JP2006322025A - 耐熱鋳造合金およびその製造方法 - Google Patents

耐熱鋳造合金およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造性に優れ、かつ、高温での長時間の特性安定性に優れた耐熱鋳造合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理が施されたことを特徴とする耐熱鋳造合金であり、製造性および高温での長時間の特性安定性に優れている。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、蒸気タービンなどを構成する高温部品材料として使用可能な耐熱鋳造合金およびその製造方法に関する。
火力発電設備の高温部品材料として、1Cr−1Mo−0.25V鋼に代表される低合金耐熱鋼や12Cr−1Mo−VNbN鋼に代表される高Cr系耐熱鋼が多用されている。このような中、近年の火力発電設備においては、蒸気温度の高温化が急速に進められ、より高温特性に優れた高Cr系耐熱鋼の使用が増加してきた。高温特性に優れた耐熱鋼を用いることで、より高性能の火力発電設備の構成が可能になり、600℃程度の高温蒸気を利用した蒸気タービンが運転されている(例えば、特許文献1−4参照。)。
また、将来的には、より高温の蒸気を用いた火力発電設備が実現する可能性が高く、650℃を超える、例えば700℃程度の温度の蒸気を利用する超高温の蒸気タービンが検討されている(例えば、特許文献5−6参照。)。
従来、蒸気タービンの高温部を構成する大型部品は、安価で製造性に優れたフェライト系耐熱鋼が使用されてきた。しかし、650℃を超える、例えば700℃程度の超高温環境下においては、機械的性質あるいは耐環境特性の観点から、オーステナイト系耐熱鋼あるいはNiやCoを主成分とする超耐熱合金がその主要構成材料となることが必須であり、超高温環境下での長期間の使用を目的とした超耐熱合金が開示されている(例えば、特許文献7−8参照。)。
特公昭60−54385号公報 特開平2−149649号公報 特開平6−306550号公報 特開平8−3697号公報 特開2000−282808号公報 特開2004−169562号公報 特開2002−235134号公報 特開2003−13161号公報
上記した蒸気タービン発電設備を構成する部品には、大型素材から成形されるものもあり、大型素材に対して、製造性や所望の形状への成形性に優れること要求される。また、その材料特性は、大型化によっても損なわれず、かつ、均質であることも要求される。例えば、蒸気タービン発電設備の構成部品である、蒸気弁のケーシングやタービンケーシングなどは、主として、大気中で溶解され、鋳造形成される。この際、例えば、AlやTiなどの活性金属元素の添加が困難であったり、添加できても酸化物や窒化物が生成し鋳塊中に残存して均一に固溶させることができないなどの問題があった。
また、上記した従来の耐熱合金は、添加される合金元素の種類やその添加量が大型鋳造品の製造に適しておらず、また、初期の高温特性は優れているものの、650℃を超える、例えば700℃程度の運転温度近傍での長期間の加熱による経年的な脆化や強度低下が著しいなどの問題があった。また、上記した従来の耐熱合金は、溶体化処理を必須としているため、厚肉品においては固溶化温度に加熱後に急冷する工程を必要とし、煩雑な製造工程を要していた。
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、製造性に優れ、かつ、高温での長時間の特性安定性に優れた耐熱鋳造合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の耐熱鋳造合金は、重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理が施されたことを特徴とする。
また、本発明の耐熱鋳造合金は、重量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.5〜1.0%、Mn:0.1〜0.5%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理が施されたことを特徴とする。
この耐熱鋳造合金によれば、上記した各組成成分の含有率の範囲で構成されることによって、溶湯の流動性が高く、高温で長期間加熱されても所望の機械的特性を維持可能な耐熱鋳造合金を提供することができる。また、微量のREMを添加することで、脱酸および脱硫の効果を発揮し、清浄度を高めることができるとともに、溶接性を改善することができる。また、本発明の耐熱鋳造合金においては、熱処理として、700〜1000℃の応力除去熱処理を施せば、所望の機械的特性が得られる。
本発明の耐熱鋳造合金の製造方法は、上記した組成成分を有する耐熱鋳造合金を製造する方法であって、前記耐熱鋳造合金を構成する組成成分を大気溶解する溶解工程と、大気中において、前記溶解された合金を所定の鋳型に流し込み、冷却して所定の形状に形成する鋳造工程と、前記所定の形状に形成された形成物を700〜1000℃に加熱し、応力除去を行う応力除去工程とを具備することを特徴とする。
この耐熱鋳造合金の製造方法によれば、大気溶解および大気鋳造によって、耐熱鋳造合金を製造することができるので、例えば、大型厚肉素材でも製造することができる。さらに、熱処理として、700〜1000℃の応力除去熱処理を施せばよく、耐熱鋳造合金の製造工程の削減を図ることができる。
本発明の耐熱鋳造合金およびその製造方法によれば、製造性に優れ、かつ、高温での長時間の特性安定性に優れている。
以下、本発明の一実施の形態を説明する。
本発明の耐熱鋳造合金は、以下に示す組成成分範囲の合金である。なお、以下の説明において組成成分を表す%は、特に明記しない限り重量%とする。
(M1)C:0.05〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる耐熱鋳造合金。
(M2)C:0.05〜0.15%、Si:0.5〜1.0%、Mn:0.1〜0.5%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる耐熱鋳造合金。
(M3)上記した(M1)または(M2)の組成成分に加えて、Co:10〜15%を含有してなる耐熱鋳造合金。
(M4)上記した(M1)〜(M3)のいずれかの合金の組成成分に加えて、B:0.001〜0.006%を含有してなる耐熱鋳造合金。
(M5)上記した(M1)〜(M4)のいずれかの合金の組成成分に加えて、Nb:1〜3%を含有してなる耐熱鋳造合金。
ここで、上記した(M1)〜(M5)の耐熱鋳造合金における不可避的不純物において、その不可避的不純物のうち、Feを5%以下、Cuを0.5%以下、Pを0.015%以下、Sを0.015%以下に抑制することが好ましい。さらに、その不可避的不純物のうち、Alを0.05%以下、Tiを0.05%以下に抑制することが好ましい。
また、不可避的不純物における抑制組成成分は、上記した組み合わせに限られるものではなく、上記した(M1)、(M2)の耐熱鋳造合金、および(M4)、(M5)でCoを含有しない耐熱鋳造合金における不可避的不純物において、その不可避的不純物のうち、Feを5%以下、Cuを0.5%以下、Coを1%以下、Pを0.015%以下、Sを0.015%以下に抑制することが好ましい。さらに、その不可避的不純物のうち、Alを0.05%以下、Tiを0.05%以下に抑制することが好ましい。
次に、上記した本発明に係る耐熱鋳造合金における各組成成分範囲の限定理由を説明する。
(1)C(炭素)
Cは、炭化物の構成元素として有用な元素であり、特にNi基の鋳造合金においては、溶湯の流動性を確保する上でも効果を発揮する。本発明に係る耐熱鋳造合金においては、使用前における応力除去熱処理による炭化物の析出は極力抑制し、700℃近傍での長期にわたる使用の間、炭化物を微細に析出させて強度特性を維持する。しかし、0.25%を超えると、鋳造時に形成される粗大な未固溶炭化物や共晶炭化物の生成量が急激に増加し、使用中に析出する微細炭化物の析出量を低減する。また、0.05%未満の添加量では、溶湯の流動性が悪く、複雑形状の大型鋳造品を製作することが困難になる。そのため、Cの含有率を0.05〜0.25%とした。また、より好適なCの含有率は、0.05〜0.15%である。
(2)Si(ケイ素)
Siは、脱酸剤として有用であり、溶湯の流動性を確保する効果も発揮する。また、耐水蒸気酸化性を向上させる。しかし、その含有量が多い場合は、靭性の低下及び脆化を促進するため、この観点からは、その含有量を可能な限り抑制することが望ましい。また、その含有率が1.0%を超えると、上記した特性が著しく低下し、0.1%未満では、溶湯の流動性が悪く、複雑形状の大型鋳造品を製作することが困難になる。そのため、Siの含有率を0.1〜1.0%とした。また、より好適なSiの含有率は、Cの含有率が0.05〜0.15%の場合には0.5〜1.0%であり、Cの含有率の上限を0.25%とする場合には、0.1〜0.5%である。
(3)Mn(マンガン)
Mnは、脱硫剤として有用な元素であり少なくとも0.1%は必要だが、1.0%を超えて添加すると非金属介在物の生成量が増加する。そのため、Mnの含有率を0.1〜1.0%とした。また、より好適なMnの含有率は、0.1〜0.5%である。
(4)Cr(クロム)
Crは、耐酸化性、耐食性に有効であるとともに、析出強化に寄与する微細なCr炭化物の構成元素としても有用である。しかし、その含有率が20%未満では、700℃近傍での高温水蒸気環境下における耐食性が十分でなく、24%を超えると、鋳造時の共晶炭化物の生成量が著しくなり、十分な強度特性を発揮できなくなる。そのため、Crの含有率を20〜24%とした。
(5)Mo(モリブデン)
Moは、母相の固溶強化に寄与して高温強度を高めるとともに、高温での熱膨張量を低減する効果を有するが、本発明に係る耐熱鋳造合金においては、その含有率が8%未満ではこれらの効果が認められない。一方、10%を超えると、高温加熱により脆化相が経時的に析出し、また、合金の比重も増加して偏析傾向が高まる。そのため、Moの含有率を8〜10%とした。
(6)Co(コバルト)
Coは、母相の固溶強化に寄与して高温強度とともに、高温での長時間使用後の析出物の安定性を高める。本発明に係る耐熱鋳造合金では、その含有率が10%以上で、これらの効果が発揮される。一方、15%を超えると、加工性や経済性を著しく損なう。そのため、Coの含有率を10〜15%とした。また、本発明に係る耐熱鋳造合金におけるCoの添加の要否は、耐熱鋳造合金の適用部品ごとに判断される。添加不要の場合は、不可避的不純物元素の一つと見なされ、その残存含有率を1%以下に抑制し、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
(7)B(ホウ素)
Bは、析出物の高温安定性を高めるとともに、結晶粒界の強化に寄与する。これらの効果は、0.001%以上の添加で認められるが、0.006%を超えると偏析を助長させるとともに、大気中のN(窒素)と結合して粗大化合物を生成する。そのため、Bの含有率を0.001〜0.006%とした。本発明に係る耐熱鋳造合金におけるBの添加の要否は、耐熱鋳造合金の適用部品ごとに判断される。
(8)Nb(ニオブ)
Nbは、高温での加熱によりNiNbを基本構造とするγ”相を形成し、これが析出強化作用を有して優れた高温特性を発揮するための一因となる。一方で、γ”相やこの安定相であるδ相は、耐熱鋳造合金の靭性や延性を低下させる要因ともなり、経年的な脆化を促進する。その含有率が1%未満では、γ”相の析出量が十分確保できないため所望の強度が発揮できず、3%を超えると、γ”相の析出量が過大となり経年的な脆化が著しくなる。これらのことから、700℃程度の温度において、高温強度を発揮させ、かつ、経年的な脆化を抑制するため、Nbの含有率を1〜3%とした。また、より好適なNbの含有率は、1.5〜2.5%である。本発明に係る耐熱鋳造合金におけるNbの添加の要否は、耐熱鋳造合金の適用部品ごとに判断される。
(9)Al(アルミニウム)およびTi(チタン)
AlおよびTiは、Ni基の耐熱鋳造合金における主強化相であるγ’相の構成元素として通常は不可欠な元素である。しかし、大気溶解や大気鋳造が不可避となる大型鋳造部品の製造においては、溶解時の含有量制御や鋳造品中の均一な濃度分布を得ることが難しく、また、溶湯の流動性の低下や非金属介在物の多量発生による機械的性質の低下を生じさせる。さらに、Nbを添加する耐熱鋳造合金においては、AlやTiの添加は、γ”相の析出と脆化を促進させる。したがって、本発明に係る耐熱鋳造合金においては、AlおよびTiの意図的な添加は行わない。また、不可避的不純物として、耐熱鋳造合金中にAlあるいはTiが混入した場合でも、最終的な残存含有率は、0.05%以下に抑制し、可能な限りこれらの残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
(10)Fe(鉄)、Cu(銅)、P(リン)およびS(硫黄)
通常、鉄鋼材料を溶解する溶解炉を流用して製作される本発明に係る耐熱鋳造合金においては、炉壁からのFeの混入は避けられず、機械的性質に影響を及ぼさない上限として5%とした。また、Cu、P、Sについては、原料等から混入する場合が過半である。そこで、Feの残存含有率を5%以下、Cuの残存含有率を0.5%以下、Pの残存含有率を0.015%以下、Sの残存含有率を0.015%以下に抑制し、可能な限りこれらの残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
(11)REM(レアアースメタル:希土類金属)
本発明に係る耐熱鋳造合金は、大気溶解および大気鋳造で製作されるため、AlやTiなどの活性元素を脱酸剤として用いることは困難である。また、非金属介在物の生成量を抑制する観点からMnの添加量に制限を設けているため、脱硫効果が最大限に発揮されない場合もある。また、脱酸あるいは脱硫が不足して、比重が大きい酸化物や硫化物が生成すると、溶湯からの分離が困難なため、それらの生成物が鋳塊中に残存して耐熱鋳造合金の清浄度を低下させる。本発明に係る耐熱鋳造合金においては、微量のREMを添加することで、脱酸および脱硫の効果を発揮し、清浄度を高めるとともに、Sの含有量を低減させた結果、耐熱鋳造合金の溶接性を改善する効果も併せ持つ。本発明に係る耐熱鋳造合金に適したREMは、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)の4種の希土類元素を少なくとも含有して構成されることが好ましい。これらの総含有率が0.01%未満の場合は、脱酸効果および脱硫効果がともに認められず、一方、1.0%以上添加すると、鋳塊中におけるこれらの残存量が増加し、機械的性質を低下させる。そのため、REMの総含有率を0.01〜1.0%とした。
(耐熱鋳造合金の製造方法)
次に、上記した耐熱鋳造合金の製造方法について説明する。
まず、前述した(M1)〜(M5)のいずれかの耐熱鋳造合金を構成する組成成分を、大気中において溶解する(溶解工程)。
続いて、大気中において、溶解した合金を所定の鋳型に流し込み、冷却して所定の形状に形成する(鋳造工程)。この際の冷却は、鋳型内での自然放冷によって行われる。
続いて、冷却され、所定の形状に形成された形成物を、700〜1000℃で肉厚約25mm当たり1時間加熱し、応力除去を行う(応力除去工程)。なお、応力除去工程後の冷却は、強制空冷や水冷などの強制冷却を実施し、冷却過程での微細炭化物の析出と成長を抑制することが好ましい。
ここで、上記した耐熱鋳造合金は、熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理が施されるのみで、溶体化処理や時効熱処理などは施されない。これによって、十分な機械的性質を確保するとともに耐熱鋳造合金の製造工程を簡略化でき、製作コストを削減することができる。
次に、本発明に係る耐熱鋳造合金において、鋳造後に熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理のみを施すことが好適な理由について説明する。
一般に、超耐熱合金あるいはオーステナイト系ステンレス鋼においては、溶体化処理もしくはこれに時効熱処理を組合せて使用に供される。溶体化処理を施すことによって、未固溶の粗大析出物や粒内析出物を一旦溶解し、局所的な偏析が少ない素材を得ることが可能となる。また、鋳造時において粒界やデンドライト境界に生成するCr炭化物は、その周囲のCr濃度を低下させるため、局所的な耐食性を低下させる。この結果、例えば応力腐食割れが生じ易くなるが、溶体化処理においてCr炭化物を溶解することで、Cr濃度の均一化を図ることができる。
しかしながら、本発明に係る耐熱鋳造合金においては、Cr、MoおよびCの添加量が比較的高いため、鋳造後に生成する共晶炭化物量が多くなる。これらを溶解するには、1200℃を超える高温で、かつ長時間の溶体化処理が必要となり、特に大型素材では工業的に困難である。そこで、これら共晶炭化物以外の粒内析出物の溶解と鋳造・凝固時に導入されたひずみ除去を目的にした応力除去熱処理のみを施すことが好適と判断した。
本発明に係る耐熱鋳造合金においては、過飽和に添加されたCが、高温での運転中に微細炭化物として粒内に析出することが、その強度特性を維持するための要因の一つとされる。しかし、700℃未満で応力除去熱処理を施すと、熱処理中に粒内への炭化物の析出が促進され、例えば、本発明に係る耐熱鋳造合金で蒸気タービンのケーシングなどを形成した場合、運転中に所望の強度を維持できなくなる。また、Nbを添加した耐熱鋳造合金の場合は、700℃未満では、γ”相の析出量が相対的に増加し、運転前の熱処理によって脆化が少なからず生じてしまう。
一方、1000℃を超える温度で応力除去熱処理を施すと、粒界やデンドライト境界への塊状炭化物の析出が促進されるため、過飽和に固溶したC量が減少し、運転中に所望の強度を維持できなくなる。
これらのことから、本発明に係る耐熱鋳造合金については、鋳造後における応力除去熱処理として、700〜1000℃で加熱することが好適である。なお、応力除去熱処理後の冷却は、強制空冷や水冷などの強制冷却を実施し、冷却過程での微細炭化物の析出と成長を抑制することが好ましい。
ここで、本発明の化学組成範囲にある耐熱鋳造合金は、例えば、蒸気タービンのケーシング、蒸気弁のケーシング、ノズルボックス、フランジなどの構成材料とて利用することができる。また、これらの蒸気タービンの構成部品は、上記した製造方法によって形成することができる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
(第1の実施例)
第1の実施例では、本発明の化学組成範囲にある耐熱鋳造合金が優れた経年劣化特性を有することを説明する。
供試鋳造合金(供試合金1〜供試合金16、比較供試合金1〜比較供試合金5)は、約30kgを大気中で誘導溶解し、鋳塊に900℃で応力除去熱処理を行った後、強制空冷によって冷却した。
表1に、作製された供試鋳造合金の化学組成を示す。表1に示された供試鋳造合金のうち供試合金1〜供試合金16は、本発明に係る組成範囲にある耐熱鋳造合金である。一方、比較供試合金1〜比較供試合金5は、その組成が本発明の化学組成範囲にない耐熱鋳造合金であり、比較例である。なお、表1に示された数値の単位は、重量%である。ここで、REMを添加した本発明に係る耐熱鋳造合金のSの含有率は、0.001〜0.003%であり、REMを添加しない比較例に比べて、Sの含有率が低減されている。これは、前述したように、REM添加における脱硫効果が発揮されたことを示している。
ここでは、表1に示された合金のうち、供試合金12〜供試合金16、比較供試合金3および比較供試合金4を用いて、以下の試験を実施した。
供試合金12〜比較供試合金16、比較供試合金3および比較供試合金4について、700℃で30000時間の加熱を行い、JIS4号2mmVノッチシャルピ衝撃試験片を作製した。そして、その試験片を用いて、20℃の雰囲気温度下でシャルピ衝撃試験を実施した。
また、供試合金12〜供試合金16、比較供試合金3および比較供試合金4について、700℃で30000時間の加熱を行い、常温0.2%耐力を測定した。
表2に、20℃衝撃吸収エネルギおよび常温0.2%耐力の測定結果を示す。なお、表2には、応力除去熱処理後における衝撃吸収エネルギおよび常温0.2%耐力とともに、応力除去熱処理を施す前における20℃衝撃吸収エネルギ(初期値)および常温0.2%耐力(初期値)が示されている。
表2に示された結果から、応力除去熱処理を施す前における20℃衝撃吸収エネルギ(初期値)は、いずれの合金においても、150〜170Jであるが、700℃で30000時間の応力除去熱処理後の数値に大きな差が認められた。これは、Nbの添加量に起因するものと考えられ、本発明の化学組成範囲に調整した供試合金12〜供試合金16は、長期間の応力除去熱処理後においても50〜70Jを維持しているが、Nbの添加量が本発明の化学組成範囲を超えて添加されている比較供試合金3および比較供試合金4では、10Jあるいは5Jとなり、応力除去熱処理を施す前の値よりも大きく低下した。
また、応力除去熱処理後における供試合金12〜供試合金16の常温0.2%耐力は、いずれも400MPaであり、700℃で30000時間の応力除去熱処理後は、650〜680MPaに上昇した。この値は、比較供試合金3および比較供試合金4の応力除去熱処理後の値と比べると低いが、応力除去熱処理を施す前における常温0.2%耐力の初期値を上回る耐力を長期間にわたり維持できることが明らかとなった。
以上のことから、本発明の化学組成範囲にある耐熱鋳造合金は、その組成範囲にない添加元素量を有する比較例に比べ、同等の初期特性を有し、700℃で30000時間の応力除去熱処理後においても十分な常温0.2%耐力を有し、さらに、高温で長期間加熱されることによって生じる脆化を大幅に抑制することが可能であることが明らかとなった。
Figure 2006322025
Figure 2006322025
(第2の実施例)
第2の実施例では、本発明の化学組成範囲にある耐熱鋳造合金が、優れた鋳造性を有することを説明する。
まず、大型複雑形状の鋳造品製作の際に重要な特性である溶湯の流動性について説明する。
溶湯の流動性を評価するために、表1に示す、供試合金1〜供試合金11、比較供試合金1、比較供試合金2および比較供試合金5を使用した。
これらの各合金、約30kgを大気中で誘導溶解し、ノズルを介して5/1000の勾配に設置された、内径が約150mm、長さが約2000mmの金属製の円筒に溶湯を流し込んだ。
表3に、各合金の溶湯が到達した距離を示す。表3に示された結果から、供試合金1〜供試合金11の溶湯は、円筒の先端にまで到達したが、比較供試合金1、比較供試合金2および比較供試合金5の溶湯は、最大でも1700mm程度までしか到達せず凝固した。
比較供試合金1、比較供試合金2および比較供試合金5における溶湯の到達距離が、供試合金1〜供試合金11の場合における溶湯の到達距離と比べて短いのは、C、Si、Alといった溶湯の流動性を確保する元素の添加量が鋳造合金に適していないためである。
Figure 2006322025
次に、溶解時と鋳造後の化学組成の変動について説明する。
溶解時と鋳造後の化学組成の変動を評価するために、表1に示す、供試合金2、供試合金3、供試合金9、供試合金15、比較供試合金1および比較供試合金2を使用し、鋳造後の各鋳塊における、C、Al、TiおよびBの含有率を分析した。
表4に、溶解時と鋳造後におけるC、Al、TiおよびBの含有率を示す。なお、表4に示された数値の単位は、重量%である。
本発明の化学組成範囲にある、供試合金2、供試合金3、供試合金9および供試合金15では、鋳造前後での上記した元素の変動は、ほとんど生じなかった。これに対して、比較例である、比較供試合金1および比較供試合金2では、特にAlの含有率の変動が大きく、鋳塊のAlの含有量は、溶解時のAlの含有量の約85%しか残存していなかった。このように、比較例における合金では、活性元素であるAlやTiは、溶湯に添加した時点で、蒸発あるいは酸化物を生成して鋳塊に残存し、その含有量を変化させるため、所望の成分に調整したり、均一な成分の鋳塊を製作することは困難であることがわかった。
以上のことから、本発明の化学組成範囲にある耐熱鋳造合金は、その化学組成範囲にない耐熱鋳造合金である比較例に比べ、溶湯の流動性が高く、大気中において複雑形状の鋳造品を製作することが可能であることが明らかとなった。また、本発明の化学組成範囲にある耐熱鋳造合金は、鋳造前後での化学組成の変動が小さく、添加元素量の制御が容易であることがわかった。
Figure 2006322025

Claims (9)

  1. 重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理が施されたことを特徴とする耐熱鋳造合金。
  2. 重量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.5〜1.0%、Mn:0.1〜0.5%、Cr:20〜24%、Mo:8〜10%、REM(希土類金属):0.01〜1.0%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、熱処理として、700〜1000℃で応力除去熱処理が施されたことを特徴とする耐熱鋳造合金。
  3. 重量%で、Co:10〜15%をさらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐熱鋳造合金。
  4. 前記不可避的不純物のうち、重量%で、Fe:5%以下、Cu:0.5%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下に抑制されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐熱鋳造合金。
  5. 前記不可避的不純物のうち、重量%で、Fe:5%以下、Cu:0.5%以下、Co:1%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下に抑制されたことを特徴とする請求項1または2記載の耐熱鋳造合金。
  6. 前記不可避的不純物のうち、重量%で、Al:0.05%以下、Ti:0.05%以下に抑制されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の耐熱鋳造合金。
  7. 重量%で、B:0.001〜0.006%を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の耐熱鋳造合金。
  8. 重量%で、Nb:1〜3%を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の耐熱鋳造合金。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項記載の組成成分を有する耐熱鋳造合金を製造する方法であって、
    前記耐熱鋳造合金を構成する組成成分を大気溶解する溶解工程と、
    大気中において、前記溶解された合金を所定の鋳型に流し込み、冷却して所定の形状に形成する鋳造工程と、
    前記所定の形状に形成された形成物を700〜1000℃に加熱し、応力除去を行う応力除去工程と
    を具備することを特徴とする耐熱鋳造合金の製造方法。
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