JP2004043540A - ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン化合物およびポリマー中に可溶なチタン化合物を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、エチレンテレフタレート成分に対して高々5ミリモル%で、かつ、エチレンテレフタレート成分に対する該チタン化合物のチタン元素量が1〜15ミリモル%、それで該リン化合物のリン元素量を割った値が0.5〜15および該チタン元素量とリン元素量の和が1.5〜150ミリモル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびその製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、エステル化反応を経由し、重合触媒として実質的にチタン化合物を用いたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、重合触媒に起因する異物が少ない優れた透明性を維持しつつ、実用上問題ない溶融熱安定性と優れたポリマーの色相とを兼備するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートは、優れた力学特性、耐熱性、耐候性、耐電気絶縁性および耐薬品性を有することから、フィルム、繊維またはボトルなどの成形品として広く使用されている。
【0003】
かかるポリエチレンテレフタレートは、その製造において、重合反応を円滑に進行させるために重合触媒を用いる。この重合触媒としては種々の金属化合物が知られており、中でも三酸化アンチモンの如きアンチモン(Sb)化合物が安価でかつ高い重合活性を持つことから、広く使用されている。しかし、アンチモン化合物は、その一部が反応中に還元されて金属アンチモンやその他の異物を生成し、その結果、ポリマーの色を黒ずませ、濁りにより透明性を落としたり、製造工程における溶融熱安定性に悪影響を及ぼす結果、製造工程を不安定化させたりして得られる種々の成形品の品質を悪化させるといった問題を抱えている。
【0004】
アンチモン化合物以外の重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、テトラ−n−ブトキシチタンのようなチタン化合物が提案されている。ゲルマニウム化合物は、かなり高価であるため、ポリエチレンテレフタレートの製造コストが高くなるという問題がある。一方チタン化合物を重合触媒として使用した場合、アンチモン化合物で生じた金属アンチモンやその他の異物の生成が抑制され、上述の異物に起因する問題は改善される。しかし、得られたポリエチレンテレフタレート自身が黄色く着色したり、また、得られるポリエチレンテレフタレートの溶融熱安定性が乏しいといったチタン化合物特有の問題があった。
【0005】
一般に、ポリエチレンテレフタレートの黄味着色を抑制する方法として、コバルト化合物を添加することが行われており、確かにコバルト化合物の添加によってポリエチレンテレフタレートの色相(b値)は改善され、該ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用したポリエチレンテレフタレートフイルムにおいても色相改善の効果が確認されている。しかしながら、コバルト化合物の添加は、さらに得られるポリエチレンテレフタレートの溶融熱安定性を低下させ、ポリマーの分解を助長させるという問題があった。
【0006】
一方、ポリエステルを製造するための触媒として、特開昭58−38722号公報においてチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物、また特開平7−138354号公報においてチタン化合物とリン化合物との錯体を用いることが開示されている。これらの方法によれば、得られるポリエステルの溶融熱安定性をある程度向上させつつ、得られるポリマーの色調も向上させることができる。しかしながら、これらの方法によって得られるポリマーの色調の向上効果は未だ不十分なものであり、これらポリエステルポリマーを使用したポリエステルフイルムなどの成形品もさらなる色調の向上が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エステル化反応を経由し、チタン化合物を重合触媒として使用する際に、従来技術の問題を解消し、ポリマー中の重合触媒に起因する異物が少ない優れた透明性を維持しつつ、実用上問題のない溶融熱安定性と優れたポリマーの色相とを兼備するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、チタン化合物とリン化合物を特定の範囲で使用することによって、優れた透明性を維持しつつ、実用上問題のない溶融熱安定性と優れたポリマーの色相とをポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に具備させられることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして、本発明によれば、ジカルボン酸とグリコールとをエステル化反応を経由して得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、リン化合物およびポリマー中に可溶なチタン化合物を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、エチレンテレフタレート成分に対して高々5ミリモル%であり、かつ、該チタン化合物および該リン化合物の含有量が下記式(1)〜(3)
【0010】
【数7】
1≦Ti≦15 ・・・(1)
【0011】
【数8】
0.5≦P/Ti≦15・・・(2)
【0012】
【数9】
1.5≦Ti+P≦150・・・(3)
(ここで、式(1)〜(3)中の、Tiは該チタン化合物のチタン元素としてのモル数を、樹脂組成物中のエチレンテレフタレート成分のモル数で割った値(ミリモル%)であり、Pはリン化合物のリン元素としてのモル数を樹脂組成物中のエチレンテレフタレート成分のモル数で割った値(ミリモル%)である。)を満足するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の好ましい態様として、リン化合物が、下記式(I)
【0014】
【化8】
【0015】
(ここで、式中のR1およびR2は炭素原子数1〜4のアルキル基、Xは−CH2−または―CH(Y)−(Yはフェニル基を示す。)であり、R1およびR2はそれぞれ同一でも異なっていても良い。)で表されるホスホネート化合物であること、チタン化合物が、下記式(II)
【0016】
【化9】
【0017】
(ここで、式(II)中のR3はアルキル基またはフェニル基である。)で表わされる化合物または上記の式(II)で表わされる化合物と下記式(III)
【0018】
【化10】
【0019】
(ここで、式(III)中のnは2〜4の整数である。)で表わされる芳香族多価カルボン酸とを反応させた生成物であることのいずれかを少なくとも具備するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物も提供される。
【0020】
さらにまた、本発明によれば、ジカルボン酸とグリコールとをエステル化反応を経由してポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する方法において、リン化合物を熱安定剤およびポリマー中に可溶なチタン化合物を重合触媒として用い、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量を、エチレンテレフタレート成分に対して高々5ミリモル%とし、かつ、該チタン化合物およびリン化合物の添加量を上記の式(1)〜(3)の範囲にするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法も提供され、その好ましい態様として、ポリエチレンテレフタレート樹脂の原料として用いる全ジカルボン酸の80mol%以上がテレフタル酸であること、リン化合物が、上記の式(I)で表されるホスホネート化合物であること、チタン化合物が、上記の式(II)で表わされる化合物または上記の式(II)で表わされる化合物と上記の式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸とを反応させた生成物であることのいずれかを具備するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法も提供される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明をさらに詳しく説明する。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、80重量%以上、好ましくは85重量%以上がポリエチレンテレフタレート樹脂からなるものであり、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外の他の樹脂を、混合したものであっても良い。また、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂とは、エチレンテレフタレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステルである。なおここでいう主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは85モル%以上を意味する。ポリエチレンテレフタレート樹脂がエチレンテレフタレート成分以外の第3成分を共重合したものである場合、第3成分(共重合成分)としては、イソフタル酸、フタル酸等の如きテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂環族ジカルボン酸、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールが例示でき、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を構成するポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体が、芳香族ジカルボン酸100モル%に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上となるような量で用いられ、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体が脂肪族グリコール100モル%に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上となるような量で用いられたポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。特に原料として用いる全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸である、エステル化反応を経由して製造されたポリエチレンテレフタレートが好ましい。テレフタル酸を原料物質に使用するポリエチレンテレフタレートは、ジメチルテレフタレートを原料とするポリエチレンテレフタレートに比較し、エステル交換反応触媒が不要となり、それに伴ってエステル交換反応触媒を失活させるために添加する安定剤を必要としない。その結果、安定剤として添加するリン化合物とチタン化合物との間で発生する相互作用が抑制され、チタン化合物の添加量を減らせるという利点がある。
【0023】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、リン化合物を含有する。かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホネート化合物及びそれらの誘導体等があげられ、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。これらの中でも、リン化合物としては、下記式(I)で表されるホスホネート化合物が好ましい。
【0024】
【化11】
【0025】
(ここで、式中のR1およびR2は炭素原子数1〜4のアルキル基、Xは−CH2−または―CH(Y)−(Yはフェニル基を示す。)であり、R1およびR2はそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
特に好ましいリン化合物として、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボブトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロポキシ−ホスホノ−フェニル酢酸およびカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステルおよびジブチルエステルである。
【0026】
本発明において、これらのホスホネート化合物の好ましい理由は、熱安定剤として通常使用されているリン化合物に比べ、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行することから、重縮合反応中のチタン化合物の触媒活性の持続時間が長く、結果としてポリエステルへの触媒の添加量を少なくでき、触媒に対して多量の熱安定剤を添加してもポリエステルの熱安定性を損ないにくく、色調の低下を引き起こさないからである。
【0027】
本発明におけるリン化合物の含有量は、エチレンテレフタレート成分のモル数を基準として、リン元素量で0.5〜135ミリモル%であることが好ましく、更に1〜25ミリモル%が好ましく例示される。該リン元素量が0.5ミリモル%未満だと、十分な熱安定性が得られにくい。一方リン元素量が135ミリモル%を超えると、ポリマーの重合反応性が低下し好ましくない。
【0028】
これら、リン化合物の添加時期は、ポリエステル化反応が実質的に終了するまでであればいつでもよく、例えば、反応開始前のテレフタル酸を供給するグリコールエステル化反応前でも良いし、重縮合反応を開始する以前の大気圧下、重縮合反応を開始した後の減圧下、重縮合反応の末期または重縮合反応の終了後すなわちポリマーを得た後に添加してもよい。
【0029】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、重合触媒起因の異物の低減および透明性向上を目的にしていることから、実質的に触媒として、ポリマー中に可溶なチタン化合物を用いる点に特徴がある。そのことから、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中のアンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量は、エチレンテレフタレート成分のモル数を基準として、高々5ミリモル%である。アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、5ミリモル%を超えると、これらの触媒に起因する異物の析出などの問題が惹起する。
【0030】
本発明で触媒として用いるチタン化合物は、ポリマー中に可溶なものであれば特に限定されず、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば、酢酸チタンやテトラ−n−ブトキシチタンなどが挙げられる。これらの中でも、下記式(II)で表わされる化合物、または下記式(II)で表わされる化合物と下記式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物が好ましい。
【0031】
【化12】
【0032】
(ここで、式(II)中のR3はアルキル基またはフェニル基である。)
【0033】
【化13】
【0034】
(ここで、式(III)中のnは2〜4の整数である。)
上記式(II)で表わされるテトラアルコキサイドチタンとしては、Rがアルキル基またはフェニル基であれば特に限定されず、その中でもテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタンが好ましい。また、上記式(III)で表される芳香族多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸が好ましい。なお、一般式(III)で表される芳香族多価カルボン酸は、その無水物であっても良い。これらの中でも特に無水トリメリット酸が好ましく例示される。上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸とを反応させるには、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。
【0035】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、前述のポリマー中に可溶なチタン化合物を、樹脂組成物中のエチレンテレフタレート成分のモル数を基準として、チタン元素量で1〜15ミリモル%含有することが必要である。好ましい該チタン元素量は2〜10ミリモル%、特に2〜6ミリモル%である。該チタン元素量が1ミリモル%未満だと、ポリエステルの生産性が低下し、所望の分子量を有するポリエステルを得ることが難しくなる。一方、該チタン元素量が15ミリモル%を超えると、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の熱安定性が低下し、フィルムなどへの成形加工時の分子量の低下が大きく、やはり所望の力学的特性を有する成形加工品が得られない。尚、ここで言うポリマー中に可溶なチタン元素は、重縮合反応触媒として使用されたチタン化合物を示し、添加時期は、エステル化反応が実質的に終了した時点、すなわち実質的に水の留出が終了した時点以降であることが好ましい。
【0036】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、その製造段階で上述のチタン化合物を重合触媒として、また、リン化合物を熱安定剤として添加されたものであり、チタン化合物とリン化合物の含有量は以下の式(2)および(3)を満足することが必要がある。
【0037】
【数10】
0.5≦P/Ti≦15 ・・・(2)
【0038】
【数11】
1.5≦Ti+P≦150 ・・・(3)
(ここで、式(2)および(3)中のTiはエチレンテレフタレート成分に対するチタン化合物のチタン元素のモル比(ミリモル%)であり、Pはエチレンテレフタレート成分に対するリン化合物のリン元素のモル比(ミリモル%)である。)
上記式(2)中の(P/Ti)は、さらに好ましくは1〜5の範囲、また、上記式(3)中の(Ti+P)は、さらに好ましくは2〜50の範囲である。
【0039】
(P/Ti)が0.5未満の場合、得られるポリマーの色相が黄味を帯び、一方(P/Ti)が15を超えるとポリエチレンテレフタレートの重合反応性が大幅に低下し、所望の分子量を有するポリエステルを得ることができないのに対し、(P/Ti)が0.5〜15の範囲にある場合、色相の優れた所望の分子量を有するポリマーを得ることができる。また、(Ti+P)が1.5に満たない場合は、例えばフィルムに成形加工する際に、静電印可法によるフィルム製膜プロセスにおける生産性が低下したり、フィルムの厚みが不均一化したりし、それらに起因して成形加工性の低下や耐衝撃性の低下が生じる。一方(Ti+P)が150を超えると、触媒に起因する異物が発生し、ポリマーの透明性が低下する。
【0040】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のο−クロロフェノール中、35℃における極限粘度は、0.50〜0.80dl/gの範囲にあることが好ましく、さらに0.55〜0.75dl/g、特に0.55〜0.65dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.50dl/g未満であると、成形加工品、例えばフィルムの耐衝撃性が不足するため好ましくない。他方、極限粘度が0.80dl/gを超えると、原料ポリマーの極限粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0041】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、例えばフイルムへの成形用の場合、取扱い性を向上させるために、平均粒径0.05〜5.0μmの不活性粒子を滑剤として0.05〜5.0重量%程度添加してもよい。この際、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の特徴である優れた透明性を維持する点からは、添加する不活性粒子は粒径の小さいものが、またその添加量はできる限り少ないことが好ましい。添加する不活性粒子としては、コロイダルシリカ、多孔質シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、カオリン、複合酸化物粒子、架橋ポリスチレン、アクリル系架橋粒子、メタクリル系架橋粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。また、フィルム、繊維、ボトルなど各成形品の要求に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、可塑剤、色相改良剤、核剤、紫外線吸収剤などの各種機能剤を加えてもよい。
【0042】
さらに、得られるポリエステルの色相の改善補助をするために、反応系のポリエステルの製造段階において、たとえばアゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の有機青色顔料等の無機系以外の整色剤を添加することもできる。
【0043】
エステル化反応を経由してポリエチレンテレフタレートを製造する方法について、以下に詳述する。
【0044】
(エステル化工程)
まず、ポリエチレンテレフタレートを製造するに際して、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族グリコールをエステル化させる。具体的には、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族グリコールとを含むスラリーを調製する。なお、このスラリーには、芳香族ジカルボン酸1モルに対して、通常1.1〜1.6モル、好ましくは1.2〜1.4モルの脂肪族グリコールが含まれる。そして、このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
【0045】
エステル化反応は、反応物を自己循環させなから一段で実施する方法又は、2つ以上のエステル化反応器を直列に連結し実施する方法が好ましく、いずれも脂肪族グリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
【0046】
反応物を自己循環させながら一段で連続的にエステル化を行う場合の反応条件は、通常、反応温度が240〜280℃、好ましくは250〜270℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaの条件下で行われ、エステル化率が通常90%以上、好ましくは95%以上になるまで反応させることが望ましい。
【0047】
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとのエステル化反応物(オリゴマー)が得られ、このオリゴマーの重合度は好ましくは4〜10の範囲である。このようにして得られたオリゴマーは、次いで重縮合工程に供給される。
【0048】
(重縮合工程)
重縮合工程では、前述のチタン化合物からなる重縮合触媒の存在下に、エステル化工程で得られたオリゴマーをポリエステルの融点以上の温度(通常240〜280℃)に減圧下で加熱し、重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族グリコール及び重縮合で発生する脂肪族グリコールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0049】
重縮合反応は、1槽で行ってもよく、複数の槽に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が2段階で行われる場合には、第1槽目の重縮合反応は、反応温度が245〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が100〜1kPa、好ましくは50〜2kPaの条件下で行われ、最終第2槽での重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜290℃、反応圧力は通常1000〜10Paで、好ましくは500〜30Paの条件下で行われる。
【0050】
なお、本発明における、エステル化反応を経由してポリエチレンテレフタレートを製造する方法は、わざわざ原料であるジカルボン酸やグリコールと一緒にチタン化合物やリン化合物とを予め加熱しないことが好ましい。反応に要する工程が省けることにより、副生成するジエチレングリコール量を抑制できるといった効果が得られる。これらの反応工程が省ける理由の1つとして、チタン化合物と式(III)で表される芳香族多価カルボン酸化合物との反応生成物を用いることで、色調の低下が抑制されることが挙げられる。
【0051】
このようにして、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を構成するポリエチレンテレフタレートを製造することができ、得られたポリエチレンテレフタレートは、通常、溶融状態で押出しながら、冷却後、粒状(チップ状)のものとする。この際、得られたポリエチレンテレフタレートの極限粘度は0.50〜0.80dl/gであることが望ましい。
【0052】
また、本発明で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物はフィルム、繊維またはボトルなどといった成形品に好適に用いられる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の特性は、以下の方法で測定・評価した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0054】
(1)極限粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレートチップ0.6gをオルトクロロフェノール50ml中に、加熱溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
【0055】
(2)色相(Col)
粒状のポリエチレンテレフタレートペレットを150℃にて6時間乾燥機中で熱処理して乾燥させた後、290℃にて溶融押出し器から回転冷却ドラム上にシート状に溶融押出し、急冷固化して厚さ500μmの未延伸フイルム(シート)を作成する。この厚み500μmのポリエチレンテレフタレートフイルムを5枚重ね合わせた物を160℃にて90分乾燥機中で熱処理して結晶化させた後、カラーマシン社製CM―7500型カラーマシンで測定した。
【0056】
(3)ヘーズ
(2)で得られた未延伸シートの表面に傷などが発生していない箇所をサンプリングし、日本電色工業社濁度計(HDH−1001DP)にて測定した。
【0057】
(4)金属含有濃度分析
チタン,およびリン原子濃度は、溶液の場合はそのまま液体セルに充填し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中の濃度は、粒状のポリエチレンテレフタレートペレットをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、それぞれ蛍光X線装置(理学電機工業3270E型)にて、定量分析した。なお、不活性粒子を含む場合は、予め溶媒中で遠心分離処理により不活性粒子を除去した上で同様の測定を行った。
【0058】
(5)熱安定性
色相測定(2)のために作成した未延伸フイルムの極限粘度を(1)記載の方法と同じ方法にて測定し、該未延伸フイルムの極限粘度からフイルム作成に使用したポリエチレンテレフタレートペレットの極限粘度を差し引いた値を算出し、以下の基準で熱安定性を判定した。
熱安定性が特に優れる ・・・ −0.03以下
熱安定性が優れる ・・・ −0.05以下
熱安定性が普通 ・・・ −0.05〜−0.07
熱安定性が劣る ・・・ −0.07以上
【0059】
[実施例1]
予め303部のオリゴマーが滞留する反応器内に、攪拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、303部の高純度テレフタル酸と157部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度で1時間かけて供給し、直後にトリエチルホスホノアセテート0.066部を加えて反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間行い反応を完結させた。この時のエステル化率は98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は約5〜7であった。
【0060】
このエステル化反応で得られたオリゴマー303部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、テトラ−n−ブチルチタネート0.012部を投入した。引続き系内の反応温度を255から290℃、又、反応圧力を常圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水,エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。
【0061】
重縮合反応の進行度合いを、系内の攪拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押出し、冷却,カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。この時の重縮合反応時間は、160分であった。
【0062】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、ペレットの状態で180℃の温度で充分に真空乾燥した。乾燥したペレットを280℃で溶融状態とし、回転しているキャスティングドラムに溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物を押出して、シート状物を得た。なお、キャスティングドラムは溶融物がキャストされる直前の表面温度が30℃で、その後表面温度は徐々に40℃まで上がっており、また、キャスティングドラムに溶融物がキャストされた直後に、シート状物のキャスティングドラムとは異なる側の位置に、ワイヤー状の電極があり、該電極によってシート状物を静電印加させ、キャスティングドラムに密着させ、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0063】
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
チタン化合物を下記方法にて合成したトリメリット酸チタン0.016部に変更する以外は実施例1と同様にして重縮合反応を行いポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0065】
トリメリット酸チタンの合成方法
無水トリメリット酸2重量部をエチレングリコール98重量部に混ぜたエチレングリコール溶液にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対してモル比が0.5となるように添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめ、その後、常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させ、析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。
【0066】
[実施例3〜9、比較例1〜5]
チタン化合物、リン化合物およびそれらの添加量を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様にして重縮合反応を行いポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0067】
【表1】
ここで、表1中の、TBTはテトラ−n−ブトキシチタン、TMTはトリメリット酸チタン、TEPAはトリエチルホスホノアセテート、PEEはカルボエトキシメタン−ホスホン酸ジエチルエステル、HPEはヒドロキシメチレン−ホスホン酸ジエチルエステル、TMPはトリメチルホスフェイトを示す。
【0068】
表1からも明らかなように、ポリマー可溶性チタン化合物をチタン金属として1〜15ミリモル%の範囲で含有し、(P/Ti)や(Ti+P)が本発明の範囲にあるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、透明性や色調、熱安定性などで良好な性能が得られた。これに対し、(P/Ti)や(Ti+P)が本発明の範囲を外れる比較例1〜5のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、透明性、色相または熱安定性などが不良であった。また、比較例2および比較例4のポリエステル樹脂組成物は、IVが低いために、フィルムに製膜することができなかった。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、ジカルボン酸とグリコールとをエステル化反応を経由して得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、チタン化合物およびリン化合物の含有量を適正化することによって、チタン化合物を触媒として使用する場合の従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、ポリエチレンテレフタレートが持つ優れた特性を保持しながら、触媒起因の異物が少なく、透明性および熱安定性に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂を提供することができる。
Claims (8)
- ジカルボン酸とグリコールとをエステル化反応を経由して得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、リン化合物およびポリマー中に可溶なチタン化合物を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物であって、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、エチレンテレフタレート成分に対して高々5ミリモル%で、かつ、該チタン化合物および該リン化合物の含有量が下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
- ジカルボン酸とグリコールとをエステル化反応を経由してポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する方法において、リン化合物を熱安定剤およびポリマー中に可溶なチタン化合物を重合触媒として用い、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量を、エチレンテレフタレート成分に対して高々5ミリモル%とし、かつ、該チタン化合物およびリン化合物の添加量を下記式(1)〜(3)の範囲にすることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- ポリエチレンテレフタレート樹脂の原料として用いる全ジカルボン酸の80mol%以上がテレフタル酸であることを特徴とする請求項4に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
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