JP2924695B2 - 水分散型アクリル系粘着剤組成物を塗工する粘着製品の製造方法 - Google Patents

水分散型アクリル系粘着剤組成物を塗工する粘着製品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、粘着ラベル及び粘着
テープ等の粘着製品における粘着剤に適したアクリル系
共重合体のエマルジョンからなる水分散型アクリル系粘
着剤組成物を用いる、高速塗工による粘着製品の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、粘着剤には天然ゴム系、合成ゴム
系およびアクリル酸エステル系等があり、これら粘着剤
は基材に塗布されて、粘着ラベルや粘着テープ等の形態
で、幅広い用途に使用されている。上記粘着剤の中で
も、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体の主
成分とする、アクリル系共重合体のエマルジョンを用い
た水系粘着剤組成物は、粘着性および耐候性に優れ、単
量体組成を変化させることにより、幅広い粘着特性を付
与することができ、用途や塗工設備に応じて、固形分及
び共重合体粒子の平均粒子径等を、広範囲に変化させる
ことが可能であり、また有機溶剤を使用しないことか
ら、近年多くの粘着製品に使用され広く普及してきてて
いる。
【0003】アクリル系共重合体のエマルジョンからな
る水系粘着剤は、このように優れた製品であるが、従来
は比較的低速の塗工速度で、基材に塗工されている。粘
着製品の生産性を高め、製造コストを低下させるために
は、塗工速度をより高速とすれば良い。しかしながら、
塗工速度を上げれば粘着剤に掛かるせん断応力も高くな
り、良好な塗工面を得ることができないといった問題が
発生する。例えば、せん断応力によりエマルジョンの凝
集物が発生したり、塗工バンク内における気泡の発生に
よって、良好な塗工面が得られないという問題が生じ、
また、塗工速度が速いほど、平滑な塗工面を得ることが
難しく、粘着剤にはより高いレベリング性が必要とな
る。
【0004】この問題を解決するために、水系感圧接着
剤組成物に関し、せん断速度0.5×105(1/s)
以上の場合の粘度を75cps以下とすることが提案さ
れている(特開平3−227387号公報)。この条件
を満足させれば、確かに高速塗工時に粘着剤に掛かるせ
ん断応力が小さくなり、凝集物や気泡の問題は改良され
るが、レベリング性については、この条件を満たすすべ
てのものが優れているとはいえず、平滑な塗工面を得る
ことができない場合があることが明らかとなった。ま
た、塗工時の粘度が低すぎる場合、塗工面にハジキやチ
ヂミが起こるという問題が発生する。特にシリコンなど
の離型材料が表面に施された基材に、粘着剤を塗工して
製造される粘着製品では、ハジキやチヂミが起こりやす
い。さらに、高せん断速度下で粘度低下が大きいもの
は、一般にレベリング性が悪く、滑らかな塗工面が得ら
れないという問題も生じる。
【0005】高速塗工時の高せん断応力によって生じる
問題の他の解決手段として、凝集物発生の問題について
は、エマルジョンの機械的安定性を向上させる添加剤を
加えることによって、また気泡の発生については、スロ
ットダイコータを使用する等の塗工方法を選択すること
によって、それぞれ解決される。しかし高速塗工時にお
いてもハジキやチヂミがなく、さらに平滑な塗工面を得
るための手段は明らかでない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】 本発明は、水分散型
アクリル系粘着剤組成物を用いて、高速塗工によりハ
キやチヂミがなくかつ平滑な塗工面が得られる、粘着製
品の製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、前記問題点
の解決につき鋭意検討した結果、固形分、重合体粒子の
平均粒子径、及び高せん断速度下での粘度が特定の値を
有する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、300〜7
00m/分の塗工速度で基材に塗布することが可能であ
り、かつ、上記問題を解決できることを見出し、本発明
を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸
アルキルエステルを主成分とする下記(a)、(b)お
よび(c)により特定されるアクリル系共重合体のエマ
ルジョンからなる水分散型アクリル系粘着剤組成物を、
300〜700m/分の塗工速度で基材に塗布すること
を特徴とする粘着製品の製造方法である。 (a)固形分が50重量%以上80重量%以下。 (b)エマルジョンを構成する共重合体粒子の平均粒子
径が0.2μm以上2.0μm以下。 (c)せん断速度1.0×105(1/s)における粘
度が20cps以上200cps以下。
【0009】
【0010】本発明の粘着製品の製造方法に使用される
着剤組成物におけるアクリル系共重合体のエマルジョ
ンは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分と
する単量体混合物を、公知の方法によって水媒体中でラ
ジカル乳化重合することにより、容易に製造できる。乳
化重合においては必要に応じ、連鎖移動剤又は可塑剤等
を併用しても良い。上記共重合体において単量体の主成
分をなす(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして
は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エ
チル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アク
リル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、
(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘ
キシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)
アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n
−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メ
タ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノ
ニル、(メタ)アクリル酸デシルおよび(メタ)アクリ
ル酸ラウリル等が挙げられるが、それらの中でも、アル
キル基の炭素数が4〜9の(メタ)アクリル酸アルキル
エステルが特に好ましい。
【0011】(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共
重合されるその他の単量体の代表例はビニル単量体であ
り、具体的には例えば、(メタ)アクリロニトリル、α
-クロル(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有ビ
ニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルト
ルエン等のビニル芳香族系単量体;(メタ)アクリル
酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マ
レイン酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノエチル
エステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モ
ノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキ
ルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチ
ル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキ
シ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グ
リセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコ
ール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリー
ト等の水酸基含有ビニル単量体;アクリルアミド、メタ
クリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチ
レン系不飽和カルボン酸アミドおよびそのN置換化合
物;アリルアルコール等の不飽和アルコールがあり、さ
らにその他に(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸ビニ
ル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等も共重合単量体とし
て使用できる。
【0012】上記のアクリル系共重合体は、カルボキシ
ル基、水酸基、アミド基又はエポキシ基等の官能基を有
する官能性単量体単位を、全単量体単位の合計量を基準
にして、10重量%以下さらに好ましくは1〜7重量%
の割合で含有することが好ましい。アクリル系共重合体
におけるこれらの官能基の存在は、粘着性能の面から有
用であると同時に、共重合体エマルジョンの凝集安定性
を向上させる効果も期待することができる。上記官能性
単量体単位の割合が10重量%を越えると、得られる共
重合体のガラス転位温度が高くなり、その結果粘着剤組
成物のタックの低下を招く傾向が強くなる。
【0013】重合によって得られた共重合体エマルジョ
ンは、その安定性を向上させるために、常法に従いアル
カリ中和例えばアンモニア水による中和を行うことがで
きる他、目的とする水分散型アクリル系粘着剤組成物に
要求される物性や性能を付与するために、粘着剤の分野
で使用されている種類及び量の配合剤を、必要に応じて
添加しても良い。添加できる配合剤としては、例えば増
粘剤、機械的安定性付与剤、粘着付与剤、レベリング
剤、架橋剤、防腐剤、防錆剤、顔料、充填剤、凍結防止
剤、高沸点溶剤又は消泡剤等がある。
【0014】本発明の粘着製品の製造方法に使用される
分散型アクリル系粘着剤組成物における固形分は、ア
クリル系共重合体のエマルジョンを製造するに際して、
乳化重合で使用する単量体と水の量的比率を制御するこ
とによって、また製造後のエマルジョンに必要により添
加する配合剤の種類及び添加量を適宜設定することによ
って、自由に変化させることができる。組成物の組成が
同一であれば、固形分が低いほど組成物の粘度は低くな
る。
【0015】粘着剤組成物の取扱い作業を行いやすくす
るために、変性ポリアクリル酸塩やセルロース誘導体な
どを添加して、低せん断速度下での粘度を上げることは
一般的に行われているが、そのような場合でも、固形分
の濃度自体が低すぎると、高せん断速度下での粘度低下
が大きくなる。一方、低せん断速度での粘度に対し、高
せん断速度での粘度低下が大きい粘着剤組成物では、レ
ベリング性が悪く平滑な塗工面が得られない。さらに固
形分が低いと、乾燥に必要なエネルギーも大きくなるこ
とから、固形分が低いほど高速での塗工作業が困難とな
る。これらの理由から、本発明の粘着製品の製造方法に
使用される水分散型アクリル系粘着剤組成物における固
形分は、50重量%以上でなければならない。固形分の
上限はエマルジョンを製造するうえでの限界から、80
重量%である。
【0016】アクリル系共重合体のエマルジョンを構成
する共重合体粒子の平均粒子径は、乳化重合における乳
化剤の種類、使用量又は重合開始条件等を制御すること
により、自由に変化させることができる。エマルジョン
の組成が同じであり、低せん断速度下での粘度も同じで
あっても、粒子径が小さいほど高せん断速度下での粘度
低下が大きくなり、粘着剤組成物のレベリング性が悪く
なる。また同じ乳化剤量であっても、粒子径が小さいほ
ど共重合体エマルジョンの機械的安定性が悪くなり、粘
着剤組成物の塗工時に凝集物を生じ易くなる。このよう
に、共重合体粒子の平均粒子径が小さすぎる場合、高速
塗工時に良好な塗工面を得ることが困難となるので、エ
マルジョンを構成する共重合体粒子の平均粒子径は、本
発明において0.2μm以上であることが必要である。
この平均粒子径の好ましい上限は2.0μmであり、こ
れを超えると共重合体粒子の経時的な沈降を生じる恐れ
がある。
【0017】さらに、高せん断速度下での粘度が低すぎ
る水分散型粘着剤組成物では、塗工面にハジキやチヂミ
が生じる。特に離型材料で処理された基材に高速で塗工
を行うためには、塗工時のせん断速度下での粘度が低す
ぎると、ハジキやチヂミが大きく、実用的に要求される
粘着製品を得ることができない。従って、本発明の粘着
製品の製造方法に使用される水分散型アクリル系粘着剤
組成物は、せん断速度1.0×105(1/s)におけ
る粘度が20cps以上という流動特性を有していなけ
ればならない。この粘度の上限は、塗工性能その他の実
用面から200cpsである。
【0018】本発明の粘着製品の製造方法において、粘
着剤組成物の塗工は300〜700m/分の速度で行
う。塗工速度が300m/分より低い場合は、上記粘着
剤組成物が具備する塗工性能を充分に活用することがで
きず、一方700m/分を超える塗工速度では、粘着剤
組成物を構成するエマルジョンが破壊され、凝集物の形
成といった不都合を招く。好ましい塗工速度は、450
〜550m/分である。このような高速塗工作業は、ス
ロットダイコーター等の塗工機器によって行うことがで
きる。
【0019】本発明によれば、高速塗工によって良好な
塗工面を容易に得ることができ、特に基材が離型材料で
処理されたものであっても、ハジキやチヂミがなく、平
滑性にも優れた塗工面を得ることができる。
【0020】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて、本発明
を更に具体的に説明する。各例における部は重量部を、
また%は重量%を意味する。また乳化剤の使用量は、い
ずれも純分換算の量である。さらに各物性値の測定は次
の方法で行った。 1 固形分 JIS−K6833に準じて、107℃で3時間乾燥後
秤量。(単位:%) 2 平均粒子径 株式会社堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布
測定装置LA−910を使用し、体積基準のメジアン径
を測定。 3 高せん断速度下での粘度(単位:cps) 熊谷理機製、HI−SHEAR VISCOMETER
HERCULESTYPE MODEL HR−80
1Cを用いて測定。回転速度0〜8800rpm、測定
温度20℃
【0021】また、各例で使用した単量体は、下記の略
称で表す。 アクリル酸−2−エチルヘキシル・・・HA アクリル酸ブチル・・・BA メタクリル酸メチル・・・MMA ドデシルメルカプタン・・・DM N−メチロールアクリルアミド・・・N−MAM アクリル酸・・・AA メタクリル酸・・・MAA
【0022】実施例1 HA80部、MMA20部、DM0.1部、N−MAM
0.1部及びAA2.0部に、ポリオキシエチレンアル
キルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社の
商品名レベノールWZを使用)1.5部及び水27部を
加えてプレエマルジョンを調製した。還流冷却器、温度
計及び撹拌器を備えた反応器に、水33部を仕込み、反
応器内を窒素置換した後、80℃に昇温し、過硫酸アン
モニウム0.5部を加え、次いで前記プレエマルジョン
の全量の0.2重量%を加え重合を開始した。重合の開
始を確認後、79〜81℃の温度下で、プレエマルジョ
ンの残部(全量の99.8重量%)を連続的に4時間で
滴下した。プレエマルジョンの連続滴下終了後、10重
量%の過硫酸アンモニウム水溶液1.0部を加え、さら
に80℃に2時間保ち反応を終了した。
【0023】上記により得たアクリル系共重合体のエマ
ルジョンを、25重量%アンモニア水で中和し、アクリ
ル系増粘剤(東亞合成株式会社製B−300を使用)を
添加することにより、粘着剤組成物を製造した。なお、
増粘剤の使用量は、粘着剤組成物のB型粘度(JIS−
K6833に従い、BM型回転粘度計を用い、ローター
No.4及び12rpmにて測定)が8000cpsと
なる量とした。この粘着剤組成物の不揮発分は60.9
%、平均粒子径は1.02μm、せん断速度1.0×1
5[1/s]での粘度は55cpsであった。シリコン系離
型材料で表面処理された離型紙上に、スロットダイコー
ターを用いて、上記の粘着剤組成物を500m/分の速
度で塗工し、得られた塗工面の状態を観察したところ、
筋、ハジキ及びチヂミはいずれもなく、塗工面の平滑性
も良好であった。
【0024】実施例2〜3及び比較例1〜3 実施例1における初期仕込水量、プレエマルジョンの組
成及び重合開始時のプレエマルジョン使用量を表1のよ
うに変化させた他は、実施例1と同じ反応操作及び後処
理を行い、得られた粘着剤組成物について、実施例1と
同様に物性値及び塗工性能を評価した。その結果を実施
例1の結果と併せて表1に示す。なお、表1に記載され
ているエマール2Fは、花王株式会社の商品であるラウ
リル硫酸ナトリウムで、また粘度〔cps〕はせん断速
度1.0×105[1/s]における値である。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】発明の粘着製品の製造方法によれば、
従来より高速の塗工速度において、筋、ハジキ及びチヂ
ミがなく平滑性に優れた塗工面を有する粘着製品を容易
に製造することが可能であり、粘着製品の生産性を格段
に向上させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−227387(JP,A) 特開 昭61−23614(JP,A) 特開 平3−146578(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09J 133/00 - 133/16 C09J 5/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (メタ)アクリル酸アルキルエステル
    を主成分とする下記(a)、(b)および(c)により
    特定されるアクリル系共重合体のエマルジョンからなる
    水分散型アクリル系粘着剤組成物を、300〜700m
    /分の塗工速度で基材に塗布することを特徴とする粘着
    製品の製造方法。 (a)固形分が50重量%以上80重量%以下。 (b)エマルジョンを構成する共重合体粒子の平均粒子
    径が0.2μm以上2.0μm以下。 (c)せん断速度1.0×105(1/s)における粘
    度が20cps以上200cps以下。
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