JPWO2020145063A1 - 金属板のせん断加工方法及びプレス部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
高強度鋼板の車体適用時における課題の一つに遅れ破壊がある。特に、高強度鋼板のうち、引張強度が1180MPa以上の高強度鋼板では、せん断加工後の端面(以下せん断端面とも呼ぶ)から発生する遅れ破壊が重要な課題となっている。
せん断端面の引張り残留応力を低減する方法としては、例えば、せん断加工時の鋼板温度を上昇させる方法(非特許文献1、2)や、穴抜き加工時に段付きパンチを用いる方法(非特許文献3)、更にシェービングによる方法(非特許文献4、特許文献1)がある。
以上のように、従来から、量産への適用が容易で、かつ十分な耐遅れ破壊効果が得られる、金属板に対するせん断加工方法の開発が求められている。
本発明は、上記のような課題を解決すべく考案したものであり、高強度鋼からなる金属板を使用しても、耐遅れ破壊特性に優れたプレス部品を提供可能とすることを目的としている。
出願人は、金属板を2度せん断加工し、かつ2度目の切り代を適切に設定することで、量産への適用が容易、且つせん断加工後のせん断端面の残留応力を低減できることを発見した。そして、せん断加工後のせん断端面の残留応力を低減することで、プレス成形されたプレス部品において、遅れ破壊の発生が抑制されることを見いだした。
また、本発明の他の態様のプレス部品の製造方法は、金属板を、1又は2以上のプレス成形を経てプレス部品を製造するプレス部品の製造方法において、金属板として、上記のせん断加工方法でせん断された金属板を使用することを要旨とする。
ここで、本明細書で高強度鋼板とは、引張強度が590MPa以上の鋼板を指す。
本実施形態では、プレス成形で使用する金属板について説明する。
本実施形態で使用する金属板は、せん断端面の引張り残留応力によって、プレス成形後に経時的に、端部で遅れ破壊が起こる可能性のある高強度鋼板からなる。本発明は、引張強度が590MPa以上の高強度鋼板であれば適用可能であるが、遅れ破壊が特に懸念される980MPa以上を有する高強度鋼板に効果的であり、1180MPa以上を有する高強度鋼板により効果的な技術である。
トリム工程1では、金属板を、プレス部品の部品形状に応じた輪郭形状に切断する。
この切断の際に、金属板の全周を2度続けてせん断加工(2度せん断加工1A)を施す。
本実施形態では、2度目の切断時の切り代ΔCの大きさは、金属板10の板厚tの1.2倍以上20倍未満に設定する。
ここで、上記説明では、金属板10の全周に、本発明に基づく2度せん断加工を施す場合を例示した。しかし、本発明は、それに限定されない。例えば、金属板10の一辺にだけ、本発明に基づく2度せん断加工を施しても良い。この場合、プレス成形で引張り残留応力が所定以上発生する端部をCAE解析によって推定し、所定以上の引張り残留応力が発生すると推定される辺にのみ、本発明に基づく2度せん断加工を施す。
また、プレス部品の形状が複雑化するほど、多段階のプレス成形でプレス部品が製造される。この場合、本発明に基づく2度せん断加工を、必ずしも最初のプレス成形の前に実施する必要はない。例えば、本発明に基づく2度せん断加工を、最後のプレス方法を除く任意のプレス成形後に実施しても良い。また、本発明に基づく2度せん断加工における、1度目のせん断加工と2度目のせん断加工の間に、1又は2以上のプレス成形の工程を行っても良い。
なお、上記説明では、本発明に基づく2度せん断加工を施した金属板10をプレス成形して目的の製品にする場合を例示しているが、プレス成形を行わずに用いられる金属板10であっても、本発明のせん断加工方法は適用可能である。
また、本発明に基づく2度せん断加工の前に他のせん断加工が施されていても良い。
せん断は、例えば、図3に示すように、下刃11と板押さえ12で金属板10を拘束した状態で、下刃11に対して相対的に上刃13を板厚方向に移動することで行われる。下刃11や上刃13は、例えばパンチやダイスである。
例えば、1度目のせん断は、図3のように、通常のせん断加工である。
2度目のせん断加工でも、図4に示すように下刃21及び板押さえ22で再び金属板10を拘束する。なお、2度せん断する一連のせん断加工において、1度目も2度目も同一の下刃及び同一の板押さえ12を使用しても構わない。
なお、2度目のせん断に使用する上刃23は、1度目のせん断に使用する上刃13と同じのものであっても構わない。
本発明者が詳細な検討を行ったところ、高強度鋼板、特に引張強度1180MPa以上の金属板10において、2度目のせん断で金属板10の端部に曲げ変形を与えられる切り代ΔCは、板厚tの1.2倍以上とする必要があることが分かった。板厚tの1.2倍よりも小さい切り代ΔCの場合、部材に十分な曲げ変形が与えられず、せん断加工部の破断が促進できないおそれがある。
また、2度目のせん断加工において、使用する上刃23と下刃21の隙間dと金属板10の板厚tの比であるクリアランス(d/t)は、5%以上かつ30%未満であることが望ましい。
クリアランス(d/t)が5%より小さい場合、せん断加工時に2次せん断面が発生し、せん断端面の状態として好ましくないおそれがある。更に、引張り残留応力が大きくなるおそれもある。
これに対し、クリアランス(d/t)は、5%以上かつ30%未満とすることで、せん断加工時に2次せん断面を抑制し、更に、引張り残留応力が大きくなることもない。更に、せん断端面に所定以上のバリが発生せず、せん断端面の成形性を大きく損なうことがないし、せん断加工終了までに加工面に不均一な変形応力が付与されることが防止されるため、せん断加工終了後の引張残留応力が大きくならない。
より好ましいクリアランス(d/t)は10%以上かつ20%未満である。
例えば、引張強度が1180MPa以上の金属板10の場合、金属板10は、プレス成形性の観点では、板厚は0.8mm以上3.0mm以下であることが好ましい。板厚が0.8mm以下であるとプレス成形時に金属板10が容易に破断する。一方、板厚が3.0mm以上であるとプレス成形時の成形荷重が大きくなり、非常に大きな設備能力が必要とされる。
ここでは、板厚が1.4mmの高強度鋼板からなる、二種類の供試材A、Bを対象とした。供試材A、Bのせん断前の寸法は、100mm×100mmである。
まず、供試材を、1度目の切断で100mm×50mmの寸法に切断した。
本発明のせん断加工方法の効果を検証するサンプルは、1度目の切断加工後、切り代ΔCを変更して2度目の切断を実施した。なお、1度目と2度目の切断加工ともに切断加工時のクリアランスは12.5%とした。
その割れの確認は、X線による測定であり、測定範囲を直径300μmとした。また、せん断加工後のせん断端面の板面、板厚の両方向に対して中央の位置の応力を測定した。
表1に、供試材の引張強度及びサンプルの2度目の切り代の量、せん断端面の残留応力及び浸漬試験の割れ判定結果を示す。
ただし、2度目の切断加工の切り代を板厚の20倍とした場合には、引張残留応力低減効果が表れていない。このように、表1から分かるように、2度目のせん断加工の切り代ΔCを、上記金属板10の板厚の1.2倍以上20倍未満とすることで、耐遅れ破壊特性が大幅に向上することが分かった。
また、表3に、2度せん断した場合における、クリアランスを変化させた場合のせん断端面の残留応力及び浸漬試験の結果を示す。
以上より、適切な切り代、工具刃先半径、クリアランスを設定することで、本手法によるせん断加工方法が引張り残留応力の低減に有効であるといえる。
1A 2度せん断加工
2 プレス工程
10 金属板
11 下刃(1度目のせん断用)
13 上刃(1度目のせん断用)
21 下刃(2度目のせん断用)
23 上刃(2度目のせん断用)
ΔC 2度目のせん断の切り代
t 板厚
Claims (5)
- 高強度鋼板からなる金属板のせん断加工方法であって、
金属板の少なくとも一部の端部に対し2度せん断加工を施し、
上記2度せん断加工のうちの2度目のせん断加工の切り代を、上記金属板の板厚の1.2倍以上20倍未満とすることを特徴とする金属板のせん断加工方法。 - 上記2度目のせん断加工で使用する上刃と下刃において、金属板の板厚tに対する上刃と下刃の隙間dの比であるクリアランス(d/t)を、5%以上30%未満の範囲に設定することを特徴とする請求項1に記載した金属板のせん断加工方法。
- 上記金属板の引張強度が1180MPa以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した金属板のせん断加工方法。
- 金属板を、1又は2以上のプレス成形を経てプレス部品とする際に、
上記金属板として、請求項1〜請求項3のいずれか1項のせん断加工方法でせん断された金属板を使用することを特徴とするプレス部品の製造方法。 - 上記2度せん断加工における1度目のせん断加工と2度目のせん断加工は、上記1又は2以上のプレス成形の最後のプレス成形の前までそれぞれ個別に実施されることを特徴とする請求項4に記載したプレス部品の製造方法。
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