JP7009928B2 - Fe-Ni基合金 - Google Patents

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Description

本発明は、Fe-Ni基合金に関し、さらに詳しくは、高温クリープ特性に優れたFe-Ni基合金に関する。
Fe-Ni基合金は、高温において優れた機械的性質を示すことが知られている。そのため、例えばFe-Ni基合金の一種であるInconel(登録商標)706は、主に発電用ガスタービンディスクの回転体部材として使用されている。
Fe-Ni基合金をこのような高温用途に適用する場合、結晶粒内にγ’相(Ni3(Al,Ti))やγ”相(Ni3(Nb,Ti))などの金属間化合物を微細析出させ、析出強化による高温強度特性の向上を図っている。しかし、高温においては結晶粒界が相対的に弱いため、クリープ特性を向上させるためには結晶粒界も強化する必要がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)所定の組成を有するFe-Ni基析出硬化型超耐熱合金に対して、980℃×3時間の固溶化処理を行い、その後845℃まで炉冷し、
(b)次いで、845℃×3時間の中間時効処理を行い、その後水冷し、
(c)さらに、780℃×8時間加熱→冷却速度50℃/時間で冷却→620℃×8時間加熱の時効処理を行い、その後空冷する
析出硬化型超耐熱合金の製造方法が開示されている。
同文献には、
(A)固溶化熱処理後に加速冷却すると粒内すべりが起こり、この状態で中間時効処理を行うと粒内のすべり面上において安定相が優先的に析出粗大化する点、
(B)粒内に安定相が大量析出すると、時効処理時に析出する硬化析出相の量が著しく減少し、これが強度低下の原因となっている点、及び、
(C)固溶化熱処理後の冷却を空冷又は徐冷とし、かつ、中間時効処理後の冷却を急冷にすると、硬化析出相の粗大化に起因する強度低下を防ぐことができる点
が記載されている。
また、特許文献2には、
(a)所定の組成を有する鉄-ニッケル超合金に対して溶体化焼なましを行い、
(b)溶体化焼なまし済み物体を0.5~20[℃/分]の冷却速度で析出硬化のための温度まで冷却し、
(c)続いて析出硬化する
鉄-ニッケル基超合金の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、約700℃の温度で約600[MPa]の引張強度、及び約30%の破断点伸び率を示す材料が得られる点が記載されている。
析出強化型のFe-Ni基合金の熱処理方法としては、溶体化処理+時効処理が一般的であるが、溶体化処理と時効処理の間に安定化処理が実施される場合がある。
ここで、「時効処理」とは、粒内にγ’相やγ”相を析出させる処理をいう。「安定化処理」とは、粒界にη相(Ni3Ti)を析出させ、粒界をη相で被覆する処理をいう。
安定化処理によってη相を粒界に析出させると、高温における粒界すべりが抑制される。その結果、Fe-Ni基合金のクリープ寿命を改善することができる。しかしながら、η相が粒内に多量に析出すると、Fe-Ni基合金の靱性が著しく損なわれる。そのため、安定化処理によりクリープ特性を改善するためには、η相を適切な形態で、かつ、粒界に優先的に析出させる必要がある。しかしながら、熱処理条件の最適化のみでは、η相の粒内析出を十分に抑制することはできない。
特開平06-240427号公報 特開平09-170016号公報
本発明が解決しようとする課題は、高温クリープ特性に優れたFe-Ni基合金を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、大型部材であっても高い高温クリープ特性を維持することが可能なFe-Ni基合金を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るFe-Ni基合金は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記Fe-Ni基合金は、
39.0≦Ni≦44.0mass%、
14.5≦Cr≦17.5mass%、
0.2≦Al≦0.4mass%、
1.60≦Ti≦2.0mass%、
2.5≦Nb≦2.94mass%、及び、
0.008≦P≦0.020mass%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
(2)前記Fe-Ni基合金は、粒界にη相(Ni3Ti)が析出しており、次の式(1)~式(3)式を満たす。
粒界被覆率(ρ)≧20% ・・・(1)
0<面積率(A)≦10% ・・・(2)
ρ/A≧15 ・・・(3)
但し、
ρは、粒界長さ(L)に対する、η相により被覆された粒界長さ(Lη)の割合(=Lη×100/L(%))、
Aは、倍率400倍で断面を観察した時の、視野面積(S)に対する、η相の面積(Sη)の割合(=Sη×100/S(%))。
析出強化型のFe-Ni基合金において、Pは、η相の粒界析出を促進させる作用がある。そのため、適量のPを含むFe-Ni基合金に対して安定化処理を施すと、η相による粒界被覆率を向上させることができる。また、安定化処理の初期段階において、粒界にη相の核が多量に生成するため、その後の熱処理条件(特に、安定化処理後の冷却速度)に大きく影響されることなく、η相の粒内析出を抑制することができる。その結果、Fe-Ni基合金の高温クリープ特性が向上する。また、厚肉の大型部材であっても、高いクリープ特性が得られる。
ρ/A比とクリープ破断時間との関係を示す図である。 ρ/A比とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示す図である。 η相の面積率(A)とη相の粒界被覆率(ρ)との関係を示す図である。 実施例7及び比較例4で得られた試料の組織写真である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. Fe-Ni基合金]
[1.1. 構成元素]
本発明に係るFe-Ni基合金は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(1)39.0≦Ni≦44.0mass%:
Niは、オーステナイト相を安定化させる元素であり、相安定性を高め、σ相などの有害相の析出を抑制する作用がある。また、Niは、γ’相を構成する主要元素であり、高温強度の確保にも必須な元素である。このような効果を得るためには、Ni量は、39.0mass%以上である必要がある。
一方、Niは高価な元素であるため、Ni量が過剰になると、合金コストの増加を招く。従って、Ni量は、44.0mass%以下である必要がある。
(2) 14.5≦Cr≦17.5mass%:
Crは、緻密な酸化膜を合金表面に形成することで、耐酸化性や耐高温腐食性を高めるのに必要な元素である。このような効果を得るためには、Cr量は、14.5mass%以上である必要がある。
一方、Cr量が過剰になると、高温下で長時間使用した時に、有害相であるσ相が析出し、靱性などを悪化させる。従って、Cr量は、17.5mass%以下である必要がある。Cr量は、好ましくは、16.0mass%以下である。
(3) 0.1≦Al≦0.4mass%:
Alは、γ’相を構成する主要元素であり、析出強化により高温強度を高めるのに有効な元素である。十分な高温強度を得るためには、γ’相の体積率を多くする必要がある。このような効果を得るためには、Al量は、0.1mass%以上である必要がある。Al量は、好ましくは、0.2mass%以上である。
一方、Al量が過剰になると、Tiに対するAl量の比が高くなり、粒界強化に必要なη相の析出を抑制する場合がある。従って、Al量は、0.4mass%以下である必要がある。
(4) 1.5≦Ti≦2.0mass%:
Tiは、Alと同様にγ’相を構成する主要元素であり、析出強化により高温強度を高めるのに有効な元素である。また、粒界強化相であるη相を構成する主要元素でもあるので、クリープ特性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を得るためには、Ti量は、1.5mass%以上である必要がある。
一方、Ti量が過剰になると、η相が過度に析出し、靱性を損なう。従って、Ti量は、2.0mass%以下である必要がある。Ti量は、好ましくは、1.8mass%以下である。
(5) 2.5≦Nb≦3.5mass%:
Nbは、γ”相を構成する主要元素であり、析出強化により高温強度を高めるのに有効な元素である。このような効果を得るためには、Nb量は、2.5mass%以上である必要がある。
一方、Nb量が過剰になると、Laves相の析出により靱性やクリープ特性を損なう。従って、Nb量は、3.5mass%以下である必要がある。
(6) 0.005≦P≦0.020mass%:
Pは、適度な添加で粒界に偏析し、η相の粒界析出を促進させる。その結果、η相による粒界被覆率が向上し、クリープ破断寿命が改善される。このような効果を得るためには、P量は、0.005mass%以上である必要がある。P量は、好ましくは、0.005mass%超、さらに好ましくは、0.007mass%以上ある。
一方、P量が過剰になると、η相の過剰な粒内成長を誘発し、靱性を低下させる。従って、P量は、0.020mass%以下である必要がある。P量は、好ましくは、0.015mass%以下、さらに好ましくは、0.013mass%以下である。
[1.2. 組織]
Fe-Ni基合金は、粒界にη相(Ni3Ti)が析出しており、次の式(1)~式(3)式を満たす。
粒界被覆率(ρ)≧20% ・・・(1)
0<面積率(A)≦10% ・・・(2)
ρ/A≧8 ・・・(3)
但し、
ρは、粒界長さ(L)に対する、η相により被覆された粒界長さ(Lη)の割合(=Lη×100/L(%))、
Aは、倍率400倍で断面を観察した時の、視野面積(S)に対する、η相の面積(Sη)の割合(=Sη×100/S(%))。
[1.2.1. 粒界被覆率(ρ)]
式(1)は、η相による粒界被覆率(ρ)(すなわち、粒界に占めるη相の割合)の範囲を表す。η相が粒内に析出した場合、薄い板状結晶(Platelets)が平行に集合しているセルラー(Cellular)状の組織となる。その結果、薄い板状結晶間においてγ’相及びγ”相を形成するための元素が枯渇し、これが高温強度を低下させる原因となる。すなわち、Fe-Ni基合金において、η相は、本来、有害相である。しかしながら、η相を粒界に優先的に析出させると、高温における粒界すべりを抑制することができる。その結果、高温クリープ特性が向上する。このような効果を得るためには、ρは、20以上である必要がある。ρは、好ましくは、25以上である。
[1.2.2. 面積率(A)]
式(2)は、η相の面積率(A)(すなわち、断面積に占めるη相の面積の割合)の範囲を示す。式(2)中、Sηは、粒界に析出したη相の面積と、粒内に析出したη相の面積の和を表す。粒内に析出したη相が多くなるほど、靱性が低下する。従って、Aは、10%以下である必要がある。Aは、好ましくは、6%以下、さらに好ましくは、2%以下である。
本発明において、η相を粒界に析出させているため、Aは、0超となる。しかし、Aが小さくなりすぎると、η相による粒界被覆が不十分となる。従って、Aは、好ましくは、1%以上である。
[1.2.3. ρ/A比]
式(3)は、ρ/A比の範囲を表す。ρ/A比が大きいことは、η相が粒界に優先的に析出していることを表す。高いクリープ強度と、高い高温強度とを両立させるためには、ρ/A比は、8以上である必要がある。ρ/A比は、好ましくは、15以上、さらに好ましくは、25以上である。
[1.2.4. γ’相、及びγ”相]
本発明に係るFe-Ni基合金は、粒内にγ’相、及び、γ”相を析出させた状態で使用される。高い高温強度を得るためには、粒内に析出しているγ’相及びγ”相の量は多いほど良い。
[1.3. 特性]
[1.3.1. クリープ破断時間]
本発明に係るFe-Ni基合金は、組成及び組織を最適化することによって高いクリープ特性が得られる。具体的には、組成及び組織を最適化することによって、600℃、800MPaにおけるクリープ破断時間が1000h以上となる。組成及び組織をさらに最適化すると、同条件下におけるクリープ破断時間は、1500h以上となる。
[1.3.2. シャルピー吸収エネルギー]
本発明に係るFe-Ni基合金は、組成及び組織を最適化することによって高い靱性が得られる。具体的には、組成及び組織を最適化することによって、25℃においてVノッチシャルピー試験を行った時の吸収エネルギーが20J以上となる。組成及び組織をさらに最適化すると、同条件下における吸収エネルギーは、25J以上となる。
[1.4. 用途]
本発明に係るFe-Ni基合金は、高温強度、高温クリープ特性、靱性等が要求されるあらゆる用途に用いることができる。本発明に係るFe-Ni基合金は、η相の析出を促進させる作用があるPを適量含んでいるので、熱処理条件(特に、安定化処理後の冷却速度)の影響を大きく受けることなく、η相を粒界に優先的に析出させることができる。そのため、本発明に係るFe-Ni基合金は、特に、厚さが100mm以上である部分を含む大型部材に好適に用いられる。
[2. Fe-Ni基合金の製造方法]
本発明に係るFe-Ni基合金の製造方法は、溶解鋳造工程と、熱間加工工程と、固溶化熱処理工程と、安定化処理工程と、時効処理工程とを備えている。
[2.1. 溶解鋳造工程]
まず、所定の成分に配合された原料を溶解し、鋳造する(溶解鋳造工程)。溶解方法及び鋳造方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。
[2.2. 熱間加工工程]
次に、溶解鋳造工程で得られた鋳塊を熱間加工する(熱間加工工程)。熱間加工は、鋳造組織や鋳造欠陥を破壊するため、あるいは、目的とする形状に塑性加工するために行われる。熱間加工条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
[2.3. 固溶化熱処理工程]
次に、熱間加工された材料を所定の温度で加熱し、固溶化熱処理を行う(固溶化熱処理工程)。固溶化熱処理は、主として材料中に分散している析出物を固溶させるために行われる。熱処理温度が低すぎると、析出物の固溶が不十分となる。従って、熱処理温度は、900℃以上が好ましい。熱処理温度は、好ましくは、950℃以上である。
一方、熱処理温度が高すぎると、結晶粒が粗大化する。従って、熱処理温度は、1020℃以下が好ましい。熱処理温度は、好ましくは、1000℃以下である。
熱処理時間は、析出物が固溶する時間であれば良い。最適な熱処理時間は、熱処理温度によって異なるが、通常、1時間~8時間程度である。
固溶化熱処理後、材料を安定化処理温度まで冷却する。本発明に係るFe-Ni基合金において、安定化処理温度への冷却速度は特に限定されず、厚さが100mm以上である部分を含む大型部材であっても、空冷や炉冷等を採用することができる。
[2.4. 安定化処理工程]
次に、固溶化熱処理後の材料を所定の温度に保持し、安定化処理を行う(安定化処理工程)。安定化処理は、主として粒界にη相を析出させるために行われる。η相には、適切な析出温度範囲がある。そのため、熱処理温度が低すぎると、η相を析出させることができない。従って、熱処理温度は、780℃以上が好ましい。熱処理温度は、好ましくは、800℃以上である。
同様に、熱処理温度が高すぎると、η相を析出させることができない。従って、熱処理温度は、880℃以下が好ましい。熱処理温度は、好ましくは、850℃以下である。
熱処理時間は、適量のη相が粒界に析出する時間であれば良い。一般に、熱処理温度が高くなるほど、短時間で多量のη相が析出する。最適な熱処理時間は、熱処理温度によって異なるが、通常、1時間~8時間程度である。
安定化処理後、材料を室温まで冷却する。本発明に係るFe-Ni基合金において、安定化処理温度への冷却速度は特に限定されず、厚さが100mm以上である部分を含む大型部材であっても、空冷や炉冷等を採用することができる。但し、冷却速度が遅くなりすぎると、冷却過程でη相が粒内に析出しやすくなる。そのため、安定化処理後の冷却速度は、速いほど良い。
[2.5. 時効処理工程]
次に、安定化処理後の材料を所定の温度で時効処理する(時効処理工程)。時効処理は、粒内にγ’相及びγ”相を析出させるために行われる。
[3. 作用]
本発明に係るFe-Ni基合金において、Pは、η相の粒界析出を促進させる作用がある。即ち、η相が優先的に粒界に析出するため、中心部と表面部で熱履歴が異なってしまう大型部材(厚さが100mm以上である部分を含む部材)においても、高い高温クリープ特性を維持することが可能となる。
η相の析出は、安定化熱処理のみならず、固溶化熱処理後の冷却、及び、安定化処理後の冷却の双方で起こり得る(特に、それぞれの冷却速度が遅い場合)。従って、外部温度に追随しにくい中心部で高温クリープ特性に優れた組織を得ようとする場合、外部温度に追随しやすい表面部では過剰な熱エネルギーが与えられた結果、結晶粒内にη相が多く析出し、優れた高温クリープ特性が得られなくなることがある。
本発明に係るFe-Ni基合金においては、η相が優先的に粒界に析出するため、大型部材であっても、中心部と表面部の双方で高温クリープ特性に優れた組織を得ることが可能となる。
なお、析出強化型のFe-Ni基合金において、Pは、従来、有害元素と考えられていた。そのため、Fe-Ni基合金の高温特性を改善するために、所定量のPを意図的に添加した従来例はない。Fe-Ni基合金において、Pがη相の粒界析出を促進させる作用があることは、本願発明者らによって初めて見出された知見である。
(参考例1~4、実施例5~6、比較例1~3)
[1. 試料の作製]
表1に示す種々の成分を有する合金1~5を真空誘導炉(VIM)で溶製し、50kgのインゴットを作製した。偏析を軽減するためにソーキングを実施した後、熱間鍛造にて直径25mmの丸棒を作製した。次に、丸棒に対して、980℃で4時間保持(固溶化熱処理)した後、炉冷(FC)にて820℃まで冷却し、2~8時間保持した(安定化処理)。安定化処理後、水冷(WC)した。さらに、安定化処理後の丸棒に対して、720℃で8時間、及び620℃で36時間の時効処理を行った。
Figure 0007009928000001
[2. 試験方法]
[2.1. η相の定量評価]
時効処理後の試料中心部が観察面となるように、試料を樹脂に埋め込み、ミクロ観察試料を作製した。ミクロ観察試料を、1%酒石酸-1%硫酸アンモニウム水溶液中において25mA/cm2の電流密度で4時間電解エッチングを行った。
電解エッチング後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて400倍の倍率でη相を撮影した。画像処理ソフト(Winroof)を用いて、撮影した画像に含まれるη相の面積を測定した。η相の面積を観察面積で割ったものを、η相の面積率(A)とした。また、計測した粒界の中で、析出しているη相が粒界を覆っている長さの総和を、計測した粒界長さの総和で割ったものを、η相による粒界被覆率(ρ)とした。
[2.2. クリープラプチャー試験]
クリープラプチャー試験は、ASTMに準拠し、600℃、800MPaの条件下にて実施した。
[2.3. シャルピー試験]
シャルピー試験は、JIS準拠のVノッチ試験片を用いて室温で実施した。
[3. 結果]
表2に、結果を示す。なお、表2には、熱処理条件も併せて示した。図1に、ρ/A比とクリープ判断時間との関係を示す。図2に、ρ/A比とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示す。図3に、η相の面積率(A)とη相の粒界被覆率(ρ)との関係を示す図である。表2、及び図1~図3より、以下のことが分かる。
Figure 0007009928000002
(1)ρ/A比が8以上になると、クリープ破断時間は1000h以上となり、かつ、シャルピー吸収エネルギーは20J以上となる。
(2)P量が0.005mass%未満(比較例1~3)であっても、安定化処理時間を長くすることにより、粒界被覆率(ρ)を向上させることができる。しかしながら、これと同時に面積率(A)も増大するため、ρ/A比は、いずれも8未満であった。
(3)比較例1、2は、クリープ破断時間が1000h未満であり、シャルピー吸収エネルギーも20J未満であった。これは、粒内にも多量のη相が析出したためである。一方、比較例3は、シャルピー吸収エネルギーは20Jを超えていたが、クリープ破断時間は1000h未満であった。これは、η相の粒界被覆率ρが小さいためである。
(4)適量のPを含んでいる場合(参考例1~4、実施例5~6)、相対的に短時間の安定化処理によって、ρ/A比を8以上にすることができた。また、長時間の安定化処理を行っても、面積率(A)の増大を抑制することができた(実施例6)。これは、Pがη相の粒界析出を促進させているためである。
(実施例7、比較例4)
[1. 試料の作製]
合金1(実施例7)及び合金4(比較例4)について、それぞれ、参考例1及び比較例1と同様にして、直径25mmの丸棒を2本ずつ作製した。次に、980℃で4時間保持(固溶化熱処理)した後、炉冷を行った。参考例1及び比較例4と異なり、炉温が8250℃及び800℃となったところで試料を取り出した。
[2. 試験方法及び結果]
炉から取り出した試料について、参考例1と同様にして組織観察を行った。図4に、実施例7(合金1)及び比較例4(合金4)で得られた試料の組織写真を示す。本発明に係るFe-Ni基合金である合金1は、いずれの温度においてもη相が粒界に析出していることが分かる。一方、本発明よりもPの少ない合金4は、825℃で取り出した丸棒(先に取り出した丸棒)では粒内のη相は多くないものの、800℃で取り出した丸棒(後に取り出した丸棒)では粒内にη相が多く析出していることが分かる。
従って、本発明に係るFe-Ni基合金であれば、中心部と表面部で熱履歴が異なってしまう大型部材であっても、優れた高温クリープ特性を得られることが理解できるであろう。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るFe-Ni基合金は、発電用ガスタービンディスクの回転体部材等に使用される耐熱合金として用いることができる。

Claims (4)

  1. 以下の構成を備えたFe-Ni基合金。
    (1)前記Fe-Ni基合金は、
    39.0≦Ni≦44.0mass%、
    14.5≦Cr≦17.5mass%、
    0.2≦Al≦0.4mass%、
    1.60≦Ti≦2.0mass%、
    2.5≦Nb≦2.94mass%、及び、
    0.008≦P≦0.020mass%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
    (2)前記Fe-Ni基合金は、粒界にη相(Ni3Ti)が析出しており、次の式(1)~式(3)式を満たす。
    粒界被覆率(ρ)≧20% ・・・(1)
    0<面積率(A)≦10% ・・・(2)
    ρ/A≧15 ・・・(3)
    但し、
    ρは、粒界長さ(L)に対する、η相により被覆された粒界長さ(Lη)の割合(=Lη×100/L(%))、
    Aは、倍率400倍で断面を観察した時の、視野面積(S)に対する、η相の面積(Sη)の割合(=Sη×100/S(%))。
  2. 600℃、800MPaにおけるクリープ破断時間が1000h以上である請求項1に記載のFe-Ni基合金。
  3. 25℃においてVノッチシャルピー試験を行った時の吸収エネルギーが20J以上である請求項1又は2に記載のFe-Ni基合金。
  4. 厚さが100mm以上である部分を含む大型部材に用いられる請求項1から3までのいずれか1項に記載のFe-Ni基合金。
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S.MULLER,J.ROSLER,Optimisation of Inconel 706 for Creep Crack Growth Resistance,Proceedings of the Fifth International Charles Parsons Turbine Conference,英国,2000年07月07日

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