JP3793441B2 - 2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合触媒として実質的にチタン化合物を用いた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリマー中の重合触媒に起因する異物が少ない優れた透明性を維持しつつ、実用上問題ない溶融熱安定性と優れたポリマーの色相を兼備する2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,6−ポリエチレンナフタレートは、優れた力学特性、耐熱性、耐候性、耐電気絶縁性および耐薬品性を有することから、フィルム、繊維またはボトルなどの成形品として広く使用されている。
【0003】
かかる2,6−ポリエチレンナフタレートは、その製造において、重合反応を円滑に進行させるために重合触媒を用いる。この重合触媒としては種々の金属化合物が知られており、中でも三酸化アンチモンの如きアンチモン(Sb)化合物が安価でかつ高い重合活性を持つことから、広く使用されている。しかし、Sb化合物は、その一部が反応中に還元されて金属Sbやその他の異物を生成し、その結果、ポリマーの色を黒ずませたり、製造工程を不安定化させたりして成形品の品質を悪化させるといった問題を抱えている。
【0004】
アンチモン化合物以外の重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、テトラ−n−ブトキシチタンのようなチタン化合物が提案されている。ゲルマニウム化合物は、かなり高価であるため、ポリエステルの製造コストが高くなるという問題がある。一方チタン化合物を重合触媒として使用した場合、上記のような金属Sbやその他の異物の生成が抑制され、上述の異物に起因する問題は改善される。しかし、得られた2,6−ポリエチレンナフタレート自身が黄色く着色されたり、また、得られる2,6−ポリエチレンナフタレートの溶融熱安定性が乏しいといったチタン化合物特有の問題があった。
【0005】
一般に、2,6−ポリエチレンナフタレートの着色を抑制するには、コバルト化合物を2,6−ポリエチレンナフタレートに添加して黄味を抑えることが行われており、確かにコバルト化合物の添加によってポリエステルの色相(b値)は改善される。しかしながら、コバルト化合物の添加は、さらに得られる2,6−ポリエチレンナフタレートの溶融熱安定性が低下させ、ポリマーの分解を助長させるという問題がある。
【0006】
一方、ポリエステルを製造するための触媒として、チタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物(特開昭58−38722号公報)またはチタン化合物とリン化合物との錯体(特開平7−138354号公報)を用いることも提案されている。これらの方法によれば、得られるポリエステルの溶融熱安定性をある程度向上させつつ、得られるポリマーの色調も向上させることができる。しかしながら、これらの方法によって得られるポリマーの色調の向上効果は未だ不十分なものであり、さらなるポリマーの色調の向上が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、チタン化合物を触媒として使用する際の従来技術の問題を解消し、ポリマー中の重合触媒に起因する異物が少ない優れた透明性を維持しつつ、実用上問題ない溶融熱安定性と優れたポリマーの色相を兼備する2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、チタン化合物とリン化合物を特定の範囲で使用することによって、優れた透明性を維持しつつ、実用上問題ない溶融熱安定性と優れたポリマーの色相とを2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物に具備させられることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして、本発明によれば、リン化合物およびポリマー中に可溶なチタン化合物を含有する2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物であって、リン化合物が、以下の式(I)で表されるホスホネート化合物であり、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、2,6−エチレンナフタレート成分に対して高々5ミリモル%以下で、かつ、該チタン化合物および該リン化合物の含有量が以下の式(1)〜(3)
【0010】
【数7】
4≦Ti≦15 ・・・(1)
【0011】
【数8】
2≦P/Ti≦15 ・・・(2)
【0012】
【数9】
15≦Ti+P≦150 ・・・(3)
(ここで、式(1)〜(3)中の、Tiは該チタン化合物のチタン元素としてのモル数を、樹脂組成物中の2,6−エチレンナフタレート成分のモル数で割った値(ミリモル%)であり、Pはリン化合物のリン元素としてのモル数を樹脂組成物中の2,6−エチレンナフタレート成分のモル数で割った値(ミリモル%)である。)
【化7】
(ここで、式中の、R 1 およびR 2 は炭素数原子数1〜4のアルキル基、Xは−CH 2 −または―CH ( Y ) −(Yは、ベンゼン環を示す。)であり、R 1 およびR 2 はそれぞれ同一でも異なっていても良い。)を満足するポリエチレンタレフタレート樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、本発明のポリエチレンタレフタレート樹脂組成物の好ましい態様として、チタン化合物が、以下の式(II)
【0016】
【化8】
【0017】
(ここで、式(II)中の、R3、R4、R5およびR6はアルキル基またはフェニル基であり、それぞれ同一でも異なる基であってもよく、またmは1〜3の整数である。)で表わされる化合物または上記の式(II)で表わされる化合物と以下の式(III)
【0018】
【化9】
【0019】
(ここで、式(III)中の、nは2〜4の整数をである。)で表わされる芳香族多価カルボン酸とを反応させた生成物であることのいずれかを少なくとも具備する2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物も提供される。
【0020】
さらにまた、本発明によれば、リン化合物を安定剤およびポリマー中に可溶なチタン化合物を触媒として2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を製造する際に、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量を、2,6−エチレンナフタレート成分に対して高々5ミリモル%以下とし、かつ、該チタン化合物およびリン化合物の添加量を上記の式(1)〜(3)の範囲にする2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法も提供され、その好ましい態様として、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂の原料として用いる全ジカルボン酸の80mol%以上が2,6−ジメチルナフタレートであること、2,6−ジメチルナフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応させる前に、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂中に可溶なチタン化合物を添加して、重縮合反応触媒に加えてエステル交換反応触媒として用いること、エステル交換反応を、0.05〜0.20MPaの加圧下にて実施すること、リン化合物が、上記のの式(I)で表されるホスホネート化合物であること、チタン化合物が、上記の式(II)で表わされる化合物または上記の式(II)で表わされる化合物と上記の式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸とを反応させた生成物であることのいずれかを具備する2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法も提供される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳しく説明する。
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、80重量%以上、好ましくは85重量%以上が2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂からなるものであり、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂以外の他の樹脂を、混合したものであっても良い。また、本発明における2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂とは、2,6−エチレンナフタレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステルである。なおここでいう主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは85モル%以上を意味する。2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂が2,6−エチレンナフタレート成分以外の第3成分を共重合したものである場合、第3成分(共重合成分)としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の如き2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂環族ジカルボン酸、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールが例示でき、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、リン化合物を含有する。かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホネート化合物及びそれらの誘導体等があげられ、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。これらの中でも、リン化合物としては、前述の式(I)で表されるホスホネート化合物が好ましい。
【0023】
特に好ましいリン化合物は、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボプトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸およびカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステルおよびジブチルエステルである。
【0024】
本発明において、これらのホスホネート化合物の好ましい理由は、通常安定剤として使用されリン化合物に比べ、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行することから、重縮合反応中のチタン化合物の触媒活性の持続時間が長く、結果としてポリエステルへの触媒の添加量を少なくでき、触媒に対して多量の安定剤を添加してもポリエステルの熱安定性を損ないにくく、色調の低下を引き起こさないからである。
【0025】
これら、リン化合物の添加時期は、エステル交換反応が実質的に終了した後であればいつでもよく、例えば、重縮合反応を開始する以前の大気圧下、重縮合反応を開始した後の減圧下、重縮合反応の末期または重縮合反応の終了後すなわちポリマーを得た後に添加してもよい。
【0026】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、触媒起因の異物低減および透明性向上を目的にしていることから、実質的に触媒として、ポリマー中に可溶なチタン化合物を用いたものである。そのことから、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物中のアンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量は、2,6−エチレンナフタレート成分のモル数を基準として、高々5ミリモル%以下である。アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、5ミリモル%以下を超えると、これらの触媒に起因する異物の析出などの問題が惹起する。
【0027】
本発明で触媒として用いるチタン化合物は、ポリマー中に可溶なものであれば特に限定されず、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば、酢酸チタンやテトラ−n−ブトキシチタンなどが挙げられる。これらの中でも、前述の式(II)で表わされる化合物、または前述の式(II)で表わされる化合物と前述の式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物が好ましい。
【0028】
上記式(II)で表わされるテトラアルコキサイドチタンとしては、R3、R4、R5、R6がアルキル基またはフェニル基であれば特に限定されず、具体的には、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドに例示されるチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネートなどの挙げることができ、なかでもチタンテトラアルコキシドが好ましく、特にその中でもテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタンが好ましい。また、上記式(III)で表される芳香族多価カルボン酸としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸が好ましい。なお、一般式(III)で表される芳香族多価カルボン酸は、その無水物であっても良い。上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸とを反応させるには、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。
【0029】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、前述のポリマー中に可溶なチタン化合物を、樹脂組成物中の2,6−エチレンナフタレート成分のモル数を基準として、チタン元素量で4〜15ミリモル%含有することが必要である。好ましい該チタン元素量は6〜12ミリモル%、特に6〜10ミリモル%である。該チタン元素量が4ミリモル%未満だと、ポリエステルの生産性が低下し、所望の分子量を有するポリエステルが得られない。一方、該チタン元素量が15ミリモル%を超えると、得られる2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の熱安定性が低下し、フィルムなどへの成形加工時の分子量の低下が大きく、やはり所望の力学的特性を有する成形加工品が得られない。尚、ここで言うポリマー中に可溶なチタン金属元素とは、エステル交換反応による第一段階反応をする場合は、エステル交換反応触媒として使用されたチタン化合物と重縮合反応触媒として使用されたチタン化合物の合計を示す。
【0030】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、その製造段階で上述のチタン化合物を触媒として、また、リン化合物を安定剤として添加されたものであり、チタン化合物とリン化合物の含有量は以下の式(2)および(3)を満足することが必要がある。
【0031】
【数10】
2≦P/Ti≦15 ・・・(2)
【0032】
【数11】
15≦Ti+P≦150 ・・・(3)
(ここで、式(2)および(3)中の、Tiは2,6−エチレンナフタレート成分に対するポリエステル中に溶解されたチタン化合物のチタン元素のモル比(ミリモル%)であり、Pは2,6−エチレンナフタレート成分に対するポリエステル中に含有されるリン化合物のリン元素のモル比(ミリモル%)である。)
上記式(2)中の(P/Ti)の好ましい範囲は4〜10の範囲、また、上記式(3)中の(Ti+P)の好ましい範囲は25〜100である。
【0033】
(P/Ti)が2未満の場合、得られるポリマーの色相が黄味を帯び、一方(P/Ti)が15を超えるとポリエステルの重合反応性が大幅に低下し、所望の分子量を有するポリエステルを得ることができないのに対し、(P/Ti)が2〜15の範囲にある場合、色相の優れた所望の分子量を有するポリマーを得ることができる。また、(Ti+P)が15に満たない場合は、例えばフィルムに成形加工する際に、静電印可法によるフィルム製膜プロセスにおける生産性が低下したり、フィルムの厚みが不均一化したりし、それらに起因して成形加工性の低下や耐衝撃性の低下が生じる。一方(Ti+P)が150を超えると、触媒に起因する異物が発生し、ポリマーの透明性性が低下する。
【0034】
本発明における2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂は、2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを原料として用いたものでも、2,6−ジメチルナフタレートに代表される2,6−ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールを原料として用いたものでもよい。これらのなかでも、原料として用いる全ジカルボン酸成分の80モル%以上が2,6−ジメチルナフタレートである、エステル交換反応を経由する製造方法が好ましい。2,6−ジメチルナフタレートを原料物質に使用すると、2,6−ナフタレンジカルボン酸を原料とする製造方法に比較し、重縮合反応中に安定剤として添加したリン化合物の飛散が少ないという利点がある。また、2,6−ジメチルナフタレートを原料物質とする製造方法の中でも、チタン化合物の添加量を低減できることから、チタン化合物の少なくとも一部をエステル交換反応開始前に添加し、エステル交換反応触媒と重縮合反応触媒の二つ触媒を兼用させる製造方法が好ましい。
【0035】
また、本発明では、チタン化合物の添加量をより低減できることから、エステル交換反応は0.05〜0.20MPaの加圧下にて実施するのが好ましい。エステル交換反応時の圧力が、0.05MPa未満だとチタン化合物の触媒作用による反応の促進が充分なものになり難く、一方0.20MPaを超えると、副生成物としてジエチレングリコールが大量に発生しやすくなり、得られポリマーの熱安定性などの特性が低下しやすい。
【0036】
本発明のポリエステル樹脂組成物の固有粘度(ο−クロロフェノール、35℃)は、0.50〜0.80の範囲にあることが好ましく、さらに0.55〜0.75、特に0.55〜0.65の範囲が好ましい。固有粘度が0.50未満であると、成形加工品、例えばフィルムの耐衝撃性が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が0.80を超えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0037】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、例えばフイルムへの成形用の場合、取扱い性を向上させるために、平均粒径0.05〜5.0μmの不活性粒子を滑剤として0.05〜5.0重量%程度添加してもよい。この際、本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の特徴である優れた透明性を維持する点からは、添加する不活性粒子は粒径の小さいものが、またその添加量はできる限り少ないことが好ましい。添加する不活性粒子としては、コロイダルシリカ、多孔質シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、カオリン、複合酸化物粒子、架橋ポリスチレン、アクリル系架橋粒子、メタクリル系架橋粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。また、フィルム、繊維、ボトルなど各成形品の要求に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、可塑剤、色相改良剤、核剤、紫外線吸収剤などの各種機能剤を加えてもよい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の特性は、以下の方法で測定・評価した。
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル0.6gをオルトクロロフェノール50ml中に、加熱溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
【0039】
(2)色相(Col)
粒状のポリマーサンプルを160℃にて90分乾燥機中で熱処理して結晶化させた後、カラーマシン社製CM―7500型カラーマシンで測定した。
【0040】
(3)ヘーズ
粒状のポリマーサンプルを150℃にて6時間乾燥機中で熱処理して乾燥させた後、290℃にて溶融押出し器から回転冷却ドラム上にシート状に溶融押出し、急冷固化して厚さ500umの未延伸フィルム(シート)を作成する。得られた未延伸シートの表面に傷などが発生していない箇所をサンプリングし、日本電色工業社濁度計(HDH−1001DP)にて測定した。
【0041】
(4)金属含有濃度分析
チタン,リン原子濃度は、乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡(SEM,日立計測機器サービスS570型)にセットし、それに連結したエネルギー分散型X線マイクローアナライザー(XMA,堀場EMAX−7000)にて定量分析を実施した。
【0042】
ポリエステル中の金属元素の濃度は、粒状のサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業3270E型)にて、定量分析した。
【0043】
(5)熱安定性
ヘーズ測定のために作成した未延伸フイルム(シート)の極限粘度を前述の(1)記載の方法と同じ方法にて測定し、該測定値からシート作成に使用した粒状ポリマーの極限粘度を差し引いた値を算出し、該値より以下の基準で熱安定性を判定した。
熱安定性が特に優れる ・・・ −0.03以上
熱安定性が優れる ・・・ −0.05以上〜−0.03未満
熱安定性が普通 ・・・ −0.07以上〜−0.05未満
熱安定性が劣る ・・・ −0.07未満
【0044】
[実施例1]
2,6−ジメチルナフタレート100部とエチレングリコール56部の混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート0.011部を加圧反応が可能なSUS(ステンレス)製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、トリエチルホスホノアセテート0.042部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後反応生成物を重合容器に移し、290℃まで昇温し、100Paの高真空下にて重縮合反応を行い、固有粘度0.61、ジエチレングリコール量1.5モル%(2,6−エチレンナフタレート成分対比)の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を得た。
該樹脂組成物を粒子状のペレットにし、180℃で5時間乾燥後、単軸混錬押出し機(内径65mm、径路長1000mm、滞留時間10分)にて溶融温度290℃から徐々に温度を310℃にまで上げて溶融混錬し、ダイから押出して厚み210μmの未延伸フィルムを得た。
得られた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
実施例1において、チタン化合物およびその添加量を下記方法にて合成したトリメリット酸チタン0.02部に変更する以外は同様にして重縮合反応を行いポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0046】
トリメリット酸チタンの合成方法
無水トリメリット酸2重量部をエチレングリコール98重量部に混ぜたエチレングリコール溶液にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対してモル比が0.5となるように添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめ、その後、常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させ、析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。
【0047】
[実施例3、5、6、9、比較例1〜6、8および9]
チタン化合物、リン化合物およびそれらの添加量を表1示す通り変更する以外は、実施例1と同様にして重縮合反応を行いポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0048】
[比較例7]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール56部の混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート0.011部を加圧反応が可能なSUS製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、トリエチルホスホノアセテート0.042部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0049】
その後反応生成物に三酸化二アンチモン0.048部添加し、混合物を重合容器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.60、ジエチレングリコール量が1.5%であるポリエステル樹脂組成物を得た。
【0050】
得られたポリエステル樹脂組成物及びこれを使用して得られた未延伸フイルムの特性を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
ここで、表1中の、TBTはテトラ−n−ブトキシチタン、TMTはトリメリットチタン、TEPAはトリエチルホスホノアセテート、PEEはカルボエトキシメタン−ホスホン酸ジエチルエステル、HPEはヒドロキシメチレン−ホスホン酸ジエチルエステル、TMPはトリメチルホスフェイトを示す。
【0053】
表1からも明らかなように、ポリマー可溶性チタン化合物をチタン金属として4〜15モル%の範囲で含有し、(P/Ti)や(Ti+P)が本発明の範囲にあるポリエステル樹脂組成物は良好な性能が得られた。これに対し、(P/Ti)や(Ti+P)が本発明の範囲を外れる比較例1〜7のポリエステル樹脂組成物は、透明性、色相または熱安定性などが不良であった。また、比較例2および比較例4のポリエステル樹脂組成物は、IVが低いために、また、比較例6のポリエステル樹脂組成物は、ピニング性が悪いために、フィルムに製膜することができなかった。なお、比較例7がアンチモン元素を70mモル%含有する以外は、アンチモン元素およびゲルマニウム元素はどれも含有していなかった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン化合物を触媒として使用する場合の従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、ポリエステルが持つ優れた特性を保持しながら、触媒起因の異物が少なく、透明性に優れた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂を提供することができる。
Claims (7)
- リン化合物およびポリマー中に可溶なチタン化合物を含有する2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物であって、リン化合物が、以下の式(I)で表されるホスホネート化合物であり、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量が、2,6−エチレンナフタレート成分に対して高々5ミリモル%以下で、かつ、該チタン化合物および該リン化合物の含有量が以下の式(1)〜(3)を満足することを特徴とする2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物。
- リン化合物を安定剤およびポリマー中に可溶なチタン化合物を触媒として2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を製造する際に、リン化合物が、以下の式(I)で表されるホスホネート化合物であり、アンチモン元素およびゲルマニウム元素の含有量を、2,6−エチレンナフタレート成分に対して高々5ミリモル%以下とし、かつ、該チタン化合物およびリン化合物の添加量を以下の式(1)〜(3)の範囲にすることを特徴とする2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂の原料として用いる全ジカルボン酸の80mol%以上が2,6−ジメチルナフタレートである請求項3記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 2,6−ジメチルナフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応させる前に、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂中に可溶なチタン化合物を添加して、該チタン化合物をエステル交換反応触媒として用いる請求項3記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- エステル交換反応を、0.05〜0.20MPaの加圧下にて実施する請求項4記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
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---|---|---|---|
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