JP7441715B2 - 重炭酸イオン感応膜 - Google Patents

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Description

本発明は、重炭酸イオン(炭酸水素イオン)の濃度測定を行うためのイオン選択性電極において有用な重炭酸イオン感応膜に関する。
近年、イオン選択性電極を医療用に応用し、血液や尿などの生体液中に含まれるイオンの定量を行う試みが盛んに行われている。これは、生体液中の特定のイオン濃度が生体内の代謝反応と密接な関係があることに基づいて、該イオン濃度を測定することにより、種々の疾病の診断を行うものである。現在、生体液中のナトリウムイオン、カリウムイオン、クロルイオンの濃度の測定にイオン選択性電極が応用されており、これらのイオン濃度は簡便かつ迅速に測定されている。一般に、イオン選択性電極は、図1に示すように、試料液に浸漬する部分(一般には底部)に境界膜としてイオン感応膜12を設けて構成された筒状容器11中に、内部電解液13及び内部基準電極14を設けることにより基本的に構成される。
かかるイオン選択性電極を用い、溶液中のイオンの活量の測定を行うためのイオン測定装置の代表的な構造を図2に示す。すなわち、イオン選択性電極21は塩橋22とともに試料溶液23に浸漬され、塩橋の他の一端は比較電極24と共に飽和塩化カリウム溶液26に浸漬される。両電極間の電位差はエレクトロメーター25で読み取られ、該電位差より試料溶液中の特定のイオン種のイオン活量を求めることができる。このようなイオン測定装置に用いるイオン選択性電極の性能は、それに用いるイオン感応膜の性能によって大きく左右される。
生体液、特に血液中に存在する重要なイオンの1つとして重炭酸イオンがある。重炭酸イオンは、生体の呼吸および代謝機能の状態を把握するための重要な因子であることから、該イオンの濃度を測定することにより、糖尿病、腎疾患などの種々の診断において有用な情報を得ることができる。現在、重炭酸イオンの濃度は、酵素を用いた吸光度法(以下、酵素法と呼ぶ)、あるいは、試料のpH、炭酸ガス分圧(PCO )の測定値から次式を用いて算出する方法(以下、血液ガス測定法と呼ぶ)により測定されている。
pH=6.1+log{[HCO ]/0.03・PCO
酵素法は、溶液状の試薬に血液検体を加え、一定温度に保った時に、生成する色素の量を分光光度計により測定する方法であり、数分という長い時間を要する。血液ガス測定法は、測定に30~60秒程度の時間がかかる。また、上述のナトリウムイオン、カリウムイオン、クロルイオン選択性電極と異なる測定法を適用する必要があり、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および重炭酸イオン濃度測定は別の機構の装置にて測定する必要があった。
一般に、イオン選択性電極では、測定に要する時間を数秒程度に短縮することが可能であり、また、目的とするイオン種に対応するイオン選択性電極を併設することにより、それぞれのイオン濃度を同時に測定することも可能である。このような利点があることから、従来から、重炭酸イオンを選択的に検出するための陰イオン感応膜として種々の膜が提案されている。
例えば、(a)ポリ塩化ビニルなどの重合体に、4級アンモニウム塩などの脂溶性陽イオンの塩、トリフルオロアセチル-p-アルキルベンゼンなどのトリフルオロアセトフェノン誘導体及び可塑剤を混合して製膜することにより得られる膜、(b)ポリ塩化ビニルなどの重合体に、トリオクチルティンクロライドなどの有機錫化合物と可塑剤及び場合により更にトリフルオロアセチル-p-アルキルベンゼンなどのトリフルオロアセトフェノン誘導体を混合して製膜することにより得られる膜、(c)芳香族ボロン酸ジエステル化合物を含む組成物等の膜が知られている。
上記(a)のタイプの陰イオン感応膜を用いたイオン選択性電極としては、例えば、ワイズ等が開示した電極(特許文献1参照)、グリーンバーグ等が報告した電極(非特許文献1参照)が挙げられる。
また、上記(b)のタイプの陰イオン感応膜を用いたイオン選択性電極としては、オーシュ等が報告した電極(非特許文献2参照)、牛沢等が開示した電極(特許文献2参照)などが挙げられる。
また、上記(c)のタイプの陰イオン感応膜を用いたイオン選択性電極としては、平等が開示した電極(特許文献3,4参照)が挙げられる。
米国特許第3723281号明細書 特開平4-204368号公報 国際公開第2000/07004号 特開平11-323155号公報
J.Greenberget,et al.,Anal.Chim.Acta.,1982,141,p57-64 U.Oesch,et al.,J.Chem.Soc,Faraday Trans.1986,1,82,p1179-1186
しかしながら、上記(a)のタイプの陰イオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、硝酸イオン、チオシアン酸イオン等の脂溶性のイオンに対する選択性が悪いことが知られている。また、電位応答が比較的遅く(1分程度)、膜中のイオン感応物質が徐々に溶液中に溶解するため、電極寿命が短いという欠点がある。また、上記(b)のタイプの陰イオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、膜中に有機錫化合物を含むため、クロルイオンに対する選択性が悪いことが知られている。また、膜中のイオン感応物質が徐々に溶液中に溶解するため、電極寿命が短いという欠点がある。また、上記(c)のタイプの陰イオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、種々のイオンに対する選択性は良好であるものの、芳香族ボロン酸ジエステル化合物が測定用緩衝液に含まれるアミン化合物と強く相互作用し、結果として十分な電位応答が得られないことが分かっている。
そのため、生体液中のクロルイオン等の妨害を受けることなく重炭酸イオンを高選択的に測定することが可能であり、かつ緩衝液等に含まれるアミン化合物の妨害の小さいイオン選択性電極を実現するための重炭酸イオン感応膜の開発が望まれている。
本発明者等は、かかる課題を解決し得る重炭酸イオン感応膜を開発すべく鋭意研究を重ねてきた。有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を、可塑剤に分散された形態で含有することを特徴とする重炭酸イオン感応膜を、陰イオン感応膜として用いることにより、溶液中の重炭酸イオンを高選択的に、かつアミン化合物の妨害の小さい測定ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の重炭酸イオン感応膜は、
(1) 有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンとの塩を、可塑剤に分散された形態で含有することを特徴とする、重炭酸イオンに起因して発生する電位により前記重炭酸イオンの濃度を測定する重炭酸イオン感応膜であり、また、
(2) 前記有機オニウムカチオンが、有機アンモニウムカチオン、または有機ホスホニウムカチオンである、上記(1)に記載の重炭酸イオン感応膜であり、さらに、
(3) 前記疎水性有機アニオンが有機ボレートアニオン、カルボキシレートアニオン、有機スルホネートアニオン、有機ホスホネートアニオン、またはフェノキシドアニオンである、上記(1)または(2)に記載の重炭酸イオン感応膜であり、また、
(4) 前記有機ボレートアニオンがテトラアリールボレートアニオン、またはテトラヘテロアリールボレートアニオンである、(3)に記載の重炭酸イオン感応膜であり、
(5) 前記可塑剤に分散された有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩が重合体に含まれることを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の重炭酸イオン感応膜である。
本発明の重炭酸イオン感応膜を用いることにより、臨床検査の分野において問題となるクロルイオン、アミン等の妨害イオンの影響が小さく、短時間で大量の検体が測定でき、電極寿命の長いイオン選択性電極を提供することができる。
イオン選択性電極を示す図 イオン測定装置の代表的な構造を示す図
以下に本発明の詳細を説明するが、本発明はこれらの説明に限定されるものではない。
(有機オニウムカチオン)
本発明の有機オニウムカチオンとは、窒素、リン、ヒ素等の窒素族元素(第13族元素)を含有し、該原子に正電荷を有する有機化合物をいう。ここで有機化合物とは、炭素、水素、窒素、硫黄、酸素を主たる構成元素として成る化合物をいう。
有機オニウムカチオンの一般的な構造としては、(1)窒素族元素に1~4つの疎水性有機基が結合されたもの、(2)窒素族元素が環状芳香族の構成元素として含まれるものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここで、疎水性有機基とは、炭素、水素、窒素、硫黄、酸素を主たる構成元素としており、且つ水との親和性が低く、この基を有する化合物に水不溶性を与える基のことである。
その具体的な例を挙げれば以下のとおりである。上記(1)の例としては、疎水性有機基が疎水性アルキル基であり、窒素族元素に、炭素数が1以上の疎水性アルキル基が1~4つ結合した化合物が挙げられる。ここで、疎水性アルキル基とは炭素と水素が主たる構成成分であり、この基を有する化合物に水不溶性を与える基のことである。窒素族元素に結合する基の数が1~3つの場合には、水素イオン(H)が付加した形態で有機オニウムカチオンとなる。アルキル基は直鎖アルキル基であっても分岐アルキル基であってもよい。また、ピロリジン環等のように環状の飽和炭化水素であってもよい。さらに、これらアルキル基の一部が2重結合、3重結合に置き換わった基や、アルキル基の一部がヒドロキシル基、ケト基等の官能基で修飾された基であってもよい。
上記疎水性アルキル基の炭素数が8以上であると、水への溶解性が小さくなり、本発明の重炭酸イオン感応膜から溶出が抑制される。その結果、重炭酸イオン選択性電極とした時の電位応答が安定である。また、入手の容易さからは炭素数が30以下の化合物が一般的に用いられる。よって、炭素数8~30のアルキル基を有する化合物が好適に用いられる。更に好適には炭素数12~30のアルキル基が、また更に好適には炭素数16~30のアルキル基を有する化合物が好適に用いられる。
更に、上記(1)の別の例として、疎水性有機基が芳香環を含む基であってもよい。芳香環が単独で用いられてもよいし、疎水性アルキル基の途中に芳香環が含まれる、あるいはアルキル基の水素の一つまたは複数が芳香環と置換されていてもよい。芳香環の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。もちろん、これらの芳香環はアルキル基、ハロゲノ基、ニトロ基等を含んでいてもよい。
上記(1)の更に別の例として、疎水性有機基が環を形成していてもよい。すなわちアゼチジニウムイオン等の窒素族元素を含み芳香族ではない4員環のオニウムカチオン、ピロリジニウムイオン、オキサゾリニウムカチオン等の窒素族元素を含み芳香族ではない5員環のオニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン等の窒素族元素を含み芳香族ではない6員環のオニウムカチオン、ホモピペラジニウムイオン、アゼパニウムイオン等の窒素族元素を含み芳香族ではない7員環のオニウムカチオン等がその例として挙げられる。
窒素族元素に結合した疎水性有機基の数は、その疎水性が高くなり水への溶解性が小さくなることから、多い方が良い。窒素族元素に結合した疎水性有機基が3つまたは4つの化合物が好適に用いられ、更に好適には疎水性有機基が4つの化合物が好適に用いられる。また、窒素族元素に結合した複数の疎水性有機基は、互いに同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。
上記(1)の一般的に用いられる化合物の例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、トリドデシルメチルアンモニウムカチオン、テトラオクダデシルアンモニウムカチオン、トリオクタデシルメチルアンモニウムカチオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムカチオン、オクタデシルトリメチルアンモニウムカチオン等を挙げることができる。また、芳香族ではない環状の有機オニウムカチオンの例としては、1-メチル-3-ドデシルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムカチオン等がある。
上記(2)の例としてはイミダゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、キノリニウムカチオンなどのように、芳香環に窒素族元素が構成成分として含まれるユニットを有する化合物が挙げられる。N-アルキルイミダゾリウムカチオン、N-アルキルピリジニウムカチオン、N-アルキルピリミジニウムカチオン、N-アルキルピラジニウムカチオン、N-アルキルキノリニウムカチオンなどをその例として挙げることができる。
(疎水性有機アニオン)
本発明の疎水性有機アニオンとは、疎水性の有機化合物でありアニオン性を示すものである。
本発明の疎水性有機アニオンの「疎水性」とは、ナトリウム塩とした時の水への溶解度が0~0.01g/100mlのものを指す。溶解度がこの値の範囲にあると、本発明の重炭酸イオン感応膜からの疎水性有機アニオンの溶出が抑制され、安定な電位応答を与えるため好適である。
その例を挙げれば、有機ボレートアニオン、カルボキシレートアニオン、有機スルホネートアニオン、有機ホスホネートアニオン、フェノキシドアニオン、イミンアニオンなどから成る疎水性有機アニオンがあるが、これらの例に限定されるものではない。
有機ボレートアニオンとは、4つの基と結合した有機ホウ素化合物であり、ホウ素が負に荷電した化合物である。有規ボレートアニオンの例を挙げれば、いずれも疎水性のテトラアリールボレートアニオン、テトラヘテロアリールボレートアニオンなどがある。
テトラアリールボレートアニオンの例を示せば、テトラフェニルボレートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-クロロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボレートアニオン、クロロフェニルトリフェニルボレートアニオン、ビス(クロロフェニル)ジフェニルボレートアニオン、トリス(クロロフェニル)フェニルボレートアニオン等が挙げられる。
テトラヘテロアリールボレートアニオンの例を示せば、テトラ(4-ピリジニル)ボレートアニオン、テトラ(3-チエニル)ボレートアニオン等が挙げられる。
カルボキシレートアニオンの例を挙げれば、ドデシルカルボキシレートアニオン、ヘキサデシルカルボキシレートアニオン、オクタデシルカルボキシレートアニオン等の長鎖アルキルカルボキシレートアニオン類、4-ヘキシルベンゾエート、2-ナフトエートなどの芳香族カルボキシレートアニオン類、ヘプタデカフルオノノナカルボキシレートアニオン、ノナデカフルオロデカカルボキシレートアニオン等のフルオロアルキルカルボキシレートアニオンが挙げられる。
有機スルホネートアニオンの例を挙げれば、ドデシルスルホネートアニオン、オクタデシルスルホネートアニオン等のアルキルスルホネートアニオン類、オクチルベンゼンスルホネートアニオン、ドデシルベンゼンスルホネートアニオン、オクタデシルベンゼンスルホネートアニオン等のアルキルベンゼンスルホネートアニオン類、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸等のフルオロアルキルスルホン酸類等が挙げられる。
有機ホスホネートアニオンの例を挙げれば、モノドデシルホスホネートアニオン、モノオクタデシルホスホネートアニオン等のモノアルキルホスホネートアニオン類、4-ヘキシルベンゼンホスホネートアニオン、2-ナフタレニルホスホネートアニオン等のアルキル芳香族ホスホネートアニオン等が挙げられる。
フェノキシドアニオンの例を挙げれば、4-ドデシルフェノキシドアニオン、4-オクタデシルフェノキシドアニオン、4-ドデシル-2-メチルフェノキシドアニオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4―メチルフェノキシドアニオン、2-ナフトキシドアニオン等が挙げられる。
これらの疎水性有機アニオンも、上述の有機オニウムカチオンと同様に、疎水性が高く水中への溶解度が小さいほど、イオン選択性電極の重炭酸イオン感応膜として用いたときの、電位の安定性が高いため好適である。カルボキシレートアニオン、有機スルホネートアニオンの場合には、アルキル基の一部の水素原子がフッ素原子に置き換わったフルオロアルキル基を有する化合物が容易に入手できるため、好適に使用できる。
(有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩)
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩は重炭酸イオンに感応して、電位を発生せしめるために用いられる。
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩は市販の化合物を使用することができるが、有機オニウムカチオンの無機アニオンとの塩と、疎水性有機アニオンの無機カチオンとの塩とから合成することもできる。
有機オニウムカチオンの無機アニオンとの塩の例を示せば、容易に入手できる塩として、直鎖アルキルアンモニウムカチオンとハロゲンアニオンの塩が一般的に用いられる。さらに具体的には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、トリドデシルメチルアンモニウムクロリド、テトラオクダデシルアンモニウムクロリド、トリオクタデシルメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリドなどの無機アニオンがクロルイオンである塩、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、トリドデシルメチルアンモニウムブロミド、テトラオクダデシルアンモニウムブロミド、トリオクタデシルメチルアンモニウムブロミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどの無機アニオンが臭素イオンである塩、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、トリオクチルメチルアンモニウムヨージド、テトラオクチルアンモニウムヨージド、トリドデシルメチルアンモニウムヨージド、テトラオクダデシルアンモニウムヨージド、トリオクタデシルメチルアンモニウムヨージド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムヨージド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヨージドなどの無機アニオンがヨウ素イオンである塩を挙げることができる。
さらに一般的に用いられる有機オニウムカチオンの無機アニオンとの塩の別の例として、1-ドデシルピリジニウムクロリド、1-メチル-3-ドデシルイミゾロリウムブロミド等の環状アンモニウムカチオンとハロゲンアニオンの塩が、ホスホニウムカチオンとハロゲンアニオンの塩としてテトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド等のホスホニウムカチオンとハロゲンアニオンの塩も挙げることができる。
疎水性有機アニオンの無機カチオンとの塩の例を示せば、容易に入手できる例として有機ボレートアニオンとアルカリ金属の塩、カルボキシレートアニオンとアルカリ金属の塩、有機スルホネートアニオンとアルカリ金属の塩、有機ホスホネートアニオンとアルカリ金属の塩、フェノキシドアニオンとアルカリ金属の塩が挙げられる。有機ボレートアニオンとアルカリ金属の塩の具体例としては、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム、テトラキス(4-フルオロフェニル)ホウ酸カリウム、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウムが、有機スルホネートアニオンとアルカリ金属の塩の具体例としては、1-ドデカンラスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、1-オクタデカンスルホン酸ナトリウムが、有機ホスホネートアニオンとアルカリ金属の塩としては、リン酸モノドデシルナトリウムが、フェノキシドアニオンとアルカリ金属の塩として4-ドデシルフェノキシドナトリウムなどを挙げることができる。
合成方法の一例を示せば以下のとおりである。すなわち、有機オニウムカチオンの無機アニオンとの塩を、非水溶性溶媒に溶解した溶液と、疎水性有機アニオンの無機カチオンとの塩を非水溶性溶媒に溶解した溶液を用意し、両者を混合する。次に、この非水溶性溶媒の混合溶液と水を分液ロート等に入れ、激しく浸透し、無機アニオンと無機カチオンを含む塩として水中に抽出する。この後、非水溶性有機溶媒のみを取り出し、非水溶性有機溶媒を減圧留去等により除去することにより、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩のみを得ることができる。
合成後に不純物として、原料である有機オニウムカチオンの無機アニオンとの塩、あるいは、疎水性有機アニオンの無機カチオンとの塩が微量に残存することもある。これらの塩が残存量は少ないことが望ましいが、重炭酸イオン感応膜の性能を制御するために若干量を残しておくこともある。
有機オニウムカチオンの無機アニオンとの塩が微量に残っている場合には、アニオンに感応する能力が高められ、検出下限が向上することがある。あるいは、疎水性有機アニオンの無機カチオンとの塩が微量に残っている場合には、カチオンに感応する能力が高められる。また、残存する塩の性質に応じて、その機構の詳細は不明であるがイオン選択性が変化することもあり、これを利用して重炭酸イオン感応膜の性能をコントロールすることができる。
本発明の有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩として、式(1)で表わされる塩がある。すなわち、有機オニウムカチオンとしてトリドデシルメチルアンモニウムカチオン、疎水性有機アニオンとしてテトラキス(4フルオロフェニル)ボレートアニオンから成る塩として得られる、N,N-ジドデシル-N-メチルドデカン-1-アミニウム テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート(1-)である。この塩は本発明の重炭酸イオン感応膜の、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩として、好適に用いることができる。
本発明の式(1)で表わされる塩は、一般的に知られる方法にて合成することができるが、その一例を示せば以下のとおりである。すなわち、トリドデシルメチルアンモニウムクロリドとテトラキス(4-フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウムを酢酸エチル等の非水溶性有機溶媒に溶解させ、この溶液を同体積の水と共に分液ロートに投入する。十分に振とうした後に酢酸エチル溶液のみを取り出し、減圧留去などにより酢酸エチルを除去し、目的とする式(1)で表わされる塩を得ることができる。
(可塑剤)
本発明において可塑剤とは、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を、その内部に分散させることができる、難揮発性の有機溶媒のことを言う。
本発明の重炭酸イオン感応膜は測定対象の溶液と接触した状態で測定される。測定対象としては主に水溶液が用いられることから、重炭酸イオン感応膜が測定の間に溶解消失しないためには、可塑剤は水への溶解性が小さいことが望ましい。具体的には水100gに対して溶解し得る可塑剤の重量が0.01g未満であることが望ましい。
また、重炭酸イオン感応膜の保管中に、可塑剤が揮発によって消失しないために、可塑剤は難揮発性であることが望ましい。
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩の、可塑剤への溶解度に特に制限は無いが、一般に、可塑剤100mlに対して0.001mmolから10molの範囲で溶解させて用いる。
また、可塑剤に分散された有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を、本発明の重合体に含める場合には、可塑剤は重合体と親和性があることが望ましい。ここで、親和性とは、重合体が可塑剤中に分散し得ること、または、重合体表面での可塑剤の接触角が90度よりも小さいことをいう。
可塑剤の具体例を示せば、有機エステル化合物、有機エーテル化合物等があげられる。
有機エステル化合物としては、アジピン酸ブチル、アジピン酸オクチル、セバシン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル(以下、DOSと略すこともある)、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸ジオクチル等が、有機エーテル化合物としてはo-ニトロフェニルオクチルエーテル(以下、NPOEと略すこともある)、p-ニトロフェニルドデシルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、疎水性が高いため水中に溶出せず、かつ、誘電率が高く本発明の塩の溶解性の高さから、セバシン酸ジオクチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸ジオクチル、o-ニトロフェニルオクチルエーテル、p-ニトロフェニルドデシルエーテルが好ましい例として挙げられる。
本発明の重炭酸イオン感応膜は、平面の膜状物として使用される。有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンが分散された可塑剤の片方の面を測定対象の試料溶液に、もう片方の面を内部電解質に接触させる。本発明の重炭酸イオン感応膜を用いて作製されるイオン選択性電極は、複数の試料溶液を測定できることが望ましい。即ち、本発明の重炭酸イオン感応膜の片面は、最初の試料溶液に浸漬された後に、水洗され、その後に2番目の試料溶液に浸漬される。そのため、水流等による変形、脱離が起きることがある。よって、耐久性の観点からは、粘度が高い可塑剤を用いるのが好適である。
(重合体)
本発明において、重合体を、本発明の重炭酸イオン感応膜に物理的強度を与えるために用いてもよい。
重合体が可塑剤に溶解し得る場合には、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩が分散された可塑剤中に、更に重合体を分散させて用いる。
可塑剤中の重合体の濃度は、特に制限無く任意に設定することができるが、本発明の重炭酸イオン感応膜が、実用上困難を生じない強度となるよう設定するのが一般的である。その具体的な例を示せば、たとえば可塑剤としてフタル酸ジオクチル、重合体としてポリ塩化ビニルを用いる場合には、フタル酸ジオクチルとポリ塩化ビニルの重量比率は0.1:100~1000:100の範囲で用いられるのが一般的である。
可塑剤の比率が小さければ、重炭酸イオンに感応する有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩の量が少なくなるので、重炭酸イオン感応膜として用いたときの感度が低くなる。また、可塑剤の比率が大きい場合には、膜の物理的強度が小さくなるため、変形、破れるなどにより、重炭酸イオン感応膜としての寿命が短くなる場合がある。
重合体が可塑剤中に分散し難い場合には、重合体の多孔膜をあらかじめ形成させておき、その多孔膜に有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を分散させた可塑剤を含浸させることにより、本発明の重炭酸イオン感応膜を作成することができる。
好適に用いることのできる重合体の例を示せば以下の通りである。すなわち、可塑剤に分散させて用いられる例として、一般的に知られる直鎖状重合体を挙げることができる。すなわち、その具体的な例を示せば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリ塩化ビニルなどの単一のモノマーから得られる重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、エチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン--スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン--スチレンブロック共重合体などの複数のモノマーを共重合して得られる重合体を挙げることができる。
これら重合体の重合度は、得られる膜が必要とする強度、可塑剤への分散性を勘案して決めることができる。重合度が小さければ膜の強度は低くなるが可塑剤に分散しやすくなる。重合度が高ければ膜の強度は高くなるが可塑剤に分散し難くなる。そのため、各重合体と可塑剤の組み合わせによりが、その好適な重合度の範囲は重合体によって異なるため、好適な範囲の具体的な範囲を示すことはできない。一般的には重合度が100~1000の範囲のものが好適に用いられることが多い。
可塑剤に分散し難い重合体の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(以下、PTFEと略すこともある)等の直鎖状重合体ではあるが難溶性の重合体、スチレン-ジビニルベンゼン重合体等の架橋された重合体を挙げることができる。
(重炭酸感応膜の形成方法)
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を可塑剤に分散された形態で含有させる方法としては、公知の方法を何ら制限無く用いることができる。その一般的な方法を示せば、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を可塑剤中に投入し撹拌する方法である。有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩の可塑剤への溶解速度が遅い場合には、両者をそれぞれ溶媒に溶解しておいた後に混合し、さらに減圧留去等により溶媒を除去する方法等も用いることができる。
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩の可塑剤中の濃度は、小さければ重炭酸イオン感応膜として用いた時の感度が低くなるため、最小値が存在する。具体的な値は、用いる可塑剤や、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩の種類により異なる。その一般的な値を示せば、可塑剤100mlに対して0.5mmol以上、好ましくは1mmol以上、更に好ましくは2mmol以上である。濃度の上限については、塩の種類によって可塑剤への溶解度が異なるので限定はできないが、一般的な濃度を示せば、可塑剤100mlに対して50mmol以下である。
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を分散させた可塑剤は、中空管内に液膜として位置させることにより、本発明の重炭酸イオン感応膜として用いることができる。
その構成方法の一例を示せば、内径1~2mm程度の中空管を、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を分散させた可塑剤に接触させ、毛細管現象により中空管に取り込ませ、液膜を形成させる。
重合体を用いる場合であり、かつ重合体が可塑剤に分散し得る場合には、以下のようにして膜状物を得るのが一般的である。すなわち、溶媒に重合体、可塑剤、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を溶解あるいは分散させ、これをシャーレ等の容器に流延させた後に、溶媒を揮発させるという方法である。
重合体を用いる場合であり、重合体が可塑剤に分散し難い場合には、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を分散させた可塑剤を、多孔質膜として形成させた重合体に含浸させて膜状物として得ることもできる。多孔質膜として形成させた重合体は市販のメンブレンフィルターとして一般的に入手できる。あるいは、重合体を多孔質膜として形成させ用いることもできる。その方法としては、一般的な方法を用いることができるが、その一例を示せば以下のとおりである。
重合体を溶媒に分散させ分散液とし、さらに固体状態では重合体と混じり合わない、第2の重合体を分散させる。この溶液をシャーレ等に流延し、溶媒を蒸発させると、重合体中に第2の重合体が層分離し、第2の重合体が微分散した膜状物が得られる。この膜状物を、第2の重合体のみが分散する溶媒にて洗浄すると、重合体が多孔質膜として得られる。このような重合体、第2の重合体の具体例を示せば、重合体としてポリ塩化ビニル、第2の重合体としてポリエチレングリコール、溶媒の具体例としてはクロロホルム、第2の重合体のみが分散する溶媒の具体例としては水を挙げることができる。
(重炭酸測定用イオン選択性電極の構成方法)
本発明の重炭酸イオン感応膜を用いて、イオン選択性電極を構成するための方法の一例を挙げれば以下のとおりである。
重合体を用いない液膜の場合は、上記のように中空管中に液膜を形成させた後に、液膜の一端に内部電解液を接触させる。さらに内部電解液に内部基準電極を挿入し電極とする。
重合体を用いる膜の場合には、筒状容器(図1 11)の一端に重炭酸イオン感応膜を接着剤等にて接着し、容器内に内部電解液を満たし、さらに内部基準電極を挿入し電極とする。
(重炭酸イオンの定量方法および性能評価方法)
イオン選択性電極を用いてイオンの活量(濃度)の測定を行う方法は、図2を用いて上述したとおりであるが、ここで更に詳細に述べる。測定対象溶液の濃度を測定するためには、あらかじめ既知濃度の溶液を測定し、濃度と電位差の関係を求めておき検量線を作成する必要がある。
検量線は、Nernst式により与えられるが、濃度の対数と電位差(ΔE)が直線関係にある。
ΔE=(定数)+ (Slope)×log(濃度)
ここで(定数)、(Slope)は定数であり、電極膜ごとに異なる値をとる。(Slope)はイオン選択性電極の性能を表わす値でもある。理論値は-59(25℃のとき)である。
イオン選択性電極の性能を表す値としては、選択性倍率がある。妨害イオン1mmol/Lが、重炭酸イオン濃度として5mmol/Lに相当する電位差を与える場合、以下のように表記し、選択性倍率5倍と呼ぶ。
HCO3、X =5 (Xは妨害イオンを表わす)
たとえば、クロルイオンの選択性倍率(重炭酸イオンのクロルイオンに対する選択性倍率とも記載されることがある)が0.1であれば
HCO3、Cl =0.1
と表記する。
本発明の重炭酸イオン感応膜を臨床検査に適用する場合には、血清中で重炭酸イオンの4倍以上の濃度で存在するクロルイオンの妨害が小さいことが望ましい。そのため、重炭酸イオンのクロルイオンに対する選択性倍率は1未満であることが望ましい。
また、血清中にはタンパク質が存在し、その表面のアミンが電極応答の妨害となることがある。その妨害の程度を評価するために、一般にアミン化合物の水溶液に対する応答が評価される。その評価方法の一例を示せば、アミン化合物の水溶液を測定した時の選択性倍率による方法がある。さらにその具体的な例を示せば、アミン化合物としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの水溶液を測定した時に、その選択性倍率が100倍未満であり、更に好適には10倍未満である。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)イオン選択性電極の作製
有機オニウムカチオンとしてトリドデシルメチルアンモニウム、疎水性有機アニオンとしてテトラキス[3、5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンで構成される塩を、可塑剤であるo-ニトロオクチルフェニルエーテル(NPOE)に、それぞれ表1にて示す量にて加えた後に撹拌して溶解させた。この溶液内に、内径1mm、長さ10mmのガラス管の一旦を挿入し、毛管現象により該溶液を該ガラス管の一端に管内の長さが1mm程度となるよう導入し、本発明の重炭酸イオン感応膜とした。反対側の端より注射針を用いて、内部電解液である100mmol/LのNaCl水溶液を、水溶液と上記NPOE溶液とが接触するように満たした。さらに該NaCl水溶液に直径0.3mmのAg線(表面にAgClを形成させてあり内部基準電極として機能する)を挿入し、イオン選択性電極とした。
(2)イオン選択性電極の性能評価
このイオン選択性電極を用い、図に2示す構成のイオン測定装置にて、該イオン選択性電極と比較電極との間の電位差を測定した。測定対象試料としては、0.1mmol/L、1.0mmol/L、3.0mmol/L、10mmol/LのNaHCO水溶液、および1.0mmol/LのNaCl水溶液を用い、イオン選択性電極と比較電極を測定対象試料に挿入した直後から、10秒後の電位差を記録した。測定結果を表2に示した。NaHCO水溶液の測定結果から、濃度の対数と電位差の関係をプロットし、重炭酸イオン(HCOイオン)の検量線を求め、その傾き(SLOPE)を表2に併せて示した。SLOPEが負の値を取った場合には、対象とするアニオンに対する感度があると言える。表2に示すとおり、SLOPEは-32であり、アニオンである重炭酸イオンに対する感度があること、すなわち重炭酸イオン感応膜として機能することが示された。また、1mmol/LのNaCl水溶液を測定した時の電位差を、上記検量線に適用し、重炭酸濃度に換算し、クロルイオン(Clイオン)に対する選択性倍率を求めたところ、0.01となった。すなわち、本実施例の重炭酸イオン感応膜は、クロルイオンよりも重炭酸イオンに選択的に応答していることが示された。
<比較例1>
有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を使用しないことを除き、表1に示す組成の膜を作製し、実施例1と同様の操作にて、重炭酸イオンの検量線を求めた。結果を表2に示した。SLOPEは0であり、有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を使用しない場合には、重炭酸イオンに応答しないことが示された。
<実施例2>
有機オニウムカチオンとしてトリドデシルメチルアンモニウム、疎水性有機アニオンとしてテトラキス[3、5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンで構成される塩を、可塑剤であるo-ニトロオクチルフェニルエーテルに、それぞれ表1にて示す量にて加えた後に撹拌して溶解させた。この溶液を、市販のメンブレンフィルター(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製、細孔径0.45μm)に含浸し、本発明の重炭酸イオン感応膜とした。該重炭酸イオン感応膜を接着剤にてポリ塩化ビニル製の筒(外径12mm、内径8mm)の一端に接着し、その後に筒内に内部電解液である100mmol/LのNaCl水溶液を、水溶液と上記NPOE溶液とが接触するように満たした。さらに筒内に満たした該NaCl水溶液に直径0.8mmのAg線(表面にAgClを形成させてあり内部基準電極として機能する)を挿入し、イオン選択性電極とした。
その後に、実施例1(2)イオン選択性電極の性能評価に示された方法にて性能評価を行った。その結果を表2に示した。
<実施例3>
有機オニウムカチオンとしてトリドデシルメチルアンモニウム、疎水性有機アニオンとしてテトラキス[3、5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンで構成される塩を、可塑剤であるo-ニトロオクチルフェニルエーテルに、それぞれ表1にて示す量にて加えた後に撹拌して溶解させた。この溶液を濃度が1重量%であるポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液に加え撹拌し分散させた。得られたテトラヒドロフラン溶液をシャーレに流延し、室温にてテトラヒドロフランを蒸発させることにより、本発明の重炭酸イオン感応膜とした。該重炭酸イオン感応膜を接着剤にてポリ塩化ビニル製の筒(外径12mm、内径8mm)の一端に接着し、その後に筒内に内部電解液である100mmol/LのNaCl水溶液を、水溶液と上記NPOE溶液とが接触するように満たした。さらに筒内に満たした該NaCl水溶液に直径0.8mmのAg線(表面にAgClを形成させてあり内部基準電極として機能する)を挿入し、イオン選択性電極とした。
その後に、実施例1(2)イオン選択性電極の性能評価に示された方法にて性能評価を行った。その結果を表2に示した。
<比較例2>
有機オニウムカチオンとしてトリドデシルメチルアンモニウム、疎水性有機アニオンとしてテトラキス[3、5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンで構成される塩を濃度が1重量%であるポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液に加え撹拌し分散させた。得られたテトラヒドロフラン溶液を用い、実施例3と同様の方法でイオン選択性電極を作成し、性能評価を実施した。その結果を表2に示した。SLOPEは0であり、可塑剤を用いない場合には重炭酸イオン感応膜として機能しないことが示された。
<比較例3>
有機オニウムとしてトリドデシルメチルアンモニウム、無機アニオンとしてクロルイオンとから構成される塩を濃度100mmol/Lにて用い、表1に示す量にて膜を作製し、実施例3と同様の方法にてイオン選択性電極の作製と性能評価を実施した。その結果を表2示した。
SLOPEは-41であり、アニオンに対しての応答を示した。しかし、クロルイオンに対する選択性は10であり、重炭酸イオンよりもクロルイオンに応答すること、すなわち、重炭酸イオンに選択的に応答しないことが示された。
<比較例4>
カチオンとしてナトリウム、疎水性有機アニオンとしてテトラキス[3、5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンで構成される塩を表1に示す量にて膜を作製し、実施例3と同様の方法にてイオン選択性電極の作製と性能評価を実施した。その結果を表2に示した。
SLOPEは45であり正の値となった。すなわち本比較例のイオン選択性電極はアニオンには応答せず、したがって重炭酸イオンには感応しないことが示された。
実施例1~3では、重炭酸イオンの濃度に応じて、電位変化が得られることが示された。また、臨床検査用途にて測定対象となる血清、血漿サンプルに最も多く含まれるクロルイオンの電位応答は重炭酸イオンに比べて小さかった。これに対して、比較例1、比較例2では、重炭酸イオンの濃度に応じた電位変化は得られなかった。比較例3では重炭酸イオンの濃度に応じた電位変化は得られたものの、クロルイオンに対する応答の方が大きいため、臨床検査用のイオン選択性電極として用いるには不適であると考えられた。比較例4では、アニオンに対する応答が得られなかったため、重炭酸イオンには応答しなかった。
これらのことから、本発明の有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩が可塑剤に分散された重炭酸イオン交換膜は、重炭酸イオンに選択的に応答することが示された。
<実施例4~実施例17>
実施例3と同様の方法にて、表3に示す量にて本発明の重炭酸イオン感応膜を作製し、性能評価を実施した。更にアミン化合物の応答妨害の評価として、アミン化合物であるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン1mmol/Lを測定した時の電位差を用いて算出した選択性倍率が10未満である場合には「○」を、10以上である場合には「×」を表中に記載した。その結果を表4に併せて示した。
いずれの組み合わせにおいても、SLOPEは負の値をとり、また選択性係数は1よりも小さくなった。よって、本発明の重炭酸イオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、重炭酸イオンに応答し、またクロルイオンよりも重炭酸イオンに選択的に応答することが示された。また、アミンの妨害の影響も少なく、臨床検査用電極と用いた時に良好な性能が示された。
<比較例5>
特許文献3に従い、有機オニウム塩(濃度3.5mol/L)としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリドを0.2g(350μmol)、芳香族ボロン酸ジエステルとして2-フェニルー4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを100μl、重合体としてポリ塩化ビニルを50mg秤量してテトラヒドロフラン2.5mlに分散させた後、ガラス製シャーレに流延し、溶媒を蒸発させて膜状物を得た。実施例4と同様の操作にて性能評価を実施した。その結果を表4に示した。本比較例の電極膜は、SLOPE、クロルイオン選択性に優れるものの、アミン化合物の妨害が大きいことが判明した。
<実施例6>
N,N-ジドデシル-N-メチルドデカン-1-アミニウム テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート(1-)の合成
N,N-ジドデシル-N-メチルドデカン-1-アミニウム クロリド(1.1 equiv., 441 mg)とクロロホルム(7 mL)を混合し、室温で攪拌した。得られた混合物にテトラキス(4-フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(1.0 equiv.,290 mg)を加え、室温で2時間攪拌した。得られた混合物にクロロホルムを加え、水で洗浄し、水相をクロロホルムで抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)で精製し、式(1)に示される、トリドデシルメチルアンモニウムと、テトラキス(フルオロボレート)の塩である、N,N-ジドデシル-N-メチルドデカン-1-アミニウム テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート(1-)(580 mg,89%)を淡黄色油状物として得た。
H NMR(CDCl,400MHz):δ 7.34-7.26(m,8H),6.75(dd,J=8.8,9.6Hz,8H),2.56-2.47(m,6H),1.89(s,3H),1.35-1.13(m,60H),0.87(t,J=7.0Hz,9H)
Figure 0007441715000001
Figure 0007441715000002
Figure 0007441715000003
Figure 0007441715000004
11:筒状容器
12:イオン感応膜
13:内部電解液
14:内部基準電極
21:イオン選択性電極
22:塩橋
23:試料溶液
24:比較電極
25:エレクトロメーター
26:飽和塩化カリウム溶液

Claims (5)

  1. 有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩を、可塑剤に分散された形態で含有することを特徴とする、重炭酸イオンに起因して発生する電位により前記重炭酸イオンの濃度を測定する重炭酸イオン感応膜。
  2. 前記有機オニウムカチオンが、有機アンモニウムカチオン、または有機ホスホニウムカチオンである、請求項1に記載の重炭酸イオン感応膜。
  3. 前記疎水性有機アニオンが有機ボレートアニオン、カルボキシレートアニオン、有機スルホネートアニオン、有機ホスホネートアニオン、またはフェノキシドアニオンである、請求項1または2に記載の重炭酸イオン感応膜。
  4. 前記有機ボレートアニオンがテトラアリールボレートアニオン、またはテトラヘテロアリールボレートアニオンである、請求項3に記載の重炭酸イオン感応膜。
  5. 前記可塑剤に分散された有機オニウムカチオンと疎水性有機アニオンの塩が重合体に含まれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の重炭酸イオン感応膜。
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