JP2008229710A - プレス打ち抜き工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】板状金属のワークを打ち抜いて開口するプレス打ち抜き工法において、バリを管理面に発生させず、過度な能力を有するプレス機を使用することなく経済的で、かつ、パンチの耐久性も高めたプレス打ち抜き工法を提供する。
【解決手段】板状のワークの一面を平坦な第1のダイにて支持し、該ワークの他面に第1のパンチにて、断面が台形の環状凹部11を型押しして形成する工程と、前記ワークの他面をダイ穴13を持つ第2のダイ12にて支持し、前記環状凹部11の台形断面における下底の外縁11fよりも小径な第2のパンチ14によって前記ワークを、その一面1a側から他面1b側へ向って打ち抜き、ワークに開口を形成する工程を含むことを特徴とするプレス打ち抜き工法。
【選択図】図5

Description

本発明は、プレス打ち抜き工法に関するもので、より詳しくは、板状金属よりなるワークにプレス打ち抜きにより開口する工法に関する。
従来、板状の金属よりなるワーク(以下、ワークという)にプレス打ち抜き加工により穴を形成すると、ワークにおける穴の打ち抜き側の周縁にバリが発生し、このバリが打ち抜き側の面より突出する。そのため、管理面に平滑性が求められるワークにおいては、前記のバリを除去する工程が必要となる。
このようなバリ除去工程を付加すると、量産プレス加工においてはそのバリ除去工程の分、サイクルタイムの悪化や製品コスト高となる。
そのため、従来、前記のバリ除去工程を要しないプレス抜き加工方法として次のような工法が提案されている。
例えば、第1の従来技術として、先ず、先端に、ワークに形成する開口部の開口面積と略等しい広い面積の平面状の凸部を有する第1のパンチによって、ワークの表面を型押ししてワークの表面側に広い平面状の凹部を鍛圧形成し、次で、ワークを表裏反転して裏面側から、前記第1のパンチより若干小径の第2のパンチにより打ち抜き、その打ち抜きされた円筒面の外縁から、前記凹部の隅角部までをテーパ状に破断するものが提案されている(特許文献1参照)。
また、第2の従来技術として、前工程として、ワークの裏面に金型によって環状のV溝を抜き線に跨って設け、後工程として、ワークの表面から前記抜き線に従ってパンチにより打ち抜くことによりバリが発生したとしても、そのバリがワークの裏面までは突出しないようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
特開平8−47729号公報 特開平1−215412号公報
前記第1の従来技術においては、第1のパンチで凹部を形成した後に、第2のパンチで前記のように破断させるためには、凹部形成時に破断部分の硬度を鍛圧で高めておく必要があるが、この鍛圧は、前記凹部の全域、すなわち、開口される口径より広い面積を押圧する必要があるため、凹部を深くして鍛圧を高めることが難しく、凹部を深くして硬くするためには、開口に必要な能力(押圧トン数)に比して過度の能力を有するプレス機が必要となり、不経済となる問題がある。
また、過度の押圧力の付与は、余肉流動による形状変化やワーク歪みを惹起するとともに、パンチ及びダイの寿命が短くなる問題もある。
次に、前記第2の従来技術においては、前記のV溝の形成において、断面V字状のパンチによりワークを押圧するため、そのV字状のパンチの頂部に応力が集中することから、その強度を確保し難く、かつ、線状押圧となるため、鍛圧力が弱い。そのため、前記第1の従来技術と同様に、凹部を深くして鍛圧を高めることが困難な問題がある。
更に、V字状のパンチの頂部の摩耗が著しく、パンチ寿命も短くなりがちである。
更に、後工程において、そのパンチの軸芯とV溝の環状の軸芯を正確に一致させ、パンチ周縁とV溝頂部の相対位置が正確に定まらなければ、所期の破断が発生しないばかりか、更なる周縁バリを惹起してしまうため、高SPM(毎分当りストローク数)が要求される量産工程に向かない。
以上のことから、量産プレス加工に好適で、バリを周縁からワーク面に突出させないプレス打ち抜き方法が要望されていた。
そこで、本発明は、このような要望に応えるプレス打ち抜き工法を提供することを目的とするものである。
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、板状のワークの一面を平坦な第1のダイにて支持し、該ワークの他面に第1のパンチにて、断面が台形の環状凹部を型押しして形成する工程と、
前記ワークの他面をダイ穴を持つ第2のダイにて支持し、前記環状凹部の台形断面における下底の外縁よりも小径な第2のパンチによって前記ワークを、その一面側から他面側へ向って打ち抜き、ワークに開口を形成する工程を含むことを特徴とするプレス打ち抜き工法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2のパンチの径を、前記環状凹部の台形断面における上底の径以上にしたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記環状凹部の深さを、ワーク板厚の30%以上としたことを特徴とするものである。
本発明によれば、台形断面の環状凹部を型押しにて形成するため、前記従来技術1に比べて、破断すべき部分に位置して平面状で、かつ、集中して鍛圧をすることができ、従来のような過度の能力を有するプレス機を必要とせず経済的である。更に、従来のような過度の押圧力によるワークの歪みの惹起等も防止できる。
更に、前記従来技術2のV状のパンチに比べて、平面状であることから、パンチ頂部の摩耗も低減され、パンチの寿命の増大を図ることができる。
更に、台形断面の上底は所定の長さで鍛圧されるため、部材の多少の芯ズレが生じても破断する部分の鍛圧が行われ、ワーク毎の部材の芯ズレにも対応できる。
本発明を実施するための最良の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1乃至図8は本発明の実施例1を示す。なお、本願記載中の径とは、全て直径を意味するものである。
図1は第1工程を示すもので、開口されるワーク1と第1のパンチ2の側断面である。
ワーク1は、所望の板厚を有する金属板で、実施例では、板厚が1.2mmの軟鋼を用いた。そして、このワーク1は、所望の形状に切り出したもの、或いは、前工程で所望の形状に予め形成されたもので、そのワーク1の被加工部、すなわち、開口部が、第1のパンチ2に配置される。
前記第1のパンチ2の頂部(加工部)には、図2に拡大図示するように環状突起3が形成されている。ここで環状突起とは、図2に示す径方向の側断面形状を有する突起3が第1のパンチ2の上方から見て環状に形成されていることを意味する。
該環状突起3は、図2に示すように、第1のパンチ2の一般面4及び底面5上から突出し、その断面形状は、上底たる平面部6と、該平面部6の外側から下方に至るにつれて外側へ開く外側テーパ面7と、平面部6の内側から下方に至るにつれて内側へ開く内側テーパ面8とからなる略台形断面に形成されている。更に、上底の平面部6の両側端9、9、すなわち、平面部6と両テーパ面との境界は最小Rで鋭角な稜線に仕上げられている。
前記外側テーパ面7の垂直に対する角度θは、20〜30度が好ましく、本実施例1においては20度とした。
また、環状突起3の高さ、すなわち、一般面4及び底面5から平面部6までの高さ、換言すれば、後述する環状凹部11の深さは、ワーク1の板厚の30%以上が好ましい。この30%よりも浅いと、被加工部が充分に鍛圧されず、後述する破断が良好に発生しない懸念があるためである。本実施例1では、環状突起3の高さ、すなわち、環状凹部11の深さを、ワーク1の板厚1.2mmに対して0.4mmとした。なお、軟鋼以外の薄版、例えば、高張力鋼板やステンレス鋼板へ適用する場合においても同様に、環状凹部11の深さは板厚の30%以上が好ましい。
そして、前記ワーク1の被加工部を略水平にセットするとともに、そのワーク1の一面1a側に図3に示す第1のダイ10の平坦面を密着させて、ワーク1をダイ10にて支持する。また、ワーク1の他面1b側に、ワーク1と垂直に第1のパンチ2をセットする。
前記のように、第1のダイ10にてワーク1を略水平状態で支持固定した状態で、図1の状態から第1のパンチ2をワーク1の他面1bに押し付けて環状突起3をワーク1内へ、図3に示すように圧入させる。これにより、ワーク1が環状突起3によって型押しされ、環状突起3の台形形状がワーク1に転写し、ワーク1の他面1b側に横断面が台形の環状凹部11が形成される。ここに環状凹部とは、図5に示す径方向の断面形状を有する凹部が、ワーク1の下方から見て環状に形成さていていることを意味する。
このとき、前記環状凹部11が形成される反対側の一面1aを第1のダイ10で押え保持しているため、環状凹部11が形成された部分にあったワーク1の素材(余肉)は行き場を失い、環状突起3の平面部6の周囲の組織密度が高められる。すなわち、鍛圧された部分の硬度が上昇し、打ち抜き工程での破断が発生し易くなる。この硬度の上昇値は所望に設定するものであるが、本実施例1においては、約2倍のHV値にした。
前記のようにして転写された環状凹部11の断面形状(台形形状)は、図5に示すように、上底の平面部11aと、該平面部11aの内縁11bから下底に向って拡開する内側テーパ面11cと、平面部11aの外縁11dから下底に向って拡開する外側テーパ面11eとを有する。
次に、前記のように環状凹部11が形成されたワーク1を、図4に示すように、そのワーク1の環状凹部11側である他面1b側において、ダイ穴13を有する第2のダイ12で支持する。
このワーク1の支持状態で、図4に示すように、第2のパンチ14によりワーク1の打ち抜きを行うものであるが、この第2のパンチ14と前記第2のダイ12及び前記ワーク1の環状凹部11の関係について説明する。
第2のダイ12のダイ穴13の内径、すなわち、ダイ穴13の内縁13aの径D1は、第2のパンチ14の外径、すなわち、第2のパンチ14における下端面の外縁14aの径D2に打ち抜きの適正クリアランス(本実施例1では前記径D2の約10%)を加えた径に設定されており、環状凹部11の最外周(下底部の外周)と略同一径に設定されている。
そして、第2のパンチ14と、環状凹部11と、第2のダイ12の各中心軸をプレス加工の中心軸15上に一致させる。このときの各部の位置関係を図5により説明する。
第2のパンチ14の下端面の外縁14a(パンチ外径)は、前記環状凹部11における下底の外縁11fよりも小径に設定されている。また、前記外縁14aは、環状凹部11の上底たる平面部11aの外縁11dを起点として、この外縁11dと前記外縁14aとの間に亀裂を発生させたいことから、この両外縁11dと14aの径間を最短にすべく、外縁11dと同径が望ましいが、破断進行形状や形状要件、加工要件等によって適宜異ならせてチューニングすればよい。例えば、本実施例1においては、外縁11dの径に対し、外縁14aの径を0.1mm大径としているが、これに限らず、例えば、外縁14aの径を外縁11dの径よりも小径に設定することもあり得る。
また、環状凹部11の形状決定においては、先ず、前記の外縁11d、14a、内縁13aの関係を決定する。外側テーパ面11eは、外縁11dから適正角度、例えば20〜30度で下底部へ降ろす。
平面部11aは、外縁11dから所定量だけ内径側へ延設させるが、その長さ、すなわち、凹部断面積は、塑性流動し鍛圧したい余肉量と、3者(ワーク、第2のパンチ、第2のダイ)の芯ズレを許容し最悪ズレ時においても適正破断が生じる相対ズレ範囲とによって適宜決定すればよい。これにより、環状凹部11の内縁11dの位置が決まる。
そして、内側テーパ面11cは、内縁11bから所望の角度で下底部へ降ろして形成すればよい。この角度には特に加工上の意味はないため、外側テーパ面11eと略対称に設定すればよい。
なお、最終的な製品形状としては、ワーク1に穿設された開口(図7参照)は筒状であることが好ましいので、外縁14aは内縁11bよりも外縁11dを狙うことが好ましい。
以上のようにして、環状凹部11の形状及び第2のパンチ14と第2のダイ12との相対位置を決定する。
なお、3者の軸が相対的にズレても、外縁11dと外側テーパ面11eの間であれば、ワーク1の破断は発生し進行するが、3者の軸が相対的にズレるほど、バリは大きくなる。
したがって、第2のパンチ14の径、すなわち、外縁14aの径は、内縁13aの径を超えないようにすべきであり、理想的には、第2のパンチ14の外縁14aの径は、環状凹部11の外縁11dよりも僅かながら大径、すなわち、外側のテーパ面11eの最上部付近と外縁14a間で破断が進行するようにするのが、製品、すなわち、穴形状及びバリの極小化から、最適である。
以上のような関係において第2のパンチ14を下降させて、図4の状態を経て、図6に示すように、ワーク1を破断してスクラップ30を打ち抜く。これにより、図7に示すような所望形状の開口20が形成されたワーク31が得られる。
前記の工程において、ワーク1と、第2のダイ12と第2のパンチ14の3者の軸が一致した理想状態で開口20を形成した場合の破断状態を図8に示す。
図8において、開口20の内壁面40には、ワーク1の一面1aから他面1bに至って、剪断面41〜破断面42〜テーパ面11eが連続し、破断面42の下端周縁には微小なバリ43が下向きに形成される。これらは打ち抜き時において、先ず剪断による切断が進行して剪断面41が形成され、その途中から破断(短絡)による切断が一気に進行して破断面42が形成され、破断の最終部において肉が引きちぎられてバリ43が発生する。
このように、打ち抜きには微小バリ43の発生は免れないが、このバリ43は開口20のテーパ内に留まって、他面1bである管理面44へは突出しない。
以上のようであるため、本実施例1においては、次のような効果を発揮することができる。
環状凹部11の横断面形状を、台形断面に形成したことにより、破断させたい部位を、ワークの板厚方向(環状凹部の深さ方向)に確実に鍛圧して硬化させることができる。
そのため、前記従来技術1のように、開口面積と略等しい広い面積を鍛圧するものに比べて、破断すべき部分において平面状で、かつ、比較的狭い幅で鍛圧でき、該部での鍛圧による硬度を高めることができ、破断が正確に行え、かつ、過度の能力を有するプレス機を用いる必要もない。
更に、鍛圧に供すべき余肉量(体積)を環状凹部11の断面形状の設定で調整できるため、この調整により所望の硬度を得ることができる。
更に、ワーク毎のプレス加工時におけるパンチとワークとダイの芯ズレを許容できるように、環状凹部11の上底の設定が可能で、この上底の存在により芯ズレの誤差を吸収できる。
更に、本実施例1においては、環状突起3を断面台形に形成したので、前記従来技術2のようなV状のパンチに比べて、鍛圧を高め、かつ、パンチの寿命も高めることができる。
なお、前記第1のパンチ2、第1のダイ10、第2のパンチ14の昇降手段は図示していないが、適宜な昇降駆動手段を用いるものである。
図9は実施例2を示す。
本実施例2は、前記実施例1における第1のパンチ2の環状突起3の内周部にリセス50を形成したものである。すなわち、第1のパンチ51の上部に前記の環状突起3と同様な環状突起52を形成し、該環状突起52の内側に、環状突起52の基部(前記一般面4)よりも低い底面53を有する空間からなるリセス50を形成したものである。
本実施例2において、第1のダイ10によりワーク1を支持し、第1のパンチ51をワーク1に型押しすると、ワーク1には、前記実施例1と同様の台形断面の環状凹部11が形成され、その底面部は前記と同様に鍛圧される。
このとき環状凹部11の内周に位置するワークは塑性流動によってリセス50内に入り込み、図9に示すように、下方へ緩く凸状に曲がった屈曲部1cが形成される。実際には、この屈曲部1cは僅かな屈曲であるが、分かり易くするために、図9では屈曲状態を強調している。
前記実施例1のように、ワーク1の他面1bが第1のパンチ2の上部の底面5に密着して、ワーク1の余肉の逃げ場がない場合には、不具合が起こるようなワークの形状、材質においては、本実施例2を適用し、鍛圧に供される分と屈曲へ逃げる分の余肉の割合を調整するとよい。
そして、本実施例2においても、前記環状凹部11を形成したワーク1を前記実施例1と同様に図4乃至図8に示すように打ち抜き加工する。
なお、この打ち抜き工程においても、前記のようにワーク1に屈曲部1cが存在することは全く問題がなく、むしろ、破断発生には好適である。
本発明は前記の実施例に限るものではなく、ワークの材質、板厚は任意であるし、開口20の形状は真円に限らず、各種形状のものに適用できるものである。
本発明の実施例1を示すもので、加工前のワークと第1のパンチを示す側断面図。 図1における第1のパンチの環状突起の拡大側断面図。 第1のパンチによりワークを型押しした状態の側断面図。 型押しされたワークを第2のダイと第2のパンチにセットした状態を示す側断面図。 図4における要部拡大図。 図4及び図5の状態からワークを打ち抜いた状態の側断面図。 ワークの開口状態を示す側断面図。 ワークの破断部を示す拡大側断面図。 本発明の実施例2を示す側断面図。
符号の説明
1 ワーク
1a 一面
1b 他面
2 第1のパンチ
3 環状突起
11 環状凹部
11a 上底である平面部
11f 下底の外縁
12 第2のダイ
13 ダイ穴
14 第2のパンチ
20 開口

Claims (3)

  1. 板状のワークの一面を平坦な第1のダイにて支持し、該ワークの他面に第1のパンチにて、断面が台形の環状凹部を型押しして形成する工程と、
    前記ワークの他面をダイ穴を持つ第2のダイにて支持し、前記環状凹部の台形断面における下底の外縁よりも小径な第2のパンチによって前記ワークを、その一面側から他面側へ向って打ち抜き、ワークに開口を形成する工程を含むことを特徴とするプレス打ち抜き工法。
  2. 前記第2のパンチの径を、前記環状凹部の台形断面における上底の径以上にしたことを特徴とする請求項1記載のプレス打ち抜き工法。
  3. 前記環状凹部の深さを、ワーク板厚の30%以上としたことを特徴とする請求項1又は2記載のプレス打ち抜き工法。
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