JP2829396B2 - 車輌用板ばね - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は自動車等の車輌の足廻りに装着する板ばね、
特に重ね板ばねに関する。

［従来の技術］ 従来、重ね板ばねは第５図に示すように板ばねが複数
板重ね合わされ、両端には目玉1a,1aが設けられ、この
目玉1a,1aにはブッシュ7,7を介して図示しないピンが嵌
挿されており、車輌の車体に配設されたブラケットに前
記ピンが支持されている。そして重ね板ばねの中央には
重ね板ばねのセンタボルト穴４が上下方向に貫通して穿
設され、この穴にセンタボルト５が取り付けてある。そ
して、このセンタボルト５の位置に車輌の車軸が取り付
けられる。このセンタボルト５は重ね板ばねを形成する
各板ばね（1,2,3で示すが、複数枚で形成される）を拘
束して、車輌に取り付け後の板ばねのずれ止めの役目を
するものであるが、それぞれの板ばね1,2,3のセンタボ
ルト孔には、それぞれのリーフテンション側（第1a図の
６）に所定の半径ｒで面取りが施されている。

前記の如く重ね板ばねは、両端の目玉1a,1aの部分で
車輌の車台に支持されて、長手方向中央に設けたセンタ
ボルト５の位置で車軸に取り付けられており、両端支持
で中央のセンタボルト５位置に第５図において上向きの
加重がかかるので、各板ばね1,2,3の上面であるリーフ
テンション側６に引張応力が発生する。従って、前記各
板ばねのセンタボルト穴1b,2b,3bの入口周縁に引張応力
が集中するが、板ばねは例えば弾性の大きいスプリング
鋼で作られているので圧縮よりも引張に弱い。そのた
め、リーフテンション側６のセンタボルト穴入口に面取
りを行うものである。この面取りは第1a図に示すように
通常熱間加工中にＲ加工又は第３図に示すようにＣ加工
するが、第４図に示すようにセンタボルト穴加工後半径
ｒの鋼球を冷間でセンタボルト穴８の上面入口に圧入し
て面取りする加工法も実施されている。

また、従来センタボルト穴に関し、リーフテンション
側６のセンタボルト穴入口は面取りを施されていたリー
フコンプレッション側には何ら加工が施されていなかっ
た。

［発明が解決しようとする課題］ しかるに、第1a図にＲ及び第３図にＣで示す面取りで
は、重ね板ばねを車輌に装着して使用中に、センタボル
ト穴からばね板の巾方向に材料の疲労によるヘアクラッ
クが生じることがあり、この部分の強度が不足する欠点
がある。

また、板ばねの材料の高強度化に伴い、センタボルト
穴のリーフテンション側には種々の強化のための加工が
施されていたが、リーフコンプレッション側には何ら強
化のための加工は施されていなかった。しかし、設計応
力の取り方で重ね板ばねが車両に取り付けられた状態に
おいて、板ばねのリーフコンプレッション側に引張応力
が発生する場合がある。従って、使用中にセンタボルト
穴のリーフコンプレッション側入口にクラックが生じる
ことがある。

本発明は前述した事情に鑑みてなされたものである。

［課題を解決するための手段］ 前記目的を達成するため、本発明の請求項１に係る車
輌用板ばねは、板ばねに穿設されたセンタボルト穴のリ
ーフテンション側入口が面取りされ、このセンタボルト
穴に冷間でリーフテンション側から円錐形のテーパーポ
ンチを圧入し、面取り部の一部を含む所定の深さまで前
記センタボルト穴の内側が円錐形に押し拡げられたセン
タボルト穴としたことを特徴とする。

また、本発明の請求項２に係る車輌用板ばねは、板ば
ねに穿設されたセンタボルト穴のリーフテンション側入
口が面取りされ、このセンタボルト穴に冷間でリーフテ
ンション側から、円錐形のテーパーポンチの両側を軸心
にそって楔状に切除し、横断面の長手方向両側に円弧を
残した形状の異形ポンチを、その長手方向を板ばねの長
手方向と直角にして圧入し、面取り部の一部を含む所定
の深さまで前記センタボルト穴の内側両側が異形ポンチ
の形状に対応して押し拡げられセンタボルト穴としたこ
とを特徴とする。

さらに、本発明の請求項３に係る車輌用板ばねは、請
求項１及び請求項２に記載の車輌用板ばねにおいて、 リーフテンション側からのポンチの圧入と同時に、セ
ンタボルト穴のリーフコンプレッション側から円錐形の
テーパーポンチを圧入し、リーフコンプレッション側の
センタボルト穴の入口が円錐形に押し拡げられたセンタ
ボルト穴としたことを特徴とする。

［作用］ 板ばねのセンタボルト穴における、円錐形のテーパー
ポンチが圧入され、円錐形に押し拡げられた部分は、冷
間加工されたものであるから冷間加工による材料の硬化
と、材料の圧縮状態による圧縮応力が発生している。

また、異形ポンチを、該異形ポンチの長手方向を板ば
ねの長手方向と直角にして、面取りされたセンタボルト
穴のリーフテンション側から圧入すると、板ばねの使用
状態で応力が発生するセンタボルト穴の両側（板ばねの
長手方向にそった部分）に前記と同様に冷間圧縮加工に
よる加工硬化と、材料の圧縮状態による圧縮応力が発生
している。

そして、この場合異形ポンチは円錐形のテーパーポン
チに比べ接触面積が小さいので同一圧入力により、セン
タボルト穴の深いところまで押し拡げるこができる。

また、前記センタボルト穴のリーフテンション側の加
工と同時にリーフコンプレッション側にもテーパーポン
チを圧入するとリーフコンプレッション側が円錐形に押
し拡げられ、この部分に冷間加工による材料の硬化と、
材料の圧縮状態による圧縮応力が発生する。

［実施例］ 以下、本発明の実施例を添付図に基づいて詳細に説明
する。

第1a図は、本発明の板ばねのセンタボルト穴の加工法
を示す説明図、第２図は同加工法による板ばねの寿命を
示すグラフ、第３図は板ばねのセンタボルト穴のリーフ
テンション側をＣ加工した断面図である。

第1a図において、１（2,3）は板ばねであって、重ね
板ばねの内の１枚の板ばねを示す。他の板ばねも同様の
図となる。

板ばね１（2,3）にはリーフテンション側６にＲの半
径で面取りが施されている。前記板ばね１を焼戻し後、
センタボルト穴1bにリーフテンション６側から油圧プレ
ースにより円錐形でテーパ角θのテーパーポンチ10を所
定の荷重で圧入すると面取り部1cを含むｌの間（鎖線で
示す）が第1b図に示すように円錐形に押し拡げられる。

前記面取り部1cは、第３図に示すようなＣ加工であっ
ても同様に、Ｃ加工した面取り部1dを含むｌの間（鎖線
で示す）が円錐形に押し拡げられる。しかして、入口の
面取り部1cの一部を含む所定の深さまでセンタボルト穴
1bの内側が円錐形に押し拡げられたセンタボルト穴とし
た板ばねとなる。

本発明の第（２）の請求項は第1c図に示すように前記
円錐形のテーパーポンチの代りに異形ポンチ21を該異形
ポンチの長手方向を板ばね１（2,3）の長手方向と直角
に圧入し、面取り部の一部を含む所定の深さまでセンタ
ボルト穴の内側を押し拡げるものである。

第1d図、第1e図に示すように、前記異形ポンチ21は円
錐形のテーパーポンチの両側を、軸心にそって楔状に切
除し、横断面（第1e図）の長手方向両側に円弧21b,21b
を残した形状である。第1e図において21a,21aは異形ポ
ンチ両側の楔状面を示す。センタボルト穴1b（2b,3b）
にとって、第1c図に示すL,Lの部分に応力が集中するの
で、この部分の強化が望まれる。

従って、異形ポンチにより板ばね１（2,3）の長手方
向に対し直角方向であるL,Lの部分のみを強化するもの
である。

前記異形ポンチは横断面がほぼ楕円形のテーパーポン
チであっても良い。しかして、入口の面取り部1cの一部
を含む所定の深さまでセンタボルト穴1b（2b,3b）の内
側が、第1e図に示すように押し拡げられたセンタボルト
穴1bとした板ばねとなる。

本発明の第（３）の請求項は第1f図に示すように、板
ばね１（2,3）におけるセンタボルト穴1b（2b,3b）のリ
ーフテンション側６側から前記円錐形のテーパーポンチ
又は異形ポンチを圧入すると同時に、コンプレッション
側９から、従来使用されたセンタボルト穴1b（2b,3b）
の位置決め用突起をテーパーポンチ11aに置換えてセン
タボルト穴1b（2b,3b）のリーフコンプレッション側９
の入口を円錐形に押し拡げるものである。

11はプレスの図示しない下部ベットに取り付けた位置
決め治具で、テーパーポンチ11aが立設されている。

また、テーパーポンチ11aの代りに球状のポンチを使
用してもよい。

ポンチをテーパーポンチにする理由は、板ばねは使用
する車型によって板巾、板厚が異なることによってセン
タボルト孔の径がそれぞれ変わるが、円錐形だと１つの
ポンチで全ての穴径に対応できるためである。しかし
て、センタボルト穴1b（2b,3b）のリーフコンプレッシ
ョン側９の入口も、円錐形に押し拡げられたセンタボル
ト穴とした板ばねとなる。

第２図は本発明の方法でセンタボルト孔を加工した板
ばねの寿命を示す試験の結果を示すグラフであって、板
ばねの両端を下方より支持し、センタボルト穴の上方か
ら繰返し荷重をかけた。この実験に使用した円錐形のテ
ーパーポンチのテーパー角θ（第1a図）は40度である。
このグラフでは横軸に押込率を示すが、この押込率は第
1a図、第1b図及び第３図に示す板厚ｔに対する押込深さ
ｈの％を表したものである。次に縦軸に板ばねの寿命を
示すが、この寿命は繰返し荷重の回数Ｎの対数を表した
ものである。

このグラフによる押込率が25％附近まで寿命が増加
し、それ以上では寿命が余り増加しないので、ｔに対す
るｈの深さは４分の１即ち25％程度が良い。

［発明の効果］ 以上詳細に説明した本発明のセンタボルト穴を有する
板ばねによれば、センタボルト穴に、従来の面取りに加
え、更に冷間にて面取り部の一部を含む所定の深さま
で、前記センタボルト穴の内側を円錐形に押し拡げるこ
とにより、従来の面取りのR,C加工の如く、応力集中緩
和のための形状効果を期待したものではなく、円錐形の
テーパーポンチの圧入により、穴入口付近の冷間加工硬
化による強度向上と、この部分の材料が圧縮状態になる
ことによる圧縮応力の発生により、抗張力が増大する。

また、センタボルト穴の加工がテーパーポンチが異形
ポンチである場合には、センタボルト穴との接触面積が
円錐形のテーパーポンチに比べ小さいので、円錐形のテ
ーパーポンチより小さい圧入力でセンタボルト穴の必要
な部分のみを強化できる。

また、板ばねのセンタボルト穴のリーフコンプレッシ
ョン側にもリーフテンション側と同時にテーパーポンチ
を圧入して、この部分を押し拡げると、板ばねが車両に
取り付けられた状態において、リーフコンプレッション
側に引張応力が発生した場合でも、これに対抗してリー
フコンプレッション側のセンタボルト穴入口を強化する
ことができる。

従って、板ばねのセンタボルト穴への応力集中による
材料の疲労が緩和され板ばねの寿命を長くすることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第1a図は本発明の板ばねのセンタボルト穴の加工法を示
す説明図、第1b図は本発明による板ばねのセンタボルト
穴の加工後を示す縦断面図、第1c図は異形ポンチによる
加工を説明する平面図、第1d図及び第1e図はそれぞれ異
形ポンチの正面図及び断面図、第1f図はセンタボルト穴
のリーフテンション側と同時にリーフコンプレッション
側を加工する方法を示す説明図、第２図は本発明の方法
でセンタボルト孔を加工した板ばねの寿命と押込率の関
係を示すグラフ、第３図は本発明によるＣ加工したセン
タボルト穴の加工後を示す縦断面図、第４図は従来の実
施例を示す説明図、第５図は重ね板ばねの一部を断面し
た側面図である。 １、２、３、……板ばね、1a……目玉、1c,1d……面取
り部、1b,2b,3b……センタボルト穴、４……重ね板ばね
のセンタボルト穴、５……センタボルト、６……リーフ
テンション側、７……ブッシュ、９……リーフコンプレ
ッション側、10,11a……テーパーポンチ、

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】板ばねに穿設されたセンタボルト穴のリー
   フテンション側入口が面取りされ、このセンタボルト穴
   に冷間でリーフテンション側から円錐形のテーパーポン
   チを圧入し、面取り部の一部を含む所定の深さまで前記
   センタボルト穴の内側が円錐形に押し拡げられたセンタ
   ボルト穴としたことを特徴とする車輌用板ばね。
2. 【請求項２】板ばねに穿設されたセンタボルト穴のリー
   フテンション側入口が面取りされ、このセンタボルト穴
   に冷間でリーフテンション側から、円錐形のテーパーポ
   ンチの両側を軸心にそって楔状に切除し、横断面の長手
   方向両側に円弧を残した形状の異形ポンチを、その長手
   方向を板ばねの長手方向と直角にして圧入し、面取り部
   の一部を含む所定の深さまで前記センタボルト穴の内側
   両側が異形ポンチの形状に対応して押し拡げられセンタ
   ボルト穴としたことを特徴とする車輌用板ばね。
3. 【請求項３】請求項１及び請求項２に記載の車輌用板ば
   ねにおいて、 リーフテンション側からのポンチの圧入と同時に、セン
   タボルト穴のリーフコンプレッション側から円錐形のテ
   ーパーポンチを圧入し、リーフコンプレッション側のセ
   ンタボルト穴の入口が円錐形に押し拡げられたセンタボ
   ルト穴としたことを特徴とする車輌用板ばね。