JP3374553B2 - Ti−Al系金属間化合物基合金の製造方法 - Google Patents
Ti−Al系金属間化合物基合金の製造方法Info
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Description
ジェットエンジン等の航空宇宙分野を中心に広い分野に
おいて今後利用が予想される、金属間化合物TiAlとTi3A
l とを含んだ合金の常温延性、強度および靱性のバラン
スを改善するための加工熱処理を行う、Ti−Al系金属間
化合物基合金の製造方法に関する。
す。この図からわかるように、Al:30〜70原子%の領域
におけるTi−Al金属間化合物として、TiAl (γ) とTi3A
l(α2)とがある。
成されており、軽量 (比重 3.8) でありながら耐熱性が
優れていることから、TiAlを基とする合金 (TiAl基合
金) は、将来のジェットエンジン、排気バルブ、ターボ
チャージャー等の材料として期待されている。しかし、
この合金材料は金属間化合物であるが故に非常に脆く、
難加工性の材料である。特に問題となるのは常温延性で
ある。
調整の両面から検討されてきた。化学成分については、
常温延性がTiAlの化学量論組成から若干Ti-rich 側にず
らした組成 (Al:48原子%前後) において得られやすい
ため、このあたりの組成で合金設計することが多い。こ
の場合、Ti-rich であることから、TiAl相の他に、少量
のTi3Al 相が生成し、2相組織となる。現在のところ、
常温延性に優れているTiAl基合金はこのような2相組織
を呈するものがほとんどである。この基本組成に、常温
延性の向上を狙って、第3元素として数%程度のV、M
n、Cr、Moなどの元素を添加することも行われている。
面がラメラ組織では常温延性が得られにくく、加工や熱
処理による組織の微細化やラメラ組織と等軸粒の混合組
織が常温延性に有利であることが報告されている (Y.
W. Kim et al, "Progress inthe Understanding of Gam
ma Titanium Aluminide", J. Metals (August, 1991)p.
40-47 参照) 。
00℃で加工する方法 (特開平2−274307号公報) 、900
〜1450℃で加工する方法 (特開平3−249147号公報) な
どが知られている。この方法による組織の微細化は、Al
Ti基合金の常温延性を改善するものの、耐熱材料として
重要な特性である耐熱性や破壊靱性が低下する傾向があ
る。
工は、金型と加工物を同時に加熱しながら通常の圧延や
押出よりも数段遅い速度で鍛造する恒温鍛造が有効であ
り、この恒温鍛造中に組織の微細化が起こり、常温にお
ける強度や延性が改善される。しかし、粗大粒組織を加
工することになるため、加工中の動的再結晶が不均質に
起こり、不均質な組織となりやすい。上記2相組織のTi
Al基合金の恒温鍛造においては、上記Kim らの報告の図
4にも見られるように、板表面に平行な層状組織が生成
し易い。そのため、組織の微細化が起こっても、不均質
な組織となり、十分な延性改善に至っていない。
制限している理由は、常温延性や破壊靱性が低いことで
ある。これらの特性を、高温強度を低下させずに向上さ
せることが、工業的に重要である。TiAl基合金は、加工
や熱処理により組織が大きく変化し、これに伴い機械的
性質も大きく変化する。例えば、鋳造状態や高温のα域
での熱処理により得られる粗大なラメラ粒組織は、高温
強度や破壊靱性に優れているが、常温延性は非常に乏し
い。一方、微細粒組織では、前述のように常温延性は比
較的得られやすいが、高温強度や破壊靱性が乏しい。
めの重要な課題である常温延性や破壊靱性を、高温強度
を低下させずに改善することにより、これら3つの特性
バランスに優れた合金を製造することができる、Ti−Al
系金属間化合物基合金の製造方法を提供することであ
る。
以上、800 ℃における0.2 %耐力が32 kgf/mm2以上、破
壊靱性が60 kgf/mm3/2以上の特性を有する、Ti−Al系金
属間化合物基合金の製造方法を提供することである。
械的性質の関係を見ると、全体が粗大なラメラ粒からな
る組織は、高温強度や破壊靱性に優れているが、常温延
性は非常に乏しい。一方、微細粒組織では常温延性は比
較的得られやすいが、高温強度や破壊靱性が乏しい。こ
の点に着目して、全体が微細なラメラ粒から成る組織を
つくり出せば、常温延性、高温強度、破壊靱性の特性バ
ランスが優れたTi−Al系金属間化合物基合金が得られる
と考えて検討を重ねた結果、ラメラ微細粒組織の形成方
法に関し、次の知見を得るに至り、本発明を完成した。
金において、全体をラメラ組織とするには、溶解あるい
は熱処理により高温のα−Ti (以下、単にαともいう)
単相域に保持あるいはこれを経由して冷却されることが
必須である。
結晶粒の粒径であり、α単相域で加工して再結晶させる
ことにより、母相のα結晶粒を微細化することができ
る。このα単相域での加工温度が1300℃を超える高温域
である場合、加工時の歪速度が小さいと、目的とするα
結晶粒の微細化が十分に行われない。
結晶粒を微細化した後、加工後の冷却中または冷却後の
時効処理によりγ相 (TiAl) を生成させると同時に、α
相 (α−Ti) をα2 相(Ti3Al) に規則変態させると、目
的とするラメラ微細粒組織が得られる。
%、残部TiからなるTi−Al2元系合金またはこのTiの一
部をMo、Mn、V、Cr、Nb、WおよびSiから成る群から選
んだ少なくとも一種の元素合計10原子%までにより置換
したTi−Al系合金に、1300℃超のα−Ti単相域で1/sec
以上の歪速度で30%以上の加工度の加工を施して細粒化
した後、得られた微細結晶粒の内部にTiAlとTi3Al のラ
メラを生成させて微細なラメラ粒組織とするラメラ形成
処理を行うことを特徴とする、延性、高温強度、靱性の
バランスに優れた特性を有するTi−Al系金属間化合物基
合金の製造方法である。
α単相域での加工は、断面積比あるいは高さ比で30%以
上の加工度の加工を1回以上施すことにより行う。ま
た、前記ラメラ形成処理は、加工後に化学成分により
定まる2〜50℃/sの範囲内の臨界冷却速度以下の速度
で、少なくともα−Ti相とTiAl相との共存領域内まで、
好ましくは常温まで、冷却することにより行うか、或い
は加工後に化学成分により定まる2〜50℃/sの範囲内
の臨界冷却速度以上の速度で、α−Ti相とTiAl相との共
存領域内またはTi3Al 相とTiAl相との共存領域内、或い
はそれ以下の温度まで冷却し、次いで該共存領域内の温
度に加熱することにより行う。
工条件を限定した理由を次に述べる。
めに、合金を1300℃超のα単相域で加工する。従って、
化学成分は、1300℃超の温度でα単相となり、かつ常温
でTiAl相を含む必要がある。この点から、Al含有量は38
〜52原子%の範囲内に制限される。しかし、Al含有量が
42原子%より少ないと、常温でTi3Al の量の方がTiAlよ
りも多くなり、優れた耐熱性が得られない。従って、Al
含有量は42〜52原子%の範囲内とする。好ましいAl含有
量は46〜50原子%である。これより高Al側 (即ち、Al:
50〜52原子%) では、常温延性が幾らか低下する傾向が
あり、低Al側 (即ち、Al:42〜46原子%) では、耐熱性
がやや低下する。
素で置換しても、その合計量が10原子%までであれば、
組織の変化挙動は類似している。そのような追加元素と
しては、Mo、Mn、V、Cr、Nb、WおよびSiが挙げられ
る。この追加元素の合計量は、好ましくは5原子%以下
である。
することが必要であり、また微細なラメラ粒組織を得る
ために、母相となるα結晶粒を微細化しておく必要があ
る。本発明では、1300℃超のα単相域で加工して、α相
を再結晶させ、その結晶粒を微細化しておく。また、こ
の加熱を経ることで、冷却後に全体がラメラ粒組織とな
る。本発明において加工温度を1300℃超とするのは、こ
れより低温では、後述する加工時の歪速度が1/sec未満
の場合でも、α単相域で加工すれば微細なラメラ粒組織
になるためである。
温度範囲は成分 (Al量) によって異なる。従って、加工
温度は、1300℃超であって、かつそのAl量でα単相とな
る温度とする。図1に示す状態図からわかるように、α
単相域温度は、Al量の増加に伴い上昇する。例えば、図
1に示すTi−Al2元系の場合で、Alが45原子%までは13
00℃でα単相となるが、Alが50原子%では温度を約1400
℃以上にしないとα単相は得られない。
工によりα相の微細粒再結晶組織を生じさせるには、高
温になるほど大きな歪速度が必要となる。加工温度が13
00℃以下では、歪速度が低くても再結晶組織は微細化す
る。しかし、本発明のように1300℃を超える高温域での
加工の場合、歪速度が高くないと、再結晶組織が微細に
ならないことが判明した。具体的には、1300℃よりやや
高いあたり (例、1305〜1310℃) で、少なくとも歪速度
が1/sec以上あれば、加工により微細なα再結晶粒組織
が得られる。歪速度は好ましくは2/sec以上である。ま
た、加工温度が高くなるほど、歪速度を増大させること
が望ましい。例えば、加工温度が1400℃の場合、歪速度
は3/sec以上、好ましくは5/sec以上とすることが望ま
しい。つまり、冷却中あるいは冷却前に再結晶が可能で
ある限り、歪速度は大きい方が細粒組織が得られるため
に好ましい。
加工度において30%未満では、全体にわたり組織を細粒
化することが困難である。均質性の点から、加工度を50
%以上とすることが好ましい。加工の手段も特に制限さ
れず、圧延、鍛造、押出、圧縮等のいずれでもよく、粉
末加工等の適用も考えられる。
Al (γ) 相を析出させると同時に、冷却によりα相 (α
−Ti) をTi3Al(α2)相に規則変態させることによって、
TiAlとTi3Al の2相からなるラメラ粒組織を形成する処
理のことである。ラメラ形成処理、即ち、TiAl相の析出
には、冷却速度によって次の2種類の方法がある。
に析出するような低速度で冷却を行う。具体的には、Ti
Al相の析出が起こる最大冷却速度である臨界冷却速度以
下の速度で、少なくともTiAl相が析出するα−Ti相とTi
Al相の共存領域 (α+γ域)内まで、望ましくは常温ま
で冷却する。それにより、冷却のみで、目的とするTiAl
とTi3Al の2相からなる微細なラメラ粒組織を得ること
ができる。
動し、Al量が少ないほど小さくなる。例えば、Ti−42%
Alでは2℃/sec、Ti−48%Alでは10℃/sec、Ti−52%Al
では50℃/secがが臨界冷却速度であるので、本発明の成
分範囲では臨界冷却速度は2〜50℃/secの範囲内とな
る。冷却速度が臨界冷却速度より速くなると、冷却中に
TiAl相の析出は起こらないので、冷却のみでラメラ組織
を得ることはできなくなり、次に述べるように時効処理
が必要となる。
界冷却速度より高速度で行い、微細α粒 (冷却中にα2
相に変態) 組織を得た後、α2 +γ (Ti3Al 相+TiAl
相) あるいはα+γ (α−Ti相+TiAl相) の共存領域で
時効処理して、TiAl相を析出させることにより、TiAlと
Ti3Al の2相からなる微細なラメラ粒組織を得る。
冷却速度より高速度で上記の共存領域内まで冷却し、そ
のままこの共存領域内に温度保持して行ってもよく、或
いは(b) 加工後に臨界冷却速度より高速度で上記の共存
領域より低温 (例、常温) まで一旦冷却した後、再び共
存領域内まで加熱し、温度保持することによって行って
もよい。保持時間は温度によっても異なるが、一般に1
〜8時間の範囲内が好ましい。時効処理後の冷却速度は
特に制限されない。
パターンの例を示す。図2は、上記の第1のラメラ形成
処理方法のヒートパターン例である。即ち、α単相域で
所定の加工を行ってから、臨界冷却速度以下の速度での
徐冷により常温まで冷却することによって、冷却のみで
TiAlとTi3Al の2相からなるラメラ組織を得る。
法のヒートパターン例であり、α単相域での加工後、臨
界冷却速度より高速でα2 +γの2相域 (Ti3Al+TiAl共
存領域) 内に急冷し、次いでこの2相域内で温度保持し
て時効処理してTiAlを析出させ、TiAlとTi3Al の2相か
らなるラメラ組織としてから常温まで冷却する。
法のヒートパターン例であり、α単相域での加工後、臨
界冷却速度より高速で常温まで急冷した後、α2 +γの
2相域に再加熱して時効処理を行ってTiAlを析出させ、
TiAlとTi3Al の2相からなるラメラ組織を形成する。
ために行うものであるから、α+γ2相域内の温度で行
ってもよい。この場合には、時効処理後の冷却時にα相
からα2 相への規則変態が起こり、やはりTiAlとTi3Al
の2相からなる微細粒ラメラ組織が得られる。
6 原子%Mo (合金A)およびTi−48.4原子%Al−0.6 原
子%Mo (合金B) のインゴットを、1400℃でHIP処理
した後、40×40×40 (mm) のブロックを切出し、表面の
冷却による加工中の割れ発生を抑制するために、各ブロ
ックを厚さ10 mm のTi−6Al−4V合金板で包んだシー
ス材 (封入材) とした。
気炉でα単相域まで加熱し、加工速度が調整できるプレ
スを用いて圧縮加工を施した。加工条件は表1に示すと
おりである。表中、加工度はシースを含まない合金ブロ
ックのみの厚さで求めた値である。加工後の冷却速度は
0.5 ℃/secのほぼ一定とし、この速度で室温まで冷却し
た。この冷却速度は、合金AおよびBのいずれについて
も、臨界冷却速度より小さい速度である。
属顕微鏡で確認したところ、各合金材はいずれも全体が
ラメラ組織であった。この金属顕微鏡組織写真から平均
ラメラ粒径を求めた。各合金材の常温引張伸び、800 ℃
における0.2 %耐力、常温の破壊靱性の測定結果も表1
に併せて示す。引張試験は、厚さ1mm、平行部の幅5m
m、長さ10 mm の板状引張試験片を用いて、歪速度を10
-3/secとして常温および800 ℃で実施した。破壊靱性試
験はCT試験片(ハーフサイズ) を用いた。
却を臨界冷却速度より大きな速度で行い、冷却後に時効
処理を行った。加工条件、冷却速度、時効処理条件を、
得られた合金材の組織および機械的特性の測定結果とと
もに、次の表2に示す。
明の方法によれば、TiAlとTi3Al の2相からなる微細粒
ラメラ組織を持つTi−Al系金属間化合物基合金が製造さ
れる。得られた合金は、ラメラ組織に特有の優れた高温
強度と破壊靱性を備え、同時にラメラ粒が微細であるた
め常温延性も向上している。その結果、常温延性2%以
上、800 ℃における0.2 %耐力32 kgf/mm2以上、破壊靱
性60 kgf/mm3/2以上という、従来にない優れた常温延
性、高温強度、破壊靱性の特性バランスを示すTi−Al系
金属間化合物基合金を確実に製造することが可能とな
る。
を示す線図である。
ーンを示す線図である。
パターンを示す線図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 Al: 42〜52原子%、残部TiからなるTi−
Al2元系合金またはこのTiの一部をMo、Mn、V、Cr、N
b、WおよびSiから成る群から選んだ少なくとも一種の
元素合計10原子%までにより置換したTi−Al系合金に、
1300℃超のα−Ti単相域で1/sec以上の歪速度で30%以
上の加工度の加工を施して細粒化した後、得られた微細
結晶粒の内部にTiAlとTi3Al のラメラを生成させて微細
なラメラ粒組織とするラメラ形成処理を行うことを特徴
とする、延性、高温強度、靱性のバランスに優れた特性
を有するTi−Al系金属間化合物基合金の製造方法。 - 【請求項2】 1300℃超のα単相域での加工が、断面積
比あるいは高さ比で30%以上の加工度の加工を1回以上
施すことであり、前記ラメラ形成処理が、加工後に化学
成分により定まる2〜50℃/sの範囲内の臨界冷却速度以
下の速度で、少なくともα−Ti相とTiAl相との共存領域
内まで冷却することである、請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 1300℃超のα単相域での加工が、断面積
比あるいは高さ比で30%以上の加工度の加工を1回以上
施すことであり、前記ラメラ形成処理が、加工後に化学
成分により定まる2〜50℃/sの範囲内の臨界冷却速度よ
り速い速度で、α−Ti相とTiAl相との共存領域内または
Ti3Al 相とTiAl相との共存領域内或いはそれ以下の温度
まで冷却してから、該共存領域内の温度に加熱すること
である、請求項1記載の方法。
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- 1994-11-22 JP JP28822494A patent/JP3374553B2/ja not_active Expired - Fee Related
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