JP2861598B2 - 金属上の塗膜厚測定方法及び装置並びに塗装金属体の製造方法及び装置 - Google Patents

金属上の塗膜厚測定方法及び装置並びに塗装金属体の製造方法及び装置

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JP2861598B2
JP2861598B2 JP4442692A JP4442692A JP2861598B2 JP 2861598 B2 JP2861598 B2 JP 2861598B2 JP 4442692 A JP4442692 A JP 4442692A JP 4442692 A JP4442692 A JP 4442692A JP 2861598 B2 JP2861598 B2 JP 2861598B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】鉄鋼などの金属或いはめっきされ
た金属上に存在する塗膜の厚さを、非破壊で迅速に或い
は連続的に精度よく測定する技術及びこの測定法を用い
た塗膜被覆製品の製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】加工された金属に塗装を施す従来の塗装
製品に加え、近年では加工前に塗装を施した言わば塗装
金属素材とも言うべき塗装金属体の需要が高まってい
る。このようなプレコート製品では、加工に際して要求
される塗膜厚範囲と加工後実際の使用に当たって要求さ
れる塗膜厚範囲との両方を満たす塗膜厚が適性塗膜厚範
囲となる。一般に、この範囲は狭く、厳しい塗膜厚制御
技術が要求されることになる。
【0003】塗膜厚制御には、塗装技術も含め一連の技
術を要するが、このうち最も強く要望されているのは、
塗膜厚の測定技術それも非破壊且つ迅速な測定技術であ
る。
【0004】金属上塗膜の厚さ測定法には、マイクロメ
ーター法、重量法、電磁法、赤外線反射法等がある。マ
イクロメーター法、重量法は、塗膜を剥いでその前後の
寸法差或いは重量差から塗膜厚を求める方法で、直接的
に厚さが求まる絶対法である。JISにはこの二つの方
法が規定されている。
【0005】電磁法、赤外線反射法は相対法であって、
上記の絶対法を基準として電磁強度或いは赤外線吸収量
が厚さに換算される。測定の迅速さ、非破壊測定が可能
な点でこれらの相対法は優れているが、限られた条件下
でなければ測定出来ない欠点があった。この欠点を克服
した測定法にコンプトン散乱X線測定法がある。
【0006】コンプトン散乱X線測定法を用いた合成樹
脂皮膜金属板の製造法については、特公昭62−268
29号公報に紹介されているが、非膜厚の測定に関して
は、放射線を照射し皮膜によって散乱されるコンプトン
散乱度を測定非破壊測定法であるとの紹介に止まり、具
体的な方法が開示されていない。
【0007】従来、皮膜厚のコンプトン散乱X線測定法
を具体的に開示したものに、例えば特開昭64−418
10号公報がある。ここでは、塗膜で被覆された金属に
X線を照射し発生するコンプトン散乱X線の強度は、塗
膜の厚さと直線関係にあり、この直線の切片は下地金属
と関係し勾配は塗膜の種類と関係することを明らかにし
ている。そして、鋼板下地に樹脂成分のみからなる塗膜
を附した塗装金属についての検量線を基準とし、蛍光X
線強度から得た補正値でコンプトン散乱X線強度を補正
して塗膜の厚さを迅速に測定する方法が提案されてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法では塗膜か
ら発生する蛍光X線とめっき層又は下地金属から発生す
る蛍光X線とを区別せずに取り扱って補正値を求めてい
る。しかしながら元素が塗膜に含まれているのかめっき
層に含まれているのかにより、コンプトン散乱X線強度
に与える影響は異なり、場合によっては逆の傾向になる
ことも考えられる。つまり下地金属よりも軽い元素がめ
っきされている場合、めっき層が厚くなればコンプトン
散乱X線強度は大きくなるが、この元素が塗膜に含まれ
ている場合には元素の吸収効果によりコンプトン散乱X
線強度は小さくなってしまう。特開昭64−41810
号公報に開示された方法では、高精度測定の要望には応
えられないという問題が残されていた。
【0009】この問題を解決するためにこの発明は行わ
れたもので、めっき層の変動が与える影響と塗膜の変動
が与える影響とを区別し、塗膜の変動に対しては塗膜成
分に基づく計算によってきめ細かく補正を行う技術が核
心であって、この技術を用いることによって、高品質の
塗装金属体製品の製造技術を提供しようとするものであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
の手段は、コンプトン散乱X線や各種の蛍光X線などの
二次X線を測定して塗膜の厚さを求める方法であって、
二次X線強度との関係式に基づいて塗膜厚を求める方法
に属するが、関係式に必要な数値のうち変動が激しい塗
膜のX線に対する吸収係数に依存する値を、計算によっ
て求める金属上の塗膜厚測定方法を中核とし、次に示す
(1)上記の方法、(2)上記の方法を実用するための
装置、(3)二層塗膜に対応する測定方法、(4)
(3)を実用するための装置、(5)(1)、(3)の
方法を用いる塗装金属体の製造方法及び(6)(5)の
製造方法を実用するための塗装金属体の製造装置であ
る。
【0011】 (1)金属面に塗布された塗膜面にX線
を照射し発生する二次X線を測定し、塗膜厚及びその塗
膜より下の層の厚さ又はめっき層厚と二次X線強度との
関係式に基づいて塗膜厚を求める塗膜厚測定方法であっ
て、塗膜構成元素の含有率に基づき入射X線及びその塗
膜より下の層から来る蛍光X線に対する塗膜の吸収に依
存するパラメータを計算によって求め、前記関係式では
この塗膜の吸収に依存するパラメータを入射X線及びそ
の塗膜より下の層から来る蛍光X線に対する塗膜の吸収
に対するパラメータとして用いていることを特徴とする
金属上の塗膜厚測定方法。 (2)X線照射及び測定装置に加えて、関係式記憶回
路、組成変換器、補正値演算器及び塗膜厚演算器を備え
た塗膜厚測定装置。
【0012】 (3)塗膜が二層の場合に各々の塗膜
ついて、各々の塗膜構成元素の含有率に基づき入射X線
及びその塗膜より下の層から来る蛍光X線に対する塗膜
の吸収に依存するパラメータを計算によって求め、これ
らのX線に対する吸収係数の差に基づいて二次X線の測
定強度を補正することを特徴とする(1)記載の金属上
の塗膜厚測定方法。
【0013】(4)(2)の金属上の塗膜厚測定装置の
補正値演算器に下層塗膜厚補正回路を併せて備えた金属
上の塗膜厚測定装置。 (5)(1)又は(3)の金属上の塗膜厚測定方法を用
いて、塗膜厚を制御する塗装金属体の製造方法。 (6)金属体に連続的に塗装を施す装置において、塗膜
焼き付け炉の直後に、(2)又は(4)の金属上の塗膜
厚測定装置を配置し、この塗膜厚測定装置からの信号に
基づいて塗膜厚を制御する制御装置を備えた塗装金属体
の製造装置。
【0014】
【作用】測定対象である塗膜で被覆された金属体(以
下、塗装金属体と称す)にX線を照射すると、塗膜及び
金属を構成する元素はこの入射X線によって励起され、
元素固有の蛍光X線を発生する。しかし、この塗装金属
から出てくる二次X線には蛍光X線の他に、トムソン散
乱X線やコンプトン散乱X線が含まれている(以下、蛍
光X線及びコンプトン散乱X線をまとめて二次X線と称
す)。これらの散乱X線は、入射X線が原子に衝突して
散乱されたものであり、このうち衝突によってエネルギ
ーを失って散乱されたものが、コンプトン散乱X線であ
る。コンプトン散乱X線は失ったエネルギーの分だけ入
射X線よりも波長が長くなっているので、トムソン散乱
X線や蛍光X線と区別してこれを測定することが出来
る。以上はコンプトン散乱X線法が測定に用いられる原
理である。
【0015】入射X線と二次X線の塗装金属体内の経路
を図4に示す。81は入射X線、82はコンプトン散乱
X線、83は蛍光X線、84は上層塗膜、85は下層塗
膜、86はめっき層、87は、下地金属である。塗膜が
二層の場合であるが、塗装金属の表面に入射角Φで照射
された入射X線81は、上層塗膜84、下層塗膜85及
びめっき層86を通過し下地金属87に到達する。
【0016】そして、通過過程で散乱されたり吸収され
たりして二次X線を発生し、この二次X線も又散乱され
たり吸収されたりする。二次X線のうち取り出し角Ψで
放射される二次X線即ちコンプトン散乱X線82及び蛍
光X線83が測定される。散乱や吸収される度合いは、
X線の波長と通過物質に依存し、蛍光X線の発生する度
合いも同じくこれらに依存する。
【0017】強度I0 のX線を、一層塗膜の塗装金属体
に照射しこれが吸収されながら二次X線を発生する状
況、及び発生した二次X線が吸収されながら塗膜の外に
放射され測定される状況を考察すると、入射X線強度と
コンプトン散乱X線強度との関係について理論的に次の
ような関係式が得られる。
【0018】数1は測定されるコンプトン散乱X線の強
度についての式で、数2はめっき層から発生する蛍光X
線強度についての式、数3は下地金属から発生する蛍光
X線強度についての式である。
【0019】
【数1】
【0020】
【数2】
【0021】
【数3】
【0022】これらの式で、めっき層が無い場合はめっ
き層に関する係数を零にすればよい。以下、めっき層の
存在を前提に述べる。塗膜、めっき層及び下地金属の物
性が固定され、且つめっき層厚LZ が既知であれば、二
次X線の強度から塗膜厚LA は計算によって求めること
ができる。又、めっき層厚LZ が未知の場合でも、これ
らの三つの式のうち二つの式を用いれば、塗膜厚LA
計算によって求めることができる。
【0023】塗装金属体を製造する場合、下地金属やめ
っきの種類は少ないが塗膜の種類が非常に多いのが普通
である。即ち、下地金属は炭素鋼、ステンレス、アルミ
ニウム又はアルミニウム合金或いは銅又は銅合金等に固
定される事が多く、又、めっき層もクロムめっき、ニッ
ケルめっき、亜鉛めっき、アルミニウムめっき等と固定
される。これに対して、塗膜には着色顔料、防錆顔料等
種々の添加剤が用いられ、これらの種類のみならず含有
量が変わっても塗膜の物性特にX線吸収能が異なってく
る。
【0024】上記の三つの式の係数のうち、A,B,μ
Z ,E,μZZ及びμZBは塗膜の種類によらない。よっ
て、これらの係数は既に求められている物性値から計算
により得られる場合もあり、又、実験によって決定して
もそれ程の難事ではない。
【0025】ところが、C,D,μAZ,μABには塗膜の
X線に対する吸収係数が関係し、これらの係数は塗膜の
種類毎に求めなければならない。しかも、塗膜のX線吸
収係数については、測定された資料も殆ど無く大半は実
験値に頼らざるを得ない。用途を限定した塗膜の分類項
目だけでも数千を超えることを考えると、これらの数値
を実験によって求めることは大変な難事である。
【0026】そこで、塗膜のX線吸収係数は塗膜を構成
する元素の種類と量に依存することに着目し、この発明
では、これら四つの係数が簡易に求まる方法を先ず提案
する。C,D,μAZ,μABは塗膜のX線吸収係数と一次
の関係にあるので、上記の着目点を導入すると、これら
の係数は各々数4、数5、数6、数7のように把握され
る。
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
【0029】
【数6】
【0030】
【数7】
【0031】塗膜に含まれる元素の種類iとその含有率
i は、塗料作成時の配合比率から知ることができ、
又、その情報が得られない場合には、発生する蛍光X線
の波長と強度とから知ることができる。したがって、定
数及び補正係数を予め求めておけば、塗膜のX線吸収係
数に依存する値を塗膜構成元素の含有率に基づいた計算
によって求めることができる。
【0032】補正係数は、塗膜構成元素の中でもX線質
量吸収係数の大きい金属元素について求めておけばよ
い。これらの元素の含有率と補正係数の例を各々表1、
表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】例えば、塗料Iであれば、数8、数9、数
10、数11のようにして、C,D,μAZ,μABの値が
求まる。
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
【0039】
【数11】
【0040】このように、塗膜のX線吸収係数に依存す
る値を塗膜構成元素の含有率に基づいた計算によって求
めると、数限り在る塗膜の種類毎に実験値を求める必要
がない。このため、きめ細かく補正することが極めて容
易となる。又、塗膜中に存在する元素は、下地金属やめ
っき層中存在する場合と区別されて、その影響が適切に
補正される。実際面ではこのような作用が相まって、塗
膜厚の測定精度が向上する。
【0041】このような測定方法を実際に行うには、X
線照射及び測定装置に加えて記憶回路や演算回路が必要
であり、これらの回路を備えた装置を使用することが適
切である。装置の概要を図1に示す。1はX線測定装
置、2は関係式記憶器、3は塗膜厚演算器、4は塗膜厚
表示器、5は組成変換器、6は補正値演算器である。
【0042】関係式記憶器路2には、数1乃至数11等
必要な関係式を記憶させておき、塗料組成記憶器5には
塗布する塗料の成分や含有率を記憶させておく。関係式
に伴うめっき層及び下地金属に関する係数は理論的或い
は実験的に求められた値も入力しておく。塗料組成記憶
器5では例えば塗料No. 等で塗料の種類が入力されると
その塗料の成分及び含有率を記憶から取り出し、補正値
演算器6に出力する。
【0043】補正値演算器6では、この成分情報に基づ
いて前述のC,D,μAZ,μAB等の塗膜のX線吸収係数
に依存する値を算出し、塗膜厚演算器3に送る。この値
とX線測定装置1からの各種のX線強度とに基づいて、
塗膜厚演算器3では関係式記憶器2から送られる関係式
により塗膜厚を演算しその結果を、塗膜厚表示器4に出
力する。塗膜厚によって塗装装置を制御する場合は、塗
膜厚表示器4に制御用の信号を出力する機能を持たせる
とよい。
【0044】塗膜は、一層の場合だけとは限らず、めっ
き層と上層塗膜との間の強固な密着性や塗膜全体の防錆
能を確保するために下層塗膜を設けることがある。通常
プライマーと呼ばれる下塗りである。
【0045】このような塗膜構成では、上層塗膜と下層
塗膜との構成元素が一般に異なる。このため、上層塗膜
の構成元素に基づいて計算を行ったのでは値にずれが生
ずる。この分を補正する必要があるが、これは上層塗膜
と下層塗膜とのX線に対する吸収係能の差に基づくもの
である。これらの塗膜の線吸収係数を、上記した塗膜構
成元素の含有率に基づいた計算と同様にして求めると、
補正係数は数12によって得られる。この補正係数を二
次X線強度に乗ずることによって補正が行われる。即
ち、コンプトン散乱X線については数1のIC が、蛍光
X線については各々数2、数3のIZ , B が補正され
る。
【0046】
【数12】
【0047】塗膜の線吸収係数μP ,μF は、塗膜を構
成する元素の配合比率から求めることができる。即ち、
塗膜構成元素の補正対象X線に対する吸収係数とその元
素の含有率との積を各々の元素について求め、これらを
足し合わせたものに塗膜の比重を乗ずればよい。実際に
は、μP とμF の差を求めればよいので、吸収の大きい
主な元素について上の計算を行えば充分である。
【0048】下層塗膜厚LP は、操業に関する情報から
得たものを使用しても満足な補正精度が得られる。又、
下層塗膜厚LP の情報が得られない場合は、下層に固有
に含まれる元素の蛍光X線強度から求めることもでき
る。下層には、前述したように、密着性や耐食性を期待
することが多く、SrやCa或いはZn等のクロム酸塩
が含まれ、これらは上層塗膜に含まれることは余りな
い。
【0049】図5は、亜鉛めっき鋼板に二層塗膜を付し
た製品にX線照射した場合の二次X線プロファイルであ
る。この場合、SrのKα線が大きな強度で得られてい
るので、予め求めておいた強度と下層塗膜厚との関係を
示す検量線から塗膜厚が得られる。更に、検量線が得ら
れない場合には、収斂法を用いるのが便利である。これ
は、最初に下層塗膜厚を適当に仮定し、計算を繰り返す
ことにより近似の精度を高める方法である。その手順を
図6に例示する。
【0050】最初に下層塗膜厚を零、即ちLP0=0とし
て、前述した一層塗膜の場合と同じく、上層塗膜の成分
に基づきそのX線吸収能を算出し、コンプトン散乱X
線、めっき層・下地金属からの蛍光X線を基に塗膜厚を
算出する。この塗膜厚LA1を上層塗膜厚として下層塗膜
中のSrの蛍光X線(強度IS )に対する上層塗膜によ
る吸収分の補正を行い、この値(IS1)を基に下層塗膜
厚LP1を求める。次に、この下層塗膜厚から、各々の二
次X線に対する下層塗膜の影響を補正して塗膜厚を算出
する。そして、更に補正された塗膜厚と下層塗膜厚を基
にSrの蛍光X線に対する上層塗膜の吸収補正を行う。
この操作を繰り返して、塗膜厚が収斂する値を最終的に
補正された塗膜厚とする。
【0051】このように下層塗膜の補正を行う場合、基
本的には前述した金属上の塗膜厚測定装置を用いるが、
図1の補正値演算器6に下層塗膜厚補正器を併せ持たせ
るとよい。下層塗膜厚補正器6は数12のC0 を演算
し、又、塗膜厚演算器3と連携して収斂法による演算を
行う。
【0052】以上述べてきた塗膜厚の測定方法では、X
線照射と演算とによって測定値が得られるので、極めて
短時間内に測定出来或いは連続的に測定することが可能
である。このため、これらの金属上の塗膜厚測定方法を
塗装金属体の製造に用いると、塗膜厚が非常に良く制御
された製品が得られる。
【0053】この場合、前記した金属上の塗膜厚測定装
置を用いた製造装置が適切であり、塗膜厚測定装置を塗
膜焼き付け炉の直後に配置し、塗膜厚表示器に制御装置
を接続して塗布量を制御するのがよい。塗膜厚測定装置
を塗膜焼き付け炉の後に設置するのは、塗膜中に溶剤が
存在するとコンプトン散乱強度に影響するからであり、
直後であるのは測定が遅れるとそれだけ制御が遅れるか
らである。したがって、炉の直後に配置するのはX線測
定器或いは測定ヘッドだけでもよい。
【0054】
【実施例】
(実施例1)厚さ0.35mmの亜鉛めっき鋼帯に塗料
を一回塗布し、塗膜厚の異なる塗装鋼板u,v,w,の
三種類を製造し、塗膜の厚さを測定した。
【0055】製造に用いた装置の概要を図2に示す。亜
鉛めっき鋼帯11に塗布ロール12によって所定量の塗
料を連続的に塗布し、焼き付け炉13で焼付乾燥した。
焼き付け炉13の直後にX線測定装置1を配置し、塗膜
厚算出部14で求めた塗膜厚を塗膜厚制御装置15に出
力して塗布量を制御した。測定は、この発明による実施
例と従来の方法による従来例及び絶対法である重量法と
で行い、これらの結果を比較出来るようにした。
【0056】X線源にはRh管球を使用し、LiFモノ
クロメーターを用いて入射X線をRhKα線(λ=0.
615Å)に単色化した。又、Znの蛍光X線強度が他
の測定線に比し大き過ぎることが予想されたので、取り
出し側にはNiフィルターを設置し、Zn線の軽減を図
った。検出器にはエネルギー分解能の良い半導体検出器
を用い、多重波高分析器により、必要なX線を同時に測
定した。測定結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】絶対法である重量法による測定値を真値と
見なし、その値からの隔たりを調べると、従来例では8
%以上であったが、実施例では2.4%以下であった。
又、塗膜厚は目標値の6%以内に制御されており満足な
結果であった。
【0059】(実施例2)厚さ0.28mmのクロムめ
っき鋼帯にプライマーを塗布して塗膜を形成後上塗りを
施し、塗膜厚の異なる塗装鋼板x,y,z,の三種類を
製造し、塗膜の厚さを測定した。製造に際して、上塗り
塗料の焼き付け炉の直後で実施例1.と同様に塗膜厚を
検出して制御した。
【0060】用いた塗膜厚測定装置の概要を図3に示
す。21、22は各々上層及び下層塗膜種入力装置、5
1、52は各々の組成変換器、61、62は各々の補正
値演算器である。これらの装置・機器を経て算出された
補正値は塗膜厚演算器3に入力さる。塗膜厚演算器3に
は、関係式記憶器2からの情報と、X線源71とX線検
出器72備えたX線測定器1からの各種のX線強度とが
同時に入力される。ここで算出された塗膜厚信号は、出
力回路を伴う塗膜厚表示器4を経て塗膜厚制御装置15
に入力され、これを介して塗布量を制御する。測定結果
を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】真値からの隔たりを調べると、従来例では
6%以上であったが、実施例では2.3%以下であっ
た。又、塗膜厚は目標値の4%以内に制御されており満
足な結果であった。
【0063】
【発明の効果】以上述べて来たように、この発明による
塗膜厚測定では、塗膜種類の変動に対応してその二次X
線に与える影響を塗膜を構成する元素の含有率に基づい
て補正する。このため、きめ細かな補正が容易に行われ
精度の高い測定が実現される。しかも、この測定は非破
壊測定で且つ連続測定も可能であり、この測定技術を塗
装金属体の製造工程で用い塗布量制御を行うことによっ
て塗膜厚の安定した塗装金属体が製造される。このよう
に、近年の合理化技術に挙げられるプレコート化技術に
貢献するこの発明の効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一例である金属上塗膜厚測定装置の
概略図である。
【図2】この発明の一実施例に用いた塗装めっき鋼板の
製造装置の概略図である。
【図3】この発明の一実施例に用いた二層塗膜鋼板の製
造装置の概略図である。
【図4】入射X線と二次X線の経路を示すための塗装金
属体の断面図である。
【図5】二重塗膜の場合に得られる下層含有元素を含む
二次X線のプロファイルである。
【図6】下層塗膜厚の影響を補正しながら塗膜厚を求め
る収斂法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 X線測定装置 2 関係式記憶器 3 塗膜厚演算器 4 塗膜厚表示器 5 組成変換器 6 補正値演算器 12 塗布ロール 13 焼き付け炉 14 塗膜厚算出部 15 塗膜厚制御装置
フロントページの続き (72)発明者 岩田 年一 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 秋吉 孝則 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 審査官 後藤 時男 (56)参考文献 特開 昭64−41810(JP,A) 特開 昭61−84511(JP,A) 特開 平5−79826(JP,A) 特公 昭62−26829(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01B 15/02 B05C 9/10 B05D 3/00 B05D 7/14

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属面に塗布された塗膜面にX線を照射
    し発生する二次X線を測定し、塗膜厚及びその塗膜より
    下の層の厚さ又はめっき層厚と二次X線強度との関係式
    に基づいて塗膜厚を求める塗膜厚測定方法であって、塗
    膜構成元素の含有率に基づき入射X線及びその塗膜より
    下の層から来る蛍光X線に対する塗膜の吸収に依存する
    パラメータを計算によって求め、前記関係式ではこの塗
    膜の吸収に依存するパラメータを入射X線及びその塗膜
    より下の層から来る蛍光X線に対する塗膜の吸収に対す
    るパラメータとして用いていることを特徴とする金属上
    の塗膜厚測定方法。
  2. 【請求項2】 X線照射及び測定装置に加えて、関係式
    記憶回路、組成変換器、補正値演算器及び塗膜厚演算器
    を備えたことを特徴とする金属上の塗膜厚測定装置。
  3. 【請求項3】 塗膜が二層の場合に各々の塗膜につい
    て、各々の塗膜構成元素の含有率に基づき入射X線及び
    その塗膜より下の層から来る蛍光X線に対する塗膜の吸
    収に依存するパラメータを計算によって求め、これらの
    X線に対する吸収係数の差に基づいて二次X線の測定強
    度を補正することを特徴とする請求項1記載の金属上の
    塗膜厚測定方法。
  4. 【請求項4】 補正値演算器に下層塗膜厚補正回路を併
    せて備えた請求項2記載の金属上の塗膜厚測定装置。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の金属上の塗膜厚測定方法
    又は請求項2記載の金属上の塗膜厚測定装置を用いて、
    塗膜厚を制御することを特徴とする塗装金属体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 金属体に連続的に塗装を施す装置におい
    て、塗膜焼き付け炉の直後に、請求項2又は請求項4記
    載の金属上の塗膜厚測定装置を配置し、この塗膜厚測定
    装置からの信号に基づいて塗膜厚を制御する制御装置を
    備えたことを特徴とする塗装金属体の製造装置。
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