JP6992631B2 - せん断加工方法およびせん断加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、せん断加工方法およびせん断加工装置に関する。
せん断加工は、例えば自動車、鉄道車両、建材、船舶、家電製品などに用いられる金属部品の製造において、金属部材の切断、打抜き、穴抜き、シェービング、トリミングなどのために実施される。一般的に、せん断加工は、部材に当接された下刃に対して上側から上刃を押し込むことによって実行される。このとき、部材は上刃と下刃との間で塑性変形し、最終的には破断する。このようなせん断加工では、破断後の部材端面に塑性変形に伴う加工硬化の影響を受けた部分が残ることが知られている。後工程としてフランジアップなどを実施する場合、加工硬化の影響を受けた部分には割れが発生することがある。
そこで、せん断加工時の部材の加工硬化を抑制して伸びフランジ加工性に優れるせん断加工面を得るための技術が、種々提案されている。例えば、特許文献1には、数値シミュレーションを利用してパンチ刃の傾斜角度を適切に設定することによって、伸びフランジ加工性に優れるせん断加工面を得る技術が記載されている。また、特許文献2には、後工程における伸びフランジ割れのシミュレーションに基づいて判定された危険部位から外れるにしたがってクリアランスを徐々に大きくすることによって、伸びフランジ加工性に優れるせん断加工面を得る技術が記載されている。
特開2011-88152号公報 特開2016-87642号公報
しかしながら、例えば上記の特許文献1,2に記載された技術を採用しても、部材端面に塑性変形に伴う加工硬化の影響を受けた部分が残らなくなるわけではない。これは、せん断加工において上刃と下刃とを結ぶ面に沿って破断面が発生するときに、既に発生している加工硬化領域を横切って破断面が発生するためである。これは、換言すれば、せん断加工において上刃と下刃とを結ぶ面から離れた位置に破断面を発生させることができれば、破断後の部材端面に残る加工硬化領域をより小さくすることができる可能性があるということである。
ところで、せん断加工において、破断面が上刃から発生する場合、安定して破断面を発生させるためには上刃の角を尖らせておく必要がある。しかし、上刃の角が尖っている場合には、被加工材との接触によって摩耗または欠損が生じやすく、角の形状が変化したことによって比較的短期間のうちに上刃の交換が必要になることが多い。これに対して、上刃から離れた位置に破断面を発生させることができれば、上刃の角を尖らせておく必要がなくなり、上刃を面取りすることによって摩耗または欠損を防止し、長期間にわたって上刃を使用することが可能になる。
そこで、本発明は、せん断加工において被加工材に発生する破断面を適切な位置に誘導することによって、破断後の部材端面における加工硬化の影響を低減、または部材寿命を延伸することを可能にする、新規かつ改良されたせん断加工方法およびせん断加工装置を提供することを目的とする。
本発明のいくつかの観点によれば、以下が提供される。
[1]下刃を被加工材の下面に当接させる工程と、
被加工材の厚さ方向では下刃に対して相対的に移動可能であり、厚さ方向に対して垂直な被加工材の面方向ではクリアランスをもって下刃に対向する上刃を、被加工材の上面に当接するまで厚さ方向に移動させる工程と、
面方向で上刃からの距離がクリアランスの40%以上、120%以下になる位置で被加工材の上面に溝を形成する工程と、
被加工材の上面に当接した上刃を、被加工材の上面の溝を始端または終端とする破断面が発生するまでさらに厚さ方向に移動させる工程と
を含む、せん断加工方法。
[2]被加工材の上面の溝は、上刃が被加工材の上面に当接する前に形成される、[1]に記載のせん断加工方法。
[3]被加工材の上面の溝は、上刃が被加工材の上面に当接した後、破断面が発生するまでの間に形成される、[1]に記載のせん断加工方法。
[4]下刃の近傍で被加工材の下面に溝を形成する工程をさらに含み、
破断面は、被加工材の上面および下面の溝のうち一方を始端とし、他方を終端として発生する、[1]~[3]のいずれか1項に記載のせん断加工方法。
[5]被加工材は、引張強度780MPa級以上の鋼板である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のせん断加工方法。
[6]被加工材の下面に当接する下刃と、
被加工材の厚さ方向では下刃に対して相対的に移動可能であり、厚さ方向に対して垂直な被加工材の面方向ではクリアランスをもって下刃に対向する上刃と、
面方向で上刃からの距離がクリアランスの40%以上、120%以下になる位置で被加工材の上面に溝を形成する溝形成手段と
を備えるせん断加工装置。
[7]下刃との間で被加工材を挟持するホルダをさらに備え、
溝形成手段は、面方向で上刃に対向するホルダの端部に形成された突出部を含む、[6]に記載のせん断加工装置。
[8]溝形成手段は、上刃とともに厚さ方向に移動可能であり、上刃が厚さ方向に移動するときに上刃よりも遅れて被加工材の上面から厚さ方向に押し込まれる突出部を含む、[6]に記載のせん断加工装置。
[9]下刃の近傍で被加工材の下面に溝を形成する追加の溝形成手段をさらに備える、[6]~[8]のいずれか1項に記載のせん断加工装置。
本発明によれば、せん断加工において被加工材に発生する破断面を適切な位置に誘導することによって、破断後の部材端面における加工硬化の影響を低減、または部材寿命を延伸することができる。
本発明の一実施形態に係るせん断加工の概要を示す断面図である。 図1における溝の形状の他の例を示す図である。 本発明の一実施形態における被加工材の挙動を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の第1の例を示す概略的な断面図である。 本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の第2の例を示す概略的な断面図である。 本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の第3の例を示す概略的な断面図である。 本発明の一実施形態の変形例について説明するための図である。 本発明の第1実施例に係る有限要素解析のモデルについて説明するための図である。 本発明の第1実施例の解析結果を示すグラフである。 本発明の第1実施例の解析結果を示すグラフである。 本発明の第2実施例の実験結果を示すグラフである。 本発明の第2実施例の実験結果を示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るせん断加工の概要を示す断面図である。図1を参照すると、せん断加工装置1は、ダイ2と、パンチ3と、ホルダ4とを含む。ダイ2には、被加工材6の下面に当接する下刃21が形成される。パンチ3には、上刃31が形成される。パンチ3は、図示しない電動機または液圧機構などによって駆動され、被加工材6の厚さ方向についてダイ2に対して相対的に移動可能である。パンチ3が移動することによって、上刃31は、被加工材6の上方に位置した状態から、被加工材6の上面に当接させられ、さらに図示されているように被加工材6に押し込まれる。上刃31が被加工材6に押し込まれる過程で、被加工材6に破断面が発生し、これによってパンチ3が押し込まれた部分の被加工材6が切り落とされる。ホルダ4は、被加工材6の上面に当接され、ダイ2との間で被加工材6を挟持する。
ここで、被加工材6の上面には、パンチ3が被加工材6の上面に当接される前、またはその後、パンチ3が被加工材6に押し込まれている間に、溝7が形成される。溝7は、被加工材6の面方向、すなわち被加工材6の厚さ方向に対して垂直な方向について、上刃31からの距離がwになる位置に形成される。上刃31は、被加工材6の面方向についてクリアランスCをもって下刃21に対向しているが、本実施形態において、距離wはクリアランスCの40%以上、120%以下に設定される。なお、溝7の断面形状は、対称なV字状であるように図示されているが、非対称な形状、例えば片側が被加工材6の面に対して垂直に形成されたV字状であってもよい。また、溝7の底部形状は鋭角をなすように図示されているが、曲率をもっていてもよい。この場合、曲率半径は0.1mm以下とすることが望ましく、0.05mm以下とすることがさらに望ましい。
図2は、図1における溝の形状の他の例を示す図である。図2に示された例において、被加工材6の上面に形成される溝7cの断面形状は、複数のV字状の溝が組み合わされた形状である。この場合、距離wは、上刃31からパンチ3に近い方の溝7cの底部までの距離として定義されてもよい。後述するように、本実施形態において被加工材の上面に形成される溝は、応力の集中によって破断面の始端または終端を形成する。従って、応力を集中させることが可能な形状であれば、図1および図2に示した例に限られず溝の断面形状は任意に設計することができる。
図3は、本発明の一実施形態における被加工材の挙動を模式的に示す図である。図3には、上刃31が被加工材6の上面に当接した後にさらに押し込まれたことによって、被加工材6に破断面61が発生した状態が示されている。このとき、破断面61は、被加工材6の上面に形成された溝7を始端または終端として発生する。一方、被加工材6の内部では、上刃31が押し込まれたことによる材料の塑性変形と、それに伴う加工硬化とが発生している。被加工材6に破断面61が発生した段階で、材料の加工硬化は、下刃21と上刃31とを結ぶ面に沿った領域Rで発生している。
ここで、溝7が形成されない場合、破断面は下刃21と上刃31とを結ぶ面(図3において鎖線で示されている)に沿って発生する。この破断面は加工硬化が発生している領域Rを横切って発生するため、破断後の被加工材6の端面には、加工硬化の影響を受けた部分が大きく残ることになる。一方、本実施形態では、溝7が形成され、破断面61が溝7を始端または終端として発生する。図1に示したように溝7が上刃31から距離wだけ離れていることによって、この破断面61は領域Rのより辺縁に近い部分を横切って、あるいは図示されているように領域Rから外れた部分に発生することになる。この結果、本実施形態では、破断後の被加工材6の端面に残る加工硬化の影響を受けた部分をより小さくするか、または実質的になくすことができる。
一方、本実施形態のように、せん断加工において上刃31から離れた溝7から被加工材6の破断面61が発生する場合、上刃31の角を尖らせておく必要がなくなり、上刃31を面取りすることによって部材寿命を延伸することができることは、既に述べた通りである。このような効果は、上記のような加工硬化に関する効果とは独立して得られる。もちろん、両方の効果が同時に得られてもよい。
以下、図4~図6を参照して、本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の構成例について説明する。本実施形態において被加工材6の上面に形成される溝7は、例えばダイ2とパンチ3とを用いたせん断加工の前工程において形成されてもよい。この場合、溝7は、せん断加工装置1には含まれない別途の溝形成手段によって形成される。一方、以下で説明する例に係るせん断加工装置1a,1b,1cでは、ホルダ4(第1の例)またはパンチ3(第2の例)に形成される突出部が、溝7を形成する溝形成手段として機能する。この場合、ホルダ4を用いてダイ2との間で被加工材6を挟持する工程、またはダイ2に対して相対的にパンチ3を移動させる工程において溝7が形成されるため、例えば設備の簡略化や工程の高速化が実現できる。
図4は、本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の第1の例を示す概略的な断面図である。図4を参照すると、本例に係るせん断加工装置1aでは、ホルダ4に形成された突出部41が、被加工材6の上面に溝7を形成する。具体的には、突出部41は、被加工材6の面方向で上刃31に対向するホルダ4の端部に形成される。従って、本例において、溝7は、パンチ3の移動によって上刃31が被加工材6の上面に当接する前、被加工材6がホルダ4とダイ2との間に挟持されるときに形成される。
図5は、本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の第2の例を示す概略的な断面図である。図5を参照すると、本例に係るせん断加工装置1bでは、パンチ3に形成された突出部32が、被加工材6の上面に溝7を形成する。具体的には、突出部32は、上刃31の上方で、上刃31よりもクリアランスC側に張り出すように形成される。このような構造によって、突出部32は、上刃31とともに被加工材6の厚さ方向に移動し、上刃31よりも遅れて被加工材6の上面に到達する。従って、本例において、溝7は、パンチ3の移動によって上刃31が被加工材6の上面に当接した後、パンチ3のさらなる移動によって被加工材6に破断面61が形成されるまでの間に、上刃31よりも遅れて被加工材6の上面から被加工材6の厚さ方向に押し込まれる突出部32によって形成される。
図6は、本発明の一実施形態に係る溝形成手段を有するせん断加工装置の第3の例を示す概略的な断面図である。図6を参照すると、本例に係るせん断加工装置1cでは、上記の第2の例と同様に、パンチ3に形成された突出部32が被加工材6の上面に溝7を形成する。第2の例との違いとして、本例では、突出部32が、弾性体33を介してパンチ3に取り付けられる。弾性体33は、パンチ3よりもヤング率が小さい、すなわち弾性が高い材料で形成される。これによって、被加工材6の厚さ方向について、突出部32を上刃31と同程度、または上刃31よりも下方に形成することが可能になる。この場合、突出部32は、上刃31と同時に、または上刃31よりも先に被加工材6の上面に到達するが、弾性体33が圧縮されるまで被加工材6にさらに押し込まれて溝7を形成することはない。この間に、パンチ3の移動によって上刃31が被加工材6の上面に当接する。その後、弾性体33が圧縮されたことによって、突出部32が上刃31よりも遅れて被加工材6の上面から被加工材6の厚さ方向に押し込まれ、パンチ3のさらなる移動によって被加工材6に破断面61が形成されるまでの間に溝7を形成する。
図7は、本発明の一実施形態の変形例について説明するための図である。図7を参照すると、変形例に係るせん断加工装置1dでは、被加工材6の上面に溝7aが形成されるのに加えて、被加工材6の下面に溝7bが形成される。被加工材6の上面の溝7aは、上記で図1~図6を参照して説明した例と同様に、被加工材6の面方向について上刃31からの距離がwになる位置に形成される。一方、被加工材6の下面の溝7bは、追加の溝形成手段、具体的にはダイ2に形成される突出部22によって形成される。ここで、突出部22は、下刃21の近傍に形成される。下刃21と突出部22とは、同じ部分であってもよい。これによって、図示された例では、パンチ3が被加工材6に押し込まれたときに、破断面61が、溝7a,7bのうちの一方を始端とし、他方を終端として形成される。
上記の変形例では、被加工材6の上面の溝7aに加えて下面の溝7bを形成することによって、意図した位置に破断面61が発生することを確実にする。また、下面の溝7bを形成することによって、破断面61の端面形状の変化を小さくすることができる。なお、図7に示された例では、ホルダ4の突出部41が被加工材6の上面の溝7aを形成しているが、本変形例は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図5を参照して説明したようなパンチ3の突出部32が溝7aを形成してもよいし、図3を参照して説明したように、ダイ2とパンチ3とを用いたせん断加工の前工程において溝7aを形成してもよい。
続いて、本発明の実施例について説明する。なお、以下で説明する本発明の実施例は、上述した本発明の一実施形態に関して、溝7の上刃31からの距離wの適切な範囲について検証するための有限要素解析(以下、第1実施例ともいう)と、実際に溝7を形成した被加工材6をせん断加工する実験(以下、第2実施例ともいう)とを含む。
(第1実施例)
図8は、本発明の第1実施例に係る有限要素解析のモデルについて説明するための図である。本実施例において、被加工材6は引張強度が1180MPa級の鋼板であり、板厚は1.6mmである。また、せん断加工は直径10mmのパンチ3を用いた穴抜きである。ダイ2は、穴部分の内径が10.16mm、10.32mm、10.48mm、10.64mm、および11.28mmの5種類を使用した。それぞれの場合において、クリアランスCは、0.08mm、0.16mm、0.24mm、0.32mm、および0.64mmになる。なお、以下の実施例の説明において、クリアランスCは板厚に対する割合(C/t)で記述される。上記のそれぞれの場合において、C/tは5%、10%、15%、20%、および40%である。
上記のような条件でのせん断加工について、図8に示すようにパンチ3の中心を対称軸とする2次元軸対称モデルを作成し、ソルバーとして汎用の有限要素解析ソフトウェアであるAbaqusを用いて静的陰解法による解析を実施した。解析では、被加工材6の面方向にX軸を、被加工材6の厚さ方向にY軸を設定し、溝7の底に位置する対象要素71にかかる応力σxxが鋼板の引張強度(1180MPa)を超えたときに、溝7を始端または終端とする破断面61が発生するものとした。
ここで、解析は、上記のようにC/tが5%、10%、15%、20%、および40%の5つの場合のそれぞれで、距離wが0、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、および0.6mmとなる位置に溝7を形成した場合について実施した。なお、距離wが0の場合、実際には上刃31から破断面が発生する場合と溝7から破断面が発生する場合とが区別することが難しいが、解析上は対象要素71の応力σxxを算出することができるため、距離wが限りなく小さい場合の近似として解析を実施した。
図9および図10は、本発明の第1実施例の解析結果を示すグラフである。図9では、上述した対象要素71の応力σxxの最大値(σxx_max)と距離wとの関係が示されている。このグラフから、どのC/tの値についても、距離wが大きくなるほどσxx_maxの値が大きくなり、距離wがある値になった時点でσxx_maxが鋼板の引張強度(1180MPa)を超える。
ここで、図9のグラフではσxx_maxが鋼板の引張強度を超える距離wがクリアランスCによって異なるため、図10に示すように、対象要素71の応力σxxの最大値(σxx_max)と、距離wのクリアランスCに対する割合との関係(w/C)を抽出した。その結果、クリアランスCの値にかかわらず、σxx_maxが鋼板の引張強度を超えるのは、距離wのクリアランスCに対する割合が40%を超える付近であることがわかった。
(第2実施例)
本発明の第2実施例では、上記の第1実施例の解析と同様の条件で、実際に被加工材6のせん断加工を実施した。すなわち、被加工材6は引張強度が1180MPa級の鋼板であり、板厚は1.6mmである。また、せん断加工は直径10mmのパンチ3を用いた穴抜きである。実験では、C/tが5%、10%、15%、20%、および40%の5つの場合のそれぞれにおいて、距離wが0、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、または0.6mmとなる位置に溝7を形成した場合と、溝7を形成しなかった場合とについてせん断加工を実施した。
上記のような第2実施例に係る実験で溝7を形成した場合において、溝7を始端または終端とする破断面61が発生したか否かを、以下の表1に示す。表1において、◎は溝7から破断面61が発生し、かつ端面の垂直度が良好であった場合、○は溝7から破断面61が発生したが、端面垂直度が良好でなかった場合、×は溝7から破断面が発生しなかった(上刃31から発生した)場合を示す。例えば、C=0.32mmの場合(w=0.1mmでは×、w=0.2mmでは◎)、およびC=0.64mmの場合(w=0.2mmでは×、w=0.3mmから◎)の結果は、上記の本発明の一実施形態において説明したように、距離wをクリアランスCの40%以上に設定するのが好ましいことを示している。一方、C=0.08mm~0.32mmの場合の◎と○の分布から、距離wがクリアランスCの120%を超えると破断後の被加工材の端面の垂直度が低下することがわかる。以上より、距離wは、クリアランスCの40%以上、120%以下に設定することが好ましいといえる。また、実験では、距離wがクリアランスCの200%以上になると、溝7の底から発生した破断面が被加工材6の下面まで進展しないことが観察された。この結果から、距離wはクリアランスCの200%以下に設定することが好ましいといえる。
Figure 0006992631000001
なお、以下の第2実施例の説明では、溝7を形成し、かつ溝7から破断面が発生し、かつ端面の垂直度が良好な場合を本発明の実施例、溝7を形成しなかった場合を第1比較例、溝7を形成したが溝7から破断面が発生しなかった場合を第2比較例として扱う。
図11は、本発明の第2実施例に係る実験における破断後の被加工材の端面の硬さを示すグラフである。それぞれの例において、硬さは、破断後の被加工材を端面に交差する方向で切断し、端面に近い部位で被加工材の厚さ方向に配列された14点の測定点で、ビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)を実施することによって測定された。図11のグラフには、それぞれの例(実施例、第1比較例、および第2比較例)におけるビッカース硬さ試験の測定値の全測定点での平均値(Hv_ave)が示されている。
グラフを参照すると、C/tの値にかかわらず、実施例におけるHv_aveの値は第1比較例および第2比較例を下回っており、実施例では破断後の被加工材の端面における加工硬化の影響が低減されていることがわかる。一方、第1比較例と第2比較例とを比較すると、溝7を形成したが、溝7から破断面が発生しなかった第2比較例のHv_aveの値は、溝7を形成しなかった第1比較例とほとんど変わらなかった。
図12は、本発明の第2実施例に係る実験における破断後の被加工材の穴広げ性を示すグラフである。それぞれの例において、穴広げ性は、上記のように直径10mmのパンチ3を用いて穴抜き加工された被加工材に対して、穴広げ試験(JIS Z 2256)を実施することによって測定された。図12のグラフには、それぞれの例(実施例、第1比較例、および第2比較例)における穴広げ試験によって測定された穴広げ率(λ)が示されている。
グラフを参照すると、C/tの値にかかわらず、実施例におけるλの値は第1比較例および第2比較例を上回っており、実施例において破断後の被加工材の穴広げ性が改善していることがわかる。一方、第1比較例と第2比較例とを比較すると、溝7を形成したが溝7から破断面が発生しなかった第2比較例のλの値は、溝7を形成しなかった第1比較例とほとんど変わらなかった。
以上で説明したような実施例によって、本発明が、破断後の被加工材の端面における加工硬化の影響を低減し、後処理における穴広げ等の加工性を向上させるために有効であることが示された。
なお、上記の実施例では、引張強度1180MPa級の鋼板を被加工材としてせん断加工を実施したが、本発明をより効果的に実施できる被加工材は、例えば引張強度780MPa級以上、より好ましくは引張強度980MPa級以上の、比較的強度が高い鋼板である。その理由は、上記で本発明の一実施形態として説明したような被加工材の挙動は、鋼板の表面切欠きに対する感受性が強いことを前提にしたものであるが、強度が低い鋼板では表面切欠きに対する感受性が低いため、溝を形成しても破断面がその溝から発生しない(上刃から発生する)可能性が高いためである。本発明者らが上記の第2実施例と同様の実験を他の引張強度の鋼板についても実施したところ、引張強度780MPa級未満の鋼板では溝から破断面が発生しなかった。
また、上記の実施例では、板厚が1.6mmの鋼板を被加工材としてせん断加工を実施したが、この例に限らず本発明は有効に実施できる。例えば、溝の底部形状が曲率をもつ場合、被加工材の板厚が大きいほど、同じ曲率でも板厚に対して相対的に小さいことになるため、溝から破断面を発生させる効果は大きくなる。従って、本発明はより板厚が大きい被加工材についても有効に実施できる。一方、被加工材の板厚が小さい場合、被加工材が容易にせん断される分、上刃から破断面が発生しやすいが、上述の実施形態のように溝の形成位置を調節することによって、溝から破断面を発生させ、破断後の被加工材の端面に残る加工硬化の影響を受けた部分をより小さくすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1,1a,1b,1c,1d…せん断加工装置、2…ダイ、21…下刃、22…突出部、3…パンチ、31…上刃、32…突出部、4…ホルダ、41…突出部、6…被加工材、61…破断面、7,7a,7b,7c…溝、71…対象要素。

Claims (9)

  1. 下刃を被加工材の下面に当接させる工程と、
    前記被加工材の厚さ方向では前記下刃に対して相対的に移動可能であり、前記厚さ方向に対して垂直な前記被加工材の面方向ではクリアランスをもって前記下刃に対向する上刃を、前記被加工材の上面に当接するまで前記厚さ方向に移動させる工程と、
    前記面方向で前記上刃からの距離が前記クリアランスの40%以上、120%以下になる位置で前記被加工材の上面に溝を形成する工程と、
    前記被加工材の上面に当接した前記上刃を、前記被加工材の上面の溝を始端または終端とする破断面が発生するまでさらに前記厚さ方向に移動させる工程と
    を含み、
    前記被加工材の上面の溝の断面形状はV字状であり、底部形状の曲率半径は0.1mm以下である、せん断加工方法。
  2. 前記被加工材の上面の溝は、前記上刃が前記被加工材の上面に当接する前に形成される、請求項1に記載のせん断加工方法。
  3. 前記被加工材の上面の溝は、前記上刃が前記被加工材の上面に当接した後、前記破断面が発生するまでの間に形成される、請求項1に記載のせん断加工方法。
  4. 前記下刃の近傍で前記被加工材の下面に溝を形成する工程をさらに含み、
    前記破断面は、前記被加工材の上面および下面の溝のうち一方を始端とし、他方を終端として発生する、請求項1~3のいずれか1項に記載のせん断加工方法。
  5. 前記被加工材は、引張強度780MPa級以上の鋼板である、請求項1~4のいずれか1項に記載のせん断加工方法。
  6. 被加工材の下面に当接する下刃と、
    前記被加工材の厚さ方向では前記下刃に対して相対的に移動可能であり、前記厚さ方向に対して垂直な前記被加工材の面方向ではクリアランスをもって前記下刃に対向する上刃と、
    前記面方向で前記上刃からの距離が前記クリアランスの40%以上、120%以下になる位置で前記被加工材の上面に溝を形成する溝形成手段と
    を備え
    前記溝形成手段が前記被加工材の上面に形成する溝の断面形状はV字状であり、底部形状の曲率半径は0.1mm以下であるせん断加工装置。
  7. 前記下刃との間で前記被加工材を挟持するホルダをさらに備え、
    前記溝形成手段は、前記面方向で前記上刃に対向する前記ホルダの端部に形成された突出部を含む、請求項6に記載のせん断加工装置。
  8. 前記溝形成手段は、前記上刃とともに前記厚さ方向に移動可能であり、前記上刃が前記厚さ方向に移動するときに前記上刃よりも遅れて前記被加工材の上面から前記厚さ方向に押し込まれる突出部を含む、請求項6に記載のせん断加工装置。
  9. 前記下刃の近傍で前記被加工材の下面に溝を形成する追加の溝形成手段をさらに備える、請求項6~8のいずれか1項に記載のせん断加工装置。
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