JP2004269979A - 耐熱鋳鋼、鋳鋼製耐熱部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大気中での溶解、鋳造が可能で、優れた耐熱性を示す耐熱鋳鋼を提供する。
【解決手段】本発明の耐熱鋳鋼は、全体を100質量%としたときに、C:0.5〜1.5%、Si:0.01〜2%、Mn:3〜20%、P:0.03〜0.2%、Ni:3〜20%、Cr:10〜25%、Nb:0.5〜4%およびAl:0.1%以下を含有すると共にMoとWとの1種または2種を合計で1.5〜6%含有し、残部が主としてFeからなることを特徴とする。本発明の耐熱鋳鋼は、オーステナイトベースのマトリックス相中に強化相である炭化物が分散したものであるが、Pの存在によりその炭化物の分散量が増加して、オーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、優れた高温特性を発現するようになった。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の耐熱鋳鋼は、全体を100質量%としたときに、C:0.5〜1.5%、Si:0.01〜2%、Mn:3〜20%、P:0.03〜0.2%、Ni:3〜20%、Cr:10〜25%、Nb:0.5〜4%およびAl:0.1%以下を含有すると共にMoとWとの1種または2種を合計で1.5〜6%含有し、残部が主としてFeからなることを特徴とする。本発明の耐熱鋳鋼は、オーステナイトベースのマトリックス相中に強化相である炭化物が分散したものであるが、Pの存在によりその炭化物の分散量が増加して、オーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、優れた高温特性を発現するようになった。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温環境下で使用される部材等の低コスト化を可能とする耐熱鋳鋼、鋳鋼製耐熱部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
航空機、自動車、発電設備等の各種分野では、高温のガスや蒸気等を流すハウジング、その内に配置されるバルブやタービンホイール等の耐熱部材を備えた装置が用いられる。このような高温環境下で使用される耐熱部材は、言うまでもなく、高温引張強度やクリープ強度等の優れた耐熱性が要求される。しかも、それらの部材が使用される装置の競争力向上のために、耐熱部材の低価格化、つまり、低コスト化が要求される。
【0003】
以下では、この耐熱部材の耐熱性確保と低コスト化について、自動車用過給器(ターボチャージャ)のタービンホイールを例に取り以下に説明する。
ガソリンエンジン用のタービンホイールは、900℃にもなる排気ガス中で高回転するため、高温環境下でも大きな遠心力等にも耐え得るよう、優れた高温強度が要求される。このような耐熱性を満足し信頼性の高い合金材料は以外に少なく、従来から、インコネル713C(Ni−12.5%Cr−4.2%Mo−6.1%Al−0.8%Ti−2.0%Nb:単位は質量%、以下同様)が、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンを問わず多用されてきた。しかし、この材料は、高価なNiを約70%以上も含有するため、非常に高価な材料であった。
【0004】
そこで、このインコネル713Cに準じた耐熱性を確保しつつ、そのNiの一部を安価なFeに替えた耐熱合金が開発されている。具体的には、GMR235(GM社製合金:Ni−15.5%Cr−4.5Fe−5%Mo−3.5%Al−2.5%Ti−0.15%C)、さらにはFeをベースとしたインコネル751(Ni−15.5%Cr−4.2%Fe−1.2%Al−4%Ti−0.1Si)等がある。しかし、これらの耐熱合金でも、依然としてNiの含有量が多く、材料的に観てもコスト高であることに変わりない。
【0005】
次に、これら合金は、高温域で安定なγ’相[Ni3(Al、Ti)]の析出強化を利用して耐熱性を高めている。このγ’相の析出には、Ni以外に活性なAlやTiをある程度多量に添加する一方で、正常なγ’相を安定して得るには、溶製時にAlやTiの酸化を防止することも必要となる。すなわち、これらの耐熱性合金を使用した場合、非酸化性雰囲気(通常は真空雰囲気)中で、原料溶解や鋳造を行わなければならず、製造工程から観ても非常にコスト高となっていた。
【0006】
このようなニーズに対し、組成的にFeをベースとし、さらに、TiやAlを多量に含有することなく大気中での溶解、鋳造を可能にして、組成的にも製造工程的にも低コスト化を図れる合金材料が下記の特許文献1、特許文献2または非特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−230572号公報
【特許文献2】
特開平7−228949号公報
【非特許文献1】
日本金属学会会報、6(1967)、P783−802「超耐熱合金の最近の進歩」中の図3
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1には、Feをベースに、所定量のC、Si、Cr、NiおよびCoを必須元素としたオーステナイト系耐熱鋳鋼が開示されている。また、上記特許文献2には、Feをベースに、所定量のC、Si、Nb、Cr、Ni、WおよびNを必須元素としたオーステナイト系耐熱鋳鋼が開示されている。さらに、非特許文献1には、CRM6D(クライスラー社製合金:Fe−5.0%Ni−20.0%Cr−5.0%Mn−1.0%Mo−1.0%W−1.0%Nb−1.0%C)やCRM15D(クライスラー社製合金:Fe−5.0%Ni−20.0%Cr−5.0%Mn−2.0%Mo−2.0%W−2.0%Nb−1.0%C−0.2N)の耐熱鋳鋼が開示されている。
【0009】
しかし、これらの各合金は、耐熱部材の製造コストの低減を可能とするものの、前述したγ’相[Ni3(Al、Ti)]を析出強化させる耐熱合金に比べて、その高温特性(耐熱性)が著しく劣るものであった。例えば、700℃での100hrクリープラプチャー強度を観ると、上記GMR235が400MPa以上であるのに対し、特許文献1の耐熱鋳鋼が200MPa程度、特許文献2の耐熱鋳鋼が150MPa程度、非特許文献1の耐熱鋳鋼が200MPa程度と、両者の格差は歴然としている。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、優れた耐熱性を確保しつつも、大気溶解を可能とし耐熱部材等の製造コスト削減を図れる耐熱鋳鋼を提供することを目的とする。また、それを使用した耐熱部材およびその製造方法をも提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、材料的にも製造工程的にもコスト削減を図り易いFeをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼について、著しく優れた耐熱性を発現する耐熱鋳鋼を新たに見出し、本発明を完成するに至った。
(耐熱鋳鋼)
すなわち、本発明の耐熱鋳鋼は、全体を100質量%としたときに、C:0.5〜1.5%、Si:0.01〜2%、Mn:3〜20%、P:0.03〜0.2%、Ni:3〜20%、Cr:10〜25%、Nb:0.5〜4%およびAl:0.1%以下を含有すると共にMoとWとの1種または2種を合計で1.5〜6%含有し、残部が主としてFeからなることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の耐熱鋳鋼は、Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼であり、Ni量が比較的少なく、組成的に安価である。また、AlやTiを多量に含有せず(但し、脱酸のための使用等、少量の使用は許容される)、大気中等の酸化性雰囲気中での溶解、鋳造を可能とするため、製造工程や製造設備の簡素化も図れる。従って、本発明によれば、耐熱鋳鋼およびそれを使用した耐熱部材等の製造コストを大幅に低減できる。
しかも本発明の耐熱鋳鋼の場合、従来の大気溶解可能なオーステナイト系耐熱鋳鋼を遙かに凌ぐ耐熱性を発現する。例えば、前述したAl、Tiを多量に使用し大気溶解が困難なGMR235等と比較すると、時効処理で強化することによって、ほぼ同等の高温強度(高温引張強度、クリープ強度等)を発現する。
【0012】
ところで、大気溶解可能なオーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、従来になく優れた耐熱性を発現する耐熱鋳鋼が得られた理由は完全に明らかとなっているわけではないが、それに至る経緯および現状考えられる理由は次の通りである。。
オーステナイト系耐熱鋳鋼が優れた耐熱性を発現するか否かは、Fe基マトリックス相自体の高温特性と、そのマトリックス相中での強化相の分散量に大きく依存する。本発明者はこの見地から、先ず、NiおよびCrによる耐熱鋳鋼の高温特性への影響を調査し、ベースとなる好適なFe−Ni−Crオーステナイト系耐熱鋳鋼を得た。次に、このマトリックス相をより強化すると共により多くの強化相(炭化物)をそのマトリックス相中に分散させるために、少なくともMn、Mo、Nb、CおよびPの適量添加が有効であるとの知見を得た。こうして、オーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、従来にない非常に優れた耐熱性を示す耐熱鋳鋼を得ることに成功した。
【0013】
この理由を詳細に述べると、本発明の耐熱鋳鋼は、脆化相であるラーベス相等の晶出が抑制された熱的に安定なγマトリックス相をもつ。そのマトリックス相がMo等の固溶によってその高温強度がさらに強化されている。そして、そのマトリックス相中には高温強度を高める炭化物[(Cr、Mo)23C6、Nb(C、N)等]が多く分散している。本発明の耐熱鋳鋼の場合、この多量の炭化物の晶出または析出にPが重要な役割を果していると考えられる。つまり、適量のPを含有させることにより、脆弱なP化合物等を生成させずに、前記炭化物のマトリックス相中での晶出または析出が促進された。しかも、そのPの存在により、前記炭化物がマトリックス相中で大きく凝集することなく、微細にかつ均一に分散するようになったと考えられる。
【0014】
いずれにしても、本発明の耐熱鋳鋼によれば、上記した適量のNi、Cr、Mn、Mo、Nb、CおよびPが相乗的に作用して、耐熱部材の製造コストの大幅な削減を図りつつ、その優れた耐熱性の確保が可能となる。
また、本発明の耐熱鋳鋼はさらに、N、B、Ca、Mgの1種または2種以上を添加して高温特性を改善したり、Pb、S、Te、Bi、Seの1種または2種以上を添加して被削性を改善することもできる(請求項2〜4)。
【0015】
また、請求項1の範囲において、「残部がFe及び不可避不純物元素からなる」ではなく、「残部が主としてFeからなる」と記載したのは、Fe以外の元素の少量添加を許容することを意味する。具体的には、高温特性改善のためのN、B、CaまたはMgの含有や被削性改善のためのPb、S、Te、Bi、SeまたはHfの含有を意味する。また、それ以外に、Ti、Zr、R.E.M.も少量添加であれば大気溶解可能である。その他、本発明にいう耐熱鋳鋼の性能に悪影響を与えない範囲で、他の元素が少量添加されたものやその他の元素を不純物として含むものも、本発明の耐熱鋳鋼に含まれるのは言うまでもない。
なお、各元素の機能の詳細については後述するが、本発明の耐熱鋳鋼は、Crを比較的多く含有したオーステナイト系鋳鋼であるところ、鋳鋼製耐熱部材等の耐酸化性等にも優れることは言うまでもない。従って、本発明の耐熱鋳鋼は、単に高温強度等のみならず、使用環境の観点からも広い用途をもち得るものである。
【0016】
(鋳鋼製耐熱部材)
上記耐熱鋳鋼は当然のごとく、鋳鋼製耐熱部材として適用することができる。
すなわち、本発明の鋳鋼製耐熱部材は、上記請求項1〜4のいずれかに記載した成分を含有する鋳鋼を鋳造して得られることを特徴とする。
この鋳鋼製耐熱部材には、上記耐熱鋳鋼を鋳造した鋳物自体の他、その鋳物に加工や熱処理等を施したものも含まれる。適用できる具体的部位としては、自動車等のエンジンでも特に厳しい耐熱性が要求される排気系部材があり、例えば、タービンホイール等である(請求項7)。
【0017】
(鋳鋼製耐熱部材の製造方法)
ところで、上記鋳鋼製耐熱部材は、次のような製造方法により製造されると好適である。
すなわち、上記請求項1〜4のいずれかに記載した成分を含有する溶湯を製造する溶湯製造工程と、該溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と、該鋳型中の溶湯を冷却して凝固させる凝固工程とからなることを特徴とする鋳鋼製耐熱部材の製造方法である。
【0018】
この製造方法の場合、上記各工程を行う雰囲気を問わない。すなわち、本発明の耐熱合金は、従来のγ’相の析出によって強化した耐熱合金とは異なり、大気中でも溶解可能な成分設計を行っているため、各工程を酸化雰囲気(大気中等)で行うことが可能である。これにより、鋳鋼製耐熱部材の製造コストを大幅に削減することができる。なお、この鋳鋼製耐熱部材に、鋳物およびその加工品等が含まれるのは前述した通りである。また、鋳鋼製耐熱部材は鋳物に切削加工等を施したもの以外に、種々の熱処理等を施したものでも良い。例えば、適切な時効処理を行うことで、前述した炭化物の微細な析出が促進され、耐熱部材の高温強度が一層改善される。
【0019】
ところで、本明細書でいう「耐熱鋳鋼」は、鋳造に使用する溶解前の原料であっても良いし、広くは、鋳造後の製品である耐熱鋳物やそれに加工等を施した耐熱部材であっても良い。「鋳鋼」と称しているのは炭素を含有するからであるが、これは鋳造用鉄合金と言い換えることもできる。
【0020】
また、本明細書でいう耐熱性(または高温特性)は、高温強度(高温引張強度、クリープ強度等)の他、高温環境下での耐食性等をも意味する。耐熱部材の用途等によって要求される特性は異なるため、例えば、高温引張強度等の一特性によってのみ耐熱性を評価することは妥当ではない。もっとも、他の耐熱鋳鋼等と比較するために、敢えてその指標を挙げるなら、後述のクリープラプチャー強度によりその耐熱性を評価すれば良い。その測定条件が異なる場合でも、ラーソンミラー指数を導入することで、種々の耐熱鋳鋼の耐熱性を客観的に評価できるからである。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。なお、以下では、主に耐熱鋳鋼について説明するが、その内容は、それ以外の鋳鋼製耐熱部材およびその製造方法のいずれにも適宜該当するものであることを断っておく。
(1)組成
先ず、必須添加元素についてその範囲の限定理由を説明する。
Cは、Cr、Mo、WおよびNbと結合することにより、一次炭化物および二次炭化物を形成して、鋳鋼の高温強度を高める。
Cが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Cが多過ぎると、炭化物の生成量が多くなり過ぎて耐食性と共に靭延性も劣化する。そこで、C量の下限は0.5%さらには0.8%が好ましい。また、その上限は1.5%さらには1.2%が好ましい。特に、C量が0.8〜1.2%であると好適である。
【0022】
Siは、溶解精錬時の脱酸剤として有効な元素である。
Siが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Siが多過ぎると、鋳鋼の靱性を低下させる。そこで、Si量の下限は0.01%さらには0.1%が好ましい。また、その上限は2.0%さらには1.5%が好ましい。特に、Si量が0.1〜1.5%であると好適である。
【0023】
Mnは、溶解精錬時の脱酸剤として有効な元素である。さらに、Mnは、後述のNを多量に固溶させて、高温強度を高めるのに有効な元素でもある。
Mnが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Mnが多過ぎると、高温域での耐酸化性が低下する。そこで、Mn量の下限は3%さらには4%が好ましい。また、その上限は20%さらには10%が好ましい。特に、Mn量が4〜10%であると好適である。
【0024】
Pは、高温強度に寄与する上記炭化物の形成を促進すると共に形成された炭化物を微細に分散させるのに有効な元素である。
Pが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Pが多過ぎると、P化合物を形成されて鋳鋼が脆化する。そこで、P量の下限は0.03%さらには0.04%が好ましい。また、その上限は0.2%さらには0.12%が好ましい。特に、P量が0.04〜0.12%であると好適である。
【0025】
Niは、下記Crと共に鋳鋼組織をオーステナイト化して、鋳鋼の耐熱性や耐酸化性を向上させると共に熱的安定性を保持する元素である。
Niが少な過ぎると、十分な耐熱性が確保されない。一方、Niが多過ぎても、高温強度に寄与するCr炭化物の晶出を妨げ、逆に耐熱性の低下を招く。また、Ni量の増加は、経済的にも不利となる。そこで、Ni量の下限は3%さらには4%が好ましい。また、その上限は20%さらには10%が好ましい。従って、Ni量を4〜10%とすると好適である。
【0026】
Crは、上記Niと共存することで鋳造組織をオーステナイト化して、その耐熱性や耐酸化性を高める。また、強化相であるCr炭化物(Cr23C6、Cr7C3)を形成し、鋳鋼の高温強度を高めるのに有効な元素である。
Crが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Crが多過ぎても、脆化相であるσ相等が析出し易くなり、また、ネットワーク状のクロム炭化物が形成されて、鋳鋼の靭性を劣化させる。そこで、Cr量の下限は10%さらには17%が好ましい。また、その上限は25%さらには22%が好ましい。特に、Cr量が17〜22%であると好適である。
【0027】
Nbは、MC型炭化物(共晶炭化物)を形成し、高温強度、クリープ強度および延性を高めると共に粒界酸化を防止して、鋳鋼の耐酸化性の向上に有効な元素である。また、排気系部材のような薄肉複雑形状鋳物の製造に重要となる鋳造性を向上させる効果もある。
Nbが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Nbが多過ぎると、ネットワークのMC型炭化物が形成され、脆化相であるラーベス相が生成され易くなり、クリープ強度の低下を招く。そこで、Nb量の下限は0.5%さらには1.5%が好ましい。また、その上限は4%さらには3%が好ましい。特に、Nb量が1.5〜3%であると好適である。
【0028】
MoまたはWは、オーステナイト相に固溶することによりマトリックス相を強化し、η相の析出を防止して、鋳鋼のクリープ強度を向上させるのに有効な元素である。MoまたはWの一方のみでも良いし、両方を含有しても良い。
MoまたはWが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、それらが多過ぎると、脆化相であるラーベス相が析出し易くなって、逆にクリープ強度および靭性を劣化させる。そこで、MoおよびWの合計量の下限は1.5%さらには3%が好ましい。また、その上限は6%さらには4.5%が好ましい。特に、その合計量が3〜4.5%であると好適である。
【0029】
AlもSiと同様に脱酸のために有効な元素である。前記した通り、従来の耐熱合金において、Alはγ’相の析出のために不可欠な元素として多量に添加されていた。しかし、本発明は大気溶解によって製造できる合金を目的としているため、多量のAlを添加することはできない。もっとも、本発明の合金製造においても、脱酸は不可欠な工程であり、Alの含有を全く許容しないとすると、製造が困難となる。そこで、0.1%以下の範囲での含有を許容した。Alが0.1%以下であれば、他の多くの鉄合金で実施されているのと同様に、何ら問題もなく大気溶解が可能である。
【0030】
次に、任意の元素について、含有範囲を限定した理由を説明する。
Nは、強力なオーステナイト形成元素である。オーステナイト基地中に固溶して、その高温強度を高め、鋳鋼の熱的な安定性に寄与する。また、Nは上記炭化物の凝集を押さえ、鋳鋼の脆化を防ぐのに有効な元素でもある。さらに、Nは結晶粒微細化に有効な元素であるところ、鍛造、圧延等による結晶粒微細化が困難な鋳物やその鋳物からなる部材の高温特性の向上に有効な元素でもある。
【0031】
Nが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Nが多過ぎると、Cr窒化物が粒界に析出して脆化を促進すると共にCr炭化物の形成を妨げる。そこで、N量の下限は0.03%さらには0.05%が好ましい。また、その上限は0.4%さらには0.3%が好ましい。特に、N量が0.05〜0.3%であると好適である。
【0032】
B、CaおよびMgは、結晶粒界を強化し、高温強度を高めると共に延性の向上に有効な元素である。
少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、多過ぎると、低融点化合物が生成されて却って延性を低下する。そこで、いずれの元素もその下限を0.0005%とするのが好ましい。また、Bの上限は、0.01%、CaおよびMgの上限は0.02%とするのが好ましい。従って、B:0.0005〜0.01%、Ca:0.0005〜0.02%、Mg:0.0005〜0.02%とするのが好ましい。これらの元素は、いずれか1種のみ含有しても、2種以上含有しても良い。
【0033】
本発明の耐熱鋳鋼は、さらに、下記の元素が少量添加されたものでも良い。
Pb、S、Te、Bi、Seは被削性を改善するために添加される元素である。本発明合金を用いて製造した耐熱部材は鋳型内に注湯し凝固させた後、そのまま使用されずに、部分的に機械加工が行われて最終製品となることが多い。従って、その加工内容を考慮して、被削性向上元素であるPb、S、Te、Bi、Seのうちの1種以上を適宜添加して被削性を改善させると、加工コストの低減を図ることができる。このような効果を得るために、Pb、Te、Bi、Seは0.3%以下、Sは0.2%以下の範囲で添加することができる。但し、Sはクリープ強度、熱間加工性、冷間加工性に悪影響を及し得るので、その添加はできるだけ少量とするのが好ましい。
【0034】
また、大気溶解を可能にするためには、γ’相の析出を目的とするTiの多量添加は困難であるが、0.5%以下の少量添加は可能である。Tiを添加すると、その一部がTiO2となって存在する。TiO2は親水性に富む化合物であり、水溶性切削油使用時に工具面への水溶性切削油の侵入を促進させて工具寿命を延長させる効果がある。しかしながら、0.5%を超えての含有は、TiCが増加してNb、W等の炭化物が減少する原因となるため上限を0.5%とした。
R.E.M.は、本発明の耐熱鋳鋼の耐酸化性を向上させる効果があり少量添加することができる。但し、多量添加は靱延性を低下させるため上限を0.5%とした。
【0035】
ZrはCr炭化物の成長粗大化を抑制する。Hfは粒界炭化物を生成するという理由からクリープ強度を高める効果がある。従って、これらの元素を少量添加することで、耐熱性を高めることができる。Zrは0.5%以下、Hfは0.2%以下の範囲で添加することができる。
本発明の耐熱鋳鋼の不可避不純物としては、酸素(O)がある。Oは、酸化物として鋳鋼中に存在しその熱間加工性を損なうので、上限を0.03%以下とするのが好ましい。
【0036】
(2)製造方法
本発明の鋳鋼製耐熱部材の製造方法は、溶湯製造工程、注湯工程および凝固工程からなる。
溶湯製造工程は、原料を溶解して(溶解工程)、所望組成の溶湯を調整する工程である。このとき、使用する原料は純金属または単体、合金、化合物等いずれでも良い。低コスト化を図る観点から安価なFe合金を使用するのが好ましい。溶湯の溶解温度は組成により異なるものの、通常は、溶湯温度を1450〜1600℃にすれば十分である。そして、この溶湯製造工程で十分に均一に溶解された溶湯を、注湯工程で砂型等の鋳型へ注湯し、凝固工程で冷却して所望形状をした鋳鋼製鋳物を得る。
【0037】
本発明の製造方法では、前述したように、大気溶解可能な成分範囲に限定しているので、上記溶湯製造工程、注湯工程および凝固工程を大気中等の酸化性雰囲気で行うことができる。このため、溶湯の取扱い等が容易で、製造コストの低減を図り易い。もっとも、それらの工程の全部またはいずれかを非酸化性雰囲気で行っても良い。また、鋳造方法は、重力鋳造、加圧鋳造、吸引鋳造等のいずれの方法であっても良い。また、鋳型の形状、種類も問わないが、タービンホイール等のような薄肉複雑形状の鋳物等は、精密鋳造によると鋳造後の加工コスト等が削減されて好ましい。
【0038】
また、上記凝固工程は、溶湯が注湯された鋳型を自然冷却しても強制冷却してもいずれでも良いが、冷却速度は、0.05〜1℃/secが好ましい。単調な冷却速度である必要もなく、凝固工程の途中に後述の時効処理等を行う場合は、適宜、炉等を使用して冷却速度を調整しても良い。
本発明の鋳鋼製耐熱部材の製造方法では、必要に応じて、上記各工程に加えて、加工および/または熱処理を行うこともできる。
【0039】
加工工程には、切削、研磨、ショットピーニング、ブラスト、鍛造等がある。
熱処理工程には、例えば、時効処理がある。この時効処理により、ミクロ組織の均質化を図り、前記炭化物をγマトリックス中に微細に析出、分散させて、鋳鋼製耐熱部材の高温強度、延性を強化することが可能となる。また、鋳造時に生じた内部応力等も解放される。このような時効処理工程は、例えば、500〜850℃で10分以上保持する工程であると好ましい。なお、この時効温度が低すぎると炭化物の析出が不十分となり易く、逆に高すぎると軟化してしまう。そこで、時効温度は、700〜800℃であればより好ましい。また、時効時間も短すぎると炭化物の析出が不十分となり、高温強度等の向上が少ない。一方、あまり長時間行っても、効果向上が望めず、不経済である。そこで、時効時間は60〜300分とすればより好ましい。この時効処理は、前述の凝固工程後に行っても良いし、その冷却過程中に組み込んでも良い。後者の場合、鋳鋼製耐熱部材の製造工程が簡素化されて、製造コストを一層低減し易い。
なお、熱処理工程は、上記時効処理に限らず、窒化処理等の表面処理を行うものでも良い。
【0040】
(3)用途
本発明の鋳鋼製耐熱部材は、優れた耐熱性を備えるため、高温環境下での使用に適する。しかも、優れた耐食性(特に、耐酸化性)をも備えるため、高温排気ガス中や高温大気中等での使用が可能である。
【0041】
具体的にいえば、例えば、500℃以上の高温環境下に曝されるエンジン用部材等に好適である。さらにいえば、エキゾーストマニホールド、排気管、触媒関連部材、タービンハウジング、タービンホイールやそれらの周辺部材等の排気系部材に好適である。ここで、エンジンにはガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の自動車エンジン、航空機用等のジェットエンジン等があり、いずれでも良い。また、本発明の鋳鋼製耐熱部材は、大幅な低コストでの生産が可能であるため、原価低減要求の厳しい量産品に最適である。
【0042】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(供試材の製造方法)
原料として、 母合金となるSUS304(Fe−18%Cr−8%Ni)、電解鉄(Fe)、電解クロム(Cr)、電解マンガン(Mn)、加炭鉄(Fe−4.64%C) 、フェロニオブ(Fe−68.4%Nb)、フェロモリブデン(Fe−61.6%Mo)、フェロタングステン(Fe−78.12%W)および純シリコン(Si)を用意した。また、Nを含有した供試材の原料には、前記SUS304に替えて、SUH35(Fe−21%Cr−4%Ni−9%Mn−0.4%N)を用意し、母合金として使用した。なお、各組成の単位は質量%である。また、各原料は普通に市販されているものである。
これらの各原料を用いて、所望の組成となるように配合計算を行い、各供試材毎に総量で約2kgを秤量した。そして、表1、表2および表3に示す組成の試料No.1〜35および試料No.C1〜C8の鋳鋼を鋳造した。
【0043】
原料の溶解は、アルミナ坩堝を使用し、高周波溶解炉にて大気中で行った(溶湯製造工程)。得られた溶湯を1550℃に保持して、室温のジルコン製シェル鋳型に注湯し(注湯工程)、大気中で室温まで自然冷却させて凝固させた(凝固工程)。
また、試料No.10〜18、試料No.33〜35、試料No.C3、C4およびC8には、別途、大気雰囲気中で750℃x4時間の時効処理を施した(時効処理工程)。
【0044】
(供試材の測定)
得られた各供試材について、高温引張強度(0.2%耐力)およびクリープ強度を測定した。
高温引張強度は、平行部φ5mmx25mmをもつように製作した引張試験片を、大気雰囲気で700℃に加熱して引張試験を行い、その引張強さ(0.2%耐力)を求めたものである。各供試材の700℃での0.2%耐力を表1、表2および表3に併せて示した。
【0045】
クリープ強度はクリープラプチャー試験により測定した。すなわち、クリープラプチャー試験は、平行部φ5mmx25mmをもつ同様の引張試験片に、700℃の大気雰囲気中で種々の引張応力を印可して100時間保持し、破断の有無を調べるものである。このクリープラプチャー試験により得られたクリープ破断応力とラーソンミラー指数の関係から、100時間後に破断する応力値を求めた。この応力値を各供試材毎に表1、表2および表3に併せて示した。なお、ラーソンミラー指数Pは、P=(T+273)x(20+logt)から求めたものである。ここで、Tは温度(℃)、tは破断までの時間(破断時間:hr)である。
【0046】
(供試材の評価)
▲1▼Pの影響
供試材の試料No.1〜3と試料No.C1、C2とを比較すると、Pを0.03%以上含有させることにより、高温引張強度およびクリープ強度の両方が共に大きく向上することが解った。具体的には、Pをほとんど含有しない試料No.C1、C2では、高温引張強度が280MPa以下、クリープ強度が205MPa以下であるのに対して、本発明の範囲のPを含有した試料No.1〜3では、高温引張強度が355MPa以上、クリープ強度が270MPa以上ともなっている。
【0047】
この傾向は時効処理を施した場合でも同様である。すなわち、Pをほとんど含有しない試料No.C3、C4では、高温引張強度が315MPa以下、クリープ強度が220MPa以下であるのに対して、本発明の範囲のPを含有した試料No.14、15、23では、高温引張強度が425MPa以上、クリープ強度が365MPa以上にもなっている。
【0048】
▲2▼N、B、CaおよびMgの影響
試料No.4〜13を比較すれば明らかなように、本発明でいう範囲のN等を含有することにより、高温引張強度およびクリープ強度が一層向上することが明らかとなった。また、試料No.16〜22と試料No.24〜26とを比較すれば明らかなように、この傾向は、時効処理を施した場合でも同様である。そしていずれの場合も、それらの元素を本発明の範囲内で複数含有させる方が高温引張強度やクリープ強度がより向上する傾向にある。
【0049】
▲3▼熱処理の影響
既に述べたように、熱処理(時効処理)を施すことで、高温引張強度やクリープ強度が著しく向上する。これは、試料No.1〜13と試料No.14〜26とを比較すれば明らかである。
【0050】
但し、このような熱処理による高温特性の向上が図れるのは、本発明の耐熱鋳鋼のように、少なくとも強化相となる炭化物を微細にかつ多量に析出させ得る組成を備えているからである。このことは、試料No.C3、C4、C6およびC8を観れば明らかである。これらの試料では、Pが実質的に含有されていないかその含有量が非常に少ないため、いくら時効処理を施しても、高温引張強度やクリープ強度の向上幅はわずかなものとなっていた。具体的には、高温引張強度は高々320MPa、クリープ強度も高々230MPaに過ぎなかった。
【0051】
▲4▼他元素の影響
試料No.27〜35は被削性向上元素等を添加した場合の実施例である。これらの実施例から、それらの元素の添加によって、高温強度等に悪影響を及すことなく、被削性等が改善されることが確認された。
【0052】
(その他)
以上のように、本発明の耐熱鋳鋼は、オーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、従来を凌駕する優れた耐熱性を発揮することが解った。従って、この耐熱鋳鋼からなる鋳鋼製耐熱部材も当然に優れた耐熱性を発揮することが解る。その好適な一例として、自動車用過給器のタービンホイール(鋳鋼製耐熱部材)を挙げることができる。特に、排気温度が比較的低く、高々700℃前後のディーゼルエンジン用のタービンホイールに本発明の耐熱鋳鋼は好適である。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温環境下で使用される部材等の低コスト化を可能とする耐熱鋳鋼、鋳鋼製耐熱部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
航空機、自動車、発電設備等の各種分野では、高温のガスや蒸気等を流すハウジング、その内に配置されるバルブやタービンホイール等の耐熱部材を備えた装置が用いられる。このような高温環境下で使用される耐熱部材は、言うまでもなく、高温引張強度やクリープ強度等の優れた耐熱性が要求される。しかも、それらの部材が使用される装置の競争力向上のために、耐熱部材の低価格化、つまり、低コスト化が要求される。
【0003】
以下では、この耐熱部材の耐熱性確保と低コスト化について、自動車用過給器(ターボチャージャ)のタービンホイールを例に取り以下に説明する。
ガソリンエンジン用のタービンホイールは、900℃にもなる排気ガス中で高回転するため、高温環境下でも大きな遠心力等にも耐え得るよう、優れた高温強度が要求される。このような耐熱性を満足し信頼性の高い合金材料は以外に少なく、従来から、インコネル713C(Ni−12.5%Cr−4.2%Mo−6.1%Al−0.8%Ti−2.0%Nb:単位は質量%、以下同様)が、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンを問わず多用されてきた。しかし、この材料は、高価なNiを約70%以上も含有するため、非常に高価な材料であった。
【0004】
そこで、このインコネル713Cに準じた耐熱性を確保しつつ、そのNiの一部を安価なFeに替えた耐熱合金が開発されている。具体的には、GMR235(GM社製合金:Ni−15.5%Cr−4.5Fe−5%Mo−3.5%Al−2.5%Ti−0.15%C)、さらにはFeをベースとしたインコネル751(Ni−15.5%Cr−4.2%Fe−1.2%Al−4%Ti−0.1Si)等がある。しかし、これらの耐熱合金でも、依然としてNiの含有量が多く、材料的に観てもコスト高であることに変わりない。
【0005】
次に、これら合金は、高温域で安定なγ’相[Ni3(Al、Ti)]の析出強化を利用して耐熱性を高めている。このγ’相の析出には、Ni以外に活性なAlやTiをある程度多量に添加する一方で、正常なγ’相を安定して得るには、溶製時にAlやTiの酸化を防止することも必要となる。すなわち、これらの耐熱性合金を使用した場合、非酸化性雰囲気(通常は真空雰囲気)中で、原料溶解や鋳造を行わなければならず、製造工程から観ても非常にコスト高となっていた。
【0006】
このようなニーズに対し、組成的にFeをベースとし、さらに、TiやAlを多量に含有することなく大気中での溶解、鋳造を可能にして、組成的にも製造工程的にも低コスト化を図れる合金材料が下記の特許文献1、特許文献2または非特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−230572号公報
【特許文献2】
特開平7−228949号公報
【非特許文献1】
日本金属学会会報、6(1967)、P783−802「超耐熱合金の最近の進歩」中の図3
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1には、Feをベースに、所定量のC、Si、Cr、NiおよびCoを必須元素としたオーステナイト系耐熱鋳鋼が開示されている。また、上記特許文献2には、Feをベースに、所定量のC、Si、Nb、Cr、Ni、WおよびNを必須元素としたオーステナイト系耐熱鋳鋼が開示されている。さらに、非特許文献1には、CRM6D(クライスラー社製合金:Fe−5.0%Ni−20.0%Cr−5.0%Mn−1.0%Mo−1.0%W−1.0%Nb−1.0%C)やCRM15D(クライスラー社製合金:Fe−5.0%Ni−20.0%Cr−5.0%Mn−2.0%Mo−2.0%W−2.0%Nb−1.0%C−0.2N)の耐熱鋳鋼が開示されている。
【0009】
しかし、これらの各合金は、耐熱部材の製造コストの低減を可能とするものの、前述したγ’相[Ni3(Al、Ti)]を析出強化させる耐熱合金に比べて、その高温特性(耐熱性)が著しく劣るものであった。例えば、700℃での100hrクリープラプチャー強度を観ると、上記GMR235が400MPa以上であるのに対し、特許文献1の耐熱鋳鋼が200MPa程度、特許文献2の耐熱鋳鋼が150MPa程度、非特許文献1の耐熱鋳鋼が200MPa程度と、両者の格差は歴然としている。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、優れた耐熱性を確保しつつも、大気溶解を可能とし耐熱部材等の製造コスト削減を図れる耐熱鋳鋼を提供することを目的とする。また、それを使用した耐熱部材およびその製造方法をも提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、材料的にも製造工程的にもコスト削減を図り易いFeをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼について、著しく優れた耐熱性を発現する耐熱鋳鋼を新たに見出し、本発明を完成するに至った。
(耐熱鋳鋼)
すなわち、本発明の耐熱鋳鋼は、全体を100質量%としたときに、C:0.5〜1.5%、Si:0.01〜2%、Mn:3〜20%、P:0.03〜0.2%、Ni:3〜20%、Cr:10〜25%、Nb:0.5〜4%およびAl:0.1%以下を含有すると共にMoとWとの1種または2種を合計で1.5〜6%含有し、残部が主としてFeからなることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の耐熱鋳鋼は、Feをベースとしたオーステナイト系耐熱鋳鋼であり、Ni量が比較的少なく、組成的に安価である。また、AlやTiを多量に含有せず(但し、脱酸のための使用等、少量の使用は許容される)、大気中等の酸化性雰囲気中での溶解、鋳造を可能とするため、製造工程や製造設備の簡素化も図れる。従って、本発明によれば、耐熱鋳鋼およびそれを使用した耐熱部材等の製造コストを大幅に低減できる。
しかも本発明の耐熱鋳鋼の場合、従来の大気溶解可能なオーステナイト系耐熱鋳鋼を遙かに凌ぐ耐熱性を発現する。例えば、前述したAl、Tiを多量に使用し大気溶解が困難なGMR235等と比較すると、時効処理で強化することによって、ほぼ同等の高温強度(高温引張強度、クリープ強度等)を発現する。
【0012】
ところで、大気溶解可能なオーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、従来になく優れた耐熱性を発現する耐熱鋳鋼が得られた理由は完全に明らかとなっているわけではないが、それに至る経緯および現状考えられる理由は次の通りである。。
オーステナイト系耐熱鋳鋼が優れた耐熱性を発現するか否かは、Fe基マトリックス相自体の高温特性と、そのマトリックス相中での強化相の分散量に大きく依存する。本発明者はこの見地から、先ず、NiおよびCrによる耐熱鋳鋼の高温特性への影響を調査し、ベースとなる好適なFe−Ni−Crオーステナイト系耐熱鋳鋼を得た。次に、このマトリックス相をより強化すると共により多くの強化相(炭化物)をそのマトリックス相中に分散させるために、少なくともMn、Mo、Nb、CおよびPの適量添加が有効であるとの知見を得た。こうして、オーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、従来にない非常に優れた耐熱性を示す耐熱鋳鋼を得ることに成功した。
【0013】
この理由を詳細に述べると、本発明の耐熱鋳鋼は、脆化相であるラーベス相等の晶出が抑制された熱的に安定なγマトリックス相をもつ。そのマトリックス相がMo等の固溶によってその高温強度がさらに強化されている。そして、そのマトリックス相中には高温強度を高める炭化物[(Cr、Mo)23C6、Nb(C、N)等]が多く分散している。本発明の耐熱鋳鋼の場合、この多量の炭化物の晶出または析出にPが重要な役割を果していると考えられる。つまり、適量のPを含有させることにより、脆弱なP化合物等を生成させずに、前記炭化物のマトリックス相中での晶出または析出が促進された。しかも、そのPの存在により、前記炭化物がマトリックス相中で大きく凝集することなく、微細にかつ均一に分散するようになったと考えられる。
【0014】
いずれにしても、本発明の耐熱鋳鋼によれば、上記した適量のNi、Cr、Mn、Mo、Nb、CおよびPが相乗的に作用して、耐熱部材の製造コストの大幅な削減を図りつつ、その優れた耐熱性の確保が可能となる。
また、本発明の耐熱鋳鋼はさらに、N、B、Ca、Mgの1種または2種以上を添加して高温特性を改善したり、Pb、S、Te、Bi、Seの1種または2種以上を添加して被削性を改善することもできる(請求項2〜4)。
【0015】
また、請求項1の範囲において、「残部がFe及び不可避不純物元素からなる」ではなく、「残部が主としてFeからなる」と記載したのは、Fe以外の元素の少量添加を許容することを意味する。具体的には、高温特性改善のためのN、B、CaまたはMgの含有や被削性改善のためのPb、S、Te、Bi、SeまたはHfの含有を意味する。また、それ以外に、Ti、Zr、R.E.M.も少量添加であれば大気溶解可能である。その他、本発明にいう耐熱鋳鋼の性能に悪影響を与えない範囲で、他の元素が少量添加されたものやその他の元素を不純物として含むものも、本発明の耐熱鋳鋼に含まれるのは言うまでもない。
なお、各元素の機能の詳細については後述するが、本発明の耐熱鋳鋼は、Crを比較的多く含有したオーステナイト系鋳鋼であるところ、鋳鋼製耐熱部材等の耐酸化性等にも優れることは言うまでもない。従って、本発明の耐熱鋳鋼は、単に高温強度等のみならず、使用環境の観点からも広い用途をもち得るものである。
【0016】
(鋳鋼製耐熱部材)
上記耐熱鋳鋼は当然のごとく、鋳鋼製耐熱部材として適用することができる。
すなわち、本発明の鋳鋼製耐熱部材は、上記請求項1〜4のいずれかに記載した成分を含有する鋳鋼を鋳造して得られることを特徴とする。
この鋳鋼製耐熱部材には、上記耐熱鋳鋼を鋳造した鋳物自体の他、その鋳物に加工や熱処理等を施したものも含まれる。適用できる具体的部位としては、自動車等のエンジンでも特に厳しい耐熱性が要求される排気系部材があり、例えば、タービンホイール等である(請求項7)。
【0017】
(鋳鋼製耐熱部材の製造方法)
ところで、上記鋳鋼製耐熱部材は、次のような製造方法により製造されると好適である。
すなわち、上記請求項1〜4のいずれかに記載した成分を含有する溶湯を製造する溶湯製造工程と、該溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と、該鋳型中の溶湯を冷却して凝固させる凝固工程とからなることを特徴とする鋳鋼製耐熱部材の製造方法である。
【0018】
この製造方法の場合、上記各工程を行う雰囲気を問わない。すなわち、本発明の耐熱合金は、従来のγ’相の析出によって強化した耐熱合金とは異なり、大気中でも溶解可能な成分設計を行っているため、各工程を酸化雰囲気(大気中等)で行うことが可能である。これにより、鋳鋼製耐熱部材の製造コストを大幅に削減することができる。なお、この鋳鋼製耐熱部材に、鋳物およびその加工品等が含まれるのは前述した通りである。また、鋳鋼製耐熱部材は鋳物に切削加工等を施したもの以外に、種々の熱処理等を施したものでも良い。例えば、適切な時効処理を行うことで、前述した炭化物の微細な析出が促進され、耐熱部材の高温強度が一層改善される。
【0019】
ところで、本明細書でいう「耐熱鋳鋼」は、鋳造に使用する溶解前の原料であっても良いし、広くは、鋳造後の製品である耐熱鋳物やそれに加工等を施した耐熱部材であっても良い。「鋳鋼」と称しているのは炭素を含有するからであるが、これは鋳造用鉄合金と言い換えることもできる。
【0020】
また、本明細書でいう耐熱性(または高温特性)は、高温強度(高温引張強度、クリープ強度等)の他、高温環境下での耐食性等をも意味する。耐熱部材の用途等によって要求される特性は異なるため、例えば、高温引張強度等の一特性によってのみ耐熱性を評価することは妥当ではない。もっとも、他の耐熱鋳鋼等と比較するために、敢えてその指標を挙げるなら、後述のクリープラプチャー強度によりその耐熱性を評価すれば良い。その測定条件が異なる場合でも、ラーソンミラー指数を導入することで、種々の耐熱鋳鋼の耐熱性を客観的に評価できるからである。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。なお、以下では、主に耐熱鋳鋼について説明するが、その内容は、それ以外の鋳鋼製耐熱部材およびその製造方法のいずれにも適宜該当するものであることを断っておく。
(1)組成
先ず、必須添加元素についてその範囲の限定理由を説明する。
Cは、Cr、Mo、WおよびNbと結合することにより、一次炭化物および二次炭化物を形成して、鋳鋼の高温強度を高める。
Cが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Cが多過ぎると、炭化物の生成量が多くなり過ぎて耐食性と共に靭延性も劣化する。そこで、C量の下限は0.5%さらには0.8%が好ましい。また、その上限は1.5%さらには1.2%が好ましい。特に、C量が0.8〜1.2%であると好適である。
【0022】
Siは、溶解精錬時の脱酸剤として有効な元素である。
Siが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Siが多過ぎると、鋳鋼の靱性を低下させる。そこで、Si量の下限は0.01%さらには0.1%が好ましい。また、その上限は2.0%さらには1.5%が好ましい。特に、Si量が0.1〜1.5%であると好適である。
【0023】
Mnは、溶解精錬時の脱酸剤として有効な元素である。さらに、Mnは、後述のNを多量に固溶させて、高温強度を高めるのに有効な元素でもある。
Mnが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Mnが多過ぎると、高温域での耐酸化性が低下する。そこで、Mn量の下限は3%さらには4%が好ましい。また、その上限は20%さらには10%が好ましい。特に、Mn量が4〜10%であると好適である。
【0024】
Pは、高温強度に寄与する上記炭化物の形成を促進すると共に形成された炭化物を微細に分散させるのに有効な元素である。
Pが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Pが多過ぎると、P化合物を形成されて鋳鋼が脆化する。そこで、P量の下限は0.03%さらには0.04%が好ましい。また、その上限は0.2%さらには0.12%が好ましい。特に、P量が0.04〜0.12%であると好適である。
【0025】
Niは、下記Crと共に鋳鋼組織をオーステナイト化して、鋳鋼の耐熱性や耐酸化性を向上させると共に熱的安定性を保持する元素である。
Niが少な過ぎると、十分な耐熱性が確保されない。一方、Niが多過ぎても、高温強度に寄与するCr炭化物の晶出を妨げ、逆に耐熱性の低下を招く。また、Ni量の増加は、経済的にも不利となる。そこで、Ni量の下限は3%さらには4%が好ましい。また、その上限は20%さらには10%が好ましい。従って、Ni量を4〜10%とすると好適である。
【0026】
Crは、上記Niと共存することで鋳造組織をオーステナイト化して、その耐熱性や耐酸化性を高める。また、強化相であるCr炭化物(Cr23C6、Cr7C3)を形成し、鋳鋼の高温強度を高めるのに有効な元素である。
Crが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Crが多過ぎても、脆化相であるσ相等が析出し易くなり、また、ネットワーク状のクロム炭化物が形成されて、鋳鋼の靭性を劣化させる。そこで、Cr量の下限は10%さらには17%が好ましい。また、その上限は25%さらには22%が好ましい。特に、Cr量が17〜22%であると好適である。
【0027】
Nbは、MC型炭化物(共晶炭化物)を形成し、高温強度、クリープ強度および延性を高めると共に粒界酸化を防止して、鋳鋼の耐酸化性の向上に有効な元素である。また、排気系部材のような薄肉複雑形状鋳物の製造に重要となる鋳造性を向上させる効果もある。
Nbが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Nbが多過ぎると、ネットワークのMC型炭化物が形成され、脆化相であるラーベス相が生成され易くなり、クリープ強度の低下を招く。そこで、Nb量の下限は0.5%さらには1.5%が好ましい。また、その上限は4%さらには3%が好ましい。特に、Nb量が1.5〜3%であると好適である。
【0028】
MoまたはWは、オーステナイト相に固溶することによりマトリックス相を強化し、η相の析出を防止して、鋳鋼のクリープ強度を向上させるのに有効な元素である。MoまたはWの一方のみでも良いし、両方を含有しても良い。
MoまたはWが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、それらが多過ぎると、脆化相であるラーベス相が析出し易くなって、逆にクリープ強度および靭性を劣化させる。そこで、MoおよびWの合計量の下限は1.5%さらには3%が好ましい。また、その上限は6%さらには4.5%が好ましい。特に、その合計量が3〜4.5%であると好適である。
【0029】
AlもSiと同様に脱酸のために有効な元素である。前記した通り、従来の耐熱合金において、Alはγ’相の析出のために不可欠な元素として多量に添加されていた。しかし、本発明は大気溶解によって製造できる合金を目的としているため、多量のAlを添加することはできない。もっとも、本発明の合金製造においても、脱酸は不可欠な工程であり、Alの含有を全く許容しないとすると、製造が困難となる。そこで、0.1%以下の範囲での含有を許容した。Alが0.1%以下であれば、他の多くの鉄合金で実施されているのと同様に、何ら問題もなく大気溶解が可能である。
【0030】
次に、任意の元素について、含有範囲を限定した理由を説明する。
Nは、強力なオーステナイト形成元素である。オーステナイト基地中に固溶して、その高温強度を高め、鋳鋼の熱的な安定性に寄与する。また、Nは上記炭化物の凝集を押さえ、鋳鋼の脆化を防ぐのに有効な元素でもある。さらに、Nは結晶粒微細化に有効な元素であるところ、鍛造、圧延等による結晶粒微細化が困難な鋳物やその鋳物からなる部材の高温特性の向上に有効な元素でもある。
【0031】
Nが少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、Nが多過ぎると、Cr窒化物が粒界に析出して脆化を促進すると共にCr炭化物の形成を妨げる。そこで、N量の下限は0.03%さらには0.05%が好ましい。また、その上限は0.4%さらには0.3%が好ましい。特に、N量が0.05〜0.3%であると好適である。
【0032】
B、CaおよびMgは、結晶粒界を強化し、高温強度を高めると共に延性の向上に有効な元素である。
少な過ぎると、これらの効果が十分に得られない。一方、多過ぎると、低融点化合物が生成されて却って延性を低下する。そこで、いずれの元素もその下限を0.0005%とするのが好ましい。また、Bの上限は、0.01%、CaおよびMgの上限は0.02%とするのが好ましい。従って、B:0.0005〜0.01%、Ca:0.0005〜0.02%、Mg:0.0005〜0.02%とするのが好ましい。これらの元素は、いずれか1種のみ含有しても、2種以上含有しても良い。
【0033】
本発明の耐熱鋳鋼は、さらに、下記の元素が少量添加されたものでも良い。
Pb、S、Te、Bi、Seは被削性を改善するために添加される元素である。本発明合金を用いて製造した耐熱部材は鋳型内に注湯し凝固させた後、そのまま使用されずに、部分的に機械加工が行われて最終製品となることが多い。従って、その加工内容を考慮して、被削性向上元素であるPb、S、Te、Bi、Seのうちの1種以上を適宜添加して被削性を改善させると、加工コストの低減を図ることができる。このような効果を得るために、Pb、Te、Bi、Seは0.3%以下、Sは0.2%以下の範囲で添加することができる。但し、Sはクリープ強度、熱間加工性、冷間加工性に悪影響を及し得るので、その添加はできるだけ少量とするのが好ましい。
【0034】
また、大気溶解を可能にするためには、γ’相の析出を目的とするTiの多量添加は困難であるが、0.5%以下の少量添加は可能である。Tiを添加すると、その一部がTiO2となって存在する。TiO2は親水性に富む化合物であり、水溶性切削油使用時に工具面への水溶性切削油の侵入を促進させて工具寿命を延長させる効果がある。しかしながら、0.5%を超えての含有は、TiCが増加してNb、W等の炭化物が減少する原因となるため上限を0.5%とした。
R.E.M.は、本発明の耐熱鋳鋼の耐酸化性を向上させる効果があり少量添加することができる。但し、多量添加は靱延性を低下させるため上限を0.5%とした。
【0035】
ZrはCr炭化物の成長粗大化を抑制する。Hfは粒界炭化物を生成するという理由からクリープ強度を高める効果がある。従って、これらの元素を少量添加することで、耐熱性を高めることができる。Zrは0.5%以下、Hfは0.2%以下の範囲で添加することができる。
本発明の耐熱鋳鋼の不可避不純物としては、酸素(O)がある。Oは、酸化物として鋳鋼中に存在しその熱間加工性を損なうので、上限を0.03%以下とするのが好ましい。
【0036】
(2)製造方法
本発明の鋳鋼製耐熱部材の製造方法は、溶湯製造工程、注湯工程および凝固工程からなる。
溶湯製造工程は、原料を溶解して(溶解工程)、所望組成の溶湯を調整する工程である。このとき、使用する原料は純金属または単体、合金、化合物等いずれでも良い。低コスト化を図る観点から安価なFe合金を使用するのが好ましい。溶湯の溶解温度は組成により異なるものの、通常は、溶湯温度を1450〜1600℃にすれば十分である。そして、この溶湯製造工程で十分に均一に溶解された溶湯を、注湯工程で砂型等の鋳型へ注湯し、凝固工程で冷却して所望形状をした鋳鋼製鋳物を得る。
【0037】
本発明の製造方法では、前述したように、大気溶解可能な成分範囲に限定しているので、上記溶湯製造工程、注湯工程および凝固工程を大気中等の酸化性雰囲気で行うことができる。このため、溶湯の取扱い等が容易で、製造コストの低減を図り易い。もっとも、それらの工程の全部またはいずれかを非酸化性雰囲気で行っても良い。また、鋳造方法は、重力鋳造、加圧鋳造、吸引鋳造等のいずれの方法であっても良い。また、鋳型の形状、種類も問わないが、タービンホイール等のような薄肉複雑形状の鋳物等は、精密鋳造によると鋳造後の加工コスト等が削減されて好ましい。
【0038】
また、上記凝固工程は、溶湯が注湯された鋳型を自然冷却しても強制冷却してもいずれでも良いが、冷却速度は、0.05〜1℃/secが好ましい。単調な冷却速度である必要もなく、凝固工程の途中に後述の時効処理等を行う場合は、適宜、炉等を使用して冷却速度を調整しても良い。
本発明の鋳鋼製耐熱部材の製造方法では、必要に応じて、上記各工程に加えて、加工および/または熱処理を行うこともできる。
【0039】
加工工程には、切削、研磨、ショットピーニング、ブラスト、鍛造等がある。
熱処理工程には、例えば、時効処理がある。この時効処理により、ミクロ組織の均質化を図り、前記炭化物をγマトリックス中に微細に析出、分散させて、鋳鋼製耐熱部材の高温強度、延性を強化することが可能となる。また、鋳造時に生じた内部応力等も解放される。このような時効処理工程は、例えば、500〜850℃で10分以上保持する工程であると好ましい。なお、この時効温度が低すぎると炭化物の析出が不十分となり易く、逆に高すぎると軟化してしまう。そこで、時効温度は、700〜800℃であればより好ましい。また、時効時間も短すぎると炭化物の析出が不十分となり、高温強度等の向上が少ない。一方、あまり長時間行っても、効果向上が望めず、不経済である。そこで、時効時間は60〜300分とすればより好ましい。この時効処理は、前述の凝固工程後に行っても良いし、その冷却過程中に組み込んでも良い。後者の場合、鋳鋼製耐熱部材の製造工程が簡素化されて、製造コストを一層低減し易い。
なお、熱処理工程は、上記時効処理に限らず、窒化処理等の表面処理を行うものでも良い。
【0040】
(3)用途
本発明の鋳鋼製耐熱部材は、優れた耐熱性を備えるため、高温環境下での使用に適する。しかも、優れた耐食性(特に、耐酸化性)をも備えるため、高温排気ガス中や高温大気中等での使用が可能である。
【0041】
具体的にいえば、例えば、500℃以上の高温環境下に曝されるエンジン用部材等に好適である。さらにいえば、エキゾーストマニホールド、排気管、触媒関連部材、タービンハウジング、タービンホイールやそれらの周辺部材等の排気系部材に好適である。ここで、エンジンにはガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の自動車エンジン、航空機用等のジェットエンジン等があり、いずれでも良い。また、本発明の鋳鋼製耐熱部材は、大幅な低コストでの生産が可能であるため、原価低減要求の厳しい量産品に最適である。
【0042】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(供試材の製造方法)
原料として、 母合金となるSUS304(Fe−18%Cr−8%Ni)、電解鉄(Fe)、電解クロム(Cr)、電解マンガン(Mn)、加炭鉄(Fe−4.64%C) 、フェロニオブ(Fe−68.4%Nb)、フェロモリブデン(Fe−61.6%Mo)、フェロタングステン(Fe−78.12%W)および純シリコン(Si)を用意した。また、Nを含有した供試材の原料には、前記SUS304に替えて、SUH35(Fe−21%Cr−4%Ni−9%Mn−0.4%N)を用意し、母合金として使用した。なお、各組成の単位は質量%である。また、各原料は普通に市販されているものである。
これらの各原料を用いて、所望の組成となるように配合計算を行い、各供試材毎に総量で約2kgを秤量した。そして、表1、表2および表3に示す組成の試料No.1〜35および試料No.C1〜C8の鋳鋼を鋳造した。
【0043】
原料の溶解は、アルミナ坩堝を使用し、高周波溶解炉にて大気中で行った(溶湯製造工程)。得られた溶湯を1550℃に保持して、室温のジルコン製シェル鋳型に注湯し(注湯工程)、大気中で室温まで自然冷却させて凝固させた(凝固工程)。
また、試料No.10〜18、試料No.33〜35、試料No.C3、C4およびC8には、別途、大気雰囲気中で750℃x4時間の時効処理を施した(時効処理工程)。
【0044】
(供試材の測定)
得られた各供試材について、高温引張強度(0.2%耐力)およびクリープ強度を測定した。
高温引張強度は、平行部φ5mmx25mmをもつように製作した引張試験片を、大気雰囲気で700℃に加熱して引張試験を行い、その引張強さ(0.2%耐力)を求めたものである。各供試材の700℃での0.2%耐力を表1、表2および表3に併せて示した。
【0045】
クリープ強度はクリープラプチャー試験により測定した。すなわち、クリープラプチャー試験は、平行部φ5mmx25mmをもつ同様の引張試験片に、700℃の大気雰囲気中で種々の引張応力を印可して100時間保持し、破断の有無を調べるものである。このクリープラプチャー試験により得られたクリープ破断応力とラーソンミラー指数の関係から、100時間後に破断する応力値を求めた。この応力値を各供試材毎に表1、表2および表3に併せて示した。なお、ラーソンミラー指数Pは、P=(T+273)x(20+logt)から求めたものである。ここで、Tは温度(℃)、tは破断までの時間(破断時間:hr)である。
【0046】
(供試材の評価)
▲1▼Pの影響
供試材の試料No.1〜3と試料No.C1、C2とを比較すると、Pを0.03%以上含有させることにより、高温引張強度およびクリープ強度の両方が共に大きく向上することが解った。具体的には、Pをほとんど含有しない試料No.C1、C2では、高温引張強度が280MPa以下、クリープ強度が205MPa以下であるのに対して、本発明の範囲のPを含有した試料No.1〜3では、高温引張強度が355MPa以上、クリープ強度が270MPa以上ともなっている。
【0047】
この傾向は時効処理を施した場合でも同様である。すなわち、Pをほとんど含有しない試料No.C3、C4では、高温引張強度が315MPa以下、クリープ強度が220MPa以下であるのに対して、本発明の範囲のPを含有した試料No.14、15、23では、高温引張強度が425MPa以上、クリープ強度が365MPa以上にもなっている。
【0048】
▲2▼N、B、CaおよびMgの影響
試料No.4〜13を比較すれば明らかなように、本発明でいう範囲のN等を含有することにより、高温引張強度およびクリープ強度が一層向上することが明らかとなった。また、試料No.16〜22と試料No.24〜26とを比較すれば明らかなように、この傾向は、時効処理を施した場合でも同様である。そしていずれの場合も、それらの元素を本発明の範囲内で複数含有させる方が高温引張強度やクリープ強度がより向上する傾向にある。
【0049】
▲3▼熱処理の影響
既に述べたように、熱処理(時効処理)を施すことで、高温引張強度やクリープ強度が著しく向上する。これは、試料No.1〜13と試料No.14〜26とを比較すれば明らかである。
【0050】
但し、このような熱処理による高温特性の向上が図れるのは、本発明の耐熱鋳鋼のように、少なくとも強化相となる炭化物を微細にかつ多量に析出させ得る組成を備えているからである。このことは、試料No.C3、C4、C6およびC8を観れば明らかである。これらの試料では、Pが実質的に含有されていないかその含有量が非常に少ないため、いくら時効処理を施しても、高温引張強度やクリープ強度の向上幅はわずかなものとなっていた。具体的には、高温引張強度は高々320MPa、クリープ強度も高々230MPaに過ぎなかった。
【0051】
▲4▼他元素の影響
試料No.27〜35は被削性向上元素等を添加した場合の実施例である。これらの実施例から、それらの元素の添加によって、高温強度等に悪影響を及すことなく、被削性等が改善されることが確認された。
【0052】
(その他)
以上のように、本発明の耐熱鋳鋼は、オーステナイト系耐熱鋳鋼でありながら、従来を凌駕する優れた耐熱性を発揮することが解った。従って、この耐熱鋳鋼からなる鋳鋼製耐熱部材も当然に優れた耐熱性を発揮することが解る。その好適な一例として、自動車用過給器のタービンホイール(鋳鋼製耐熱部材)を挙げることができる。特に、排気温度が比較的低く、高々700℃前後のディーゼルエンジン用のタービンホイールに本発明の耐熱鋳鋼は好適である。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
Claims (9)
- 全体を100質量%(以下、単に「%」と表示する。)としたときに、炭素(C):0.5〜1.5%、ケイ素(Si):0.01〜2%、マンガン(Mn):3〜20%、リン(P):0.03〜0.2%、ニッケル(Ni):3〜20%、クロム(Cr):10〜25%、ニオブ(Nb):0.5〜4%およびアルミニウム(Al):0.1%以下を含有すると共にモリブデン(Mo)とタングステン(W)との1種または2種を合計で1.5〜6%含有し、残部が主として鉄(Fe)からなることを特徴とする耐熱鋳鋼。
- 窒素(N):0.03〜0.4%を含有する請求項1に記載の耐熱鋳鋼。
- ホウ素(B):0.0005〜0.01%、カルシウム(Ca):0.0005〜0.02%、マグネシウム(Mg):0.0005〜0.02%のいずれか1種以上を含有する請求項1または2記載の耐熱鋳鋼。
- 鉛(Pb):0.3%以下、硫黄(S):0.2%以下、テルル(Te):0.3%以下、ビスマス(Bi):0.3%以下、セレン(Se):0.3%以下、チタン(Ti):0.5%以下、希土類金属元素(R.E.M.):0.5%以下、ジルコニウム(Zr):0.5%以下またはハフニウム(Hf):0.2%以下の1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱鋳鋼。
- 請求項1〜4のいずれかに記載した成分を含有する鋳鋼を鋳造して得られることを特徴とする鋳鋼製耐熱部材。
- 500℃以上の高温環境下に曝されるエンジン用部材である請求項5に記載の鋳鋼製耐熱部材。
- 前記エンジン用部材は、タービンホイールである請求項6に記載の鋳鋼製耐熱部材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載した成分を含有する溶湯を製造する溶湯製造工程と、
該溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と、
該鋳型中の溶湯を冷却して凝固させる凝固工程とからなることを特徴とする鋳鋼製耐熱部材の製造方法。 - 請求項8に記載した工程を施した後に、500〜850℃で10分以上保持する時効処理工程を行う請求項8に記載の鋳鋼製耐熱部材の製造方法。
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