JP2006224123A - 鋼板打ち抜き方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポンチおよびダイを用いて、被加工材となる鋼板を剪断部および被剪断部に切断して所定形状に加工する際の打ち抜き端面割れを防止する鋼板打ち抜き方法を提供する。
【解決手段】ポンチおよびダイを用いて、被加工材となる鋼板を剪断部および被剪断部に切断して所定形状に加工する打ち抜き方法であって、
前記鋼板の被剪断部分に、0.001〜0.20の引張歪(真歪)に相当する引張応力を付与した上で剪断を行うことを特徴とする、打ち抜き端面割れを生じない鋼板打ち抜き方法。
【選択図】図9

Description

本発明は、ポンチおよびダイを用いて、被加工材となる鋼板を剪断部および被剪断部に切断して所定形状に加工する鋼板打ち抜き方法に関する。
具体的には、鋼板から自動車用高意匠型ホイールディスク等の部品を製造するために、所定の輪郭に打ち抜く技術に関するものである。
近年製造されるようになった自動車用高意匠型ホイールディスクを初めとする多くの自動車用部品の成形では、初めに打ち抜きにより穴を作成した後、その打ち抜き穴を更に穴広げ加工することにより製造される場合が多い。
そのような穴広げ加工の際は、初めの打ち抜き加工による端面への加工の影響により打ち抜き端面の延性が劣化しているために、打ち抜き端面に割れを生じ、これが部品の外観を損なうためにその防止が望まれていた。また、更に打ち抜き端面の加工を進めると、打ち抜き端面の亀裂が成長して端面の破断が生じ、プレス成形不良となる。このため、打ち抜き端面の延性を改善し、打ち抜き端面割れや破断を防ぐことが望まれていた。
以下に具体例を挙げて説明する。
図1は、高意匠型ホイールディスクの製造工程を説明する図である。
まず素材となる鋼板を所定形状のブランクシートに切断した後、成形(絞り)、打ち抜き(ピアス、トリム)を行った後、その端面が穴広げ成形(絞り)され、溶接・塗装されて製品となる。
打ち抜き工程では、ブランクシートに打ち抜き加工による穴が加工され、次の穴広げ工程でその穴の端面に引張加工が行われる。
図2は、上記工程の中の打ち抜き工程及び穴広げ工程での材料変形を説明する図である。鋼板の打ち抜きは、図2-1(1)に示すように、ダイ2、しわ押さえ3にて素材4を固定しポンチ1を材料の方向に移動させることにより行われる。しわ押さえ3は素材4を強く固定する必要がある場合に用いられるが必ずしも必須ではない。
打ち抜き工程ではまず、図2-1(2)に示すように素材4をダイ2としわ押さえ3で挟んだ後にポンチ1を下方に移動する。それにより鋼板がダイ肩5及びポンチ肩6に剪断され、剪断部10及び被剪断部11の各々の端面に剪断面7、8が形成される。この間、ポンチとダイスで挟まされた部分25に塑性加工(剪断変形)が加えられ、加工硬化する。
更にポンチを進行させると図2-1(3)に示すようにダイ肩5及びポンチ肩6近傍から亀裂9が発生する。
更に、ポンチを進行させると図2-1(4)に示すように亀裂9が会合して鋼板が分離する。
以上が打ち抜き工程における材料の変形挙動である。
そして、前述の製造工程では打ち抜き工程の後、図2-2(5)に示すように、分離した鋼板の内、被剪断部11の打ち抜き穴の端面を図2-2(6)に示すような円錐状の工具16によって引張加工を加える。これが穴広げ工程である。
打ち抜き工程の後の打ち抜き端面13の外観写真を写真1(1)に示す。この打ち抜き端面13は、主に、ポンチにより剪断されることにより生成した剪断面8、及び亀裂9の伝播により生成した破断面14からなる。
打ち抜き端面13の直下には、打ち抜き加工により生じた加工硬化層12(図2-2(5))が存在する。この打ち抜き端面の加工硬化の多くは、打ち抜き工程の中でも初期段階で剪断面8が形成されている間に進行するものと考えられる。この打ち抜き端面13の加工硬化による端面の延性劣化ため、打ち抜きの後の穴広げ工程で、打ち抜き端面13に写真1(2)に示されるような、亀裂15を生じる。これを、打ち抜き端面割れと云い、部品の外観を損ねるという問題点があった。穴広げ工程での打ち抜き端面の加工率は、多くの部品で概ね20%以下であり、その端面歪を加えた際の打ち抜き端面に割れを防ぐことが課題である。更に、打ち抜き端面を加工すると端面の亀裂が成長し材料の破断に至る。この場合、その成形品を製品として用いることが不可能となる。以上の打ち抜き端面割れと、打ち抜き端面から生ずる材料の破断は、共に打ち抜き端面の加工硬化に起因し、その加工硬化を低減することが課題である。
この対策として、下記の非特許文献1に開示されている、打ち抜き後に端面表層部分を除去するシェービングを行う方法を用いることによって端面の加工硬化部を除去し打ち抜き端面割れを防止することが考えられるが、金型コストの増加と金型寿命の低下という問題点があった。
塑性と加工、Vol10、No104、P665-671(1696.6)中川ら、削り抜き法-剪断面の変形能向上策
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、ポンチおよびダイを用いて、被加工材となる鋼板を剪断部および被剪断部に切断して所定形状に加工するに当たり打ち抜きにより得られるブランク材の打ち抜き端面の延性を改善し、それを成形した際に発生する打ち抜き端面割れ、及び打ち抜き端面割れの成長に起因する材料の破断を防止する鋼板打ち抜き方法を提供することを課題とする。
本発明は、前述の課題を解決するため、鋭意検討の結果、打ち抜き加工時に材料に張力を与えることにより、亀裂の発生・伝播を早め、端面の加工硬化を押さえて端面の延性を改善し、その端面を成形した際の打ち抜き端面割れ、材料破断を防止する鋼板打ち抜き方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)ポンチおよびダイを用いて、被加工材となる鋼板を剪断部および被剪断部に切断して所定形状に加工する打ち抜き方法であって、前記鋼板の剪断予定部に、0.001〜0.20の引張歪(真歪)に相当する引張応力を付与した上で剪断を行うことを特徴とする、打ち抜き端面割れを生じない鋼板打ち抜き方法。
本発明によれば、打ち抜き加工時に材料に張力を与えることにより、亀裂の発生・伝播を早め、端面の加工硬化を押さえて打ち抜き端面の延性を改善し、その端面を成形した際の打ち抜き端面割れ、及び材料の破断を防止する鋼板打ち抜き方法を提供することができ、自動車分野を初めとする多くの部品の打ち抜き加工に広く適用できるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
本発明を実施するための最良の形態について図3を用いて説明する。
図3は、本発明の鋼板打ち抜き方法の実施形態を例示する図である。
本発明は、ポンチ1及びダイ2を用いて、被加工材となる鋼板4を剪断部10および被剪断部11に切断して所定形状に加工する打ち抜き方法であって、前記鋼板の被剪断部分18に、0.001〜0.20の引張歪(真歪)に相当する引張応力を付与した上で剪断を行うことを特徴とする。適宜、鋼板4を固定するためにしわ押さえ3を用いる。
図3の例では、ポンチの切刃の先端部には、凸状の形状を有する突起17を有しており、この突起によって、切断する際に鋼板に張力を与えることができる。
本発明は以上の原理に基づくものであるが、以下に従来との差異を説明する。
従来の打ち抜き方法では、図2-1(2)に示すように、ポンチ1が進行してダイ肩とポンチ肩により鋼板4が剪断されて剪断面8が形成される。この段階で、打ち抜き端面の加工硬化が進み、打ち抜き端面の延性も劣化する。そして、その端面に穴広げ成形を加えた場合に打ち抜き端面割れ15が発生する。
これに対し本発明の打ち抜き方法での材料変形挙動は以下のようなものである。
図3(1)に本発明による打ち抜き方法の一例を示す。本例では、突起17を有する形状のポンチ1及びダイス2、及び適宜しわ押さえ3を用いる。
この金型で打ち抜きを行った場合、打ち抜き初期の段階で図3(2)に示すように鋼板の被剪断部分18が突起17によって引張られて鋼板面の方向(図3(2)の矢印の方向)に張力19が発生する。
次に更にポンチ1を移動させると、図3(3)に示すように、ポンチ肩及びダイ肩に接する鋼板面から亀裂9が発生し、この亀裂9が会合して図3(4)に示すように破断する。
本法での打ち抜きの場合、ポンチが移動して突起17が材料4に接した直後から張力19が材料の被剪断部分18に働くためポンチ肩6近傍で発生する亀裂9の発生が促進されており、剪断面8が多く形成されない段階で鋼板が亀裂9の会合により分離する。打ち抜き端面13の加工硬化の多くは、剪断面が形成されている間に鋼板が塑性変形(剪断変形)することにより生ずるものと考えられるが、本法では、張力により亀裂発生が促進されているため剪断面が多く形成される前に亀裂が発生するため、打ち抜き端面の加工硬化が低減する。
そして、そのため穴広げ成形の段階で、剪断面形成の段階で端面の加工硬化が抑制されているため、端面の延性が確保されており、打ち抜き端面割れや材料の破断を防ぐことができる。
本発明は、以上のように、打ち抜き工程におけるポンチ形状を例えば図3(1)に示すような突起付き形状として、鋼板の被剪断部分に、所定の引張応力を付与することによって、端面の加工硬化を抑制し、その後の成形後の端面割れ、破断を防ぐものである。
本発明を実施するための最良の形態について以下に説明する。
表1に示す供試鋼を用いて図4に示すような形状の打ち抜き金型で打ち抜きを行った。鋼板4の被剪断部分18に歪ゲージ20を貼り、打ち抜き時の剪断予定部18の歪の変化を測定した。図5に金型、鋼板を上下方向から見た図を示すが、歪ゲージ20は、ポンチ1が移動してポンチ切刃と材料4が接触する位置に添付し、歪の測定方向は、ポンチにより剪断されて生じる端面と直角方向(ポンチの半径方向)とした。
ポンチ形状を図6に示しており、表2に示す切刃と突起の間隔d、突起高さhを変えたポンチで試験を行った。その際、打ち抜きクリアランス(ポンチとダイスの間隔s/板厚t×100(%))は12.5%とした。
打ち抜きの際のポンチストロークと歪ゲージにより測定される歪の関係を図7に示す。ポンチストロークを増加させ、歪ゲージが破断したときの歪を剪断時最大歪とした。
Figure 2006224123
Figure 2006224123
また、打ち抜き後の端面の硬さを図8で示すように板厚tとして1/4t、1/2t、3/4tの位置で測定してそれらの平均値を求め、端面以外の場所22の硬度との差から端面加工硬化率(=(位置21の硬さ平均値−位置22の硬さ平均値)/位置22の硬さ平均値×100(%))を求めた。
以上の試験結果から得られる、ポンチ形状と剪断時最大歪、端面加工硬化率の関係を表2及び図9(1)に示している(図9(2)は歪が0〜0.005の間の領域を拡大した図である)。そこで示されるように、打ち抜き時端面最大歪が0.001以上0.20以下の場合(No2〜6)に、端面を20%加工した後の端面割れが無くなっている。この範囲外では端面割れが発生した。
打ち抜き時端面最大歪が0.001未満で打ち抜き端面割れが発生したのは、その場合材料に十分な張力が働かないため打ち抜き端面の亀裂伝播促進の効果が得られず加工硬化率が大きくなったためと考えられる。また、打ち抜き時端面最大歪が0.20を超えた場合に打ち抜き端面割れが発生したのは、突起により材料が大きく塑性変形したためそれによる加工硬化のため加工硬化率が大きくなったためと考えられる。
本発明は、以上を下に為されたものであり、打ち抜き対象となる鋼板の被剪断部分に、0.001〜0.20の引張歪(真歪)に相当する引張応力を付与して打ち抜くこととをその要件とする。
本法により打ち抜き時のポンチの肩近傍の亀裂の発生が促されるため、打ち抜き工程のそれまでの段階(打ち抜き時にポンチが剪断面を形成し始めてからポンチ肩近傍で亀裂が発生するまでの段階)で生じる打ち抜き端面の塑性変形(剪断変形)と加工硬化が軽減される。そのために、本法は、打ち抜き端面の加工硬化により劣化する打ち抜き端面の延性を改善する効果を有する。即ち、打ち抜き端面の加工度が大きくなった時に生ずる材料の破断が発生しにくくなる。
また、本法によっては打ち抜き端面の塑性変形が低減されるために、本法は、打ち抜き端面の塑性変形に起因して生ずる打ち抜き端面の引張残留応力を低減する効果を有する。また、同様に打ち抜き端面の加工硬化に起因して生じる打ち抜き端面の微割れを軽減する効果を有する。
本法により打ち抜いたブランク板では、打ち抜き端面の延性が改善されており成形後に打ち抜き端面の割れが発生しにくいため、本法は成形後の打ち抜き端面疲労寿命を改善する効果を有する。
通常の打ち抜きでは、打ち抜き初期の剪断面形成段階で材料がポンチ・ダイ切刃形状に添って変形し、それが打ち抜き後残ってバリとなる。本法では、剪断面の形成段階が極めて短くなるため、切刃形状に添った材料変形も少なく、バル抑制の効果を有する。
本発明の鋼板打ち抜き方法の実施例について以下に説明する。
表3に示す供試鋼を200mm×200mmに切断し、その中央部に図10、及び図11に示す打ち抜き方法で打ち抜き穴を作成した。図10の打ち抜き方法では、前述のようにポンチ1に付けた突起17により鋼板4に張力を与えており、図11では、ポンチ1としわ押え3の間に液体を充填しOリング23でシールすることによって液圧24により鋼板に張力を与えている。
そうして得られた打ち抜き穴の端面を20%加工(穴広げ加工)し、打ち抜き端面の割れの有無を確認した。その結果を表4に示す。
従来例No1、9(通常打ち抜き条件)では端面割れが発生しており、また、剪断時の歪が小さいNo6、大きすぎるNo5、No8で端面割れが発生し、適正な場合のみ端面割れは生じていないことから本発明の効果が確認された。
また、各々の打ち抜き方法による打ち抜き端面の延性(破断の限界の歪)を調べるため、各々の方法で打ち抜き穴を開けた鋼板の穴広げ試験を行い、穴広げ率を求めた。その結果も表4に示している。穴広げ試験は、20mm径の打ち抜き穴のある試験片の打ち抜き穴を頂角60度の円錐ポンチで押し広げ、打ち抜き端面に発生、伝播する亀裂が板厚方向に貫通した時点の穴径の拡大率(穴広げ率)を求める試験である。その際、試験片は、打ち抜き穴端面の剪断面が穴広げ成形の円錐ポンチ側となるようにセットした。
No1〜8は鋼Bを対象とした試験である。No1は従来の打ち抜き条件による例である。これに対し、剪断時の歪が小さいNo6、大きすぎるNo5、No8で穴広げ率が小さく、それ以外の適正な場合のみ穴広げ率が改善されている。
No9〜11は鋼Cを対象とした試験である。No9は従来の打ち抜き条件による例である。これに対し、No10、11は適正な剪断時の歪が加えられており、そのため穴広げ率が改善されている。
Figure 2006224123
Figure 2006224123
高意匠型ホイールディスクの製造工程を説明する図である。 打ち抜き工程での材料変形を説明する図である。 穴広げ工程での材料変形を説明する図である。 本発明の鋼板打ち抜き方法の実施形態を例示する図である。 本発明に用いる打ち抜き金型の形状を例示する図である。 本発明における剪断時の歪の測定位置、方向を示す図である。 本発明に用いる打ち抜き金型の形状を例示する図である。 本発明におけるポンチストロークと切刃接触部歪との関係を示す図である。 打ち抜き端面の硬さの測定位置を示す図である。 本発明における打ち抜き時の端面最大歪と加工硬化率の関係を示す図 である。 本発明の実施例に用いた打ち抜き金型形状を例示する図である。 本発明の実施例に用いた打ち抜き金型形状を例示する図である。
符号の説明
1:ポンチ
2:ダイ
3:しわ押さえ
4:材料
5:ダイ肩
6:ポンチ肩
7:剪断面
8:剪断面
9:亀裂
10:剪断部
11:被剪断部
12:打ち抜き端面直下の加工硬化層
13:打ち抜き端面
14:破断面
15:端面割れ
16:穴広げ成形のポンチ
17:突起
18:剪断予定部
19:張力
20:歪ゲージ
21:打ち抜き端面の硬さ測定位置
22:打ち抜き端面の硬さ測定位置
23:Oリング
24:液圧
25:打ち抜き時にポンチとダイで挟まれる部分
h:突起高さ
s:ダイとポンチの間隔
t:板厚

Claims (1)

  1. ポンチおよびダイを用いて、被加工材となる鋼板を剪断部および被剪断部に切断して所定形状に加工する打ち抜き方法であって、前記鋼板の剪断予定部に、0.001〜0.20の引張歪(真歪)に相当する引張応力を付与した上で剪断を行うことを特徴とする鋼板打ち抜き方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009061477A (ja) * 2007-09-07 2009-03-26 Nippon Steel Corp 薄板プレス成形シミュレーションにおける伸びフランジ割れの推定方法
JP2013022607A (ja) * 2011-07-19 2013-02-04 Toyota Boshoku Corp 金属シート材の打ち抜き方法及び打ち抜き装置

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