JP2019166571A - せん断加工方法及びせん断加工装置 - Google Patents

せん断加工方法及びせん断加工装置 Download PDF

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Abstract

【課題】振動及び騒音を抑制することができるせん断加工方法を提供する。【解決手段】第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記被加工材の前記第1面から前記第2面に向かって前記被加工材の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さく、少なくとも破断面の形成時に前記押え部材を前記被加工材に押しつけながら、せん断加工を行うこと、を含む、せん断加工方法。【選択図】図5

Description

本開示は、自動車、家電製品、建築構造物、船舶、橋梁、建設機械、各種プラント、ペンストック等で用いる金属部材を、振動を抑えながらせん断加工を行うせん断加工方法及びせん断加工装置に関する。
自動車、家電製品、建築構造物、船舶、橋梁、建設機械、各種プラント、ペンストック等で用いる金属部材の製造には、せん断加工が多く利用されている。図1及び2に、せん断加工の態様を模式的に示す。図1に、被加工材に穴を形成するせん断加工の態様を模式的に示し、図2に、被加工材に開断面を形成するせん断加工の態様を模式的に示す。
図1に示すせん断加工においては、ダイ40の上に被加工材10を配置し、パンチ20を被加工材10の板厚方向20aに押し込んで、被加工材10に穴を形成する。図2に示すせん断加工においては、ダイ40の上に被加工材10を配置し、同じく、パンチ20を被加工材10の板厚方向20aに押し込んで、被加工材10に開断面を形成する。
図3にせん断加工で形成される加工材12のせん断加工面19の断面模式図を示し、図4にパンチ20、ホルダー30、及びダイ40を用いて、抜き材11及び加工材12を得るせん断加工の断面模式図を示す。
せん断加工面19は、通常、図3及び4に示すように、だれ14、14’、せん断面15、15’、破断面16、及びバリ17、17’によって構成される。だれ14は、被加工材がパンチ20で押し込まれることにより、せん断加工面19のパンチ側表面18aに形成される。せん断面15は、パンチ20とダイ40との間隙に被加工材が引き込まれることにより、被加工材が局所的に引き伸ばされて形成される。破断面16は、パンチ20とダイ40との間隙に引き込まれた被加工材にパンチ側及びダイ側から亀裂が発生し、被加工材が破断して形成される。バリ17は、パンチ20とダイ40との間隙に引き込まれた被加工材が破断して分離する際、せん断加工面19のダイ側表面18bに生じる。
せん断加工の際、上記のように被加工材において、パンチ側から発生する亀裂とダイス側から発生する亀裂がつながり、破断面が形成される。このとき、被加工材が破断して引き込まれた状態から一気に開放され、振動及び騒音が発生する。せん断加工時の振動及び騒音を抑制する方策として、被加工材を打ち抜き加工する上型と下型と、プレス機械のフレームあるいはスライド駆動系との間に、ウレタンゴム板等のばね定数の小さい弾性部材を介在させて打ち抜き加工を行う方法が提案されている(特許文献1)。
特開平8−11000号公報
特許文献1の方法によれば、せん断加工時に、スライドに取り付けた上型が瞬間的に深く下型に食い込み、振動及び騒音を引き起こす、いわゆるブレークスルー現象を抑制することができる。このように、特許文献1の方法によれば、プレス機の振動を抑制することができるが、被加工材の破断によって発生する振動及び騒音を抑制することはできない。
また、被加工材の強度が大きくなるにつれて亀裂の発生タイミングが早くなり、振動及び騒音が大きくなる問題が顕在化してきた。しかしながら、特許文献1等の従来のせん断加工方法では、振動及び騒音発生の抑制が不十分であり、プレス機が異常を検知して異常停止し、さらにはパンチやダイの刃先にチッピングが発生することがあった。
そこで、本発明者は、上記課題を解決することができる新たなせん断加工方法及びせん断加工装置を見出した。
本開示の要旨は、以下のとおりである。
(1)第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記被加工材の前記第1面から前記第2面に向かって前記被加工材の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、
前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さく、
少なくとも破断面の形成時に前記押え部材を前記被加工材に押しつけながら、せん断加工を行うこと、
を含む、せん断加工方法。
(2)前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率の20%以下である、上記(1)に記載のせん断加工方法。
(3)前記パンチの先端部の位置から前記押え部材の先端部の位置までの、前記被加工材の前記第2面から第1面に向かう板厚方向における距離Hgが、前記被加工材に形成される前記板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満である、上記(1)または(2)に記載のせん断加工方法。
(4)前記距離Hgが、
−t≦Hg<0.6t
(式中、tは前記被加工材の板厚)
を満たす、上記(3)に記載のせん断加工方法。
(5)前記押え部材の幅Wcに対する前記押え部材の高さHcの比率Hc/Wcが4以下であり、且つHc≧被加工材の板厚/0.3である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のせん断加工方法。
(6)前記パンチが、前記抑え部材の外周側に逃げ抑制部材を有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のせん断加工方法。
(7)第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第1面から前記第2面に向かってせん断加工をするように構成されたパンチ及びダイを有し、前記被加工材をせん断加工して、抜き材及び加工材を得るせん断加工装置であって、
前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さい、
せん断加工装置。
(8)前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率の20%以下である、上記(7)に記載のせん断加工装置。
(9)前記パンチの先端部の位置から前記押え部材の先端部の位置までの、前記被加工材の前記第2面から第1面に向かう板厚方向における距離Hgが、前記被加工材に形成される前記板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満である、上記(7)または(8)に記載のせん断加工装置。
(10)前記距離Hgが、
−t≦Hg<0.6t
(式中、tは前記被加工材の板厚)
を満たす、上記(9)に記載のせん断加工装置。
(11)前前記押え部材の幅Wcに対する前記押え部材の高さHcの比率Hc/Wcが4以下であり、且つHc≧被加工材の板厚/0.3である、上記(7)〜(10)のいずれかに記載のせん断加工装置。
(12)前記パンチが、前記抑え部材の外周側に逃げ抑制部材を有する、上記(7)〜(11)のいずれかに記載のせん断加工装置。
本開示のせん断加工方法及びせん断加工装置によれば、振動及び騒音を抑制することができる。
図1は、被加工材に穴を形成するせん断加工の態様を示す断面模式図である。 図2は、被加工材に開断面を形成するせん断加工の態様を示す断面模式図である。 図3は、被加工材のせん断加工面の断面模式図である。 図4は、抜き材及び加工材を得るせん断加工の断面模式図である。 図5は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図6は、本開示の方法によるせん断加工における破断面形成時の断面模式図である。 図7は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図8は、押え部材のヤング率を変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図9は、押え部材のヤング率を変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図10は、押え部材のヤング率を変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図11は、押え部材のヤング率を変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図12は、押え部材のヤング率を変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図13は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図14は、押え部材の高さHcを変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図15は、押え部材の高さHcを変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図16は、押え部材の高さHcを変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図17は、押え部材の高さHcを変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果である。 図18は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図19は、突出部を有しない押え部材を備えたパンチでせん断加工を行う場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析した解析モデル及びシミュレーション結果である。 図20は、突出部を有する押え部材を備えたパンチでせん断加工を行う場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析した解析モデル及びシミュレーション結果である。 図21は、図20に示す突出部を有する押え部材の拡大模式図である。 図22は、パンチが、抑え部材の外周側に逃げ抑制部材を有する態様の断面模式図である。 図23は、z方向において間隔Wzで分離している抑え部材の斜視図である。
従来より用いられているパンチとホルダーとは、別駆動である。せん断加工時に被加工材の板厚方向(以下、単に、板厚方向ともいう)に対して垂直方向にパンチがずれることがあるが、ホルダーをパンチの刃先(パンチの側面)の近傍に配置またはパンチの刃先に接するように配置すると、パンチとホルダーとが干渉する可能性がある。そのため、ホルダーをパンチの側面に接するように配置することは難しく、パンチ及びホルダーは、板厚方向に対して垂直方向に所定の距離を開けて配置される。
これに対して、パンチと一体型の押え部材を設ければ、板厚方向に対して垂直方向にパンチがずれても、パンチと押え部材との相対位置は変わらないので、上記のような問題が生じない。
本開示は、第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記被加工材の前記第1面から前記第2面に向かって前記被加工材の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さく、少なくとも破断面の形成時に前記押え部材を前記被加工材に押しつけながら、せん断加工を行うこと、を含む、せん断加工方法を対象とする。
本開示の方法によれば、パンチの上部に固定され一部がパンチと一体化された押え部材が、破断面形成時の被加工材及び破断面形成直後の加工材を押さえることができるので、せん断加工時の振動及び騒音の発生を抑制することができる。さらには、従来、大きな振動及び騒音が発生することが特に問題となっていた高強度鋼板をせん断加工する場合でも、振動及び騒音を抑制することができる。これにより、プレス機の異常停止や、パンチ及びダイの刃先のチッピングを防止することができる。
また、本開示の方法によれば、被加工材をパンチの刃先(側面)近傍まで、好ましくはパンチの刃先(側面)まで押さえることができるので、ダイとパンチとのクリアランスを従来よりも大きくしても、振動を抑制することができる。そのため、高い寸法精度が要求されず、金型を安価に作製することができ、加えて、金型の損傷が防止される。特に高張力鋼板のせん断加工でも金型の損傷が防止され、金型の補修及び調整の必要性が軽減されるので生産性を向上することができる。
以下、本開示の方法について、図面を参照しながら説明する。
本開示の方法で用いられるパンチは、パンチの側面に接するようにパンチの上部に固定された押え部材を備える。図5に、本開示の方法に用い得るパンチを含むせん断加工装置の断面模式図を示す。図5は、被加工材に開断面を形成するせん断加工の態様を一例として示しているが、被加工材に穴を形成する場合にも適用される。以下の説明においても同様である。
図5に示すように、せん断加工装置は、第1面101及びその反対側の第2面102を有する被加工材10を、第1面101から第2面102に向かってせん断加工するパンチ20及びダイ40、並びに被加工材10をダイ40との間で保持するホルダー30を有する。ホルダー30は、弾性体31を備えてもよい。図5にはホルダー30を示しているが、本方法においては押え部材を用いるので、ホルダー30は任意構成であり、以下の説明において特に断りがない限り同様である。
図5に示すせん断加工においては、第1面101及びその反対側の第2面102を有する被加工材10を、第1面101がパンチ20側に配置され、第2面102がダイ40側に配置されるように、ダイ40とパンチ20との間に配置する。パンチ20が、被加工材10の第1面101から第2面102に向かって被加工材10を打ち抜くことで、抜き材及び加工材を得ることができる。ホルダー30は、パンチ20による打ち抜きの際、被加工材10を、第1面101側からダイ40側に向かう方向に抑えつけ、被加工材10を固定することができる。
パンチ20は、上部が拡がったT字またはL字形状を有し、パンチ20の側面に接するようにパンチ20の上部21に保持された押え部材22を備える。押え部材22は、パンチ20の上部21のみに固定され、パンチ20の側面には実質的に固定されていない。そのため、パンチ20が被加工材10の板厚方向に押し込まれるとともに、押え部材22が被加工材10の第1面101に押しつけられ、変形することによって、パンチ20の側面に接しながら被加工材10の板厚方向(せん断加工方向)にパンチ20とは別個に動くことができる。言い換えれば、押え部材22は変形にともない、パンチ20の側面に対して摺動することができる。ただし、押え部材22がパンチ20の側面に接しながら被加工材10の板厚方向(せん断加工方向)にパンチ20とは別個に動くことができる限り、押え部材22の一部がパンチ20の側面に固定される態様を除くものではない。
押え部材22のパンチ20の上部21への固定は、接着剤等を用いた接着や、ボルトによる固定によって行うことができる。
本開示の方法においては、上部においてパンチと一体化されている押え部材によって、パンチの刃先近傍の被加工材を押さえることができ、好ましくはだれの先端まで押さえることができる。押え部材によってパンチの刃先近傍の被加工材を押さえることによって、振動を抑制することができ、だれの先端まで押え部材が入り込み押さえることによって、より良好に振動を抑制することができる。
図6に、本開示のせん断加工方法における破断面形成時の断面模式図を示す。破線は、亀裂が発生して破断面16が形成される状態を示している。図6に示すように、少なくとも破断面16の形成時に、押え部材22を被加工材10の第1面101に押しつけながら、せん断加工を行う。押え部材22とダイ40との間で被加工材10を押さえ込みながら、破断面16を形成することによって、振動及び騒音を抑制することができる。
押え部材のヤング率は、被加工材のヤング率よりも小さい。被加工材よりも小さいヤング率を有する押え部材を用いることによって、図6に示すように、押え部材を被加工材の第1面に押しつける際に押え部材が変形して、押え部材22がだれ14を押さえることができる。
押え部材のヤング率は、被加工材のヤング率の好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下である。押え部材が上記範囲のヤング率を有することにより、被加工材に押え部材が食い込んで被加工材に塑性変形が生じることを抑制しつつ、押え部材が被加工材のだれの先端近傍または先端までより良好に抑えることができ、振動及び騒音をより抑制することができる。
加工材に対して、押え部材のヤング率を変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果を示す。解析モデルを図7に、シミュレーション結果を図8〜図12に示す。シミュレーション条件は次の通りである:
パンチ:弾性体、ヤング率200GPa、ポアソン比0.3;
ダイ:剛体;
押え部材:弾性体、ヤング率40MPa〜400GPa、ポアソン比0.499、押え部材の高さHc=10.0mm、押え部材の幅Wc=5.0mm、パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの、被加工材の第2面から第1面に向かう板厚方向の距離Hg=0.0mm;
被加工材:弾塑性体、1470MPa級鋼板、ヤング率200GPa、ポアソン比0.3、板厚1.6mm;
パンチ/ダイ間クリアランス:0.32mm、板厚比20%;
ソルバー:Abaqus explicit;
解法:動的陽解法(FEM)。
被加工材のヤング率200GPaに対して、押え部材のヤング率が400GPaの場合、被加工材に押え部材が食い込んで塑性変形が生じてしまう。これに対して、押え部材のヤング率を40GPa以下、すなわち、被加工材のヤング率の20%以下にすることによって、被加工材に押え部材が食い込むことによる被加工材の塑性変形を抑制しつつ、押え部材が被加工材をだれの先端近傍または先端までより良好に抑えることができ、振動及び騒音をより抑制することができる。
押え部材に用いられる材料のヤング率の下限は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。この範囲のヤング率を有する押え部材であれば、振動及び騒音の抑制を十分に行うことができる。
押え部材は、金属、合金、セラミックス、及び樹脂から選択される少なくとも1つの材料であることができる。押え部材は、好ましくは樹脂である。
例えば、押え部材に用いられ得る金属材料は、銅(ヤング率:130GPa)、アルミニウム(ヤング率:71GPa)等であることができる。
押え部材に用いられ得る合金材料は、アルミニウム合金(ヤング率:70GPa)、マグネシウム合金(ヤング率:45GPa)、銅合金(ヤング率:80〜120GPa)等であることができる。
押え部材に用いられ得るセラミックス材料は、ステアタイト(ヤング率:120GPa)等であることができる。
押え部材に用いられ得る樹脂材料は、ウレタンゴム(ヤング率:約1〜15MPa)、シリコーンゴム(ヤング率:約2〜40MPa)、ニトリルゴム(ヤング率:約1〜4MPa)、クロロプレンゴム(ヤング率:約2〜4MPa)、エチレンゴム(ヤング率:約2〜4MPa)、ブチルゴム(ヤング率:約1〜3MPa)、フッ素ゴム(ヤング率:約3〜5MPa)、低弾性ゴム(ヤング率:約0.5〜2MPa)等であることができる。本明細書において、ゴム等の樹脂材料のヤング率は、引張り強さ/伸びからJISにしたがって求めることができる(例えば、JIS K 7161, JIS K 6254)。
押え部材は、複数の材料の組み合わせで構成されてもよい。押え部材は、例えば樹脂のみで構成されてもよいし、鉄またはステンレスとばねまたはダンパーとの組み合わせで構成されてもよい。例えば、樹脂だけでは荷重が不十分の場合、鉄などのより大きなヤング率の材料と組み合わせてもよい。押え部材が複数の材料から構成されている場合、押え部材のヤング率は、押え部材全体のヤング率である。同様に、被加工材が複数の材料から構成されている場合、被加工材のヤング率は、被加工材全体のヤング率で考えればよい。
図13に例示するように、押え部材22は、先端部に比較的ヤング率が大きい材料221を備え、パンチ20の上部21に保持される側に比較的ヤング率が小さい材料、ばね、またはダンパー222を備えてもよい。
好ましくは、パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの、被加工材の第2面から第1面に向かう板厚方向の距離Hgが、被加工材に形成される板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満である。図7に、せん断加工前のパンチと押え部材との相対位置を表す断面模式図を示す。距離Hgは、板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満であればよく、マイナスであってもよい。すなわち、パンチの先端部よりも押え部材の先端部が突出していてもよい。
板厚方向(せん断加工面に平行方向)のだれの長さとせん断面の長さは、被加工材の材料及びパンチとダイとのクリアランスによって変わるので、事前に調べておけばよい。
距離Hgが、板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満であることにより、破断面の形成時に押え部材がだれを押さえることができるので、振動及び騒音をより良好に抑制することができる。
好ましくは、距離Hgは、実質的にゼロ、またはマイナスである。すなわち、せん断加工を行う際に、パンチが被加工材に接するのと実質的に同時に押え部材も被加工材に接するか、または押え部材が被加工材に接した後にパンチが被加工材に接することが好ましい。このとき、押え部材は、好ましくは樹脂であり、より好ましくはウレタンゴムまたはシリコーンゴム等のゴムである。距離Hgがこのような範囲であることにより、被加工材がせん断加工される全行程で、押え部材が変形しながら被加工材を押さえることができる。
好ましくは、距離Hgは、
−t≦Hg<0.6t
(式中、tは被加工材の板厚)
を満たし、
より好ましくは、距離Hgは、
−0.5t≦Hg<0.2t
(式中、tは被加工材の板厚)
を満たす。
パンチの先端部よりも押え部材の先端部が突出していてもよいが、突出長さは板厚t以下であることが好ましく、板厚tの半分以下であることがより好ましい。押え部材として樹脂等のヤング率が小さい材料を用いた場合に、距離Hgの絶対値を上記範囲にすることより、押え部材の変形が大きくなりすぎて押え部材が損傷することを抑制することができる。
せん断加工において、だれ及びせん断面の板厚方向の合計長さが、板厚の60%以上である場合、振動及び音は問題にならない。したがって、距離Hgを板厚の60%未満にすることにより、破断面の形成時に押え部材がだれを押さえることができ、振動をより良好に抑制することができる。なお、押え部材が損傷した場合は、押え部材を交換してもよい。
板厚方向に対して垂直方向の押え部材の幅Wcは、パンチの刃先周囲の被加工材を押さえることができれば特に限定されないが、Wcが大きいほど被加工材の浮きを防止できるので、荷重の許す範囲で設定すればよく、例えば1〜10mmまたは2〜5mmであることができる。
板厚方向の押え部材の高さHcは、好ましくは、Hc≧被加工材の板厚/0.3を満たす範囲内にある。Hcが上記範囲内であることにより、押え部材の耐久性の劣化を抑制することができる。
押え部材の幅Wcに対する押え部材の高さHcの比率Hc/Wcは、好ましくは4以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1以下である。Hc/Wcの比率が上記範囲である場合、押え部材の過度なたわみが抑制され、被加工材のだれの先端の近傍または先端まで押さえることができ、振動及び騒音の低減効果をより大きくすることができる。Hc/Wcの比率の下限は特に限定されないが、上記のように、Hcが、Hc≧被加工材の板厚/0.3を満たす範囲内であることが好ましい。
押え部材の高さHcを変えた場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析したシミュレーション結果を示す。図7の解析モデルにおいて、Wc=5.0mm、Hg=0.0mmとして、Hcを2.5〜20.0mmの範囲で変更し、Hc/Wcを変更した。それ以外のシミュレーション条件は上記と同じである。シミュレーション結果を図14〜図17に示す。Hc/Wcの比率が小さいほど、押え部材のたわみが抑制され、被加工材のだれの先端の近傍または先端まで押さえることができることが分かる。
押え部材は、好ましくは、先端部においてパンチの刃先(側面)に向かって高さが増加する突出部を有する。図18に、せん断加工前のパンチと押え部材の断面模式図を示す。せん断加工において、被加工材にはだれが形成されるが、図18に示すように、押え部材22が、先端部においてパンチ20の刃先(側面)に向かって長さが増加する突出部223を有する場合、突出部223が、被加工材のだれ形成による隙間を埋めることができるので、より効果的に押え部材で被加工材を押さえて振動及び騒音を抑制することができる。
図19に突出部を有しない押え部材を備えたパンチでせん断加工を行う場合、図20に突出部を有する押え部材を備えたパンチでせん断加工を行う場合の、押え部材による被加工材のだれの押え状態について解析した解析モデル及びシミュレーション結果を示す。
図19に示す突出部を有しない押え部材は、断面において、幅Wcが5.0mm、外周側の高さHcが5.0mm、及び内周側の高さHc’が5.0mmの寸法を有する。図20に示す突出部を有する押え部材は、断面において、幅Wcが5.0mm、外周側の高さHcが5.0mm、及び内周側の高さHc’が5.2mmの寸法を有する。内周側とは、押え部材22がパンチ20と接する側であり、外周側とは、押え部材がパンチ20と接する側の反対側である。
図19に示す突出部を有しない押え部材の先端部とパンチの先端部との距離Hgはゼロであり、せん断加工を行う際に、パンチが被加工材に接するのと実質的に同時に押え部材も被加工材に接する。図20に示す突出部を有する押え部材は、パンチの側面に接する側の押え部材の先端が、パンチの先端よりも0.2mm突出している。図21に、図20に示す突出部を有する押え部材の拡大模式図を示す。図20及び21に示す押え部材には、押え部材の外周側においては押え部材の先端部とパンチの先端部との距離Hgはゼロであるが、押え部材の内周側においては押え部材の先端部とパンチの先端部との距離Hgは−0.2mmであるように、外周側から内周側にかけて突出量が線形に大きくなる突出部が形成されている。図20及び21に例示するような突出部を押え部材が有する場合、押え部材の先端部とパンチの先端部との距離Hgは、押え部材の外周側の先端部とパンチの先端部との板厚方向の距離であり、押え部材の高さHcは、押え部材の外周側の高さである。
図19では、押え部材と被加工材のだれとの間にわずかな隙間が見られるが、図20では、押え部材がだれの先端まで押さえていることが分かる。
好ましくは、パンチは、抑え部材の外周側に逃げ抑制部材を有する。図22に、パンチ20が、抑え部材22の外周側に逃げ抑制部材24を有する態様の断面模式図を示す。逃げ抑制部材24は、好ましくは抑え部材22の外周側に接している。
上述のように、押え部材22の幅Wcに対する押え部材22の高さHcの比率Hc/Wcが大きい場合は、押え部材22がパンチ20から離れる方向にたわむことがあるが、パンチ20が抑え部材22の外周側に逃げ抑制部材24を有することにより、押え部材22のたわみを抑制することができ、被加工材のだれの先端の近傍または先端まで押さえることができ、振動及び騒音の低減効果をより大きくすることができる。
好ましくは、抑え部材22より先に逃げ抑制部材24が被加工材10に接触しないように、抑制部材24の高さHc’は、押え部材22の高さHcよりも小さい。抑制部材24の高さHc’は、パンチ20の上部21からの抑制部材24の板厚方向の長さである。
逃げ抑制部材24は、押え部材22のたわみを抑制することができる材質であれば特に限定されないが、パンチ20と同じ材質であることができる。逃げ抑制部材24は、パンチと20と一体であってもよく、またはパンチ20に結合されたものでもよい。
被加工材10に抑え部材22が押し付けられて抑え部材22が板厚方向(図22のy方向)に縮むとき、抑え部材22は、板厚方向に対して垂直方向(図22のx方向またはz方向)に拡大しようとするが、パンチ20が逃げ抑制部材24を有する場合は、抑え部材22は、逃げ抑制部材24により、パンチ20から離れる方向である外周方向(x方向)には変形できず、板厚方向及び外周方向に対して垂直方向(z方向)にのみ拡大する。
この場合、抑え部材22が、過度な拘束を受けないようにするため、抑え部材22は、好ましくは、図23に示すように、z方向において間隔Wzで2つ以上に分離している。Wzは、好ましくはWz≦10Wc、より好ましくはWz≦5Wcである。間隔Wzの間の隙間のz方向の長さは、好ましくはWzの5%以上50%以下、さらに好ましくはWzの10%以上20%以下である。
ダイは、好ましくは、パンチが備える押え部材と同様の押え部材を、ダイの側面に接する位置に備えてもよい。ダイが押え部材を備えることによって、被加工材のせん断加工時に被加工材の第2面を押さえることができるので、被加工材の倒れを抑制することができ、被加工材に発生する亀裂発生のタイミングをより遅くするこができるので、振動及び騒音をさらに抑制することができる。また、打ち抜き時に抜き材(スクラップ)の落下速度を抑制できるので、スクラップがスクラップシュートを傷付けることを防止することができる。
パンチとダイとの間のクリアランスは特に限定されないが、例えば、パンチとダイとの間のクリアランスは、板厚の5〜25%程度であることができる。
ホルダーを用いる場合、ホルダーの配置位置は特に限定されず、従来と同様の位置に配置することができる。例えば、板厚方向に対して垂直方向におけるホルダーとパンチの側面(刃先)との間隔は約2〜6mmであり、押え部材とホルダーとの間隔は約0.5〜3mmであることができる。
本方法において、被加工材は実質的に板状である。被加工材の板厚は特に限定されず、例えば0.2〜10mmであることができる。被加工材の材質も、せん断加工が可能であれば特に限定されず、鉄系若しくは鉄合金系の金属板または非鉄系若しくは非鉄合金系の金属板でもよい。被加工材は、好ましくは鉄系又は鉄合金系の金属板であり、より好ましくは590MPa級以上、さらに好ましくは780MPa以上、さらにより好ましくは980MPa級以上の引張強度を有する高強度鋼板である。本開示の方法によれば、このような高強度鋼板のせん断加工においても、振動及び騒音を抑制することができる。
本方法において、パンチ、ダイ、及びホルダーは、上記で説明した構成以外は特に限定されず、従来と同様の材質、寸法、及び形状を有することができる。
本開示の方法はまた、第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第1面から前記第2面に向かってせん断加工をするように構成されたパンチ及びダイを有し、前記被加工材をせん断加工して、抜き材及び加工材を得るせん断加工装置であって、前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さい、せん断加工装置を対象とする。
せん断加工方法の構成について説明した上記記載は、せん断加工装置の構成にも適用される。
押え部材の有無、及び押え部材のHcを変更して、被加工材をせん断加工したときのA特性音圧レベルを評価した。
下記の条件で、被加工材のせん断加工を行い、その際のA特性音圧レベルを評価した。
被加工材:1470MPa級鋼板、板厚1.6mm;
パンチの直径:φ100mm;
パンチの打ち抜き速度:100mm/秒;
パンチ/ダイ間のクリアランス:0.32mm(板厚比20%);
押え部材の材質:シリコーンゴム;
押え部材のヤング率:10MPa;
押え部材の高さHc:2.5〜40.0mm;
押え部材の幅Wc:5.0mm;
パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの、被加工材の第2面から第1面に向かう板厚方向の距離Hg=0.0mm。
A特性音圧レベルは、表1にしたがって評価した。
表2に、A特性音圧レベルの評価結果を示す。
10 被加工材
101 被加工材の第1面
102 被加工材の第2面
11 抜き材
12 加工材
14 だれ
14’ だれ
15 せん断面
15’ せん断面
16 破断面
17 バリ
17’ バリ
18a パンチ側表面
18b ダイ側表面
19 せん断加工面
20 パンチ
20a 被加工材の板厚方向
21 パンチの上部
22 押え部材
221 比較的ヤング率が大きい材料
222 比較的ヤング率が小さい材料、ばね、またはダンパー
223 突出部
30 ホルダー
31 弾性部材
40 ダイ
Hc 押え部材の(外周側の)高さ
Hc’ 押え部材の内周側の高さ
Hg パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの距離
Wc 押え部材の幅

Claims (12)

  1. 第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記被加工材の前記第1面から前記第2面に向かって前記被加工材の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、
    前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
    前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さく、
    少なくとも破断面の形成時に前記押え部材を前記被加工材に押しつけながら、せん断加工を行うこと、
    を含む、せん断加工方法。
  2. 前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率の20%以下である、請求項1に記載のせん断加工方法。
  3. 前記パンチの先端部の位置から前記押え部材の先端部の位置までの、前記被加工材の前記第2面から第1面に向かう板厚方向における距離Hgが、前記被加工材に形成される前記板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満である、請求項1または2に記載のせん断加工方法。
  4. 前記距離Hgが、
    −t≦Hg<0.6t
    (式中、tは前記被加工材の板厚)
    を満たす、請求項3に記載のせん断加工方法。
  5. 前記押え部材の幅Wcに対する前記押え部材の高さHcの比率Hc/Wcが4以下であり、且つHc≧被加工材の板厚/0.3である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のせん断加工方法。
  6. 前記パンチが、前記抑え部材の外周側に逃げ抑制部材を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のせん断加工方法。
  7. 第1面及びその反対側の第2面を有する被加工材を、前記第1面から前記第2面に向かってせん断加工をするように構成されたパンチ及びダイを有し、前記被加工材をせん断加工して、抜き材及び加工材を得るせん断加工装置であって、
    前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
    前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率よりも小さい、
    せん断加工装置。
  8. 前記押え部材のヤング率が、前記被加工材のヤング率の20%以下である、請求項7に記載のせん断加工装置。
  9. 前記パンチの先端部の位置から前記押え部材の先端部の位置までの、前記被加工材の前記第2面から第1面に向かう板厚方向における距離Hgが、前記被加工材に形成される前記板厚方向におけるだれの長さとせん断面の長さとの合計長さ未満である、請求項7または8に記載のせん断加工装置。
  10. 前記距離Hgが、
    −t≦Hg<0.6t
    (式中、tは前記被加工材の板厚)
    を満たす、請求項9に記載のせん断加工装置。
  11. 前前記押え部材の幅Wcに対する前記押え部材の高さHcの比率Hc/Wcが4以下であり、且つHc≧被加工材の板厚/0.3である、請求項7〜10のいずれか一項に記載のせん断加工装置。
  12. 前記パンチが、前記抑え部材の外周側に逃げ抑制部材を有する、請求項7〜11のいずれか一項に記載のせん断加工装置。
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