JP3486670B2 - O相基Ti−Al−Nb系合金とその製造方法 - Google Patents
O相基Ti−Al−Nb系合金とその製造方法Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、O相基T
i−Al−Nb系合金とその製造方法に関するものであ
る。さらに詳しくは、この出願の発明は、高温強度を維
持しつつ、室温での強度、延性に優れたTi−22Al
−27Nb合金等のO相基Ti−Al−Nb系合金とそ
の製造方法に関するものである。
i−Al−Nb系合金とその製造方法に関するものであ
る。さらに詳しくは、この出願の発明は、高温強度を維
持しつつ、室温での強度、延性に優れたTi−22Al
−27Nb合金等のO相基Ti−Al−Nb系合金とそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】Ti2 AlNb(Ti−2
5mol%Al−25mol%Nb)(斜方晶の結晶構
造を有し、O相と名付けられた)は、約10年前に発見
されたチタン系の金属間化合物であり、既存のTiAl
(γ)やTi3 Al(α2 )金属間化合物と比較して、
高温強度、高温延性に優れていることから、ポストTi
Al(γ)を伺う新しいタイプの軽量耐熱材料として注
目されている。
5mol%Al−25mol%Nb)(斜方晶の結晶構
造を有し、O相と名付けられた)は、約10年前に発見
されたチタン系の金属間化合物であり、既存のTiAl
(γ)やTi3 Al(α2 )金属間化合物と比較して、
高温強度、高温延性に優れていることから、ポストTi
Al(γ)を伺う新しいタイプの軽量耐熱材料として注
目されている。
【0003】そして、実用材料の開発に際しては、高温
相であるB2相(CsCl型構造)あるいはβ相(bc
c構造)を金属組織中に組み入れ、室温延性、破壊靱性
などを高めることが試みられている。例えば、米国にお
いては、各種の機械的特性がバランスよく優れた合金と
して(O+B2/β)型のTi−22mol% Al−
27mol%Nbという組成の合金が開発されている。
B2/β変態温度以下で十分に焼鈍した状態で、O相は
約80%、B2/β相は約20%である。
相であるB2相(CsCl型構造)あるいはβ相(bc
c構造)を金属組織中に組み入れ、室温延性、破壊靱性
などを高めることが試みられている。例えば、米国にお
いては、各種の機械的特性がバランスよく優れた合金と
して(O+B2/β)型のTi−22mol% Al−
27mol%Nbという組成の合金が開発されている。
B2/β変態温度以下で十分に焼鈍した状態で、O相は
約80%、B2/β相は約20%である。
【0004】高温特性の中ではとりわけクリープ特性が
重要視されるが、このTi−22Al−27Nb合金に
出現する各種の金属組織の中で、高温のB2/β単相域
からの徐冷によって形成される、いわゆるラメラ組織
が、最も優れたクリープ特性を示すことが判明してい
る。しかしながら、すでに提案されている上記のTi−
22Al−27Nb合金においては、室温引張り特性
(引張強さ、延性)が劣るため、材料としての信頼性が
低いという問題があった。
重要視されるが、このTi−22Al−27Nb合金に
出現する各種の金属組織の中で、高温のB2/β単相域
からの徐冷によって形成される、いわゆるラメラ組織
が、最も優れたクリープ特性を示すことが判明してい
る。しかしながら、すでに提案されている上記のTi−
22Al−27Nb合金においては、室温引張り特性
(引張強さ、延性)が劣るため、材料としての信頼性が
低いという問題があった。
【0005】そこで、この出願の発明は、以上のとおり
の問題点を解消し、航空機、自動車等のエンジン部材を
はじめとする用途への応用が期待されているO相基Ti
−Al−Nb系合金について、高温での強度、延性とい
う高温特性に優れているとともに、室温域での強度並び
に延性にも優れた、新しい合金とそのための製造方法を
提供することを課題としている。
の問題点を解消し、航空機、自動車等のエンジン部材を
はじめとする用途への応用が期待されているO相基Ti
−Al−Nb系合金について、高温での強度、延性とい
う高温特性に優れているとともに、室温域での強度並び
に延性にも優れた、新しい合金とそのための製造方法を
提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、第1には、Ti,Alお
よびNbを含有するO相基合金であって、結晶組織はα
2相を1〜20Vol%含有し、平均結晶粒径が90μm以
下の微細粒組織を有することを特徴とするO相基Ti−
Al−Nb系合金を提供する。
の課題を解決するものとして、第1には、Ti,Alお
よびNbを含有するO相基合金であって、結晶組織はα
2相を1〜20Vol%含有し、平均結晶粒径が90μm以
下の微細粒組織を有することを特徴とするO相基Ti−
Al−Nb系合金を提供する。
【0007】また、この出願の発明は、第2には、室温
において1200MPa以上の引張強度と5%以上の延
性を有する上記のO相基Ti−Al−Nb系合金を提供
する。そして、この出願の発明は第3には、結晶組織は
α 2 相を1〜20Vol%およびB2相/β相を80〜99
Vol%含有し、平均結晶粒径が90μm以下の微細粒組
織を有するO相基Ti−Al−Nb系合金を提供する。
また、第4には、平均結晶粒径が40〜80μmの微細
粒組織を有することを特徴とする請求項3のO相基Ti
−Al−Nb系合金を提供する。また、この出願の発明
は、第5には、上記合金の製造方法であって、950℃
以上B2/β変態温度以下の温度範囲で熱間加工を加
え、その後、B2/β変態温度以上1400℃以下の温
度で液体化処理することを特徴とするO相基Ti−Al
−Nb系合金の製造方法を提供する。
において1200MPa以上の引張強度と5%以上の延
性を有する上記のO相基Ti−Al−Nb系合金を提供
する。そして、この出願の発明は第3には、結晶組織は
α 2 相を1〜20Vol%およびB2相/β相を80〜99
Vol%含有し、平均結晶粒径が90μm以下の微細粒組
織を有するO相基Ti−Al−Nb系合金を提供する。
また、第4には、平均結晶粒径が40〜80μmの微細
粒組織を有することを特徴とする請求項3のO相基Ti
−Al−Nb系合金を提供する。また、この出願の発明
は、第5には、上記合金の製造方法であって、950℃
以上B2/β変態温度以下の温度範囲で熱間加工を加
え、その後、B2/β変態温度以上1400℃以下の温
度で液体化処理することを特徴とするO相基Ti−Al
−Nb系合金の製造方法を提供する。
【0008】以上のとおりのこの出願の発明は、従来の
Ti−22Al−27Nb合金等についての詳細な検討
の結果として導かれたものである。すなわち、たとえば
従来のTi−22Al−27Nb合金の場合には、単相
域に保持するという熱処理工程を経るため、前B2/β
結晶粒径は著しく粗大化する傾向にある。実際、今まで
に公表されている報告や論文では、ラメラ組織を有する
場合の結晶粒径は100μm以上であることが報告され
ている。このような粗大粒に起因して、室温引張り特性
(引張強さ、延性)は著しく劣り、従って材料の信頼性
は著しく低いものとなっていたことが判明した。
Ti−22Al−27Nb合金等についての詳細な検討
の結果として導かれたものである。すなわち、たとえば
従来のTi−22Al−27Nb合金の場合には、単相
域に保持するという熱処理工程を経るため、前B2/β
結晶粒径は著しく粗大化する傾向にある。実際、今まで
に公表されている報告や論文では、ラメラ組織を有する
場合の結晶粒径は100μm以上であることが報告され
ている。このような粗大粒に起因して、室温引張り特性
(引張強さ、延性)は著しく劣り、従って材料の信頼性
は著しく低いものとなっていたことが判明した。
【0009】そこで、優れた室温引張特性を付与するた
めには、前B2/β結晶粒径を100μm以下と細粒に
制御することが有効と考えられるが、一方では、同時に
優れた高温特性を保持するためには粒内組織はラメラ組
織であることが必要である。しかしながら、これまで
は、このような金属組織は得られていなかったのであ
る。
めには、前B2/β結晶粒径を100μm以下と細粒に
制御することが有効と考えられるが、一方では、同時に
優れた高温特性を保持するためには粒内組織はラメラ組
織であることが必要である。しかしながら、これまで
は、このような金属組織は得られていなかったのであ
る。
【0010】この出願の上記のとおりの発明は、Ti−
22Al−27Nb合金等の機械的性質、特に室温引張
り強さおよび引張延性の一層の向上を目的として、前記
のB2/β結晶粒径の微細化の問題を新しい組織制御法
を用いて解決することにより完成されたものである。そ
の基本的な特徴は、α2 相による粒界のピン留め効果と
してB2/β結晶粒径の微細化を可能としたことにあ
る。
22Al−27Nb合金等の機械的性質、特に室温引張
り強さおよび引張延性の一層の向上を目的として、前記
のB2/β結晶粒径の微細化の問題を新しい組織制御法
を用いて解決することにより完成されたものである。そ
の基本的な特徴は、α2 相による粒界のピン留め効果と
してB2/β結晶粒径の微細化を可能としたことにあ
る。
【0011】
【発明の実施の形態】この出願の発明は上記のとおりの
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。まず、この発明において提供される合金
は、Ti,AlおよびNbを含有するO相基合金であっ
て、結晶組織はα2 相を含み、結晶粒径が90μm以下
の微細粒組織を有することを特徴とするO相基Ti−A
l−Nb系合金である。
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。まず、この発明において提供される合金
は、Ti,AlおよびNbを含有するO相基合金であっ
て、結晶組織はα2 相を含み、結晶粒径が90μm以下
の微細粒組織を有することを特徴とするO相基Ti−A
l−Nb系合金である。
【0012】ここで、「O相基」とは、従来と同様に斜
方晶の結晶構造を主としていることを意味している。そ
して、このO相基Ti−Al−Nb系合金は、その元素
組成としては、Ti,AlおよびNbを含有している。
そして、さらに、この発明の目的に沿うものとして、M
o,V,W等の他の元素を1種以上含有していてもよ
い。もちろん、不可避的不純物の含有も許容される。T
i−Al−Nb系合金の組成については、Ti−22m
ol%Al−27mol%Nbを目安として構成するこ
とができる。たとえばTi−xAl−yNb−zM(M
は、Mo,V,W等の添加元素)の組成として、20m
ol%≦x≦25mol%,15mol%≦y≦25m
ol%,0≦z≦10mol%のものが例として挙げら
れる。
方晶の結晶構造を主としていることを意味している。そ
して、このO相基Ti−Al−Nb系合金は、その元素
組成としては、Ti,AlおよびNbを含有している。
そして、さらに、この発明の目的に沿うものとして、M
o,V,W等の他の元素を1種以上含有していてもよ
い。もちろん、不可避的不純物の含有も許容される。T
i−Al−Nb系合金の組成については、Ti−22m
ol%Al−27mol%Nbを目安として構成するこ
とができる。たとえばTi−xAl−yNb−zM(M
は、Mo,V,W等の添加元素)の組成として、20m
ol%≦x≦25mol%,15mol%≦y≦25m
ol%,0≦z≦10mol%のものが例として挙げら
れる。
【0013】また、この発明の上記合金においては、α
2 相を含有するが、このα2 相の結晶組織における割合
は、体積(vol%)として、1%以上、より好ましく
は1%〜20%の範囲とするのが適当である。このよう
なα2 相と共存することによるB2相もしくはβ相(B
2/β相)については、たとえばB2/β相:80%〜
99%とすることが適当である。
2 相を含有するが、このα2 相の結晶組織における割合
は、体積(vol%)として、1%以上、より好ましく
は1%〜20%の範囲とするのが適当である。このよう
なα2 相と共存することによるB2相もしくはβ相(B
2/β相)については、たとえばB2/β相:80%〜
99%とすることが適当である。
【0014】α2 相が1%未満の場合にはピン留め効果
が充分なものとならず、B2/β相の微細化は生じ難
い。そして、この発明のO相基Ti−Al−Nb系合金
では、平均結晶粒径は90μm以下である。より適当に
は、80μm以下、たとえば40〜80μmである。
が充分なものとならず、B2/β相の微細化は生じ難
い。そして、この発明のO相基Ti−Al−Nb系合金
では、平均結晶粒径は90μm以下である。より適当に
は、80μm以下、たとえば40〜80μmである。
【0015】以上のようなこの発明の合金としては、高
温強度と高温延性という高温特性が優れており、たとえ
ば従来のTi−22Al−27Nb合金と同等の高温特
性を持ち、しかも大きく向上された室温強度と室温延性
の特性を持つものが提供される。なかでも、好適なもの
として、室温において1200MPa以上の引張強度と
5%以上の延性を有するものが提供される。
温強度と高温延性という高温特性が優れており、たとえ
ば従来のTi−22Al−27Nb合金と同等の高温特
性を持ち、しかも大きく向上された室温強度と室温延性
の特性を持つものが提供される。なかでも、好適なもの
として、室温において1200MPa以上の引張強度と
5%以上の延性を有するものが提供される。
【0016】この発明の以上のようなO相基Ti−Al
−Nb系合金は、この発明の発明者によって確立された
新しい組織制御法によって製造することができる。すな
わち、この発明の合金の製造方法としては、950℃以
上B2/β変態温度以下の温度範囲で熱間加工を加え、
その後、B2/β変態温度以上1400℃以下の温度で
溶体化処理することを特徴としている。
−Nb系合金は、この発明の発明者によって確立された
新しい組織制御法によって製造することができる。すな
わち、この発明の合金の製造方法としては、950℃以
上B2/β変態温度以下の温度範囲で熱間加工を加え、
その後、B2/β変態温度以上1400℃以下の温度で
溶体化処理することを特徴としている。
【0017】この発明のO相基Ti−Al−Nb系合金
においては、たとえばTi−22Al−27Nb合金の
場合には、B2/β変態温度(高温相であるβ相単相状
態の下限温度)は、約1050℃〜1075℃程度であ
る。この発明の製造方法では、まず、950℃以上B2
/β変態温度以下で熱間加工を行うことによりα2 相を
析出させる。ここで析出されたα2 相は、消滅すること
なしに、次の溶体化処理において結晶粒の粗大化を防止
するようにピン留め効果を発揮することになる。950
℃未満の温度ではα2 相の析出は充分でなく、またB2
/β変態温度を超えると、熱間加工によってもα2 相は
析出しない。
においては、たとえばTi−22Al−27Nb合金の
場合には、B2/β変態温度(高温相であるβ相単相状
態の下限温度)は、約1050℃〜1075℃程度であ
る。この発明の製造方法では、まず、950℃以上B2
/β変態温度以下で熱間加工を行うことによりα2 相を
析出させる。ここで析出されたα2 相は、消滅すること
なしに、次の溶体化処理において結晶粒の粗大化を防止
するようにピン留め効果を発揮することになる。950
℃未満の温度ではα2 相の析出は充分でなく、またB2
/β変態温度を超えると、熱間加工によってもα2 相は
析出しない。
【0018】この場合の熱間加工は、圧延をはじめとし
て各種の加工手段によって行ってよいが、加工の程度と
しての圧下率は、10%以上、より適当には20%〜9
5%である。次いで、この発明の製造法においては、β
変態温度以上1400℃以下の温度で溶体化処理を行
う。β変態温度末端では所望の特性としての強度、延性
が得られず、1400℃を超えると結晶粒径が粗大化し
て所望の室温特性が得られない。
て各種の加工手段によって行ってよいが、加工の程度と
しての圧下率は、10%以上、より適当には20%〜9
5%である。次いで、この発明の製造法においては、β
変態温度以上1400℃以下の温度で溶体化処理を行
う。β変態温度末端では所望の特性としての強度、延性
が得られず、1400℃を超えると結晶粒径が粗大化し
て所望の室温特性が得られない。
【0019】この溶体化は、好ましくは1分以上100
0時間以下で行うことが考慮される。1分未満では所望
の強度、延性が得られず、1000時間を超えると結晶
粒径が粗大化する傾向にあるからである。溶体化処理の
後には好ましくは徐冷することが考慮される。たとえば
2℃/分以下の冷却速度で徐冷することである。
0時間以下で行うことが考慮される。1分未満では所望
の強度、延性が得られず、1000時間を超えると結晶
粒径が粗大化する傾向にあるからである。溶体化処理の
後には好ましくは徐冷することが考慮される。たとえば
2℃/分以下の冷却速度で徐冷することである。
【0020】以上のとおりの方法によって、この発明で
は、B2/β+α2 の2相域で熱間加工を加え、B2/
β相基質中に粒状のα2 相が析出した組織を生成させ、
しかも結晶粒径が90μm以下の微細組織の合金を得
る。そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの発明
について説明する。
は、B2/β+α2 の2相域で熱間加工を加え、B2/
β相基質中に粒状のα2 相が析出した組織を生成させ、
しかも結晶粒径が90μm以下の微細組織の合金を得
る。そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの発明
について説明する。
【0021】
【実施例】<実施例1>ガスアトマイズ法によって製造
したTi−22Al−27Nb合金粉末を熱間静水圧プ
レスによって固化した材料をB2/β+α2 2相域であ
るβ変態温度以下の1000℃、もしくはB2/β単相
域、つまりβ変態温度以上の1150℃で熱間溝ロール
圧延を加え角棒状の素材に仕上げた(圧下率90%)。
その後B2/β変態温度以上で溶体化処理を行い、溶体
化時間もしくは溶体化温度と結晶粒径の関係を評価し
た。図1、図2に示すように単相域圧延材では初期の結
晶粒径が90μmと大きい上に、溶体化処理時間、温度
の増加に伴い最大で200μm近くまで粒径が増加する
のに対し、この発明の2相域圧延材では初期の結晶粒径
は50μm程度と小さく、溶体化処理時間、温度が増加
しても結晶粒径の顕著な増加は観察されない。
したTi−22Al−27Nb合金粉末を熱間静水圧プ
レスによって固化した材料をB2/β+α2 2相域であ
るβ変態温度以下の1000℃、もしくはB2/β単相
域、つまりβ変態温度以上の1150℃で熱間溝ロール
圧延を加え角棒状の素材に仕上げた(圧下率90%)。
その後B2/β変態温度以上で溶体化処理を行い、溶体
化時間もしくは溶体化温度と結晶粒径の関係を評価し
た。図1、図2に示すように単相域圧延材では初期の結
晶粒径が90μmと大きい上に、溶体化処理時間、温度
の増加に伴い最大で200μm近くまで粒径が増加する
のに対し、この発明の2相域圧延材では初期の結晶粒径
は50μm程度と小さく、溶体化処理時間、温度が増加
しても結晶粒径の顕著な増加は観察されない。
【0022】すなわち、図1の溶体化時間との関係を示
した結果から明らかなように、この発明の2相域圧延材
では、熱間圧延直後の前B2/β結晶粒径は約50μm
であり、保持後のB2/β結晶粒の成長は極めて緩やか
である。50時間を越えると粒径は約80μmと一定に
なった。保持時間の増加とともに粒が成長するのは残存
α2 相が徐々に基地中に溶け込みα2 相の分散が疎にな
ったためである。実際に、この温度で5時間保持した素
材を水中に焼き入れその金属組織を観察したところ、B
2/β粒界には多数のα2 相が存在していることを確認
した(図3左)。この場合のα2 相の存在割合は、約5
vol%である。
した結果から明らかなように、この発明の2相域圧延材
では、熱間圧延直後の前B2/β結晶粒径は約50μm
であり、保持後のB2/β結晶粒の成長は極めて緩やか
である。50時間を越えると粒径は約80μmと一定に
なった。保持時間の増加とともに粒が成長するのは残存
α2 相が徐々に基地中に溶け込みα2 相の分散が疎にな
ったためである。実際に、この温度で5時間保持した素
材を水中に焼き入れその金属組織を観察したところ、B
2/β粒界には多数のα2 相が存在していることを確認
した(図3左)。この場合のα2 相の存在割合は、約5
vol%である。
【0023】比較のための、B2/β単相域である11
50℃で熱間圧延した材料を1100℃に保持したもの
では、圧延直後の粒径は約90μmと比較的粗大であ
る。保持後は急激に成長し、20時間の保持で150μ
mに達するが、その後はこの粒径を維持したままであ
る。結晶粒径の粗大化の機構は先に述べた2相域圧延材
の場合と同じく、保持時間が増加するに従って残存α2
相が徐々に基地中に溶け込みα2 相の分散が疎になった
ためである。単相域での圧延であり、かつ圧延前には十
分なソーキングを行っているのでα2 相は消滅している
と考えられるが、このようなα2 相のピン留め効果が存
在している理由は次のように考えられる。即ち、単相域
圧延であっても圧延後には空冷しているため粒界にはα
2 相が析出していることが認められており、このような
α2 相の存在が、等温保持の際に粒の成長を素子してい
ると考えられる。但し、2相域圧延の場合と比較して残
存α2相の数は少ないので、単相域圧延材中でのα2 相
のピン留め効果は2相域圧延材よりも小さく、従って、
前B2/β粒径は90μm以上の粗大粒になったと考え
られる。
50℃で熱間圧延した材料を1100℃に保持したもの
では、圧延直後の粒径は約90μmと比較的粗大であ
る。保持後は急激に成長し、20時間の保持で150μ
mに達するが、その後はこの粒径を維持したままであ
る。結晶粒径の粗大化の機構は先に述べた2相域圧延材
の場合と同じく、保持時間が増加するに従って残存α2
相が徐々に基地中に溶け込みα2 相の分散が疎になった
ためである。単相域での圧延であり、かつ圧延前には十
分なソーキングを行っているのでα2 相は消滅している
と考えられるが、このようなα2 相のピン留め効果が存
在している理由は次のように考えられる。即ち、単相域
圧延であっても圧延後には空冷しているため粒界にはα
2 相が析出していることが認められており、このような
α2 相の存在が、等温保持の際に粒の成長を素子してい
ると考えられる。但し、2相域圧延の場合と比較して残
存α2相の数は少ないので、単相域圧延材中でのα2 相
のピン留め効果は2相域圧延材よりも小さく、従って、
前B2/β粒径は90μm以上の粗大粒になったと考え
られる。
【0024】また、B2/β+α2 2相域である100
0℃で圧延加工を加えた素材に対して、1100〜12
50℃の温度範囲で1時間溶体化し、溶体化温度と粒径
の関係を評価し、また比較のために、単相域で圧延した
素材に対しても同様な熱処理を施した結果を示した図2
によれば、単相域で圧延した比較例材料は初期の結晶粒
径が粗大であるうえに、溶体化温度の増加に伴って結晶
粒径は150μm以上に増大している。それに対して2
相域で圧延したこの発明の材料は各溶体化温度において
結晶粒径は80μm以下と小さく、溶体化温度の増加に
伴う結晶粒径の増加も僅かであった。 <実施例2>2相域(1000℃)圧延材を1100℃
で5時間溶体化処理した材料、および単相域(1150
℃)圧延材を1150℃で1時間溶体化処理した材料を
溶体化処理温度から毎秒0.5℃の速度で徐冷した。図
3に2相域圧延材、図4に単相域圧延材の溶体化処理直
後および徐冷後の金属組織を示す。2相域圧延材の溶体
化処理直後の金属組織は単相域圧延材より結晶粒径がか
なり小さく、また単相域圧延材にはほとんど見られない
α2 相の残留が観察された。一方徐冷後の金属組織はβ
相(白くみれる部分)中にα2 相(黒くみえる部分)お
よびO相(灰色にみえる部分)が析出しており、いわゆ
るラメラの組織形態を呈している。2相域圧延材と単相
域圧延材の間でこのラメラの組織形態は極めて似通って
いる。図5に両材料の室温から800℃の温度範囲での
真空中での引張試験の結果を示す。結晶粒径の小さい2
相圧延材の方が高い引張特性を示し、特に室温では引張
強度1371MPa、破断伸び6.9%という優れた特
性を示した。
0℃で圧延加工を加えた素材に対して、1100〜12
50℃の温度範囲で1時間溶体化し、溶体化温度と粒径
の関係を評価し、また比較のために、単相域で圧延した
素材に対しても同様な熱処理を施した結果を示した図2
によれば、単相域で圧延した比較例材料は初期の結晶粒
径が粗大であるうえに、溶体化温度の増加に伴って結晶
粒径は150μm以上に増大している。それに対して2
相域で圧延したこの発明の材料は各溶体化温度において
結晶粒径は80μm以下と小さく、溶体化温度の増加に
伴う結晶粒径の増加も僅かであった。 <実施例2>2相域(1000℃)圧延材を1100℃
で5時間溶体化処理した材料、および単相域(1150
℃)圧延材を1150℃で1時間溶体化処理した材料を
溶体化処理温度から毎秒0.5℃の速度で徐冷した。図
3に2相域圧延材、図4に単相域圧延材の溶体化処理直
後および徐冷後の金属組織を示す。2相域圧延材の溶体
化処理直後の金属組織は単相域圧延材より結晶粒径がか
なり小さく、また単相域圧延材にはほとんど見られない
α2 相の残留が観察された。一方徐冷後の金属組織はβ
相(白くみれる部分)中にα2 相(黒くみえる部分)お
よびO相(灰色にみえる部分)が析出しており、いわゆ
るラメラの組織形態を呈している。2相域圧延材と単相
域圧延材の間でこのラメラの組織形態は極めて似通って
いる。図5に両材料の室温から800℃の温度範囲での
真空中での引張試験の結果を示す。結晶粒径の小さい2
相圧延材の方が高い引張特性を示し、特に室温では引張
強度1371MPa、破断伸び6.9%という優れた特
性を示した。
【0025】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、航空機、自動車等のエンジン部材をはじ
めとする用途への応用が期待されているO相基Ti−A
l−Nb系合金について、高温での強度、延性という高
温特性に優れているとともに、室温域での強度並びに延
性にも優れた、新しい合金とそのための製造方法が提供
される。
発明によって、航空機、自動車等のエンジン部材をはじ
めとする用途への応用が期待されているO相基Ti−A
l−Nb系合金について、高温での強度、延性という高
温特性に優れているとともに、室温域での強度並びに延
性にも優れた、新しい合金とそのための製造方法が提供
される。
【図1】1000℃および1150℃で圧延したTi−
22Al−27Nb合金を1100℃で溶体化処理した
場合の溶体化処理時間と平均結晶粒径の関係を示した図
である。
22Al−27Nb合金を1100℃で溶体化処理した
場合の溶体化処理時間と平均結晶粒径の関係を示した図
である。
【図2】1000℃および1150℃で圧延したTi−
22Al−27Nb合金を1100℃から1250℃の
温度で1時間溶体化処理した場合の溶体化処理温度と平
均結晶粒径の関係を示した図である。
22Al−27Nb合金を1100℃から1250℃の
温度で1時間溶体化処理した場合の溶体化処理温度と平
均結晶粒径の関係を示した図である。
【図3】1000℃で圧延したTi−22Al−27N
b合金を1100℃で5時間溶体化処理した後、氷水中
で急冷したもの(左)、並びに毎秒0.5℃の速度で徐
冷したもの(右)の金属組織を示した電子顕微鏡写真で
ある。
b合金を1100℃で5時間溶体化処理した後、氷水中
で急冷したもの(左)、並びに毎秒0.5℃の速度で徐
冷したもの(右)の金属組織を示した電子顕微鏡写真で
ある。
【図4】1150℃で圧延したTi−22Al−27N
b合金を1150℃で1時間溶体化処理した後、氷水中
で急冷したもの(左)、並びに毎秒0.5℃の速度で徐
冷したもの(右)の金属組織を示した電子顕微鏡写真で
ある。
b合金を1150℃で1時間溶体化処理した後、氷水中
で急冷したもの(左)、並びに毎秒0.5℃の速度で徐
冷したもの(右)の金属組織を示した電子顕微鏡写真で
ある。
【図5】図3および図4に示した材料について室温から
800℃の温度範囲で真空中で引張試験を行い、0.2
%耐力、引張強度および破断伸びを示した図である。
800℃の温度範囲で真空中で引張試験を行い、0.2
%耐力、引張強度および破断伸びを示した図である。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 14/00
C22F 1/18
C22F 1/00 683
C22F 1/00 691
C22F 1/00 694
Claims (5)
- 【請求項1】 Ti,AlおよびNbを含有するO相基
合金であって、結晶組織はα2相を1〜20Vol%含有
し、平均結晶粒径が90μm以下の微細粒組織を有する
ことを特徴とするO相基Ti−Al−Nb系合金。 - 【請求項2】 室温において1200MPa以上の引張
強度と5%以上の延性を有する請求項1のO相基Ti−
Al−Nb系合金。 - 【請求項3】 結晶組織はα 2 相を1〜20Vol%およ
びB2相/β相を80〜99Vol%含有し、平均結晶粒
径が90μm以下の微細粒組織を有することを特徴とす
る請求項1のO相基Ti−Al−Nb系合金。 - 【請求項4】 平均結晶粒径が40〜80μmの微細粒
組織を有することを特徴とする請求項3のO相基Ti−
Al−Nb系合金。 - 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかの合金の製
造方法であって、950℃以上B2/β変態強度以下の
温度範囲で熱間加工を加え、その後、B2/β変態温度
以上1400℃以下の温度で液体化処理することを特徴
とするO相基Ti−Al−Nb系合金の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33067799A JP3486670B2 (ja) | 1999-11-19 | 1999-11-19 | O相基Ti−Al−Nb系合金とその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33067799A JP3486670B2 (ja) | 1999-11-19 | 1999-11-19 | O相基Ti−Al−Nb系合金とその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001152269A JP2001152269A (ja) | 2001-06-05 |
JP3486670B2 true JP3486670B2 (ja) | 2004-01-13 |
Family
ID=18235356
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33067799A Expired - Lifetime JP3486670B2 (ja) | 1999-11-19 | 1999-11-19 | O相基Ti−Al−Nb系合金とその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3486670B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115194065B (zh) * | 2022-06-27 | 2023-06-23 | 中国航发北京航空材料研究院 | 热膨胀敏感且低塑性Ti-Al-Nb合金的锻造工艺 |
CN115971492B (zh) * | 2022-09-30 | 2024-03-15 | 北京钢研高纳科技股份有限公司 | Ti2AlNb合金板材及其制备方法和应用 |
-
1999
- 1999-11-19 JP JP33067799A patent/JP3486670B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001152269A (ja) | 2001-06-05 |
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