JP2970613B2 - 収納ボックス付スクータ型車両 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シート下に収納ボ
ックスが設置され、その下にユニットスイング型エンジ
ンが配置された収納ボックス付スクータ型車両に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】ヘルメット等を収納可能な収納ボックス
を備えたスクータ型車両の基本的なレイアウトは、前輪
を操舵するハンドルとシートとの間が下方に深く湾入し
てステップボードが設けられ、シート下方のリアボディ
内にはシートを蓋代わりにした収納ボックスと燃料タン
クが前後に設置され、このリアボディの下にユニットス
イング型エンジンが設置され、ユニットスイング型エン
ジンの後部に後輪が軸支されたものとなっている。

【０００３】上記ユニットスイング型エンジンは、ほぼ
水平に前方へ延びるシリンダ部分の後方にクランクケー
スが連なり、このクランクケースの一側にはさらに後方
へ延びるスイングケースが連設され、このスイングケー
スの最後部に後輪が軸支されるように構成されている。

【０００４】そして、ユニットスイング型エンジンはク
ランクケースの前下部または前上部に設けられたピボッ
トを軸にフレームに上下揺動自在に軸支され、かつスイ
ングケースの後上部とフレームの後部との間がリアクッ
ションユニットで連結され、このリアクッションユニッ
トが伸縮することによってユニットスイング型エンジン
の後部と後輪が緩衝懸架される。

【０００５】このようなスクータ型車両におけるユニッ
トスイング型エンジンと後輪の上下揺動量、即ちリアク
ッションユニットの伸縮ストロークは、収納ボックス底
面および燃料タンク底面と後輪との間の隙間量により決
定される。また逆に、この隙間量によって収納ボックス
および燃料タンクの形状（深さ＝容量）やシート高が決
定される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】したがって、例えば乗
り心地を重視してリアクッションユニットの伸縮ストロ
ークを大きくするには、その分だけ後輪との衝突を避け
るために収納ボックスと燃料タンクの底面位置を上昇さ
せなければならず、収納ボックスと燃料タンクの容量が
犠牲になる。逆に、収納ボックスと燃料タンクの容量を
大きく確保するならば、リアクッションユニットの伸縮
ストロークを縮めるかシート高を上げなければならず、
乗り心地や足付き性が損なわれる。

【０００７】このように、収納ボックスおよび燃料タン
クの容量確保と乗り心地の向上、ならびに足付き性の向
上は互いに相反する課題であり、これらの課題を全て満
足させるのは非常に困難である。

【０００８】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、収納ボックスおよび燃料タンクの容量を広く
確保しつつ、リアクッションユニットの伸縮ストローク
を大きくして乗り心地の改善を図り、かつシート高を低
くして足付き性を良くすることのできる収納ボックス付
スクータ型車両を提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明に係る収納ボック
ス付スクータ型車両は、上述した課題を解決するため
に、請求項１に記載したように、リアボディ内に収納ボ
ックスと燃料タンクを前後に設置し、上記リアボディの
下部に、ユニットスイング型エンジンがピボットにより
上下揺動自在に懸架され、上記ユニットスイング型エン
ジンはほぼ水平に前傾するシリンダを備え、クランクケ
ースの一側から後方へ延びるスイングケースの後部に後
輪を軸支した収納ボックス付スクータ型車両において、
前記リアボディ上に設けられたシート前半部の下方にキ
ャブレタを配置し、前記収納ボックスの底部の形状を後
部側が前部側に比べて深底となるように形成し、かつ前
記収納ボックスの後輪側底部に面取部を設けるととも
に、前記ユニットスイング型エンジンのピボットを前記
収納ボックスの深底の下方に配置し、さらに、前記燃料
タンクの底面を上記収納ボックスの底部に連なるように
後上りに傾斜させたものである。

【００１０】請求項２に係る収納ボックス付スクータ型
車両は、上述した課題を解決するために、請求項１の内
容に加えて、前記キャブレタをシリンダヘッド近傍でか
つ前記収納ボックスの下方に配置する一方、前記ピボッ
トを前記クランクケースと前記収納ボックスとの間に配
置したものである。

【００１１】本発明に係る収納ボックス付スクータ型車
両においては、収納ボックスの後部側深底の下方にユニ
ットスイング型エンジンのピボットを配置し、上記収納
ボックスの後輪側底部に面取部を設け、さらに燃料タン
クの底面を上記収納ボックスの底部に連なるように後上
りに傾斜させたので、ユニットスイング型エンジンがピ
ボット廻りに上下にスイングしたとき、ピボットより前
の（エンジン）部分とピボットより後の（後輪やエアク
リーナ）部分が収納ボックスおよび燃料タンクと前後で
バランスよくクリアランスを確保できるので、リアクッ
ションユニットのストローク量の確保が容易となる。

【００１２】このスクータ型車両では、ピボット廻りに
スイングするユニットスイング型エンジンが最も上方に
回動した時でも、後輪の最上部が収納ボックス底面や燃
料タンクと干渉しにくくなり、後輪との衝突を懸念せず
に収納ボックス底面の高さを引き下げて収納ボックスの
大容量化を実現でき、同時に後輪の上下揺動量、即ちリ
アクッションユニットの伸縮ストロークを大きく確保し
て乗り心地の改善を図るとともに、シート高を低くして
足付き性を良くすることができる。

【００１３】さらに、燃料タンク底面を収納ボックス底
面に連なるように後上がりに傾斜させたので、燃料タン
ク底面を後輪に干渉させることなく燃料タンクの深さを
深くして容量を大きく確保することができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を示す
図に就いて説明する。図１〜図３は本発明の一実施形態
を示すもので、図１は収納ボックス付スクータ型車両の
左側面図、図２は平面図、図３は右側面図である。

【００１５】この収納ボックス付スクータ型車両は、そ
の車体がハンドル３で操舵される前輪１とユニットスイ
ング型エンジン４で駆動される後輪２とにより支持さ
れ、ハンドル３とシート５の間は低く湾入してステップ
ボード６が敷かれ、シート５を載せるリアボディ７が比
較的大きいボリュームに設定され、その下に上記ユニッ
トスイング型エンジン４が配置されている。

【００１６】上記リアボディ７内には、前部に収納ボッ
クス８が設置され、後部に燃料タンク９等が配置され
る。収納ボックス８は、フルフェースのヘルメット１０
を横倒しにして収納する形状、容積に設定されており、
シート５は収納ボックス８および燃料タンク９を格納す
る蓋になっている。

【００１７】前記ユニットスイング型エンジン４は、例
えば４サイクル型のエンジンを備えており、そのシリン
ダ部分はシリンダ１１、シリンダヘッド１２から構成さ
れてほぼ水平に前方へ延び、その後方にクランクケース
１３が連なり、このクランクケース１３の一側には後方
へ延びるスイングケース１４が連設され、このスイング
ケース１４の最後部に後輪２が軸支されている。

【００１８】そして、クランクケース１３の前下部に設
けられた支持アーム１５がピボット１６によりフレーム
１７に上下揺動自在に軸支され、かつスイングケース１
４の後上部とフレーム１７の後部との間がリアクッショ
ンユニット１８で連結され、このリアクッションユニッ
ト１８が伸縮することによってユニットスイング型エン
ジン４の後部と後輪２が緩衝懸架されるようになってい
る。

【００１９】なお、図３に示すように、クランクケース
１３の上面に支持アーム１５ａを突設し、この支持アー
ム１５ａがピボット１６ａによりフレームに軸支される
ように構成してもよい。このようにクランクケース１３
の上下いずれにピボット１６，１６ａを配置する場合
も、ピボット１６，１６ａを収納ボックス８の下方に位
置づけることが必要である。

【００２０】ところで、スイングケース１４と反対側の
クランクシャフト端には、図示しない送風ファンが軸装
され、クランクケース１３側面にファンケーシング１９
が組み付けられている。そのエア取り入れ口２０から吸
入さた冷却風は、シリンダ１１、シリンダヘッド１２周
りを覆うカウリング２１内に送られてエンジンを強制的
に空冷する。なお、２２は点火プラグ、２３は始動用キ
ックレバーである。

【００２１】排気通路２４はシリンダヘッド１２の下面
から導出され、スイングケース１４の反対側に導かれて
からファンケーシング１９の下を後方へ延び、後輪２の
側方に配置されたマフラ２５に接続される。

【００２２】一方、吸気系は、シリンダヘッド１２の近
傍かつ収納ボックス８の下方に配置したキャブレタ２６
を基点にレイアウトされる。即ち、キャブレタ２６は例
えばベンチュリ軸心が左右方向を向くようにシリンダヘ
ッド１２の前上部に配置され、このキャブレタ２６の下
流側から延びる吸気通路２７ａはスイングケース１４の
反対側に延びてから反転してシリンダヘッド１２の上面
に導入され、キャブレタ２６の上流側から延びる吸気通
路２７ｂはスイングケース１４側でエアクリーナケース
２８に接続される。

【００２３】なお、エアクリーナケース２８は、その大
部分を占める後部ケース２９がスイングケース１４の上
方のスペースに配置されており、後部ケース２９の前部
はシリンダ１１とシリンダヘッド１２の上方および側方
のスペースにまで延設されている。なお、エアクリーナ
ケース２８（後部ケース２９）の上面２８ａ，２９ａは
キャブレタ２６の上端部とほぼ同じ高さの単純な面に形
成されている。

【００２４】この収納ボックス付スクータ型車両におい
て、前記収納ボックス８の底面８ａは、側面視（図１お
よび図３参照）で後輪２よりも前方に配置されている。
また、収納ボックス底面８ａと収納ボックス後面８ｂと
の交点には面取部８ｃが設けられている。この実施形態
では面取部８ｃがＲ面取状に形成されているが、角面取
状に形成してもよい。一方、燃料タンク９の底面９ａは
収納ボックス８の底面８ａに連なるように後上がりに傾
斜している。

【００２５】以上のように構成された収納ボックス付ス
クータ型車両は、ユニットスイング型エンジン４の揺動
中心となるピボット１６（１６ａ）が収納ボックス８の
下方に位置づけられており、収納ボックス底面８ａが後
輪２よりも前方に配置されているため、ピボット１６
（１６ａ）を軸に上下に揺動するユニットスイング型エ
ンジン４が最も上方に回動した時における後輪２の最上
部が収納ボックス底面８ａに衝突することなく収納ボッ
クス底面８ａよりも上方に来る。

【００２６】このため、後輪２との衝突を懸念せずに収
納ボックス底面８ａの高さを引き下げて収納ボックス８
の大容量化を実現でき、同時に後輪２の上下揺動量、即
ちリアクッションユニット１８の伸縮ストロークを大き
く確保して乗り心地の改善を図るとともに、シート５の
高さを低くして足付き性を良くすることができる。

【００２７】しかも、収納ボックス８の底面８ａと後面
８ｂとの交点に面取部８ｃが設けられているので、その
分収納ボックス８が後輪２に干渉しにくくなっており、
これによってさらに収納ボックス底面８ａを引き下げる
等して収納ボックス８の容量増大を図ったり、リアクッ
ションユニット１８の伸縮ストローク増大、シート５高
の引き下げ等が可能になった。

【００２８】さらに、燃料タンク９の底面９ａを収納ボ
ックス底面８ａに連なるように後上がりに傾斜させたの
で、燃料タンク底面９ａを後輪２に干渉させることなく
燃料タンク９の深さを深くして容量を大きく確保するこ
とが可能になった。

【００２９】なお、この実施形態では、スイングケース
１４の上方と、シリンダ１１、シリンダヘッド１２の上
方および側方にあるデッドスペースを利用してエアクリ
ーナケース２８（後部ケース２９）が配置されているの
で、ユニットスイング型エンジン４を全体的にコンパク
トにし、特にエンジン廻りの高さを低く抑えることがで
きる。

【００３０】したがって、この点でも収納ボックス底面
８ａとの間に余裕ができ、収納ボックス底面８ａの引き
下げによる収納ボックス８の容量増大、リアクッション
ユニット１８の伸縮ストローク増大、シート５高の引き
下げが可能になっている。そして、ユニットスイング型
エンジン全体がコンパクトにまとまるので、車体への取
着、運搬が容易になり、作業性やサービス性も向上す
る。

【００３１】以上に述べたように、本発明に係る収納ボ
ッスク付スクータ型車両においては、リアボディ上に設
けられたシート前半部の下方にキャブレタを配置し、収
納ボックスの底部の形状を後部側が前部側に比べて深底
となるように形成し、かつ収納ボックスの後輪側底部に
面取部を設けるとともに、ユニットスイング型エンジン
のピボットを前記収納ボックスの深底の下方に配置し、
さらに、前記燃料タンクの底面を上記収納ボックスの底
部に連なるように後上りに傾斜させた構成としたので、
ユニットスイング型エンジンがピボット廻りにスイング
したとき、上記ユニットスイング型エンジンと収納ボッ
クスおよび燃料タンクとの間に形成されるクリアランス
を、ピボットより前の部分とピボットより後の部分でバ
ランス良く確保できてリアクッションユニットのストロ
ーク量の確保が容易となり、ユニットスイング型エンジ
ンが最も上方に回動した時も、後輪の最上部が収納ボッ
クスの底面や燃料タンクと干渉しにくくなり、後輪との
衝突を懸念せずに収納ボックス底面の高さを引き下げた
り、燃料タンクの深さを深くし、収納ボックスや燃料タ
ンクの大容量化を図ることができ、また、ユニットスイ
ング型エンジンが最も下方にスイングした時もキャブレ
タが収納ボックスと干渉しにくく、同時に後輪の上下揺
動量、即ちリアクッションユニットの伸縮ストロークを
大きく確保して乗り心地の改善を図るとともに、シート
高を低くして足付き性を良くすることができる等の効果
を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態を示す収納ボックス付スク
ータ型車両の左側面図。

【図２】収納ボックス付スクータ型車両の平面図。

【図３】収納ボックス付スクータ型車両の右側面図。

【符号の説明】

１ 前輪 ２ 後輪 ３ ハンドル ４ ユニットスイング型エンジン ５ シート ６ ステップボード ７ リアボディ ８ 収納ボックス ８ａ 収納ボックスの底面 ８ｂ 収納ボックスの後面 ８ｃ 収納ボックスの面取部 ９ 燃料タンク ９ａ 燃料タンクの底面 １１ シリンダ １２ シリンダヘッド １３ クランクケース １４ スイングケース １６，１６ａ ピボット １８ リアクッションユニット

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 リアボディ内に収納ボックスと燃料タン
   クを前後に設置し、上記リアボディの下部に、ユニット
   スイング型エンジンがピボットにより上下揺動自在に懸
   架され、上記ユニットスイング型エンジンはほぼ水平に
   前傾するシリンダを備え、クランクケースの一側から後
   方へ延びるスイングケースの後部に後輪を軸支した収納
   ボックス付スクータ型車両において、前記リアボディ上
   に設けられたシート前半部の下方にキャブレタを配置
   し、前記収納ボックスの底部の形状を後部側が前部側に
   比べて深底となるように形成し、かつ前記収納ボックス
   の後輪側底部に面取部を設けるとともに、前記ユニット
   スイング型エンジンのピボットを前記収納ボックスの深
   底の下方に配置し、さらに、前記燃料タンクの底面を上
   記収納ボックスの底部に連なるように後上りに傾斜させ
   たことを特徴とする収納ボックス付スクータ型車両。
2. 【請求項２】 前記キャブレタをシリンダヘッド近傍で
   かつ前記収納ボックスの下方に配置する一方、前記ピボ
   ットを前記クランクケースと前記収納ボックスとの間に
   配置したことを特徴とする請求項１記載の収納ボックス
   付スクータ型車両。