JPH0259262B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 イ 産業上の利用分野 本発明は建物とその基礎の様な、上部構造とそ
の下部構造の間に配置され、地盤から上部構造に
伝わる地震のエネルギーを減少させる免震装置に
関する。

ロ 従来技術 建物の耐震構造の１つとして、第１図に示すよ
うに複数個のアイソレータ１，１…を上部構造２
と下部構造３との間に挟み込み上部構造２を支持
させるものがある。このアイソレータ１は第２図
及び第３図に示すように、鋼板等の金属板４，４
…と天然ゴムやネオプレンゴム等の薄い弾性板
５，５…を交互に垂直方向に重ね合わせ、各々を
接着固定して形成したものである。このアイソレ
ータ１は金属板４，４…の間に薄い弾性板５，５
…が挟まれているので、大きな鉛直載荷能力とゴ
ムのせん断変形による小さな水平バネ弾性を持つ
ている。従つて重量物である上部構造を安定性良
く支え、水平方向の動きを弱いバネで規制した形
となる。このように支持すると、構造物の系全体
の水平方向の摺動周期を増大させ、それを地震の
最大エネルギー成分の周期よりも大きくする。従
つて地震発生時の地盤からの入力に対する建物の
応答加速度を減少させることができる。

しかしながら上記アイソレータ１のみによつ
て、上部構造２を支持すると、アイソレータ１の
水平方向のバネ力が小さいために次の問題が生じ
る。

第１の問題点は、地震動の作用によつて一旦上
部構造２が振動し始めると、その振動振幅がアイ
ソレータ１なしの場合に比べて大きくなると共
に、その揺れが静まるまでに時間がかかることで
ある。すなわち物理的に安全が保障されたとして
も居住者にとつて心理的に不安な状態が長く続く
ことになり、建築物用の免震構造としては不適当
である。

第２の問題点は台風の風荷重等の横方向荷重が
建物に加わつた場合、その方向に上部構造２が位
置ずれするおそれがあり、安定が保障されないこ
とである。

ハ 発明の目的 本発明は上部構造と下部構造の間に上記アイソ
レータと共に、振動減衰構造を併設して、上部構
造の振動を速やかに減衰させると同時にその振幅
も所定の制限内に納め、且つ台風等による上部構
造への一方向荷重に対して十分な固定効果を保証
できるようにし、特に上記振動減衰機構を、上部
構造と下部構造の間の空間が狭くても取付けでき
るようにすることを目的とする。

ニ 発明の構成 本発明は、上部構造と下部構造の間に複数個の
アイソレータを間在・固定させ、且つ弾塑性材料
よりなり切れ目を持つ環状部材を、その各端部を
上部構造と下部構造に夫々固定して、上部構造と
下部構造の間の水平方向に広がる空間に沿つて配
設した構成を有する。

ホ 実施例 本発明は第４図に示すように、アイソレータ
１，１…を間在させた上部構造２と下部構造３の
間に、第５図に示すような環状部材６を配設する
ものである。この環状部材６は鋼棒等の弾塑性材
料を環状に曲成し、その各端部をその周を含む平
面と直交するように折曲したものである。ここで
環状部材６は、その環状部６ａと直交して、反対
側に折曲された各端部６ｂ，６ｃが夫々上部構造
２と下部構造３に植設される。この環状部６ａは
上部構造２と下部構造３の間の水平方向に広がる
隙間内に、その方向に沿つて配置されている。こ
の状態で、上部構造２と下部構造３が地震動によ
つて水平方向に相対運動すると、環状部材６は、
例えば第６図又は第７図に示すように弾塑性変形
する。この場合において、上部構造と下部構造の
相対的な往復運動が減衰して停止すると、環状部
材６は最初の形に復帰する。環状部材６は弾塑性
材料より形成され、その応力に対してヒステリシ
ス特性を持つて変形するので、一振動周期ごとに
ヒステリシス曲線で囲まれる部分に相当する量だ
け振動エネルギーを吸収する。この振動エネルギ
ーが環状部材６の各部分に吸収される割合は、各
部分の歪み量に対応した大きさである。

上記振動エネルギーの吸収効果によつて、第４
図に示す免震構造では、第１図に示す従来の免震
構造に比べると、上部構造が振動を開始する際の
振幅が小さく、さらに振動開始後の振幅及び加速
度の減衰が極めて速やかになる。つまり本発明の
免震装置によれば、建築物が振動を開始した場合
でも、その振幅は一定の範囲内に制限され、且つ
振動を開始してから、それが停止するまでの時
間、換言すれば建築物内の居住者が地震の発生後
その振動を感じなくなるまでの時間が極めて短縮
される。

また本発明の環状部材６の寸法は、免震が必要
な大きさの水平方向の応力が作用したときのみ弾
塑性変形し、台風の風荷重等の横方向への小さな
一方向荷重では、ほとんど変形しないような値に
定められる。これにより上部構造の下部構造に対
する固定的効果が得られる。

本発明の環状部材を実際の建築物に取付け使用
するには、第８図に示すような構造にすると便利
である。すなわち切れ目の位置で対向する環状部
材６′の各端部６b′，６c′を平坦にプレス整形し、
取付け用の孔７，７を穿設する。また上部構造２
及び下部構造３には、その建築物に予め第９図に
示すように、例えば鋼棒の先端をＬ字状に折曲
し、そこに取付け用の孔８を穿設した取付け部材
９，９を植立しておく。建築後第１０図に示すよ
うに取付け部材９，９に環状部材６′をボルト１
０，１０とナツト１１，１１で固定する。なおこ
の環状部材６′は水平に固定されるので振動時に
各端部６b′，６c′同士が衝突しないように切れ目
の間隔Ｌはアイソレータ１の水平方向の変位量よ
りも大きくする必要がある。なお上部構造２と下
部構造３の間隔に余裕のある場合は第１１図に示
すように、捩りのある環状部材６″を用い、各端
部６b″，６c″を取付部材９，９に上下にずらして
固定してもよい。

このような組付構造にすると、環状部材６′，
６″の取付け及び取外しが容易に行える。従つて
地震時により、又は長期間の使用により、弾性疲
労が蓄積されたと判断される場合の取り換えは極
めて容易に行える。

ヘ 発明の効果 本発明はアイソレータに併設する振動減衰機構
として、上部構造と下部構造の間の隙間に沿つて
水平方向に配設され、その各端部が上部構造及び
下部構造に固定される弾塑性材料よりなる環状部
材を提供したから、上部構造が振動した場合に、
その振動開始時の振幅を一定範囲に制限できると
共に、その振動エネルギーを吸収して速やかに減
衰させることができる。従つて建物の居住者が地
震のときに感じる不快感を最小限にすることがで
きる。また環状部材が上部構造と下部構造の位置
関係を規正するので、台風等による上部構造への
小さな一方向荷重が加わつても、上部構造を下部
構造に対して一定の位置関係に保持することがで
きる。特に本発明の環状部材は、上部構造と下部
構造の間の隙間に沿つて水平方向に配設されるの
で、その隙間が小さくても取付けることができ
る。つまり第１図にアイソレータ１の取付構造の
ように、上部構造と下部構造に取付け用の凹所
２′，３′…を形成する必要がなくなり、建築物の
基礎部分の設計施工が容易になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の免震構造の一例を示す正面図、
第２図及び第３図はアイソレータの正面図及び平
面図、第４図は本発明の一実施例である減衰機構
を持つ免震構造の要部の正面図、第５図は環状部
材の一例を示す斜視図、第６図及び第７図は、
夫々環状部材が弾塑性変形した状態を示す平面図
である。第８図乃至第１０図は本発明の他の実施
例を示し、第８図は環状部材の正面図、第９図は
環状部材を上部構造と下部構造の間に固定するた
めの取付部材を示す側面図、第１０図は環状部材
を取付部材に固定した状態を示す正面図である。
第１１図はさらに他の実施例の環状部材を取付部
材に固定した状態を示す正面図である。 １……アイソレータ、２……上部構造、３……
下部構造、４……金属板、５……弾性板、６，
６′，６″……環状部材、６ｂ，６b′，６ｃ，６
c′……端部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 複数枚の金属板と一枚以上の弾性板とを交互
   に重ね合わせて形成したアイソレータを上部構造
   と下部構造の間に複数個間在させ、且つ弾塑性材
   料よりなり切れ目を持つ環状部材を、その各端部
   を上部構造と下部構造に夫々固定して、上部構造
   と下部構造の間の水平方向に広がる空間に沿つて
   配設したことを特徴とする減衰機構を持つ免震装
   置。