JP2859684B2 - 新規生理活性物質hs―142―1およびその製造法 - Google Patents

新規生理活性物質hs―142―1およびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はオーレオバシディウム(Aureobasidium)属
に属する微生物により生産され、かつ本態性高血圧およ
びうっ血性心不全等の病態に関与する心房性ナトリウム
ペプチド(以下、ANPと略記する。)のレセプターに対
して拮抗作用を有する新規生理活性物質およびその製造
法に関する。
かかる作用を有する物質は低血圧症、多尿症等の治療
に用いられる。とくに糖尿病の早期に観察される多尿症
に関しては、ANPのレセプターに対し拮抗作用を有する
物質がこの症状の治療に関して有効であるとの報告があ
る(W089/00428)。
また本態性高血圧症、うっ血性心不全等におけるANP
の病態生理学的役割の解明および健常人におけるANPの
生理的役割の解明のための試薬としても有用である。
従来の技術 ANPは哺乳類の心房から主に分泌されるぺプチドホル
モンであり、強力なナトリウム利尿作用および血圧降下
作用を有する。現在では上記の2種の作用のほかに、体
内の多数の器官に分布するANPのレセプターを介して細
胞外液量の調節を行う作用も有していると考えられてい
る。しかしながら、ANPの作用機構および生理的役割に
関しては不明な点が数多く残されており、特異的にANP
レセプターに対して拮抗作用を有する物質の開発が強く
望まれている〔アニュアル・レビュー・オブ・ファーマ
コロジィ・アンド・トキシコロジィ(Annu.Rev.Pharm.T
ox)29,23−54(1989)〕。
ANPのレセプターに対して特異的に拮抗作用を有する
物質に関しては、ANPの誘導体中に、ANPによる血管弛緩
に対し拮抗作用を示すものが報告されている(特開昭63
−225399)が、ANPの誘導体以外にANPのレセプターに対
し拮抗作用を有するものは知られていない。
ANPの生理的および病態生理学的役割をANPの作用を遮
断することにより検討する方法としては、ANPに対する
抗体を用いる方法〔プロシーディングス・オブ・ザ・ナ
ショナル・アカデミィ・オブ・サイエンス(Proc.Natl.
Acad.Sci.)85,3155−3199(1988)〕およびANPにイオ
ン的に結合するヘパリンを用いる方法〔ハイパーテンシ
ョン(Hypertension)9,607−610(1987)〕が知られて
いるが、これらの方法に用いる抗体およびヘパリンは、
ANPのレセプターに直接結合するものではないため、生
理学的条件下で内因性のANPの作用を解明するには限界
がある。従って、低血圧症、多尿症等の治療およびANP
の生理的、病態生理学的役割を解明にするために、ANP
のレセプターに直接結合し、ANPの作用を遮断すること
ができる物質が求められている。
発明が解決しようとする課題 本発明の目的はANPレセプターに対して優れた拮抗作
用を有する新規生理活性物質を提供することにある。
課題を解決するための手段 オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する
微生物の培養物中にANPのレセプターへの結合を阻害す
る活性を有する生理活性物質が生産される事実が見いだ
され、該培養物から該物質を単離、精製し、その理化学
的性質を調べたところ新規物質であることが判明した。
以下、該物質をHS−142−1と称する。
本発明は直鎖状にβ1→6結合したD−グルコースオ
リゴマーのD−グルコースの任意の位置の水酸基とカプ
ロン酸のカルボキシル基とがエステル結合した構造を有
する新規生理活性物質HS−142−1に関する。
上記構造におけるD−グルコース残基の数は7〜40で
あり、カプロン酸残基の数は2〜30である。
本発明の生理活性物質HS−142−1としては、D−グ
ルコース残基の数が28であり、かつカプロン酸残基の数
が11である化合物、例えばHS−142−1a、D−グルコー
ス残基の数が17であり、かつカプロン酸残基の数が11で
ある化合物、例えばHS−142−1b、D−グルコース残基
の数が13であり、かつカプロン酸残基の数が6である化
合物、例えばHS−142−1c等が包含される。
HS−142−1a、HS−142−1bおよびHS−142−1cの理化
学的性質は以下の通りである。
HS−142−1a 性状:白色粉末 融点:175〜185℃ 分子式:C234H392O152 マススペクトル(ネガティブモード FAB−マススペ
クトル) 実測値;M/Z 5536.5(M−H)- 計算値;M/Z 5637.3 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法) cm-1:3420,2930,1730,1635,1455,1380,1250,1170,1045 紫外部吸収スペクトル:(水溶液) 末端吸収を示すのみ。1 H-NMRスペクトル(500MHz,D2O中):第1図に示す。
呈色反応:アニスアルデヒド、硫酸、ヨウ素による呈
色反応に陽性、ニンヒドリン、ジニトロフェニルヒドラ
ジン、塩化第二鉄、ブロモクレゾールグリーン、ドラー
ゲンドルフ反応に陰性。
HS−142−1b 性状:白色粉末 融点:175〜185℃ 分子式:C150H252O94 マススペクトル(ネガティブモード FAB−マススペ
クトル) 実測値;M/Z 3557.9(M−H)- 計算値;M/Z 3558.5 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法) cm-1:3425,2925,1730,1645,1455,1375,1250,1170,1050 紫外部吸収スペクトル:(水溶液) 末端吸収を示すのみ。1 H-NMRスペクトル(500MHz,D2O中):第2図に示す。
呈色反応:アニスアルデヒド、硫酸、ヨウ素による呈
色反応に陽性、ニンヒドリン、ジニトロフェニルヒドラ
ジン、塩化第二鉄、ブロモクレゾールグリーン、ドラー
ゲンドルフ反応に陰性。
HS−142−1c 性状:白色粉末 融点:175〜185℃ 分子式:C114H192O72 マススペクトル(ネガティブモード FAB−マススペ
クトル) 実測値;M/Z 2713.3(M−H)- 計算値;M/Z 2734.1 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法) cm-1:3400,2935,1735,1650,1460,1380,1255,1165,1050 紫外部吸収スペクトル:(水溶液) 末端吸収を示すのみ。1 H-NMRスペクトル(500MHz,D2O中):第3図に示す。
呈色反応:アニスアルデヒド、硫酸、ヨウ素による呈
色反応に陽性、ニンヒドリン、ジニトロフェニルヒドラ
ジン、塩化第二鉄、ブロモクレゾールグリーン、ドラー
ゲンドルフ反応に陰性。
なお以上のデータは下記の機器により測定することが
できる。
融点:柳本製作所 ミクロ融点測定装置 施光度:日本分光 DIP−370 デジタル施光計 赤外部吸収スペクトル:日本電子 JIR−RFX30 FTIR分光光度計 紫外部吸収スペクトル:日立製作所 200−20型 ダブルビーム分光光度計 マススペクトル:日本電子 JMS−SX102 質量分析計1 H-NMRスペクトル:ブルッカー社 AM−500 核磁気共鳴装置 また、上記理化学的性質におけるマススペクトルの計算
値はモースト・アバンダント・マススペクトル(most a
bundant MS)法により算出した。
次にHS−142−1の製造法について説明する。
HS−142−1はオーレオバシディウム(Aureobasidiu
m)属に属しHS−142−1生産能を有する微生物を培地に
培養し、培養物中にHS−142−1を生成蓄積させ、該培
養物からHS−142−1を採取することにより製造され
る。HS−142−1生産能を有する微生物としてはオーレ
オバシディウム(Aureobasidium)属に属し、HS−142−
1生産能を有するものであればいずれの微生物でもよ
い。具体的に好適な例としては、山口県において採集さ
れたアカマツの落葉より純粋分離されたオーレオバシデ
ィウム・プルランス・バラエティー・メラニゲナム(Au
reobasidium pullulans var.melanigenum)KAC−2383株
(以下、KAC−2383と称する。)があげられる。
KAC−2383の菌学的性質は以下の通りである。
麦芽エキス寒天培地を用いて、20℃で培養したとき、
本菌株の集落の直径は培養18日目で36〜40mmに達し、そ
の集落は黄褐色あるいは黒黄褐色を呈する。本菌株の至
適生育温度は20〜30℃であり、25〜27℃で最も良好に生
育する。生育しうるpHは2〜8で、至適生育pHは3〜5
である。本菌株の菌糸は隔壁を有し、分岐する。菌糸は
平滑で、最初は無色であるが、培養の経過に伴い暗褐色
の菌糸が混在するようになる。菌糸の幅は2〜10μmで
ある。分生子形成細胞は未分化で、分生子は菌糸から直
接同調的に形成される。分生子の個体発生様式は出芽型
である。菌糸から形成された分生子は、酵母様出芽によ
りさらに増殖する。分生子は平滑で、楕円形を呈し、1
細胞性である。分生子の大きさは変化に富むが、多くは
長さ6.5〜15.5μmで、幅は2.5〜4μmである。本菌株
は、上述したアナモルフのみ観察され、テレオモルフは
観察されない。
以上の菌学的性質より、本菌株は、オウレオバシディ
ウム・プルランス(ド・バリ)・アルノー・バラエティ
ー・メラニゲナム・ヘルマニデス−ニヂオフ〔Aureobas
idium pullulans(de Bary) Arnaud var.melanigenum
Hermanides−Nijhof〕と同定された。 本発明者らは、
本菌株をオウレオバシディウム・プルランス・バラエテ
ィー・メラニゲナム(Aureobasidium pullulans var.me
lanigenum)KAC−2383と命名した。本菌株は、平成元年
5月1日付けで、微工研条寄第2407号として、工業技術
院微生物工業技術研究所に寄託されている。なお、オウ
レオバシディウム・プルランス・バラエティー・メラニ
ゲナムについての菌学的性質は、スタディーズ・イン・
マイコロジィ(Studies in Mycology)(Baarn)15巻,1
41〜177頁、1977年に掲載されているイー・ジェイ・ヘ
ルマニデス−ニヂオフ(E.J.Hermanides−Nijohf)著の
オウレオバシディウム・アンド・アライド・ジェネラ
(Aureobasidium and allied genera)に詳しく記載さ
れている。
微生物の培養に際しては、菌類の培養にもちいられる
通常の培養方法が適用される。用いられる培地は菌の資
化しうる炭素源、窒素源、無機物などを程よく含有する
培地であれば天然培地、合成培地のいずれでも用いられ
る。
炭素源としてはグルコース、フラクトース、シュクロ
ース、ラクトース、スタビロース、澱粉、デキストリ
ン、マンノース、マルトース、糖蜜、マッシュポテトの
素などの炭水化物、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、フマー
ル酸などの有機酸、メタノール、エタノールなどのアル
コール、メタン、エタン、n−パラフィンなどの炭化水
素、グルタミン酸などのアミノ酸あるいはグリセロー
ル、綿実油などが用いられる。
窒素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウ
ム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、アスパ
ラギン酸、グルタミン、シスチン、アラニンなどのアミ
ノ酸、尿素、麦芽エキス、ペプトン、肉エキス、酵母エ
キス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、
綿実粕、大豆カゼイン、カザミノ酸、ファーマメディ
ア、ソルブル・ベジタブル・プロテイン、野菜・果実の
ジュースなどが用いられる。
無機物としてはリン酸−水素カリウム、リン酸二水素
カリウム、リン酸二水素ナトリウム、硫酸マグネシウ
ム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸コバル
ト、硫酸亜鉛、パントテン酸カルシウム、モリブデン酸
アンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、炭酸バリウ
ム、炭酸カルシウム、塩化コバルト、塩化ナトリウム等
が用いられる。その他必要に応じて培地にビタミンなど
菌体の増殖あるいはHS−142−1の生産を促進する物質
を加えることができる。
用いられる微生物が生育のために特定の物質を要求す
る場合は、生育に必要なものを加えることが必要であ
る。
培養は振盪培養法、通気攪拌培養法などにより15〜25
℃の温度で中性付近のpHで行われる。3〜6日の培養に
よってHS−142−1の蓄積が最大に達し、培養は完了す
る。
培養物中に生成蓄積したHS−142−1を単離精製する
に際しては、通常の生理活性物質を培養物から単離精製
する方法が適用される。即ち、アセトン、メタノールな
どの溶剤による菌体成分の抽出、過、遠心分離などに
よる菌体除去、適当な溶媒系による分配、吸着樹脂、シ
リカゲル、修飾シリカゲル、アルミナ、セルロース、珪
藻土、珪酸マグネシウム、ゲル過剤などを用いるカラ
ムクロマトグラフィーもしくは薄層クロマトグラフィー
による活性物質の吸脱着処理などによってHS−142−1
を単離精製することができる。
培養物からHS−142−1を単離精製する一例は次の通
りである。
培養物を過または遠心分離することにより菌体を除
去する。得られた液または上清液を吸着樹脂、例えば
ダイヤイオンHP−20(三菱化成社製)に通塔して樹脂に
HS−142−1を吸着させる。
次いでメタノールなどの適当な溶剤を用いて溶出し、
溶出液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルクロマトグラ
フィーを繰り返し行うことによりHS−142−1の粗粉末
を得る。この粗粉末を少量の70%メタノールに溶解し、
ダイヤイオンHP−20ss(三菱化成社製)に吸着させ、70
%メタノールで洗浄後、100%メタノールで溶出する。
溶出液を減圧下で濃縮乾固すると、黄白色の粉末を得
る。この粉末をセファデックスLH−20(ファルマシア社
製)およびバイオゲルP4(バイオラッド社製)を用いた
ゲル過を順次行って精製することにより無色粉末のHS
−142−1を得ることができる。
上記精製工程中のHS−142−1の検出は、シリカゲル
薄層クロマトグラフィー、ついで50%硫酸を噴霧後、加
熱するか、または、紫外部の末端吸収を紫外部吸収検出
器により検出することにより行う。
以下に実施例を示す。
実施例1. 種菌としてオーレオバシディウム・プルランス・バラ
エティー・メラニゲナム(Aureobasidium pullulans va
r.melanigenum)KAC−2383を用いた。該菌株をグルコー
ス1.0g/dl、ペプトン(極東製薬工業社製)0.5g/dl、乾
燥酵母エビオス(朝日麦酒社製)0.5g/dl、V−8野菜
ジュース(キャンベル社製)0.2dl/dl、炭酸カルシウム
0.3g/dlの組成を有する培地(pH6.0)15mlに植菌した。
ついで、25℃で菌が充分生育するまで振盪培養した。こ
のようにして得られた種培養液5mlを50mlの上記組成の
種培地に植菌し、25℃で2日間振盪培養した。このよう
にして得られた種培養液250mlを2.5lの上記組成の種培
地を含む5lジャーファーメンターに植菌した。培養は25
℃で1日間、通気攪拌方式(回転数250rpm、通気量2.5l
/分)により行った。このようにして得られた種培養液5
lを下記組成の生産培地100lを含む200lジャーファーメ
ンターに植菌した。
生産培地:グルコース 3g/dl、スターチ1g/dl、ファ
ーマメディア 1.5g/dl、硫酸マグネシウム・7水塩
0.1g/dl、塩化ナトリウム 0.3g/dl、リン酸水素二カリ
ウム 0.1g/dl、塩化コバルト・6水塩 6μg/dl、硫
酸第一鉄・7水塩 10mg/dl、硫酸銅・5水塩70mg/dl、
硫酸亜鉛・7水塩 2mg/dl、炭酸カルシウム 0.5g/dl
(pH7.0) 培養は25℃で5日間、通気攪拌方式(回転数350rpm、
通気量100l/分)により行った。培養終了後、菌体を遠
心して除去し、上清100lを10lのダイヤイオンHP−20
(三菱化成社製)を充填したカラムに通塔し、HS−142
−1を吸着させた後、30lの50%(v/v)メタノールで洗
浄し、30lのメタノールで溶出した。メタノール溶出画
分を減圧下で濃縮乾固すると、51.8gの褐色粉末が得ら
れた。この粉末をクロロホルム−メタノール(8:2;v/
v)を用いて充填した5lのシリカゲル60(メルク社製、6
3〜200μm)の上端に供給し、同じ組成の混合溶媒15l
で洗浄後、クロロホルム−メタノール(4:6;v/v)で溶
出した。溶出液を減圧下で濃縮乾固すると、黄色粉末の
HS−142−1の粗精製物が40.3g得られた。
このようにして得られた粗精製物4gをクロロホルム−
メタノール−水(7:3:0.5;v/v)を用いて充填した400ml
のシリカゲル60(メルク社製、40〜63μm)の上端に供
給し、同じ組成の混合溶媒1200mlで洗浄した後、クロロ
ホルム−メタノール−水(6:4:0.7;v/v)1200mlで溶出
した。溶出液を15mlずつ分取するとHS−142−1は画分
番号22〜53に主に溶出された。HS−142−1を含む画分
を減圧下で濃縮乾固し、少量の50%(v/v)メタノール
に溶解した。この溶液を同じ組成の混合溶媒を用いて平
衡化した180mlのHP−20ss(三菱化成社製)(φ28×450
mm)の上端に供給し、同じ組成の混合溶媒600ml、70%
(v/v)メタノール600mlで順次洗浄し、メタノールを用
いて溶出した。HS−142−1を含む溶出画分を濃縮乾固
すると413mgの粗粉末が得られた。これを3mlのメタノー
ルに溶解し、メタノールを用いて平衡化した1000mlのセ
ファデックス LH−20(ファルマシア社製)の上端に供
給し、メタノールを用いて展開した。展開液を10mlずつ
分取し、HS−142−1を含む画分番号37から44を集めて
濃縮乾固すると、304mgの無色粉末が得られた。この無
色粉末90mgを2mlの水に溶解し、水を用いて平衡化した
バイオゲル(BioGel)P4(バイオラッド社製、200〜400
メッシュ;φ38×450mm)のカラムの上端に供給し、水
を用いて展開した。展開液を12mlずつ分取すると画分番
号16から26にHS−142−1が溶出された。各溶出画分を
凍結乾燥すると、HS−142−1の無色粉末が合計67.9mg
得られた。この画分のうちHS−142−1aは画分番号18
に、HS−142−1bは画分番号22に、HS−142−1cは画分番
号25にそれぞれ含まれていた。
次にHS−142−1のANPレセプターに対する拮抗作用を
実験例1〜4により説明する。
実験例1. ウサギ腎皮質ANPレセプターへのANPの結合に対する阻
害作用 (1)方法 ウサギ腎皮質ANPレセプターへのANPの結合に対するHS
−142−1の試験管内での阻害作用をエム・エー・ナピ
ア(M.A.Napier)らの方法〔プロシーディングス・オブ
・ザ・ナショナル・アカデミィ・オブ・サイエンス(Pr
oc.Natl.Acad.Sci.)81,5946−5950(1984)〕に準じ
て、ウサギ腎皮質の破砕物を用いて測定した。
(2)結果 ウサギ腎皮質への(3−〔125I〕ヨードチロシル28
ラットANPの結合をHS−142−1a、HS−142−1b、HS−142
−1cは1μg/mlでそれぞれ68%、76%、70%阻害した。
また、実施例に示したバイオゲルP4の溶出画分に含まれ
るHS−142−1のうちHS−142−1a、HS−142−1b、HS−1
42−1c以外のHS−142−1にも同等の活性が認められ
た。
実験例2. LLC−PK1細胞のANPによるcGMPレベル上昇に対する拮
抗作用 (1)方法 10nMのANPによるLLC−PK1細胞のcGMPレベル上昇に対
するHS−142−1の作用をエフ・ムラド(F.Murad)らの
方法〔ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ
ィ(J.Biol.Chem.)263,3720−3728(1988)〕に準じて
測定した。
(2)結果 10nMのANPによるLLC−PK1細胞のcGMPレベルの上昇をH
S−142−1a、HS−142−1b、HS−142−1cは10μg/mlでそ
れぞれ60%、61%、41%阻害した。
実験例3. ウサギ胸部大動脈標本におけるANPの血管弛緩反応に
対する拮抗作用 (1)方法 雄性日本白色ウサギの胸部大動脈を摘出後、幅約3mm
のラセン状条片標本を作成し、クレブス−ヘンスライト
1液(組成:塩化ナトリウム118mM、塩化カリウム4.75m
M、塩化カルシウム2.54mM、硫酸マグネシウム1.19mM、
炭酸水素ナトリウム12.5mM、リン酸二水素カリウム1.19
mM、グルコース10.0mM)を満たしたマグヌス管に2gの負
荷で懸垂した。マグヌス管内は37℃に保ち、混合ガス
(95%O2+5%CO2)を通気した。発生張力はアイソメ
トリックトランスデューサーを用いて等尺性に測定し、
インク式ペンレコーダー上に記録した。
標本は60分以上安定させた後、試験化合物を添加し、
フェニレフリンで収縮させ、ANP3×10-9Mの添加により
引き起こされる血管弛緩反応を測定した。
(2)結果 結果を第1表に示す。HS−142−1aは、ANPによる血管
弛緩作用に対して明らかな抑制作用を示した。
実験例4. 麻酔下ラットにおけるANPによる利尿作用に対する拮
抗作用 (1)方法 実験動物としてスプラング・ダウリー系雄性ラットを
使用した。ペントバルビタールを腹腔内投与して麻酔し
た後、腹部を一部切開して膀胱を露出させ尿採取用カテ
ーテルを挿入した。大腿静脈には試験化合物の投与およ
び生理食塩水の負荷のためにカニューレを挿入した。
実験は、生理食塩水を一定流量で負荷してしばらく安
定させたのち開始した。一定時間採尿を行なって尿排泄
量を確かめた後、試験化合物または溶媒を静脈内投与
し、さらにANPを静脈内投与して採尿を行なうことで、A
NPにより引き起こされる利尿作用に対する試験化合物の
効果を検討した。
(2)結果 HS−142−1aは、ANP投与により引き起こされる尿量の
増加に対して、1mg/kgで93.0%抑制した。
以上の実験例1〜4よりHS−142−1はANPのレセプタ
ーへの結合を阻害することにより、試験管内及び生体中
でANPの作用に対して拮抗することが示された。
発明の効果 本発明によりANPレセプターに対して拮抗作用を有す
る新規生理活性物質HS−142−1が提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図はHS−142−1aの1H-NMRスペクトルを示す。 第2図はHS−142−1bの1H-NMRスペクトルを示す。 第3図はHS−142−1cの1H-NMRスペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12P 19/04 C12R 1:645) (72)発明者 斎藤 裕 東京都町田市中町3―9―13 (72)発明者 加瀬 廣 イギリス国 ケンブリッジ州 シービー 2,1エヌエー,ベイトマン・ストリー ト 40 (72)発明者 松田 譲 東京都小金井市貫井南町1―22―7 審査官 谷口 博 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08B 37/00 C12P 19/04 CA(STN)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】直鎖状にβ1→6結合したD−グルコース
    オリゴマーのD−グルコースの任意の位置の水酸基とカ
    プロン酸のカルボキシル基とがエステル結合した構造を
    有する新規生理活性物質HS−142−1。
  2. 【請求項2】D−グルコース残基の数が7〜40の整数で
    ある請求項1記載の生理活性物質HS−142−1。
  3. 【請求項3】カプロン酸残基の数が2〜30の整数である
    請求項1または2記載の生理活性物質HS−142−1。
  4. 【請求項4】D−グルコース残基の数が28であり、かつ
    カプロン酸の残基の数が11である請求項1記載の生理活
    性物質HS−142−1。
  5. 【請求項5】D−グルコース残基の数が17であり、かつ
    カプロン酸残基の数が11である請求項1記載の生理活性
    物質HS−142−1。
  6. 【請求項6】D−グルコース残基の数が13であり、かつ
    カプロン酸残基の数が6である請求項1記載の生理活性
    物質HS−142−1。
  7. 【請求項7】下記理化学的性質を有する請求項4記載の
    生理活性物質HS−142−1a。 性状:白色粉末 融点:175〜185℃ 分子式:C234H392O152 マススペクトル(ネガティブモード FAB−マススペ
    クトル) 実測値;M/Z 5536.5(M−H)- 計算値;M/Z 5637.3 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法) cm-1:3420,2930,1730,1635,1455,1380,1250,1170,1045 紫外部吸収スペクトル:(水溶液) 末端吸収を示すのみ。1 H-NMRスペクトル(500MHz,D2O中):第1図に示す。 呈色反応:アニスアルデヒド、硫酸、ヨウ素による呈
    色反応に陽性、ニンヒドリン、ジニトロフェニルヒドラ
    ジン、塩化第二鉄、ブロモクレゾールグリーン、ドラー
    ゲンドルフ反応に陰性。
  8. 【請求項8】下記理化学的性質を有する請求項5記載の
    生理活性物質HS−142−1b。 性状:白色粉末 融点:175〜185℃ 分子式:C150H252O94 マススペクトル(ネガティブモード FAB−マススペ
    クトル) 実測値;M/Z 3557.9(M−H)- 計算値;M/Z 3558.5 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法) cm-1:3425,2925,1730,1645,1455,1375,1250,1170,1050 紫外部吸収スペクトル:(水溶液) 末端吸収を示すのみ。1 H-NMRスペクトル(500MHz,D2O中):第2図に示す。 呈色反応:アニスアルデヒド、硫酸、ヨウ素による呈
    色反応に陽性、ニンヒドリン、ジニトロフェニルヒドラ
    ジン、塩化第二鉄、ブロモクレゾールグリーン、ドラー
    ゲンドルフ反応に陰性。
  9. 【請求項9】下記理化学的性質を有する請求項6記載の
    生理活性物質HS−142−1c。 性状:白色粉末 融点:175〜185℃ 分子式:C114H192O72 マススペクトル(ネガティブモード FAB−マススペ
    クトル) 実測値;M/Z 2713.3(M−H)- 計算値;M/Z 2734.1 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法) cm-1:3400,2935,1735,1650,1460,1380,1255,1165,1050 紫外部吸収スペクトル:(水溶液) 末端吸収を示すのみ。1 H-NMRスペクトル(500MHz,D2O中):第3図に示す。 呈色反応:アニスアルデヒド、硫酸、ヨウ素による呈
    色反応に陽性、ニンヒドリン、ジニトロフェニルヒドラ
    ジン、塩化第二鉄、ブロモクレゾールグリーン、ドラー
    ゲンドルフ反応に陰性。
  10. 【請求項10】オーレオバシディウム(Aureobasidiu
    m)属に属しHS−142−1生産能を有する微生物を培地中
    に培養し、培養物中にHS−142−1を生成蓄積させ、該
    培養物からHS−142−1を採取することを特徴とするHS
    −142−1の製造法。
  11. 【請求項11】該微生物がオーレオバシディウム・プル
    ランス・バラエティー・メラニゲナム(Aureobasidium
    pullulans var.melanigenum)に属する微生物である請
    求項10記載の製造法。
  12. 【請求項12】該微生物がオーレオバシディウム・プル
    ランス・バラエティー・メラニゲナム(Aureobasidium
    pullulans var.melanigenum)KAC−2383(微工研条寄第
    2407号)である請求項10記載の製造法。
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