JP2792095B2 - 高強度窒化けい素焼結体の製造方法 - Google Patents

高強度窒化けい素焼結体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、安価な焼結助剤を使用して高強度の窒化け
い素焼結体を得ることのできる窒化けい素焼結体の製造
方法に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
近年、窒化けい素焼結体は高温用途における構造材料
などとして注目されており、かかる用途には高温で曲げ
強度等の機械的特性が劣化することが可及的に防止され
た焼結体が望まれている。
この窒化けい素焼結体を得る場合、窒化けい素(Si3N
4)は自己焼結性に乏しいため、焼結助剤を配合して焼
結することが一般的である。この焼結助剤としては、従
来より酸化マグネシウム(MgO)などの金属酸化物が用
いられているが、最近では酸化イットリウム(Y2O3)な
どの希土類元素酸化物も用いられるようになってきてい
る(特公昭60−58191号公報等)。
これらの焼結助剤は、焼結過程でSi3N4粒子界面に溶
融相を形成して焼結を促進するものであるが、酸化マグ
ネシウム等の金属酸化物を焼結助剤として製造した焼結
体は、この粒子界面溶融相が比較的低温(1550℃程度)
で形成されるために緻密化が促進されやすい反面、1300
℃程度の高温での強度が常温での30%にも満たない程度
に激減してしまい、高温用途における構造材料として使
用し難いものである。
一方、希土類元素酸化物を焼結助剤として用いた場
合、粒子界面溶融相が比較的高温(1600〜1750℃)で形
成されるために、高温での強度が酸化マグネシウムを配
合した場合よりも高い値を示すものの、密度が高い緻密
な焼結体を得ることが困難になる。また、希土類元素酸
化物を使用する場合、例えばイットリウム酸化物として
高純度精製物を使用しているが、かかる高純度精製物
は、その精製費用が効果となるため、コストが非常に高
く、このため窒化けい素焼結体の製造コストが高くなる
という問題がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高温での機
械的特性の劣化が少なく、しかも緻密な焼結体を得るこ
とができると共に、焼結助剤として安価なイットリウム
コンセントレートを用いることにより焼結体の製造コス
トを低減化し得る窒化けい素焼結体の製造方法を提供す
ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段及び作用〕
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた
結果、窒化けい素粉末にイットリウムを酸化物として50
〜70重量%含有し、かつジスプロシウム酸化物、エルビ
ウム酸化物及びイッテルビウム酸化物を含有する希土類
元素酸化物の混合体であるイットリウムコンセントレー
トを焼結助剤として配合し、焼結した場合、得られる焼
結体の密度が高く緻密であり、しかも高温での機械特性
の劣化が少なく、高温用途における構造材料として好適
に使用できると共に、上記焼結助剤のコストを低減でき
るので、窒化けい素焼結体のコストを低減し得ることを
知見した。
即ち、希土類元素酸化物(Y2O3,Dy2O3,Er2O3等)は、
希土類元素自体の化学的性質が近似しているために各元
素に分離することは極めて困難であり(例えば、特公昭
45−28292号公報)、高純度のイットリウム酸化物の製
造では、中間体として濃縮した希土類元素酸化物の混合
体であるイットリウムコンセントレート(イットリウム
を酸化物として50〜70%含有する)を得、これを他の希
土類元素酸化物から分離してイットリウム酸化物を得る
ため、精製費用は必然的に高価になるものであるが、本
発明者はこの分離精製前のイットリウムコンセントレー
トを焼結助剤として使用した場合、意外にも高価なイッ
トリウム酸化物を単独で配合した場合に比較して、上述
したように性能的により優れた焼結体が得られること、
しかも上記イットリウムコンセントレートが安価なた
め、焼結体のコストを低減し得ることを見い出し、本発
明をなすに至ったものである。
なお、これまで希土類酸化物を焼結助剤として使用す
る提案は数多くあり、例えばセリウム、サマリウムを除
いた軽希土類元素混合酸化物に関するもの(特公昭60−
58191号公報)があるが、酸化イットリウムを濃縮した
希土類元素酸化物の混合体であるイットリウムコンセン
トレートを焼結助剤として使用することは本発明者の新
知見に係るものである。
従って、本発明は、窒化けい素粉末にイットリウムを
酸化物として50〜70重量%含有し、かつジスプロシウム
酸化物、エルビウム酸化物及びイッテルビウム酸化物を
含有する希土類元素酸化物の混合体であるイットリウム
コンセントレートを焼結助剤として配合し、焼結するこ
とを特徴とする高強度窒化けい素焼結体の製造方法を提
供する。
この場合、上記イットリウムコンセントレートは、通
常、イットリウム酸化物以外にジスプロシウム酸化物、
エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物及びその他の
希土類元素酸化物を含有することが好ましい。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の高強度窒化けい素焼結体の製造方法の原料と
なる窒化けい素粉末には特に制限はなく、通常の市販さ
れているものを使用でき、α型、β型の比率も問わな
い。
本発明は高強度窒化けい素焼結体を得るために、窒化
けい素粉末にイットリウムを酸化物として50〜70重量%
含有し、かつジスプロシウム酸化物、エルビウム酸化物
及びイッテルビウム酸化物を含有する希土類元素酸化物
の混合体であるイットリウムコンセントレートを焼結助
剤として配合する。この場合、イットリウムを酸化物と
して50重量%に満たない量で含有すると、高強度の焼結
体が得られず、また70重量%を超えると精製が必要とな
り、焼結助剤のコストが高くなる上、高強度の焼結体が
得られない。
上記希土類元素酸化物の混合体中のイットリウム以外
の希土類元素酸化物は、ジスプロシウム(Dy)を酸化物
として5〜15%、特に7〜13%、エルビウム(Er)を酸
化物として2〜10%、特に3〜8%、イッテルビウム
(Yb)を酸化物として2〜10%、特に3〜7%、その他
の希土類酸化物を20%以下、特に5重量%以下の割合と
することができ、例えばイットリウム・ジスプロシウム
・エルビウム・イッテルビウム複酸化物、或いはイット
リウム酸化物,ジスプロシウム酸化物,エルビウム酸化
物,イッテルビウム酸化物の混合物の形で使用し得、こ
れにより各酸化物の相乗作用で焼結の促進、焼結体の強
度を向上させることができる。具体的には、高純度酸化
イットリウム製造時の中間原料となるイットリウム濃縮
物(イットリウムコンセントレート)を使用することが
できる。
上記イットリウムを酸化物として50〜70重量%含有す
る希土類元素酸化物の混合体であるイットリウムコンセ
ントレートの配合量は、窒化けい素粉末に混合した場合
1〜30%、特に2〜10%とすることが好ましい。配合量
が1%に満たないと焼結の促進、焼結体の強度を向上さ
せる効果が現れない場合があり、一方、30%を超えて配
合しても配合量に見合う程の効果はなく、かえって焼結
体の強度が低下する場合がある。
上記希土類元素酸化物の混合体であるイットリウムコ
ンセントレートを窒化けい素粉末に配合、混合する方法
に限定はなく、ボールミル等の混合方法で常法に従って
混合することができ、また該混合物は例えば、粉末プレ
スで成形し、これを更に1ton/cm2の冷間静水圧プレス
(CIP)等の方法で常法に従い所定の形状に成形するこ
とができる。
この成形品は、常法に従っ焼結することにより、本発
明の高強度窒化けい素焼結体を得ることができる。この
場合、焼結条件は特に制限されず、例えば1〜10kgf/cm
2の窒素ガス雰囲気下で1700〜1850℃の温度条件におい
て焼結することができる。
このようにして得られる焼結体は、密度が高く緻密で
あり、常温で曲げ強度等の機械的強度が良好である上、
1000℃以上の温度においても機械的強度の低下が少ない
ため、高温用途における構造材料などに好適に使用し得
るものである。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明方法は、窒化けい素粉末
にイットリウムを酸化物として特定の割合で含む希土類
元素酸化物の混合体であるイットリウムコンセントレー
トを焼結助剤として配合し、焼結するようにしたことに
より、密度が高く、緻密で高温での機械的特性が劣化が
少ない焼結体を得ることができ、しかも、安価な原料を
焼結助剤として使用できるので焼結体のコスト低減を図
ることができるものである。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明
するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではな
い。
〔実施例1〕 窒化けい素粉末KSN−10(信越化学工業(株)製、α
型比率92wt%)に、下記組成のイットリウムコンセント
レート 組成 Y2O3 65.0wt% Dy2O3 9.5wt% Er2O3 5.2wt% Yb2O3 4.7wt% その他希土類酸化物 15.6wt% 100.0wt% を7%配合し、ボールミルで十分混合し、成形した後、
1650℃、1750℃及び1850℃で焼結を行い、焼結体を得
た。次に、得られた焼結体密度を測定した。結果を図面
に示す。また、上記1850℃で焼結(1時間)した焼結体
について室温及び1000℃での曲げ強度を測定した。結果
を第1表に示す。
〔比較例1〕 実施例1と同じ窒化けい素粉末KSN−10に純度99.9%
のY2O3を同じく7%配合し、同様に1650℃、1750℃及び
1850℃で焼結を行った焼結体の密度を測定した。結果を
図面に併記する。また、1850℃で焼結した焼結体につい
て同様に室温及び1000℃での曲げ強度を測定した。結果
を第1表に併記する。
図面及び第1表の結果から、高純度の単一の希土類酸
化物を使用する場合と比較して、希土類酸化物製造中間
濃縮物を焼結助剤とした実施例は、焼結体の密度が高
く、緻密化がより促進されていると同時に、曲げ強度も
向上し、特に1000℃以上での高温曲げ強度の低下が少な
く、耐高温性の改良が認められる。
〔実施例2、比較例2〕 窒化けい素粉末KSN−10SP(信越化学工業(株)製、
α型比率92wt%)に第2表に示す組成のイットリウムコ
ンセントレートを焼結助剤として配合し、プラスチック
ライニング製のボールミルにて24時間混合した。この混
合粉を5mm×6mm×60mmの板状に1ton/cm2の静水圧プレス
で成形した。
次いで、これらの成形品を窒素ガス雰囲気下において
1850℃の温度で焼結を行った。得られた焼結体を3mm×4
mm×40mm板状に研削加工し、この板状テストピースの密
度及び室温と1000℃での曲げ強度を測定した。結果を第
2表に併記する。
【図面の簡単な説明】
図面は、焼結助剤としてイットリウム酸化物を単独で配
合した場合とイットリウムコンセントレートを配合した
場合の焼結温度と窒化けい素焼結体密度との関係を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−274656(JP,A) 特開 昭59−78977(JP,A) 特開 昭63−89462(JP,A) 特開 昭62−207769(JP,A) 特開 昭63−100067(JP,A) 特開 昭59−174577(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 35/58

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化けい素粉末にイットリウムを酸化物と
    して50〜70重量%含有し、ジスプロシウム酸化物、エル
    ビウム酸化物及びイッテルビウム酸化物を含有する希土
    類元素酸化物の混合体であるイットリウムコンセントレ
    ートを焼結助剤として配合し、焼結することを特徴とす
    る高強度窒化けい素焼結体の製造方法。
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