JP3043374B2 - 耐摩擦溶融糸の仮撚加工法 - Google Patents

耐摩擦溶融糸の仮撚加工法

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JP3043374B2
JP3043374B2 JP2175731A JP17573190A JP3043374B2 JP 3043374 B2 JP3043374 B2 JP 3043374B2 JP 2175731 A JP2175731 A JP 2175731A JP 17573190 A JP17573190 A JP 17573190A JP 3043374 B2 JP3043374 B2 JP 3043374B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、主として運動時の床との摩擦により生じる
衣料の穴あきを防止する性能(以下、単に耐摩擦溶融性
と記す。)に優れた熱可塑性繊維より成る仮撚加工糸を
提供する方法に関する。
(従来の技術) 耐摩擦溶融性に優れた織編物を得んとする提案は従来
から数多くなされている。
例えば、織編物仕上げ工程にて耐熱性及び平滑性に富
んだシリコンエラストマーをもって繊維表面を被覆する
方法(特開昭63−243379号)、非摩擦溶融性繊維である
レーヨンを特定比率で混用する方法(実願昭59−26076
号)、耐熱性繊維を特定編組織下に混用する方法(実願
昭61−8590号)等がある。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、特開昭63−243379号の織編物表面を薬
剤で処理する方法は、風合いとの関係に於いて付着力に
制約があるため耐久性が課題となる。
また、実願昭59−26076号のようにレーヨンを混用す
ることは染色堅牢性の保持に課題があり、実願昭61−85
90号のような耐熱性繊維の混用は3層編組織とするため
コスト上に課題が残る。
熱可塑性繊維を用いたスポーツ衣料は運動時に起きる
床との摩擦によって穴あき現象が生じ易いことは良く知
られている。この穴あき現象は主として摩擦によって生
じた熱が衣料を構成する繊維を溶融したり、熱脆化させ
ることに起因する。
即ち、本発明の目的は耐摩擦溶融性に優れた繊維を開
発すると共に、同繊維を用いて耐摩擦溶融性を保持し、
かつ衣料としての風合に優れた仮撚加工糸を提供するこ
とにある。
(課題を解決するための手段及び作用) 本発明によれば、芯部を構成するポリマーの溶融温度
が鞘部を構成するポリマーの溶融温度より40℃以上低い
ポリマーによって成る芯/鞘複合紡糸繊維を、芯部を構
成するポリマーの溶融温度より10℃〜90℃低い温度で仮
撚加工することによって仮撚加工糸条を得るものであっ
てその得られた糸条で構成する織編物は耐摩擦溶融性、
嵩高性に優れたものとなる。
芯/鞘複合紡糸繊維とは溶融紡糸法によって得られる
ものであり、特に第1図に示す如く、芯部(1)を構成
するポリマー成分が鞘部(2)を構成するポリマー成分
によって完全に被覆されたもの(A)が適正仮撚条件
(特に温度)を広範囲に採用出来るため好ましい。しか
し、芯部の一部が繊維表面に存在するもの(B)であっ
ても、適正仮撚条件は狭くなるものの本発明の目的を達
成するためには支障は無い。また、芯部及び鞘部の断面
形状は特に限定されない。
本発明の目的を達成する重要な要件の一つは、芯部及
び鞘部を構成するポリマーの溶融温度の組み合わせを選
択することにある。即ち、芯部を構成するポリマーの溶
融温度は鞘部を構成するポリマーの溶融温度より40℃、
好ましくは80℃以上低いポリマーの組み合わせとする必
要がある。なお、ポリマー溶融温度は示差熱走査熱量計
によって測定される吸熱ピーク値であり、本発明に於い
てはPerkin Elmor製DSC2型を用いて測定した。
芯/鞘部を成すポリマーの溶融温度差が40℃未満であ
ると、本発明の耐摩擦性能を持った仮撚加工糸は得られ
ない。即ち、本発明の耐摩擦溶融性能向上のメカニズム
は明確ではないが、床と高溶融温度ポリマーである鞘部
2との間で生じた摩擦熱は低溶融温度ポリマーの芯部1
の融解熱として瞬時に吸収される結果、鞘部2の溶融や
熱脆化が防止されるものと推定される。逆に、芯/鞘部
を構成するポリマー溶融温度差が40℃未満になると、鞘
部2の摩擦熱を芯部1の溶解熱として吸収しきれないた
め繊維が破壊されるものと推定される。従って、理論上
は鞘部2を構成するポリマーの溶融温度は高ければ高い
ほど好ましく、芯部1を構成するポリマーとの溶融温度
差が大きいほど耐摩擦溶融性能に優れたものとなる。し
かし工業的には、複合紡糸時のノズルパック内温度は同
一となるため、芯/鞘ポリマーの溶融温度差が大きい
程、ノズルパック内で低融点温度ポリマーが熱分解する
ため紡糸性が低下することになるが、芯/鞘ポリマーの
溶融温度差の限界は芯部1を成すポリマーの吐出量、紡
糸機中のポリマー滞在時間等によって複雑に変化するた
め、適宜実験によってその差を決定する必要がある。
また、芯部/鞘部を構成するポリマーの適正比率(体
積比率)についてみると、主として使用ポリマーの溶融
温度差、単繊維度等によって差が生じ、一義的に決定す
ることは不可能であるが、概して芯部体積:鞘部体積=
1:1〜1:5であれば充分な効果が得られる。
このような構造を持った原糸はそれ自体が耐摩擦溶融
性能を持つものであるが、その主たる用途がスポーツ衣
料であるときは、更に伸縮性や嵩高性が要求される。従
って、仮撚加工糸とすることが工業的には必要な要件と
なる。
しかしながら、本発明の芯/鞘部を構成するポリマー
の溶融温度のように大幅な差がある場合には、一般的仮
撚温度条件の設定手法では適正な仮撚条件は得られな
い。単一ポリマーによって構成さた原糸に関して、特に
伸縮性に富んだ高嵩高仮撚糸を得るための一般的仮撚温
度設定手法は、ポリマー溶融温度より30℃〜50℃低い温
度にて仮撚加工せられることが望ましいが、本発明の複
合紡糸繊維の場合には、芯部/鞘部を構成するポリマー
の熱的性質が大幅に異なるため、鞘部2を構成する高溶
融温度側ポリマーの溶融温度を基準とした一般的仮撚温
度条件の設定手法では仮撚加工時に断糸が生じ工業化は
不可能となる。また、芯部1を構成する低溶融温度側ポ
リマーの溶融温度を基準とした一般的仮撚温度の設定手
法では伸縮性に富んだ高嵩高仮撚糸を得ることが出来な
い。
かかる状況を踏まえ、種々検討した結果、芯部1を構
成するポリマーの溶融温度を基盤として、その温度より
10℃〜30℃低い温度が仮撚時の断糸が生じることなく伸
縮性、高嵩高性に富む仮撚糸が得られる条件であること
が明らかになった。この温度領域を芯部1と同一の単一
ポリマーによって構成されたる原糸に適用すると、単繊
維間の融着、撚抜け、毛羽、等が発生し生産技術とはな
らない。更には、芯部1を構成するポリマーの溶融温度
より30℃〜90℃低い仮撚温度で仮撚加工を行うと、上述
の如く順次、伸縮性と嵩高性が低下した仮撚糸が得られ
る。しかしこの場合、特に充分な伸縮性、嵩高性は無い
ものの、所謂シルキーな嵩高性を有することとなり、本
発明の目的を達成し得るには十分であることが分かり、
仮撚温度条件の下限は芯部を構成するポリマーの溶融温
度より90℃低い温度であることが明らかになった。
(実施例) 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただ
し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1 芯部を構成するポリマーを溶融温度175℃のナイロン1
2,鞘部を構成するポリマー溶融温度255℃のポリエステ
ル、芯部:鞘部の体積比率=1:1,芯/鞘部は共に丸断
面、芯部が鞘部の中心にある複合繊維延伸糸であるB100
/36を得た。該延伸糸を供給糸とし、仮撚加工機LS−6
(三菱重工製)を用い、糸速100m/分、撚数3200T/m,加
撚張力0.15g/d,とし、仮撚温度を変更して加工を実施
し、各仮撚糸の強伸度を測定した。得られた仮撚糸を引
き揃えて筒編地とし130℃×60分にて染色し、感応検査
にて伸縮性、嵩高性を観た。また、該編地(3)を第2
図に示す如く、幅5cm,長さ5cm,硬度80のネオプレンゴム
の平板に取り付け、支点(4)を持つ試料取り付け用ア
ーム(5)に固定し、桜材の80φの円柱(6)が1800rp
mで回転する表面に、荷重(7)を調整することにより
編地面の荷重を8kgとし、3秒間接触させた時の編地の
破断の有り、無しで耐摩擦溶融性能を判断した。その結
果の抜粋を第1表に示した。
第1表に示す如く、芯部を構成するポリマーの溶融温
度175℃より90℃低い仮撚温度85℃(試1)はシルキー
な嵩高糸となり、耐摩擦溶融性能に優れたものとなっ
た。芯部を構成するポリマーの溶融温度175℃より10℃
低い仮撚温度165℃(試3)では伸縮性に富んだ嵩高糸
となり、耐摩擦溶融性能も優れたものとなった。但し、
試料2、3共に仮撚糸の強伸度がやや低下する仮撚温度
領域にあり、スポーツ衣料としては仮撚温度155℃(試
2)の糸質が好ましい結果となることが分かった。芯部
を構成するポリマーの溶融温度175℃と同一仮撚温度
(試4)で加工を行った場合は、繊維に熱脆化が生じ、
仮撚チーズには巻き取れたものの実用には耐えない糸質
となった。また、芯部を構成するポリマーの溶融温度17
5℃より100℃低い仮撚温度75℃(試5)では嵩高性の無
い延伸糸的糸条となった。
実施例2 芯部を構成するポリマーとして溶融温度171℃のポリ
プロピレン、鞘部を構成するポリマーとして溶融温度25
5℃のポリエステル、芯部の断面形状を円形、鞘部の断
面形状を三角形、芯部:鞘部の体積比率=1:1,1:2,1:3,
1:4,1:5,1:6の6水準とし、紡速3000m/分にてB160/30の
部分延伸糸を得た。これらの部分延伸糸を実施例1と同
一の仮撚機にて延伸倍率1.48,撚数3000T/mとして仮撚温
度を変更して試料を作成した。
芯部を構成するポリマーの溶融温度171℃より10℃低
い仮撚温度161℃では撚り抜けが発生し、実用上の問題
がある結果となった。芯部を構成するポリマーの溶融温
度より21℃低い仮撚温度150℃では耐摩擦溶融性能に優
れた伸縮性嵩高糸となった。芯部を構成するポリマーの
溶融温度171℃より90℃低い仮撚温度81℃ではシルキー
な嵩高糸となり、耐摩擦溶融性能も良好なものとなっ
た。この現象は体積比率に関係なく共通した結果であっ
た。
実施例3 芯部を構成するポリマーの溶融温度が217℃のナイロ
ン6、鞘部を構成するポリマーの溶融温度257℃のナイ
ロン66、芯部:鞘部のポリマー体積比率=1:1、芯部は
鞘部とほぼ同一中心に位置した円形断面であるB100/36
の延伸糸を得た。該延伸糸を仮撚温度217℃から97℃ま
で10℃毎に変更しつつ実施例1と同一条件にて仮撚加工
及び評価を実施したところ、芯部を構成するポリマーの
溶融温度より10℃低い207℃から30℃低い187℃まで伸縮
性、高嵩高性に富んだ仮撚糸となり、90℃低い127℃ま
では順次、伸縮性、嵩高性が低下したものの所期の嵩高
糸が得られ、耐摩擦溶融性に優れるものとなった。
比較例1 芯部を構成するポリマーの溶融温度217℃のナイロン
6、鞘部を構成するポリマーの溶融温度が238℃のイソ
フタル酸ブレンド変性ポリエステル、芯部:鞘部のポリ
マー体積比率=1:1、芯部は鞘部とほぼ同一中心に位置
した円形断面であるB100/36の延伸糸を得た。仮撚温度
を207℃から127℃まで10℃毎に変更しつつ、実施例1と
同一条件にて該延伸糸を仮撚加工し、その評価を実施し
たが、いずれも耐摩擦溶融性に優れるものは得られなか
った。
比較例2 単一ポリマーである溶融温度255℃のポリエステルを
紡糸、延撚し、円形断面であるB100/36を得た。仮撚温
度を220℃から140℃の範囲で10℃毎に変更しつつ、実施
例1と同一条件にて該延伸糸を仮撚加工し、その評価を
実施したが、いずれも耐摩擦溶融性に優れるものは得ら
れなかった。
(発明の効果) 以上、詳細に説明した如く本発明によれば、運動時に
床と熱可塑性繊維より成る衣料との摩擦により生じる穴
あきを防止することが可能で、かつ風合と染色性に優れ
た仮撚加工糸が低コストで簡単に得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は本発明の複合紡糸繊維の単繊維断面
図、第3図は耐摩擦溶融性能測定装置の説明図である。 図の主要部分の説明 1…芯部、2…鞘部、3…試料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上西 功夫 愛知県名古屋市東区砂田橋4丁目1番16 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (56)参考文献 特開 昭62−184118(JP,A) 特開 昭59−59919(JP,A) 特開 昭56−140127(JP,A) 特公 昭45−3290(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 1/02 Fタームテーマコード 4L036

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】芯部を構成するポリマーの溶融温度が鞘部
    を構成するポリマーの溶融温度より40℃以上低いポリマ
    ーによって構成された芯/鞘複合紡糸繊維を、芯部を構
    成するポリマーの溶融温度より10℃〜90℃低い温度で仮
    撚加工することを特徴とした耐摩擦溶融糸の仮撚加工
    法。
JP2175731A 1990-07-03 1990-07-03 耐摩擦溶融糸の仮撚加工法 Expired - Lifetime JP3043374B2 (ja)

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