JP2004337113A - 酸性水中油型乳化食品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】乳化剤として特別の処理をして得られる、リゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させる必要がなく、マヨネーズ等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法を提供すること。
【解決手段】水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品を提供すると共に、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、卵黄により乳化される前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品を提供すると共に、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、卵黄により乳化される前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸性水中油型乳化食品及びその製造方法に関し、詳しくは、従来技術のように、乳化剤として特別の処理をして得られる、リゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させるのではなく、卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品の調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単にホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
マヨネーズやドレッシング類等の酸性水中油型乳化食品に耐熱性を付与させる技術としては、ホスホリパーゼAにより処理された卵黄、即ちリゾ化卵黄を乳化剤として使用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。本技術でのリゾ化卵黄とは、ホスホリパーゼA処理により、卵黄中のリン脂質がリゾ化された卵黄をいう。リゾ化卵黄を乳化剤として使用したマヨネーズ類は、優れた耐熱性を示すことがよく知られている。
【0003】
しかしながら、リゾ化卵黄を使用する場合は、当然のことながら卵黄をホスホリパーゼA処理する必要があり、手間がかかるのみならず、処理の段階で微生物汚染が生じたり、或いは風味変化が生じたりするなどの問題があった。
【0004】
また、このようなリゾ化卵黄を使用する代わりに、リゾリン脂質を乳化剤として使用することにより、酸性水中油型乳化食品に優れた耐熱性を付与する技術が提案されている(特許文献2参照)。本技術でのリゾリン脂質とは、ホスホリパーゼA処理によりリゾ化されたリン脂質をいう。リゾリン脂質単品では勿論のこと、卵黄との併用によっても、酸性水中油型乳化食品に優れた耐熱性を付与することができる。
しかしながら、リゾリン脂質を使用する場合では、溶解するのに時間がかかること、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑であること、更には独特の風味があるため、一定量以上の添加は風味を損なう、といった問題点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭51−84785号公報
【特許文献2】
特開2000−93108号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、従来技術のように乳化剤として特別の処理をして得られる、リゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させる必要がなく、マヨネーズやドレッシング類等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
即ち、本発明は、優れた耐熱性を有しながらも、従来技術のようにリゾ化卵黄を乳化剤として含有させて耐熱性を付与させるときに生じる余計な手間が不要であり、またホスホリパーゼA処理の段階で微生物汚染が生じたりするなどの問題がなく、或いはリゾリン脂質を使用する場合に見られる、溶解するのに時間がかかったり、吸湿しやすいためにハンドリングが煩雑であったり、更には風味を損なうといった問題がなく、卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法とを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、卵黄を乳化剤とするマヨネーズやドレッシング類等を調製する際に、つまり卵黄によって乳化される前のマヨネーズやドレッシング類等に、酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合することにより、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明による耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品及びその製造方法は、これまで全く知られていない。
【0009】
即ち、請求項1に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
次に、請求項2に係る本発明は、ホスホリパーゼA1が、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有する酸性ホスホリパーゼA1である、請求項1記載の酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
また、請求項3に係る本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項2記載の酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
さらに、請求項4に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、卵黄により乳化される前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供するものである。
次に、請求項5に係る本発明は、ホスホリパーゼA1が、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有する酸性ホスホリパーゼA1である、請求項4記載の製造方法を提供するものである。
また、請求項6に係る本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項5記載の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品に関するものである。
【0011】
請求項1に係る本発明の酸性水中油型乳化食品とは、水相と油相とが卵黄により乳化されてなるものをいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。酸性水中油型乳化食品としては、従来公知のものを用いることができる。
請求項1に係る本発明の特徴は、このような油相と水相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されている点にある。
【0012】
請求項1に係る本発明において、用いられるホスホリパーゼA1の作用は、リン脂質の1位の脂肪酸を加水分解し、リゾリン脂質へと変換するものである。
このようなホスホリパーゼA1としては、例えば三共ライフテック(株)のホスホリパーゼA1(製品名:ホスホリパーゼA1、10,000単位/g)の他、ノボザイムズ・ジャパン(株)のホスホリパーゼA1(製品名:レシターゼ ウルトラ)のような組み換え体由来のホスホリパーゼA1も同様に使用することができる。好適には、酸性ホスホリパーゼA1である、三共ライフテック(株)のホスホリパーゼA1(製品名:ホスホリパーゼA1、10,000単位/g)である。
ここで、「単位」とは、ホスホリパーゼA1の活性単位を意味し、大豆リン脂質を基質とし、pH4.0、37℃、Ca2+の存在下の条件で、1分間当たり1マイクロモルの脂肪酸を遊離することを指す。
【0013】
ここで、請求項1に係る本発明において好適に用いられる、三共ライフテック(株)の酸性ホスホリパーゼA1について述べると、この酸性ホスホリパーゼA1は、pH2.5〜6.0に活性領域を有し、かつ作用至適pHが4.0〜5.0であり、作用至適温度が50〜60℃であって、35〜90℃の安定性上限温度を有するものである。この酸性ホスホリパーゼA1についての詳細は、特許第3022131号公報等に記載されている。
【0014】
この酸性ホスホリパーゼA1は、請求項2に記載したように、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物(糸状菌)が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有するものであって、より具体的にはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が生産する酸性ホスホリパーゼA1がある。本発明は、食品に関するものであるなどの点から、このようなアスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物(糸状菌)の中でも、請求項3に記載したように、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)の生産する酸性ホスホリパーゼA1が特に好ましく用いられる。このことは、以下に述べる請求項4に係る本発明においても同様であり、請求項5と請求項6に記載したとおりである。
【0015】
請求項1に係る本発明に用いられる酸性水中油型乳化食品のpHは、pH3.0〜5.0、特にpH3.5〜4.6が好適である。pH3.0未満では、酸味が強すぎる等といった風味上の問題点が出てくるため、一方、pH5.0を超えると、酸性ホスホリパーゼA1の効果が発揮されないため、いずれも好ましくない。
酸性ホスホリパーゼA1の添加量は、調製される酸性水中油型乳化食品1kg当たり、2,000〜50,000単位、好ましくは5,000〜30,000単位が好適である。2,000単位未満の添加量では、充分な耐熱性を酸性水中油型乳化食品に付与することができず、一方、50,000単位を超えても、添加量に見合うだけの効果が得られないため好ましくない。
【0016】
このように、請求項1に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品であるが、そのような酸性水中油型乳化食品は、請求項4に係る本発明の方法により製造することができる。
即ち、請求項4に係る本発明は、酸性水中油型乳化食品の製造方法に関し、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に係る本発明における酸性水中油型乳化食品の水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩、食酢、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着香料、着色料などがある。乳化剤としては、呈味、色調及び乳化安定性の観点から、卵黄が一般的であるが、卵黄に卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
一方、油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限がなく、例えば食用植物油や、親油性のある香辛料等が挙げられる。
食用植物油脂としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0019】
請求項4に係る本発明における酸性水中油型乳化食品の油相と水相の割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜80質量%に対して水相70〜20質量%とする。
ここで、油相の比率が10質量%未満であると、調製された酸性水中油型乳化食品が美味しくなく、一方、油相の比率が90質量%を超えると、転相し易くなるので、いずれも好ましくない。
【0020】
請求項4に係る本発明における酸性水中油型乳化食品の製造は、基本的には既知の手法により行えばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を、水等に分散・溶解し、これらに油相原料を加えて、一般的な撹拌機、例えば市販の万能型撹拌機を用いて予備乳化する。次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行うことによって、酸性水中油型乳化食品を製造することができる。
【0021】
請求項4に係る本発明においては、このようにして卵黄を乳化剤とするマヨネーズやドレッシング類等を調製する際に、つまり卵黄によって乳化される前のマヨネーズやドレッシング類等に、酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合することにより、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を製造することができる。
具体的には、酸性ホスホリパーゼA1の添加は、水以外の水相原料を水等に分散・溶解する際に行えばよい。酸性ホスホリパーゼA1については、前述したとおりのものが用いられる。
前述したように、酸性ホスホリパーゼA1の添加量は、調製される酸性水中油型乳化食品1kg当たり、2,000〜50,000単位、好ましくは5,000〜30,000単位が好適に用いられる。
このようにして、目的とする耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を得ることができる。
【0022】
リゾ化卵黄やリゾリン脂質を乳化剤として酸性水中油型乳化食品を調製せずとも、卵黄を乳化剤とする通常の酸性水中油型乳化食品の調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・混合することにより耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品の得られる理由は明らかではないが、添加された酸性ホスホリパーゼA1が酸性水中油型乳化食品の構造に作用することにより、短時間の内に耐熱性が付与されるものと考えられる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これら実施例等により制限されるものではない。
【0024】
実施例1〜3
(1)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の調製
第1表に示す配合組成の原料を水中油型に乳化し、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製した。
即ち、水相原料である、卵黄、食塩、食酢(10%酸度)及び水、並びに酸性ホスホリパーゼA1(三共ライフテック(株)のホスホリパーゼA1:10,000単位/g)を混合溶解して水相を調製し、この水相に油相原料として菜種油を加え、ホバルトミキサー(ホバルト社製)にて予備乳化した。次いで、コロイドミル(クリアランス:4/1,000インチ、回転数:3,000rpm)により仕上げ乳化を行って、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製した。
【0025】
(2)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価
上記(1)で得られた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)について、耐熱性の評価を以下のようにして行った。
約25g容のプラスチック容器に、上記(1)で得られた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)約20gを充填・シールした後、95℃で60分間加熱した。冷却後、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を次の3段階で評価した。「安定」と「やや安定」であれば、耐熱性に優れていると言うことができる。なお、評価は、経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。
結果を第1表に示す。
【0026】
〔耐熱性の評価〕
・安定:油分離していない。
・やや安定:僅かな油分離がみられる。
・不安定:かなりの油分離がみられる。
【0027】
比較例1
実施例1において、酸性ホスホリパーゼA1を全く添加せず、かつ、水の配合割合を12.97質量%から13.0質量%に変えたこと以外は実施例1と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1と同様にして耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0028】
比較例2〜3
実施例2〜3において、酸性ホスホリパーゼA1の代わりにホスホリパーゼA2(ノボザイムズジャパン(株)のレシターゼ10L:10,000IU/g)をそれぞれ0.1質量%及び0.3質量%添加したこと以外は実施例2〜3と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例2〜3と同様にして耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0029】
【表1】
第1表
【0030】
第1表から、以下のようなことが分かる。
即ち、酸性ホスホリパーゼA1が酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)1kg当たり、それぞれ3,000単位、10,000単位及び30,000単位添加された実施例1〜3の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は優れた耐熱性を持つことが分かる。
これに対し、酸性ホスホリパーゼA1の添加されていない比較例1及び酸性ホスホリパーゼA1に代えてホスホリパーゼA2の添加された比較例2〜3の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ゛)では、耐熱性の低いことが分かる。
酸性ホスホリパーゼA1を酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の調製時に規定量添加・配合するだけで、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)に優れた耐熱性が付与される理由は定かではないが、酸性ホスホリパーゼA1が乳化構造、即ち、油滴構造に存在するリン脂質に作用することによって生じるリゾリン脂質の効果によるものと思われ、酸性ホスホリパーゼA1の作用は、ごく短時間に効率よく行われるものと推測される。
【0031】
試験例1(酸性ホスホリパーゼA1添加量の影響)
実施例1において、酸性ホスホリパーゼA1の添加量を第2表の如く0.01〜0.3質量%まで変化させ、さらに全体の配合割合の合計が100質量%となるように水で調整したこと以外は実施例1と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)調製し、実施例1と同様にして耐熱性を評価した。結果を第2表に示す。
【0032】
【表2】
第2表
【0033】
第2表の結果より、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)1kg当たり、酸性ホスホリパーゼA1が2,000単位以上添加・配合されると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)に優れた耐熱が付与されることが分かる。
一方、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)1kg当たり、酸性ホスホリパーゼA1の添加量が2,000単位未満であると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性は低いことが分かる。
【0034】
試験例2(酸度(pH)の影響)
実施例2において、食酢部分の添加量を第3表の如く0〜15.0質量%まで変化させ、さらに全体の配合割合の合計が100質量%となるように水で調整したこと以外は実施例1と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を第3表に示す。
【0035】
【表3】
第3表(その1)
【0036】
【表4】
第3表(その2)
【0037】
また、第3表の結果より、以下のようなことが分かる。
酸性ホスホリパーゼA1が10,000単位添加・配合された酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)中の食酢(10%酸度)の添加量が、0.3質量%以上であると、つまりpHが5.0以下であると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は優れた耐熱性を持つことが分かる。
一方、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)中の食酢(10%酸度)の添加量が0.3質量%未満であると、つまりpHが5.0を超えると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性は低いことが分かる。
これらの結果から、酸性ホスホリパーゼA1を酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)に添加・配合する場合、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)のpHが5.0以下であると、酸性ホスホリパーゼA1が活性となり、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は優れた耐熱性を持つことが理解される。
一方、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)のpHが5.0を超えると、酸性ホスホリパーゼA1の活性が低下することにより、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は耐熱性の低いことが理解される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐熱性を有する酸性水中油型乳化食品が提供される。
しかも、本発明によれば、従来技術のように乳化剤として特別の処理をして得られるリゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させる必要がなく、マヨネーズやドレッシング類等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、その調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・混合するといった簡単な操作だけで優れた耐熱性を有する酸性水中油型乳化食品が得られる。
【0039】
即ち、本発明によれば、優れた耐熱性を有しながらも、従来技術のように乳化剤としてリゾ化卵黄を含有させて耐熱性を付与させるときに生じる余計な手間が不要であり、またホスホリパーゼA処理の段階で微生物汚染が生じたり、風味変化が生じたりするなどの問題がなく、或いはリゾリン脂質を使用する場合に見られる、溶解するのに時間がかかったり、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑となったりするなどの問題がなく、マヨネーズやドレッシング類等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、その調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・混合するといった簡単な操作だけで優れた耐熱性を有する酸性水中油型乳化食品が提供される。
よって、本発明は食品工業分野において有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸性水中油型乳化食品及びその製造方法に関し、詳しくは、従来技術のように、乳化剤として特別の処理をして得られる、リゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させるのではなく、卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品の調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単にホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
マヨネーズやドレッシング類等の酸性水中油型乳化食品に耐熱性を付与させる技術としては、ホスホリパーゼAにより処理された卵黄、即ちリゾ化卵黄を乳化剤として使用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。本技術でのリゾ化卵黄とは、ホスホリパーゼA処理により、卵黄中のリン脂質がリゾ化された卵黄をいう。リゾ化卵黄を乳化剤として使用したマヨネーズ類は、優れた耐熱性を示すことがよく知られている。
【0003】
しかしながら、リゾ化卵黄を使用する場合は、当然のことながら卵黄をホスホリパーゼA処理する必要があり、手間がかかるのみならず、処理の段階で微生物汚染が生じたり、或いは風味変化が生じたりするなどの問題があった。
【0004】
また、このようなリゾ化卵黄を使用する代わりに、リゾリン脂質を乳化剤として使用することにより、酸性水中油型乳化食品に優れた耐熱性を付与する技術が提案されている(特許文献2参照)。本技術でのリゾリン脂質とは、ホスホリパーゼA処理によりリゾ化されたリン脂質をいう。リゾリン脂質単品では勿論のこと、卵黄との併用によっても、酸性水中油型乳化食品に優れた耐熱性を付与することができる。
しかしながら、リゾリン脂質を使用する場合では、溶解するのに時間がかかること、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑であること、更には独特の風味があるため、一定量以上の添加は風味を損なう、といった問題点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭51−84785号公報
【特許文献2】
特開2000−93108号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、従来技術のように乳化剤として特別の処理をして得られる、リゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させる必要がなく、マヨネーズやドレッシング類等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
即ち、本発明は、優れた耐熱性を有しながらも、従来技術のようにリゾ化卵黄を乳化剤として含有させて耐熱性を付与させるときに生じる余計な手間が不要であり、またホスホリパーゼA処理の段階で微生物汚染が生じたりするなどの問題がなく、或いはリゾリン脂質を使用する場合に見られる、溶解するのに時間がかかったり、吸湿しやすいためにハンドリングが煩雑であったり、更には風味を損なうといった問題がなく、卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合するだけで得られる、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品とその製造方法とを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、卵黄を乳化剤とするマヨネーズやドレッシング類等を調製する際に、つまり卵黄によって乳化される前のマヨネーズやドレッシング類等に、酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合することにより、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明による耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品及びその製造方法は、これまで全く知られていない。
【0009】
即ち、請求項1に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
次に、請求項2に係る本発明は、ホスホリパーゼA1が、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有する酸性ホスホリパーゼA1である、請求項1記載の酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
また、請求項3に係る本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項2記載の酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
さらに、請求項4に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、卵黄により乳化される前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供するものである。
次に、請求項5に係る本発明は、ホスホリパーゼA1が、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有する酸性ホスホリパーゼA1である、請求項4記載の製造方法を提供するものである。
また、請求項6に係る本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項5記載の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品に関するものである。
【0011】
請求項1に係る本発明の酸性水中油型乳化食品とは、水相と油相とが卵黄により乳化されてなるものをいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。酸性水中油型乳化食品としては、従来公知のものを用いることができる。
請求項1に係る本発明の特徴は、このような油相と水相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されている点にある。
【0012】
請求項1に係る本発明において、用いられるホスホリパーゼA1の作用は、リン脂質の1位の脂肪酸を加水分解し、リゾリン脂質へと変換するものである。
このようなホスホリパーゼA1としては、例えば三共ライフテック(株)のホスホリパーゼA1(製品名:ホスホリパーゼA1、10,000単位/g)の他、ノボザイムズ・ジャパン(株)のホスホリパーゼA1(製品名:レシターゼ ウルトラ)のような組み換え体由来のホスホリパーゼA1も同様に使用することができる。好適には、酸性ホスホリパーゼA1である、三共ライフテック(株)のホスホリパーゼA1(製品名:ホスホリパーゼA1、10,000単位/g)である。
ここで、「単位」とは、ホスホリパーゼA1の活性単位を意味し、大豆リン脂質を基質とし、pH4.0、37℃、Ca2+の存在下の条件で、1分間当たり1マイクロモルの脂肪酸を遊離することを指す。
【0013】
ここで、請求項1に係る本発明において好適に用いられる、三共ライフテック(株)の酸性ホスホリパーゼA1について述べると、この酸性ホスホリパーゼA1は、pH2.5〜6.0に活性領域を有し、かつ作用至適pHが4.0〜5.0であり、作用至適温度が50〜60℃であって、35〜90℃の安定性上限温度を有するものである。この酸性ホスホリパーゼA1についての詳細は、特許第3022131号公報等に記載されている。
【0014】
この酸性ホスホリパーゼA1は、請求項2に記載したように、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物(糸状菌)が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有するものであって、より具体的にはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が生産する酸性ホスホリパーゼA1がある。本発明は、食品に関するものであるなどの点から、このようなアスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物(糸状菌)の中でも、請求項3に記載したように、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)の生産する酸性ホスホリパーゼA1が特に好ましく用いられる。このことは、以下に述べる請求項4に係る本発明においても同様であり、請求項5と請求項6に記載したとおりである。
【0015】
請求項1に係る本発明に用いられる酸性水中油型乳化食品のpHは、pH3.0〜5.0、特にpH3.5〜4.6が好適である。pH3.0未満では、酸味が強すぎる等といった風味上の問題点が出てくるため、一方、pH5.0を超えると、酸性ホスホリパーゼA1の効果が発揮されないため、いずれも好ましくない。
酸性ホスホリパーゼA1の添加量は、調製される酸性水中油型乳化食品1kg当たり、2,000〜50,000単位、好ましくは5,000〜30,000単位が好適である。2,000単位未満の添加量では、充分な耐熱性を酸性水中油型乳化食品に付与することができず、一方、50,000単位を超えても、添加量に見合うだけの効果が得られないため好ましくない。
【0016】
このように、請求項1に係る本発明は、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品であるが、そのような酸性水中油型乳化食品は、請求項4に係る本発明の方法により製造することができる。
即ち、請求項4に係る本発明は、酸性水中油型乳化食品の製造方法に関し、水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に係る本発明における酸性水中油型乳化食品の水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩、食酢、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着香料、着色料などがある。乳化剤としては、呈味、色調及び乳化安定性の観点から、卵黄が一般的であるが、卵黄に卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
一方、油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限がなく、例えば食用植物油や、親油性のある香辛料等が挙げられる。
食用植物油脂としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0019】
請求項4に係る本発明における酸性水中油型乳化食品の油相と水相の割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜80質量%に対して水相70〜20質量%とする。
ここで、油相の比率が10質量%未満であると、調製された酸性水中油型乳化食品が美味しくなく、一方、油相の比率が90質量%を超えると、転相し易くなるので、いずれも好ましくない。
【0020】
請求項4に係る本発明における酸性水中油型乳化食品の製造は、基本的には既知の手法により行えばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を、水等に分散・溶解し、これらに油相原料を加えて、一般的な撹拌機、例えば市販の万能型撹拌機を用いて予備乳化する。次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行うことによって、酸性水中油型乳化食品を製造することができる。
【0021】
請求項4に係る本発明においては、このようにして卵黄を乳化剤とするマヨネーズやドレッシング類等を調製する際に、つまり卵黄によって乳化される前のマヨネーズやドレッシング類等に、酸性ホスホリパーゼA1を添加・配合することにより、耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を製造することができる。
具体的には、酸性ホスホリパーゼA1の添加は、水以外の水相原料を水等に分散・溶解する際に行えばよい。酸性ホスホリパーゼA1については、前述したとおりのものが用いられる。
前述したように、酸性ホスホリパーゼA1の添加量は、調製される酸性水中油型乳化食品1kg当たり、2,000〜50,000単位、好ましくは5,000〜30,000単位が好適に用いられる。
このようにして、目的とする耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を得ることができる。
【0022】
リゾ化卵黄やリゾリン脂質を乳化剤として酸性水中油型乳化食品を調製せずとも、卵黄を乳化剤とする通常の酸性水中油型乳化食品の調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・混合することにより耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品の得られる理由は明らかではないが、添加された酸性ホスホリパーゼA1が酸性水中油型乳化食品の構造に作用することにより、短時間の内に耐熱性が付与されるものと考えられる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これら実施例等により制限されるものではない。
【0024】
実施例1〜3
(1)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の調製
第1表に示す配合組成の原料を水中油型に乳化し、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製した。
即ち、水相原料である、卵黄、食塩、食酢(10%酸度)及び水、並びに酸性ホスホリパーゼA1(三共ライフテック(株)のホスホリパーゼA1:10,000単位/g)を混合溶解して水相を調製し、この水相に油相原料として菜種油を加え、ホバルトミキサー(ホバルト社製)にて予備乳化した。次いで、コロイドミル(クリアランス:4/1,000インチ、回転数:3,000rpm)により仕上げ乳化を行って、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製した。
【0025】
(2)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価
上記(1)で得られた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)について、耐熱性の評価を以下のようにして行った。
約25g容のプラスチック容器に、上記(1)で得られた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)約20gを充填・シールした後、95℃で60分間加熱した。冷却後、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を次の3段階で評価した。「安定」と「やや安定」であれば、耐熱性に優れていると言うことができる。なお、評価は、経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。
結果を第1表に示す。
【0026】
〔耐熱性の評価〕
・安定:油分離していない。
・やや安定:僅かな油分離がみられる。
・不安定:かなりの油分離がみられる。
【0027】
比較例1
実施例1において、酸性ホスホリパーゼA1を全く添加せず、かつ、水の配合割合を12.97質量%から13.0質量%に変えたこと以外は実施例1と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1と同様にして耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0028】
比較例2〜3
実施例2〜3において、酸性ホスホリパーゼA1の代わりにホスホリパーゼA2(ノボザイムズジャパン(株)のレシターゼ10L:10,000IU/g)をそれぞれ0.1質量%及び0.3質量%添加したこと以外は実施例2〜3と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例2〜3と同様にして耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0029】
【表1】
第1表
【0030】
第1表から、以下のようなことが分かる。
即ち、酸性ホスホリパーゼA1が酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)1kg当たり、それぞれ3,000単位、10,000単位及び30,000単位添加された実施例1〜3の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は優れた耐熱性を持つことが分かる。
これに対し、酸性ホスホリパーゼA1の添加されていない比較例1及び酸性ホスホリパーゼA1に代えてホスホリパーゼA2の添加された比較例2〜3の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ゛)では、耐熱性の低いことが分かる。
酸性ホスホリパーゼA1を酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の調製時に規定量添加・配合するだけで、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)に優れた耐熱性が付与される理由は定かではないが、酸性ホスホリパーゼA1が乳化構造、即ち、油滴構造に存在するリン脂質に作用することによって生じるリゾリン脂質の効果によるものと思われ、酸性ホスホリパーゼA1の作用は、ごく短時間に効率よく行われるものと推測される。
【0031】
試験例1(酸性ホスホリパーゼA1添加量の影響)
実施例1において、酸性ホスホリパーゼA1の添加量を第2表の如く0.01〜0.3質量%まで変化させ、さらに全体の配合割合の合計が100質量%となるように水で調整したこと以外は実施例1と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)調製し、実施例1と同様にして耐熱性を評価した。結果を第2表に示す。
【0032】
【表2】
第2表
【0033】
第2表の結果より、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)1kg当たり、酸性ホスホリパーゼA1が2,000単位以上添加・配合されると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)に優れた耐熱が付与されることが分かる。
一方、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)1kg当たり、酸性ホスホリパーゼA1の添加量が2,000単位未満であると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性は低いことが分かる。
【0034】
試験例2(酸度(pH)の影響)
実施例2において、食酢部分の添加量を第3表の如く0〜15.0質量%まで変化させ、さらに全体の配合割合の合計が100質量%となるように水で調整したこと以外は実施例1と同様にして、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を第3表に示す。
【0035】
【表3】
第3表(その1)
【0036】
【表4】
第3表(その2)
【0037】
また、第3表の結果より、以下のようなことが分かる。
酸性ホスホリパーゼA1が10,000単位添加・配合された酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)中の食酢(10%酸度)の添加量が、0.3質量%以上であると、つまりpHが5.0以下であると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は優れた耐熱性を持つことが分かる。
一方、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)中の食酢(10%酸度)の添加量が0.3質量%未満であると、つまりpHが5.0を超えると、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性は低いことが分かる。
これらの結果から、酸性ホスホリパーゼA1を酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)に添加・配合する場合、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)のpHが5.0以下であると、酸性ホスホリパーゼA1が活性となり、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は優れた耐熱性を持つことが理解される。
一方、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)のpHが5.0を超えると、酸性ホスホリパーゼA1の活性が低下することにより、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は耐熱性の低いことが理解される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐熱性を有する酸性水中油型乳化食品が提供される。
しかも、本発明によれば、従来技術のように乳化剤として特別の処理をして得られるリゾ化卵黄やリゾリン脂質を含有させて耐熱性を付与させる必要がなく、マヨネーズやドレッシング類等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、その調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・混合するといった簡単な操作だけで優れた耐熱性を有する酸性水中油型乳化食品が得られる。
【0039】
即ち、本発明によれば、優れた耐熱性を有しながらも、従来技術のように乳化剤としてリゾ化卵黄を含有させて耐熱性を付与させるときに生じる余計な手間が不要であり、またホスホリパーゼA処理の段階で微生物汚染が生じたり、風味変化が生じたりするなどの問題がなく、或いはリゾリン脂質を使用する場合に見られる、溶解するのに時間がかかったり、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑となったりするなどの問題がなく、マヨネーズやドレッシング類等のような卵黄を乳化剤とする酸性水中油型乳化食品において、その調製時に、つまり卵黄によって乳化される前の酸性水中油型乳化食品に、単に酸性ホスホリパーゼA1を添加・混合するといった簡単な操作だけで優れた耐熱性を有する酸性水中油型乳化食品が提供される。
よって、本発明は食品工業分野において有用である。
Claims (6)
- 水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品において、乳化前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1が添加・配合されていることを特徴とする酸性水中油型乳化食品。
- ホスホリパーゼA1が、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有する酸性ホスホリパーゼA1である、請求項1記載の酸性水中油型乳化食品。
- アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項2記載の酸性水中油型乳化食品。
- 水相と油相とが卵黄により乳化されてなる酸性水中油型乳化食品を製造するにあたり、卵黄により乳化される前の酸性水中油型乳化食品にホスホリパーゼA1を添加・配合することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法。
- ホスホリパーゼA1が、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が生産する、pH2.5〜6.0に活性領域を有する酸性ホスホリパーゼA1である、請求項4記載の製造方法。
- アスペルギルス(Aspergillus)属に属する糸状菌が、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項5記載の製造方法。
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JP2003139820A JP2004337113A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | 酸性水中油型乳化食品及びその製造方法 |
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Cited By (3)
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WO2006126472A1 (ja) * | 2005-05-23 | 2006-11-30 | San-Ei Gen F.F.I., Inc. | 酸性水中油滴型エマルジョン及びその食品への応用 |
JP2010161975A (ja) * | 2009-01-16 | 2010-07-29 | Ajinomoto Co Inc | 酸性水中油型乳化食品の製造方法 |
JP2019097465A (ja) * | 2017-11-30 | 2019-06-24 | キユーピー株式会社 | 酸性水中油型乳化調味料の耐熱性付与方法 |
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2003
- 2003-05-19 JP JP2003139820A patent/JP2004337113A/ja not_active Withdrawn
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