JP2949020B2 - 圧延材の蛇行制御方法 - Google Patents

圧延材の蛇行制御方法

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JP2949020B2 JP6039618A JP3961894A JP2949020B2 JP 2949020 B2 JP2949020 B2 JP 2949020B2 JP 6039618 A JP6039618 A JP 6039618A JP 3961894 A JP3961894 A JP 3961894A JP 2949020 B2 JP2949020 B2 JP 2949020B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間圧延機の制御に関
し、特に圧延機を通る鋼板の蛇行抑制制御に関する。
【0002】
【従来の技術】圧延機を通過する鋼板は、鋼板のウェッ
ジ(左右の厚みの差),圧延ロ−ルの左右の剛性差,圧
延ロ−ルの左右の間隙差などに起因して、圧延ロ−ルに
対する噛み込み位置が左右方向にずれ、蛇行が生じる。
なお、ここでいう左右は、鋼板の進行方向に対して直角
な、鋼板の幅方向の一端側と他端側との位置関係を意味
している。
【0003】鋼板の蛇行量が大きい場合、鋼板が片側に
大きく位置ずれしてしぼり込みを生じ、圧延ロ−ルや入
側ガイド設備などの破損を招く。また蛇行量が比較的小
さい場合でも、鋼板上の曲りが生じた部分は次の工程で
切断して板幅を整える必要があるので、蛇行によって製
品の歩留まりが低下するのは避けられない。
【0004】そこで、例えば特公昭63−32525号
公報では、左右の圧延荷重差とその微分量に基づいて圧
延機の左右のロ−ル間間隙を自動的に調節し、蛇行を抑
制することを提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特公昭63−3252
5号公報の技術では、制御系の応答を早くするために左
右の圧延荷重差の微分量に基づいて制御を実施している
が、微分量に基づいて制御を実施する場合、ノイズに対
しても敏感に反応するので、例えば圧延荷重センサの出
力する信号にノイズが含まれていると、制御が不安定に
なりやすい。また、鋼板の蛇行量を抑制するために、左
右のロ−ル間間隙を調節すると、それによっても荷重差
が変化するので、実際の制御は非常に複雑になってしま
う。
【0006】更に、圧延荷重差を検出しレベリング量を
修正する場合の鋼板の蛇行プロセスは不安定零点を有し
ているので、制御ゲインの安定範囲が狭く、制御ゲイン
の調節が難しい。即ち、入側の板にウェッジがある場合
には、圧延材は厚みの薄い方へ蛇行するが、この場合の
圧延荷重は、圧延材の厚みの厚い方、つまり蛇行の方向
とは逆の方が大きくなり、荷重の大きい方に蛇行してい
ると仮定している。この制御系は、誤動作をするため、
安定化をすることが難しい。従って、蛇行量の抑制は非
常に難しい。
【0007】また従来の蛇行抑制制御では、鋼板のウェ
ッジや圧延機の左右の剛性差などの外乱による蛇行への
影響が考慮されていないので、外乱に対して蛇行を抑制
する能力が不充分である。
【0008】従って本発明は、検出ノイズに対して動作
が不安定になるのを防止するとともに、鋼板のウェッジ
や圧延機の左右の剛性差などの外乱に対しても、充分な
蛇行抑制を可能にすることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、鋼板を圧延する圧延機の幅方向の一端
と他端にそれぞれ設けられた圧下装置を操作して、圧延
機の幅方向の一端と他端との圧下量の差を調節して前記
鋼板の蛇行量を制御する、圧延材の蛇行制御方法におい
て:圧延機入側の鋼板板厚の幅方向一端側と他端側との
差を示す入側板ウェッジ偏差ΔHdf,圧延機の幅方向の
一端側と他端側の圧下量の差の基準値からの偏差の修正
量に加えられる外乱を示すレベリング外乱ΔSdf_ref_d
is,及び圧延機の幅方向の一端側と他端側にそれぞれ設
けられた圧延荷重検出器の出力の差に加えられる検出雑
音を示す圧延荷重差検出雑音ΔPdf_noise、を外乱入力
wとし、圧延機直下における前記鋼板の幅方向中心の、
圧延機幅方向中心位置からの距離を示す蛇行量yc,圧
延機入側の前記鋼板の中心線の傾きを示す入側板傾きy
c’,及び圧延機の幅方向の一端側と他端側の圧下量の
差の基準値からの偏差を示すレベリング量ΔSdf、を制
御量zとし、圧延機の幅方向の一端側と他端側の圧下量
の差の基準値からの偏差の修正量を示すレベリング修正
量ΔSdf_refを制御入力uとし、圧延機の幅方向の一端
側と他端側に各々設けられた圧延荷重検出器の出力の差
の基準値からの偏差を示す圧延荷重差検出量ΔPdf_sen
sorを観測量yとし、蛇行量yc,入側板傾きyc’,
レベリング量ΔSdfを状態xとし、 dx(t)/dt = Ax(t) +B1w(t) +B2u(t) z(t) = C1x(t)+D11w(t)+D12u(t) y(t) = C2x(t)+D21w(t)+D22u(t) u(s) = K(s)y(s) A,B1,B2,C1,C2,D11,D12,D21,D22:係
数行列 t:時間 s:ラプラス変換のs で表わされる状態方程式及びコントロ−ラの、外乱入力
wから制御量zに至る伝達関数GZWの最大特異値が最小
となる伝達関数K(s)をH∞制御理論に基づいて求め
て、偏差制御手段にこの伝達関数K(s)に基づく、観測
量yから制御入力uを導出する演算機能を設定し、この
偏差制御手段により、圧延荷重差検出量ΔPdf_sensor
に伝達関数K(s)を乗じて、レベリング修正量ΔSdf_re
fを算出し、その分レベリング量ΔSdfを修正する。
【0010】
【作用】本発明により計算された伝達関数K(s)が設定
された偏差制御手段は、観測量yである圧延荷重差検出
量ΔPdf_sensorに基づいて、制御入力uであるレベリ
ング修正量ΔSdf_refを算出し、レベリング量ΔSdfを
修正するので、これによって鋼板の蛇行が抑制される。
【0011】この伝達関数K(s)の算出に利用される状
態方程式には、入側板ウェッジ偏差ΔHdf,レベリング
外乱ΔSdf_ref_dis,及び圧延荷重差検出雑音ΔPdf_n
oiseが含まれているので、前記偏差制御手段は、これら
の外乱に対しても、鋼板の蛇行を抑制するような制御入
力uを算出し、レベリング量ΔSdfを修正するので、蛇
行は確実に抑制される。即ち、鋼板の板ウェッジの変
動,レベリング操作に応じた荷重差の変動,及び検出雑
音の影響を排除することができるので、従来に比べて蛇
行の発生を効果的に抑制しうる。
【0012】なお上記状態方程式において、外乱入力w
とした入側板ウェッジ偏差ΔHdf,レベリング外乱ΔS
df_ref_dis,及び圧延荷重差検出雑音ΔPdf_noise、制
御量zとした蛇行量yc,入側板傾きyc’,及びレベ
リング量ΔSdf、制御入力uとしたレベリング修正量Δ
Sdf_ref、ならびに観測量yとした圧延荷重差検出量Δ
Pdf_sensorは、各々それの基準値で除算することによ
って無次元化されたパラメ−タである。
【0013】
【実施例】本発明を実施する設備の構成例を図1に示
す。図1は、熱間圧延設備の1つの圧延スタンドについ
て、圧延される鋼板10の進行方向に対して直交する方
向から見た状態を示している。従って、鋼板10は図面
の紙面に垂直な方向に向かって搬送されながら圧延され
る。また、鋼板10の蛇行を抑制するための制御系が図
1に示されている。それ以外の制御系も実際の設備には
設けられるが、図1では省略されている。図1を参照す
ると、鋼板10は、互いに対向して配置された2つのワ
−クロ−ルWRの間に噛み込まれ圧延される。上側のワ
−クロ−ルWRの上側、および下側のワ−クロ−ルWR
の下側には、それぞれバックアップロ−ルBURが設置
されている。
【0014】ワ−クロ−ルWRの駆動軸は、伝達機構1
2を介して、駆動用の電動機11と連結されている。こ
こでは、各ロ−ルの幅方向の中央に対して、駆動力が印
加される一端側をドライブサイドと呼び、他端側をワ−
クサイドを呼ぶ。上側のバックアップロ−ルBURの駆
動軸の両端部分には、各々圧下装置13及び14が設置
されている。圧下装置13及び14を駆動することによ
り、バックアップロ−ルBURを介してワ−クロ−ルW
Rのドライブサイド及びワ−クサイドの圧延荷重を調整
し、ロ−ル間間隙をそれぞれ調整することができる。下
側のバックアップロ−ルBURの駆動軸の両端部分に
は、圧延荷重検出装置(ロ−ドセル)15及び16がそ
れぞれ設置されている。
【0015】この設備の蛇行抑制制御系について説明す
る。ワ−クサイドの圧延荷重検出装置16が検出した圧
延荷重Pwとドライブサイドの圧延荷重検出装置15が
検出した圧延荷重Pdとの差分Pdfとその基準値からの
偏差ΔPdfを、圧延荷重基準値Pで割った結果ΔPdf*
に、圧延荷重検出ノイズΔPdf_noise*が加えられたΔ
Pdf_sensor*が観測量yとしてコントロ−ラ17に入力
される。このコントロ−ラ17には、所定の伝達関数K
(s)が予め設定される。この伝達関数K(s)の設定につい
ては、後で詳細に説明する。
【0016】コントロ−ラ17が出力する操作量uは、
無次元化されたレベリング修正量であり、これにレベリ
ング量基準値hを掛けることにより、修正量ΔSdf_ref
が得られる。この修正量ΔSdf_refをロ−ルのワ−クサ
イドとドライブサイドに配分するために、1/2を掛け
る。そして(1/2×ΔSdf_ref)を圧下装置14に目
標値として印加し、(−1/2×ΔSdf_ref)を圧下装
置13に目標値として印加する。
【0017】図1に示すコントロ−ラ17の最適な伝達
関数K(s)を求めるための設計手順の概略を図2に示
す。図2を参照して設計手順を説明する。
【0018】最初のステップS21では、鋼板の蛇行プ
ロセスのモデリングと状態方程式の導出を行なう。この
内容をもう少し具体的に言うと、ステップS21aで、
ワ−クサイドとドライブサイドの各々のモデルを導出
し、ステップS21bで、前記モデルの各パラメ−タを
無次元化し、次のステップS21cで、前記モデルのワ
−クサイドとドライブサイドとの差をとり、次のステッ
プS21dで、前記モデルを示す式を整理してそれらを
状態方程式の形に表わし、最後のステップS21eで、
状態方程式から設計に必要な入出力の部分を抽出する。
【0019】続くステップS22では、上記ステップS
21で得られたモデルに設計用の重みを付け加えた拡大
系の状態方程式を導出し、次のステップS23では上記
拡大系の状態方程式をもとに、計算機を用いて公知のH
∞制御理論に基づいた計算を実行し、最適な伝達関数K
(s)を導出する。そしてこの伝達関数K(s)を、次のステ
ップS24でコントロ−ラ17に設定する。
【0020】コントロ−ラ17の実体は、例えばプロセ
スコンピュ−タによって実現される処理の一部分であ
り、その処理によって、伝達関数K(s)に従って入力y
から出力uが計算される。この処理の内容が、ステップ
S24で決定される。
【0021】この実施例では、ロ−ル等のワ−クサイド
とドライブサイドとの非対称性を考慮して、次に示す各
種要素で構成される線形圧延モデルを、蛇行現象を解析
しコントロ−ラを設計するためのモデルとして用いた。
【0022】1.圧延機モデル (a) ロ−ルネック支持部位の変位 (b) バックアップロ−ル,ワ−クロ−ル間の変位 (c) ワ−クロ−ルの弾性変形 (d) ロ−ルクラウンによる変形 (e) 力及びモ−メントの釣合式 2.圧延材モデル (a) 圧延荷重式 (b) 先進率式 (c) 出側速度式 (d) 入側速度式 3.蛇行モデル 4.蛇行センサモデル 5.スタンド間圧延材拘束モデル 6.圧下系モデル 以下、図2に示した各ステップの詳細な内容について説
明する。
【0023】S21a:ワ−クサイド,ドライブサイド
の各々のモデルの導出 (1)出側板厚式及び圧延荷重検出式の内部モデル ここでは、出側板厚式及び圧延荷重検出式を導出する。
出側板厚を示す式は圧延機内部の状態を表す変数(圧延
荷重,ロ−ル支持部の変位,ワ−クロ−ルの偏平による
変位等)を含んでいる。従って、圧延機モデル群及び圧
延荷重式よりこれらの内部変数を消去することにより出
側板厚式及びロ−ル支持部位で検出される圧延荷重を表
す圧延荷重検出式を導出する。
【0024】まず、圧延機の弾性変形に関するモデルを
導出する。このモデルは、圧延機の左右(ワ−クサイド
とドライブサイド)の相互干渉とミル剛性差を考慮した
線形モデルである。ここで用いた仮定を次に示す。
【0025】板幅内での荷重の分布は線形 左右各々の側でのロ−ル変形は、その部分での圧下力変
化に比例 圧延反力によるロ−ルのたわみは無視 このモデルで表現できる現象は次の通り。
【0026】ハウジング・チョック部の変形(左右の剛
性差を考慮)ΔhW1,ΔhD1 BURとWRの間の接触変形(左右の剛性同一)Δ
W2,ΔhD2 WRと板の接触変形(左右の剛性同一)ΔhW3,ΔhD3 WRクラウンによる変形ΔhW4,ΔhD4 (ロ−ルのたわみを荷重に関わらず一定とする:WRク
ラウンのモデリング方法を図3に示す) 従って、圧延機全体の弾性変形量Δh,ΔhDは次式
で表わされる。なおここで、各添字のWはワ−クサイド
を示し、Dはドライブサイドを示し、dfはワ−クサイ
ドとドライブサイドとの差を示す。以下も同様である。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
【数3】
【0030】次に、圧延材モデルを導出する。ここで
は、スラブ法による非線形圧延モデル(圧延荷重式,先
進率式,変形抵抗式,ロ−ル偏平式等)をある基準値の
近傍で線形化する。圧延材モデルを図4に示す。このモ
デルを圧延材左右のエッジ部に適用する。圧延荷重Δp
Db,ΔpWbは次式で表わされる。
【0031】
【数4】
【0032】(2)出側板厚式 前記第(3)式〜第(20)式の方程式系は、測定ができない
圧延機内部の中間変数を含んでいる。そこでそれらの中
間変数を消去すると、次に示す出側板厚に関する方程式
が得られる。
【0033】
【数5】
【0034】
【数6】
【0035】(3)圧延荷重検出式 中間変数の消去によって、圧下位置で検出される圧延荷
重に関する次の方程式が得られる。
【0036】
【数7】
【0037】
【数8】
【0038】
【数9】
【0039】S21b:パラメ−タの無次元化 これまでの式のパラメ−タを基準値で除することによ
り、パラメ−タを無次元化する。各基準値はそれぞれ次
のように表わす。
【0040】h:出側板厚基準値[mm] H :入
側板厚基準値[mm] b:板幅基準値(=板幅)[mm] P:圧延和荷重基準値[kgf] σb:入側張力基準値[kgf/mm2] σf:出側張力基準値
[kgf/mm2] K:変形抵抗基準値[kgf/mm2] MHD:ドライブサイドロール支持部位剛性基準値[kgf/m
m] MHW:ワークサイドロール支持部位剛性基準値 [kgf/m
m] f :先進率基準値 [−] v:圧延材出側速度基準値[mm/sec] V:圧延材入側速
度基準値[mm/sec] VR:ロール回転速度基準値 [mm/sec] また、無次元化したパラメ−タは「*」印を付けて示
す。
【0041】(1)出側板厚式
【0042】
【数10】
【0043】(2)圧延荷重検出式
【0044】
【数11】
【0045】
【数12】
【0046】(6)単スタンド時の蛇行モデル、蛇行セ
ンサモデル
【0047】
【数13】
【0048】(7)スタンド間圧延材拘束モデル
【0049】
【数14】
【0050】S21c:ワ−クサイドとドライブサイド
の差(左右差)に関する方程式の導出 (1)出側板厚差式
【0051】
【数15】
【0052】
【数16】
【0053】(2)圧延荷重差検出式
【0054】
【数17】
【0055】S21d:状態方程式の構築 上記左右の差に関する方程式系を状態方程式の形で整理
する。そのための準備として、先進率差fdf及び出側速
度差vdfを消去する。
【0056】前記(67)式,(68)式,(69)式から次
の(71)式を得る。また、(71)式に前記(65)式を代
入して次の(72)式を得る。更に前記(52)〜(61)か
ら次の(73)式及び(74)式を得る。そして、(74)式
に(72)式及び(62)式を代入して次の(75)式及び
(76)式を得る。更に、(66)式に(65)式を代入する
と次の(77)式が得られる。また(77)式に(62)式を
代入すると、次の(78)式が得られる。
【0057】
【数18】
【0058】
【数19】
【0059】以上の式に外乱及び検出雑音に関する項を
追加したうえで、それを整理すると、次の(79)式及び
(80)式に示す状態方程式が得られる。
【0060】
【数20】
【0061】
【数21】
【0062】
【数22】
【0063】圧延機の弾性変形の計算方法
【0064】
【数23】
【0065】S21e:状態方程式から設計に必要な部
分を抽出する。今回の設計では、プラントを次の状態方
程式で表わす。
【0066】
【数24】
【0067】S22:前記(90)式及び(91)式で表わ
されるプラントモデルに基づいて、図7に示すような一
般化プラント、即ち拡大系を考える。この拡大系の状態
方程式は、次式で表わされる。
【0068】
【数25】
【0069】S23:ここで、計算機を用い、上記(9
2)式,(93)式,(94)式で示される状態方程式に公
知のH∞制御理論を適用し、計算により、最適なコント
ロ−ラの伝達関数K(s)を求める。この実施例では、計
算処理に市販の計算プログラムを用いた。各係数行列A
v,Bv,Cv,Dv,At,Bt,Ct及びDtを次
の(97)式の通りに定め、重みを(98)式の通りに定め
て計算を実行した結果、次の(99)式の結果が得られ
た。
【0070】
【数26】
【0071】S24:求められた上記伝達関数K(s)を
図1のコントロ−ラ17に設定する。これによって、最
適な制御が実行され、鋼板の蛇行が抑制される。
【0072】伝達関数K(s)が設定されたコントロ−ラ
17を設けた場合と、従来のPD制御器で制御する場合
について、それらの応答特性を計算機のシミュレ−ショ
ンにより求めた。具体的には、実際に稼働している熱間
圧延設備の7号スタンド(最終スタンド)を図1に示す
制御系で制御する場合を想定し、7号スタンドの入側
に、ステップ状の板ウェッジ外乱(大きさは基準値の5
%)が時刻0秒に入ったものと仮定してシミュレ−ショ
ンを行なった。その結果を図8に示す。図8において、
横軸が時間を示し、縦軸が鋼板の幅方向の変位(蛇行
量)を示している。また、実線がコントロ−ラ17を用
いた特性であり、点線がPD制御器を用いた特性を示し
ている。この結果から、板ウェッジ外乱等に対しても、
鋼板の蛇行を充分に抑制できることが分かる。
【0073】なお、前記「数24」に示したα**の数値
例は、スラブ法を用いた非線形モデルを、次の表1に示
す圧延スケジュ−ルを基準値として線形化し、∂P/∂
hなどの影響係数を求めてから計算することにより得ら
れる。
【0074】
【表1】
【0075】また、前記「数26」に示した重みについ
ては、適当な値を設定した後、その条件で得られる外乱
抑制能力や検出雑音抑制能力をシミュレ−ションにより
確認し、期待した結果が得られなければ、設定した重み
を修正して再びシミュレ−ションを実施し、期待した結
果が得られるまでこの操作を繰り返すことによって決定
される。例えば、行列αは蛇行量,圧延材の傾き,レベ
リング量の各々の重みの要素を含んでいるので、行列α
の各要素を調整することにより、蛇行量の抑制の度合
い,圧延材の傾きの抑制の度合い,及びレベリング量の
抑制の度合いを必要に応じて変えることができる。
【0076】
【発明の効果】以上のとおり、本発明により計算された
伝達関数K(s)が設定された偏差制御手段は、観測量y
である圧延荷重差検出量ΔPdf_sensorに基づいて、制
御入力uであるレベリング修正量ΔSdf_refを算出し、
レベリング量ΔSdfを修正するので、これによって鋼板
の蛇行が抑制される。また、この伝達関数K(s)の算出
に利用される状態方程式には、入側板ウェッジ偏差ΔH
df,レベリング外乱ΔSdf_ref_dis,及び圧延荷重差検
出雑音ΔPdf_noiseが含まれているので、前記偏差制御
手段は、これらの外乱に対しても、鋼板の蛇行を抑制す
るような制御入力uを算出し、レベリング量ΔSdfを修
正するので、蛇行は確実に抑制される。即ち、鋼板の板
ウェッジの変動,レベリング操作に応じた荷重差の変
動,及び検出雑音の影響を排除することができるので、
従来に比べて蛇行の発生を効果的に抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する一形式の圧延設備の主要部
分を示すブロック図である。
【図2】 図1のコントロ−ラ17を設計する手順を示
すフロ−チャ−トである。
【図3】 ロ−ルクラウンによる変形モデルを示す模式
図である。
【図4】 線形圧延材モデルを示す模式図である。
【図5】 蛇行センサモデルにおける座標を示す模式図
である。
【図6】 両端固定梁によるスタンド間圧延材拘束モデ
ルを示す模式図である。
【図7】 一般化プラントの制御系を示すブロック図で
ある。
【図8】 シミュレ−ションの結果を示すタイムチャ−
トである。
【符号の説明】
10:鋼板 11:電動機 12:伝達機構 13,14:圧下装置 15,16:圧延荷重検出装置 17:コントロ−ラ WR:ワ−クロ−ル BUR:バックアップロ−ル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山 野 寺 敬 君津市君津1番地 新日本製鐵株式会社 君津製鐵所内 (72)発明者 原 川 哲 美 君津市君津1番地 新日本製鐵株式会社 君津製鐵所内 (56)参考文献 特開 平6−297017(JP,A) 特開 平3−90207(JP,A) 特開 平1−154812(JP,A) 特開 昭63−93417(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21B 37/68

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板を圧延する圧延機の幅方向の一端と
    他端にそれぞれ設けられた圧下装置を操作して、圧延機
    の幅方向の一端と他端との圧下量の差を調節して前記鋼
    板の蛇行量を制御する、圧延材の蛇行制御方法におい
    て:圧延機入側の鋼板板厚の幅方向一端側と他端側との
    差を示す入側板ウェッジ偏差ΔHdf,圧延機の幅方向の
    一端側と他端側の圧下量の差の基準値からの偏差の修正
    量に加えられる外乱を示すレベリング外乱ΔSdf_ref_d
    is,及び圧延機の幅方向の一端側と他端側にそれぞれ設
    けられた圧延荷重検出器の出力の差に加えられる検出雑
    音を示す圧延荷重差検出雑音ΔPdf_noise、を外乱入力
    wとし、 圧延機直下における前記鋼板の幅方向中心の、圧延機幅
    方向中心位置からの距離を示す蛇行量yc,圧延機入側
    の前記鋼板の中心線の傾きを示す入側板傾きyc’,及
    び圧延機の幅方向の一端側と他端側の圧下量の差の基準
    値からの偏差を示すレベリング量ΔSdf、を制御量zと
    し、 圧延機の幅方向の一端側と他端側の圧下量の差の基準値
    からの偏差の修正量を示すレベリング修正量ΔSdf_ref
    を制御入力uとし、 圧延機の幅方向の一端側と他端側に各々設けられた圧延
    荷重検出器の出力の差の基準値からの偏差を示す圧延荷
    重差検出量ΔPdf_sensorを観測量yとし、 蛇行量yc,入側板傾きyc’,レベリング量ΔSdfを
    状態xとし、 dx(t)/dt = Ax(t) +B1w(t) +B2u(t) z(t) = C1x(t)+D11w(t)+D12u(t) y(t) = C2x(t)+D21w(t)+D22u(t) u(s) = K(s)y(s) A,B1,B2,C1,C2,D11,D12,D21,D22:係
    数行列 t:時間 s:ラプラス変換のs で表わされる状態方程式及びコントロ−ラの、外乱入力
    wから制御量zに至る伝達関数GZWの最大特異値が最小
    となる伝達関数K(s)をH∞制御理論に基づいて求め
    て、偏差制御手段にこの伝達関数K(s)に基づく、観測
    量yから制御入力uを導出する演算機能を設定し、この
    偏差制御手段により、圧延荷重差検出量ΔPdf_sensor
    に伝達関数K(s)を乗じて、レベリング修正量ΔSdf_re
    fを算出し、その分レベリング量ΔSdfを修正する、こ
    とを特徴とする圧延材の蛇行制御方法。
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