JP2750362B2 - 制振粘弾性壁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は超高層ビル、超高タワーなどのように固有周
期が長く、地震・強風などによって振動し易い構造物の
振動制御に用いられる制振粘弾性壁に関する。

〔従来の技術〕

従来、建物架構内に制振機構を有する壁を組み込み、
建物の振動に対する減衰性能を増大することによって振
動応答を低減させるものとしては、 （１） 本出願人が先に提出した、PC壁などに、例えば
ゴムアスファルトのような粘弾性体を組み込むタイプの
もの、 （２） 大梁に下端が固定されたPC壁などの上部を摩擦
ダンパーを介して上部梁に取付けるタイプのもの（例え
ば住友金属工業株式会社と日建設計の開発による摩擦ダ
ンパー）、 などがある。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、前者は微少な振幅レベルから制振効果
があるが、大地震時にも充分な性能を付加しようとする
と、大量の粘弾性体を必要とする不都合があり、後者
は、国内外で各種の摩擦ダンパーが提案されているが、
コスト、或いは一台当りの性能に一長一短がある。特に
摩擦ダンパーは一般的に微少振幅の振動には、摩擦力が
強いので作動せず、制振効果がなく、また、大地震のよ
うな大振幅の際には減衰効果が頭打ちとなる。

一般に超高層ビルの架構内に組み込まれる制振壁には
次の条件が要求される。すなわち、 （１） 小振幅から、大地震や暴風雨時の大振幅まで、
広範囲の制振効果が期待できること。

（２） 変形の大きい場合に、他の構造体に悪影響を及
ぼさないこと。

（３） メンテナンスが不要或いは容易で、信頼性が高
いこと。

（４） 制振装置として、大きなスペースを必要としな
いこと。

（５） 装置としての安全性が高いこと。

等である。

本発明は上記の事情に鑑み、小振幅から大振幅まで幅
広く対応でき、特別のスペースを必要とせず、大きな変
形時にも他の構造体に悪影響を与えず、しかもメンテナ
ンスが殆んど不要で、信頼性の高い制振粘弾性壁を提供
することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するため、本発明の制振粘弾性壁
は、鋼、アルミニウム等によって造られたハニカム或い
は格子の各小孔に粘弾性体を充填した複合構造体の周囲
を建物架構内に接続して組込んでなる。

〔作用〕

本発明の制振粘弾性壁は上記の構成となっているの
で、周囲の架構の振動による変形はハニカム、格子等に
伝達され、この格子等の変形は各小孔内部の粘弾性体に
伝達される。この粘弾性体は、大きな面内せん断変形能
力と、大きな変形に伴なう壁の面外座屈に対する抵抗力
を合せ有しており、その粘性抵抗によって減衰性能が発
揮される。

〔実施例〕

第１図（ａ）（ｂ）（ｃ）は本発明に係る制振粘弾性
壁の一実施例を示すもので、図中符号１は、正方形の小
孔２を有する格子である。この格子１の各小孔２には、
粘弾性体３が密に充填されて、複合構造体４が構成され
ている。この複合構造体４の格子１は周囲が柱・梁など
よりなる架構５に接続されている。

上記格子１は鋼、アルミニウム等の剛体によって造ら
れている。また、粘弾性体３は、その変形に伴なうエネ
ルギーを吸収するものであれば特に制限ないが、安価
で、粘弾性に優れていることから、ゴムアスファルト系
粘弾性体、例えばゴムアスファルトと砂、豆砂利などと
を混合したものなどが好適である。

上記制振粘弾性壁は、大地震などにより、第２図に示
すように架構５の変形が大きくなると、鋼、アルミニウ
ムなどによって造られた格子は、塑性域に入り、第３図
に示すように復元力特性が履歴ループを描くため、履歴
減衰も期待できる。

上記制振粘弾性壁は、小孔２が正方形の格子を用いる
こととして説明したが、これに限るものでなく、第４図
に示すような六角形の小孔２′を有するハニカム形
１′、或いは小孔が長方形、或いは菱形の格子（共に図
示せず）等がいずれも、上記格子１と同様にして使用出
来る。

上記制振粘弾性壁の壁の厚さ、面積、設計上必要な格
子の剛性、減衰性能などによって、壁厚（格子の幅）、
格子の材料厚み、小孔の形状、充填する粘弾性体の特性
などを調整して、最適な制振粘弾性壁を設計することが
出来る。

上記制振粘弾性壁は、第５図（ａ）（ｂ）に示すよう
に表面を表面仕上材６で覆ったり、或いは耐火材料７お
よび仕上げ材６で覆って間仕切り壁としても使用出来
る。

〔発明の効果〕

以上述べたように、本発明に係る制振粘弾性壁は、強
風、中れ地震などによる比較的小さい振動から、大地震
などによる大きな振幅の振動まで、広い範囲の振動に対
して効果を有し、建物の振動エネルギーを吸収して、そ
の振動を低減させるので、従来の耐震壁との併用、或い
は耐震壁の代わりに使用して極めて優れた効果を発揮す
るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図（ａ）（ｂ）（ｃ）は、本発明に係る制振粘弾性
壁の一実施例を示すもので、第１図（ａ）は制振粘弾性
壁の平面図、第１図（ｂ）複合構造体の斜視図、第１図
（ｃ）は第１図（ａ）のＩ−Ｉ線矢視断面図、第２図は
第１図（ａ）の壁を振動させた際の変位の大きい時の状
態を示す図、第３図は複合構造体の復元力特性を示す
図、第４図は小孔が六角形のハニカムを示す平面図、第
５図（ａ）は、複合構造体の表面を表面仕上げ材で覆っ
た状態を示す第１図（ｃ）相当図、第５図（ｂ）は先ず
耐火材で覆いさらに表面仕上げ材で覆った状態を示す第
１図（ｃ）相当図である。 １……格子、１′……ハニカム、２……正方形小孔、
２′……六角形小孔、３……粘弾性体、４……複合構造
体、５……架構、６……表面仕上げ材、７……耐火材。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】鋼、アルミニウム等によって造られたハニ
   カム或いは格子の小孔に粘弾性体を充填した複合構造体
   の周囲を建築物の架構内に接続して組込んでなることを
   特徴とする制振粘弾性壁。