JP6919755B2 - グリシドール及びグリシドール脂肪酸エステル含有量を低減させた食用油脂及びその製造方法 - Google Patents
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(1) パーム系油脂を含む油脂の脱色脱臭工程において、下記の原料油脂を使用し、脱色作業工程中に、酸を水溶液添加する工程を含み、脱色脱臭工程後下記の食用油脂が得られる、グリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法、
原料油脂:
パーム系油脂を含む油脂であって、3−MCPD濃度が1.5mg/kg以下
脱色脱臭工程後の食用油脂:
グリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの含有量が、グリシドール等量で1.0mg/kg以下
(2) 酸として下記の水溶液を0.01〜10重量%添加する、(1)のグリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法、
・濃度1〜85重量%である、クエン酸および/またはリン酸水溶液
(3) 脱臭工程が下記条件である、(1)または(2)のグリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法、
・真空度100〜800Pa
・水蒸気使用量0.5〜5重量%
・脱臭温度230〜260℃
(4) (1)〜(3)のいずれかのグリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法による、食用油脂のグリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの低減方法、である。
得られる脱臭後の油脂中のグリシドール及びグリシドール脂肪酸エステル含有量をグリシドール等量で1.0mg/kg以下、好ましくは0.5mg/kg以下に低減することができる。
(B)の原材料としては、(A)以外に、(B)の油脂類も使用することができ、(A)及び/又は(B)を必須成分として含有するが、それ以外に、他の食用油脂を含有しても良い。使用することができる油脂類を例示すると、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、オリーブ油、ゴマ油、中鎖脂肪酸結合油脂(MCT)、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂、および乳脂、牛脂、豚脂等の動物脂、ならびに、それらの硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。
本発明において脱色作業工程とは、原料油脂を、脱色工程を行なう反応装置(脱色缶)へ移送する脱色準備工程、脱色缶への脱色白土等加工助剤等を投入し脱色缶を加温し減圧下で行なう脱色工程、脱色後必要であれば冷却し白土をろ別する脱色ろ過工程、以上の脱色準備工程、脱色工程、脱色ろ過工程の一連の工程から構成される。
本発明において脱臭作業工程とは、脱色ろ過後の脱色油を脱臭容器(脱臭塔)へ移送する脱臭準備工程、脱臭塔での脱臭工程、冷却、酸化防止剤の添加等を含む脱臭後処理工程、以上の脱臭準備工程、脱臭工程、脱臭後処理工程の一連の工程から構成される。
半連続式装置としては、例えば数段のトレイを備えた脱臭塔からなるガードラー式脱臭装置等を用いることができる。本装置は、上部から油脂を供給し、トレイ上で油脂と水蒸気の接触を適当な時間行った後、油脂を下段のトレイへ下降させ、間欠的に次々と下降しながら移動することにより処理を行うものである。連続式装置としては、薄膜状の油脂と水蒸気を接触させることが可能な薄膜脱臭装置等を用いることができる。温度と水蒸気使用量が管理できる点で、半連続式装置を使用することが好ましい。
なお、GC−MSについては、分子イオンピークm/z 147、m/z 150、を用いて定量する。
3−MCPDの濃度が0.31mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。50%クエン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%、原料である物理精製パーム油に添加した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、230℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が0.45mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。85%リン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%、原料である物理精製パーム油に添加した。活性白土を対油脂重量1.5重量%し、110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、230℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
沃素価が53の物理精製パーム油、沃素価が31の物理精製パーム分別油、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を44対57対3で調合した油脂を、0.2重量%のナトリウムメトキシドを触媒としたエステル交換反応に供した。反応温度は80℃、反応時間は30分とした。反応終了後、ホモミキサーを用いて5000rpmの回転速度で攪拌している油脂に、50%クエン酸水溶液を5重量%添加し、1分間接触させた。その後、80℃の温水を20重量%添加し、5分間処理することで油脂を水洗した。水洗した油脂は遠心分離により水相を除去した後、110℃、1330Paの条件で10分間脱水処理を実施した。このとき得られたエステル交換油中の3−MCPDの濃度は0.14mg/kgであった。このエステル交換油を脱色-脱臭の工程に供した。50%クエン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%、原料である物理精製パーム油に添加し、さらに活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が1.01mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。50%クエン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%、原料である物理精製パーム油に添加した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が2.12mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。50%クエン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%、原料である物理精製パーム油に添加した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、230℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が0.39mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。原料である物理精製パーム油に活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、230℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が0.22mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。50%クエン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%、原料である物理精製パーム油に添加した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、200℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が1.01mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂に、50%クエン酸水溶液を対油脂重量0.1重量%添加し、直ちに250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が1.01mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。クエン酸の粉体を対油脂重量0.05重量%、原料である物理精製パーム油に添加した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が1.01mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂に、クエン酸の粉体を対油脂重量0.05重量%添加し、直ちに250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が1.17mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。ホモミキサーを用いて5000rpmの回転速度で攪拌している油脂に、50%クエン酸水溶液を0.1重量%添加し、1分間接触させた。その後、80℃の温水を20重量%添加し、5分間処理することで油脂を水洗した。水洗した油脂は遠心分離により水相を除去した後、110℃、1330Paの条件で10分間脱水処理を実施した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
沃素価が53の物理精製パーム油、沃素価が31の物理精製パーム分別油、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を44対57対3で調合した油脂を、0.2重量%のナトリウムメトキシドを触媒としたエステル交換反応に供した。反応温度は80℃、反応時間は30分とした。反応終了後、ホモミキサーを用いて5000rpmの回転速度で攪拌している油脂に、50%クエン酸水溶液を5重量%添加し、1分間接触させた。その後、80℃の温水を20重量%添加し、5分間処理することで油脂を水洗した。水洗した油脂は遠心分離により水相を除去した後、110℃、1330Paの条件で10分間脱水処理を実施した。このとき得られたエステル交換油中の3−MCPDの濃度は0.14mg/kgであった。このエステル交換油を脱色-脱臭の工程に供した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
3−MCPDの濃度が1.01mg/kgの物理精製パーム油を脱色-脱臭の工程に供した。活性白土を対油脂重量1.5重量%添加し、攪拌しながら110℃、1330Paの条件で10分間脱色処理した。脱色終了後、活性白土を除去した油脂を、250℃、266Pa、蒸気使用量3重量%の条件で90分間脱臭処理した。脱臭後、真空を1330Paに維持した状態で50%クエン酸水溶液を0.1重量%添加した。最後に、油脂に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの分析を実施した。
クエン酸水溶液を脱臭直前に添加した比較例4、クエン酸の粉体を使用した比較例5〜比較例6、クエン酸水溶液の添加タイミングが実施例と相違する比較例4〜9では、精製後のグリシドール等量を1.0mg/kg以下に低減することができなかった。
Claims (3)
- 物理精製パーム油及び/又はその分画油を原材料として使用した、パーム系油脂を含む油脂の脱色脱臭工程において、下記の原料油脂を使用し、脱色作業工程中に、酸を水溶液添加する工程を含み、脱臭工程を下記条件で行い、脱色脱臭工程後下記の食用油脂が得られる、グリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法。
原料油脂:
3−MCPD濃度が1.5mg/kg以下
脱色脱臭工程後の食用油脂:
グリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルの含有量が、グリシドール等量で1.0mg/kg以下
脱臭条件:
・真空度100〜800Pa
・水蒸気使用量0.5〜5重量%
・脱臭温度230〜260℃ - 酸として下記の水溶液を0.01〜10重量%添加する、請求項1に記載のグリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法。
・濃度1〜85重量%である、クエン酸及び/又はリン酸水溶液 - 請求項1又は請求項2に記載のグリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減させた食用油脂の製造方法による、食用油脂のグリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルの低減方法。
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