JP3067397B2 - 薄肉中空金属物品の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、材料として貴金属粉末
を含有した可塑性組成物を用いた薄肉中空金属物品の製
造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】図２に示すような貴金属製の薄肉中空金
属物品（例えば、ネックレスやブレスレットを構成する
玉）１が、その軽量化あるいは貴金属材料の節減のため
に求められている。このような薄肉中空金属物品１の製
造方法としては、２つの半球殻状部品１ａを各端部を接
合してろう付けするものがある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
薄肉中空金属物品１の製造方法では、精密な型が必要と
なり、型製造費用が多くかかるとともに、２つの半球殻
状部品１ａを接合するのに熟練が要し、接合時間が多く
かかるといった問題がある。

【０００４】本発明は、前記事情に鑑みてなされたもの
で、精密な型が必要ないとともに、製造作業に伴う加工
時間が少なくてすむ薄肉中空金属物品の製造方法を提供
することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の薄肉中空金属物
品の製造方法は、ワックスを所定の形状に成形してワッ
クス成形体を形成し、貴金属粉末を含有した可塑性組成
物で前記ワックス成形体の周りを包囲して被覆層を形成
するとともに、この被覆層を貫通する孔を形成し、この
後、前記被覆層により被覆されたワックス成形体を加熱
して被覆層を構成する可塑性組成物を焼成させることを
特徴とする。

【０００６】

【作用】貴金属粉末を含有した可塑性組成物は粘土状を
しているので、成形が容易であり、所定の形状に成形さ
れたワックス成形体の周りを包囲して取り囲んで被覆し
て被覆層を形成することが可能である。次に、被覆層に
より被覆されたワックス成形体を加熱して焼成すると、
ワックス成形体が溶解して蒸発してなくなり、焼成され
た被覆層により薄肉中空金属物品が形成される。この
際、前記被覆層には被覆層を貫通する孔が形成されてい
るので、溶解又は蒸発したワックスが前記孔から円滑に
外に排出され、焼成途中の被覆層に無理な応力が作用す
ることが防止され、焼成途中で被覆層に割れが生ずるこ
とが防止される。

【０００７】

【実施例】以下に、図面を参照して本発明の一実施例に
ついて説明する。

【０００８】本実施例の薄肉中空金属物品１３の製造方
法は、貴金属粉末を含有する可塑性組成物を原料として
使用する。

【０００９】この可塑性組成物は、 貴金属粉末 ５０〜９０重量％、 セルローズ系水溶性バインダー ０．８〜８重量％ 界面活性剤 ０．０３〜３重量％ 油脂 ０．１〜３重量％ を含有し、残りが水及び不可避不純物からなる。

【００１０】薄肉中空金属物品１３の製造方法の説明に
先立ち、前記可塑性組成物の製造手順について説明す
る。

【００１１】まず、セルローズ系水溶性バインダーと水
とを混合し、しばらく放置して寒天状物質とする。次い
で、この寒天状物質に界面活性剤を添加して混合し、さ
らに所定の貴金属粉末を添加して混合する。そして、こ
の貴金属粉末混合体に油脂を添加して混合する。

【００１２】次に、可塑性組成物の組成を前記のように
決めた理由を説明する。

【００１３】（ａ）貴金属粉末 金、銀、銅、白金及びそれらの合金等の貴金属粉末は、
可塑性組成物を構成する主成分であり、製品の色を決定
する重要な要素であるが、その含有量が５０重量％未満
ではその効果がなく、一方、９０重量％以上を越えて含
有すると得られた可塑性組成物の伸び及び強度が低下す
るようになるので好ましくない。従って、前記の通り、
貴金属粉末の含有量は、５０〜９０重量％とした。

【００１４】（ｂ）セルローズ系水溶性バインダー セルローズ系水溶性バインダーは、加熱すると速やかに
ゲル化して固化し、成形体の形状の保持を容易にする。
しかし、その添加量が０．８重量％未満ではその効果が
得られず、一方、８重量％より多く添加すると粘性度が
大きくなりすぎて造形することができなくなってしま
う。従って、前記の通り、セルローズ系水溶性バインダ
ーの含有量は、０．８〜８重量％とした。セルローズ系
水溶性バインダーとしては、メチルセルローズ、エチル
セルローズ等が好ましい。

【００１５】（ｃ）界面活性剤 界面活性剤を添加して混合することにより、バインダー
と水との反応により生じた固形物が粉砕し、また、貴金
属粉末とバインダーとの混合性が良くなるという作用が
得られる。しかし、添加する界面活性剤の量が０．０３
重量％未満ではその効果が充分でなく、一方、界面活性
剤を３重量％よりも多く添加すると、得られた可塑性組
成物の粘性度が低下し、流動性が増して造形することが
できなくなるので好ましくない。従って、前記の通り、
界面活性剤の添加量は、０．０３〜３重量％とした。

【００１６】（ｄ）油脂 油脂を少量添加することにより、造形時、可塑性組成物
が手に付着しないようにすることができる。しかし、そ
の添加量が０．１重量％未満ではその効果が得られず、
一方、３重量％より多く添加すると、可塑性組成物が油
っぽくなり、滑り易くなって、造形時の作業性が悪くな
るので好ましくない。従って、前記の通り、油脂の含有
量は０．１〜３重量％とした。

【００１７】油脂としては、高級有機酸（例えば、フタ
ル酸）、高級有機酸エステル（例えば、フタル酸−ｎ−
ジオクチル、フタル酸−ｎ−ジブチル）、高級アルコー
ル、高級多価アルコール（例えば、ポリビニルアルコー
ル、ポリエチレングリコール、エーテル類）等が挙げら
れる。

【００１８】次に、図面を参照して、この発明の一実施
例による薄肉中空金属物品１３の製造方法について説明
する。

【００１９】まず、図１（ａ）に示すように、球形のキ
ャビティ１０ａを有する型１０内にワックスを流し込ん
で、球形のワックス成形体１１を形成する。前記キャビ
ティ１０ａの直径は、１０ｍｍとなっている。

【００２０】次に、前記可塑性組成物は粘土状をしてお
り小さな荷重により塑性変形させることができるので、
図１（ｂ）に示すように、前記ワックス成形体１１の周
りを包囲して前記可塑性組成物で被覆して被覆層１２を
形成する。前記被覆層１２の厚さは、０．０５〜１．０
０ｍｍのうちから適宜のものを採用する。この際、形成
された被覆層１２に該被覆層１２を貫通して前記ワック
ス成形体１１の表面に到達する２つの孔１２ａを直径方
向に並べて形成する。この孔１２ａの形成方法として
は、連続した被覆層１２を形成した後に針を差し込むこ
とにより形成する方法や、ワックス成形体１１に突起を
形成しておき被覆する際に不連続な被覆層１２を形成す
る方法がある。前記孔１２ａは、薄肉中空金属物品１３
をネックレス等の玉として使用する場合に、これらを連
結するワイヤを通す孔になる。

【００２１】このように被覆層１２が表面に形成された
ワックス成形体１を加熱炉において加熱して、前記被覆
層１２を構成する可塑性組成物の焼成を行う。加熱条件
は、成形体１を構成する可塑性組成物中の貴金属粉末の
材質によって異なる。加熱雰囲気条件は、貴金属粉末が
大気中において安定した物性を有する場合には、大気中
で加熱して焼成し、前記貴金属粉末が大気中において不
安定な物性を有する場合には、不活性雰囲気内で加熱し
て焼成する。加熱温度及び時間は、可塑性組成物中の貴
金属粉末が純金のときは９８０〜１０２０℃で２時間、
１８金合金のときは８５０〜８９０℃で２時間、白金の
ときは１４８０〜１５２０℃で２時間とする。

【００２２】このように加熱すると被覆層１２を構成す
る可塑性組成物内のセルローズ系水溶性バインダや油脂
が熱で蒸発して焼成されて、図１（ｃ）に示すように、
薄肉中空金属物品１３が形成される。この際、ワックス
成形体１１を構成するワックスが溶解するとともに蒸発
する。溶解又は蒸発したワックスは、前記被覆層１２に
形成された孔１２ａから外に排出される。この孔１２ａ
を形成しないで焼成すると、加熱により溶解又は蒸発し
たワックスが沸騰又は膨張して、被覆層１２に内部から
圧力が加わり、被覆層１２が薄肉であるので、当該圧力
により割れが生じたり、変形したりするといった欠陥が
生じたが、本実施例では、前記したように、被覆層１２
に孔１２ａを形成したので、このような欠陥が生ずるこ
とが全くない。

【００２３】また、前記ワックス成形体１１の成形につ
いては、このワックス成形体１１が被覆層１２の内側に
位置することになり、厳しい寸法精度を要求されること
がないので、型１０を安価なものとすることができる。

【００２４】また、被覆層１２を形成するに際しても、
粘土状の可塑性組成物を前記ワックス成形体１１の周り
に付着させるだけでよいので、従来のように２つの球殻
状部品を接合するといった作業を必要とせず、したがっ
て、作業の熟練を要せず、かつ、短時間で製造すること
ができる。

【００２５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の薄肉中空
金属物品の製造方法によれば、ワックスを所定の形状に
成形してワックス成形体を形成し、貴金属粉末を含有し
た可塑性組成物で前記ワックス成形体の周りを包囲して
被覆層を形成するとともに、この被覆層を貫通する孔を
形成し、この後、前記被覆層により被覆されたワックス
成形体を加熱して被覆層を構成する可塑性組成物を焼成
させるようにしたので、前記可塑性組成物は粘土状で成
形が容易であり、前記ワックス成形体の周りを包囲して
取り囲んで被覆して被覆層が形成でき、さらに、被覆層
により被覆されたワックス成形体を加熱して焼成する
と、加熱により溶解又は蒸発したワックスが前記孔から
円滑に外に排出され、焼成途中の被覆層に無理な応力が
作用して被覆層に割れや変形が生ずることが防止され、
焼成された被覆層により薄肉中空金属物品が形成され
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の薄肉中空金属物品の製造方
法を示す断面図である。

【図２】従来の薄肉中空金属物品の一部を破断した斜視
図である。

【符号の説明】

１１ ワックス成形体 １２ 被覆層 １２ａ 孔 １３ 薄肉中空金属物品

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−134188（ＪＰ，Ａ) 特開 昭50−144564（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−148203（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−86708（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−192704（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A44C 1/00 - 3/00 A44C 7/00 - 27/00 B22F 1/00 - 7/08 C22C 1/04 - 1/05 C22C 33/02 - 33/02 103 B44C 1/00 - 1/14 B44C 1/18 - 7/08 B44F 1/00 - 11/06 B30B 11/00 - 11/34

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ワックスを所定の形状に成形してワック
   ス成形体を形成し、貴金属粉末を含有した可塑性組成物
   で前記ワックス成形体の周りを包囲して被覆層を形成す
   るとともに、この被覆層を貫通する孔を形成し、この
   後、前記被覆層により被覆されたワックス成形体を加熱
   して被覆層を構成する可塑性組成物を焼成させることを
   特徴とする薄肉中空金属物品の製造方法。