JP2862991B2 - ポリエステルの製造法 - Google Patents

ポリエステルの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は不活性微粒子(以下,単に微粒子という)を
含有する主としてフイルム用のポリエステルの製造法に
関するものである。
(従来の技術) ポリエステル,特にポリエチレンテレフタレートは,
優れた物理的,化学的特性を有しているため,衣料用や
産業用の繊維のほか,フイルム,成形品用等として広く
使用されている。中でもフイルム用としては,オーディ
オ,ビデオ等の磁気テープ用のベースフイルム,写真用
フイルム,電気絶縁フイルム,さらには金銀糸用の基
材,一般包装用途等広範囲に使用されている。
ポリエステルをフイルム用の素材として使用する場
合,溶融押し出し,延伸,熱処理という各工程での工程
通過性の良いことが不可欠である。特に製膜に際して
は,巻き取り,スリット,磁性層塗布,ガスバリアー層
塗布等の工程での作業性維持,製品フイルムの滑り,耐
摩耗性や表面特性といった最終製品としての価値等か
ら,通常,微粒子をポリエステルに含有させて表面に適
度の凹凸を与えることによって工程通過性や表面特性を
改良している。
そして,特にデジタルオーディオテープ,ビデオテー
プ,メモリーテープ等高密度に情報を記録するために用
いられる磁気テープ分野ではベースとなるフイルムの表
面の均一さへの要求がますます強くなってきている。し
たがって,このようなフイルム用ポリエステルには,添
加微粒子同士の凝集に起因する粗大粒子が存在しない
か,仮に存在したとしてもその大きさが比較的小さいこ
と,あるいはその数が非常に少ないことが必要である。
なぜなら,そのような粗大粒子は磁気テープにしたとき
にドロップアウト(記憶された情報の抜け落ち)やS/N
比(シグナルとノイズの比)の低下といった好ましくな
い現象を引き起こすためである。
微粒子は,通常,エチレングリコールスラリーとして
反応系に添加されるが,このスラリーを調製する際に,
微粒子の分散を良くすることによって粗大粒子の生成を
抑制しようとする試みが種々なされている。例えば,特
開昭53−125495号公報には,特殊な撹拌翼を用いて微粒
子を微分散させてから添加する方法が提案されている。
また,特開昭56−88426号公報には,スラリーの調製辞
に分散剤を使用し,分散性の向上を図る方法が提案され
ている。
しかしながら,これらの方法ではスラリー中の微粒子
の分散は改良されるものの,このスラリーを反応系に添
加して重縮合するとポリマー中ではやはり粒子同士が凝
集してしまうという問題があり,その効果は十分ではな
かった。
また,微粒子のスラリーをポリエステルオリゴマーに
添加した後,特殊な高剪断力の分散機で処理することに
より粒子の凝集を防止する方法も提案されている(特開
昭64−31818号公報)が,重縮合反応の進行に伴って,
粒子同士の凝集が起こることは避けられず,しかも,高
粘度になるほど粗大粒子が多くなる等,この方法も問題
の十分な解決には到っていない。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は,微粒子を含有するフイルム用ポリエステル
を製造する方法において,粒子の凝集に基づく粗大異物
の生成が極めて少ないポリエステルを得ることのできる
ポリエステルの製造法を提供しようとするものである。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは,上記の課題を解決するため鋭意研究を
行った結果,エステル化反応で生成したエステル化物を
特定の平均重合度となるまで解重合した後,微粒子を添
加し,まず,溶融重縮合反応を行い,次いで,固相重縮
合反応を行うことが有効であることを見出し,本発明に
到達した。
すなわち,本発明の要旨は次のとおりである。
テレフタル酸とエチレングリコールとからポリエステ
ルを製造するに際し,エステル化物の平均重合度が5を
超えるまでエステル化反応を行った後,エステル化物に
対し5〜50重量%のエチレングリコールを添加してエス
テル化物の平均重合度が5以下となるまで解重合し,次
いで,不活性微粒子のエチレングリコールスラリーを添
加して重縮合物の極限粘度が0.35〜0.45となるまで溶融
状態で重縮合反応を行い,吐出,冷却して粒状体に成形
し,その後,極限粘度が0.5以上となるまで固相で重縮
合反応を行うことを特徴とする不活性微粒子を含有する
ポリエステルの製造法。
以下,本発明について詳細に説明する。
本発明において,ポリエステルの製造工程は,テレフ
タル酸とエチレングリコールとをエステル化する直接エ
ステル化工程,エステル化物を解重合した後,微粒子の
エチレングリコールスラリーを添加して溶融状態で重縮
合する工程及び固相で重縮合する工程からなっている。
エステル化反応は,回分式,半回分式又は連続式で,
通常,エステル化物の平均重合度が6〜10の範囲となる
ような条件で行われる。これは,工程制御のし易さ,オ
リゴマーの飛散の抑制,重縮合反応速度の促進等を総合
的に考慮すると最も好ましい条件である。
しかし,このような比較的高重合度のエステル化物に
微粒子のエチレングリコールスラリーを添加して重縮合
反応を行うと粒子の凝集が起こり易いことが分かったの
である。そこで,本発明においては,エステル化物にエ
チレングリコールを添加して解重合し,エステル化物の
平均重合度を5以下,好ましくは3〜4とした後,微粒
子のエチレングリコールスラリーを添加するものであ
る。
解重合する方法としては,エステル化物にエチレング
リコールの蒸気圧以上の圧力下にエチレングリコールを
添加して解重合する方法,常圧下でエチレングリコール
を添加し,還流させつつ解重合する方法等が採用でき,
解重合反応のための触媒として酢酸亜鉛等を添加しても
よい。
エチレングリコールの添加量はエステル化物に対し5
〜50重量%,好ましくは10〜30重量%の範囲とすること
が必要である。5重量%未満では実質的に解重合が進ま
ず,ポリマー中の粒子の凝集を防止する効果が不十分と
なり,一方,50重量%超えて添加しても効果が飽和する
ばかりか,かえってジエチレングリコール(DEG)の副
生が増加したり,エステル化物の温度が低下して固化し
易くなったり,あるいは重縮合反応初期に発泡が激しく
なって減圧系配管の詰まりの原因になる等の問題があり
好ましくない。
解重合反応は,エステル化物の融点以上,好ましくは
200〜260℃の範囲で行うのが適当である。200℃以下で
は微粒子のエチレングリコールスラリーを添加した時に
温度が下がり,部分的に溶融粘度が上昇して微粒子の凝
集が起こり易くなって好ましくなく,一方,260℃以上で
は添加したエチレングリコールが飛散して解重合が不十
分となったり,エステル化物の色調が悪化したりする場
合があるので好ましくない。
また,本発明において,ポリエステル製造の常法に従
って,三酸化アンチモン,二酸化ゲルマニウム,テトラ
ブチルチタネート等の重縮合反応触媒が添加される。さ
らに,必要に応じて,酢酸リチウム,酢酸マグネシウム
等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物,燐酸エ
ステル,燐酸のアンモニウム塩,ジブチルスズマレエー
ト等の各種添加物を添加することもでき,これらは微粒
子の添加以前に添加することが,粗大異物の発生を抑制
するという点から好ましい。
本発明における微粒子としては,酸化珪素,炭酸カル
シウム,炭酸マグネシウム,珪素アルミニウム,タル
ク,二酸化チタン,カオリン,クレー,ゼオライト,雲
母,燐酸カルシウム,硫酸バリウム等の無機微粒子や架
橋ポリエステル,アクリル酸エステルやスチレン等の架
橋重合体微粒子,有機シリコーン微粒子,フッ素樹脂粉
末,ポリアリレート(全芳香族ポリエステル)等の耐熱
性有機微粒子等が用いられる。
微粒子の平均粒径は0.01〜3μmが適当であり,より
好ましくは0.04〜1.5μmである。
微粒子の添加量は,生成ポリエステルに対して0.05〜
3重量%,より好ましくは0.01〜1.5重量%の範囲が適
当である。
微粒子をエチレングリコールに分散させてスラリーを
調製する際に,従来公知の界面活性剤や水酸化テトラエ
チルアンモニウム等のアンモニウム塩を併用することも
できる。また,微粒子の表面を従来公知のシラン系カッ
プリング剤,チタン系カップリング剤,ポリアクリル酸
金属塩,アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等の
表面処理剤により処理することもできる。
解重合したエステル化物に微粒子のエチレングリコー
ルスラリー等を添加した後,濾過してから重縮合反応に
供することも好ましい。この場合,3〜5μm程度の目開
きのフィルターが好適に用いられる。また,重縮合反応
前に,高剪断下で撹拌処理する従来公知の手段を補助的
に使用することもできる。
溶融重縮合反応は,常法に従って,減圧下に加熱して
発生するエチレングリコールを溜去することによって行
われ,重縮合物の極限粘度が0.35〜0.45となるまで反応
させた後,吐出,冷却して粒状に成形する。ここで重縮
合物の極限粘度が0.35以下では,粗大粒子の生成は少な
く異物量としては余り大きな影響は無いが,粒状に成形
する際にカッティングする時に割れたりして均一な粒状
物が得られず,固相重縮合反応の速度に差が生じ,重合
度のバラツキが大きくなり品質上好ましくない。
また,極限粘度が0.45以上となると溶融重縮合反応中
に粗大異物が発生し,目的とするポリエステルが得られ
なくなる。
得られた粗大異物の少ない粒状体を減圧下又は窒素の
ような不活性ガス気流下で,目的とする極限粘度まで固
相で重縮合反応を行うことにより,粗大異物の少ない微
粒子含有ポリエステルが得られる。
固相重縮合反応は常法に従って行えばよく,特別の条
件を採用する必要はない。例えば,粒状体を100℃前後
で結晶化させた後,その融点以下の温度,好ましくは融
点より60℃低い温度から融点より30℃低い温度の範囲に
加熱することによって行われる。この際,強度等のフイ
ルムの一般特性を維持するために,極限粘度が0.5以
上,好ましくは0.55〜0.75の範囲に到達するまで固相重
縮合することが必要である。
(作 用) 本発明の作用は,十分解明されていないが,平均重合
度を5を超えるエステル化物は,微粒子を添加するには
未だ酸価が高く分子量分布もブロードなため,微粒子を
添加するとエステル化物と微粒子の表面の微量の官能基
等との相互作用により微粒子の凝集が進むものと推察さ
れる。また,低重合度の段階では微粒子の分散状態が良
好であっても,重縮合反応により重合度が徐々に上昇す
るにつれ,触媒金属が析出したり,ポリマーのゲル化物
が発生し,これらが核となって粗大粒子に生長していく
ものと推察される。
(実施例) 次に,本発明を実施例により具体的に説明する。
なお,実施例における極限粘度と平均重合度の測定法
及びポリマー中の粒子分散性の評価法は次のとおりであ
る。
極限粘度〔η〕 フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒と
し,温度20℃で測定した溶液粘度から求めた。
平均重合度 ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ装置を用
い,カラム:ULTRASTYRAGEL LINEAR 2本,溶媒:クロ
ロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容量比
975/25)で測定した。
粒子分散性の評価 少量のポリマーを2枚のカバーグラスの間に挟み,280
℃で溶融プレスし,急冷後,顕微鏡で粗大粒子の数を観
察して1〜4級(1〜2級が合格)にランク付けした。
ここで,平均一次粒子径の4倍又は10μmのいずれか
大きい方の値を超える大きさの粒子を粗大粒子と判定し
た。
1級:粗大粒子数が10個/mm2未満 2級:粗大粒子数が11〜30個/mm2 3級:粗大粒子数が31〜50個/mm2 4級:粗大粒子数が51個/mm2以上 実施例1 テレフタル酸とエチレングリコールとを常法によりエ
ステル化し,エステル化反応率が95%で,平均重合度が
8.3のビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート
及びその低重合体(BHET)を得た。
このBHETに,エチレングリコール(EG)を25重量%を
添加し,240℃,3Kg/cm2Gで1時間解重合した。
次いで,重縮合反応触媒として三酸化アンチモン0.02
モル%(対テレフタル酸),安定化剤としてトリエチル
ホスフェート0.05モル%(対テレフタル酸),酢酸マグ
ネシウム0.10モル%(対テレフタル酸)及び酢酸リチウ
ム0.05モル%(対テレフタル酸)を添加した後,平均粒
径0.82μmの炭酸カルシウム(CaCO3)0.8重量%(対生
成ポリエステル)のEGスラリーを,240℃に保ちながら添
加し,30分間撹拌した。次いで,系内を240℃から280℃
に徐々に昇温すると共に常圧から1mmHg以下の高真空度
に圧力を減じながら〔η〕が0.37となるまで重縮合反応
を行い,吐出,冷却して粒状体を得た。
この粒状体を,常圧から4mmHgの真空度に圧力を減じ
ながら徐々に昇温し100℃で2時間結晶化処理後,さら
に昇温し230℃で固相重縮合反応を行い,〔η〕0.65の
ポリエチレンテレフタレートを得た。
実施例2〜6 第1表に示した条件以外は実施例1と同様に行い,第
1表に示す〔η〕のポリエチレンテレフタレートを得
た。
比較例1〜4 第1表に示した条件以外は実施例1と同様に行い,第
1表に示す〔η〕のポリエチレンテレフタレートを得
た。
以上の実施例及び比較例で得られたポリエステルの粒
子分散性をまとめて第1表に示す。
第1表から明らかなように,実施例1〜6で得られた
ポリエステルは何れも粗大粒子が少なく良好なものであ
った。これに対して比較例1〜4で得られたポリエステ
ルは実施例1〜6で得られたポリエステルに比較して粗
大粒子が多いものであった。
(発明の効果) 本発明によれば,微粒子の凝集による粗大異物の著し
く少ない微粒子含有ポリエステルが得られる。したがっ
て、本発明の方法によって得られたポリエステルを用い
てフイルムを製造する場合,押出機のフイルター詰まり
が少なくなり,得られるフイルムは,表面の粗大突起が
少なく,磁気テープのベースに用いた場合にドロップア
ウト等の望ましくない現象を引き起こさない適度の表面
特性を有した高品質のものとなる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−31818(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 63/78 - 63/87

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】テレフタル酸とエチレングリコールとから
    ポリエステルを製造するに際し,エステル化物の平均重
    合度が5を超えるまでエステル化反応を行った後,エス
    テル化物に対し5〜50重量%のエチレングリコールを添
    加してエステル化物の平均重合度が5以下となるまで解
    重合し,次いで,不活性微粒子のエチレングリコールス
    ラリーを添加して重縮合物の極限粘度が0.35〜0.45とな
    るまで溶融状態で重縮合反応を行い,吐出,冷却して粒
    状体に成形し,その後,極限粘度が0.5以上となるまで
    固相で重縮合反応を行うことを特徴とする不活性微粒子
    を含有するポリエステルの製造法。
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