用いた。請求項22における実施例では添加剤の
「式(XIII)」及び「式(XIV)」の割合は1:1とし
た。また、添加剤「式(VII)」のアルキル鎖長は12
とした。評価結果を表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】表2の結果より、テトラフェニルホウ素ア
ニオン及びテトラアルキルホウ素アニオンのアルカリ金
属塩を添加剤に用いることで、従来例の塩素イオンセン
サと比較して電極感度の長期安定化を達成出来た。 (実施例20) 可塑剤及びリガンドの変更 可塑剤及びリガンドを変えて、実施例13において作製
した塩素イオンセンサを、Ag/AgClの外部参照電
極と飽和KClの塩橋を用いて接続し、外部参照電極と
センサ間の電位差測定を行った。評価項目は対臭素イオ
ン選択性及び対重炭酸イオン選択性の経時変化である。
従来例の添加剤にはメチルトリドデシルアンモニウムク
ロライド、リガンドは 式(XV)
【0152】
【化73】
【0153】(式中、YはHgOCOCF3 、xは1〜
20を示す)で表される化合物で、xが16である化合
物を用いた。実施例19との違いは、可塑剤にオルトニ
トロフェニルドデシルエーテル(NPDE)を用いたこ
とである。請求項22における実施例では「式(XII
I)」及び「式(XIV)」の割合は1対1とした。評価結
果を表3に示す。
【0154】
【表3】
【0155】表3の結果より、添加剤にテトラフェニル
ホウ素アニオン及びテトラアルキルホウ素アニオンのア
ルカリ金属塩、可塑剤にオルトニトロフェニルドデシル
エーテル(NPDE)を用いることで、従来例の塩素イ
オンセンサと比較して電極感度、対臭素イオン選択性及
び対重炭酸イオン選択性の長期安定化を達成出来た。 (実施例21) 製膜温度の効果 本発明の塩素イオン感応膜を20℃及び30℃の恒温槽
中で製膜した。実施例1において作製した塩素イオンセ
ンサを、Ag/AgClの外部参照電極と飽和KClの
塩橋を用いて接続し、外部参照電極とセンサ間の電位差
測定を行った。評価項目は電極感度である。塩素イオン
感応膜組成を表4に示す。評価結果は表5に示す。
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】「表5」の結果より、20℃で製膜したセ
ンサに比べて30℃で製膜したセンサは電極感度の上昇
が観測された。次に、本発明の効果について説明する。
ここで、本発明との対比のために従来例を示す。第1の
従来例は、前記の文献Analytica Chimica Acta, 271, 1
35 (1993)に記載の公知の電極で,感応物質として[μ-
[4,5-ジメチル-3,6- ビス( オクチルオキシ) -1,2- フ
ェニレン]]ビス(トリフルオロアセテート-O) ジマーキ
ュリーを使用し,可塑剤としてDOS,イオン性添加剤と
してMTDAを用いたものである。第2の従来例は、やはり
前記の文献に記載の公知の電極で,可塑剤としてo-NPOE
を用いる点のみが第1の従来例と異なり,他は第1の従
来例と同様である。すなわちこれらの従来例は,感応膜
に配位化合物を加えない点が、またはジトリフロロ酢酸
水銀(II)に代表される、感応物質の水銀残基と共通の
構造を有する水銀化合物を感応膜に加えない点が、それ
ぞれ本発明と異なる。
【0159】図12に、上述の従来例と,本発明の第1
の実施例に基づく陰イオン選択性電極について、電極を
血清試料溶液中に浸せきして,陰イオンの一種である塩
素イオンに対するスロープ感度の経時変化を測定した結
果の一例を示した。図において、a,bはそれぞれ第
1,第2の従来例、cは本発明に基づく第1の実施例に
よる結果である。なお,図中には参考のために,本発明
による第1の実施例の他に,配位化合物の含有量をその
三分の一に減らした電極も作製し,その測定結果をdと
して加えて示した。即ち,dは配位化合物としてビチオ
フェンを感応物質に対するモル比で66%加えた点が,c
即ち第1の実施例と異なる。
【0160】図12から明らかなように、本発明の第1
の実施例に基づく陰イオン選択性電極およびその配位化
合物の含有量を減らした陰イオン選択性電極は、たとえ
血液試料溶液中に長時間浸せきしても,従来例と比較し
て感度が長期間感度が高く保たれ,安定性において優れ
ている。また,図には示さなかったが,一般に本発明に
基づくその他の陰イオン選択性電極も,対応する従来例
と比較すると,同様の特徴がある。
【0161】また、図13に、上述の第1及び第2の従
来例に基づく陰イオン選択性電極と、本発明の第2の実
施例に基づく陰イオン選択性電極、並びに本発明の第2
の実施例とほぼ同様であるが、ジトリフロロ酢酸水銀
(II)と3倍(即ち感応物質に対するモル比で300%)
含有する陰イオン選択性電極について、電極を水溶性試
料中に浸せきして、スロープ感度の経時変化を測定した
結果の一例を示した。図において、a,bはそれぞれ第
1及び第2の従来例、cは本発明に基づく第1の実施
例、及びdは同第2の実施例とほぼ同様であるが、ジト
リフロロ酢酸水銀(II)を3倍含有する陰イオン選択性
電極による結果である。図12から明らかなように、本
発明に基づく塩酸イオン選択性電極は、従来例と比較し
て、長時間感度が高く保たれ、安定性において優れてい
る。
【0162】この様に、本発明に基づく第2の実施例に
基づく陰イオン選択性電極は、従来例と比較して感度が
低下しにくく、長時間安定に使用できるという特徴があ
る。また、図に示さなかったが、本発明に基づく他の実
施例でも、対応する従来例と比較すると、同様の特徴が
ある。
【0163】
【発明の効果】本発明によれば,有機金属化合物を用い
る陰イオン選択性電極の感応膜において,金属に配位し
て錯体を形成する配位化合物に代表される化合物を加え
て用いることにより,血液試料に対する安定性を改善で
きる、という効果がある。さらに、本発明によれば,有
機水銀化合物を感応物質として用いる陰イオン選択性電
極の感応膜において,感応物質の水銀残基と共通の構造
を有する水銀化合物を加えて用い、さらに好ましくは可
塑剤として芳香族系の可塑剤を用いることにより、高選
択性の陰イオン選択性電極の安定性を改善できる、とい
う効果がある。
【0164】本発明によれば、イオンセンサとしての特
性である安定性が向上するため、長期間の使用が可能と
なり、高い信頼性が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例1の塩素イオンセンサの構
成断面図である。
【図2】本発明に基づく陰イオン選択性電極の構成断面
図。
【図3】本発明に基づくマルチイオンセンサの構成断面
図。
【図4】本発明第9の実施例に基づく陰イオン濃度を測
定する生化学成分分析装置の構成概略図。
【図5】本発明による実施例14の塩素イオンセンサの
斜視図。
【図6】本発明による実施例14の塩素イオンセンサの
断面図。
【図7】本発明による実施例15の塩素イオンセンサの
構成断面図。
【図8】本発明による実施例16の塩素イオンセンサの
構成断面図。
【図9】本発明による実施例17の塩素イオンセンサの
構成断面図。
【図10】本発明による実施例18の塩素イオンセンサ
の電極感度の経時変化を示す図。
【図11】本発明による実施例18の塩素イオンセンサ
の対臭素イオン選択性、対重炭酸イオン選択性の経時変
化を示す図。
【図12】本発明に基づく陰イオン選択性電極および従
来例による陰イオン選択性電極のスロープ感度の経時変
化を示す図。
【図13】本発明に基づく陰イオン選択性電極および従
来例による陰イオン選択性電極のスロープ感度の経時変
化を示す図。
【符号の説明】
1…センサ本体(電極ボディ) 2…内部溶液(電解
質) 3…内部電極 4,4' …イオン感応膜(感応
膜) 5…リード線 6…フローセル型センサ本体7…
貫通孔 8…凸部 9…Oーリング 10…空洞 11
…内曲面 12…小孔 13…凹部 14…シリコン基板 15…ソース 16
…ドレイン 17…酸化シリコン 18…窒化シリコン
19…高分子中間層 20…内部電解質層,21…参
照電極,22…陰イオン選択性電極、23…フローセ
ル、24…送液装置、25…弁、26…弁、27…サン
プリング機構、28…計測制御装置、29…参照電極
液、30…内部標準溶液、31…外部標準溶液、32…
測定試料溶液、33…他種の電極。a...第1の従来
例、b...第2の従来例、c...第1の実施例,d...配
位化合物の含有量を第1の実施例の1/3に減じた電
極。e...第3の従来例、f...第4の従来例、g...第
2の実施例,b...第2の実施例類似であるが、ジトリ
フロロ酢酸水銀(II)を3倍(即ち感応物質に対するモ
ル比で300%)含有する陰イオン選択性電極。

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機金属化合物を感応物質として含む陰イ
    オン選択性感応膜において,次式(I) 【化1】 〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリール基またはそ
    れらの誘導体からなる置換基あるいは水素、Zは非共有
    電子対を有する原子を示す〕で表される配位化合物を含
    むことを特徴とする陰イオン選択性感応膜。
  2. 【請求項2】有機金属化合物が次式(II) 【化2】 〔式中、R1 はアルキルまたはアルコキシル基、R2
    アルキル基、R3 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、
    硝酸、硫酸、燐酸、炭酸、酢酸またはトリフロロ酢酸残
    基を示す〕で表される有機水銀化合物であることを特徴
    とする請求項1記載の陰イオン選択性感応膜。
  3. 【請求項3】有機金属化合物が次式(III) 【化3】 〔式中、Rはアルキル基を示す〕で表される有機水銀化
    合物であることを特徴とする請求項1記載の陰イオン選
    択性感応膜。
  4. 【請求項4】配位化合物が,中性の配位化合物であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の陰イオン選択性感応膜。
  5. 【請求項5】配位化合物が,次式(IV) 【化4】 〔式中、R1 、R2 、R3 はアルキル基、アリール基ま
    たはそれらの誘導体からなる置換基あるいは水素、
    1 、Z2 は非共有電子対を有する原子をを示す〕で表
    される中性の多座配位化合物であることを特徴とする請
    求項1記載の陰イオン選択性感応膜。
  6. 【請求項6】配位化合物が,次式(V) 【化5】 〔式中、R1 、R2 、R3 、R4 はアルキル基、アリー
    ル基またはそれらの誘導体からなる置換基あるいは水
    素、Z1 、Z2 、Z3 、Z4 は非共有電子対を有する原
    子をを示す〕で表される中性の環状多座配位化合物であ
    ることを特徴とする請求項1記載の陰イオン選択性感応
    膜。
  7. 【請求項7】次式(VI) 【化6】 〔式中、nは6〜15である〕で表される有機化合物を
    可塑剤として更に含有することを特徴とする請求項1な
    いし6記載の陰イオン選択性感応膜。
  8. 【請求項8】次式(VII) 【化7】 〔式中、nは6〜18である〕で表される第4級アンモ
    ニウム塩化合物をイオン性添加剤として更に含有するこ
    とを特徴とする請求項1ないし8記載の陰イオン選択性
    感応膜。
  9. 【請求項9】陰イオン濃度を測定する固体イオンセンサ
    において,請求項1乃至8に記載の陰イオン選択性感応
    膜を用いることを特徴とする陰イオン選択性固体イオン
    センサ。
  10. 【請求項10】有機金属化合物と,式(I) 【化8】 〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリール基またはそ
    れらの誘導体からなる置換基あるいは水素、Zは非共有
    電子対を有する原子を示す〕で表される配位化合物と
    を,感応膜原液(キャスト液)中で混合反応させ,予め
    両者の錯体を形成してから感応膜を形成することを特徴
    とする,有機金属化合物を感応物質として感応膜中に含
    有する陰イオン選択性感応膜の製造方法。
  11. 【請求項11】有機金属化合物と,式(I) 【化9】 〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリール基またはそ
    れらの誘導体からなる置換基あるいは水素、Zは非共有
    電子対を有する原子を示す〕で表される配位化合物とを
    反応させて得られる錯体を,感応物質として感応膜中に
    含有してなることを特徴とする,陰イオン選択性感応
    膜。
  12. 【請求項12】有機金属化合物を感応物質として含む陰
    イオン選択性感応膜において,次式(VIII) 【化10】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基を示
    す〕で表される水銀化合物、次式(IX) 【化11】 〔式中、R8 、R9 、R10、R11はアルキル基、アルコ
    キシル基またはカルボキシルアルキル基、ZはS、Oま
    たはNを示す〕で表される水銀化合物または次式(X) 【化12】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基、
    5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エステル基
    (カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示す〕で
    表される水銀化合物を含むことを特徴とする陰イオン選
    択性感応膜。
  13. 【請求項13】有機金属化合物が、次式(II) 【化13】 〔式中、R1 はアルキルまたはアルコキシル基、R2
    アルキル基、R3 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、
    硝酸、硫酸、燐酸、炭酸、酢酸またはトリフロロ酢酸残
    基を示す〕で表される有機水銀化合物、次式(VIII) 【化14】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基を示
    す〕で表される有機水銀化合物、次式(X) 【化15】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基、
    5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エステル基
    (カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示す〕で
    表される有機水銀化合物または式(III) 【化16】 〔式中、Rはアルキル基を示す〕で表される有機水銀化
    合物であることを特徴とする請求項12記載の陰イオン
    選択性感応膜。
  14. 【請求項14】式(XI) 【化17】 〔式中、R5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エ
    ステル基(カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を
    示す〕で表される有機化合物または式(VI) 【化18】 〔式中、nは6〜15である〕で表される有機化合物を
    可塑剤としてさらに含有することを特徴とする請求項1
    2または13記載の陰イオン選択性感応膜。
  15. 【請求項15】式(VII) 【化19】 〔式中、nは12〜18である〕で表される有機化合物
    を添加剤としてさらに含有することを特徴とする請求項
    13または14記載の陰イオン選択性感応膜。
  16. 【請求項16】式(X) 【化20】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基、
    5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エステル基
    (カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示す〕で
    表される有機水銀化合物を含むことを特徴とする,陰イ
    オン選択性感応膜用の膜材料。
  17. 【請求項17】陰イオン濃度を測定する陰イオン選択性
    電極において,請求項1乃至8または請求項13乃至1
    5記載の陰イオン選択性感応膜を含むことを特徴とする
    陰イオン選択性電極。
  18. 【請求項18】マルチイオンセンサにおいて,請求項1
    乃至8または請求項13乃至15記載の陰イオン選択性
    感応膜を含む陰イオンセンサを内蔵することを特徴とす
    るマルチイオンセンサ。
  19. 【請求項19】陰イオン濃度を測定する生化学成分分析
    装置において、請求項13乃至請求項14に記載の陰イ
    オン選択性電極または請求項9記載の陰イオン選択性固
    体イオンセンサもしくは請求項18記載のマルチイオン
    センサ内蔵の陰イオンセンサを備えたことを特徴とする
    生化学成分分析装置。
  20. 【請求項20】陰イオン濃度の測定方法において、請求
    項13乃至14記載の陰イオン選択性感応膜を備えた陰
    イオン選択性電極または請求項9記載の陰イオン選択性
    固体イオンセンサもしくは請求項18記載のマルチイオ
    ンセンサ内蔵の陰イオンセンサを用いて、陰イオン濃度
    を測定することを特徴とする陰イオン濃度の測定方法。
  21. 【請求項21】式(X) 【化21】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基、
    5 、R6 はアルキル基、アルコキシル基、エステル基
    (カルボキシルアルキル基)またはニトロ基を示す〕で
    表される有機水銀化合物を感応膜中に含有する陰イオン
    選択性感応膜において,式(VIII) 【化22】 〔式中、R4 はハロゲン、チオシアン、過塩素酸、硝
    酸、硫酸、燐酸、炭酸またはトリフロロ酢酸残基を示
    す〕で表される水銀化合物と,式(I) 【化23】 〔式中、R1 、R2 はアルキル基、アリール基またはそ
    れらの誘導体からなる置換基あるいは水素、Zは非共有
    電子対を有する原子を示す〕で表される有機化合物と
    を,感応膜原液(キャスト液)中で混合反応させること
    により,式(X)で表される有機水銀化合物を感応膜中
    に形成することを特徴とする,陰イオン選択性感応膜の
    製造方法。
  22. 【請求項22】塩素イオン感応物質に有機水銀化合物を
    用い、可塑剤及び添加剤を含む高分子支持膜型の塩素イ
    オン感応膜と、上記感応膜を設けた内部溶液収容容器と
    この容器内に配置された内部電極を備えた塩素イオンセ
    ンサにおいて、上記添加剤が、式(XII) 【化24】 〔R1 〜R5 はその一部または全部が H, Cl, F, CF3,
    CCl3を示す〕で表される硼素化合物、テトラフェニルホ
    ウ素アニオン及びその誘導体のアルカリ金属塩、式(XI
    II) 【化25】 〔R6 〜R9 はCn2n+1(nは1〜12を示す)、X
    はNa,Kを示す〕で表される硼素化合物、式(XIV) 【化26】 〔R10〜R13はCn 2n+1, (nは1〜12を示す)で
    表されるアルキル基またはその一部または全部が Cl,
    F, CF3, CCl3 で置換されたフェニル基、XはNa,K
    を示す〕で表される硼素化合物、またはこれらの混合物
    であることを特徴とする塩素イオンセンサ。
  23. 【請求項23】請求項22記載の塩素イオンセンサにお
    いて、その感応膜中に塩素イオン感応物質を2〜3重量
    %、可塑剤を64〜66重量%、上記添加剤を0.02
    〜0.04重量%、高分子物質を31〜34重量%含有
    することを特徴とする塩素イオンセンサ。
  24. 【請求項24】請求項22に記載の塩素イオン感応膜が
    存在することを特徴とする電界効果型トランジスタ。
  25. 【請求項25】請求項22に記載の塩素イオン感応膜
    を、試料流路の壁面に設けられた小孔に前記流路の内面
    に向かって凸になるように一方向に湾曲した曲率をつけ
    て、少なくとも一部を露出させて配置したことを特徴と
    する塩素イオンセンサ。
  26. 【請求項26】塩素イオン感応物質に有機水銀化合物を
    用い、可塑剤及び添加剤を含む高分子支持膜型の塩素イ
    オン感応膜と、少なくとも1種類の金属から成る導電性
    層をその金属の不溶性塩の層と接触させた金属/金属塩
    である内部固体電極とからなる固体イオンセンサにおい
    て、上記塩素イオン感応膜が、請求項22乃至23に記
    載の塩素イオン感応膜から構成されることを特徴とする
    塩素イオンセンサ。
  27. 【請求項27】塩素イオン感応物質に有機水銀化合物を
    用い、可塑剤及び添加剤を含む高分子支持膜型の塩素イ
    オン感応膜と、少なくとも1種類の金属から成る導電性
    層をその金属の不溶性塩の層と接触させた金属/金属塩
    である内部固体電極と、イオン感応膜と内部固体電極の
    間に設けた高分子中間層とからなる固体イオンセンサに
    おいて、上記塩素イオン感応膜が、請求項22乃至23
    に記載の塩素イオン感応膜から構成されることを特徴と
    する塩素イオンセンサ。
  28. 【請求項28】請求項22乃至23に記載の塩素イオン
    感応膜を25〜40℃の温度下で製膜することを特徴と
    する塩素イオン感応膜の製法。
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JP2016061694A (ja) * 2014-09-18 2016-04-25 株式会社日立ハイテクノロジーズ 流路一体型センサ
EP3023776A1 (en) * 2013-07-19 2016-05-25 Hitachi High-Technologies Corporation Anion sensor

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