JP6540075B2 - TiAl系耐熱部材 - Google Patents
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Description
一方、燃費や燃焼効率を改善するために、排ガス温度は高温化する傾向にあり、900℃を超える高温域での強度特性の改善が重要課題になっている。
例えば、特許文献1には、Al:38〜45原子%、Mn:3〜10原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなるTiAl基合金が開示されている。
同文献には、TiAl基合金中のラメラー組織とβ相とを適切に制御することにより、TiAl基合金の機械加工性と高温強度とを両立できる点が記載されている。
同文献には、TiAl基合金において、所定の平均粒径において室温での延性、特に衝撃特性が大幅に改善される点が記載されている。
(1)Al:42〜52原子%を含むTi−Al系合金に、1300℃超のα−Ti単相域で1/sec以上の歪速度で加工を施して細粒化し、
(2)得られた微細結晶粒の内部にTiAlとTi3Alのラメラを生成させて微細なラメラ粒組織とするラメラ形成処理を行う
Ti−Al系金属間化合物基合金の製造方法が開示されている。
同文献には、全体が微細なラメラ粒から成る組織は、常温延性、高温強度、破壊靱性の特性バランスが優れている点が記載されている。
同文献には、ラメラ層間隔を制御することにより、目的に応じた特性(強度、硬度、耐熱性、耐衝撃性等)をコントロールすることが可能になる点が記載されている。
一方、TiAl系合金において、母材自体の硬度を上げることは可能であるが、硬度が高くなるほど母材の靱性が劣化する。そのため、母材全体を高硬度させた材料は、高負荷がかかる実用部材として使用できない。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、表面破壊の起点の増加や製造コストの増加を生じさせることなく、表面のみを高硬度化させたTiAl系耐熱部材を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、TiAl系耐熱部材の一つであるタービンホイールに対して本発明を適用し、かつ結晶粒径を制御することで、タービンホイールの耐久性を向上させることにある。
(1)前記TiAl系耐熱部材は、
28.0mass%≦Al≦35.0mass%、
1.0mass%≦Nb+Mo+W+Ta≦15.0mass%、
0.1mass%≦Cr+Mn+V≦5.0mass%、及び、
0.1mass%≦Si≦1.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。
(2)前記TiAl系耐熱部材は、
その表面の全部又は一部に内部より硬さの高い硬化層を備え、
次の(a)式で表される硬さ比が1.4以上2.5以下である。
硬さ比=HVS/HVI ・・・(a)
但し、
HVS(表層の硬さ)は、表面から0.02mm±0.005mmの位置におけるビッカース硬さ(荷重:0.98N)、
HVI(内部の硬さ)は、表面から0.50mm±0.10mmの位置におけるビッカース硬さ(荷重:0.98N)。
前記TiAl系耐熱部材は、タービンホイールが好ましい。
前記タービンホイールの翼表層部は、平均結晶粒径が10μm以上50μm以下であり、かつ、結晶方位がランダムな等軸粒組織を呈するものが好ましい。
さらに、前記タービンホイールの翼内部は、平均結晶粒径が100μm以上500μm以下であり、かつ、結晶方位がランダムな等軸粒組織を呈するものが好ましい。
TiAl系合金の硬さは、α2相の量に依存し、α2相の量が多くなるほど硬度が高くなる。そのため、溶湯成分及び固液域の冷却速度を最適化することによって、内部の機械的特性を良好に維持したまま、表面のみを高硬度化させることができる。また、表面処理が不要であるので、表面破壊の起点の増加や製造コストの増加を生じさせることなく、表面のみを高硬度化させることができる。
[1. TiAl系耐熱部材]
本発明に係るTiAl系耐熱部材は、以下の構成を備えている。
(1)前記TiAl系耐熱部材は、
28.0mass%≦Al≦35.0mass%、
1.0mass%≦Nb+Mo+W+Ta≦15.0mass%、
0.1mass%≦Cr+Mn+V≦5.0mass%、及び、
0.1mass%≦Si≦1.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。
(2)前記TiAl系耐熱部材は、
その表面の全部又は一部に内部より硬さの高い硬化層を備え、
次の(a)式で表される硬さ比が1.4以上2.5以下である。
硬さ比=HVS/HVI ・・・(a)
但し、
HVS(表層の硬さ)は、表面から0.02mm±0.005mmの位置におけるビッカース硬さ(荷重:0.98N)、
HVI(内部の硬さ)は、表面から0.50mm±0.10mmの位置におけるビッカース硬さ(荷重:0.98N)。
本発明に係るTiAl系耐熱部材は、TiAl系合金からなる。TiAl系合金は、以下のような元素を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。なお、以下の成分範囲の説明において、各成分の含有量は、材料全体の平均組成を表す。
(1)28.0mass%≦Al≦35.0mass%:
Alは、Tiとともに金属間化合物γ(TiAl)、α2(Ti3Al)を構成する必須元素である。Al量が少なすぎると、α2相の生成量が過剰となる。その結果、内部の延性及び靱性が低下するとともに、耐酸化性にも劣る。従って、Al量は、28.0mass%以上である必要がある。Al量は、さらに好ましくは、30.0mass%以上、さらに好ましくは、31.0mass%以上である。
「Nb+Mo+W+Ta」は、Nb、Mo、W及びTa(以下、「Nb等」ともいう)の総量を表す。また、総量が上記の範囲内にある限りにおいて、Nb等はいずれか一種が含まれていても良く、あるいは、二種以上が含まれていても良いことを表す(Nb≧0mass%、Mo≧0mass%、W≧0mass%、Ta≧0mass%)。
「Cr+Mn+V」は、Cr、Mn、及びV(以下、「Cr等」ともいう)の総量を表す。また、総量が上記の範囲内にある限りにおいて、Cr等はいずれか一種が含まれていても良く、あるいは、二種以上が含まれていても良いことを表す(Cr≧0mass%、Mn≧0mass%、V≧0mass%)。
Siは、TiAl系材料の耐酸化性の向上、及びTi−Si系化合物の析出によるクリープ特性の向上に非常に有効な元素である。また、Siは、鋳造まま状態で得られるラメラ組織の高温安定性を向上させる。さらに、Siは、溶湯の融点を低下させるため、凝固時の組織制御が容易となる。このような効果を得るためには、Si量は、0.1mass%以上である必要がある。Si量は、さらに好ましくは、0.2mass%以上、さらに好ましくは、0.3mass%以上である。
TiAl系合金は、上述した主構成元素に加えて、以下の1又は2以上の副構成元素をさらに含んでいても良い。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。なお、以下の成分範囲の説明において、各成分の含有量は、材料全体の平均組成を表す。
Cは、γ相及びα2相に固溶し、これらを強化することにより硬度を高める作用を有する。このような効果を得るためには、C量は、0.01mass%以上が好ましい。C量は、さらに好ましくは、0.03mass%以上、さらに好ましくは、0.06mass%以上である。
一方、C量が過剰になると、その効果は飽和し、延性が低下する。従って、C量は、0.2mass%以下が好ましい。C量は、さらに好ましくは、0.15mass%以下、さらに好ましくは、0.12mass%以下である。
Bは、γ/α2層状組織の結晶粒を微細化させる効果があり、表面においても硬度を高める効果がある。また、Bは鋳造性を改善するため、凝固時の組織制御が容易となる。このような効果を得るためには、B量は、0.005mass%以上が好ましい。B量は、さらに好ましくは、0.01mass%以上、さらに好ましくは、0.02mass%以上である。
一方、B量が過剰になると、ホウ化物であるTiB2が多量に析出し、強度及び靱性を低下させる。従って、B量は、0.200mass%以下が好ましい。B量は、さらに好ましくは、0.150mass%以下、さらに好ましくは、0.100mass%以下である。
O、Nは、γ相及びα2相に固溶し、強化に作用するが、過剰になると延性を低下させる。そのため、不可避的不純物として、O≦0.3mass%、N≦0.2mass%とするのが好ましい。
本発明に係るTiAl系耐熱部材は、その表面に硬化層を備えている。TiAl系耐熱部材は、表面の全部が硬化層で覆われていても良く、あるいは、表面の一部が硬化層で覆われていても良い。
「硬化層」とは、TiAl系耐熱部材の表層に形成された領域であって、内部より硬さの高い領域をいう。
本発明に係るTiAl系耐熱部材は、次の(a)式で表される硬さ比が1.4以上2.5以下である必要がある。
硬さ比=HVS/HVI ・・・(a)
但し、
HVS(表層の硬さ)は、表面から0.02mm±0.005mmの位置におけるビッカース硬さ(荷重:0.98N)、
HVI(内部の硬さ)は、表面から0.50mm±0.10mmの位置におけるビッカース硬さ(荷重:0.98N)。
これに対し、表層部分のα2体積率を内部に比べて増加させると、内部の機械的特性を良好に維持したまま、表層のみを硬化させることができる。
一方、硬さ比が過度に大きくなる(すなわち、表層の硬さが過度に大きくなる)と、かえって表面破壊が起きやすくなる。従って、硬さ比は、2.5以下である必要がある。硬さ比は、さらに好ましくは、2.4以下、さらに好ましくは、2.2以下である。
同様に、成分及び製造条件を最適化すると、内部の硬さ(HVI)は、HV400以下、あるいは、HV300以下となる。
「硬化層深さ」とは、、表面から硬さが(HVS+HVI)/2となる位置(又は、硬さがHVS−0.5(HVS−HVI)となる位置)までの長さをいう。
後述するように、溶湯を凝固させる場合において、表層の固液域の冷却速度を所定の範囲にすると、初晶β相のサイズ、すなわち、硬化層深さを制御することができる。
一方、硬化層深さを必要以上に大きくしても、効果に差が無く、実益がない。また、硬化層深さを過度に大きくすると、表面破壊が起きやすくなる。従って、硬化層深さは、0.25mm以下が好ましい。硬化層深さは、さらに好ましくは、0.20mm以下、さらに好ましくは、0.15mm以下である。
[1.2.3.1. 定義]
「α2体積率(体積%)」とは、3000倍で5視野をSEMの反射電子像で撮影し、各視野内に含まれるα2相(白く見える領域)の総面積(ΣS)を求め、これを視野の総面積(ΣS0)で割ることにより得られる値(=ΣS×100/ΣS0)をいう。
「硬化層のα2体積率」とは、TiAl系耐熱部材の表面から0.02mm±0.005mmの位置において測定されたα2相の体積率をいう。
「内部のα2体積率」とは、TiAl系耐熱部材の表面から0.50mm±0.10mmの位置において測定されたα2相の体積率をいう。
α2相はγ相より硬いため、α2相が多いほどγ/α2層状組織の硬さは上昇する。TiAl系耐熱部材の表層を強化し、これによってTiAl系耐熱部材の機械的特性を向上させるためには、硬化層のα2体積率は、30体積%以上が好ましい。硬化層のα2体積率は、さらに好ましくは、35体積%以上、さらに好ましくは、40体積%以上である。
内部のα2体積率の量が小さすぎると、十分な強度が得られない。従って、内部のα2体積率は、5体積%以上が好ましい。内部のα2体積率は、さらに好ましくは、10体積%以上、さらに好ましくは、15体積%以上である。
一方、内部のα2体積率が大きすぎると、著しく脆性な材料となり、靱性が低下する。従って、内部のα2体積率は、30体積%未満が好ましい。内部のα2体積率は、さらに好ましくは、25体積%以下、さらに好ましくは、20体積%以下である。
内部の組織は、高温強度の点から、γ(TiAl)/α2(Ti3Al)層状組織が好ましい。内部の組織をγ/α2層状組織に維持したまま、表層のみを硬化させると、機械的特性に優れたTiAl系耐熱部材が得られる。
本発明に係るTiAl系耐熱部材は、種々の用途に用いることができる。
TiAl系耐熱部材としては、例えば、
(1)自動車のターボチャージャーなどに用いられるタービンホイール、
(2)航空機のジェットエンジン用LPT(Low Pressure Turbine)ブレード、
(3)自動車用のエンジンバルブ、
などがある。
タービンホイールは、高温で高速回転しつつ、アクセルのオンオフにより加速減速が繰り返される。この時、翼表層部には曲げ応力、翼部全体には遠心力が負荷される。
曲げ強度は、結晶粒が微細になるほど高くなるため、翼表層部は、結晶粒が微細であるのが好ましい。特に、翼表層部の平均結晶粒径を10μm以上50μm以下とすることで、高い曲げ強度を得ることができる。翼表層部の平均結晶粒径は、好ましくは、12μm以上45μm以下、さらに好ましくは、15μm以上40μm以下である。
ここで、「翼表層部」とは、表面から深さ50μmまでの部分をいう。
ここで、「翼内部」とは、表面から深さ200μmの位置から、翼の中心までの部分をいう。
タービンホイールの特性を安定化させるためには、翼表層部及び翼内部のいずれも、フルラメラ組織であり、かつ、結晶方位がランダムな等軸粒組織が好ましい。
本発明に係るTiAl系耐熱部材は、以下の方法により製造することができる。
まず、上述した組成となるように原料を配合し、溶解する(溶解工程)。
原料の溶解方法は、特に限定されるものではなく、均一な溶湯が得られる方法であればよい。溶解方法としては、例えば、レビテーション溶解法、真空誘導溶解法、プラズマ・スカル溶解法などがある。
次に、溶湯を鋳型に鋳造する。本発明においては、溶湯の成分が最適化されているので、初晶としてβ相が晶出する。初晶β相は、素材成分よりAl量が低いため、凝固後はα2量の多いラメラ組織を形成し、硬さ向上に寄与する。
一方、固液域の冷却速度が遅すぎると、表層において初晶のβ相は十分に成長するが、冷却中に元素拡散が生ずる。そのため、成分が均質化し、硬さに寄与するα2相が十分に形成されず、硬さの向上程度が小さい。従って、冷却速度は、50℃/s以下が好ましい。冷却速度は、さらに好ましくは、45℃/s以下、さらに好ましくは、40℃/s以下である。
なお、タービンホイールにおいては、凝固速度が結晶粒径に影響を及ぼす。上記の固液域の冷却速度で製造されるタービンホイールは、翼表層部及び翼内部の平均結晶粒径が上述した範囲となるため、良好な耐久性を得ることが可能となる。
次に、必要に応じて、鋳造部材をHIP処理する(HIP処理工程)。HIP処理は、必ずしも必要ではないが、HIP処理を行うと、内部の鋳造欠陥が消滅し、信頼性が向上する。HIP処理条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
次に、必要に応じて、鋳造部材又はそのHIP処理品に対して、機械加工を施す(加工工程)。加工方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。なお、実質的に後加工が不要な場合には、後加工を省略することができる。
図11に、Ti−Al二元系状態図を示す。まず、初晶としてβ(βTi)相が析出するように、溶湯の成分を調整する。次いで、溶湯を鋳型に鋳造する。
この時、表層が固液域を通過する際の冷却速度を所定の範囲に制御すると、表層に形成される初晶β相の厚さを制御することができる。冷却の進行に伴い、初晶β相は、やがてAl含有量が相対的に少ないα(αTi)相となる。さらに冷却が進行すると、α相は、α2(Ti3Al)相とγ(TiAl)相のラメラ組織となる。初晶β相は、溶湯成分に比べてAl量が少ないため、表層は、内部に比べてα2相の量が多い。
TiAl系合金の硬さは、α2相の量に依存し、α2相の量が多くなるほど硬度が高くなる。そのため、溶湯成分及び固液域の冷却速度を最適化することによって、内部の機械的特性を良好に維持したまま、表面のみを高硬度化させることができる。また、表面処理が不要であるので、表面破壊の起点の増加や製造コストの増加を生じさせることなく、表面のみを高硬度化させることができる。
また、鋳造条件を調整することで、任意の部位に硬化層を形成することも可能である。例えば、タービンホイールの場合、表面強度が必要な翼根本部や、耐エロージョン性が必要な翼表面にのみ、硬化層を形成することができる。
また、タービンホイールにおいては、表面の硬化層に加えて、翼表層部と翼内部の結晶粒径を制御することで、耐久性を向上させることができる。
[1. 試料の作製]
原料として、純Ti、粒状Al、及び、その他の金属元素の純金属又は合金を用いた。原料を水冷銅坩堝内で溶解し、外径50mmのタービンホイールを鋳造した。
なお、比較例6については、鋳造後に浸炭処理を行った。
[2.1. 硬さ測定]
図1(a)に、タービンホイールの正面図を示す。図1(b)に、タービンブレードから切断された部分の平面図を示す。図1(c)に、翼間部の拡大図を示す。
まず、タービンブレードのほぼ中央を軸に対して垂直に切断した(図1(a))。次いで、翼間部の表層(表面から0.02mm±0.005mmの位置)、及び内部(表面から0.50mm±0.10mmの位置)のビッカース硬さを測定した(図1(b)、図1(c))。N=5、荷重=100gf(0.98N)とした。
さらに、表層の硬さHVSと内部の硬さHVIから、硬さ比を求めた。
翼間部の表層、及び内部の反射電子像を撮影した。図2(a)に、表層部の反射電子像の一例を示す。図2(b)に、内部の反射電子像の一例を示す。倍率は3000倍とし、各試料について、それぞれ5視野撮影した。黒く見えるγ相と、白く見えるα2相とのコントラスト差より、α2相の体積率を測定した。
[2.3.1. 曲げ強度]
図3(a)に、タービンブレードの正面図を示す。図3(b)に、タービンブレードから切断された部分の平面図を示す。図3(c)に、タービンブレードから切り出された試験片を示す。
まず、タービンブレードのほぼ中央を軸に対して垂直に切断した(図3(a))。切断された部材から、曲げ強度評価用の試験片を切り出した(図3(b))。さらに、試験片の元部を治具で固定し、翼の先端に曲げ荷重を付加した(図3(c))。試験は室温で実施し、N=3とした。
[2.3.2. 引張強度]
引張試験には曲げ試験と同様の試験片を用い、翼に負荷される遠心力を想定して、引張荷重を負荷した(図4参照)。試験は室温で実施し、N=3とした。
図5に、硬化層深さの測定方法の一例を示す。表層(0.02mm±0.005mm)と内部(0.50mm±0.10mm)との間において、所定間隔でビッカース硬さを測定した。荷重=100gf(0.98N)とした。表層の硬さHVSと内部の硬さHVIの差ΔHV(=HVS−HVI)を求め、硬さが内部より0.5ΔHV高い位置(換言すれば、硬さが(HVS+HVI)/2となる位置)を求めた。さらに、表面から当該位置までの長さ(硬化層深さ)を測定した。
[2.5. EPMA]
翼間部のAl量をEPMAにより測定した。
試料を鏡面まで研磨した後、腐食して結晶組織を現出させた。翼表層部及び翼内部について、それぞれ、ラメラ粒のサイズを結晶粒径として測定した。
結晶粒径の測定は、光学顕微鏡にて100倍で組織を撮影し、任意の長さの直線中の結晶粒数にて算出する切断法を用いた。
[2.7. 耐久試験]
タービンホイールの評価として、実体にて回転試験を実施した。試験は、排ガス温度:950℃、回転数:200,000rpmで実施した。耐久性は、加速と減速を繰り返して10時間で破壊するか否かで評価した。
表1及び表2に、成分、製造条件、及び結果を示す。
図6に、翼間部のEPMA測定結果を示す。図7に、表面からの距離とAl量との関係、及び表面からの距離とビッカース硬さHVとの関係を示す。
図8に、内部硬さと表層硬さとの関係を示す。図9に、固液域の冷却速度と硬化層深さとの関係を示す。図10に、硬化層深さと曲げ強度との関係を示す。
表1、及び図6〜図10より、以下のことがわかる。
ビッカース硬さHVは、α2体積率と相関がある。一方、翼間部のα2体積率は、内部に向かうほど高くなる。表層部のビッカース硬さHVが内部より高いのは、表層部のAl量が少なくなることによって、表層部のα2体積率が増加するためと考えられる。
(3)比較例1は、十分な硬化層深さが認められない(図9)。これは、固液域の冷却速度が速すぎるために、初晶β相が十分に成長しなかったためである。
比較例2、3もまた、十分な硬化層深さが認められない。これは、固液域の冷却速度が遅すぎるために、成分の均一化が進行したためである。
(5)比較例4は、表層の硬化が認められない。これは、Al量が過剰であるために、初晶がα相となるためである。
比較例5は、表層の硬さは高いものの、内部の硬さも同程度であり、表層のみ硬化させることはできなかった。これは、Al量が少なすぎるためである。
(6)比較例6は、浸炭処理を行っているため、表層は著しく硬化するものの、内部は硬化しない。また、浸炭処理が必要であり、コストも高い。
Claims (7)
- 以下の構成を備えたTiAl系耐熱部材。
(1)前記TiAl系耐熱部材は、
28.0mass%≦Al≦35.0mass%、
1.0mass%≦Nb+Mo+W+Ta≦15.0mass%、
0.1mass%≦Cr+Mn+V≦5.0mass%、及び、
0.1mass%≦Si≦1.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。
(2)前記TiAl系耐熱部材は、
その表面の全部に内部より硬さの高い硬化層を備え、
次の(a)式で表される硬さ比が1.4以上2.5以下である。
硬さ比=HVS/HVI ・・・(a)
但し、
HVS(表層の硬さ)は、表面から0.02mm±0.005mmの位置において測定されたビッカース硬さ(荷重:0.98N)、
HVI(内部の硬さ)は、表面から0.50mm±0.10mmの位置において測定されたビッカース硬さ(荷重:0.98N)。
(3)前記硬化層のα 2 体積率は、30体積%以上60体積%以下である。
但し、「硬化層のα 2 体積率」とは、表面から0.02mm±0.005mmの位置において測定されたα 2 相の体積率をいう。
(4)前記内部の組織は、γ(TiAl)/α 2 (Ti 3 Al)層状組織である。 - 前記TiAl系合金は、
0.01mass%≦C≦0.2mass%
をさらに含む請求項1に記載のTiAl系耐熱部材。 - 前記TiAl系合金は、
0.005mass%≦B≦0.200mass%
をさらに含む請求項1又は2に記載のTiAl系耐熱部材。 - 硬化層深さは、0.03mm以上0.25mm以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載のTiAl系耐熱部材。
但し、「硬化層深さ」とは、表面から硬さが(HVS+HVI)/2となる位置までの長さをいう。 - 前記TiAl系耐熱部材は、タービンホイールである請求項1から4までのいずれか1項に記載のTiAl系耐熱部材。
- 前記タービンホイールの表面から深さ50μmまでの翼表層部は、
平均結晶粒径が10μm以上50μm以下であり、かつ、
結晶方位がランダムな等軸粒組織を呈する
請求項5に記載のTiAl系耐熱部材。 - 前記タービンホイールの表面から深さ200μmの位置から、翼の中心までの翼内部は、
平均結晶粒径が100μm以上500μm以下であり、かつ、
結晶方位がランダムな等軸粒組織を呈する
請求項6に記載のTiAl系耐熱部材。
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