JP3017264B2 - 酵素法によるl―セリンの製造法 - Google Patents

酵素法によるl―セリンの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、L−セリンの製造法に関し、更に詳しくは
セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有す
る微生物細胞、もしくは細胞処理物の存在下で、グリシ
ンとホルムアルデヒドから酵素法によりL−セリンを製
造する方法に関するものである。
〔従来の技術〕
L−セリンは医薬品、化粧品、化学原料等に利用され
るアミノ酸であり、現在は化学的合成法またはグリシン
を前駆体とする発酵法により製造されている。
しかしながら、化学合成法の場合はDL体が合成される
ためにL体のみを得るには光学分割しなければならない
という欠点があり、又、グリシンを前駆体とする発酵法
には蓄積量、収率、精製、廃水処理等に難点があり、こ
れらの方法は実用上有利な方法とは言い難い。
これらの方法に代わって最近は、セリンヒドロキシメ
チルトランスフェラーゼ(EC2.1.2.1.以下「SHMT」と称
する)を利用し、グリシンとホルムアルデヒドからL−
セリンを酵素的に合成する方法が注目されている。
更には、遺伝子操作により微生物のSHMT活性を向上さ
せる方法も知られている(Gene,14,p63〜72(1981).Ge
ne,27,p47〜54(1984)ので、工業的には微生物の生産
するSHMTを利用する方法は、将来一層有利であると期待
されている。
SHMTを利用して酵素法によりグリシンとホルムアルデ
ヒドからL−セリンを工業的に有利に製造する方法とし
ては、SHMT活性を有する微生物または、微生物の細胞
を、グリシン溶液と接触させた後L−セリン反応に使用
する方法が知られている。(特開昭61−9294)しかしな
がら、微生物にはセリン分解酵素活性(以下SD活性と称
する)の存在も知られている。〔例えばL−セリンデヒ
ドラターゼ(Shizuta Y.and Tokushige M.Methods in
enzymology 17B p575〜p580,Academic PressInc.New Y
ork(1971) Burns.R.O.Methods in enzynology 17B Academic Pre
ss New York(1971) Kubota.K.etal.,J.Fermentation and Bioengineering
67,(6)p391〜p394(1989))〕 該SD活性は酵素法L−セリンの製造法において次のよ
うな問題点を生じる。
生成したL−セリンが分解され反応収率(対原料グ
リシン収率)が低下する。
L−セリン分解生成物によりL−セリン生成反応が
抑制されセリン蓄積量が低下する。
このため、SD活性の低下した微生物変異株を用いてL
−セリンを効率よく製造する方法が知られている。〔文
献(Kubota.K.Agric Biol Chem.49 p7〜P12(198
5))〕しかしながら、SD失活変異株を造成することは
容易なことではなく、復元株の出現といった問題があ
り、工業的規模での方法としては問題があった。
また、セリン分解活性の抑制法については、特開昭58
−129972号公報、特開昭58−129975号公報に開示されて
いるが、いずれも菌体を40〜60℃の特定温度条件下、10
〜30分間の短時間処理するもので、短時間処理により成
果を得ようとするものであるが、本発明で使用する微生
物に於いてはセリン分解活性の抑制効果としては十分な
ものではないという問題点を見出した。
〔発明が解決しようとする課題〕
このような状況のもとに本発明者らは、SHMT活性を有
すると同時にSD活性も有している微生物の培養液、菌体
もしくは菌体処理物を用いて、グリシンとホルムアルデ
ヒドよりL−セリンを製造するに当たり、その細胞、も
しくは細胞処理物中に存在するSD活性を、SHMT活性の低
下は極力抑えながら、選択的に低下させる方法を確立す
ることを目的とし、該SHMT酵素活性を有する微生物の細
胞もしくは細胞処理物を用いて、L−セリンを製造する
方法を鋭意検討した。
その結果、SHMT活性を有すると同時にSD活性も有して
いる微生物の細胞懸濁液もしくは細胞処理物溶液を60℃
以下の温度で溶存酸素が1ppm以上存在する条件で前処理
すると選択的にSD活性を低下させることを見い出し、以
上の処理を施した該微生物の細胞もしくは細胞処理物を
用い、グリシンとホルムアルデヒドよりL−セリンを効
率よく製造する方法を完成した。
即ち、本発明は酵素セリンヒドロキシメチルトランス
フェラーゼ活性を有する、微生物の細胞もしくは細胞処
理物の存在下、グリシンとホルムアルデヒドより、L−
セリンを製造する方法において、細胞懸濁液もしくは細
胞処理溶液を60℃以下の温度で溶存酸素濃度が1ppm以上
に保たれるように懸濁液または細胞処理溶液に酸素又は
空気を溶解し、前処理した該酵素活性を有する微生物の
細胞もしくは細胞処理物を用いる事を特徴とする、L−
セリンの製造方法である。
〔課題を解決するための手段〕
本発明において用いられる微生物は、SHMT活性を有す
るものであればよく、このような微生物の例としては、
エシェリヒア・コリ(Esherichiacoli)MT−10350(FER
M P−7437、FERM BP−793)、エシェリヒア・コリMT−1
0351(FERM P−7438、FERM BP−794)をあげることがで
きる。
本発明において用いられる微生物の培養に当たって
は、使用菌株の利用しうる炭素源、窒素源、無機塩類、
有機栄養物などを含有するものであれば合成培地、天然
培地のいずれも使用できる。培養は通常好気的条件、培
養温度25〜40℃、培養液のpH6〜8で行われる。
本発明に於いては、このようにして得られた培養液は
そのまま遠心分離、濾過等により集菌した細胞又は細胞
処理物を酵素源として用いる。細胞処理物としては、細
胞を機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処
理、溶媒処理、化学的処理、浸透圧処理、自己消化、界
面活性剤処理、酵素処理等により細胞壁の一部もしくは
全部を破砕したもの、これらより得られる酵素画分、細
胞及び細胞抽出物の固定化物などがある。
培養液から細胞を集菌する場合、培養液中の炭素源、
たとえばグルコース等が消費された培養液から集菌され
るのが好ましい。
本発明においては、本発明に用いる細胞又は細胞処理
物を60℃以下、好ましくは30〜50℃に保ちつつ、酸素ま
たは空気を通気、あるいは攪拌により、処理液中の溶存
酸素濃度を常に1ppm以上となるように溶解、保持するこ
とにより、細胞内又は細胞処理物中に存在するSD活性の
みを選択的に低下させることが出来る。
処理温度は30℃未満ではSD活性の抑制ができない傾向
がある。又、60℃を越せばSD活性と共にSHMT活性も低下
するので好ましくない。
処理液中の溶存酸素量は溶媒、溶質によって変化する
が常に処理液中に1ppm以上に溶存酸素があれば十分であ
る。処理液のpHは通常6〜9、処理時間は2〜10時間、
好ましくは4〜8時間である。
SD活性失活処理において発泡防止のため通常使用され
る消泡剤を添加してもよい。処理液中にグリシンを添加
して処理することは更に好ましい態様である。以上の前
処理を施したSHMT活性を有する細胞又は、細胞処理物を
用いてL−セリンの合成を実施する。
本発明のL−セリン合成反応は、pH6〜9、温度30〜6
0℃で攪拌条件下で行うのが好ましい。酵素SHMTは補酵
素として、テトラヒドロ葉酸とピリドキサルリン酸を要
求するので、これらの物質を反応系に添加することによ
りL−セリン反応が高められることがある。なお、本発
明のL−セリン反応は、窒素雰囲気または還元剤存在下
に行うことによっても一層促進させることがある。
反応基質であるグリシンの添加量は、反応温度におけ
る飽和溶解度以上でも特に問題ないが、できれば5Mによ
り近い濃度の方が好ましい。グリシンの添加方法につい
ては反応開始時に一括添加しても、反応進行にともない
分割添加してもよい。
一方の反応基質であるホルムアルデヒドは、気体で、
あるいは水溶液として、アルコール溶液として、更には
固形重合物のパラホルムアルデヒドなどの形態で使用す
ることが出来るが、37〜43%程度の水溶液であるホルマ
リンの使用が好適である。
ホルムアルデヒドはSHMT酵素活性を阻害しない程度の
濃度で用いなければならず、反応の進行にともない反応
液に分割または連続的に添加する。
本発明方法のL−セリン合成反応は通常pH6〜9、反
応温度30〜60℃、反応時間は5〜40時間、好ましくは反
応温度40〜50℃で20〜30時間である。
pHの調整は反応液中にアルカリを添加して実施され
る。反応液に添加するアルカリとしては、水酸化リチウ
ム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどアルカリ金
属水酸化物の他、ピロリン酸カリウム、アンモニアなど
水に溶解して液性を塩基性とするものであればよい。
反応の進行は反応液中のL−セリン及びグリシン濃度
を液体クロマトグラフィーにより分析し確認できる。
反応終了後の反応液の後処理は、反応液に鉱酸例えば
硫酸、塩酸等を加え液性を酸性側、好ましくはpH5以下
としL−セリンを溶解する。この溶液に濾過助剤、例え
ば活性炭等を加え、熱濾過し菌体破砕物等の不純物を除
去する。
濾液は常法により濃縮し、L−セリンの結晶を析出さ
せ分離、環装しL−セリンを得る。
〔発明の効果〕
本発明において最も特徴とする、SD活性を低下させる
処理の効果によりL−セリン合成反応において、反応
生成したL−セリンの分解が抑制され反応収率(対原料
グリシン収率)の低下が抑えられる。L−セリン分解
生成物によりL−セリン生成反応が抑制されセリン蓄積
量が低下することを防止できる。
〔実施例〕
以下、実施例及び実験例により本発明を詳細に説明す
る。
勿論、実施例は本発明を具体的に例証するものであ
り、本発明がこの実施例の範囲に限定されるものではな
い。
実験例1 エシェリヒア・コリMT−10350(微工研菌寄第7437
号)の菌株を後述のLB−AP寒天平板培地に植菌し、35℃
にし一夜培養を行ない、生育したコロニーから2白金耳
を150mlのLB−AP液体培地の入った綿栓付き500ml坂口フ
ラスコに接種した。接種した坂口フラスコは35℃にて20
時間振盪培養(120rpm)を行ない、所定時間培養後、PT
最小培地を20仕込んだ30ジャーファーメンターに移
液して35℃、通気量1vvm、攪拌回転数600rpmにてpH6.8
にpHコントローラーによりアンモニア水の添加により制
御を行いつつ、殺菌済み40%グルコース水溶液を逐時添
加しながら40時間培養を行った。所定時間培養後、培地
中のグルコースが消費されるのを確認して、直ちに遠心
分離機にて集菌を行い、湿菌体を得た。得られた集菌湿
菌体0.46kgを1.43kgの水及び0.41kgのグリシン溶液中に
加えた。pHをNaOHにて調製し、7.5に合わせ、攪拌しな
がら40℃に16時間保った。
所定時間混合後、混合液を2倍に希釈してSD活性を測
定し、次いで消泡剤(アデカノール LG−109旭電化
製)を0.1%濃度に添加し、表−1に示す各溶存酸素濃
度に保たれるように通気量を調整し、通気後、2時間、
4時間目の残存SD活性及びSHMT活性を混合液を2倍に希
釈して測定した。
培地組成 1. LB−AP寒天平板培地 pH調整後、寒天15gを加えてオートクレーブ殺菌(120
℃,10分間)し60℃以下に冷却後、アンピシリンを濃度2
5μg/になるように無菌フィルターを通して添加。シ
ャーレに分注し固化させ寒天平板を作製した。
2. LB−AP液体培地 pH調整後、オートクレーブ殺菌(120℃,10分間)し、
60℃以下に冷却後、アンピシリンを濃度25μg/になる
ように無菌フィルターを通して添加した。
3. PT最少培地 リン酸1カリウム 2.0g リン酸2カリウム 2.0g MgSO4・7H2O 2.0g (NH42SO4 1.5g L−フェニルアラニン 2.5g CaCl2・2H2O 80mg CuCl2・2H2O 8mg CoCl2・6H2O 8mg AlCl2・6H2O 20mg H3BO3 1mg MnSO4・5H2O 20mg ZnSO4・7H2O 4mg Na2MoO4・2H2O 4mg FeSO4・7H2O 80mg 蒸留水 1000ml を混合し、120℃で30分間殺菌後、0.2μmの無菌フィル
ターにて無菌濾過した塩酸チアミン水溶液をチアミン濃
度を50mg/となるように添加した。
SD活性及びSHMT活性の測定方法 1. SD活性測定方法 2.2mlのエッペンドルフチューブ中へ、0.1mlの500mM
リン酸緩衝液(pH7.5)と0.6mlの33mM L−セリン水溶液
と0.1mlの0.1mMピリドキサルリン酸(50mMリン酸緩衝液
(pH7.5))と0.1mlの蒸留水を加え、30℃で5分間プレ
インキュベーションを行った。次に、その溶液へ、0.4m
lの菌体処理液を加え攪拌した後、30℃で2時間反応し
た。所定時間終了後、0.2mlのトリクロロ酢酸(15%水
溶液)を加えて反応を停止した。反応液は遠心分離を行
い、上清液を10倍に希釈し、液体クロマトグラフィー
(以下、HPLCと略する)にてL−セリンの分析を行っ
た。対照として、プレインキュベーションした後、反応
液にトリクロロ酢酸を加え、次に、菌体処理液を加え
た。所定時間30℃で反応を行い、上記と同様に遠心分離
を行い上清液中のL−セリン濃度を分析しこれを標準と
した。HPLCでのL−セリンの分析条件は、下記の通りで
ある。
HPLC分析条件(L−セリン、グリシンの定量)ポスト
ラベル法にて分析を行った。移動相は脱気水を用い、流
速を1.0ml/minに設定した。
発色剤は、o−フタルアルデヒド溶液を流速0.4ml/mi
nで通液した。検出器は蛍光検出器を用いて、照射波長3
65nm、放射波長455nmにて行った。分離カラムは、Shode
x DM−614(昭和電工製)を2本直列につないで使用し
た。
2. SHMT活性測定方法 2.2mlのエッペンドルフチューブ注へ、0.1mlの500mM
リン酸Buffer(pH=7.3)と0.5mlの1.0Mグリシン水溶液
と0.3mlの0.45%テトラヒドロ葉酸溶液〔0.08%ホルマ
リンを含む500mMリン酸緩衝液(pH=7.3)〕と0.2mlの
蒸留水を加え、50℃で5分間プレインキュベーションを
行った。
次に、その溶液へ0.1mlの菌体処理液(50mMリン酸緩
衝液(pH7.3)にて50倍に希釈処理液)を加え攪拌した
後、50℃で10分間反応した。所定時間終了後、0.3mlの
トリクロロ酢酸(15%水溶液)を加えて反応を停止し
た。反応液を遠心分離を行い、上清液を5倍に希釈し、
HPLCにてL−セリンの分析を行った。HPLCのL−セリン
の分析条件は、上記の通りである。
実験例2 エシェリヒア・コリMT−10350の菌株を、実験例1と
同様の操作で培養を行い、培養液から遠心分離し湿菌体
を得た。得られた湿菌体を培養液の1/3量の0.85%NaCl
水溶液ど洗浄後、再度遠心により集菌し洗浄菌体を得
た。88.8gの洗浄湿菌体を5℃に冷却した0.1Mトリス・
塩酸緩衝液(pH7.5)を加え800gとした。該懸濁液を2
分割し、一方の懸濁液は超音波破砕機(BRANSOM社製)
にて、氷上で破砕処理を行い、破砕液を更に2分割し、
各々の破砕液を溶存酸素濃度計(東亜電波製)、通気ノ
ズル、攪拌装置及び温度調節装置を有する容器に注入
し、消泡のためアデカノールLG−109(旭電化製)を0.0
5%になるように添加し、40℃にて、表−2に示す溶存
酸素濃度になるように通気量を調整し、開始時のSHMT活
性およびSD活性を測定した。
また、通気後4時間目の各々の活性を測定し、残存率
を表−2に示す。該懸濁液の残りは超音波処理を行なわ
ず、更に、これを2分割し、溶存酸素濃度計(東亜電波
製)、通気ノズル、攪拌装置及び温度調節装置を有する
容器に注入し、消泡のためアデカノール LG−109(旭電化製)を0.05%になるように添加し、40
℃にて、表−2に示す溶存酸素濃度になるように通気量
を調整し処理を行った。処理4時間後、懸濁液に等量の
0.1Mトリス・塩酸緩衝液(pH=7.5)を加え、超音波破
砕機(BRANSON社製)にて氷上で破砕処理を行い、破砕
液のSHMT活性およびSD活性を測定した。
実験例3 エシェリヒア・コリMT−10350の菌株を、実験例1と
同様の操作で培養を行い、培養液から遠心分離し湿菌体
を得た。得られた湿菌体を培溶液の1/3量の0.85%NaCl
水溶液で洗浄後、再度遠心分離により集菌し洗浄菌体を
得た。100gの洗浄湿菌体を5℃に冷却した0.1Mトリス・
塩酸緩衝液(pH=7.5)を加え1000gとした。該懸濁液を
5分割し各々の懸濁液を溶存酸素濃度計、通気ノズル、
攪拌装置及び温度調節装置を有する容器に注入し、消泡
のためアデカノール LG−109(旭電化製)を0.05%に
なるように添加し、表−3に示す溶存酸素濃度になるよ
うに通気量又は攪拌を調整し、20〜65℃の温度条件下で
4時間攪拌処理を行った。
処理前及び4時間処理後の各々のSHMT活性及びSD活性
を測定し、残存率を表−3に示す。
実験例4 エシェリヒア・コリMT−10350を実験例2と同様に培
養、集菌した湿菌体500gを得た。純水1160gを培養に用
いる2.6ミニジャーファメンター(マルビシェンジ社
製・タービン型攪拌羽根付(6翼)に仕込み40℃下空気
を1vvmで通気しながら600rpmで攪拌しそのDO(溶存酸
素)濃度を測定したところ6.4ppmだった。通気を停止
し、その純水中に得られた湿菌体のうち200gを加えて10
0rpm程度で穏やかに攪拌を行い40℃下懸濁液中のDO濃度
を連続して測定したところDO濃度は15分間で速やかに0p
pmまで下がった。次に、前述と同様のミニジャーファー
メンターに純水1080gを仕込みグリシン300.4g(4.00mo
l)を加え、40℃下で攪拌溶解した後、NaOH2.3gを加え
てPH=7.5に調整した。その後、1vvm、600rpmで通気、
攪拌を行ない、溶存酸素を飽和とした。通気を止め、攪
拌を100rpmとして、その溶液中へ前述と同様に湿菌体22
1.8gを加えて、20分後の液中の溶存酸素を測定したとこ
ろ0ppmだった。無通気のまま40℃で17時間100rpmで攪拌
を続けてグリシン処理液を行ない、処理が終わった溶液
約1500g中のDO濃度を測定したところ0ppmだった。攪拌
回転数を400rpmに上げグリシン処理液1500g中へ空気を
3/minで吹き込み、DO濃度が飽和(6.5ppm)に達した
時点で空気の吹き込みを停止し、それよりグリシン処理
液中のDO濃度が0になるまでの時間を測定したところ11
minを要した。
又、DO濃度を飽和に近い状態(6.5ppm)に空気の吹込
みを続けて、酵素消費量の経時変化を調べると添付の第
1図に示すように、グリシン処理直後の酸素消費量を10
0%とすると空気吹き込み処理時間を経ると共に酸素消
費量は減少した。
DO測定法:マルビシェンジ社製の溶存酸素指示計(DY
−2型;ガルバニ電極タイプ)を用いた。
実施例1 実験例1に示した方法でエシェリヒア・コリMT−1035
0の菌株を培養した菌体を、遠心分離により集菌した。
得られた菌体40gは、溶存酸素濃度計、pH計、攪拌機、
スーパージャー付通気ノズルおよび温度調整機の付いた
1フラスコに125gの蒸留水に36gグリシンを溶解し、p
Hを7.5に調整した溶液中へ加えた。40℃で16時間無通気
のまま緩やかに攪拌を行ない、次に、溶存酸素濃度が1p
pm以上に保たれるように、40℃で4時間通気を行った。
このようにして得られた通気処理液200gはホルマリン
フィード用ポンプおよびpH計、攪拌機、温度調整機の付
いた2−反応器に、前もっと調整した700gの蒸留水に
340gのグリシン、1.0gのテトラヒドロ葉酸及び20mgのピ
リドキサルリン酸を混合した反応溶液に加えた。
通気処理液を加えた後、反応溶液を50℃に加温して、
pHを6.7にNaOHで調整した。次に、反応液中のホルマリ
ン濃度を分析しながら、反応液中のホルマリン濃度を次
式を満たす許容範囲;{(ホルマリン濃度mM=(20mM+
(10mM)*(反応経過時間)}以下になるように制御し
て反応を行った。
一方、反応液のpHを1N−NaOHの添加にてpH6.6に保っ
た。反応は35時間行った。所定時間反応後反応液中のL
−セリン及びグリシン濃度をHPLCにて分析を行い、425g
のL−セリンの生成を認めた。
反応終了後、反応液に硫酸を加えpHを4.0とし、活性
炭21.3g(PMSX 三井製薬製)を加え90℃にて1時間加
熱後、熱濾過を行い、濾液を反応液の半分量まで減圧濃
縮し、冷却晶析後、濾過した。
濾別した結晶を乾燥後127.5gのL−セリンを得た。L
−セリンは純度99.4%、施光度+15.2であった。
エシェリヒア・コリ(MT−10351)も同様の操作を行
い表−4の結果を得た。
対ホルマリン収率: 生成L−セリン(mol)/消費ホルマリン(mol) セリン選択率: 生成L−セリン(mol)/消費グリシン(mol) 実施例2 エシェリヒア・コリMT−10350を実験例2と同様に培
養集菌後、湿菌体を蒸留水に菌体濃度が2.5%(乾燥菌
体の重量%)になるように懸濁し、pHを7.5にNaOHにて
調整後、40℃にて、溶存酸素濃度を1〜4ppmに保ち、4
時間、通気攪拌を行なった。次に、超音波破砕機にて菌
体を破砕処理し、処理後のSHMT活性を測定した結果、SH
MT活性は200U/mlであった。375gのグリシン、1.00gのテ
トラヒドロ葉酸及び20mgのピリドキサルリン酸を700gの
蒸留水に加えpHを6.7にNaOHで調整し、50℃に加温した
基質溶液を、pH計、攪拌機、N2ガス吹き込みノズル、ホ
ルマリンフィード用ポンプおよび温度調整機のついて遮
光2フラスコに入れた。
更に、菌体破砕通気処理液250g加えた後、ホルマリン
フィード用ポンプにより、ホルマリン水溶液を断続的に
添加した。ホルマリンの添加速度は反応液中のホルマリ
ン濃度を分析しながら該ホルマリン濃度を実施例1と同
様に制御して行った。
また、反応液のpHを2N−NaOH水溶液の添加にて行い、
pH6.6に保った。反応は35時間行い、所定時間反応後、
反応液中のL−セリン濃度およびグリシン濃度の分析を
HPLCにて行った。410.0gのL−セリンの生成を認め、表
−5に示す反応成績を得た。
エシェリヒア・コリMT−10351も同様の操作を行い表
−5の結果を得た。
比較例1 実験例1に示した方法でエシェリヒア・コリMT−1035
0の菌株を培養した菌体を遠心分離により集菌した。得
られた湿菌体40gは、溶存酸素濃度計、pH計、攪拌機、
スパージャー付通気ノズルおよび温度調整機のついた1
フラスコに125gの蒸留水に36gグリシンを溶解し、pH
を7.5に調整した溶液中へ加えた。40℃で20時間無通気
のまま緩やかに攪拌を行った。次に、340gのグリシン、
1.0gのテトラヒドロ葉酸及び20mgのピリドキサルリン酸
及び700gの蒸留水を2反応器に入れ、ホルマリンフィ
ード用ポンプおよびpH計、攪拌機、温度調整機を2反
応器に設置し、200gの無通気処理液を加えた。反応溶液
を50℃に加温して、pHを6.7にNaOHで調整した。次に、
反応液中のホルマリン濃度を分析しながら、反応液中の
ホルマリン濃度を次式を満たす許容範囲;{(ホルマリ
ン濃度mM)=(20mM)+(10mM)*(反応経過時間)}
以下になるように制御して反応を行った。一方、反応液
のpHを1N−NaOHの添加にてpH6.6に保った。反応は35時
間行った。所定時間反応後、反応液中のL−セリン及び
グリシン濃度をHPCLにて分析を行い、245.6gのL−セリ
ンの生成を認めた。これより表−6に示す結果を得た。
比較例2 比較例1において、pH調整を2M−KOH水溶液にて実施
した。反応成績を表−7に示す。
比較例3 エシェリヒア・コリMT−10350を実験例2と同様に培
養集菌後、湿菌体を蒸留水に菌体濃度が2.5%(乾燥菌
体の重量%)になるように懸濁し、pHを7.5にNaOHにて
調整後、溶存酸素濃度が0ppmとなるようにN2を通気しな
がら40℃にて、4時間通気攪拌を行った。次に、超音波
破砕機にて菌体を破砕処理し、処理後のSHMT活性を測定
した結果、SHMT活性は200U/mlであった。375gのグリシ
ン、1.0gのテトラヒドロ葉酸、20mgのピリドキサルリン
酸を700gの蒸留水に加えpHを6.7にNaOHで調整し、50℃
に加温して基質溶液を、pH計、攪拌機、N2ガス吹き込み
ノズル、ホルマリンフィード用ポンプおよび温度調整機
について遮光2フラスコに入れ、菌体破砕通気処理液
を250g加え、ホルマリンフィード用ポンプにより、ホル
マリン水溶液を断続的に添加した。ホルマリンの添加速
度は反応液中のホルマリン濃度を分析しながら該ホルマ
リン濃度を実施例1と同様に制御して反応した。また、
反応液のpH調整を、2N−NaOH水溶液の添加にて調整し、
pH6.6に保った。反応は35時間行い、所定時間反応後、
反応液中のL−セリン濃度およびグリシン濃度の分析の
HPLCにて行った。222.4gのL−セリンの生成を認め、表
−8に示す反応成績を得た。
【図面の簡単な説明】
第1図は実験例4において0〜8時間の処理時間におけ
る酵素消費量(%)をみた図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−109187(JP,A) 相田浩ほか編「アミノ酸発酵」<1986 年5月30日初版>(株式会社 学会出版 センター発行)p.127−144 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 13/00 - 13/24 WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG) EPAT(QUESTEL)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酵素セリンヒドロキシメチルトランスフェ
    ラーゼ活性を有する、微生物の細胞もしくは、細胞処理
    物の存在下、グリシンとホルムアルデヒドよりL−セリ
    ンを製造する方法において、該細胞懸濁液もしくは該細
    胞処理物溶液を60℃以下の温度で溶存酸素濃度が1ppm以
    上存在する条件下、前処理した該酵素活性を有する微生
    物の細胞もしくは細胞処理物を用いることを特徴とす
    る、L−セリンの製造方法。
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