JP2804840B2 - 重合体及びそれを用いた光学製品 - Google Patents

重合体及びそれを用いた光学製品

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、優れた光学特性を有する重合体に関する。
更に詳しくは、本発明は、高屈折率、低分散で、光学特
性に優れており、特に眼鏡レンズ、カメラレンズ、プリ
ズム、情報記録媒体用基板等の光学製品に好ましく用い
られる重合体に関する。
〔従来技術〕
プラスチックレンズはガラスレンズと比べると軽量で
割れにくく、染色が容易なため近年、眼鏡レンズ、カメ
ラレンズや光学素子に使用されている。プラスチックレ
ンズ材料としてはポリジエチレングリコールビスアリル
カーボネート(CR−39)やポリメチルメタルクリレート
(PMMA)が一般に用いられている。しかし、これらのプ
ラスチック材料の屈折率は1.50以下と低く、以下のよう
な問題を有していた。例えば、レンズ材料に用いた場
合、度数が強くなるとレンズの肉厚を厚くしなければな
らなくなり、軽量といったプラスチックの優位性が失わ
れてしまう。そればかりでなく、肉厚の厚い眼鏡用レン
ズは審美性が悪くなるという点でも好ましくなかった。
さらに、凹レンズの場合には、レンズの周囲の厚さが厚
くなり、複屈折や色収差が生じ、好ましくなかった。
そのため、比重の小さいプラスチックの特徴を生かし
つつ、レンズの厚さを薄くでき、かつ色収差の少ない高
屈折率、低分散プラスチックレンズ材料の提供が望まれ
ていた。
高屈折率を与えるプラスチックレンズ材料としては、
特開昭62−276501号公報に、ナフタレン環を導入するこ
とにより屈折率が1.63以上となる材料が開示されてい
る。特開昭61−88201号公報には、カルバメート結合に
臭素化ビフェニルを導入することにより屈折率が1.60以
上となる材料が開示されている。特開昭64−26622号公
報には、S−カルバメート結合を導入することにより屈
折率が1.58以上となる材料が開示されている。特開昭62
−34101号公報には、臭素化ビスフェノールA骨格を導
入することにより屈折率が1.60以上となる材料が開示さ
れている。
日本化学会第59春季年会(1990年)講演予稿集I P539
には、屈折率(ND)が1.661〜1.656、アッベ数(υ
が31.2〜32.2のジチアン環を含むポリチオールを用いた
プラスチック材料が記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、前記特開昭62−276501号公報記載のプ
ラスチックレンズ材料は、脆く、耐衝撃性が劣るため、
レンズの厚さを肉薄にするというレンズとしての機械的
強度が満足されないという欠点があった。
また、前記特開昭61−88201号公報、前記特開昭64−2
6622号公報記載のプラスチックレンズ材料は、耐衝撃性
に関する問題は、解消している。しかし、プラスチック
レンズ製造時に重合が不均一となり、脈理が発生しやす
く、この脈理により光学歪が発生するといった欠点があ
った。又、特開昭61−88201号公報記載のプラスチック
レンズ材料には、耐候性が悪く長期間使用すると黄変し
やすいという欠点もあった。
また、特開昭64−26622号公報記載のプラスチックレ
ンズ材料は耐熱性が悪く、これに反射防止用のハードコ
ート層を施すと、熱による表面のストレス緩和に伴いハ
ードコート層にクラックが入りやすいという欠点もあ
る。
前記特開昭62−34101号公報記載のプラスチックレン
ズ材料も、耐候性が悪く、長期間使用すると黄変してく
るという欠点があった。
さらに、前記日本化学会第59春季年会(1990年)講演
予稿集に記載のプラスチック材料は、屈折率及びアッベ
数が高く、優れた光学特性を有するとともに耐衝撃性等
の物性の面でも優れたものである。
しかし、例えば、高屈折率レンズを使用したメガネレ
ンズ等でも、より分散の小さい材料を必要とする場合が
あり、さらにアッベ数の高い材料の出現が望まれてい
る。
そこで本発明の目的は、耐衝撃性、耐候性、耐熱性等
に優れ、かつ1.6前後の高い屈折率と40前後の高いアッ
ベ数を有する光学製品用として有用な重合体を提供する
ことにある。
さらに本発明は、光学歪を有さない高屈折率、高アッ
ベ数の重合体を提供することを目的とする。
さらに、本発明の目的は、上記重合体を光学材料とし
て用いたレンズ、プリズム、導波路等の光学製品、及び
これら光学製品を用いた製品、例えば上記重合体からな
るメガネレンズとメガネフレームとからなるメガネを提
供することである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、1種又は2種以上の下記一般式〔1〕: (式中、nは1〜4の整数であり、R1は水素原子又はメ
チル基であり、R2は水素原子又はメチル基である) で示される単位30〜100重量%及び1種又は2種以上の
式 R3 (式中、R3はラジカル重合性モノマー由来の残基を示
す)で示される単位0〜70重量%からなり、屈折率が1.
55以上であり、かつアッベ数35以上である重合体に関す
る。
さらには、本発明は、上記一般式〔1〕で示される単
位を1種又は2種以上含有する光学製品用重合体に関す
る。
以下本発明をさらに詳細に説明する。
一般式〔1〕で示される単位においてnは1〜4、好
ましくは1〜2の整数であり、nが5以上では重合体の
屈折率及び耐熱性が低下して好ましくない。
本発明の重合体は、一般式〔1〕の単位の1種のみか
らなるホモポリマーであるか、一般式〔1〕の単位の2
種以上からなるコポリマーであるか、あるいは一般式
〔1〕の単位の1種又は2種以上及びその他のラジカル
重合性モノマーに由来する単位R3の1種又は2種以
上からなるコポリマーである。
重合体中の一般式〔1〕で示される単位の量は、30〜
100重量%、好ましくは40〜100重量%とすることが適当
である。30重量%未満では、屈折率、強度、耐熱性など
が不十分となるからである。共重合成分〔R3〕として用
いられるラジカル重合性モノマーとしては、単官能性モ
ノマー、多官能性モノマー、マクロモノマー等が挙げら
れる。特に、それらの単独重合体の屈折率が1.48以上で
あるものが望ましい。具体的には、2,3−ジブロモプロ
ピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレ
ート、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロフェニル
(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)ア
クリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシメチルチ
オフェン、2−トリシクロ〔5,2,02.6〕−3,4−ジブロ
モデシルチオエチル(メタ)アクリレート、エチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メ
タ)アクリロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4
−(メタ)アクリロキシフェニル〕スルフォン、メチル
チオ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−アリルオ
キシ−3,5ジブロモフェニル)プロパン、スチレン、ク
ロロスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、
エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)
アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げ
られる。
本発明の重合体は、下記一般式〔2〕で示される二官
能(メタ)アクリレート化合物を、必要により上記ラジ
カル重合性モノマーとともにラジカル重合させることに
より得ることができる。
(式中、nは1〜4の整数であり、R1は水素原子又はメ
チル基であり、R2Hは水素原子又はメチル基である) 一般式〔2〕で示される二官能(メタ)アクリレート
化合物としては、例えば 等を挙げることができる。但し、これらに限定されるも
のではない。
尚、一般式〔2〕で示されるアクリレート化合物は以
下の反応に従って合成できる。
即ち、一般式〔3〕で示されれる1,4−ジチアン化合
物を2当量以上の一般式〔4〕の酸クロライドとトリエ
チルアミン(Et3N)等の塩基の存在下反応させて一般式
〔2〕の化合物を得ることがきる。反応条件は原料化合
物の反応性等により適宜選ぶことができ、例えば前記化
合物(T−2)の場合には10〜−10℃、好ましくは約0
℃で1〜10時間反応させることにより目的とする化合物
を合成できる。
本発明の重合体を与える上記一般式〔2〕の化合物
(モノマー)は、エステルが残基として脂環式スルフィ
ドである1,4−ジチアン環が導入されていることを特徴
としている。この1,4−ジチアン環は、モノマー化合物
自体の屈折率及びアッベ数を高め、このモノマー化合物
を用いて製造した重合体の屈折率及びアッベ数をも高め
る。またこのモノマー化合物中の1,4−ジチアン環は剛
直であるため、このモノマー化合物を用いて製造した重
合体に高耐熱性、優れた機械的物性、優れた耐候性を与
える。
本発明の重合体は、一般式〔2〕で示されるモノマー
の1種又は2種以上に必要に応じて前記ラジカル重合性
モノマーを混合させたモノマー組成物100重量部に0.01
〜10重量部の重合開始剤を加え均一に溶解させた後、例
えば所定の形状のガラス製モールドに注入し、加熱もし
くは紫外線照射することにより重合を行なって得られ
る。重合開始剤としては、加熱もしくは紫外線照射によ
りラジカルを発生するものであれば特に制限なく使用で
きる。加熱により重合を行なう場合は、アゾビスイソブ
チロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸
化ベンゾイル等を重合開始剤として用い、重合温度は0
〜150℃、重合時間は0.5〜72時間とすることが好まし
い。また、紫外線照射により重合を行なう場合は、2,
2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフ
ェノン、ベンジルジメチルケタール等を重合開始剤とし
て用いられ、照射強度は0.1〜100mW/cm2、照射時間は1
分〜10時間とすることが好ましい。
尚、上記のようにして得られる本発明の重合体は、共
重合体の場合には、一般にはランダム共重合体である。
また、本発明の重合体は、必要に応じて添加剤、例え
ば紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤などを含んでいて
もよい。
本発明の重合体は、高い屈折率、例えば1.55以上、好
ましくは1.57、より好ましくは1.60以上の屈折率(nD
を有する。又、分散も低く、アッベ数(υ)は35以
上、好ましくは39以上、より好ましくは40以上である。
本発明の重合体は、高屈折率及び低分散であり、かつ
耐衝撃性、耐候性、耐熱性に優れ光学歪もないことか
ら、種々の光学製品の材料として用いることができる。
例えば本発明の重合体により、レンズ、特に眼鏡レン
ズ、カメラレンズ、プリズム、導波路、光ファイバー、
情報記録媒体用基板等を提供することができる。本発明
の重合体からなる眼鏡レンズとフレームから構成される
メガネは、そのレンズが優れた光学特性及び物理特性を
有することから、度数が弱い場合は勿論のこと度数が強
い場合でも軽量でしかも審美的にも優れたものである。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(物性の評価) 実施例及び比較例において得られた重合体の物性評価
は以下の様にして行なった。
屈折率(nD)とアッベ数(υ): アタゴ社製アッベ屈折率計3Tを用いて20℃にて測定し
た。
外 観: 肉眼により観察した 耐候性: サンシャインカーボンアークランプを装備したウエザ
ーメーターにレンズをセットし200時間経過したところ
レンズを取り出し、試験前のレンズと色相を比較した。
評価基準は変化なし、(○)、わずかに黄変(△)、黄
変(×)とした。
耐熱性: リガク社製TMA装置により0.5mmφのピンを用いて10gf
の荷重でTMA測定を行ない、得られたチャートのピーク
温度により評価した。
光学歪: シュリーレン法による目視観察を行なった。歪の無い
ものを○、歪みのあるものを×とした。
耐衝撃性: 中心厚2mmのレンズについてFDA規格に従いテストし
た。合格したものを○、そうでないものを×とした。
(実施例1) 2,5−ビス(アクリロイルオキシエチルチオメチル)
−1,4−ジチアン(表1中でT−1と表示:一般式
〔2〕において、n=2、R1=水素、R2=水素)100重
量部とアゾビスジメチルバレロニトリル0.5重量部との
混合物を上型と下型及びガスケットによって構成される
レンズ成形型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5
時間、さらに120℃で3時間加熱し重合させプラスチッ
クレンズを得た。得られたプラスチックレンズの諸物性
を表1に示す。
表1から、本実施例1のプラスチックレンズは無色透
明であり、屈折率は1.62と高く、アッベ数も40と高いも
のであり、耐候性、耐衝撃性、耐熱性(114℃)に優
れ、光学歪も無いものであった。
(実施例2〜10) 表1に示したモノマー組成物を使用した以外は実施例
1と同様の操作を行ない、プラスチックレンズを得た。
これらのプラスチックレンズの諸物性を実施例1のプラ
スチックレンズの諸物性と共に表1に示した。表1か
ら、本実施例2〜10のプラスチックレンズは無色透明で
あり、屈折率は1.57〜1.62と高く、アッベ数も39〜45と
高いものであり、耐候性、耐衝撃性、耐熱性(111〜129
℃)に優れ、光学歪も無いものであった。
(比較例1) m−キシリレンジイソシアネート43.5重量部とペンタ
エリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネー
ト)56.5重量部とジブチルスズジラウレート0.05重量部
との均一混合物をレンズ成形型に注入し、50℃で10時
間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱し
重合させプラスチックレンズを得た。得られたプラスチ
ックレンズの諸物性を表1に示す。
表1から、本比較例1のプラスチックレンズは無色透
明で耐衝撃性に優れているものの耐熱温度が86℃と低く
光学歪も観測された。
(比較例2、3) 表1に示したモノマー組成物を使用した以外は実施例
1と同様の操作を行ない、プラスチックレンズを得た。
これらのプラスチックレンズの諸物性を比較例1のプラ
スチックレンズの諸物性と共に表1を示した。
表1から比較例2のプラスチックレンズは光学歪はな
く、耐衝撃性に優れているものの淡黄色であり、耐候性
に劣るものであった。また、比較例3のプラスチックレ
ンズは無色透明で光学歪はないが、耐候性、耐衝撃性に
劣るものであった。
BZMA;ベンジルメタクリレート V−65;アゾビスジメチルバレロニトリル XDI;m−キシリレンジイソシアナート PTMP;ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプ
ロピオネート) PIN;ポリイソプロペニルナフタレン DVB;ジビニルベンゼン Br3PMA;2,4,6−トリブロモフェニルメタクリレート DBTDL;ジブチルスズジラウレート LPO;ラウロイルパーオキシ 合成例1(化合物T−2の合成) 500mlの三ツ口フラスコに2,5−ビス(ヒドロキシエチ
ルチオメチル)−1,4−ジチアン16.2g、テトラヒドロフ
ラン200ml、トリエチルアミン10.9g、ヒドロキノンモノ
メチルエーテル50mgを仕込み、0℃で撹拌しながら、メ
タクリル酸クロライド11.3gを30分間で滴下した。滴下
終了後、更に同温度で3時間撹拌を続けた後、生成した
トリエチルアミン塩酸塩をろ過した。テトラヒドロフラ
ンを留去し、得られた反応生成物をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィにより、2,5−ビス(メタクリロイルオ
キシエチルチオメチル)−1,4−ジアチン(化合物T−
2)19.1gを得た。尚、生成物は機器分析により固定し
た。
合成例2〜4(化合物T−1、T−3、T−4の合成) 合成原料としてアクリル酸クロライド及び/又は2,5
−ビス(ヒドロキシエチオメチル)−2,5−ジメチル1,4
−ジチアンを用い、合成例1と同様にして化合物T−
1、T−3及びT−4を合成した。
〔発明の効果〕
上記の実施例及び比較例からも明らかなように、本発
明の重合体は、無色透明で高屈折率、低分散(高アッベ
数)であり、かつ耐衝撃性、耐候性、耐熱性に優れてお
り、さらに光学歪もなく、光学製品用として総合的に優
れた性能を有し、眼鏡レンズ、カメラレンズ、プリズ
ム、導波路、光ファイバー、情報記録媒体用基板等に好
ましく用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08F 20/00 - 20/40 C08F 120/00 - 120/40 C08F 220/00 - 220/40 CAS ONLINE

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1種又は2種以上の下記一般式〔1〕: (式中、nは1〜4の整数であり、R1は水素原子又はメ
    チル基であり、R2は水素原子又はメチル基である) で示される単位30〜100重量%及び1種又は2種以上の
    式 R3 (式中、R3はラジカル重合性モノマー由来の残基を示
    す) で示される単位0〜70重量%からなり、屈折率が1.55以
    上であり、かつアッベ数35以上である重合体。
  2. 【請求項2】請求項(1)記載の一般式〔1〕で示され
    る単位を1種又は2種以上含有する光学製品用重合体。
  3. 【請求項3】光学製品がレンズである請求項(2)記載
    の重合体。
  4. 【請求項4】請求項(1)又は(2)に記載の重合体か
    らなるレンズとメガネフレームとからなるメガネ。
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