JP2010036195A - 凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法 - Google Patents

凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】打ち抜き面を有する部材の疲労強度を改善する加工端面の打ち抜き方法を提供する。
【解決手段】
パンチ及びダイを用いた打ち抜き加工方法であって、予め数値計算又は疲労試験により被加工材1の打ち抜き面8で最も疲労破壊が起こり易い部位30を特定し、当該部位を含む領域に対向する刃先形状が、その刃先15に設けられた直線状または曲線状のシャー角12により、打ち抜き方向と平行な断面で凹状に形成された凹部11を有するパンチ10Aを用いて、被加工材1を打ち抜くことを特徴とする凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
【選択図】図4

Description

本発明は自動車、家電製品、建築構造物、船舶、橋梁、建設機械、各種プラント、ペンストック等で用いられる鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウム及びこれら合金等の被加工材の打ち抜き加工方法に関するものであり、特に打ち抜き加工によって生じる打ち抜き加工面の疲労特性向上に好適な打ち抜き加工方法に関するものである。
自動車、家電製品、建築構造物等の被加工材1には、図1のようにダイ3上に被加工材1を載置させた後に、パンチ2を図1に示す矢印方向に押し込むことにより被加工材1を打ち抜く打ち抜き加工が施されることが多い。なお、図1(a)は、加工後に被加工材1に穴が形成される打ち抜き穴加工を模式的に示した正面図であり、図1(b)は、加工後に被加工材1に開断面が形成される打ち抜き切断加工を模式的に示した正面図である。
図2に示すように打ち抜き加工が施されることにより形成される被加工材1の打ち抜き面8は、被加工材1がパンチ2により全体的に押し込まれて形成されるダレ4、パンチ2とダイ3のクリアランス内(以下、特に記載がなく“クリアランス"と表記した場合は、パンチとダイのクリアランスを指すこととする。)に被加工材1が引き込まれ局所的に引き伸ばされて形成されるせん断面5、パンチ2とダイ3のクリアランス内に引き込まれた被加工材1が破断して形成される破断面6、及び被加工材1の裏面に生じるバリ7によって構成される。
上述のようにして構成される打ち抜き加工は低コストである利点があるが、レーザー加工や機械加工の場合と比べて打ち抜き面の疲労強度が劣るという短所がある。
以下に打ち抜き面の疲労強度向上を狙った従来技術について述べる。
特許文献1には、打ち抜き面の残留応力を圧縮応力にするために、切り刃(パンチ)の形状に特徴を設けた発明が開示されている。具体的には、特許文献1には、打ち抜き穴の内径よりも小さい直径の先端部と、打ち抜き穴の内径とほぼ同じ直径を有する穴拡部を有するピアスパンチが開示されており、更に、このようなピアスパンチを用いて、所定広さの開口部を有する穴よりも小さい穴を被加工物に明け、その後、該小さい穴を拡大して前記所定広さの開口部を有する穴を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、パンチの刃先に丸みをつけて、打ち抜き時に亀裂発生を遅らせる改良が施された方法が開示されている。また、特許文献3には、先端部に打ち抜き方向と平行な側面を有する切り刃と、切り刃の上部に形成された上方に向けて拡径するテーパー部とを有するパンチが開示されており、更に、このパンチを用いて打ち抜き加工と押し広げ加工とを1ストロークで行う方法が開示されている。
また、打ち抜き後の加工処理に関する発明として、特許文献4には、打ち抜き面を最終穴径よりも小さく打ち抜いた後、自動車ホイール用飾り穴の外周となる打ち抜き面をパンチとダイでしごくことにより当該打ち抜き面に発生した破断面のマイクロクラックを押しつぶし、更に打ち抜き面に圧縮残留応力を負荷して平滑強化して厚肉部を形成する方法が開示されている。
更に、打ち抜き面の疲労特性を直接狙った発明ではないが、非特許文献1には、打ち抜き穴の内径よりも小さい直径の先端部と、打ち抜き穴の内径とほぼ同じ直径を有する穴拡部を有し、刃先に0.05〜0.4mmRほどの丸み(曲率半径)をつけ、さらに該刃先からパンチ上部(刃先と逆方向)に向けて打ち抜き穴径より細くなって打ち抜き中に打ち抜き面にパンチ側面が接触することをなくし、さらにクリアランスが板厚の0〜3%である打ち抜き方法が開示されている。
また、打ち抜き面の疲労強度向上を直接狙った発明ではないが、特許文献5には、打ち抜きパンチ刃先に凹部を設けた発明が開示されており、これにより被加工材の打ち抜きと成型を同時に行い凸形状の製品を形成する方法が開示されている。また、特許文献6には、パンチの先端面にアーチ型の凹面を設け、これにより打ち抜き時の衝撃音や振動の低減を図る発明が開示されている。また、特許文献7には、パンチ孔の変形防止、穿孔回数の増加、生産性の向上を目的として、刃先の外周部側から中央部に向かって内側に湾曲する湾曲部を有するパンチを備えた走間穿孔装置が開示されている。
特開平10−263720号公報 特開平11−254055号公報 特開平11−333530号公報 特開2002−120026号公報 特開平4−101425号公報 特開2005−2810号公報 特開平9−141599号公報 平成19年度塑性加工春季講演会予稿集pp.267〜268
以上の特許文献1〜7、非特許文献1の開示技術は、疲労強度向上の効果や、量産性を考えた場合にいくつかの課題が存在する。
特許文献1〜3に開示された発明は、いずれもいわゆるバニシ加工と呼ばれる打ち抜き面のごく表層を打ち抜きパンチのテーパー部で擦ることにより平滑化する方法であるが、打ち抜き面とパンチ側面が大きく擦られるためにパンチの磨耗量が通常のパンチより大きく、また、バニシ時にパンチ付近の材料をダイ側へ押し流す力がダイ肩付近の素材も流動させ、大きなバリが発生して疲労強度に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、特に特許文献3記載の方法のような、打ち抜きと穴拡径を一体パンチで行う場合、穴加工に必要なパンチストローク量が大きくなってしまい、通常、プレス装置にはパンチストローク量に制限が存在するので、プレス装置の能力によっては該方法の使用はできない場合がある。
また、特許文献4に開示の方法は、余肉部が存在してもいいような製品の形状にしか使用できず、適用可能な対象に一定の制限がある。
また、非特許文献1に開示の方法は、クリアランスが被加工材板厚の0〜3%の打ち抜きを対象としたものであり、通常、このようなクリアランス量の範囲内では、打ち抜きによる疲労特性の悪化は起こらないことが知られている。このため、非特許文献1に開示された打ち抜きパンチによって、打ち抜きによる疲労強度の劣化が起こるクリアランス量(被加工材板厚の5〜20%)で打ち抜いた場合、拡径による素材の押し出し量が不足して破断面を100%平滑化することはできない。
また、特許文献5〜7に開示の方法では、打ち抜き面の疲労強度向上の効果については記載されておらず、また、これら文献に開示されたパンチと単に同形状のパンチを用いたとしても疲労強度向上の効果は必ずしも望めない。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて発明されたものであり、その目的とするところは、材料、対象部材の種類によらず、打ち抜き面の疲労強度を向上させ、かつ、量産現場に容易に適用が可能である、疲労強度に優れた打ち抜き加工方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために案出された、本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)パンチ及びダイを用いた打ち抜き加工方法であって、予め数値計算又は疲労試験により打ち抜き面で疲労破壊が起こり易い部位を特定し、当該部位を含む領域に対向する刃先形状が、その刃先に設けられた直線状または曲線状のシャー角により、打ち抜き方向と平行な断面で、刃先から刃元に向かうにつれて徐々に幅狭となるような凹状に形成された凹部を有するパンチを用いて、被加工材を打ち抜くことを特徴とする凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
(2)前記刃先に、曲率半径が0.5mm以上の丸みが設けられているパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする(1)記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
(3)前記刃先が、パンチ底面の端縁側から中央側へ0.5mm以上の範囲で面取りされた平面状の傾斜面を有するパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする(1)記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
(4)パンチ側面が、刃元から刃先に向かってパンチ底面の端縁側から中央側に狭まるように、打ち抜き方向に対して1〜30度の範囲で傾斜されてなるテーパー部を有するパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
(5)パンチ側面が、刃元から刃先に向かうにつれてパンチ底面の端縁側から中央側に狭まるように、打ち抜き方向と平行な断面において曲率を有するパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
本発明により、打ち抜き面の疲労強度を向上させることが可能である。また、本発明は量産性に優れており、現場にも容易に適用可能となっている。
以下に本発明を適用した打ち抜き加工方法と、これを実現するための打ち抜き加工装置について、図面を参照にしながら詳細に説明する。まず、本発明を完成するに至った、本発明者らの行った検討内容について説明する。
打ち抜き加工により破断面6が生じた打ち抜き面8は、その破断面6の凹凸に起因する疲労破壊が多々問題となり、被加工材1の打ち抜き面8の疲労特性に悪影響を及ぼす。本発明者らは、打ち抜き加工時に疲労破壊の起点となる破断面6を出さない打ち抜き方法について鋭意探索した結果、打ち抜き加工時において打ち抜き面8に部分的に大きなせん断面を増やすことのできるパンチを発明した。
図3は、本発明の主要な構成の一つとなるパンチ10Aの形状の一例を示すものであり、図3(a)は、パンチ10Aの側面図を示すものであり、図3(b)は、パンチ10Aの正面図を示すものであり、図3(c)は、パンチ10Aの底面図を示すものである。
本発明に係るパンチ10Aは、図3に示すように、角柱状に形成されている。パンチ10Aは、その刃先形状が、その刃先15に設けられた直線状のシャー角部12により、打ち抜き方向(図3(a)、図3(b)の紙面上下方向)と平行な断面(図3(a)の紙面)で下向きに開口されて凹状に形成された凹部11を有している。このパンチ10Aの凹部11は、パンチ底面10aにおいて、打ち抜き方向に対して直交する一方向である方向Aに延長されて形成されている。パンチ10Aの凹部11は、パンチ10Aの打ち抜き方向と方向Aとに直交する方向Bに対して傾斜されて設けられている、二つの異なる傾斜角からなる直線状のシャー角部12から形成されており、これらシャー角部12によって、刃先15から刃元16に向かうにつれて徐々に凹部11の幅方向の間隔が幅狭となるように形成されている。これら二つの異なる傾斜角からなる直線状のシャー角部12の長さは、互いに異なっており、これによって、パンチ10Aの凹部11についての打ち抜き方向と方向Bとに平行な断面形状がへの字型に形成されていることになる。
なお、ここでいう凹部11の幅方向とは、図3における方向Bと同一方向のことを意味している。また、方向Aは、パンチ側面10bに対して直交する一方向のことを意味している。また、パンチ10Aのパンチ側面10bは、打ち抜き加工後の被加工材1の打ち抜き面8の形状に沿った形状とされていることから、パンチ側面10bと直交する方向であって、パンチ10Aの打ち抜き方向と直交する方向Bは、被加工材1の切断線方向のことを意味している。
パンチ10Aの凹部11を形成するシャー角部12は、パンチ底面10aとの境界において凹縁部13を形成し、二つの異なるシャー角部12との境界において頂部14を形成している。
図4は、このような構成からなるパンチ10Aを有する打ち抜き加工装置100の構成について示す図であり、図4(a)は、その正面断面図であり、図4(b)は、その側面断面図である。なお、図4(a)は、図4(b)のD−D線断面図に対応しており、図4(b)は、図4(a)のC−C線断面図に対応している。
本発明における打ち抜き加工装置100は、上述のような構成からなるパンチ10Aと、被加工材1が載置されるダイ101とを備えている。パンチ10Aは、パンチ底面10aとパンチ側面10bとの境界の縁部に上刃15を有しており、ダイ101は、ダイ上面101aとダイ側面101bとの境界の縁部に下刃102を有している。パンチ10Aの上刃15のうち、凹部11の形成されている部分は、ダイ101の下刃102に対して傾斜した状態とされている。パンチ10Aは、上下方向、即ち、打ち抜き方向に動作可能に構成されている。ダイ101上に載置される被加工材1は、図示しない板押さえによってダイ101との間に挟まれて固定される。
図5は、上述の打ち抜き加工装置100により、被加工材1を打ち抜いた場合の作用効果を示す図であり、図5(a)は、打ち抜き途中の被加工材1等の状態を示す正面断面図であり、図5(b)は、これの側面断面図である。なお、図5(a)は、図5(b)のF−F線断面図に対応しており、図5(b)は、図5(a)のE−E線断面図に対応している。
上述のような構成からなる凹部11を有するパンチ10Aによって打ち抜き加工を行った場合、ダイ101上に載置される被加工材1は、パンチ10Aが打ち抜き方向に動作することにより、ダイ101の下刃102とパンチ10Aの上刃15との間においてせん断されることになる。
この場合、凹部11の設けられていない通常のパンチと比べ、図5に示すように、凹部11の形成されていない部分での上刃15によるせん断よりも、凹部11の形成されている部分での上刃15によるせん断を遅らせることができる。ここで、凹部11の形状が、シャー角部12により刃先15(上刃)から刃元16に向かうにつれて徐々に幅狭となるように形成されていることから、凹部11の形成されている部分での上刃15により、パンチ10Aの凹部11の頂部14側に向けて、被加工材1内に圧縮応力が作用し、その結果、図5に示すような大きな圧縮応力場F1を形成させることができる。これにより、凹部11の頂部14を中心としたその近傍での上刃15による被加工材1の破断が遅れることになる。従って、本発明に係るパンチ10Aによって、パンチ10Aに形成された凹部11により打ち抜かれて形成された打ち抜き面8の破断面を減らすことができ、特に、凹部11の頂部14近傍により打ち抜かれて形成された打ち抜き面8周辺の破断面を大きく減らすことができ、これにより打ち抜き面8の疲労強度を向上させることが可能となる。
実製品の打ち抜き面8で疲労強度が問題となる部位は、打ち抜き後の被加工材1の打ち抜き面8の総てに及ぶわけではなく、打ち抜き面8の所定部位のみが問題となる。この疲労強度が問題となる部位は、打ち抜き後の被加工材1の形状に応じて定まるものである。このため、被加工材1の打ち抜き面8で疲労破壊が起こり易い部位である破壊容易部30を、予め疲労試験や有限要素法による数値計算により特定し、その破壊容易部30を含む領域にパンチ10Aの凹部11を対向させて、破壊容易部30をパンチ10Aの凹部11で打ち抜くことにより、実用する上での製品の疲労強度を向上させることが可能となる(前記(1)に係る発明。)。この場合において、パンチ10Aの凹部11の頂部14によって、その疲労強度が問題となる破壊容易部30を打ち抜くようにすれば、一層その疲労強度が問題となる部分の破断面を減らすことができ、疲労強度が更に向上することになる。
図6は、本発明に係る打ち抜き加工方法の工程の一例を説明するための概略図であり、図6に基づいて、本発明に係る打ち抜き加工方法の一例について説明する。
図6(a)は、打ち抜き加工前の被加工材1の形状を示す平面図であり、図6(c)は、打ち抜き加工後の被加工材1(成形品)の形状を示す平面図である。打ち抜き加工時においては、図6(c)に示すような形状の被加工材1が得られるように、図6(a)に示すように切断線31を仮想的に設定し、この切断線31に沿って被加工材1が打ち抜かれるように、図6(b)に示すように、この切断線31に沿った形状のパンチ側面2bを有する通常のパンチ2を被加工材1上に配置する。被加工材1は、被加工材1の下に配置されるダイ101上に載置される。このダイ101のダイ側面101bは、パンチ2のパンチ側面2bと同様に、切断線31に沿った形状とされている。被加工材1には、パンチ2とダイ101とにより打ち抜き加工が施される。ここで用いられるパンチ2は、パンチ底面に凹部11が設けられていない。打ち抜き加工後には、図6(c)に示すように、切断線31に沿って打ち抜かれて打ち抜き面8が形成された被加工材1が得られることになる。
ここで、得られた被加工材1に対して、例えば疲労試験を行なうことによって、疲労破壊が起こりやすい破壊容易部30を特定する。この後に、パンチ底面10aに凹部11が設けられているパンチ10Aと、被加工材1の下に配置され、被加工材1が載置されるダイ101とを用いて、図6(d)に示すように、そのパンチ10Aの凹部11によって破壊容易部30が打ち抜かれるようにして打ち抜き加工を施す。これにより、破壊容易部30の破断面を減らすことができ、破壊容易部30の疲労強度が向上することになる。なお、ここで用いられるパンチ10Aのパンチ側面10aは、図6(b)に示されるパンチ2のパンチ側面2bと略同一形状とされている。
なお、この破壊容易部30は、打ち抜き加工後において疲労破壊の起点となる亀裂が生じる打ち抜き面8の一部であり、打ち抜き加工前においてはこのような打ち抜き面8の一部が形成されるであろう部位のことを意味している。この破壊容易部30は、打ち抜き後の被加工材1の形状に応じて定まるものであり、例えば、局所的に板幅が狭い部分の近傍に形成される部位や、大きく湾曲させた部位の近傍に形成される部位等が挙げられる。
この破壊容易部30を市販ソフト(商品名)のABAQUS、LS-DYNA等を用いて、有限要素法による数値計算又は疲労試験により特定する場合、想定される変形のもとに、負荷応力が最大値となる部位を破断容易部30とすることができる。また、疲労試験により破壊容易部30を特定する場合、例えば、疲労試験を10回程度の複数回数に亘って行い、このうち半分以上の回数は同じ部位で破断が生じたなら、この部位を破壊容易部30とすることができる。
なお、本発明に係る打ち抜き加工装置100において、ダイ101は、図4等に示すように、打ち抜き穴加工を可能とするため、貫通孔が設けられていてもよいし、打ち抜き切断加工を可能とするため、開断面を切断可能に構成されていてもよい。
また、本発明に係るパンチ10Aは、シャー角部12の長さが互いに異なっている必要はなく、略同一の長さであってもよい。また、本発明に係るパンチ10Aは、上述の実施形態では角柱状のパンチ10Aを例に説明したが、その形状について特に限定するものではない。
また、本発明においては、打ち抜き加工後にダイ101上に残る被加工材1にも、打ち抜き加工後に打ち抜かれてダイ101上から落ちる被加工材1にも、疲労強度向上の効果が発揮される。
次に、本発明の効果を更に向上させるための他の構成について説明する。因みに、上述したパンチ10Aと同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図7は、本発明に係る他の実施形態のパンチ10Bの形状を示すものであり、図7(a)はその正面図を示し、図7(b)はその側面図を示す。
本発明に係るパンチ10Bは、その刃先形状が、図3に示すような直線状のシャー角部12により形成されている場合に限定するものではなく、図7に示すパンチ10Bのような、曲線状のシャー角部17により、刃先から刃元に向かうにつれて徐々に凹部11の間隔が幅狭となるように形成されていてもよい。このように、刃先形状が曲線状のシャー角部17からなる凹部11を有するパンチ10Bの方が打ち抜き時の衝撃力吸収に優れているが、工具作成のコストが増えるというデメリットがある。
図8は、本発明に係る他の実施形態のパンチ10Cの形状を示すものであり、図8(a)はその正面図を示し、図8(b)はその側面図を示す。
図8のごとく、刃先15に、曲率半径が0.5mm以上の丸み18が設けられているパンチ10Cを用いて被加工材1を打ち抜けば更に材料が破断しにくくなり、打ち抜き加工後の被加工材1の破断面を減らすことができる(前記(2)に係る発明)。破断を明確に遅らせることができる刃先15の曲率半径は、発明者らがS40C鋼を対象とした実験により調査したところ、約0.5mm以上であり、あまり大きすぎると(曲率半径10mm以上)大きなバリが生じることがあった。ただし、これらの値はあくまでもS40C鋼に対する指標であり、S40C鋼より優れた延性であれば上下限値は減り、S40C鋼より低い延性であれば上下限値は増すようにすることが好ましい。
刃先15の丸み18は刃先15の全部分につけても良いし、刃先15の凹部11が設けられている部分のみでも良い。ただし、刃先15の凹部11が設けられている部分のみに丸み18をつける際は、パンチ10Cの凹縁部13近傍の刃先15により打ち抜かれて形成される被加工材1の打ち抜き面8の部位が荒れることがあり、その部位から疲労亀裂が発生する場合があるので注意が必要となる。
図9は、本発明に係る他の実施形態のパンチ10Dの形状を示すものであり、図9(a)はその正面図を示し、図9(b)はその側面図を示す。
図8に示すように、刃先15に丸み18を設ける代わりに、刃先15に、図9のように面取りされた面取り部19が設けられているパンチ10Dを用いて、被加工材1を打ち抜くようにしてもよい(前記(3)に係る発明)。破断を明確に遅らせることができる面取り量は、発明者らがS40C鋼を対象とした実験により調査したところ、パンチ底面10aの端縁側10eから中央側10cに向かって0.5mm以上の範囲で面取りされていれば良く、あまり大きすぎると(面取り量15mm以上)大きなバリが生じることがあった。ただし、これらの値はあくまでもS40C鋼に対する指標であり、S40C鋼より優れた延性であれば上下限値は減り、S40C鋼より低い延性であれば上下限値は増すようにすることが好ましい。なお、ここでいう面取り量は、図9にL1で示される、面取りされた部分の水平方向長さのことをいう。
刃先15の面取りは、刃先15の全部分につけても良いし、刃先15の凹部11が設けられている部分のみでも良い。ただし、刃先15の凹部11が設けられている部分のみに面取りを施す際は、パンチ10Cの凹縁部13近傍の刃先15により打ち抜かれて形成される被加工材1の打ち抜き面8の部位が荒れることがあり、その部位から疲労亀裂が発生する場合があるので注意が必要となる。
図10は、本発明に係る他の実施形態のパンチ10Eの形状を示すものであり、図10(a)はその正面図を示し、図10(b)はその側面図を示す。
図10のように、パンチ側面10bが、刃元16から刃先15に向かうにつれて(図10の紙面下方向)、パンチ底面10aの端縁側10eから中央側10cへ狭まるように、打ち抜き方向に対して1〜30度の範囲で傾斜されてなる平面状のテーパー部20を有するパンチ10Eを用いて被加工材1を打ち抜いてもよい(前記(4)に係る発明)。これにより、テーパー部20により被加工材1の破面は擦られて平滑化され、更なる疲労強度の向上が見込める。
打ち抜き穴加工の場合は、パンチ10Eのテーパー部20により穴が拡大される加工となるためにパンチが穴から抜けなくなる場合があり、量産性を考慮するとパンチ10Eのテーパー20の打ち抜き方向に対するテーパー角度θ1は、30度以下、好ましくは20度以下とした方が望ましい。打ち抜き穴加工でない場合は金型の剛性にもよるが、テーパー部20にかかるパンチ側方圧のために打ち抜き軸が曲げられてしまうので、金型寿命を考慮してパンチ10Eの打ち抜き方向に対するテーパー部20のテーパー角度θ1は、打ち抜き穴加工時と同様に、30度以下、好ましくは20度以下とした方が望ましい。
図11は、本発明に係る他の実施形態のパンチ10Fの形状を示すものであり、図10(a)はその正面図を示し、図10(b)はその側面図を示す。
図10に示すパンチ10Eのテーパー部20は、図11のように、パンチ側面10bが、刃元から刃先に向かうにつれてパンチ底面の端縁側10eから中央側10cに狭まるように、打ち抜き方向と平行な断面において、曲面状に形成されて曲率を有するテーパー部21が設けられたパンチ10Fとしてもよい(前記(5)に係る発明)。側面にこの曲線状のテーパー部21が設けられたパンチ10Fを用いて打ち抜き加工を行った場合、直線状のテーパー部20を用いたと比べて素材の流動が滑らかになり、直線状のテーパー部20を用いた場合と同様の平滑端面をより少ない加工力で得ることができる(金型寿命が向上する)。図11に示すように、パンチ10Fのテーパー部21の角度θ2、即ち、曲率を設けたテーパー部21とパンチ側面10bとの境界及び曲率を設けたテーパー部21とパンチ底面10aとの境界を通る直線と打ち抜き方向の直線とのなす角度θ2は、パンチ10Eの直線状のテーパー部20のテーパー角度θ1と同様に、30度未満とすることが望ましい。
本発明の効果を実証するため、本発明例1としての打ち抜き加工方法と、比較例1としての打ち抜き加工方法とを用いて、被加工材1に対して打ち抜き穴加工を行った後、図13に示すような形状からなる穴あき疲労試験片41をシャー切断により採取し、得られた疲労試験片41を用いて引張疲労試験を行なった。
本発明例1としての打ち抜き加工方法では、図12に示すような形状からなるパンチ40Aを用いた。本発明例1で用いたパンチ40Aは、円柱状に形成されており、その刃先形状が、その刃先15に設けられた直線状のシャー角部12により、打ち抜き方向と平行な断面で凹状に形成された凹部11を有している。このパンチ40Aの凹部11は、上記において説明した図3に示されるパンチ10Aの凹部11と比較して、二つのシャー角部12の長さが略同一とされている点が異なっている。
比較例1としての打ち抜き加工方法では、図示しない通常のパンチを用いた。比較例1で用いた通常のパンチは、シャー角部12及び頂部14、即ち、凹部11を有さない点を除いて、本発明例1で用いた図12に示すパンチ40Aと同一のものを使用した。
疲労試験片41となる被加工材1は、引張強さが590(MPa)となる3.2mm厚の高張力鋼板を用いた。シャー切断後に得られる疲労試験片41は、図13に示すような形状からなり、本発明例1、比較例1として用いたパンチにより、その中央部に貫通孔41aが形成されるように設定した。
本発明例1としての打ち抜き加工方法では、シャー切断後に得られる穴あき疲労試験片41において疲労破壊が起こり易い箇所(破壊容易部30)を予め有限要素法による数値計算により見積もり、見積もった箇所30が、打ち抜き穴加工時にパンチ40Aの凹部11の頂部14により打ち抜かれるようにパンチ40Aを配置して、パンチ40Aにより疲労試験片41の中央部となる部位に貫通孔41aを形成させた。得られたものには、シャー切断を施して図13に示すような形状の穴あき疲労試験片41を得て、これに引張疲労試験を行なった。シャー切断では、二つの破壊容易部30が疲労試験片41の板幅方向に並ぶように調整した。
なお、今般の実施例1では、パンチにより打ち抜かれて形成された貫通孔41aの打ち抜き面であって、疲労試験片41の側面との板幅方向(引張負荷方向に直交する方向)の間隔が最も狭くなる部位を破壊容易部30であると見積もった。この根拠は、商用有限要素コードであるABAQUS/STANDARDにより疲労試験片41の両端部に対してその長手方向に500(N)の力で引張るという弾性解析を行い、応力値が最大となる(約17MPa)となる部位を破壊容易部30として見積もったものである。
比較例1としての打ち抜き加工方法では、疲労試験片41の破壊容易部30を見積もらず、通常のパンチにより、疲労試験片41の中央部となる部位に貫通孔41aを形成させて、得られたものにシャー切断を施して図13に示すような形状の穴あき疲労試験片41を得て、これに引張疲労試験を行なった。
本発明例1、比較例1の何れの場合も、打ち抜き加工に用いたダイは、図13に示すような試験片41の貫通孔41aが形成されるように、パンチに応じた形状の貫通孔が設けられたものを使用した。打ち抜き加工時のクリアランスは、疲労試験片41の板厚の10%とした。
引張疲労試験の試験条件は、応力比(=最小荷重/最大荷重)を0とする荷重制御疲労試験であり、室温・大気中で行った。疲労試験片41に対しては、図13の矢印で示す方向に疲労試験片41の両側から引張荷重を負荷した。荷重の制御が困難となる寿命を破断寿命として、破断寿命が200万回となる応力範囲で評価した。
図14に実施例1における疲労試験結果を示す。本発明例1による打ち抜き加工方法では、比較例1による打ち抜き加工方法に比べて約5%疲労強度が向上していることが確認できる。これにより、前記(1)に係る発明により疲労強度の向上に効果があることが確認された。
本発明の効果を実証するため、本発明例2としての打ち抜き加工方法と、比較例1としての打ち抜き加工方法とを用いて、被加工材1に対して打ち抜き加工を行なった後、図13に示すような形状からなる穴あき疲労試験片41をシャー切断により採取し、得られた疲労試験片41を用いて引張疲労試験を行なった。
本発明例2としての打ち抜き加工方法では、図15に示すような形状からなるパンチ40Bを用いた。本発明例2で用いたパンチ40Bは、実施例1の本発明例1で用いた図12に示すパンチ40Aと比較して、刃先15に曲率半径1mmの丸み18を設けている点のみ異なっており、それ以外の構成は本発明例1で使用したパンチ40Aと同じものを使用した。なお、本発明例2のパンチ40Bにおける刃先15の丸み18は、シャー角部12を含む全ての刃先15に設けた。
比較例1としての打ち抜き加工方法では、実施例1の比較例1で用いたパンチと同一のものを使用した。
疲労試験片41は、実施例1の疲労試験片41と同一の条件のものを使用した。
本発明例2としての打ち抜き加工方法は、パンチの形状が異なる点を除いて、実施例1の本発明例1としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。また、比較例1としての打ち抜き加工方法は、実施例1の比較例としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。
この他の、打ち抜き加工に用いたダイ、打ち抜き加工時のクリアランス、引張疲労試験の試験条件は、実施例1と同一の条件とした。
図16に実施例2における疲労試験結果を示す。本発明例2による打ち抜き加工方法では、比較例1による打ち抜き加工方法に比べて約5%疲労強度が向上していることが確認できる。これにより、前記(2)に係る発明により疲労強度の向上に効果があることが確認された。
本発明の効果を実証するため、本発明例3としての打ち抜き加工方法と、比較例1としての打ち抜き加工方法とを用いて、被加工材1に対して打ち抜き加工を行なった後、図13に示すような形状からなる穴あき疲労試験片41をシャー切断により採取し、得られた疲労試験片41を用いて引張疲労試験を行なった。
本発明例3としての打ち抜き加工方法では、図17に示すような形状からなるパンチ40Cを用いた。本発明例3で用いたパンチ40Cは、実施例1の本発明例1で用いた図12に示すパンチ40Aと比較して、刃先15に、パンチ底面10aの端縁側10eから中央側10cへ向かって1mmの範囲に渡って面取り部19を設けている点のみ異なっており、それ以外の構成は本発明例1で使用したパンチ40Aと同じものを使用した。なお、刃先15の面取り部19は、シャー角部12を含む全ての刃先15に設けた。
比較例1としての打ち抜き加工方法では、実施例1の比較例1で用いたパンチと同一のものを使用した。
疲労試験片41は、実施例1の疲労試験片41と同一の条件のものを使用した。
本発明例3としての打ち抜き加工方法は、パンチの形状が異なる点を除いて、実施例1の本発明得例1としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。また、比較例1としての打ち抜き加工方法は、実施例1の比較例としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。
この他の、打ち抜き加工に用いたダイ、打ち抜き加工時のクリアランス、引張疲労試験の試験条件は、実施例1と同一の条件とした。
図18に実施例3における疲労試験結果を示す。本発明例3による打ち抜き加工方法では、比較例1による打ち抜き加工方法と比べて約5%疲労強度が向上していることが確認できる。これにより、前記(3)に係る発明により疲労強度の向上に効果があることが確認された。
本発明の効果を実証するため、本発明例4としての打ち抜き加工方法と、比較例1としての打ち抜き加工方法とを用いて、被加工材1に対して打ち抜き加工を行なった後、図13に示すような形状からなる穴あき疲労試験片41をシャー切断により採取し、得られた疲労試験片41を用いて引張疲労試験を行なった。
本発明例4としての打ち抜き加工方法では、図19に示すような形状からなるパンチ40Dを用いた。本発明例4で用いたパンチ40Dは、実施例1の本発明例1で用いた図12に示すパンチ40Aと比較して、パンチ側面10bに刃元16から刃先15に向かうにつれて、パンチ底面10aの端縁側10eから中央側10cへ狭まるように、打ち抜き方向に対して4.1度傾斜されてなる平面状のテーパー部20を設けている点のみ異なっており、それ以外の構成は本発明例1で使用したパンチ40Aと同じものを使用した。
比較例1としての打ち抜き加工方法では、実施例1の比較例1で用いたパンチと同一のものを使用した。
疲労試験片41は、実施例1の疲労試験片41と同一の条件のものを使用した。
本発明例4としての打ち抜き加工方法は、パンチの形状が異なる点を除いて、実施例1の本発明得例1としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。また、比較例1としての打ち抜き加工方法は、実施例1の比較例としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。
この他の、打ち抜き加工に用いたダイ、打ち抜き加工時のクリアランス、引張疲労試験の試験条件は、実施例1と同一の条件とした。
図20に実施例4における疲労試験結果を示す。本発明例4による打ち抜き加工方法では、比較例1による打ち抜き加工方法と比べて約10%疲労強度が向上していることが確認できる。また、本発明例4による打ち抜き加工方法では、本発明例1による打ち抜き加工方法と比べて約5%疲労強度が向上していることが確認できる。これにより、前記(4)に係る発明により疲労強度の向上に効果があることが確認された。
本発明の効果を実証するため、本発明例5としての打ち抜き加工方法と、比較例1としての打ち抜き加工方法とを用いて、被加工材1に対して打ち抜き加工を行なった後、図13に示すような形状からなる穴あき疲労試験片41をシャー切断により採取し、得られた疲労試験片41を用いて引張疲労試験を行なった。
本発明例5としての打ち抜き加工方法では、図21に示すような形状からなるパンチ40Eを用いた。本発明例5で用いたパンチ40Eは、実施例1の本発明例1で用いた図12に示すパンチ40Aと比較して、パンチ側面10bに刃元16から刃先15に向かうにつれて、パンチ底面10aの端縁側10eから中央側10cへ狭まるように、打ち抜き方向に対して傾斜されてなる曲面状のテーパー部21(曲率半径R=18mm)を設けている点のみ異なっており、それ以外の構成は本発明例1で使用したパンチ40Aと同じものを使用した。
比較例1としての打ち抜き加工方法では、実施例1の比較例1で用いたパンチと同一のものを使用した。
疲労試験片41は、実施例1の疲労試験片41と同一の条件のものを使用した。
本発明例5としての打ち抜き加工方法は、パンチの形状が異なる点を除いて、実施例1の本発明得例1としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。また、比較例1としての打ち抜き加工方法は、実施例1の比較例としての打ち抜き加工方法と同一の条件とした。
この他の、打ち抜き加工に用いたダイ、打ち抜き加工時のクリアランス、引張疲労試験の試験条件は、実施例1と同一の条件とした。
図22に実施例5における疲労試験結果を示す。本発明例5による打ち抜き加工方法では、比較例1による打ち抜き加工方法と比べて約10%疲労強度が向上していることが確認できる。また、本発明例5による打ち抜き加工方法では、本発明例1による打ち抜き加工方法と比べて約5%疲労強度が向上していることが確認できる。これにより、前記(5)に係る発明により疲労強度の向上に効果があることが確認された。
本発明の効果を実証するため、本発明例6としての打ち抜き加工方法と、比較例2としての打ち抜き加工方法とを用いて、被加工材1に対して打ち抜き加工を行なうことにより、図24(b)に示すような形状からなる疲労試験片42を作成し、得られた疲労試験片42を用いて引張疲労試験を行なった。
本発明例6としての打ち抜き加工方法では、図23に示すような形状からなるパンチ40Fを用いた。本発明例6で用いたパンチ40Fは、角柱状に形成されており、そのパンチ側面10bにおいて、打ち抜き方向に延長される半円状の複数の側面側凹部43a、43b、43cが形成されている。それぞれの側面側凹部43a、43b、43cの寸法は、図23(b)に示すとおりであり、側面側凹部43a、側面側凹部43c、側面側凹部43bの順に半円の曲率半径が小さくなるように形成されている。パンチ40Fは、その刃先形状が、側面側凹部43bを含む範囲の刃先15に図23(a)に示すような直線状のシャー角部12が設けられ、これによって、打ち抜き方向と平行な断面で凹状に形成された凹部11を有している。このパンチ40Aの凹部11は、上記において説明した図3に示されるパンチ10Aの凹部11と比較して、二つのシャー角部12の長さが略同一とされている点が異なっている。
比較例2としての打ち抜き加工方法では、図示しない通常のパンチを用いた。比較例2で用いた通常のパンチは、シャー角部12及び頂部14、即ち、凹部11を有さない点を除いて、本発明例6で用いたパンチ40Fと同一のものを使用した。
疲労試験片42は、引張強さが590(MPa)となる3.2mm厚の高張力鋼板を用いた。打ち抜き加工前における疲労試験片42は、図24(a)に示すように、板幅140mmとされている。疲労試験片42は、本発明例6、比較例2として用いたパンチのパンチ側面10bを平面視した形状に応じた形状の仮想的な切断線31に沿って、疲労試験片42の端部から50mmに亘って打ち抜き加工されるように設定した。これにより、打ち抜き加工後には、図24(b)に示すような形状の疲労試験片42が得られる。このようにして得られた疲労試験片42は、図24において太線で示すような打ち抜き面8が形成されることになる。
本発明例6としての打ち抜き加工方法では、疲労試験片42において疲労破壊が起こり易い箇所(疲労破壊部30)を、通常の打ち抜きパンチによる疲労試験片38を使った実験(疲労試験)で予め見積もっておき、見積もられた箇所30が、パンチ40Fの凹部11の頂部14により打ち抜かれるように、パンチ40Fの凹部11の位置、形状を設定した。
比較例2としての打ち抜き加工方法では、疲労試験片42の破壊容易部30を見積もらず、通常のパンチにより、上述のような疲労試験片42に打ち抜き加工を行い、得られたものに引張疲労試験を行なった。
本発明例6、比較例2の何れの場合も、打ち抜き加工に用いたダイは、図示しないが、パンチのパンチ側面に応じた形状のダイ側面が設けられたものを使用した。打ち抜き加工時のクリアランスは、疲労試験片42の板厚の10%とした。
引張疲労試験の試験条件は応力比(=最小荷重/最大荷重)を0とする荷重制御疲労試験であり、室温・大気中で行った。疲労試験片42に対しては、図24(b)の矢印に示す方向に疲労試験片42の両側から引張荷重を負荷した。荷重の制御が困難となる寿命を破断寿命として、破断寿命が200万回となる応力範囲で評価した。
図25に実施例6における疲労試験結果を示す。本発明例6による打ち抜き加工方法では比較例2による打ち抜き加工方法に比べて約10%疲労強度が向上していることが確認できる。これにより、前記(1)に係る発明により、打ち抜き加工後に打ち抜かれてダイ上から落ちる被加工材にも、疲労強度の向上に効果があることが確認された。
一般的な打ち抜き加工を模式的に示した正面図である。 打ち抜き加工された被加工材の打ち抜き面の特徴を模式的に示す断面図である。 本発明で用いられるパンチの形状を模式的に示す図であり、(a)はその側面図、(b)はその正面図、(c)はその底面図である。 本発明に係るパンチを用いた打ち抜き加工装置の構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面断面図、(b)はその側面断面図である。 本発明に係るパンチが被加工材の破断を遅らせるメカニズムを模式的に示す図であり、(a)はその正面断面図、(b)はその側面断面図である。 本発明に係る打ち抜き加工方法の工程の一例を説明するための概略図である。 曲線状のシャー角部が設けられた本発明に係るパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図である。 刃先に丸みを設けた本発明に係るパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図である。 刃先に面取りを施した本発明に係るパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図である。 テーパー部を有する本発明に係るパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図である。 曲面状のテーパー部を有する本発明に係るパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図である。 実施例1の本発明例1で用いたパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその底面図である。 実施例1〜5に用いた穴あき疲労試験片の構成を模式的に示す平面図である。 実施例1の疲労試験結果(SNグラフ)である。 実施例2の本発明例2で用いたパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその底面図である。 実施例2の疲労試験結果(SNグラフ)である。 実施例3の本発明例3で用いたパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその底面図である。 実施例3の疲労試験結果(SNグラフ)である。 実施例4の本発明例4で用いたパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその底面図である。 実施例4の疲労試験結果(SNグラフ)である。 実施例5の本発明例5で用いたパンチをの構成模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその底面図である。 実施例5の疲労試験結果(SNグラフ)である。 実施例6の本発明例6で用いたパンチの構成を模式的に示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその底面図である。 実施例6に用いた穴あき疲労試験片の構成を模式的に示す平面図であり、(a)はその打ち抜き加工前の状態を示す図であり、(b)はその打ち抜き加工後の状態を示す図である。 実施例6の疲労試験結果(SNグラフ)である。
符号の説明
1 被加工材
2 パンチ
3 ダイ
4 だれ
5 せん断面
6 破断面
7 ばり
8 打ち抜き面
10A (直線状のシャー角部を有する)パンチ
10B (曲線状のシャー角部を有する)パンチ
10C (刃先に丸みが設けられたシャー角部を有する)パンチ
10D (刃先に面取りが施されたシャー角部を有する)パンチ
10E (テーパー部とシャー角部を有する)パンチ
10F (曲面状のテーパー部と、シャー角部を有する)パンチ
10a パンチ底面
10b パンチ側面
10c パンチ中央側
10e パンチ端縁側
11 凹部
12 (直線状の)シャー角部
13 凹縁部
14 頂部
15 刃先(上刃)
16 刃元
17 (曲線状の)シャー角部
18 (刃先に設けられた)丸み
19 (刃先に施された)面取り
20 (シャー角部を有するパンチに設けられた)テーパー部
21 (シャー角部を有するパンチに設けられた曲面状の)テーパー部
30 破壊容易部
31 切断線
40A (実施例1で使用した)パンチ
40B (実施例2で使用した)パンチ
40C (実施例3で使用した)パンチ
40D (実施例4で使用した)パンチ
40E (実施例5で使用した)パンチ
40F (実施例6で使用した)パンチ
41 穴あき疲労試験片
42 (実施例6で使用した)疲労試験片
100 打ち抜き装置
101 ダイ
102 下刃
F1 (シャー角部により発生する)圧縮応力場
θ1 (シャー角部を有するパンチに設けられたテーパー部の)テーパー角度
θ2 (シャー角部を有するパンチに設けられた曲面状のテーパー部を直線に置き換えて換算した)テーパー角度

Claims (5)

  1. パンチ及びダイを用いた打ち抜き加工方法であって、予め数値計算又は疲労試験により被加工材の打ち抜き面で疲労破壊が起こり易い部位を特定し、当該部位を含む領域に対向する刃先形状が、その刃先に設けられた直線状又は曲線状のシャー角により、打ち抜き方向と平行な断面で、刃先から刃元に向かうにつれて徐々に幅狭となるような凹状に形成された凹部を有するパンチを用いて、被加工材を打ち抜くことを特徴とする凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
  2. 前記刃先に、曲率半径が0.5mm以上の丸みが設けられているパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする請求項1記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
  3. 前記刃先が、パンチ底面の端縁側から中央側へ0.5mm以上の範囲に渡って面取りされた平面状の傾斜面を有するパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする請求項1記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
  4. パンチ側面が、刃元から刃先に向かうにつれてパンチ底面の端縁側から中央側に狭まるように、打ち抜き方向に対して1〜30度の範囲で傾斜されてなるテーパー部を有するパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
  5. パンチ側面が、刃元から刃先に向かうにつれてパンチ底面の端縁側から中央側に狭まるように、打ち抜き方向と平行な断面において曲率を有するパンチを用いて、前記被加工材を打ち抜くことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の凹部を有するパンチによる打ち抜き加工方法。
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