JP4510572B2 - 疲労特性に優れた打ち抜き端面を有する自動車用部品の製造方法 - Google Patents
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自動車足回り部品では、路面や車体からの荷重により比較的高い繰返し応力が加わるため疲労破壊の懸念があり疲労寿命の優れた構造とする必要がある。
通常、打ち抜かれたブランクの疲労寿命は、打ち抜き端面にある「破断面」の凹凸形状により健全部(鋼板表裏面)より劣化している。更に、多くの場合、打ち抜かれたブランクには次の成形工程で平均して概ね5%程度の歪が入るため、その歪が端面に加わることで更に疲労寿命は劣化する。このように、成形後の打ち抜き端面は、健全部(鋼板表裏面)と比べて著しく劣化しており、そのため、部品全体の疲労寿命は著しく劣化している。
成形後の打ち抜き端面において疲労寿命が低下するのは、以下のような理由によると考えられる。
打ち抜き端面の疲労寿命を改善するための技術はこれまでいくつか提案されている。しかし、以下に示すように、全て成形による端面の劣化がない場合に有効な技術であり成形の歪が存在する場合に有効であるという保証はない。
他の対策として、打ち抜き端面に「コイニング」処理を行うことにより疲労寿命を改善することも実施されている。これは、図3に示すように、打ち抜き端面に金型8を押し当て、端面に圧縮残留応力を付与することで疲労寿命を改善するものである。しかし、この工法の効果も打ち抜き後に成形による歪みがない場合を想定しており、成形による歪が入る場合、その効果が得られると言う保証はない。
本発明は、上記に鑑み、従来の打ち抜き、成形等により製造される部品の製造工程に対してコイニング等による工程増加を招くことなく、十分な成形後打ち抜き端面疲労寿命の改善を図ることを目的とする。
本発明は以上を基に為されたものであり、以下をその要旨とする。
発明は、打ち抜き加工後の端面の剪断面比率が5〜12%となり、薄鋼板から打ち抜 き加工を行い次にプレス成形を行う工程を経て製造された自動車用部品の製造方法であ って、薄鋼板から打ち抜き加工を行う際のポンチかつ/ またはダイの先端部に凸状の 形状を有する突起を有し、突起端と切刃間が0.1mm〜1mm、突起肩部曲率半径が 0.2mm以上、または、突起肩部角度が100度以上170度以下の打ち抜き用工具 を用いて打ち抜き加工を行い次にプレス成形を行うことを特徴とする打ち抜き端面を有 する自動車用部品の製造方法。
まず本発明者らは、成形後の打ち抜き端面の疲労寿命の劣化の原因について、打ち抜き端面性状と打ち抜き端面硬さに着目して、詳細な調査を行った。
表1、2に示す鋼A(2.6mm厚みの熱延鋼板)を対象として、クリアランスやポンチ形状を変えて諸々の打ち抜き条件にて打ち抜きを行った。それから図4−1に示す引張試験片を作成した。次に、成形の影響を評価するために引張試験片の評点距離間に5%の引張歪(以後「予歪」と称する)を加えた後、その引張試験片から図4−2に示す疲労試験片を作成した。
図6の知見から、打ち抜き端面の硬さの増加を抑え、その増加率を20%以下とすることが成形後の打ち抜き端面疲労寿命の改善に繋がることが判明した。
次に、打ち抜き端面の硬さの増加と打ち抜き端面性状(剪断面比率)の関係について調べた。
剪断面比率が小さいほど、打ち抜き端面硬さの増加率は小さい理由については、次のように考えられる。打ち抜き時の材料の変形挙動を図8に示すが、打ち抜き時の初めの段階(亀裂発生前の左図)では、材料に剪断面5が形成されていくと同時に、材料の加工硬化部7がポンチ3とダイス2により剪断され、そこに歪が入り加工硬化を起こす(図8の左図「亀裂発生前」)。更にポンチが移動すると、ポンチ肩20の近傍から亀裂11が発生する(図8の右図「亀裂発生後」)。この亀裂11により生じた新生面が破断面6となるが、この段階以降は、亀裂の伝播により材料が変形・分離するため、加工硬化部7には歪は溜まらないものと考えられる。従って、打ち抜き端面の加工硬化は、打ち抜き時に剪断面5が生じている時に生ずると考えられ、このため、剪断面5が薄いほど端面の歪は小さいものと考えられる。
以上から、打ち抜き端面硬さ増加率を低減するためには、打ち抜き端面の剪断面6の全厚に対する比率(以後「剪断面比率」)を低減する必要があることが分かった。前述のように、成形後打ち抜き端面の疲労寿命を良好とするためには打ち抜き端面硬さ増加率を20%以下とする必要があるが、図7から、そのためには、剪断面比率を15%以下とする必要があること分かった。
剪断面比率を低減するには、打ち抜き時にポンチ肩20からの亀裂の発生・伝播を促進する必要がある。そのためには、ポンチ肩20が接触する材料部分に張力を与えることが有効と考えた。この観点から、ポンチ肩20より先行して材料に接触し、材料に曲げ変形を加える曲げ刃(突起)をポンチ先端に付けることが有効と考えられる。この観点から、ポンチ形状の検討を行った。
図9にこの試験に用いたポンチ形状の模式図を示す。このポンチは、通常の形状の打ち抜きポンチ3の先端部に突起12が付いた二段形状21となっている。試験では、突起12の肩部曲率半径R、肩角度θを変化させて端面性状や端面硬さの関係の調査を行った。試験においては表1および2の鋼A(2.6mm厚のTS780MPa級の熱延鋼板)を用いた。
次に、ポンチ径=10mm、打ち抜きクリアランスC=12.5%、突起端と切刃間隔d=1mm、突起高さh=0.3mmを一定として突起肩角度θが変化した場合の剪断面比率との関係を図11に示す。これより、突起肩角度θは、100度以上、170度以下であればやはり剪断面比率が下がり15%以下となることが判った。この場合も、剪断比率が小さいほど端面硬さの増加率も小さく、剪断面比率15%以下で硬さの増加率も20%以下となることが確認された。
なお、突起端と切刃間隔dは特に限定する必要はないが、dが小さすぎると切刃のポンチの切刃による剪断が行われなくなるので概ね0.1mm程度以上が好ましい。また、ポンチとダイのクリアランスcについては特に規定する必要はないが、5〜20%が好ましい。
以上の打ち抜きポンチ、またはダイを用いて、素材のブランキング、打ち抜き穴明けを行い、成形、溶接、塗装等を行うことにより、成形後の打ち抜き端面疲労寿命に優れた自動車部品を製造することが可能である。
得られたホイールディスクの曲げモーメント耐久試験を行った。本ホイールディスクが実使用されるために必要な曲げモーメント試験での疲労寿命は、曲げモーメント=110kgf・mの70万回、130kgf・mの時50万回である。
このホイールディスクの疲労試験では、その疲労寿命は、飾り穴13の端面の疲労寿命により律速された。尚、曲げモーメント疲労寿命試験は、図14に示すように、ホイール中央部に一定の曲げモーメントを加えた上で回転させ、疲労亀裂が発生するまでの寿命(回転回数)を調べる方法である。
試験の結果では、疲労亀裂は全ての水準で飾り穴13より発生していた。
水準1はレーザーによる飾り穴作成によりホイースディスクを製作した場合であり、疲労寿命は良くない。
水準2、6は、通常の形状の打ち抜きポンチにより飾り穴を作成した場合であり、打ち抜き端面剪断面比率が大きく、疲労寿命は良くない。
水準3、7は、打ち抜きポンチの突起肩R、突起肩曲率半径Rが適正でないため、打ち抜き端面剪断面比率が大きく疲労寿命は良くない。
水準4、5、8、9は、打ち抜きポンチの突起肩R、突起肩曲率半径Rが適正であり、打ち抜き端面剪断面比率は小さく、疲労寿命は良い。
2:ダイ
3:ポンチ
4:材料
5:剪断面
6:破断面
7:加工硬化部
8:コイニングポンチ
9:打ち抜き端面硬さ測定位置
10:板厚中心部硬さ測定位置
11:亀裂
12:突起
13:飾り穴
14:疲労亀裂
15:ボルト穴
16:ハブ穴
17:ホイールディスク
18:リム
19:曲げモーメント
20:ポンチ肩
21:突起付き打ち抜きポンチ
Claims (1)
- 打ち抜き加工後の端面の剪断面比率が5〜12%となり、薄鋼板から打ち抜き加工を 行い次にプレス成形を行う工程を経て製造された自動車用部品の製造方法であって、薄 鋼板から打ち抜き加工を行う際のポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に凸状の形 状を有する突起を有し、突起端と切刃間が0.1mm〜1mm、突起肩部曲率半径が0 .2mm以上、または、突起肩部角度が100度以上170度以下の打ち抜き用工具を 用いて打ち抜き加工を行い次にプレス成形を行うことを特徴とする打ち抜き端面を有す る自動車用部品の製造方法。
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