JP3059313B2 - TiAl合金及びその製造方法 - Google Patents

TiAl合金及びその製造方法

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JP3059313B2 JP5036948A JP3694893A JP3059313B2 JP 3059313 B2 JP3059313 B2 JP 3059313B2 JP 5036948 A JP5036948 A JP 5036948A JP 3694893 A JP3694893 A JP 3694893A JP 3059313 B2 JP3059313 B2 JP 3059313B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、比強度が高く、高温耐
熱材料として有望であって、エンジン部品、各種回転体
あるいは航空機への応用が期待されるTiAl金属間化
合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】TiAl金属間化合物は、温度が上昇す
るに従って強度が上昇するという正の温度依存性を示
し、さらに比重が3.9と軽く軽量耐熱材料として航空
機への応用をめざし研究開発がなされている。しかしな
がら、TiAl金属間化合物は、一般の金属合金に比べ
て変形能に乏しい特徴があり、室温での延性改善につい
て多くの研究がなされてきた。常温での延性改善のた
め、第三元素を添加し合金設計を行った例として、Ti
−34.1重量%、Al−34重量%V合金(米国特許
第4294615号明細書)、Ti−41.7重量%A
l−10重量%Ag合金(特開昭58−123847号
公報)がある。さらに、TiAl金属間化合物にMnを
添加して、常温における延性を2〜3%に改善した例
(特開昭61−41740号公報)、Cr添加(米国特
許第4842819号明細書)、Ta添加(米国特許第
4842817号明細書)、Si添加(米国特許第48
36983号明細書)がある。4元系では、室温での延
性と耐酸化性を向上させた例として、Ti52-42 Al
46-50 Cr1-3 Nb1-5 (特開平2−25534号公
報)がある。
【0003】TiAl金属間化合物は、常温での延性が
3%以下であり、常温での加工が困難なため、精密鋳造
技術あるいは粉末技術によって形状を付与する方法が取
られている。さらに、形状付与技術として、高温で超塑
性加工することが考えられている。TiAl金属間化合
物は、成形した後、高温構造部材として、高温強度の必
要な部位に適用される。このような要求から、高温で加
工性に優れており、かつ強度も高い金属間化合物の材料
設計が要求されている。γ(TiAl,Ll0構造)+
α2 (Ti3 Al,DO19構造)組織とし、合金成分系
として、Nb、Cr、Mo、Vを添加し、さらにB、S
iを粒界強化元素として少量添加し、高温強度および常
温延性を改善した例もある(特開平1−298127号
公報)。しかし、800℃での伸びが最大4%と高温で
の加工性が改善されていない。
【0004】一方、添加元素による合金設計の他に熱間
加工を施し組織を微細化して、高温延性を改善した例が
報告されている(例えば、日本金属学会秋期大会シンポ
ジウム講演概要(1989)P.245)。また、第三
元素としてCrを添加し、粒界にβ(Ti合金,bcc
基構造)相を析出させ、高温での延性を著しく改善した
例が報告されている(日本金属学会秋期大会講演概要
(1990)P.268)。
【0005】さらに、高温での加工性と強度を向上させ
るためには、第三元素を添加した解質だけでなく、熱処
理・加工熱処理を中心とした種々のプロセスを組み合わ
せた組織制御が必要である。Ti−Al二元系について
は、報告されている状態図を基に、組織制御による解質
の試みがなされている(例えば、JOM誌1991年8
月号p.40)。しかし、元素を添加した三元系以上の
多元系については、状態図そのものの情報が極端に不足
もしくは欠如しているために、各多元系の種々の化学組
成に対する適正な製造・熱処理方法がないのが現状であ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
問題点を解決し、高温での延性に優れたTiAl合金を
作製すること及びそのために、熱処理を応用した新規な
TiAl合金の製造方法を提供すること、を目的として
いる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の事項を
要旨とするものである。 原子%で、Al 35.0%〜49.0%、Mo
1.0%〜8.0%、残部Tiからなり、γ(TiA
l)、α2 (Ti3 Al)、β(Ti合金)の3種類の
相の比率(%):fγ,fα,fβが 0.5≦fγ/fα≦2.0、 5≦fβ≦40.0 の関係にあり、また、結晶粒径50μm以下の結晶粒か
らなる微細組織とβ(Ti合金)が析出した組織の比率
の和が60%以上であり、かつ800℃での破断延びが
30%以上である、ことを特徴とする高温での延性に優
れたTiAl合金。 Tix Al1-x-y Moy (0.50≦x≦0.5
7、0.01≦y≦0.08)で表されるTiAl基金
属間化合物を温度T1 で加熱した後その温度を保持しな
がら30%以上の加工歪を加える処理と、温度T2 で加
熱処理する処理を、それぞれ1回以上含む一連の工程を
施したことを特徴とする、高温での延性に優れたTiA
l合金の製造方法。但し、温度T1 、T2 は、以下の範
囲内である。 1120℃≦T1 ≦1400℃ 900℃≦T2 ≦1120℃
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。TiAl
基金属間化合物では存在する相の種類・比率・形態が特
性を支配する要因であることが種々の研究から明らかに
なっている。相の種類・比率・形態を制御するためには
熱力学的に安定な相を示す平衡状態図が基本であり、そ
れに基づく加工・熱処理によるTiAl基金属間化合物
の解質が研究されている。TiAl二元系合金の場合に
は、その二元系状態図の概要が解明されつつあり、例え
ば室温では、Al量が50原子%以上のAl残部Tiの
合金は、γ単相合金となり、またAl量が50原子%以
下、30原子%以上の場合はγ+α2 相の二相となるこ
と、等の情報が状態図から読み取ることができる。しか
し、第三元素を添加した三元系または四元系以上の多元
系においては、状態図に関する情報がほとんどないのが
現状であり、さらにはそれに基づく材料設計の方法も提
案されていない。
【0009】本発明は、第三元素であるMoを添加した
Ti−Al−Mo三元系のTiAl基金属間化合物の材
料設計の方法を提案するものであるが、それは他の三元
系・多元系についてもこの手法の適用が可能な一般的な
方法である。Ti−Al−Mo三元系のTiAl基金属
間化合物で存在しうる相としては、γ(TiAl,Ll
0 構造)、α2 (Ti3 Al,DO19構造、但し、高温
ではα(hcp)に変態する)、β(Ti合金、bcc
基構造)の3種類の相がある。つまり発明者等は、これ
ら3種類の相の種類・比率・形態を定量的に制御するこ
とにより、内在する特性を最大限に引き出すことが可能
であることに注目し、研究を進め、これら3種類の相の
種類・比率・形態を定量的に制御するための製造方法に
達することができた。
【0010】高温での延性に優れたTi−Al−Mo三
元系のTiAl基金属間化合物の製造のためには、上記
したγ、α2 、βの3つの相が同時に存在し、かつγと
α2が等軸微細粒として存在し、その粒界または粒内に
β相が析出する組織(以下、「(等軸+析出)組織」と
いう)から構成される試料を作製することが条件とな
る。この組織を実現するためには、高温での相の平衡状
態、特にγ+α2 +β三相共存領域の組成範囲を知り、
それに基づく加工熱処理を施すことが必要条件となる。
熱処理については、Ti−Al−Mo三元系の相の平衡
状態を基にその最適条件を見いだすことに成功した。本
発明の目的を達成するためには、熱処理だけでは不十分
であり、熱処理過程の後にその温度を保持しながら30
%以上の加工を加えることが必要である。
【0011】以下、本発明の構成要件について具体的に
説明する。第一に、Tix Al1-x-y Moy で表される
TiAl基金属間化合物の組成を、0.50≦x≦0.
57、0.01≦y≦0.08に限定したのは、熱処理
を行う温度T1 ,T2 近傍の温度域では、この組成範囲
外ではγ+α2 +β三相共存領域をはずれてしまい、上
記した「γ、α2 、βの3つの相が同時に存在し、かつ
(等軸+析出)組織から構成される試料」の作製ができ
ないからである。第二に、本発明の特徴である多段階熱
処理について説明する。Tix Al1-x- y Moy で示さ
れるTiAl基金属間化合物を、温度T1 で加熱した後
にその温度を保持しながら30%以上の加工歪を加える
処理と、温度T2 で加熱処理する処理、をそれぞれ1回
以上含む一連の工程を施す。温度T1 での処理は、γ+
α2 +β三相共存領域での熱処理により、これらの相の
比率・形態を制御するためのものである。一方、温度T
2 での熱処理は、前段の温度T1 での熱処理後冷却中に
生じた歪を軽減するためのものである。そこでこれらの
熱処理をそれぞれ1回以上含む一連の工程を施すことに
より、γ,α2 ,βの3種類の相の比率・形態を任意に
制御することができ、その結果上記した特徴的な組織を
有する、高温での延性に優れたTiAl合金の製造の作
製が可能なのである。
【0012】このとき、γ,α2 ,βの3種類の相の形
態(組織)を制御するためには、熱処理の際に加工を加
えることが不可欠な要素となる。これは、「温度」によ
る組織制御だけでなく、「歪誘起による再結晶現像を利
用した組織の微細化」、「変形により生じる転位により
Mo原子が異常に拡散し、その結果粒界にβ相が析出し
やすくなる」等の現象のために目的とする結晶粒径50
μm以下の結晶粒からなる(等軸+析出)組織が得られ
るからである。結晶粒径が50μm以下であることが必
要な理由は、これより大きな結晶粒では、(等軸+析
出)組織であってもその効果が減少し充分な延性を有し
た材料が作製できないからである。
【0013】加工歪を与えるための加工を温度T1 で保
持する加熱処理工程の最終部分で行う理由は、「加熱工
程の前半で加工を行うと加工により生じた歪が加熱によ
り著しく開放され」、さらに「加工誘起による再結晶現
象のために結晶が粗大化する」、という現象が生じ期待
する効果が得られなくなるからである。又、加工歪の量
を30%以上の範囲に限定したのは、この範囲をはずれ
ると、加工歪誘起による結晶の微細化の効果が著しく減
少し、目的とする「結晶粒径50μm以下の結晶粒から
なる微細組織」を得ることができないからである。
【0014】ここで、温度T1 及び温度T2 の範囲を限
定した理由について詳しく述べる。温度T2 を900℃
≦T2 ≦1120℃の範囲に限定したのは、この範囲を
はずれると、目的とした「熱処理後冷却中に生じた歪を
軽減する」ことが不可能であるからである。つまり、1
120℃より高い温度では、DO19構造という規則構造
をもつα2 相が変態をして規則構造をもたないhcp構
造に変化してしまうためである。相変態が生じると、前
段の温度T1 の処理による「γ,α2 ,βの3種類の相
の比率・形態の制御」が効果を失うからである。又、温
度T2 が900℃より低い場合では、原子の拡散が著し
く低下し、現実にプロセスとして実現可能な時間(20
時間程度以内)での効果が期待できないからである。
【0015】一方、温度T1 を1120℃≦T1 ≦14
00℃にしたのは、この範囲をはずれると目的とする
「γ,α2 ,βの3種類の相の比率・形態の制御」が不
可能となるからである。つまり、温度T1 が1120℃
より低い場合には、α2 相(DO19構造)←→α相(h
cp構造)間の変態が生じてしまい、「γ,α2 ,βの
3種類の相の比率・形態の制御」が効果を失うからであ
る。また、温度T1 が1400℃より高い温度では、α
相の比率がほぼ0に近くなり、「γ,α2 ,βの3種類
の相の比率・形態の制御」が不可能になると共にγ相が
部分溶融する可能性があり、液相の析出により結晶粒の
組織制御が困難になるためである。
【0016】このように、高温での延性の付与のために
は、「γ、α2 、βの3つの相が同時に存在し、かつ
(等軸+析出)組織から構成される組織」を含む試料を
作製することが条件となる。そのための必要条件が上記
した組成範囲:Tix Al1-x- y Moy (0.50≦x
≦0.57、0.01≦y≦0.08)であり、加熱処
理温度の範囲:1120℃≦T1 ≦1400℃,900
℃≦T2 ≦1120℃である。
【0017】さらにこの範囲内においても、一連の加工
熱処理の最後の温度T1 でのγ,α2 、β相の比率:f
γ,fα,fβが以下の範囲内であることが必要であ
る。 0.5≦fγ/fα≦2.0、 5≦fβ≦40.0 高温での相の平衡状態は、濃度に応じて変化するため
に、fγ,fα,fβを上記の範囲内にする加熱処理温
度T1 の範囲は、上記した範囲1120℃≦T1≦14
00℃に加えて、濃度に応じて決められる条件を満たす
必要がある。この条件は、本発明で解明されたTi−A
l−Mo三元系の相の平衡状態等から、一連の加熱処理
の最後の温度T1 が以下の条件を満たすことである。こ
こで、条件式は濃度x,yの関数になっている。 ただし Xa =0.523 Xb =0.514 Ya =0.043 Yb =0.040
【0018】上記式は、fγ/fα≦2.0の条件を
満たすために必要である。Tix Al1-x-y Mo
y (0.50≦x≦0.57、0.01≦y≦0.0
8)で示されるTiAl基金属間化合物は、組成xの値
が小さくなるとγ相の比率が大きくなる傾向にある。そ
のため上記の条件を満たすためには「組成Xの下限値」
以上である必要があり、その値は温度に依存している。
つまり、fγ/fα≦2.0の条件を満たすための温度
範囲は、種々の温度での「組成Xの下限値」の関数とし
て表すことができ、それが式である。すなわち、一連
の加熱処理の最後の温度T1 が式の条件を満たすこと
が、fγ/fα≦2.0を満たすために必要である。な
お、Xa ,Xb は1200、1300℃での「組成Xの
下限値」である。また、上記式は、fβ≦40.0の
条件を満たすために必要である。TixAl1-x-y Mo
y (0.50≦x≦0.57、0.01≦y≦0.0
8)で示されるTiAl基金属間化合物は、組成yの値
が大きくなるとβ相の比率が大きくなる傾向にある。そ
のため上記の条件を満たすには「組成Yの上限値」以下
である必要があり、その値は温度に依存している。な
お、「組成Yの下限」は組成の限定で条件が満たされて
いる。つまり、fβ≦40.0の条件を満たすための温
度範囲は、種々の温度での「組成Yの上限値」の関数と
して表すことができ、それが式である。すなわち、一
連の加熱処理の最後の温度T1 が式の条件を満たすこ
とが、fβ≦40.0を満たすために必要である。な
お、Ya ,Yb は1200、1300℃での「組成Yの
上限値」である。一連の加熱処理の最後の温度T1 の範
囲を、1120℃≦T1 ≦1400℃に加えてここで述
べた濃度に応じて決められる条件を満たすように設定す
ることにより、本発明の効果がより顕著になるのであ
る。
【0019】次に、一連の加工熱処理の最後の温度T1
でのγ、α2 、β相の比率:fγ,fα,fβが以下の
範囲内であることが必要である理由について述べる。 0.5≦fγ/fα≦2.0、 5≦fβ≦40.0 これは、高温での延性の向上のために必要な(等軸+析
出)組織を達成するための2つの要素である、γとα
2 が等軸微細粒として存在すること、その粒界または
粒内にβ相が析出すること、を実現するための条件が、
それぞれ0.5≦fγ/fα≦2.0、5≦fβ≦4
0.0なのである。これは、結晶粒径が微細なために変
形能が向上する効果と、粒界または粒内に析出したβ相
による超塑性的な変形効果、が付加されて、難加工材で
ある金属間化合物の変形能を向上させることが可能にな
るのである。
【0020】この、第一の条件が、α相とγ相の比率の
比であるfγ/fαが0.5≦fγ/fα≦2.0の範
囲内である理由について述べる。γとα2 の等軸微細粒
を得るためには、α相とγ相の比率が近い値の温度域で
の加熱・冷却が不可欠である。つまり、二相が共存する
状態での加熱を行うことにより、それぞれの粒の結晶成
長を阻害することとなり、微細な等軸粒組織を得ること
ができるのである。しかし、α相とγ相の比率の比であ
るfγ/fαが2.0より大きくなると、高温での加熱
中に存在するγ相の比率が1/3(=33.3%)より
大きくなり、著しい粒成長が生じる。その結果、得られ
る試料の組織は、高温での延性に好ましくない大きなγ
粒を含むため高温延性が著しく減少することになる。一
方、fγ/fαが0.5より小さくなると、高温で既に
存在するα相の比率が1/3(=33.3%)より大き
くなり、著しい粒成長が生じる。そのため、この温度域
から冷却した試料は、大きな結晶粒中にγとα2 が交互
に存在する層状組織(ラメラー組織)を含む試料とな
る。なお、この層状組織(ラメラー組織)は、高温から
冷却中に生じる変態(α→γ+α→γ+α2 )により生
じる。その結果、fγ/fαが0.5より小さい比率で
は、高温延性が著しく減少することになる。
【0021】γ,α2 ,β相の比率であるfγ,fα
βの第二の条件が、fβが5≦fβ≦40.0の範囲
である理由について述べる。γとα2 の等軸微細粒の粒
界または粒内にβ相が析出する組織を得るためには、f
γ/fαが上記した範囲内でかつβ相が適当な比率で存
在することが必要である。そのような三相共存下で加熱
することにより、高温での延性の向上のために必要な
(等軸+析出)組織を達成することができる。しかし、
βが40%より大きくなると、β相自身の比率が大き
くなりβ相自身の結晶粒の成長が生じて、平均的な粒径
が大きくなる。その結果、高温延性には好ましくない状
況となる。また、fβが5%より小さくなると、β相の
比率が著しく小さくなるためにβ相が粒界や粒内に析出
せず、その結果材料全体の高温での延性が著しく低下す
るため好ましくない。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明
する。実施例1 高純度チタン(99.9%)、アルミニウム(99.9
9%)、モリブデン(99.9%)を溶解原料とし、プ
ラズマアーク溶解によってTix Al1-x-y Moy で示
されるTiAl基金属間化合物を溶製した。γ,α2
β相の比率をそれぞれ32.9%、54.3%、12.
8%にすることを目標として材料の熱処理を行った。熱
処理条件として本発明により与えられる、組成x=0.
550,1−x−y=0.425,y=0.025、温
度T1 =1150℃で250時間熱処理した後にさらに
温度T2 =980℃で150時間加熱処理を行った。温
度T1 での熱処理の際に、その最終段階において高温で
加工しながらホットプレス機により初期加工歪速度5×
10-4-1の条件で約65%の加工歪を加えた。その結
果、γ(TiAl)、α2 (Ti3 Al)、β(Ti合
金)の3種類の相の比率(%):fγ,fα,fβが、
目標とする値にほぼ近い値を示し、かつこれらの比率が
本発明の範囲内である材料を作製することができた。得
られた材料中には、目的とする(等軸+析出)組織の比
率は大きく、高温(800℃)での延性も高い値を示し
た。
【0023】実施例2〜9 実施例1と同様にTiAl基金属間化合物を溶製し、目
標とするγ,α2 ,β相の比率・組織を有する材料を作
製するために熱処理を行った。熱処理条件として本発明
により与えられる組成、温度T1 、温度T2 での熱処理
を行った。温度T1 及びそこでの加工歪量、温度T2
熱処理時間、パターン、目標とするα2 ,β,γ相の比
率、熱処理後得られたγ,α2 ,β相の比率、及び各組
織(結晶粒径が50μm以下の微細粒、ラメラ組織,γ
粒,析出β粒)の比率を、表1および表2に示す。すべ
ての試料について予想される相の比率が目標とする値に
ほぼ近い値を有する材料を作製することができ、(等軸
+析出)組織の比率は大きく、また高温(800℃)で
の延性も高い値を示した。
【0024】比較例1 高純度チタン(99.9%)、アルミニウム(99.9
9%)、モリブデン(99.9%)を溶解原料とし、プ
ラズマアーク溶解によってTix Al1-x-y Moy で示
されるTiAl基金属間化合物を溶製した。従来の方法
ではγ,α2 ,β相の比率を正確に設計することは困難
であるため、熱処理条件として従来の方法により二元系
状態図から最適と考えられる、組成x=0.550,1
−x−y=0.425,y=0.025、温度T1 =1
250℃で90時間熱処理した。その結果、γ(TiA
l)、α2 (Ti3 Al)、β(Ti合金)の3種類の
相の比率(%):fγ,fα,fβが本発明の範囲外で
ある材料が得られた。得られた材料中の(等軸+析出)
組織の比率は小さく、また高温(800℃)での延性も
低い値を示した。
【0025】比較例2〜6 比較例1と同様にTiAl基金属間化合物を溶製し、熱
処理条件として従来の方法により二元系状態図から最適
と考えられる組成、温度T1 、温度T2 での熱処理を行
った。温度T1 、温度T2 、熱処理時間、パターン、熱
処理後得られたγ,α2 ,β相の比率及び層状組織(ラ
メラー組織)の比率、及び各組織(結晶粒径が50μm
以下の微細粒、ラメラー組織,γ粒,析出β粒)の比率
を表1および表2に示す。すべての試料について相の比
率が本発明の範囲外となり、(等軸+析出)組織の比率
も小さく、また高温での延性(800℃での値)も低い
値を示した。
【0026】これらの実施例と比較例の比較から本発明
の効果は明かである。すなわち、実施例1と比較例1、
又は実施例2〜4と比較例6、実施例5〜7と比較例
2、3の比較から、同じ組成の材料であっても本発明の
範囲内外よってその組織・特性が大きく異なることがわ
かる。特に、実施例2、3と比較例6の比較から加工歪
の影響が理解できる。比較例4、5は、組成が本発明の
範囲からはずれたものである。このことから、同じ組成
の材料であっても、熱処理条件を変化させることにより
その組織・特性が大きく異なることがわかる。
【0027】これらの実施例と比較例の試料中のγ,α
2 相の比であるfα/fγと800℃での延性を、図1
に示す。図中斜線を示した範囲が本発明の必要条件のひ
とつである、0.5≦fγ/fα≦2.0に対応する範
囲である。この範囲の中でも他の条件(5≦fβ≦4
0、及び(等軸+析出)組織の比率)を満たすもの(図
中、●で表示)が本発明の範囲に対応する。本発明の範
囲内にある試料の高温延性は高く、本発明の効果が明瞭
である。
【0028】Ti−Al系金属間化合物の改質のために
不可欠な元素を添加した系について内在する特性を最大
限に引き出すための製造方法を提供するために必要な、
平衡状態図に基づく定量的な材料作製指針を提示するこ
とができた。その結果、Ti−Al−Mo系の場合につ
いて、目的とする相の比率を得るために必要な組成・熱
処理温度を定量的に得ることができ、その結果種々のタ
イプを有する材料を作製することができた。また、本発
明は他の三元系についても応用可能な一般的な方法であ
る。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により高温
での延性に優れたTiAl合金を得ることができると共
にこのような新材料を製造するための熱処理を応用した
新規な製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料中のγ相とα2 相の比であるfα/fγ
800℃での延性の関係を示した図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子%で、Al 35.0%〜49.0
    %、Mo 1.0%〜8.0%、残部Tiからなり、 TiAlからなるγ相、Ti3 Alからなるα2相、T
    i合金からなるβ相の3種類の相の比率(%):fγ
    α,fβが 0.5≦fγ/fα≦2.0、 5≦fβ≦40.0 の関係にあり、 また、結晶粒径50μm以下の結晶粒からなる微細組織
    とβ相が析出した組織の比率の和が60%以上であり、
    かつ800℃での破断延びが30%以上である、 ことを特徴とする高温での延性に優れたTiAl合金。
  2. 【請求項2】Tix Al1-x-y Moy (0.50≦x≦
    0.57、0.01≦y≦0.08)で表されるTiA
    l基金属間化合物を温度T1 で加熱した後その温度を保
    持しながら30%以上の加工歪を加える処理と、温度T
    2 で加熱処理する処理を、それぞれ1回以上含む一連の
    工程を施したことを特徴とする、高温での延性に優れた
    TiAl合金の製造方法。但し、温度T1 、T2 は、以
    下の範囲内である。 1120℃≦T1 ≦1400℃ 900℃≦T2 ≦1120℃
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