JP2834231B2 - 磁気ヘッドおよび磁気記憶装置 - Google Patents

磁気ヘッドおよび磁気記憶装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は情報記録用の磁気デイスク装置等の磁気記憶
装置に係り、特に記録情報の再生感度の優れた磁気ヘツ
ドに関する。
〔従来の技術〕
磁気デイスク装置において、磁気記録媒体への情報の
記録再生は磁気ヘツドを用いて行なわれる。記録再生用
の磁気ヘツドとして例えば電磁誘導型のリングヘツドが
広く用いられている。コンピユータ等の記録装置として
用いられるリジツド型磁気デイスク装置では、高速で回
転する円板状の磁気記録媒体の表面上に極微の空間を保
つて浮上する磁気ヘツドに誘導電流を流して、磁気ヘツ
ド先端に発生する磁場によつて磁気記録媒体への記録が
行なわれる。記録密度が向上し記録ビツトの寸法が小さ
くなるにつれ、記録効率と再生効率の良い磁気ヘツドが
必要となつてきている。従来は、記録と再生を同一のリ
ングヘツドで行つていたが、記録と再生の素子を分離し
てそれぞれの機能効率を向上させることを目的とした記
録再生分離型磁気ヘツドも検討されている。この例とし
ては、特開昭51−44917などがある。記録再生分離型の
磁気ヘツドにおいては、とくに高感度の再生機能を持つ
素子が望まれており、磁気抵抗効果を使つた磁気検出素
子(特公昭53−17404)や磁気感応トランジスタを用い
た磁気検出素子(特開昭57−177573)などが提案されて
いる。しかし、この様な素子でも磁気検出感度が、とく
に100Mb/in2以上の高密度磁気記録応用では十分とはい
えなかつた。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、磁気検出の感度が高くかつ実用的に
も作り易い単純な構成の磁気検出用素子を持つ磁気ヘツ
ドを提供することにある。
また、他の目的は、このような磁気ヘツドを用いた磁
気記録装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的は、磁気記録媒体に記録された磁区より漏洩
する磁束を検出する素子として、電気絶縁膜,半導体膜
または半金属膜を介して直列に接続された複数個の強磁
性体積層素子を用い、これに通電したとき該素子に流れ
る電流値が磁場の変化に応じて変化する現象を磁束検出
の手段として用いる磁気ヘツドにより達成できる。
また、この磁気ヘツドを用いて上記他の目的の磁気記
憶装置を実現できる。
〔作用〕
第1図(A),第1図(B)および第2図を参照して
原理を説明する。磁気検出用素子として、第1図に示す
ように電気絶縁膜2を介して直列に積層した強磁性体1
a,1bから成る素子を用いる。電気絶縁膜2の厚さは、ト
ンネル電流が流れ得る程度の10nm以下0.5nm以上、望ま
しくは6nm以下1nm以上とする。この積層素子に、第1図
に示す様な電気回路を接続し、回路に流れる電流値を測
定する。この素子が第1図(A)に示すように、磁気記
録媒体から漏洩する磁場中に置かれている場合、電気絶
縁膜2と接している部分の強磁性金属体1a,1bは漏洩磁
場の影響を受けて磁化する。この状態で、素子には電気
絶縁膜2と接している部分の強磁性金属1a,1bの電子状
態を反映したトンネル電流が流れることになる。この電
子状態は、強磁性金属の温度や結晶性にも影響を受ける
が、磁化の向きや磁壁の存在などの磁化状態によつても
微妙に影響を受ける。この素子を、第1図(B)に示す
ように、第1図(A)とは逆向きの磁場中に置いた場
合、強磁性金属1a,1bの磁化状態は第1図(A)の場合
から変化する。この結果、電気絶縁膜2に接する部分の
強磁性金属1a,1bの電子状態に変化が起り、トンネル電
流が変化する。すなわち、磁気記録媒体に周期的に記録
された記録ビツトの上を、積層素子が通過する毎に、電
流は記録ビツトの磁化の向きに対応して変化することに
なる。第2図に電流の変化の様子を示す。
電気絶縁膜を介して積層した2個の強磁性金属は同種
材料であつても構わないが、磁界の変化に応じて大きな
電流変化を生じしめるには仕事関数の異なつた異種材料
の方が望ましい。トンネル電流値は、電気絶縁膜の厚さ
の他に、両側の強磁性金属の仕事関数の差によつても影
響を受ける。仕事関数の差は0.3eV以上、望ましくは0.5
eV以上であることが大きな電流変化を観測するのには有
効である。
強磁性金属は結晶質でも非晶質でも良いが、磁気記録
媒体から漏洩する磁界の向きの変化に高速で追随するた
めには高周波特性の優れた軟磁性材料であるのが望まし
い。Fe,Fe−Ni,Co−Nb−Zr,Co−Nb−Ta,Fe−Si,Ni−Fe
−BなどFe,Co、もしくはNi基の軟磁性材料などが可能
である。
また、トンネル電流を測定する点では第1図に示した
電気絶縁膜はAl2O3,SiO2などの絶縁性の良い材料に限ら
れるものでなく、Si,B,GaAsなどの半導体や半金属であ
つても良い。強磁性金属との比抵抗の顕著な差があれ
ば、いずれも使用可能である。
第1図では、本発明の原理説明のために電気絶縁膜が
1個の場合を示したが、原理的には強磁性材料と電気絶
縁膜の組合せを複数設けても良く、磁性人工格子を使用
することも有効である。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例で説明する。
実施例1 第3図を参照して実施例を説明する。まず、通常の薄
膜型リングヘツドの製造方法を用いて第3図(A)に示
す断面構造を持つリングヘツドを作製した。ここで基板
31にはMnZnフエライト材、下部磁極32と上部磁極33はい
ずれもパーマロイ材とし膜厚をそれぞれ20μm,15μmと
した。ギヤツプ34の部分の材料はAl2O3とし、ギヤツプ
間隔は0.5μm、コイル35はCuとした。この薄膜型リン
グヘツドの上に、最も薄い部分の厚さが3nmのAl2O3材か
ら成る電気絶縁膜36を形成し、その上にFe−Si−Alから
成る厚さ15μmの強磁性材37の膜を形成し、第3図
(B)に示す断面構造を持つ磁気ヘツドを作製した。こ
の磁気ヘツドは、薄膜リングヘツドが記録用の素子とし
て働く。そして更に、その上に設けた前記絶縁膜36を介
して形成した強磁性材37と、薄膜リングヘツドの上部磁
極33を対とした素子を、再生用の素子として使用する記
録再生分離型磁気ヘツドである。この磁気ヘツドは、薄
膜リングヘツドの上部磁極を記録と再生用の素子構成の
一部として共用しており、磁気ヘツドの全体構成を簡略
化できるという特徴を持つ。
以下、第3図(B)の最上層に設けた強磁性材の種類
を、パーマロイ(Fe−Ni),Fe,Fe−Si,Ni,Ni−Fe−B,C
o,Co−Nb−Zr,Co−Ta−Zrとした以外は上記と同様の磁
気ヘツドを作製した。
これらの磁気ヘツドの特性評価を下記の条件で行つ
た。磁気記録媒体として5インチ径のリジツド磁気デイ
スクを用いた。磁性膜として、面内磁化膜であるCo−Ni
系媒体(面内方向保磁力900Oe,飽和磁化600emu/cc)
と、垂直磁化膜であるCo−Cr系媒体(垂直方向保磁力70
0Oe,飽和磁化520emu/cc)を用いた。ヘツドと媒体のス
ペーシングを0.15μm、相対運動速度を15m/sとした。
記録密度は1kFCIと50kFCIとし、記録は記録用の薄膜リ
ングヘツドを用いて行つた。再生出力の信号/雑音比
(S/N)を測定した。比較の対象として記録用の薄膜リ
ングヘツドを再生用に使用して測定したS/N値を使用し
た。第1表および第2表に各々Co−Ni系面内磁化膜およ
びCo−Cr系垂直磁化膜における測定結果を示す。なお、
表中に示した仕事関数の差は強磁性材37と上部磁極33の
パーマロイの仕事関数の差である。
実施例2 第4図(A)〜第4図(C)に示すプロセスで磁気ヘ
ツドを作製した。基板41としてサフアイアを用い、スパ
ツタ法でまず厚さ20μmの強磁性材42のFe膜を形成した
(第4図(A))。ついで、厚さ2nmの半導体43のSiと
厚さ10nmの強磁性材44のFe−Cを交互に3組形成した
(第4図(B))。この上に通常の薄膜ヘツド製造技術
を用いて、パーマロイから成る下部磁極45,Al2O3から成
るギヤツプ47,Cuから成るコイル48,Co−Nb−Zrから成る
上部磁極46を設け、第4図(C)を示す断面構造を持つ
磁気ヘツドを作製した。強磁性材間に挾む電気絶縁膜を
半導体に変えた本実施例の磁気ヘツドを実施例1と同様
な条件で評価したところ、Co−Ni系面内磁化膜,Co−Cr
系垂直磁化膜のいずれを用いた場合においても、1kFCI,
50kFCIの線記録密度で記録した記録状態を再生した時の
S/N値は、従来のリングヘツドで再生した場合のS/N値よ
りも少なくとも3倍以上であることが分つた。
実施例3 実施例1において、電気絶縁膜36のAl2O3の代りにSiO
2,MnO,NiO,BeO,SiO2−Al2O3,Mn−Znフエライト,Y2O3,Zr
O2,TiO2を用いて磁気ヘツドを作製した。Mn−Znフエラ
イトは強磁性材料であるが電気的には絶縁材料であり、
他の酸化物と同様に電気絶縁膜として使用することが可
能であつた。
実施例4 実施例1において電気絶縁膜36のAl2O3の代りにSi,B,
BNを用いて磁気ヘツドを作製した。
実施例3および実施例4で作製した磁気ヘツドの特性
評価を実施例1の場合と同様の条件で行つた。強磁性材
37と上部磁極の間に流れる電流の変化の測定による再生
を試みたところ、そのS/Nの値は、いずれの磁気ヘツド
でも、薄膜リングヘツドで再生を行つた場合のS/N値の
2倍以上であつた。
〔発明の効果〕
本発明は、以上の実施例で述べたように磁気記録情報
を再生する場合、従来用いられているリングヘツドの再
生信号のS/N値よりはるかに大きいS/N値を与える新規な
磁気ヘツドを提供するものである。構造も簡単であり、
記録用の素子に重ねて本発明より成る再生素子を容易に
設けることができ、記録と再生分離型の磁気ヘツドを単
純なプロセスで製造できる。本発明による磁気ヘツドを
用いれば、再生のS/Nを大幅に改善できるので、磁気ヘ
ツドと記録媒体のスペーシングが多少広くても高密度磁
気記録の再生が可能であり、ヘツドクラツシユ等の事故
の確率を下げることも可能である。この磁気ヘツドを磁
気デイスク装置に使用することにより、装置の信頼性や
高記録密度領域における磁気記録再生特性を大幅に改良
することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図(A),第1図(B)および第2図は本発明によ
る磁気ヘツドの動作原理を説明するための図、第3図は
本発明の一つの実施形態を説明するための断面図、第4
図は本発明の他の実施形態を説明するための断面図であ
る。 1a,1b……強磁性体、2……電気絶縁膜、3……磁気記
録媒体、4……基板、33……上部磁極、36……電気絶縁
膜、37……強磁性材、42……強磁性材、43……半導体、
44……強磁性材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮村 芳徳 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 釘屋 文雄 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 鈴木 幹夫 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 赤城 協 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 仲尾 武司 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 福岡 弘継 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 宗本 隆幸 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所機械研究所内 (72)発明者 高垣 篤補 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地 株式会社日立製作所生産技術研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/33

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁気記録媒体に記録された磁区より漏洩す
    る磁束を検出する素子として、電気絶縁膜,半導体膜ま
    たは半金属膜を介して直列に接続された複数個の強磁性
    体積層素子を用い、これに通電したとき該素子に流れる
    電流値が磁場の変化に応じて変化する現象を磁束検出の
    手段として用いることを特徴とする磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載の磁気ヘッドに
    おいて、上記強磁性体積層素子は1枚の電気絶縁膜,半
    導体膜、または半金属膜を介して種類の異なる2個の強
    磁性体が直列に接続されている磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第2項記載の磁気ヘッドに
    おいて、上記種類の異なる2個の強磁性体材料の仕事関
    数の差は0.3eV以上である磁気ヘッド。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項または第2項記載の
    磁気ヘッドにおいて、上記電気絶縁膜,半導体膜または
    半金属膜の厚さは0.5〜1.0nmの範囲にある磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】特許請求の範囲第1項乃至第4項のいずれ
    かに記載の磁気ヘッドにおいて、上記強磁性体は軟磁性
    材料である磁気ヘッド。
  6. 【請求項6】特許請求の範囲第1項乃至第5項のいずれ
    かに記載の磁気ヘッドにおいて、上記磁気ヘッドはさら
    に記録用の磁極を有する記録再生分離型である磁気ヘッ
    ド。
  7. 【請求項7】特許請求の範囲第1項乃至第6項のいずれ
    かに記載の磁気ヘッドを用いたことを特徴とする磁気記
    憶装置。
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