JP3052007B2 - すべり軸受 - Google Patents

すべり軸受

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JP3052007B2 JP3165196A JP16519691A JP3052007B2 JP 3052007 B2 JP3052007 B2 JP 3052007B2 JP 3165196 A JP3165196 A JP 3165196A JP 16519691 A JP16519691 A JP 16519691A JP 3052007 B2 JP3052007 B2 JP 3052007B2
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英世 宮野
義和 藤沢
誠 辻
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はすべり軸受、特に、表面
層の相手軸部材との摺動面が、相手軸部材外周面との間
にオイル溜りを形成すべく、オイル溜り形成領域を有す
るすべり軸受の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種すべり軸受としては、一対
の半環状半体相互を突合わせたものが知られている。こ
の場合、オイル溜り形成領域は、各半体の両端部を、そ
れらが半径方向外方へ広がるように直線状に成型して形
成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来例に
おいては、オイル溜りの容量が比較的小さく、またオイ
ル溜り形成領域のオイル保持性、つまり保油性が適当で
ないため、オイル溜り形成領域に連なる主領域の潤滑性
が悪く、その結果、表面層の耐焼付き性が低い、という
問題がある。
【0004】その上、各半体が円弧状部と直線状部とを
連続させた特殊形状を有するため、その成型型の製造コ
ストが高く、また製造工数も比較的多くなり、すべり軸
受の製造コストの上昇を招く、といった問題もある。
【0005】本発明は前記問題を解決することのできる
前記すべり軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1,第2半
体より環状に形成され、且つ表面層の相手軸部材との摺
動面における両半体の中央部に主領域が、また各主領域
の両側に前記相手軸部材外周面との間にオイル溜りを形
成すオイル溜り形成領域がそれぞれ存するすべり軸受
において、前記表面層は、前記オイル溜り形成領域を形
成する複数の角錐体状突起および複数の角錐台状突起の
少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0007】
【実施例】図1〜図3において、すべり軸受1は、エン
ジンにおける相手軸部材としてのクランクシャフトのジ
ャーナル部aに適用されるもので、ピストン側の半環状
第1半体11 およびオイルパン側の半環状第2半体12
より二つ割に形成されている。両半体11 ,12 の両端
面相互を衝合することにより、外側に位置する環状基板
2が形成され、またその基板2の内周面にはジャーナル
部aとの摺動面3aを持つ表面層3が形成される。基板
2は裏金21 と、その裏金21 内周面に形成されて、表
面層3を支持するライニング層22 を有する。裏金21
およびライニング層22 間には銅メッキ層が、またライ
ニング層22 および表面層3間にはニッケルメッキバリ
ヤ層がそれぞれ必要に応じて設けられる。各半体11
2 は、その全周に亘って略等しい半径を有し、したが
ってすべり軸受1は真円形に形成される。
【0008】裏金21 は圧延鋼板より構成され、その厚
さはすべり軸受1の設定厚さにより決められる。ライニ
ング層22 は銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウ
ム系合金等より構成され、その厚さは50〜500μ
m、通常は300μm程度である。表面層3はPb合金
より構成され、その厚さは5〜50μm、通常は20μ
m程度である。
【0009】表面層3を構成するPb合金は、80〜9
0重量%のPbと3〜20重量%のSnとを含有し、必
要に応じてCu、In、Ag、Tl、Nb、Sb、N
i、Cd、Te、Bi、Mn、Ca、Baから選択され
る少なくとも一種を10重量%以下含有する。
【0010】Cu、Ni、Mnは表面層3の硬さを向上
させる機能を有するが、その含有量が10重量%を上回
ると、硬さが高くなり過ぎて初期なじみ性が低下する。
Cu等を添加する場合には、表面層3の硬さHmvが1
5〜25になるように、その含有量を調整するのが望ま
しい。
【0011】In、Ag、Tl、Nb、Sb、Cd、T
e、Bi、Ca、Baは、表面層3を軟化して初期なじ
み性を改善する機能を有するが、その含有量が10重量
%を上回ると、表面層3の強度が低下する。In等を添
加する場合には、表面層3の硬さHmvが8〜15にな
るように、その含有量を調整するのが望ましい。
【0012】表面層3は、電気メッキ法により形成され
るもので、メッキ液としては、1リットル当り40〜1
80gのPb2+、1リットル当り1.5〜35gのSn
2+、必要に応じて1リットル当り15g以下のCu2+
含むホウフッ化系メッキ液が用いられる。またメッキ液
の温度は10〜35℃、陰極電流密度は3〜15A/d
2 にそれぞれ設定される。
【0013】図2〜図4に明示するように、摺動面3a
における両半体1 1 ,1 2 の中央部に主領域Bが、また
その主領域Bの両側に主領域Bに連なってジャーナル部
a外周面との間にオイル溜りcを形成するオイル溜り形
成領域Dがそれぞれ存する。主領域Bおよびオイル溜り
形成領域Dは、頂点eをジャーナル部a側に向けた複数
の角錐体状突起、図示例では四角錐体状結晶41 ,42
の集合体より形成される。両四角錐体状結晶41 ,42
は、銅合金製ライニング層22 から延出するPb合金の
柱状晶51 ,52 の先端部を形成する。この場合、各オ
イル溜り形成領域Dは、各半体11 2 の母線方向全
長に等しい長さと、各半体11 ,12 の周長の略6分の
1の幅を有する。オイル溜り形成領域Dを形成する四角
錐体状結晶42 は大形であり、主領域Bを形成する四角
錐体状結晶41 は小形である。大形の四角錐体状結晶4
2 としては、底面積が1.5μm2 以上、15μm2
下、高さが1μm以上、3μm以下のものが適当であ
り、一方、小形の四角錐体状結晶41 としては、底面積
が1.5μm2 未満、高さが1μm未満のものが適当で
ある。二領域B,Dの形成は、一方の領域BまたはDを
電気メッキ処理により形成する際に、ライニング層22
の他方の領域DまたはBに対応する部位をマスキングす
る、といった手段が採用される。その他の手段として
は、極間距離を変える、スリットまたは遮蔽板を用いる
等の電通制御法を挙げることができる。
【0014】このように表面層3は多数の柱状晶51
2 より構成され、その表面層3の組成は、例えば8重
量%Sn、2重量%Cu、残部Pbである。また主領域
B形成時の陰極電流密度は6A/dm2 に設定され、一
方、オイル溜り形成領域D形成時の陰極電流密度は10
A/dm2 に設定される。
【0015】図5は、主領域BにおけるPb合金の結晶
構造を示す電子顕微鏡写真(10,000倍)である。
【0016】図6は、主領域BにおけるPb合金結晶の
X線回折図であり、ミラー指数で(200)面および
(400)面の回折ピークのみが認められる。
【0017】ここで、結晶面の配向性を表わす指数とし
て配向指数Oeを、 (ただし、hklはミラー指数、Ihklは(hkl)
面の積分強度、ΣIhklはIhklの総和)と定義す
ると、或(hkl)面において、その配向指数Oeが1
00%に近ければ近い程、その(hkl)面と直交する
方向へ配向した結晶面が多いことになる。
【0018】Pb合金結晶の(200)面および(40
0)面における積分強度Ihklおよび配向指数Oeは
表1の通りである。
【0019】
【表1】
【0020】表1より、Pb合金結晶の(h00)面に
おける配向指数Oeは100%であり、したがってPb
合金結晶は結晶軸a,b,cにおいて各軸方向に配向し
た結晶面、即ち(h00)面を持つことになる。
【0021】このように、結晶面を(h00)面と直交
する方向に配向させると、Pb合金の結晶構造が面心立
方構造であることから、配向方向における原子密度が高
くなるので、主領域Bの硬度が増してその耐焼付き性が
向上する。同様に、オイル溜り形成領域DのPb合金結
晶の(h00)面における配向指数Oeは100%であ
る。
【0022】図7は、比較例表面層におけるPb合金の
結晶構造を示す電子顕微鏡写真(10,000倍)である。
【0023】図8は、比較例表面層におけるPb合金結
晶のX線回折図である。本図からは特定の結晶面への配
向は認められない。種々の(hkl)面における積分強
度Ihklおよび配向指数Oeは表2の通りである。
【0024】
【表2】
【0025】図7および表2から明らかなように、Pb
合金結晶は、結晶面が特定の方向へ配向していないラン
ダム構造であって、表面層は粒状晶より構成される。
【0026】表3は、各種すべり軸受において、その表
面層の組成、両領域B,Dの結晶構造を比較したもので
ある。比較例(1),(2)は、その表面層全体がPb
合金の粒状晶(図7)より構成されており、また従来例
と同様のオイル溜り形成領域を有する。
【0027】
【表3】
【0028】図9は、本発明(1)〜(4)および比較
例(1),(2)の焼付きテスト結果を示す。
【0029】焼付きテストは、回転軸に各すべり軸受を
摺擦させ、そのすべり軸受に対する負荷荷重を漸次増加
させることにより行われた。図9は、各すべり軸受が焼
付きを発生したときの面圧を求めたものである。
【0030】テスト条件は次の通りである。回転軸の材
質 JIS S48C材に窒化処理を施したもの、回転
軸の回転数 6000rpm 、給油温度 120℃、給油圧力
3kg/cm2 、負荷荷重 1kg/sec 。
【0031】図9から明らかなように、本発明(1)〜
(4)は比較例(1),(2)に比べて優れた耐焼付き
性を有する。
【0032】このような摺動特性が得られる理由は次の
通りである。即ち、オイル溜り形成領域Dが大形の四角
錐体状結晶42 の集合体より形成されているので、オイ
ル溜り形成領域Dの表面積が拡大されて、その領域Dと
回転軸外周面との間に比較的容積の大きなオイル溜りc
が形成され、またオイル溜り形成領域Dの保油性が適当
に維持されると共に大形の結晶であることから主領域B
へのオイルの流れが比較的スムーズに行われること、主
領域Bが小形の四角錐体状結晶41 の集合体より形成さ
れているので、主領域Bの表面積が大いに拡大されてそ
の領域Bが良好な保油性を発揮すること、両四角錐体状
結晶41 ,42 の(h00)面における配向指数Oeが
100%であって、それらの硬度向上が図られているこ
とによって、主領域Bの潤滑が十分に行われるからであ
る。
【0033】クランクシャフト用すべり軸受の場合、本
発明で言う主領域Bにおける摺動面圧が高くなるため、
その領域Bには良好な保油性が要求される。本実施例に
よれば、この要求を十分に満たすことができるものであ
る。
【0034】図10は、オイル溜り形成領域Dを前記と
同様の比較的大形の四角錐体状結晶42 の集合体より形
成し、主領域Bを前記粒状晶6の集合体より形成したも
のである。この場合にも前記と略同様の摺動特性が得ら
れる。
【0035】図11,図12(10,000倍の電子顕微鏡写
真)に示すように、オイル溜り形成領域Dを、上底面f
をジャーナル部a側に向けた複数の角錐台状突起、図示
例では柱状晶53 の先端部を形成する四角錐台状結晶7
のみを有する集合体より形成する場合ならびに複数の四
角錐体状結晶42 および複数の四角錐台状結晶7を有す
る集合体より形成する場合にも前記同様の摺動特性が得
られる。この場合、主領域Bは四角錐体状結晶および/
または四角錐台状結晶等より構成される。両領域B,D
における結晶の大、小関係は図2,図3の例に準じる。
【0036】前記四角錐体状結晶41 ,42 および四角
錐台状結晶7が両領域B,Dの一部を形成する、即ち、
四角錐体状結晶41 等が分散状態で存在するものも本発
明に包含される。この場合、各領域B,Dにおける四角
錐体状結晶41 等の面積率は50%以上に設定される。
【0037】前記のように優秀な摺動特性を得るために
は四角錐体状結晶41 ,42 および四角錐台状結晶7の
傾きが問題となる。
【0038】そこで、図4,図13に示すように四角錐
体状結晶42 (または41 )の底面側に、表面層3の表
面に沿う仮想面Gを規定し、また四角錐体状結晶4
2 (または41 )の頂点eと底面中央部hを通る直線k
が、底面中央部hを通り仮想面Gに垂直な基準線mに対
してなす傾き角をθと規定すると、四角錐体状結晶42
(または41 )の傾き角θは0°≦θ≦30°に設定さ
れる。傾き角θが、θ>30°になると、オイル溜り形
成領域D(または主領域B)の表面積が減少し、また保
油性が低下する。
【0039】四角錐台状結晶7の場合の傾き角θは、図
11,図14に示すように上底面中央部nおよび下底面
中央部pを通る直線rと下底面中央部pを通り仮想面G
に垂直な基準線mとがなす角度として規定される。この
場合にも、傾き角下は、0°≦θ≦30°に設定され
る。
【0040】前記実施例では、表面層を電気メッキ法に
より形成したが、その他の表面層形成方法としては、P
VD、イオンプレーティング、CVD、スパッタリング
等の気相を介する形成方法を挙げることができる。また
摺動面における角錐体状突起等の形成に当っては、化学
エッチング、電気エッチング、気相エッチング(ボンバ
ード処理)等のエッチング法、転写、切削等の機械加工
等を適用することが可能である。
【0041】本発明は、クランクシャフトのジャーナル
部に限らず、コンロッドの大端部等他の軸部材にも適用
される。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、表面層の構造を前記の
ように特定することにより、良好な潤滑性を得て、表面
層の耐焼付き性を向上させたすべり軸受を提供すること
ができる。またすべり軸受を真円形に形成し得るので、
その製造が容易であり、従来のものに比べてすべり軸受
の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】すべり軸受の分解平面図である。
【図2】すべり軸受用半体の第1例の要部拡大概略展開
図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】オイル溜り形成領域の第1例を示す要部概略斜
視図である。
【図5】主領域におけるPb合金の結晶構造を示す顕微
鏡写真である。
【図6】主領域におけるPb合金結晶のX線回折図であ
る。
【図7】比較例表面層におけるPb合金の結晶構造を示
す顕微鏡写真である。
【図8】比較例表面層におけるPb合金結晶のX線回折
図である。
【図9】焼付きテスト結果を示すグラフである。
【図10】すべり軸受用半体の第2例の要部拡大概略展
開図である。
【図11】オイル溜り形成領域の第2例を示す要部概略
斜視図である。
【図12】図11に対応するPb合金の結晶構造を示す
顕微鏡写真である。
【図13】四角錐体状結晶の傾き角測定法を示す説明図
である。
【図14】四角錐台状結晶の傾き角測定法を示す説明図
である。
【符号の説明】
1 すべり軸受 3 表面層 3a 摺動面 41 ,42 四角錐体状結晶(角錐体状突起) 7 四角錐台状結晶(角錐台状突起) a クランクシャフトのジャーナル部(相手軸部
材) B 主領域 D オイル溜り形成領域
フロントページの続き (72)発明者 成重 丈志 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 平4−366020(JP,A) 特開 平4−366022(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 33/12 F16C 33/10 F16C 33/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1,第2半体(1 1 ,1 2 )より環状
    に形成され、且つ表面層(3)の相手軸部材(a)との
    摺動面(3a)における両半体(1 1 ,1 2 )の中央部
    (b)に主領域(B)が、また各主領域(B)の両側に
    前記相手軸部材(a)外周面との間にオイル溜り(c)
    を形成すオイル溜り形成領域(D)がそれぞれ存する
    すべり軸受において、前記表面層(3)は、前記オイル
    溜り形成領域(D)を形成する複数の角錐体状突起(4
    2 )および複数の角錐台状突起(7)の少なくとも一方
    を有することを特徴とするすべり軸受。
  2. 【請求項2】 第1,第2半体(1 1 ,1 2 )より環状
    に形成され、且つ表面層(3)の相手軸部材(a)との
    摺動面(3a)における両半体(1 1 ,1 2 )の中央部
    (b)に主領域(B)が、また各主領域(B)の両側に
    前記相手軸部材(a)外周面との間にオイル溜り(c)
    を形成すオイル溜り形成領域(D)がそれぞれ存する
    すべり軸受において、前記表面層(3)は、その摺動面
    (3a)を形成する複数の角錐体状突起(41 ,42
    および複数の角錐台状突起(7)の少なくとも一方を有
    し、前記突起のうち大形のものが、前記オイル溜り形成
    領域(D)を形成し、前記突起のうち小形のものが、前
    記オイル溜り形成領域(D)を除く主領域(B)を形成
    していることを特徴とするすべり軸受。
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