JP2872316B2 - エラストマー補強用スチールワイヤ - Google Patents

エラストマー補強用スチールワイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、エラストマーの補強用スチールワイヤに係
り、特に車両タイヤビードを補強するビードワイヤに関
する。
丸形、矩形、若しくは正方形の断面を持つビードワイ
ヤは公知である。
一般に、ビードワイヤは、その表面に銅、青銅、黄銅
のような薄い金属被覆層を設けて、補強すべきエラスト
マーに対する接着力を高めている。ビードワイヤの製造
工程において、一般に、最終工程は薄い銅または黄銅層
での被覆工程である。これは、タイヤのベルト及び/又
は骨組部分に使用されるタイヤコード用の黄銅被覆ワイ
ヤの製造工程とは異なるものである。タイヤコード用ワ
イヤは、一般に、ワイヤ表面にコーティングをした後引
抜かれる。このようにして、被覆ワイヤは、相当平滑な
表面となる。薄い銅又は黄銅の層を被覆した後において
も相当粗い表面を維持できるビードワイヤに関しては、
このことが常に真実とは限らない。場合によっては、表
面の粗度により、ビードワイヤ表面に対するその周りの
ゴムの接着性が促進されると考えられる。このようなこ
とから、従来は、銅でコーティングする前に、スチール
ワイヤを深くエッチングすることにより、特に粗な面と
して、ゴムの補強をなす努力がなされていた。しかし、
このエッチング工程は処理が遅く、しかも一般に深いエ
ッチングをすると、この深いエッチングによりワイヤ表
面に露出されてきた鉄酸化物または炭化物粒子に対する
銅の永続的な結合が損なわれる。
本発明の目的は、上記欠点を解消し、エラストマーに
対する接着容量を最大限増加させるという観点にもとづ
き、ワイヤ表面に制御可能なマイクロ粗面を持つワイヤ
を作ることである。本発明のマイクロ粗面化効果は、実
質的に例えばワイヤ引抜きにより得られたワイヤ表面の
相当粗い粗面とは異なり、より微細である。事実、マイ
クロ粗面は、従来のワイヤ表面の上に重ねられ、一般
に、その粗い不規則性のパターンに従う。
本発明の表面調整処理は、さらに早く、連続的で、制
御可能な工程を提供する。この工程は、深いエッチング
の欠点を解消し、上記典型的なマイクロ表面を作る。こ
のマイクロ表面は、ゴムに対する接着能力を徹底的に改
善するように粗面化されている。接着挙動を改善する機
構は十分には解明されていない。本発明によれば、露出
した丸形のスチールワイヤ(すなわち、そこから接着促
進被覆層が除去されている)は、例えば直径dが0.8〜2
mm(特に約0.89〜1.60mm)の露出したワイヤは、光輝因
子(以下に定義するL値)が37≦Ld1/3≦55及び好まし
くは38≦Ld1/3≦50に適合するものを提供する。
L値は、クロマメーターII−レフレクタンス(ミノル
タ)によって測定され、定義される。このL値は、露出
したスチールワイヤ、すなわち銅や青銅や黄銅の皮膜を
ワイヤ表面に付ける前のもの、若しくは上記皮膜を被覆
ワイヤから除去したものに関して測定される。L値は、
原則的には被覆ワイヤに関しても測定可能である。しか
し、L値に関する皮膜の色彩の影響(黄色、赤、または
褐色の陰)を回避するために、出願人は、露出したワイ
ヤ(さらに述べるように金属皮膜を除去した後)に関し
てのみ測定するようにした。従って、色彩の影響がある
としても、その効果は、自然の明るさからは離れ(若し
くは明るさが欠落し)ている。参照L値は、まず上記測
定機器のキャリブレーションに関して、クロマメータに
ある標準白色基体で決定した。標準CIE発光体C(6774
K)でもって、出願人の用いた参照L値は、白色プレー
トに関して97.30である。直径dが0.96mmの表面粗面露
出ビードワイヤは、ワイヤm2当たり約0.5〜2gの被覆金
属の銅または黄銅皮膜を形成した後、そのL値が露出し
たワイヤ(すなわち以下の実施例に示すように過硫酸塩
で皮膜を除去した後)について約40〜50にあるときに好
適な接着挙動を示すことが分かった。直径dが1.55mm、
L値が33〜45であって、同じように粗面化され(及び被
覆された)露出ワイヤについて、露出ワイヤは接着レベ
ルが相当改善されるのが見られた。特定の接着値は、以
下の実施例で与えられる。光輝度Lを測定するために、
各種ワイヤを、測定ヘッドの測定チップの真下にある台
上で互いに横並びに配置している。上記チップでの測定
領域は、8mmの直径の円である。
矩形断面のワイヤは、本発明で処理され、クロマメー
ターIIの測定ヘッドの下で横並びに配置されて同様に測
定されるが、一般に粗面化されて同様に接着能力を増加
させた比較マイクロ表面に対してL値が大きいものとな
る。このことは、上記矩形ワイヤの光の反射パターン
(記録されたL値に対する入力として)が円形のワイヤ
よりも散乱が少ないという事実によって説明することが
できる。
本発明は、また制御可能な方法でワイヤ表面に関する
特定のマイクロ粗面化効果を得ることができる工程も提
供する。
一般に、粗面化効果は、Cu(CuSO4−浴から)、黄銅
または約0.5〜16重量%の錫含有量の青銅でメッキする
前に、硫酸イオン含有浴で電解ピクリングのようなピク
リング工程中での、任意の適切な制御可能な連続エッチ
ング工程によって得ることができる。別の連続処理は、
ワイヤをを銅、黄銅又は青銅でメッキする前に、従来の
ピッククリング浴(例えばHcl)中に、余分にかつ十分
な酸化剤を十分量添加する方法に関する。上記酸化剤
は、無論、イオンを酸化出来、かつワイヤ表面に金属沈
着物を形成しないものでなければならない。さらに適切
な方法は、Hcl中での電解ピックリング工程で、これを
たとえば交流電流中でおこなうことができる。さらに別
の有効な方法は、メッキ浴中に酸化剤を加えることであ
る。これらの処理により、ワイヤ表面での酸素量と炭素
量は、一般に従来のピックリング処理されたワイヤに比
べて増加する。このことは、エッチング処理工程では、
ワイヤ表面からのFeがワイヤ表面に一般に存在するイオ
ンカーバイド(および多分イオンオキサイド)に対して
選択的に溶解されることを意味する。この溶解により、
ワイヤ表面内にマイクロキャビティや孔が形成される。
このことによりその明るさを失う。この結果、上述のよ
うにL値が減少する。露出ワイヤに関するこのマイクロ
粗面化の結果、被覆ワイヤについても、より低いL値が
(光輝度)が観察される。すなわち、本発明の予備エッ
チング(粗面化)をしないで同様の皮膜を形成したワイ
ヤに比較して本発明の露出ワイヤに従来の銅等の接着促
進金属被覆層を形成したものは、低いL値が観察され
る。この薄い被膜は、一般にワイヤの表面の不平滑さ
(マイクロキャビティ)に従属する。ワイヤ表面は、見
掛上相当暗く、鈍い影のワイヤ表面である。この金属被
覆層は銅、または0.5〜3重量%のSnを含む青銅、又は
銅含有量が60〜72重量%の黄銅である。
発明の具体例では、その詳細を明確にする観点に基づ
いて実施例により記載され、また接着挙動および特性が
改良されることの証明を提供する。
直径dが0.96mm(セットA)と直径dが1.55mm(セッ
トB)である、常法に従って引抜いた円形ビードワイヤ
(炭素量が少なくとも0.6%のスチールワイヤ)を連続
的に特別に設計されたピックリング設備に通して、その
表面にマイクロ粗面化効果が得られるようにした。つい
でワイヤを、常法に従ってCuSO4浴中で無電解メッキし
て、銅皮膜(皮膜重量は、ワイヤkg当りCuがほぼ0.3〜
0.7gである)を形成した。被覆していない及び被覆した
ワイヤは、いずれも粗面化されていないワイヤに比べ
て、見掛上鈍く暗い陰を示していた。この様に処理され
た露出ワイヤのL値は、上述のようにして決定された。
本発明で処理されたワイヤセットは、ゴム化合物中に
埋め込まれ、加硫された。その付着容量をさらに常法に
従った引抜試験で決定し、これを、直径と組成が同じで
あるが、本発明のマイクロ表面粗面化処理を行っていな
い従来のビードワイヤの接着挙動と比較した。
セットA用の電解ピックリングラインは、下流方向
に、常法に従ったHClピックリング浴(約50℃で200g/
HCl)、ワイヤが交互にそれぞれアノードとカソードの
極性となっている四つの連続したセル、を備えた。電解
液は、40℃で200gNa2SO4/の溶液であった。電解ピッ
クリングライン中におけるワイヤの電流密度100A/dm2
の処理時間は約2秒であった。リンスと無電解銅メッキ
の後に、ワイヤを異なるゴム組成(Cp1〜Cp5)に適切に
埋め込み、加硫し、そして接着値(N)を決定した。そ
の結果を表1に示す。この表は、また上記ピックリング
処理されたワイヤ(セットAとB)の対応L値の結果を
示す。このワイヤからは、銅皮膜が除去され、そして、
本発明に従っている(発明と示す)。いずれについて
も、その銅皮膜を同様に除去した後の従来の(粗面化処
理されていない)ビードワイヤと比較した(参照資料を
参照と示す)。
Cu皮膜の除去は、過硫酸アンモニウム溶液で常法に従
っておこない、その後露出ワイヤをリンスし、乾燥し
た。金属皮膜の除去は、無論、常にスチールワイヤ自体
を溶解せず、また腐食さないものでおこなわれる。
表1から、接着能力(N)は、参照ワイヤ(参照)を
本発明ワイヤ(発明)とを同じゴム組成に対して比較し
て時に増加することは明らかである。この記録から、平
均で30%を越える改良がなされる。
マイクロ粗面化ワイヤの表面については、これをオキ
サイドとカーバイドの粒子(エッチングを制御すること
により形成される)との間にある銅被覆マイクロキャビ
ティおよび孔の分散と比較できると推測される。銅は、
一般に上記粒子上よりも孔中での結合性がよい。上記表
面に対するゴムの加硫(及び時効処理後)に関して、硫
化銅粒子が形成され、これは接着能力の劣化に対する原
因となる。しかし、多分、これらの硫化物粒子は、孔と
キャビティ内での結合が良好のままであり、このことに
より接着容量の劣化を避けると思われる。
本発明のスチールワイヤがビードワイヤの場合、この
発明は無論、そのワイヤで補強されたビード領域を持つ
車両タイヤにも関するものである。原則的に、本発明の
スチールワイヤで任意のエラストマー部材を補強するこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 バンヒー,ウイリイ ベルギー国 ビー‐8640 モアセレ,ア ーチテクト・バンホーネラーン 17 (56)参考文献 特開 昭62−288634(JP,A) 特開 昭63−24099(JP,A) 特開 昭59−112827(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C25F 3/06 B60C 15/04

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粗面と金属被覆面とを有し、エラストマー
    の接着容量を高めたエルストマー補強用の丸形スチール
    ワイヤにおいて、ワイヤの直径dが0.8mm〜2mmであっ
    て、上記直径範囲における露出したワイヤ(被覆層を除
    去した後のワイヤ)の光輝因子Lが38≦Ld1/3≦50を満
    たし、マイクロ粗面がワイヤー表面の粗い不規則性のパ
    ターンの上に重ねられていることを特徴とするスチール
    ワイヤ。
  2. 【請求項2】0.89≦d≦1.60mmである請求項1に記載の
    スチールワイヤ。
  3. 【請求項3】金属被覆層がワイヤの0.5〜2g/m2の重量を
    持つ請求項1に記載のスチールワイヤ。
  4. 【請求項4】金属被覆層が銅層である請求項1に記載の
    スチールワイヤ。
  5. 【請求項5】被覆層は、錫含有量が0.5〜16重量%の青
    銅層である請求項1に記載のスチールワイヤ。
  6. 【請求項6】青銅層の錫含有量が0.5〜3重量%である
    請求項5に記載のスチールワイヤ。
  7. 【請求項7】金属被覆層は、銅含有量が60〜72重量%で
    ある請求項1に記載のスチールワイヤ。
  8. 【請求項8】車両タイヤのビード領域の補強用の請求項
    1に記載のビードワイヤ。
  9. 【請求項9】請求項1に記載のワイヤで補強されたエラ
    ストマー部材。
  10. 【請求項10】請求項6のビードワイヤで補強されたビ
    ード領域を持つ車両タイヤ。
  11. 【請求項11】エラストマーに対するスチールワイヤの
    接着容量を向上する方法であって、上記表面に接着促進
    金属被覆層を形成する前に、ピックリング処理において
    ワイヤ表面をエツチングすることにより、上記スチール
    ワイヤの表面を連続してかつ調整可能としてマイクロ粗
    面化する工程を具備している上記方法。
  12. 【請求項12】上記ピックリング処理は、硫酸イオン含
    有浴中での電解ピックリングである請求項11の方法。
  13. 【請求項13】上記ピックリング処理は、通常のピック
    リング浴中に余分な酸化剤を添加している請求項11の方
    法。
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