JP2926107B2 - 制振橋梁 - Google Patents

制振橋梁

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JP2926107B2 JP30176190A JP30176190A JP2926107B2 JP 2926107 B2 JP2926107 B2 JP 2926107B2 JP 30176190 A JP30176190 A JP 30176190A JP 30176190 A JP30176190 A JP 30176190A JP 2926107 B2 JP2926107 B2 JP 2926107B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、地震、風、列車や自動車の通過等により
橋梁に励起される振動、特に橋桁に励起される振動を抑
制することができる橋梁に関するものである。
[従来の技術] 橋梁は、地震や風等の水平力・上下力に対して安全
で、かつ、通行する自動車や列車のような活荷重に対し
ても安全で通行に支障を来さない様な応答をすべく設計
する必要がある。
従来の橋梁においては、上述した様な外力に対し橋桁や
主塔等の構造体としての剛性によってただ単に耐える
(=変形が過大にならず、生ずる力が限界値以下であ
る)よう設計されてきた。その結果、橋梁の最大応答は
椅梁自体の減衰に強く依存し、その値は高々1〜2%程
度である。
近年、景観に優れた長大橋梁としての吊橋や斜張橋が
脚光を浴びているが、これらの橋梁においては作用する
活荷重を広く分布させるために剛性が大きく耐風安定性
に優れた構造であることが必要とされている。
[発明が解決しようとする課題] ところで、上記の吊橋や斜張橋等の場合では、構造上
橋自体の重量を極力軽くし不必要な重量の増加を押さえ
るために高張力鋼を用いて剛性の大きな横造とし、強風
による自励振動や活荷重による上下振動を抑制すること
が非常に重要とされている。特に、長大橋梁の構造の特
殊性として慣性が大きく振動周期が非常に緩慢であるこ
とから、地震動や強風等により振動が励起された場合に
猛烈なねじれ振動を起こす危険性があり、励起される振
動に対する安定性・安全牲が非常に大きな問題になって
いる。
一般的に知られている制振橋梁としては、吊橋の主塔
に同調質量ダンパ(TMD)を搭載したものがあるが、こ
れは風により前記主塔に励起される渦励振を減衰するも
ので橋桁の振動抑制を主目的とするものではない。ま
た、吊橋等からなる橋梁のワイヤー(引張材)に減衰装
置を取り付けた橋梁も提案されているが、これはワイヤ
ーに励起される振動を抑制するためのもので、橋桁の振
動の抑制を主目的としたものではない。このように、橋
桁の振動の抑制を主目的とした方法はいまだに提案され
ていないのが現状である。
この発明は上記の事情に鑑みてなされたものであっ
て、橋梁に励起される振動、特に橋桁に励起される振動
を抑制することができ、保守管理が容易、コストダウン
可能等の様々な利点を有する制振橋梁を提供することに
ある。
[課題を解決するための手段] 請求項1の発明は、主塔により橋桁を支持してなる橋
梁に適用されて、前記主塔に対する前記橋桁の相対的な
振動を減衰装置により減衰させる構成の制振橋梁であっ
て、前記橋桁が振動した際に作動してその振動を減衰せ
しめる減衰装置を前記橋桁もしくは前記主塔に対して設
置するとともに、前記橋桁と前記主塔との間にワイヤー
を緊張状態で張設して該ワイヤーの中間部もしくは一端
部を前記減衰装置に連結することにより、前記橋桁の振
動を該ワイヤーを介して前記減衰装置に伝達して該減衰
装置を作動せしめる構成とし、前記減衰装置は、いずれ
も円板に複数の突板を同心円状に設けてなる静止部と回
動部とを相対回転可能に同軸的に組み合わせて双方の突
板間に減衰材を充填した構成とされ、前記静止部を前記
橋桁もしくは前記主塔に対して固定するとともに、前記
回動部には該回動部と一体に回転する滑車を取り付け、
該滑車に前記ワイヤーをスリップ不能に巻架することで
該ワイヤーを前記減衰装置に連結してなるものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ワ
イヤーの中間部を前記滑車に巻架し、該ワイヤーの両端
側を少なくとも1箇所において互いに交差させるように
斜めに張設してなるものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明におい
て、前記減衰材として粘弾性体を用いたものである。
[作用] 本発明の制振橋梁では、地震、風、列車や自動車の通
過等により橋桁に振動(主塔に対する相対的な振動)が
励起された場合、その振動がワイヤーを介して減衰装置
に伝達され、その減衰装置が作動して橋桁の振動を抑制
し速やかに減衰させる。減衰装置は、橋桁もしくは主塔
に対して固定されている静止部と、ワイヤーが滑車を介
して巻架されている回動部との間に粘性体や粘弾性体等
の減衰材が充填された構成であるので、橋桁の振動時に
はワイヤーおよび滑車を介して回動部が静止部に対して
相対回転し、それらの間に充填されている減衰材の変形
により振動エネルギーを吸収して振動を減衰させる。
また、ワイヤーの中間部を滑車に巻架してそのワイヤ
ーの両端側を少なくとも1箇所において互いに交差させ
るように斜めに張設することにより、橋桁が振動あるい
は揺動した際にはワイヤーの一端側が引張側となるとと
もに他端側は圧縮側となってワイヤー全体がその張設さ
れている方向へずれるように移動し、したがってワイヤ
ーが弛んだり過大な張力がかかることを防止でき、減衰
装置への振動伝達が効率的かつ確実になされる。
さらに、減衰装置における減衰材として粘弾性体を用
いれば、その剪断変形により自ずと大きな減衰力が得ら
れる。
[第1実施例] 第1図〜第4図は本発明の第1実施例を示す図であ
る。これらの図において符号1は本第1実施例の制振橋
梁である。
この制振橋梁1は、橋梁2と、当該橋梁2に架け渡さ
れた一連の複数のワイヤー(可撓性引張材)3,3,…と、
これらのワイヤー3各々の中央部3aに介在された減衰装
置4とから概略構成されるものである。
橋梁2は、例えば第1図に示す様に、橋桁を2径間以
上にわたって連続して架け渡した連続橋であって、この
橋桁の上に橋床が形成され、この橋床の上に道路や鉄道
線路が形成された上路橋である。
この橋梁2は、一対の橋台(図示せず)と、これらの
橋台間に設けられた複数の橋脚11,11,……と、これらの
橋脚11,11,……各々に立設された門型の支柱12,12,……
と、これら支柱12,12間及び支柱12と橋台間それぞれに
架け渡されたトラス構造の橋桁13,13,……と、橋桁13の
上に形成された鉄筋コンクリート版もしくは鋼床版等か
らなる橋床14とから構成されている。そして、この橋床
14の上には道路や鉄道線路が形成されている。上記の橋
脚11と支柱12とは橋桁13を支持する主塔を構成してい
る。
ワイヤー3は、橋梁2の長手方向に沿った両端部2a,2
aそれぞれに架け渡され緊張された一連の制振用のワイ
ヤーで、このワイヤー3が弾性変形することでワイヤー
3の両端部3b,3cとワイヤー中央部3a間に生じる相対変
位のうち幾分かは吸収される。
このワイヤー3は、第1図及び第2図に示すように、
中央部3aが橋桁13の端部13a中央に設けられた減衰装置
4の滑車20に2〜3重に巻架され、両端部3b,3cがそれ
ぞれ橋脚11の上面11a端部および支柱12の頂部12a(つま
り主塔の頂部)に緊張された状態で斜張され結合ピン等
の固定具で固定されている。これら一連のワイヤー3は
支柱12右側および左側両方から斜張されている。
減衰装置4a,4bは、ワイヤー3の両端部3b,3cとワイヤ
ー中央部3a問に生じる相対変位を検知し、それに対抗す
る減衰力を発生することにより振動エネルギーを吸収し
減衰させるものである。
これらの滅衰装置4a,4bは、第3図に示すように橋桁1
3の端部13a中央に固定され円板21の裏面21aに複数の突
板22,22,…が同心円状に形成された静止部23と、この静
止部23に同軸的に配置され円板24の表面24aに複数の突
板25,25,…同心円状に形成された回動部26と、前記静止
部23と回動部26との間の空隙郡に充填された減衰材とし
てのゴム状物質からなる粘性体27と、前記回動部26に同
軸的に一体に取り付けられた上述した滑車20とから略構
成されている。そして、静止部23の裏面21aと回動部26
の表面24aとは対向するように配置され、突板22,22,…
のそれぞれの面間に突板25,25,…が位置するように静止
部23と回動部26とが近接されており、回動部26は静止部
23に対して回動自在である。また、上記の滑車20はワイ
ヤー3の移動量に応じて回動され、滑車20に一体に取り
付けられた回動部26は滑車20と同一方向に同一速度で回
動される。なお、減衰装置4aは橋脚11と支柱12の右側に
張られたワイヤー3に取り付けられ、減衰装置4bは同じ
く橋脚11と支柱12の左側に張られたワイヤー3に取り付
けられる。
上記のように構成された制振橋梁1の作用について説
明する。
地震、風、列車や自動車の通過等により制振橋梁1に
上下振動が発生した場合、橋桁13が湾曲することにより
橋桁13の端部13a中央と橋脚11の上面11a端部および支柱
12の頂郡12aとの間に相対移動が生じる。ワイヤー3
は、減衰装置4a(4b)に生ずる減衰力に等しい発生軸力
に伴う弾性変形をのぞき空間に固定されているに等しい
ので橋桁13の端部13a中央が上下に振動することにより
滑車20がこの橋桁13の端部13a中央の移動量に応じて回
動し、滑車20に一体に取り付けられた回動部26が滑車20
と同一方向に同一角速度で回動する。この回動部26と静
止部23との相対移動により粘性体27が変形し熱エネルギ
ーを発生する。この粘性体27が橋梁2に励起された振動
エネルギーを吸収し熱エネルギーとして消費することに
より橋梁2の振動を抑制する。
なお、減衰装置4a(4b)に減衰力が発生すればそれに
伴いワイヤー張力が増加しワイヤー3は弾性変形する。
この弾性変形は、橋桁13に生ずる上下変位を減衰装置4a
(4b)の回転運動に変換する効率を低下させる原因とな
るが、ワイヤー3の剛牲を充分大きくとれば実際上無視
できる。
以上説明した様に、制振橋梁1は、橋梁2と、当該橋
梁2に架け渡された一連の複数のワイヤー3,3,…と、こ
れらのワイヤー3各々に介在された滅衰装置4とから構
成したので、ワイヤー3及び減衰装置4の粘性体27が地
震、風、列車や自動車の通過等により制振橋梁1に発生
した振動、特に橋桁に発生した上下振動のエネルギーを
効果的に吸収し減衰させることができ、したがって、橋
梁2に発生する振動を効果的に抑制することができる。
また、橋梁2にワイヤー3と減衰装置4とを取り付けれ
ばよいので、橋梁2に簡単に滅衰を付加することがで
き、一般の様々な形状の橋梁への適用が容易となり、凡
用性に優れ、設計上何等問題を生じない。また、ワイヤ
ー3や減衰装置4の形状、粘性体27の充填量等を変える
ことにより減衰能の調整が可能となり、最適な減衰を得
ることができる。
なお、上記減衰装置4はストロークが大きく左右両方
向とも同一の性能を有するものであればよく、上記実施
例に限定されることなく種々の変更が可能である。例え
ば、減衰装置4における減衰材としては上記の粘性体27
の代わりに粘弾性体、高減衰ゴム等を用いても同様の作
用・効果を得ることができる。特に、減衰材として粘弾
性体を用いれば剪断変形により大きな減衰力が得られ、
減衰装置を小型化できる利点がある。
[第2実施例] 第5図及び第6図はこの発明の第2実施例を示す図で
ある。これらの図において、符号31は本第2実施例の制
振橋梁である。
この制振橋梁31は、橋梁32と、当該橋梁32に架け渡さ
れた一連の複数の制振用ワイヤー(可撓性引張材)33,3
3,…と、これらの制振用ワイヤー33各々の一端部に介在
された減衰装置4とから概略構成されるものである。な
お、この減衰装置4は上述した第1実施例の減衰装置4
と全く同一のものであり、この減衰装置4については説
明を省略する。
橋梁32は、例えば1面吊りの2径間連続斜張橋であ
る。
この橋梁32は、一対の橋台(図示せず)と、これらの
橋台間に設けられた橋脚35と、この橋脚35上の中央部に
立設された主塔36と、主塔36と橋台間それぞれに架け渡
された鉄筋コンクリート横造の橋桁37,37と、前記主塔3
6の上部位置から橋桁37,37それぞれに1面吊り4段のマ
ルチファン形式で斜張された主ワイヤー(引張材)38,3
8,……と、橋桁37,37の上に形成された鉄筋コンクリー
ト版もしくは鋼床版等からなる橋床39とから構成されて
いる。そして、この橋床39の上には道路が形成されてい
る。
制振用ワイヤー33は、主ワイヤー38,38,…に近接かつ
平行して主塔36の上部位置から橋桁37,37それぞれに1
面吊り4段のマルチファン形式で斜張されたもので、こ
の制振用ワイヤー33が弾性変形することで該制振用ワイ
ヤー33の両端部間の相対変位のうち幾分かを吸収するも
のである。
この制振用ワイヤー33は、一端部33aが橋桁37の中央
部37aに設けられた制振装置4の滑車20に2〜3重に巻
架されて橋桁37の中央部37aに緊張された状態で固定さ
れ、他端部33bが主塔36の上部位置に固定されている。
固定には結合ピン等の固定具が用いられる。
上記のように構成された制振橋梁31の作用について説
明する。
地震、風、列車や自動車の通過等により制振橋梁31に
上下振動が発生した場合、橋桁37が湾曲することにより
主塔36と橋桁37との間に相対移動が生じる。制振用ワイ
ヤー33は、この相対移動により軸線方向に弾性変形し、
橋梁31に励起された相対移動量の一部を吸収する。ま
た、この制振用ワイヤー33が残りの相対移動量だけ滑車
20を引っ張ることにより滑車20がこの制振用ワイヤー33
の移動量に応じて回動し、この回動部26と静止部23との
相対移動により粘性体27が橋梁32に励起された振動エネ
ルギーを吸収し熱エネルギーとして消費することにより
橋梁32の振動を抑制する。
弾性変形により吸収される相対移動量は、制振用ワイ
ヤー33の剛性を充分大きくとれば実際上無視できるほど
小さくできる。
以上説明した様に、制振橋梁31は、橋梁32と、当該橋
梁32に架け渡された一連の複数の制振用ワイヤー33,33,
…と、これらの制振用ワイヤー33の一端部33aに介在さ
れた減衰装置4とから構成したので、制振用ワイヤー33
及び減衰装置4の粘性体27が地震、風、列車や自動車の
通過等により制振橋梁31に発生した振動、特に橋桁に発
生した上下振動のエネルギーを効果的に吸収し減衰させ
ることができ、したがって、橋梁32に発生する振動を効
果的に抑制することができる。また、橋梁32に制振用ワ
イヤー33と減衰装置4とを取り付ければよいので、橋梁
32に簡単に減衰を付加することができ、一般の吊橋や斜
張橋への適用が容易となり、凡用性に優れ、設計上何等
問題を生じない。また、制振用ワイヤー33や減衰装置4
の形状、粘性体27の充填量等を変えることにより滅衰能
の調整が可能となり、最適な減衰を得ることができる。
[第3実施例] 第7図ないし第10図はこの発明の第3実施例を示す図
である。これらの図において、符号41は本第3実施例の
制振橋梁である。
この制振橋梁41は、橋梁42と、当該橋梁42に架け渡さ
れた一連の複数の制振用ワイヤー(可撓性引張材)43,4
3,…と、これらの制振用ワイヤー43各々の中央部43aに
介在された減衰装置4とから概略構成されるものであ
る。なお、この減衰装置4は上述した第1実施例及び第
2実施例の減衰装置4と全く同一のものであり、この減
衰装置4については説明を省略する。
橋梁42は、第7図に示す様にトラスを橋桁(補剛桁)
とする2面吊りの吊橋である。
この橋梁42は、一対の橋台45,45と、これらの橋台45,
45間に設けられた一対の橋脚46,46と、これらの橋脚46,
46間に立設された主塔47,47と、橋台45と主塔47との間
及び主塔47,47問に架け渡された鉄筋コンクリート構造
の橋桁48と、橋台45と主塔47との聞及び主塔47,47間に
懸垂された主ワイヤー(主引張材)51,51と、橋桁48を
主ワイヤー51に吊るす複数の吊ワイヤー(吊引張材)5
2,52,…と、橋桁48上に形成された鉄筋コンクリート版
もしくは鋼床版等からなる橋床53とから構成されてい
る。そして、この橋床53の上には道路が形成されてい
る。なお、上記の橋脚46は主塔47の基部をなす支持構造
物であり、本例においてはその橋脚46(つまり主塔47の
基部)に対して減衰装置4を設置している。
制振用ワイヤー43は、第8図に示すように、減衰装置
4を挟んで一方側半分と他方側半分とが橋梁42の橋脚46
と橋桁48との間の1箇所において交差するように橋梁42
に斜張したもので、この制振用ワイヤー43が弾性変形す
ることで該制振用ワイヤー43の両端部間の相対変位のう
ち幾分かを吸収するものである。
この制振用ワイヤー43は、一端部43bが橋桁48の側部4
8aに固定され、該側部48aからこの側部48aと反対側の塔
部47aの下側端部に取り付けられた導入部滑車55まで斜
張され、また、他端部43cが橋桁48の側部48bに固定さ
れ、該側部48bからこの側部48bと反対側の塔部47bの下
側端部に取り付けられた導入部滑車55まで斜張され、こ
れらの導入部滑車55,55から減衰装置4までそれぞれ水
平に緊張された状態で架け渡されている。固定には結合
ピン等の固定具が用いられる。
上記のように構成された制振橋梁41の作用について説
明する。
地震、風、列車や自動車の通過等により制振橋梁41に
振動が発生した場合、橋桁48が湾曲もしくは揺動するこ
とにより橋脚46と橋桁48との間に相対移動が生じる。こ
の相対移動は橋桁48の両側部48a,48bが対称もしくは非
対称に湾曲もしくは揺動することにより多様かつ複雑な
モードの振動となる。制振用ワイヤー43は、この相対移
動により軸線方向に弾性変形し、橋梁41に励起された相
対移動量の一部を吸収する。また、この制振相ワイヤー
43が弾性変形で吸収された残りの相対移動量だけ移動す
ることにより減衰装置4の滑車20がこの制振用ワイヤー
43の移動量に応じて回動し、この回動部26と静止部23と
の相対移動により粘性体27が橋梁42に励起された振動エ
ネルギーを吸収し熱エネルギーとして消費することによ
り橋梁42の振動を抑制する。
なお、制振用ワイヤー43の弾性変形で吸収される相対
移動量は、制振用ワイヤー43の剛性を充分大きくとれば
実際、無視できるほど小さくできる。
次に、制振橋梁41の作動原理について第11図ないし第
13図を用いて説明する。
第11図は制振橋梁41を基に作成した制振橋梁61の概略
構成図である。
制振用ワイヤー43は、減衰装置4を挟んで一方側半分
と他方側半分とが橋梁42の橋脚46と橋桁48との間の1箇
所において交差するように橋梁42に斜張したものであ
る。また、制振用ワイヤー(可撓性引張材)62は、主塔
47上部に設けられた減衰装置4を挟んで一方側半分と他
方側半分とが主塔47上部と橋桁48との間の1箇所におい
て交差するように橋梁42に斜張したものである。これら
の制振用ワイヤー43,62,…はそれぞれ一対の導入部滑車
55,55に架け渡され、中央部が減衰装置4に巻架されて
いる。
なお、第12図及び第13図においては、理解を容易にす
るために減衰装置4を1台、制振用ワイヤー43を1本と
して構成を簡略化している。また、図中、太い矢印は力
の働く方向を示し、細い矢印はワイヤーの移動方向を示
す。
今、制振橋梁61が、横からの風力を受けて橋桁48が水
平に振動し、ある瞬間に釣り合い位置(第12図において
破線で示す位置)から第12図における実線で示す位置に
変位したとする。この結果、制振橋梁61の右上端部(橋
桁48の右側部)と左下端部(橋脚46の左側部)の間の相
対距離が増大し、よって右上端部から左下端部まで斜張
した制振用ワイヤー43は引っ張られ、その変位は導入部
滑車55に架け渡されたワイヤー(以下、「引張側ワイヤ
ー」とする。)43aにより減衰装置4に伝えられる。引
張側ワイヤー43aはその張力により弾性変形し、この引
張側ワイヤー43aを固定する橋桁48の固定端63と導入部
滑車55との間の相対変位のうち幾分かを吸収するが、当
該変位の大部分は減衰装置4に対する入力となる。減衰
装置4は入力変位もしくは入力速度に比例した減衰力を
発生し、制振用ワイヤー43の張力と釣り合う。こうして
制振橋梁61の右方向への変形(第12図において実線で示
す変形。なお、破線は釣り合い位置を示している。)に
対し、制振用ワイヤー43と減衰装置4によってその変形
を押さえる方向に力が発生し、当該力が制振橋梁61に作
用する。一方、制振橋梁61の左上端部(橋桁48の左側
部)と右下端部(橋脚46の右側部)の間の相対距離は減
少するので、減衰装置4から導入部滑車55を経て反対側
の橋桁48の固定端64に至る部分のワイヤー(以下、「圧
縮側ワイヤー」とする。)43bには大きな張力は働か
ず、ただ引張側ワイヤー43aに引かれるまま、たるみを
生ずることなく移動する。
反対に、次の瞬間には水平に左方向に変形したとする
と、制振橋梁61の左上端部と右下端部の間の相対距離が
増大し、よって左上端部に設けた固定端64から右下端部
方向に斜張された制振用ワイヤー43は引っ張られて引張
側ワイヤー43aとなり、その変位は導入部滑車55を経て
減衰装置4に伝えられ、減衰装置4は入力変位もしくは
入力速度に比例した減衰力を発生し、制振用ワイヤー43
の張力と釣り合う。こうして制振橋梁61の左方向への変
形に対し、右方向への振動抑制力が発生する。一方、制
振橋梁61の右上端部の固定端63から左下端部方向に斜張
された部分は圧縮側ワイヤー43bとなり、たるみを生ず
ることなく移動する。
あるいは第13図に示すように、横風により橋桁48の上
下を通過する空気がカルマン渦を発生させ、橋桁48が上
下にロッキング振動している場合にも、全く同一の原理
が適用される。すなわち、上方に変位した側に固定され
た制振用ワイヤー43には引張力が生じ引張側ワイヤー43
aとなり、減衰装置4においてエネルギー吸収がなされ
る。一方、制板橋梁61の左上端部の固定端64から右下端
部方向に斜張された部分は圧縮側ワイヤー43bとなり、
たるみを生ずることなく移動する。
以上詳細に説明した様に、制振橋梁41は、橋梁42と、
当該橋梁42に架け渡された一連の複数の制振用ワイヤー
43,43,…と、これらの制振用ワイヤー43各々の中央部43
aに介在された減衰装置4とから構成したので、制振用
ワイヤー43及び減衰装置4の粘性体27が地震、風、列車
や自動車の通過等により制振橋梁41に発生した振動、特
に橋桁に発生した上下振動や横揺れ等の様々な振動のエ
ネルギーを効果的に吸収し減衰させることができ、した
がって、橋梁42に発生する振動を効果的に抑制すること
ができる。また、制振用ワイヤー43を交差させることと
したので、圧縮時にこの制振用ワイヤー43にたるみを生
じさせないようにすることができ、例えば、履歴ダンパ
を用いたときのように残留変形が生ずるたび毎にその分
だけ釣合い点が移動し減衰装置の作動しない領域が拡大
するということもなくなる。また、橋梁42に制振用ワイ
ヤー43と減衰装置4とを取り付ければよいので、橋梁42
に簡単に減衰を付加することができ、一般の吊橋や斜張
橋への適用が容易となり、凡用性に優れ、設計上何等問
題を生じない。また、制振用ワイヤー43や減衰装置4の
形状、粘性体27の充填量等を変えることにより減衰能の
調整が可能となり、最適な減衰を得ることができる。
第14図ないし第16図はこの発明の請求項3記載の制振
橋梁の変形実施例を示す図である。これらの図におい
て、上記の制振橋梁41と異なる構成について説明する。
この制振橋梁71は、橋梁42と、当該橋梁42に架け渡さ
れた一連の複数の制振用ワイヤー(可撓性引張材)72,7
2,…と、これらの制振用ワイヤー73各々に介在された複
数の減衰装置4,4とから概略構成されるものである。
制振相ワイヤー72は、第15図に示すように、一端部72
aが橋桁48の側部48aに固定され、該側部48aからこの側
部48aと反対側の塔部47aの上部に取り付けられた減衰装
置4まで斜張され、また、他端部72bが橋桁48の側部48b
に固定され、該側部48bからこの側部48bと反対側の塔部
47bの上部に取り付けられた減衰装置4まで斜張され、
これらの減衰装置4,4間は水平に緊張された状態で架け
渡されている。
上記構成の制振橋梁71は、上記実施例の制振橋梁41に
おいて制振用ワイヤー43を橋脚46の上面46a中央部に固
定された減衰装置4に巻架する代わりに、主塔47の塔部
47a,47bの上部にそれぞれ取り付けられた減衰装置4,4に
巻架する構成としたものであり、この構成以外上記実施
例の制振橋梁41と全く同一である。
この変形実施例においても、上記実施例の制振橋梁41
と全く同様の作用・効果を奏することができる。
[発明の効果] 以上のように、本発明の制振橋梁は、橋桁が振動した
際に作動してその振動を減衰せしめる減衰装置を橋桁も
しくは主塔に対して設置するとともに、橋桁と主塔との
間にワイヤーを緊張状態で張設してそのワイヤーの中間
部もしくは一端部を減衰装置に連結することにより、橋
桁の振動を該ワイヤーを介して減衰装置に伝達してその
減衰装置を作動せしめる構成であるので、地震、風、列
車や自動車の通過により橋桁に振動が励起された場合、
その振動がワイヤーを介して減衰装置に伝達され、その
減衰装置により振動を効果的に吸収し減衰させることが
できる。また、本発明の制振橋梁において用いる減衰装
置は、橋桁もしくは主塔に対して固定されている静止部
と、ワイヤーが滑車を介して巻架されている回動部との
間に粘性体や粘弾性体等の減衰材を充填した構成である
ので、橋桁の振動時にはワイヤーおよび滑車を介して回
動部が静止部に対して相対回転し、それらの間に充填さ
れている減衰材の変形により振動エネルギーを吸収して
振動を効果的に減衰させることができる。
そして、本発明は、制振対象の橋梁に対してワイヤー
と減衰装置を設置するのみで簡単に制振機能を付加する
ことができるので、主塔により橋桁を支持する形態の橋
梁全般への適用が可能であるし、ワイヤーや減衰装置の
形状や仕様を変更することで減衰性能を最適となるよう
に容易に調整することができ、しかも保守管理が容易で
あり、建設コストの点でも有利である。
また、ワイヤーの中間部を滑車に巻架してそのワイヤ
ーの両端側を少なくとも1箇所において互いに交差させ
るように斜めに張設する構成とすれば、橋桁が振動ある
いは揺勤した際にはワイヤーの一端側が引張側となると
ともに他端側は圧縮側となってワイヤー全体がその張設
されている方向へずれるように移動し、したがってワイ
ヤーが弛んだり過大な張力がかかることを防止でき、減
衰装置への振動伝達が効率的かつ確実になされる利点が
ある。
さらに、減衰装置における減衰材として粘弾性体を用
いれば、その剪断変形により大きな減衰力が得られ、減
衰装置を小型化できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第4図はこの発明の第1実施例を示す図で
あって、第1図は制振橋梁の部分正面図、第2図は同側
面図、第3図は減衰装置の斜視図、第4図は同縦断面
図、第5図及び第6図は第2実施例を示す図であって、
第5図は制振橋梁の部分正面図、第6図は同側面図、第
7図ないし第10図は第3実施例を示す図であって、第7
図は制振橋梁の正面図、第8図は同部分側面図、第9図
は同部分正面図、第10図は減衰装置と導入部滑車の図、
第11図は制振橋梁の概略構成図、第12図及び第13図は制
振橋梁の作動原理を説明するための図、第14図ないし第
16図はこの発明の制振橋梁の変形実施例を示す図であっ
て、第14図は制振橋梁の部分正面図、第15図は同側面
図、第16図は減衰装置の斜視図である。 1……制振橋梁、2……橋梁、3……ワイヤー(可撓性
引張材)、4……減衰装置、11……橋脚、12……支柱、
13……橋桁、14……橋床、20……滑車、21……円板、22
……突板、23……静止部、24……円板、25……突板、26
……回動部、27……粘性体、31……制振橋梁、32……橋
梁、33……制振用ワイヤー(可撓性引張材)、35……橋
脚、36……主塔、37……橋桁、38……主ワイヤー(引張
材)、39……橋床、41……制振橋梁、42……橋梁、43…
…制振用ワイヤー(可撓性引張材)、45……橋台、46…
…橋脚、47……主塔、48……橋桁、51……主ワイヤー
(主引張材)、52……吊ワイヤー(吊引張材)、53……
橋床、61……制振橋梁、62……制振用ワイヤー(可撓性
引張材)、71……制振橋梁、72……制振用ワイヤー(可
撓性引張材)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 俊明 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 南部 世紀夫 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 稲田 裕 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 高橋 郁夫 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 清川 哲志 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (56)参考文献 特開 昭53−140835(JP,A) 特開 昭54−129725(JP,A) 特開 昭56−46007(JP,A) 特開 昭59−1834(JP,A) 特開 昭61−55423(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E01D 1/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主塔により橋桁を支持してなる橋梁に適用
    されて、前記主塔に対する前記橋桁の相対的な振動を減
    衰装置により減衰させる構成の制振橋梁であって、 前記橋桁が振動した際に作動してその振動を減衰せしめ
    る減衰装置を前記橋桁もしくは前記主塔に対して設置す
    るとともに、前記橋桁と前記主塔との間にワイヤーを緊
    張状態で張設して該ワイヤーの中間部もしくは一端部を
    前記減衰装置に連結することにより、前記橋桁の振動を
    該ワイヤーを介して前記減衰装置に伝達して該減衰装置
    を作動せしめる構成とし、 前記減衰装置は、いずれも円板に複数の突板を同心円状
    に設けてなる静止部と回動部とを相対回転可能に同軸的
    に組み合わせて双方の突板間に減衰材を充填した構成と
    され、前記静止部を前記橋桁もしくは前記主塔に対して
    固定するとともに、前記回動部には該回動部と一体に回
    転する滑車を取り付け、該滑車に前記ワイヤーをスリッ
    プ不能に巻架することで該ワイヤーを前記減衰装置に連
    結してなることを特徴とする制振橋梁。
  2. 【請求項2】前記ワイヤーの中間部を前記滑車に巻架
    し、該ワイヤーの両端側を少なくとも1箇所において互
    いに交差させるように斜めに張設してなることを特徴と
    する請求項1記載の制振橋梁。
  3. 【請求項3】前記減衰材は粘弾性体であることを特徴と
    する請求項1または2記載の制振橋梁。
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