JP3020469B2 - トコフェロールの抗酸化性改良法 - Google Patents

トコフェロールの抗酸化性改良法

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JP3020469B2
JP3020469B2 JP9321320A JP32132097A JP3020469B2 JP 3020469 B2 JP3020469 B2 JP 3020469B2 JP 9321320 A JP9321320 A JP 9321320A JP 32132097 A JP32132097 A JP 32132097A JP 3020469 B2 JP3020469 B2 JP 3020469B2
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真理子 井上
義一 辻脇
皓一郎 法西
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Nissin Food Products Co Ltd
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Ueda Oils and Fats Manufacturing Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、食用油脂などの
食品に抗酸化剤として添加されるトコフェロールの抗酸
化性改良法、この方法により処理されたトコフェロール
を含有する食用油脂およびこの食用油脂を含有する食品
に関する。
【0002】
【従来の技術】油脂または油脂を含有する食品は、空気
中の酸素と反応して酸化すると、不快臭を発生して風味
が低減し、また人体に悪影響を及ぼす過酸化脂質などを
発生する。このような脂質の酸化を抑えるために、水素
添加して油脂中の酸化されやすい二重結合を減少させた
り、低温保存して酸化反応を抑えるようにしている。
【0003】また、油脂の酸化安定性を向上させるため
に、種々の抗酸化剤が添加されている。油脂用抗酸化剤
としては、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジ
ブチルヒドロキシトルエン(BHT)などの化学合成品
や、トコフェロール、フラボン誘導体、香辛料などの抽
出物等が知られている。化学合成品は、その安全性につ
いての問題点が指摘され、現在では天然物由来の抗酸化
剤が食品加工用に広く用いられている。
【0004】天然物由来の抗酸化剤としては、一般にト
コフェロール類やレシチンなどが使用されており、その
他に香辛料からの抽出物が知られている。
【0005】上述の天然物由来の抗酸化剤には、様々な
使用上の問題がある。例えば、水溶性の天然抗酸化剤
は、油脂に溶解し難く、特別の方法を用いて油溶性を高
める必要があり、また特有の臭気があるためにマスキン
グを必要とするものもあり、添加した油脂が褐変する場
合もある。
【0006】このような現状において、抗酸化剤として
トコフェロールを使用することが主流となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、トコフェロ
ールは、クエン酸などのシナージストと併用しても合成
品の抗酸化剤より抗酸化力が劣るという問題点がある。
【0008】また、トコフェロールは、元来トコフェロ
ールを油脂中に含まないラードその他の動物脂に対し
て、抗酸化効果を期待できるが、トコフェロールを本来
含有する天然の植物油脂に対しては、酸化防止効果が充
分でなく、特に液体状の油脂に添加しては殆どその効果
がなかった。
【0009】一方、植物性の液体油を使用する食品とし
て、例えば惣菜、ドレッシング類、天ぷらなどのフライ
食品などにおいては、液体油の安定性が低いため、長期
間保存する場合には油脂の酸化に起因する色々の問題が
あり、その改善が求められていた。
【0010】また、前述のように、油脂の酸化安定性を
高めるためには、抗酸化剤を添加する代わりに水素添加
を行って硬化油とする処理法もあるが、この方法では製
造コストが高くなり、また油脂の融点が上昇するので、
安定化された油脂の使用範囲が限定される。
【0011】本願の発明の課題は、上記したような問題
点を解決して、油脂に対する顕著な酸化防止効果を示
し、かつ食品衛生上求められる高い安全性を有する天然
の抗酸化剤を提供することである。また、特に液体油に
対しても顕著な酸化防止効果を示すトコフェロールを提
供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本願の発明では、トコフェロールを油脂に溶解し、
このトコフェロール含有油脂100重量部に対して、融
剤を加えて焼成したケイソウ土1〜100重量部を接触
させることによりトコフェロールの抗酸化性を改良した
ものである。
【0013】上記トコフェロールの抗酸化性改良法で
は、トコフェロール含有油脂として、トコフェロールを
1重量%以上含有する油脂を採用することができる。
【0014】また、上記トコフェロールの抗酸化性改良
法では、トコフェロールを溶解する油脂として、ナタネ
白絞油、大豆白絞油、コーン白絞油、米白絞油、綿実
油、パーム油などの植物性油脂もしくはその硬化油、ま
たはラード、魚油、牛脂などの動物性油脂もしくはその
硬化油、または植物性油脂と動物性油脂の混合油を使用
することができる。
【0015】上記の抗酸化性改良処理工程に用いるケイ
ソウ土に加える融剤は、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ
金属塩、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、水
酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ金
属、またはアルカリ土類金属の水酸化物などを採用でき
る。そして融剤の添加量を0.5〜8重量%とし、80
0℃〜1200℃の温度で焼成した粉体または顆粒体の
ケイソウ土を抗酸化性改良処理工程に使用できる。
【0016】また、上記のトコフェロールの抗酸化性改
良法において、トコフェロール含有油脂とケイソウ土と
の接触温度が、トコフェロール含有油脂の融点以上20
0℃以下の温度であるトコフェロールの抗酸化性改良法
としたのである。
【0017】このように好ましくはトコフェロールを1
重量%以上飽和濃度まで含有するトコフェロール含有油
脂100重量部に対して、融剤を加えて焼成したケイソ
ウ土を1〜100重量部添加し、このトコフェロール含
有油脂と所定のケイソウ土との混合物が液体状である温
度から200℃以下の温度範囲内で撹拌等により接触さ
せた後、液相を濾別することによって、抗酸化性が改良
されたトコフェロール含有の油脂または抗酸化剤として
のトコフェロールを製造することができる。
【0018】以上の方法により、食品衛生上、高い安全
性を有し、従来になく酸化安定性が著しく向上したトコ
フェロールを得ることができる。また、上記の方法によ
り得られたトコフェロールを食用油脂などの食品に添加
すると、食品自体の酸化安定性も優れたものになり、食
用油脂や食品を長期間保存することが可能になる。
【0019】しかし、上記の方法によって製造される抗
酸化性の改良されたトコフェロールは、経日的に抗酸化
効果が徐々に低下することがある。
【0020】そこで、抗酸化性の改良されたトコフェロ
ールを、食用油脂およびそれを用いた食品に添加する際
に、ビタミンCパルミテート(L−アスコルビン酸パル
ミチン酸エステル)を更に加えることで、改良型トコフ
ェロールの抗酸化効果の低減をくい止めることができ
る。
【0021】このように、抗酸化性の改良されたトコフ
ェロールとビタミンCパルミテートを併用することで、
トコフェロールの抗酸化効果の低減を防止することがで
き、トコフェロールの抗酸化効果がより長時間に亘って
持続する。
【0022】
【発明の実施の形態】本願の発明に用いる原材料のトコ
フェロールは、天然および合成トコフェロールであっ
て、濃縮または希釈されて一般に市販されているもので
あり、α、β、γ、δの各トコフェロールの単独または
混合物、または適宜2種以上を組み合わせて使用しても
よい。
【0023】また、ケイソウ土は、水中に生息する単細
胞の植物性プランクトンの1種であるケイソウが死んで
細胞内容物が消失し化石化したものであり、多孔性のシ
リカ質の殻よりなることを特徴とし、精製加工工程を経
て濾過助剤、充填剤、建材などに用いられている。わが
国で工業的に利用されているケイソウ土の大きな鉱床
は、秋田県の海洋層、大分県、岡山県の淡水層がある。
【0024】市販されているケイソウ土は、ケイソウ土
原石を精製加工したもので、粉砕後に必要に応じて組成
調整および粒度調整した未焼成粉末の他に以下のものが
ある。すなわち、未焼成粉末を900〜1200℃で焼
成処理した焼成粉末、未焼成粉末に炭酸ナトリウムや塩
化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどのア
ルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、もしくは水酸化ナ
トリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属もしく
は、アルカリ土類金属の水酸化物などを0.5〜8重量
%添加して焼成処理した融剤焼成粉末、または必要に応
じてバインダーなどの添加剤を用いて円柱、リング、
球、板など、種々の形状にした成形体、成形体を破砕し
た不定形粒、更に他の物質で構成される物体表面に担持
したこれらケイソウ土の粉末や粒などがある。
【0025】これらのケイソウ土は、ケイソウ殻由来の
100〜1000nm径程度の無数の細孔をその表面に
有すると共に、珪藻殻独特の複雑な形状によって非常に
起伏に富んだ表面を形成している。また60〜90%程
度の高い間隙率を有することが特徴である。
【0026】本願の発明において用いられるケイソウ土
は、上記に説明したように、ケイソウ土の内、未焼成粉
末に融剤、すなわち塩化ナトリウムや炭酸ナトリウム、
炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属
塩や、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、およ
び水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカ
リ金属、アルカリ土類金属の水酸化物などを0.5〜8
重量%添加して焼成処理した融剤焼成粉末もしくは顆粒
体である。
【0027】上記融剤を焼成処理する前に加える理由
は、ケイソウ土の一部を溶解し、殻(Shell)同士
を凝集させて大きな塊とするためである。この処理によ
り間隙率が増大してケイソウ土の表面積が大きくなる。
【0028】ケイソウ土に融剤を加えて焼成する際に、
融剤の添加量は、ケイソウ土原料粉末の種類にも依存す
るが、概ね0.5〜8重量%の範囲である。融剤の使用
量が0.5重量%未満であると凝集体の大きさが不充分
になり、酸化安定性の向上効果も不充分になる。また、
逆に融剤の使用量が8重量%を越えると、ケイソウ土が
溶解しすぎて所期したケイソウ土調製物の製造は不可能
である。
【0029】この発明で用いるトコフェロール含有油脂
における油脂は、食品に用いる食用油脂であればよい。
このような油脂に対して、融剤を添加して焼成した所定
量のケイソウ土とを接触させる方法としては、バッチ式
またはカラム等を用いた連続式のいずれの方法を採用し
てもよい。
【0030】バッチ式の処理方法では、トコフェロール
含有油脂100重量部に対して、融剤を添加して焼成し
たケイソウ土を1〜50重量部添加し混合する。ケイソ
ウ土の添加量が1重量部未満ではトコフェロールの効力
の向上が不充分であり、50重量部を越えると作業性が
かなり低下し、またそれ以上の効果が認められない。よ
り好ましいケイソウ土の配合割合は、トコフェロール含
有油脂100重量部に対して、10〜30重量部であ
る。
【0031】トコフェロール含有油脂とケイソウ土との
接触温度は、トコフェロール含有油脂が液体である温度
(融点)から200℃までの範囲内が好ましく、200
℃を越える高温では油脂劣化も起こるので好ましくな
い。なお、より望ましい接触温度は20〜80℃であ
る。また、トコフェロール含有油脂と融剤焼成ケイソウ
土とは1分間以上接触させることが好ましい。
【0032】前記したトコフェロール含有油脂と融剤焼
成ケイソウ土を接触させる連続式方法の具体例として
は、トコフェロール含有油脂100重量部に対して50
〜100重量部の接触割合になるように、融剤を添加し
て焼成された粉体状または顆粒状のケイソウ土をカラム
に詰め、このカラムに液状のトコフェロール含有油脂を
通液する。この場合のカラム内温度はバッチ式の攪拌時
の温度に準じ、その場合のトコフェロール含有油脂のカ
ラム内滞溜時間は、5分以上必要である。
【0033】また、前述の方法により、製造された抗酸
化性の改良されたトコフェロールは、経日的に抗酸化効
果が徐々に低下することがある。
【0034】そこで、抗酸化性の改良されたトコフェロ
ールとビタミンCパルミテート(L−アスコルビン酸パ
ルミチン酸エステル)を併用することで、トコフェロー
ルの抗酸化効果の低減を防止することができ、トコフェ
ロールの抗酸化効果が長時間に亘って持続する。
【0035】また、前述したようなトコフェロールの抗
酸化性改良法によって処理されたトコフェロールまたは
ビタミンCパルミテートを併用したトコフェロールを含
有する食用油脂は、種々の食品に使用されるが、そのよ
うな食用油脂を含有する食品として、ポテトチップ、イ
ンスタントラーメン、天ぷらなどが挙げられる。
【0036】
【実施例】実施例および比較例に使用したケイソウ土の
種類とその特徴を表1にまとめて示した。ケイソウ土に
添加する融剤は、炭酸ナトリウムを使用する場合が多い
が、その他の融剤を用いてもケイソウ土を焼成すること
ができる。
【0037】なお、融剤を加えて焼成されたケイソウ土
粉末を表1中の粒径に造粒するために、バインダーとし
てナトリウムの無機酸化塩を全融剤量の内16〜20重
量%添加した。
【0038】
【表1】
【0039】〔実施例1〕脱酸、脱色、脱臭処理済の米
白絞油800gを2リットルビーカーに入れ、この油脂
に60%ミックストコフェロール200g(エーザイ社
製)を添加してトコフェロールと油脂の混合物を作製
し、表1のケイソウ土Aを100g加えて撹はん接触処
理を行なった。攪拌条件は、ケイソウ土が沈殿すること
なく均一に混ざる位の速度で回転する液流を形成するよ
うに60℃で30分間攪拌した。この攪拌処理の後、前
記混合物とケイソウ土をブフナー漏斗を用いた吸引濾過
により分離して抗酸化性の改良されたトコフェロール
(以下、改良型トコフェロールと略記する。)を含有す
る油脂を得た。なお、液相からケイソウ土を分離し、改
良型トコフェロールを含有する油脂を分取するには、濾
布を用いた濾過方法の他、遠心分離を採用することもで
きる。ケイソウ土との接触処理(以下、ケイソウ土処理
と略記する。)によって得られた前記の改良型トコフェ
ロール含有油脂を、ナタネ白絞油に対して純分(改良型
トコフェロールの含有量)として600ppm添加し
た。トコフェロールの酸化安定性の評価については、
A.O.M.(ActiveOxygen Metho
d)試験(A.O.C.S.Cd2−57)を採用し
た。結果は表2中に示した。
【0040】
【表2】
【0041】〔実施例2〜9〕実施例1において表1に
示したケイソウ土Bを用いたこと(実施例2)、ケイソ
ウ土Dを用いたこと(実施例3)、ケイソウ土Eを用い
たこと(実施例4)、ケイソウ土Fを用いたこと(実施
例5)、ケイソウ土Gを用いたこと(実施例6)、ケイ
ソウ土Hを用いたこと(実施例7)、ケイソウ土Iを用
いたこと(実施例8)、ケイソウ土Jを用いたこと(実
施例9)以外は実施例1と全く同様のケイソウ土処理を
行い、得られた改良型トコフェロール含有油脂をナタネ
白絞油に純分(改良型トコフェロールの含有量)として
600ppmとなるように添加した。これらのA.O.
M.試験の結果については、表2に示した。
【0042】〔比較例1〜3〕実施例1において、ケイ
ソウ土処理を行わずにトコフェロールを米白絞油に混合
希釈したものをナタネ白絞油に純分として実施例1と同
量を添加した(比較例1)、また、融剤を加えず焼成も
していない乾燥ケイソウ土Kを用いたこと(比較例
2)、融剤を用いず焼成しただけのケイソウ土Lを用い
たこと(比較例3)以外は、実施例1と全く同様の処理
を行った。これらのA.O.M.試験の結果を表2に併
記した。
【0043】表2の結果からも明らかなように、ケイソ
ウ土処理を施さず希釈混合したのみの混合物を植物白絞
油に添加した場合の比較例1、融剤を加えず焼成してい
ない乾燥ケイソウ土Kを用いた比較例2、融剤を用いて
いない焼成ケイソウ土Lを用いた比較例3は、純分とし
て同量のトコフェロールを添加したにも関わらず、実施
例1から9に比べてA.O.M.試験における顕著な延
長効果が認められなかった。
【0044】〔実施例10〜14〕実施例1において表
1に示したケイソウ土Aを用いて処理した混合物を精製
パーム油に添加したこと(実施例10)、精製ラードに
添加したこと(実施例11)、精製大豆油に添加したこ
と(実施例12)、精製ナタネ油と精製コーン油を3:
1に混合した油脂に添加したこと(実施例13)、精製
オリーブ油に添加したこと(実施例14)以外は実施例
1と全く同様の処理を施した。これらのA.O.M.試
験の結果を表3に記した。
【0045】〔比較例4〜8〕ケイソウ土処理を施して
いないトコフェロール含有油脂(実施例1においてケイ
ソウ土との接触処理を行わずにトコフェロールを米白絞
油に混合希釈したもの)を精製パーム油に添加したこと
(比較例4)、精製ラードに添加したこと(比較例
5)、精製大豆油に添加したこと(比較例6)、精製ナ
タネ油と精製コーン油を3:1に混合した油脂に添加し
たこと(比較例7)、精製オリーブ油に添加したこと
(比較例8)以外は実施例1と全く同様の処理を施し
た。A.O.M.試験の結果を表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】表3の結果からも明らかなように、ケイソ
ウ土処理を行ったトコフェロール含有油脂を添加した油
脂は、ケイソウ土処理をしていない混合物を添加した油
脂よりもA.O.M.試験の時間数が大幅に延長してい
た。
【0048】〔実施例15〜18〕ケイソウ土Aをトコ
フェロール含有油脂に対して10%添加し60℃で5分
間撹拌処理したこと(実施例15)、ケイソウ土Aをト
コフェロール含有油脂に対して30%添加し、60℃で
5分間撹拌処理したこと(実施例16)、ケイソウ土A
をトコフェロール含有油脂に対して10%添加し、20
0℃で5分間撹拌処理したこと(実施例17)、ケイソ
ウ土Aをトコフェロール含有油脂に対して10%添加
し、60℃で2時間撹拌処理したこと(実施例18)以
外は、実施例1と同様の処理をした。これらのA.O.
M.試験の結果を表4に示した。
【0049】
【表4】
【0050】〔比較例9〜11〕実施例1において、表
1に示したケイソウ土Aをトコフェロール含有油脂に対
して0.5%添加し、60℃で30分間撹拌処理したこ
と(比較例9)、ケイソウ土Aをトコフェロール含有油
脂に対して10%添加し、60℃で30秒間撹拌処理し
たこと(比較例10)、ケイソウ土Aをトコフェロール
含有油脂に対して10%添加し、180℃で3秒間撹拌
処理したこと(比較例11)以外は実施例1と全く同様
の処理を行ない、A.O.M.試験の結果を表4中に併
記した。
【0051】ケイソウ土処理時の全ての条件を満足する
実施例15〜18は、A.O.M.試験で長時間安定し
ていたが、一方、比較例9〜11に示したように、融剤
処理をしたケイソウ土であっても撹拌時間が1分以下の
短いものや、油脂に対するケイソウ土の比率が少なすぎ
るものは、A.O.M.試験で長時間安定することはな
かった。
【0052】〔実施例19〕実施例1において、ミック
ストコフェロール(エーザイ社製)に代えてイーミック
スD(δ−トコフェロールを86.0%以上含有するも
の)(エーザイ社製)を用いたこと以外は同様にしてト
コフェロール含有油脂を作製し、さらにケイソウ土処理
を行ない、得られた改良型トコフェロール含有油脂をナ
タネ白絞油と精製コーン白絞油を3:1の割合で混合し
た油脂に純分(改良型トコフェロールの含有量)として
600ppmとなるように添加した。この油脂のA.
O.M.試験の結果を表4中に併記した。
【0053】〔比較例12〕実施例19において、ケイ
ソウ土処理をしていないトコフェロール含有油脂を、ナ
タネ白絞油と精製コーン油とを3:1の割合で混合した
油脂に純分(トコフェロールの含有量)として600p
pmとなるように添加し、この油脂に対するA.O.
M.試験を行ない、結果を表4中に併記した。
【0054】〔実施例20〕表1に示したケイソウ土A
30gを105cm3 容量のカラムに詰め、60℃の温
槽に設置した。次に脱酸、脱色、脱臭処理済のナタネ白
絞油と60%ミックストコフェロール(エーザイ社製)
とを8:2(重量比)の割合で混合し、このトコフェロ
ール含有油脂を、前記カラムに1ml/分の流速で1時
間通液した後、ナタネ白絞油に純分(改良型トコフェロ
ールの含有量)として600ppmとなるように添加し
た。この油脂をA.O.M.試験に供し、その結果を表
4中に併記した。
【0055】〔実施例21〜22〕ミックストコフェロ
ールとイーミックスDを1:1の割合で混合したトコフ
ェロールを用いたこと以外は、実施例1と全く同様にし
てケイソウ土処理を行ない、得られた改良型トコフェロ
ール含有油脂を、ナタネ白絞油と精製コーン白絞油を
3:1の割合で混合した油脂に純分(改良型トコフェロ
ールの含有量)として600ppmとなるように添加し
た(実施例21)、または前記改良型トコフェロール含
有油脂をナタネ白絞油に純分(改良型トコフェロールの
含有量)として600ppmとなるように添加した(実
施例22)。これらの油脂のA.O.M.試験の結果を
表4中に併記した。
【0056】〔実施例23〕実施例1と全く同様に処理
して得られた改良型トコフェロールを600ppm、ビ
タミンCパルミテート(ロッシュ社製)を100ppm
となるようにナタネ白絞油に添加したこと以外は、実施
例1と全く同様にして改良型トコフェロールおよびビタ
ミンCパルミテートを含有する油脂を製造した。この油
脂のA.O.M.試験の結果を表4中に併記した。
【0057】〔比較例13〕ケイソウ土処理をしていな
いトコフェロール(エーザイ社製:60%ミックストコ
フェロール)を純分として600ppm、およびビタミ
ンCパルミテートを純分として100ppmをナタネ白
絞油に添加して、トコフェロールおよびビタミンCパル
ミテートを含有する油脂を製造した。得られた油脂に対
して実施例1と全く同様にしてA.O.M.試験を行な
い、その結果を表4中に併記した。
【0058】A.O.M.試験(98℃、通気)でケイ
ソウ土処理を施さなかったトコフェロールは、A.O.
M.試験開始後16時間でトコフェロールが全て消失し
たが、ケイソウ土処理を施したトコフェロール(実施
例)は、A.O.M.試験開始後48時間経過しても約
6〜10%残存していた。
【0059】この様にA.O.M.試験条件下でもトコ
フェロールが長時間残存しているので、過酸化物質の蓄
積も長時間に亘って低く抑えられており、A.O.M.
時間が延長されたと考えられた。以上のように、所定の
ケイソウ土処理をトコフェロールに施すことによって、
酸化劣化に対して非常に安定なトコフェロールを作製す
ることができる。
【0060】なお、ケイソウ土によって、酸化促進物が
吸着除去されているのか、それともトコフェロールなど
の抗酸化剤を安定化させる何らかの物質が生成している
のか、詳しい機構についてはまだ不明である。遊離脂肪
酸の減少は認めていない。
【0061】〔実施例24、25〕実施例1と全く同様
に処理して得られた改良型トコフェロール600ppm
をナタネ白絞油に対して添加するが、ビタミンCパルミ
テート(ロッシュ社製)を添加しないサンプルを作製し
た(実施例24)。一方、改良型トコフェロール600
ppmとビタミンCパルミテート(ロッシュ社製)の純
分100ppmをナタネ白絞油に添加したサンプル(実
施例25)を作製し、60℃で経時的に保存テストを行
ない、この結果を比較した。また、保存テスト中の過酸
化物価(P.O.V)の変動、および保存テスト3日
目、7日目、14日目と28日目の時点の油脂のA.
O.Mを測定し、この結果を表5中に示した。
【0062】〔比較例14〕ナタネ白絞油に対し、ビタ
ミンCパルミテートのみを純分として100ppm添加
し、トコフェロールを全く添加しないサンプルを比較例
14とした。この比較例14および前記した比較例13
のトコフェロール(市販品)およびビタミンCパルミテ
ートを含有する油脂に対し、実施例24、25と全く同
じ条件で60℃での保存テストを行ない、その結果を表
5中に併記した。
【0063】
【表5】
【0064】以上の結果から、改良型トコフェロールお
よびビタミンCパルミテートを併用することによって、
改良型トコフェロールの抗酸化効果は経日的に安定し、
その低下が防止されていることがわかる。
【0065】次に、改良型トコフェロールを含有する食
用油脂を使用した食品の代表例として、即席油揚げ麺に
ついて説明する。
【0066】〔実施例26〕まず、精製パーム油64k
gに、実施例1で得た改良型トコフェロールを含有する
油脂215gを加え、純分(この発明の改良型トコフェ
ロールの含有量)として、約400ppm含有するパー
ム油を得た。
【0067】一方、以下の方法で即席油揚げ麺用の麺線
を得た。小麦粉1kg、食塩20g、かんすい3gを原
料とし、水350mlを加えて混練し、厚さ0.85m
mの麺帯に圧延して、角刃16番の切り刃で切り出して
麺線とした。この麺線を蒸し器で2分間蒸した後、約1
0%濃度の食塩水に浸漬し、次いで1食分(約110
g)毎に切断した。この1食分の麺線を直径約10cm
の円筒形フライリテーナに充填し、フライリテーナを閉
蓋した。
【0068】そして、フライヤーに、前記した改良型ト
コフェロールを含有するパーム油64kgを収容して約
150℃に加温し、この油中に上記の麺線を充填したフ
ライリテーナを2分間沈めてフライ処理し、1食分約6
5gの即席油揚げ麺を得た。
【0069】得られた即席油揚げ麺は、通常のトコフェ
ロールを添加したパーム油を用いて製造したものより抗
酸化能に優れ、品質の良い即席油揚げ麺であった。
【0070】また、この発明の改良型トコフェロールを
含有したフライ油を用いると、一定量のフライ油量でフ
ライ処理可能な油揚げ麺の総数(食分)を増やせるとい
う効果や、フライ油に添加するトコフェロール所要量
が、従来のフライ処理法の量より削減できるなどの効果
も認められた。
【0071】
【発明の効果】本願の発明は、以上説明したようにトコ
フェロールを混合した油脂に対して、前記した融剤で焼
成した粉粒体ケイソウ土を所定時間、所定温度で接触さ
せてトコフェロールを精製し活性化したので、トコフェ
ロールが、油脂に対する顕著な酸化防止効果を示し、か
つ食品衛生上求められる高い安全性を有する天然の抗酸
化剤となる利点がある。また、特に液体油に対しても顕
著な酸化防止効果を示すトコフェロールを提供できる利
点もある。
【0072】また、上記改良されたトコフェロールまた
は改良型トコフェロールとビタミンCパルミテートを併
用し、これを動植物油脂に添加することにより、長時
間、酸化安定性の優れた食用油脂が提供され、またはこ
のような利点を有する食用油脂を含有した食品を提供で
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C07D 311/72 101 C07D 311/72 101 C09K 15/08 C09K 15/08 (72)発明者 辻脇 義一 神戸市東灘区魚崎浜町17番地 植田製油 株式会社内 (72)発明者 法西 皓一郎 茨木市寺田町10番10号 (56)参考文献 特開 平9−137182(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C11B 5/00 C11B 3/10 C09K 15/08

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トコフェロールを油脂に溶解し、このト
    コフェロール含有油脂100重量部に対して、融剤を加
    えて焼成したケイソウ土1〜100重量部を接触させる
    ことからなるトコフェロールの抗酸化性改良法。
  2. 【請求項2】 トコフェロール含有油脂が、トコフェロ
    ールを1重量%以上含有する油脂である請求項1記載の
    トコフェロールの抗酸化性改良法。
  3. 【請求項3】 トコフェロールを溶解する油脂が、ナタ
    ネ白絞油、大豆白絞油、コーン白絞油、米白絞油、綿実
    油、パーム油などの植物性油脂もしくはその硬化油、ま
    たはラード、魚油、牛脂などの動物性油脂もしくはその
    硬化油、または植物性油脂と動物性油脂の混合油である
    請求項1に記載のトコフェロールの抗酸化性改良法。
  4. 【請求項4】 融剤を加えて焼成したケイソウ土が、融
    剤を0.5〜8重量%添加して焼成した粉体または顆粒
    体からなるケイソウ土である請求項1に記載のトコフェ
    ロールの抗酸化性改良法。
  5. 【請求項5】 融剤が、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウ
    ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ
    金属塩、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、水
    酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ金
    属、またはアルカリ土類金属の水酸化物である請求項1
    または4に記載のトコフェロールの抗酸化性改良法。
  6. 【請求項6】 請求項1記載のトコフェロールの抗酸化
    性改良法において、トコフェロール含有油脂とケイソウ
    土との接触温度が、トコフェロール含有油脂の融点以上
    200℃以下の温度であることを特徴とするトコフェロ
    ールの抗酸化性改良法。
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