JP2741479B2 - 高精度緩み止めナット - Google Patents

高精度緩み止めナット

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は例えば工作機械の主軸等
回転軸に軸受の内輪を固定する高精度の緩み止めナット
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、回転軸に軸受を固定するナット
は、起動停止時の慣性や振動等によって緩み易いため、
緩み止め対策を施したナットを用いる必要がある。この
ナットの緩み止めとして最も一般的なものに図3に示す
ような回り止め座金101を用いる方法がある。他に図
4に示すようにナット102に溝部102aを設けて、
ボルト103にて締めつけることによって緩み止めを行
う方法がある。
【0003】また、実公昭59−7609号で公知の技
術に、図5に示すような緩み止めナットがある。このも
のはナット104に二本の切り割り部104aを軸心と
直角な線に対して対称に設けてボルト105によりこれ
を締めつけることにより緩み止めを行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べた回
り止め座金を用いる方法は、分解再組立を行うとバラン
スが崩れて回転振動が出る場合があるという問題を有
し、溝102aを有するナット103を用いる方法は、
緩み止め用の締付ボルト103の締め付け力が大きい
と、ナットや軸が塑性変形してしまうため、締め付け力
の管理が難しい。
【0005】また実公昭59−7609号の技術は、同
様にボルト105の締め付け力の管理が難しいうえ、ボ
ルト105の数が二本と少ないため、ナット端面に振れ
が出たり、回転軸の肉厚が薄いと軸が変形するという問
題を有している。
【0006】本発明は従来の技術の有するこのような問
題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところ
は、ボルトを締めきった状態で所定の緩み止め力が作用
し、分解再組立を行ってもバランスが崩れる心配がな
く、端面の振れや、軸を歪ませることのない高精度の緩
み止めナットを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明における高精度緩み止めナットは、回転軸に軸
受を固定する高精度な緩み止めナットであって、前記回
転軸のねじ部に螺合され前記軸受の内輪を軸方向に押圧
固定する第1ナットと、該第1ナットの反軸受側端面に
円周上等間隔かつ軸方向に設けられたねじ穴と、前記第
1ナットに対して所定のしめ代相当の隙間を有して前記
回転軸のねじ部に螺合される第2ナットと、該第2ナッ
トに設けられ前記隙間を有する前記第1ナットとの位相
関係において前記ねじ穴に対応する円周上等間隔のボル
ト穴と、前記第1ナットと第2ナットを隙間なく固定す
る複数本の締めつけボルトとを含んでなり、第2ナット
が第1ナットに密着したとき緩み止め用の所定のしめ代
が得られるようにしたものである。
【0008】
【作用】緩み止めナットで軸受(内輪)を回転軸に組付
けるとき、先ず第1ナットで所定通り内輪を回転軸に締
めつけたのち、第2ナットを螺合して第1ナットとの間
に理想の緩み止め力が生じる締め代相当の隙間が得られ
るねじ穴とボルト穴の位相位置にして、締付ボルトで第
1ナットと第2ナットを隙間なく締めつけ緩み止め力を
付与する。
【0009】
【実施例】以下本発明の実施例を図面にもとづいて説明
する。主軸台1に複数の軸受2により回転可能に支持さ
れる主軸(回転軸)3には緩み止めナット4により軸受
2の内輪2aが軸方向に押圧固定されている。この緩み
止めナット4は厚い第1ナット4Aと、それより薄い第
2ナット4Bにより形成され、第1ナット4Aにはねじ
穴4aが円周上等間隔例えば円周上30°毎に12個反
軸受側から軸方向に刻設されており、第2ナット4Bに
はねじ穴4aに対応するボルト穴4bが、例えば円周上
60°毎に6個穿設されている。そして複数の締付ボル
ト5により両者を隙間なく締めつけることにより所定の
緩み止め力が得られるようになっている。
【0010】この緩み止め力を得るための第1ナット4
Aと第2ナット4Bの関係を更に詳しく説明すると、め
ねじ加工前の第1,第2ナット4A,4Bの生地をボル
ト5にて密着固定した状態で、例えば旋盤等のチャック
に把持してめねじ切り加工をする。次いで組立に際し第
1ナットと第2ナットを分解して最初に第1ナット4A
のみを主軸3のねじ部3aに螺合し、所定通りに内輪2
aを押圧固定する。
【0011】次に第2ナット4Bをねじ部3aに螺合
し、めねじ切り加工時より30°手前に位相をずらせ
て、ボルト5にて軽く均一に仮締めする(図2)。この
とき第2ナット4Bとねじ部3aのあそびの量だけ所定
の隙間(例えばねじのピッチ1.5mmのとき0.12
5mm)より小さい隙間δとなる。
【0012】この隙間量δをシックネスゲージ6等で測
定し、例えばこの時の測定値が0.05mmとする。次
いで予め用意したマスタテーブルより理想の締め代の値
を求め、例えばこの理想の締め代が0.1mmとする
と、第2ナット4Bの対応端面(図で右端面)を平面研
削盤等で0.05mm取り除いたのち、30°位相をず
らした状態で締付ボルト5により本締めすることで、理
想の緩み止め力を得ることができる。尚、隙間δが偶然
にも理想の締め代の値と同一又は近似の値のときには、
第2ナット4Bの平面研削加工の必要はない。
【0013】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているの
で、次に記載する効果を奏する。第1ナットと第2ナッ
トを理想の締め代を持たせてボルトにより密着させるこ
とで緩み止め力が得られるようにしたので、分解再組立
時のバランスの崩れがなく、緩み止めボルトの締め付け
力を管理することなく、軸の変形や端面振れの発生しな
い高精度の緩み止めナットを簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の高精度緩み止めナットを用いた軸受
部の図で、(a)は正面断面図、(b)は側面図であ
る。
【図2】ボルトを仮締めして隙間を測定する状態を示す
図である。
【図3】従来の技術の回り止め座金を用いる緩み止め方
法を示す図である。
【図4】従来の技術の溝部をボルト締めする方法の緩み
止めナットの図である。
【図5】従来の技術の切り割り部をボルト締めする方法
の緩み止めナットの図である。
【符号の説明】
3 主軸(回転軸) 2 軸受 2a
内輪 4 緩み止めナット 4A 第1ナット 4B
第2ナット 4a ねじ穴 4b ボルト穴 5 締
付ボルト

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸に軸受を固定する高精度な緩み止
    めナットであって、前記回転軸のねじ部に螺合され前記
    軸受の内輪を軸方向に押圧固定する第1ナットと、該第
    1ナットの反軸受側端面に円周上等間隔かつ軸方向に設
    けられたねじ穴と、前記第1ナットに対して所定のしめ
    代相当の隙間を有して前記回転軸のねじ部に螺合される
    第2ナットと、該第2ナットに設けられ前記隙間を有す
    る前記第1ナットとの位相関係において前記ねじ穴に対
    応する円周上等間隔のボルト穴と、前記第1ナットと第
    2ナットを隙間なく固定する複数本の締めつけボルトと
    を含んでなり、第2ナットが第1ナットに密着したとき
    緩み止め用の所定のしめ代が得られるようにしたことを
    特徴とする高精度緩み止めナット。
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