JP2004180578A - 食品用抗酸化剤及び酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品 - Google Patents
食品用抗酸化剤及び酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を用いずに、食品に長期間優れた酸化安定性を付与することのできる食品用抗酸化剤を提供することを目的とすると共に、消費者が敬遠することなく安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供することを目的とする。
【解決手段】▲1▼キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤、▲2▼水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品、▲3▼水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法、を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】▲1▼キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤、▲2▼水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品、▲3▼水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法、を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品用抗酸化剤及び酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品に関し、詳しくは、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤ではなく、マヨネーズ、ドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品等に長期間優れた酸化安定性を付与することのできる食品用抗酸化剤と、該抗酸化剤を含有する酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品と、その製造方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品中に含まれる油脂は、保存期間中に徐々に酸素を吸収し、それがある段階に達すると急速に酸化が進む結果、食品の変質、変色をもたらす。
【0003】
ところで、水相と油相とが水中油型に乳化されてなる水中油型エマルジョン食品の代表的なものとして、マヨネーズやドレッシング類等がよく知られている。これらは、水相原料と油相原料とが水中油型に乳化され、美味しく、且つ栄養価の高い食品である。
ここで、油相原料としては、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油等の食用植物油が一般的に使用されており、乳化剤としては、通常、呈味、色調及び乳化安定性の観点から、卵黄が主に用いられている。
【0004】
ところが、卵黄を使用して乳化した、これらマヨネーズやドレッシング類等は、酸化安定性が十分でなく、長期間酸化条件におかれると、変色を生じたり、さらには乳化が破壊され、油相が分離するなどの欠点がある。
【0005】
ここで酸化を防止するためには、抗酸化作用を有する化学物質からなる化学抗酸化剤を油脂食品に添加するのが一般的である。
例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有していることを特徴とする酸性調味料に係る発明が開示されており(例えば特許文献1参照)、この発明によれば、製造直後の風味がほぼ維持された風味安定性に優れた酸性調味料が得られるとされている。
【0006】
しかしながら、近年、化学物質の生体機能への悪影響が問題となっており、消費者は、一般的にこのような人工添加物を避ける傾向にある。
このため、本願出願人は、十字花科植物の葉の水抽出物が添加されていることを特徴とする水中油型エマルジョン食品に係る発明を提案している(例えば特許文献2参照)が、十字花科植物の葉の水抽出物は、ある程度の抗酸化作用は持つものの、まだ必ずしも十分といえるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特許第3072100号公報(特願平11−233596号)
【特許文献2】
特開2001−78738号公報(特願平11−261512号)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決し、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を用いずに、食品に長期間優れた酸化安定性を付与することのできる食品用抗酸化剤を提供することにあると共に、消費者が敬遠することなく安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、キャベツ類水抽出液にプロテアーゼを添加し処理して得られたプロテアーゼ処理物が、未処理のキャベツ類水抽出液に比べて顕著な食品用抗酸化剤としての作用を有すること、及び、このプロテアーゼ処理物を含有する水中油型エマルジョン食品が、より優れた酸化安定性を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
キャベツ類水抽出液は、それ自体又は濃縮され野菜エキスとして通常用いられているが、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物が食品用の抗酸化剤として、特に水中油型エマルジョン食品用の抗酸化剤としての作用を有することは、これまで全く知られていなかった。
【0011】
すなわち、請求項1に係る本発明は、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を提供するものである。
また、請求項2に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供するものである。
さらに、請求項3に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤に関するものである。
【0013】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、キャベツ類を水で抽出した液を、さらにプロテアーゼで処理した、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなるものである。
請求項1に係る本発明中で用いられるキャベツ類は、アブラナ科アブラナ属の二年生草本( Brassica oleracea var.capitata )に分類される。このキャベツ類には、結球性のある普通のキャベツ(カンラン; white cabbage )の他、同様に結球性のある赤キャベツ(ムラサキカンラン; red cabbage )やちりめんキャベツ(サボイキャベツ; savoy cabbage )、さらにはコールラビ(球形カンラン)、ブロッコリー(コダチハナヤサイ)、カリフラワー(ハナヤサイ)、芽キャベツ(子持ちカンラン)、ケール(ハゴロモカンラン)、葉ボタンなどが含まれる。
請求項1に係る本発明においては、これらキャベツ類の中でも、特に結球性のある、普通のキャベツ、赤キャベツ及びちりめんキャベツを用いることが好ましい。
【0014】
請求項1に係る本発明において用いられるキャベツ類水抽出液の調製は、次のようにして行われる。
すなわち、キャベツ類全体のうちの通常食用にされる葉の部分(いわゆる食用部)に水を加えて磨砕し、次いで濾布等により濾過することによって得ることができる。葉の部分には、茎や根が多少混ざっていても差し支えない。水は、キャベツ1質量部に対し0.5〜3.0質量部程度添加すればよい。磨砕する際に用いられる機器としては、小規模なものとしては家庭用ミキサー等が適しており、中規模なものとしては、サイレントカッター等が適している。
【0015】
このようにして得られたキャベツ類水抽出液の固形分は、例えばキャベツ類の葉に等量の水を加えて得られたキャベツ類水抽出液の場合、固形分は約3質量%程度であるが、これに限定されるものではない。
【0016】
請求項1に係る本発明においては、このようなキャベツ類水抽出液を、プロテアーゼ(蛋白質分解酵素)で処理した、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を用いる。請求項1に係る本発明においては、たとえキャベツ類水抽出液を用いたとしても、プロテアーゼ処理を行わない場合には、その目的を達成することができない。
このようなキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の調製は、以下のようにして行われる。
【0017】
すなわち、上述のようにして得られたキャベツ類水抽出液に、プロテアーゼを添加して処理がなされる。ここで用いられるプロテアーゼとしては特に制限はなく、微生物、植物及び生体起源のものを任意に使用することができる。一般にはエンド型のプロテアーゼが用いられる。
【0018】
プロテアーゼとして具体的には例えば、商品名:プロテアーゼA,N,P,S,M,B、プロレザーFG−F(天野製薬(株))、フレーバーザイム、アルカラーゼ(ノボエンザイムズジャパン(株))、パンチダーゼNP−2、パンチダーゼHP、アロアーゼAP−10(ヤクルト薬品工業(株))、デナプシン10P、デナチームAP、ビオプラーゼSP−15FG、食用精製パパイン(ナガセ生化学工業(株))やプロチンP、プロチンA、サモアーゼ(大和化成(株))等が挙げられ、これらの1種を単独で、若しくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を調製する際におけるプロテアーゼの添加量は特に限定されないが、キャベツ類水抽出液に対して0.01〜0.3質量%の範囲とすることが好ましく、特に0.05〜0.2質量%の範囲とすることがより好ましい。プロテアーゼの添加量が0.01質量%未満では、キャベツ類水抽出液が充分に処理されないため、抗酸化性を充分に付与することができない。一方、プロテアーゼの添加量が0.3質量%を超えても、添加量に見合うだけの効果の向上が見られないため、経済的にも好ましくない。
【0020】
キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を調製する際におけるプロテアーゼ処理の条件は、次に示すとおりである。
まず、pHについては、キャベツ類水抽出液固有のpH(約6前後)で処理することが簡便であり、この条件で抗酸化性を充分に付与することができる。
また、温度条件としては、50〜65℃の範囲が好ましい。50℃未満では微生物が繁殖し易く、一方、65℃を超える温度としても、プロテアーゼ処理の効率が増加しないため、好ましくない。
【0021】
処理時間については、1〜24時間が適当であるが、プロテアーゼの種類、添加量や温度条件等によって短時間から長時間まで任意に調整することができる。しかし、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の品質を考慮すると、10時間以内の短時間処理が好ましい。
上記のようにして得られるキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物は、一般に、約2.6質量%の固形分を示す。
【0022】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、上記の如きものであるが、必要に応じて、その機能を妨げない範囲内で、他の既知の抗酸化剤、例えば天然抗酸化剤等を配合することもできる。
【0023】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、各種食品用、中でも加工食品用、とりわけマヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品用の抗酸化剤として有用である。
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤を食品に対し添加する場合には、従来の食品用抗酸化剤と同様に、一般的には食品製造時に添加すればよいが、食品製造後に用いることもできる。その添加量は、抽出条件や食品の種類等によって異なり、一義的に決定することはできないが、一般的に言うならば、食品に対して固形分として0.01質量%以上であることが好ましく、特に0.03質量%以上がより好ましい。固形分として0.01質量%未満であると、充分な抗酸化効果が得られない。一方、添加量の上限については特に制限はないが、固形分として0.3質量%を超えて添加しても、酸化安定性は向上しない。
【0024】
このようなキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤を食品に対し添加し含有させた場合は、全く添加しなかった場合や、プロテアーゼ処理を行わない単なるキャベツ類水抽出液を添加した場合と比べて、著しく酸化安定性が向上する。
【0025】
なお、請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤が、食品、特に水中油型エマルジョン食品の化安定性を著しく向上させることができる理由については、必ずしも明らかではないが、おそらく、キャベツ類の水抽出物のプロテアーゼ処理物が、酸化のスタート物質であるラジカルを形成する際の触媒となる鉄等の金属の封鎖や、油脂の自動酸化で生じるラジカルや過酸化物の消去等に関与しているためと考えられる。
【0026】
このようなキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を含有させた水中油型エマルジョン食品を提供するのが、請求項2に係る本発明である。
すなわち、請求項2に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品に関するものであり、換言すれば水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、請求項1に記載した食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とするものである。
【0027】
このような酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品は、請求項3に係る本発明の方法により製造することができる。
すなわち、請求項3に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関するするものであり、換言すれば水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、請求項1に記載した食品用抗酸化剤を用いることを特徴とするものである。
【0028】
以上のように、請求項2及び3に係る本発明の特徴は、いずれも抗酸化剤として請求項1記載の食品用抗酸化剤を用いている点にあるが、この請求項1記載の食品用抗酸化剤については、請求項1に係る本発明に関する説明中で記載した通りである。
【0029】
請求項2及び3に係る本発明における水中油型エマルジョン食品とは、水相と油相とが水中油型に乳化されてなる食品をいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。
【0030】
請求項2及び3に係る本発明において、水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩,食酢,グルタミン酸ナトリウム,イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着香料、着色料などがある。乳化剤としては、卵黄が一般的であるが、卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を使用でき、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
一方、油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限がなく、例えば食用植物油脂や、親油性のある着香料等が挙げられる。
食用植物油脂としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。配合割合も通常使用されるものに準じて適宜定めることができる。
【0032】
請求項2及び3に係る本発明における油相と水相の配合割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜80質量%に対して水相70〜20質量%とする。
ここで、油相の配合比率が10質量%未満であると、調製された水中油型エマルジョン食品が美味しくなく、一方、油相の配合比率が90質量%を超えると、転相し易くなるので、いずれも好ましくない。
【0033】
請求項3に係る本発明による水中油型エマルジョン食品の製造は、既知の手法により行えばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を、水等に分散・溶解し、これらに油相原料を加えて、一般的な撹拌機、例えば市販の万能混合撹拌機を用いて予備乳化する。次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行うことによって、水中油型エマルジョン食品を製造することができる。
ここで、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤、つまり請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤の添加は、水以外の水相原料を水等へ分散・溶解する際に行えばよい。
【0034】
このような請求項3に係る本発明の製造方法により得られる水中油型エマルジョン食品は、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されている、酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品であり、従って、請求項2に係る本発明の水中油型エマルジョン食品である。
このような水中油型エマルジョン食品は、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を用いずに長期間酸化安定性に優れたものとなっており、食品産業のニーズに合致するものである。
【0035】
【実施例】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例等により限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜12
(1)キャベツ類水抽出液の調製
市販されている、結球性のある普通のキャベツ(white cabbage )の食用部1kgを包丁により細断した後、等量の水を加えて家庭用ミキサーにより充分に磨砕した。得られたタマネギの磨砕物を2重のガーゼで濾過することにより、キャベツ類水抽出液1.2kgを得た。
【0037】
(2)キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の調製
上記(1)で得られたキャベツ類水抽出液を0.6kgずつ2つに分け、これをそれぞれ3L容攪拌槽に充填し、プロテアーゼP或いはプロテアーゼNの0.1質量%をそれぞれのキャベツ類水抽出液に添加してよく混合した後、50℃で1時間,3時間及び5時間の条件でプロテアーゼ処理を行い、2種類のキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物(プロテアーゼP処理物とプロテアーゼN処理物の2種類)を得た。この際得られたキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の固形分は、2.6質量%であった。
【0038】
(3)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の調製
上記(2)で得られたキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を、下記第1表に示す所定量用いて、第1表に示す配合組成の12種の水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)2kgをコロイドミルにてそれぞれ調製した。
【0039】
(4)酸化安定性の評価
上記(3)にて得られた各水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の酸化安定性を次のような方法で評価した。
すなわち、約200g容のガラス瓶に、上記(3)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を約100g充填し、1重のサランラップで瓶の口を密封し、34℃、暗所の条件下に保管した。6週間後、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の表層の分離状態により、酸化安定性を次の4段階で評価した。評価は、経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。
結果を第1表に示す。
【0040】
[酸化安定性の評価]
・安定:油分離していない。
・やや安定:表層は強く褐変しているが、油分離していない。
・やや不安定:表層がやや油分離している。
・不安定:表層がひどく分離している。
【0041】
比較例1
実施例1〜12において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を全く添加しなかったこと以外は実施例1〜12と同様にして行い、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1〜12と同様にして酸化安定性を評価した。
結果を第1表に示す。
【0042】
比較例2及び3
実施例1〜12において、実施例1〜12の(2)で得られたキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物に代えて、実施例1〜12の(1)で得られたキャベツ類水抽出液(プロテアーゼ未処理のもの)を下記第1表における所定量用いたこと以外は実施例1〜12と同様にして行い、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1〜12と同様にして酸化安定性を評価した。
結果を第1表に示す。
【0043】
【表1】
第1表(その1)
【0044】
【表2】
第1表(その2)
【0045】
【表3】
第1表(その3)
【0046】
第1表から、以下のようなことが分かる。
キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を添加していない比較例1で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)、及びキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の代わりに、プロテアーゼ処理を行わない単なるキャベツ類水抽出液を用いた比較例2及び3で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、いずれも油分離しており酸化安定性が低い。
これに対し、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を添加した実施例1〜12で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、いずれも6週間という長い期間酸化条件下に置かれても、油分離がほとんどなく、酸化安定性が高いことが分かる。このことから、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を添加することによって、水中油型エマルジョン食品の酸化安定性が向上することが明らかである。
【0047】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、長期間優れた酸化安定性を付与できると共に、通常食用に供されているキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなるものであるので、食品に添加した場合にも化学物質からなる化学抗酸化剤のように消費者が生体機能への影響を懸念することなく、安心して食することができるものとなる。
また、請求項2〜3に係る本発明によれば、消費者が敬遠することなく、安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供することができる。
従って、本発明は食品工業分野において有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品用抗酸化剤及び酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品に関し、詳しくは、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤ではなく、マヨネーズ、ドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品等に長期間優れた酸化安定性を付与することのできる食品用抗酸化剤と、該抗酸化剤を含有する酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品と、その製造方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品中に含まれる油脂は、保存期間中に徐々に酸素を吸収し、それがある段階に達すると急速に酸化が進む結果、食品の変質、変色をもたらす。
【0003】
ところで、水相と油相とが水中油型に乳化されてなる水中油型エマルジョン食品の代表的なものとして、マヨネーズやドレッシング類等がよく知られている。これらは、水相原料と油相原料とが水中油型に乳化され、美味しく、且つ栄養価の高い食品である。
ここで、油相原料としては、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油等の食用植物油が一般的に使用されており、乳化剤としては、通常、呈味、色調及び乳化安定性の観点から、卵黄が主に用いられている。
【0004】
ところが、卵黄を使用して乳化した、これらマヨネーズやドレッシング類等は、酸化安定性が十分でなく、長期間酸化条件におかれると、変色を生じたり、さらには乳化が破壊され、油相が分離するなどの欠点がある。
【0005】
ここで酸化を防止するためには、抗酸化作用を有する化学物質からなる化学抗酸化剤を油脂食品に添加するのが一般的である。
例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有していることを特徴とする酸性調味料に係る発明が開示されており(例えば特許文献1参照)、この発明によれば、製造直後の風味がほぼ維持された風味安定性に優れた酸性調味料が得られるとされている。
【0006】
しかしながら、近年、化学物質の生体機能への悪影響が問題となっており、消費者は、一般的にこのような人工添加物を避ける傾向にある。
このため、本願出願人は、十字花科植物の葉の水抽出物が添加されていることを特徴とする水中油型エマルジョン食品に係る発明を提案している(例えば特許文献2参照)が、十字花科植物の葉の水抽出物は、ある程度の抗酸化作用は持つものの、まだ必ずしも十分といえるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特許第3072100号公報(特願平11−233596号)
【特許文献2】
特開2001−78738号公報(特願平11−261512号)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決し、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を用いずに、食品に長期間優れた酸化安定性を付与することのできる食品用抗酸化剤を提供することにあると共に、消費者が敬遠することなく安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、キャベツ類水抽出液にプロテアーゼを添加し処理して得られたプロテアーゼ処理物が、未処理のキャベツ類水抽出液に比べて顕著な食品用抗酸化剤としての作用を有すること、及び、このプロテアーゼ処理物を含有する水中油型エマルジョン食品が、より優れた酸化安定性を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
キャベツ類水抽出液は、それ自体又は濃縮され野菜エキスとして通常用いられているが、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物が食品用の抗酸化剤として、特に水中油型エマルジョン食品用の抗酸化剤としての作用を有することは、これまで全く知られていなかった。
【0011】
すなわち、請求項1に係る本発明は、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を提供するものである。
また、請求項2に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供するものである。
さらに、請求項3に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤に関するものである。
【0013】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、キャベツ類を水で抽出した液を、さらにプロテアーゼで処理した、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなるものである。
請求項1に係る本発明中で用いられるキャベツ類は、アブラナ科アブラナ属の二年生草本( Brassica oleracea var.capitata )に分類される。このキャベツ類には、結球性のある普通のキャベツ(カンラン; white cabbage )の他、同様に結球性のある赤キャベツ(ムラサキカンラン; red cabbage )やちりめんキャベツ(サボイキャベツ; savoy cabbage )、さらにはコールラビ(球形カンラン)、ブロッコリー(コダチハナヤサイ)、カリフラワー(ハナヤサイ)、芽キャベツ(子持ちカンラン)、ケール(ハゴロモカンラン)、葉ボタンなどが含まれる。
請求項1に係る本発明においては、これらキャベツ類の中でも、特に結球性のある、普通のキャベツ、赤キャベツ及びちりめんキャベツを用いることが好ましい。
【0014】
請求項1に係る本発明において用いられるキャベツ類水抽出液の調製は、次のようにして行われる。
すなわち、キャベツ類全体のうちの通常食用にされる葉の部分(いわゆる食用部)に水を加えて磨砕し、次いで濾布等により濾過することによって得ることができる。葉の部分には、茎や根が多少混ざっていても差し支えない。水は、キャベツ1質量部に対し0.5〜3.0質量部程度添加すればよい。磨砕する際に用いられる機器としては、小規模なものとしては家庭用ミキサー等が適しており、中規模なものとしては、サイレントカッター等が適している。
【0015】
このようにして得られたキャベツ類水抽出液の固形分は、例えばキャベツ類の葉に等量の水を加えて得られたキャベツ類水抽出液の場合、固形分は約3質量%程度であるが、これに限定されるものではない。
【0016】
請求項1に係る本発明においては、このようなキャベツ類水抽出液を、プロテアーゼ(蛋白質分解酵素)で処理した、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を用いる。請求項1に係る本発明においては、たとえキャベツ類水抽出液を用いたとしても、プロテアーゼ処理を行わない場合には、その目的を達成することができない。
このようなキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の調製は、以下のようにして行われる。
【0017】
すなわち、上述のようにして得られたキャベツ類水抽出液に、プロテアーゼを添加して処理がなされる。ここで用いられるプロテアーゼとしては特に制限はなく、微生物、植物及び生体起源のものを任意に使用することができる。一般にはエンド型のプロテアーゼが用いられる。
【0018】
プロテアーゼとして具体的には例えば、商品名:プロテアーゼA,N,P,S,M,B、プロレザーFG−F(天野製薬(株))、フレーバーザイム、アルカラーゼ(ノボエンザイムズジャパン(株))、パンチダーゼNP−2、パンチダーゼHP、アロアーゼAP−10(ヤクルト薬品工業(株))、デナプシン10P、デナチームAP、ビオプラーゼSP−15FG、食用精製パパイン(ナガセ生化学工業(株))やプロチンP、プロチンA、サモアーゼ(大和化成(株))等が挙げられ、これらの1種を単独で、若しくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を調製する際におけるプロテアーゼの添加量は特に限定されないが、キャベツ類水抽出液に対して0.01〜0.3質量%の範囲とすることが好ましく、特に0.05〜0.2質量%の範囲とすることがより好ましい。プロテアーゼの添加量が0.01質量%未満では、キャベツ類水抽出液が充分に処理されないため、抗酸化性を充分に付与することができない。一方、プロテアーゼの添加量が0.3質量%を超えても、添加量に見合うだけの効果の向上が見られないため、経済的にも好ましくない。
【0020】
キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を調製する際におけるプロテアーゼ処理の条件は、次に示すとおりである。
まず、pHについては、キャベツ類水抽出液固有のpH(約6前後)で処理することが簡便であり、この条件で抗酸化性を充分に付与することができる。
また、温度条件としては、50〜65℃の範囲が好ましい。50℃未満では微生物が繁殖し易く、一方、65℃を超える温度としても、プロテアーゼ処理の効率が増加しないため、好ましくない。
【0021】
処理時間については、1〜24時間が適当であるが、プロテアーゼの種類、添加量や温度条件等によって短時間から長時間まで任意に調整することができる。しかし、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の品質を考慮すると、10時間以内の短時間処理が好ましい。
上記のようにして得られるキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物は、一般に、約2.6質量%の固形分を示す。
【0022】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、上記の如きものであるが、必要に応じて、その機能を妨げない範囲内で、他の既知の抗酸化剤、例えば天然抗酸化剤等を配合することもできる。
【0023】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、各種食品用、中でも加工食品用、とりわけマヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品用の抗酸化剤として有用である。
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤を食品に対し添加する場合には、従来の食品用抗酸化剤と同様に、一般的には食品製造時に添加すればよいが、食品製造後に用いることもできる。その添加量は、抽出条件や食品の種類等によって異なり、一義的に決定することはできないが、一般的に言うならば、食品に対して固形分として0.01質量%以上であることが好ましく、特に0.03質量%以上がより好ましい。固形分として0.01質量%未満であると、充分な抗酸化効果が得られない。一方、添加量の上限については特に制限はないが、固形分として0.3質量%を超えて添加しても、酸化安定性は向上しない。
【0024】
このようなキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤を食品に対し添加し含有させた場合は、全く添加しなかった場合や、プロテアーゼ処理を行わない単なるキャベツ類水抽出液を添加した場合と比べて、著しく酸化安定性が向上する。
【0025】
なお、請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤が、食品、特に水中油型エマルジョン食品の化安定性を著しく向上させることができる理由については、必ずしも明らかではないが、おそらく、キャベツ類の水抽出物のプロテアーゼ処理物が、酸化のスタート物質であるラジカルを形成する際の触媒となる鉄等の金属の封鎖や、油脂の自動酸化で生じるラジカルや過酸化物の消去等に関与しているためと考えられる。
【0026】
このようなキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を含有させた水中油型エマルジョン食品を提供するのが、請求項2に係る本発明である。
すなわち、請求項2に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品に関するものであり、換言すれば水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、請求項1に記載した食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とするものである。
【0027】
このような酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品は、請求項3に係る本発明の方法により製造することができる。
すなわち、請求項3に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関するするものであり、換言すれば水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、請求項1に記載した食品用抗酸化剤を用いることを特徴とするものである。
【0028】
以上のように、請求項2及び3に係る本発明の特徴は、いずれも抗酸化剤として請求項1記載の食品用抗酸化剤を用いている点にあるが、この請求項1記載の食品用抗酸化剤については、請求項1に係る本発明に関する説明中で記載した通りである。
【0029】
請求項2及び3に係る本発明における水中油型エマルジョン食品とは、水相と油相とが水中油型に乳化されてなる食品をいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。
【0030】
請求項2及び3に係る本発明において、水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩,食酢,グルタミン酸ナトリウム,イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着香料、着色料などがある。乳化剤としては、卵黄が一般的であるが、卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を使用でき、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
一方、油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限がなく、例えば食用植物油脂や、親油性のある着香料等が挙げられる。
食用植物油脂としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。配合割合も通常使用されるものに準じて適宜定めることができる。
【0032】
請求項2及び3に係る本発明における油相と水相の配合割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜80質量%に対して水相70〜20質量%とする。
ここで、油相の配合比率が10質量%未満であると、調製された水中油型エマルジョン食品が美味しくなく、一方、油相の配合比率が90質量%を超えると、転相し易くなるので、いずれも好ましくない。
【0033】
請求項3に係る本発明による水中油型エマルジョン食品の製造は、既知の手法により行えばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を、水等に分散・溶解し、これらに油相原料を加えて、一般的な撹拌機、例えば市販の万能混合撹拌機を用いて予備乳化する。次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行うことによって、水中油型エマルジョン食品を製造することができる。
ここで、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤、つまり請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤の添加は、水以外の水相原料を水等へ分散・溶解する際に行えばよい。
【0034】
このような請求項3に係る本発明の製造方法により得られる水中油型エマルジョン食品は、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されている、酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品であり、従って、請求項2に係る本発明の水中油型エマルジョン食品である。
このような水中油型エマルジョン食品は、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を用いずに長期間酸化安定性に優れたものとなっており、食品産業のニーズに合致するものである。
【0035】
【実施例】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例等により限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜12
(1)キャベツ類水抽出液の調製
市販されている、結球性のある普通のキャベツ(white cabbage )の食用部1kgを包丁により細断した後、等量の水を加えて家庭用ミキサーにより充分に磨砕した。得られたタマネギの磨砕物を2重のガーゼで濾過することにより、キャベツ類水抽出液1.2kgを得た。
【0037】
(2)キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の調製
上記(1)で得られたキャベツ類水抽出液を0.6kgずつ2つに分け、これをそれぞれ3L容攪拌槽に充填し、プロテアーゼP或いはプロテアーゼNの0.1質量%をそれぞれのキャベツ類水抽出液に添加してよく混合した後、50℃で1時間,3時間及び5時間の条件でプロテアーゼ処理を行い、2種類のキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物(プロテアーゼP処理物とプロテアーゼN処理物の2種類)を得た。この際得られたキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の固形分は、2.6質量%であった。
【0038】
(3)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の調製
上記(2)で得られたキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を、下記第1表に示す所定量用いて、第1表に示す配合組成の12種の水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)2kgをコロイドミルにてそれぞれ調製した。
【0039】
(4)酸化安定性の評価
上記(3)にて得られた各水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の酸化安定性を次のような方法で評価した。
すなわち、約200g容のガラス瓶に、上記(3)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を約100g充填し、1重のサランラップで瓶の口を密封し、34℃、暗所の条件下に保管した。6週間後、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の表層の分離状態により、酸化安定性を次の4段階で評価した。評価は、経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。
結果を第1表に示す。
【0040】
[酸化安定性の評価]
・安定:油分離していない。
・やや安定:表層は強く褐変しているが、油分離していない。
・やや不安定:表層がやや油分離している。
・不安定:表層がひどく分離している。
【0041】
比較例1
実施例1〜12において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を全く添加しなかったこと以外は実施例1〜12と同様にして行い、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1〜12と同様にして酸化安定性を評価した。
結果を第1表に示す。
【0042】
比較例2及び3
実施例1〜12において、実施例1〜12の(2)で得られたキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物に代えて、実施例1〜12の(1)で得られたキャベツ類水抽出液(プロテアーゼ未処理のもの)を下記第1表における所定量用いたこと以外は実施例1〜12と同様にして行い、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1〜12と同様にして酸化安定性を評価した。
結果を第1表に示す。
【0043】
【表1】
第1表(その1)
【0044】
【表2】
第1表(その2)
【0045】
【表3】
第1表(その3)
【0046】
第1表から、以下のようなことが分かる。
キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を添加していない比較例1で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)、及びキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物の代わりに、プロテアーゼ処理を行わない単なるキャベツ類水抽出液を用いた比較例2及び3で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、いずれも油分離しており酸化安定性が低い。
これに対し、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を添加した実施例1〜12で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、いずれも6週間という長い期間酸化条件下に置かれても、油分離がほとんどなく、酸化安定性が高いことが分かる。このことから、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物を添加することによって、水中油型エマルジョン食品の酸化安定性が向上することが明らかである。
【0047】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明の食品用抗酸化剤は、長期間優れた酸化安定性を付与できると共に、通常食用に供されているキャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなるものであるので、食品に添加した場合にも化学物質からなる化学抗酸化剤のように消費者が生体機能への影響を懸念することなく、安心して食することができるものとなる。
また、請求項2〜3に係る本発明によれば、消費者が敬遠することなく、安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供することができる。
従って、本発明は食品工業分野において有用である。
Claims (3)
- キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤。
- 水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品において、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤が含有されていることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品。
- 水相と油相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、キャベツ類水抽出液のプロテアーゼ処理物からなる食品用抗酸化剤を用いることを特徴とする酸化安定性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法。
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