JP4330867B2 - 転がり軸受け用緩み止めナット - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は例えば工作機械やスリッター装置等の回転軸の所定の軸段部に組み込まれている転がり軸受けの内輪をその所定の軸段部に締着するのに用いられる転がり軸受け用緩み止めナットに関し、特に「回転軸においてその回転軸の軸心と直角な面内にあって工具等の組み込み基準面となる軸段部の側面の軸心方向への振れ」(以下、「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」と記述する)の精度が極めて高く求められる装置に組み込まれている転がり軸受けの内輪をその所定の軸段部に締着するときに用いて有効な転がり軸受け用緩み止めナットに関するものである
【0002】
【従来の技術】
このような転がり軸受け用緩み止めナットは中空状円板のナット本体の内周面に雌ねじを有し、回転軸に設けられた雄ねじに螺合され、少なくとも1個、或いは、複数個並べられた転がり軸受けの内輪を回転軸に設けられている軸段部側面に押し付けてその転がり軸受けを回転軸の所定の軸部に締着固定するものである。この転がり軸受け用緩み止めナットの従来技術としては、特開平7−269550号公報、実開平3−123121号公報、実開昭56−40219号公報、に記載されたものが知られている。
【0003】
前記の特開平7−269550号公報に示されている転がり軸受け用緩み止めナットは図7に示すように、厚い第1ナット50と薄い第2ナット51によって構成されている転がり軸受け用緩み止めナット1であり、先ず第1ナット50で所定通り転がり軸受け21の内輪を回転軸20に設けられている軸段部に締め付けた後、第2ナット51を螺合して第1ナット50との間に理想の緩み止め力が生じる締め代相当の隙間δが得られるようにねじ孔11とボルト孔52の位相を所定角度ずらした状態で締付けボルト53を取り付け、その後締付けボルト53で第1ナット50と第2ナット51を隙間なく締付けて緩み止め力を付与するようにしたものである。
【0004】
また実開平3−123121号公報に示されている転がり軸受け用緩み止めナットは図8に示すように、円筒状の緩み止めナット本体2の内周面5及び外周面6に内周溝54及び外周溝55を設けるようにした転がり軸受け用緩み止めナット1であり、内周溝54が押し付け側側面3より自由側側面4に近い位置で外周面6の近くまで深く切り込まれるようにし、また外周溝55が内周溝54に隣接した位置で内周面5の近くまで深く切り込まれるようにすると共に、緩み止めナット本体2の軸心方向に緩み止めナット本体2を貫通するボルト孔52を複数個穿孔して複数個のボルト孔52がそれぞれ外周溝55及び内周溝54と交差するように構成し、締付けボルト53を締め付けることによって緩み止めを行なうようにしたものである。
【0005】
次に前記の実開昭56−40219号公報に示されている転がり軸受け用緩み止めナットは図9に示すように、軸方向に直角な環状溝59をねじ部に設けて押し付け側側面の方の部分60と自由側側面の方の部分61とにねじ部を分離した転がり軸受け用緩み止めナット1であり、押し付け側側面の方の部分60のねじ長さが自由側側面の方の部分61のねじ長さより短くなっており、自由側側面の方の部分61に環状溝59まで貫通する複数のねじ孔11を有し、この各ねじ孔11に螺合された押しねじ12の先端部を押し付け側側面の方の部分60の環状溝59の側面に当接させて緩み止めを行なうようにしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7及び図8に示した従来の転がり軸受け用緩み止めナット1はいずれもが緩み止め効果は十分に発揮されるが、転がり軸受け21の内輪の側面を緩み止めナットの側面の円周全体で押し付けるようになっているので回転軸の雄ねじと緩み止めナットの雌ねじが如何に精度良く仕上げ加工されていたとしても双方の側面間での微小な偏当たり状態を回避することは不可能であり、また転がり軸受けの内輪側面への押し付け力を円周方向の所定の位置で微調整することもできないので回転軸の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」をサブμmオーダーで調整することは到底不可能であった。
【0007】
また図9に示した従来の軸受け用緩み止めナット1は円周等配位置に設けられている複数の押しねじ12によってその緩み止めナットの押し付け側側面3を転がり軸受け(図示せず)の内輪の側面へ押し付けるようになっているので、側面間での荷重の調整は比較的簡単に行なうことが出来るが、緩み止めナットの押し付け側側面の方の部分60は円周方向で一様な肉厚で連続している中空円板状に近い形となっているので1つの押しねじ12を押し込むことによってその押しねじ12の両側にある押しねじ部分も倣って押し込み方向に若干動くことになり、それら両側の押しねじ部に狂いが生じ、それら両側の押しねじの再度の締付け調整を余儀なくされ、その繰り返しとなってしまうので、サブμmオーダーで回転軸の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」を調整しようとするときには各止めねじ12を何度も調整し直さなければならず、調整作業はかなり煩雑なものとなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、回転軸の所定の軸段部に組み込まれた転がり軸受けの内輪を締着した後の緩み止め効果が十分に発揮され、その上、軸心と平行な方向への押し込み力の調整をそれぞれの部分毎に行なうことが出来、しかも他の調整部分には影響を与えることのない形状とされ、それ故に容易に回転軸の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」をサブμmオーダーで調整することが出来るようになる転がり軸受け用緩み止めナットを提供することを目的としている。また、この転がり軸受け用緩み止めナットを用いた極めて高精度のスリッター装置を提供することをも目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の目的を達成するためになされたものであり、内周面に雌ねじが設けられている中空状円板の一方の側面が押し付け側側面とされ、他方の側面が自由側側面とされている緩み止めナット本体からなる転がり軸受け用緩み止めナットにおいて、前記緩み止めナット本体にその緩み止めナット本体の軸心に対して直角な面内でその緩み止めナット本体の外周面側より内周面側に延びて内周面を突き抜けるスリットを円周方向に複数個設けてやることによって各スリットの幅方向の両側を枠板状の連結部とし、その両側の連結部のうち押し付け側側面の方の押し側連結部を変形可能な肉厚とし、自由側側面の方の自由側連結部は押し側連結部よりも厚肉とすると共に、各自由側連結部に前記緩み止めナット本体の軸心と平行に少なくとも1個のねじ孔を設け、そのねじ孔に押しねじを備えた転がり軸受け用緩み止めナットとする。
【0010】
本発明の転がり軸受け用緩み止めナットによれば、緩み止めナット本体の外周面側より内周面側に抜けるスリットを円周方向に複数個設け、そのスリットの幅方向の両側を枠板状の連結部としたので、各連結部は円周方向で隣り合うスリットとスリットとの間に残された本体肉部によって関係が断たれ、それぞれの連結部の変形は両隣りの連結部には影響を及ぼさない形状となっている。
【0011】
そして、そのスリットの両側の連結部のうち押し側連結部をスリット毎にそれぞれ独立して変形可能な厚さとし、他方の自由側連結部はそれよりも厚肉としてその自由側連結部に設けられたねじ孔に押しねじを螺合して押し側連結部を内側から押すように構成したことにより各押し側連結部にはそれぞれ独立して押し付け力を与えることが出来るので、回転軸の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」の調整がサブμmオーダーで可能になる。また、緩み止め効果も十分に得ることが出来る。また、押し付け側側面の外周側に逃げ段部を設けてあるので、転がり軸受けと緩み止めナットの間にスペーサを介在させない場合でも、転がり軸受けの玉保持器や外輪側面への接触を回避して転がり軸受けの内輪側面に当接させて「組込み軸段部側面のスラスト振れ」を取り除くことができるようにした。
【0013】
また、本発明の転がり軸受け用緩み止めナットをスリッター装置の上下の丸刃回転軸に用いれば、上下の回転軸の一方の回転軸に組み込まれている円筒状の丸刃の刃先の振れと他方の回転軸に組み込まれている薄丸刃の刃先の振れとをサブμmオーダーに抑えることが出来るようになるので、映像用フイルムやコンピューターのバックアップ用磁気テープ等のようにスリット精度がμmオーダーで要求されるウエブ類をスリットするための超精密スリッター装置が得られるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について図1乃至図3を参照しながら説明する。図1は本発明を適用してなる転がり軸受け用緩み止めナットの一実施の形態を示す正面図、図2は図1の側面図で一部を断面で示した図、図3は図2におけるA−A矢視の断面図である。図において、内周面5に雌ねじ5aが設けられている中空円板状の緩み止めナット本体2は一方の側面が転がり軸受けの内輪の側面、或いは間に介在しているスペーサの側面を押すための押し付け側側面3とされ、他方の側面が自由側側面4とされている。
【0015】
緩み止めナット本体2にはその緩み止めナット本体2の軸心に対して直角な面内で外周面6側より内周面5側に延びてその内周面5を突き抜けるスリット7がスリット7とスリット7との間に所定幅の本体肉部10を残して円周方向に複数個設けられており、スリット7によってそのスリット7の幅方向の両側には枠板状の押し側連結部8と自由側連結部9が形成されている。また、そのスリット7は押し側連結部8が変形可能な肉厚となり、自由側連結部9が押し側連結部8より厚肉となるように設けられている。
【0016】
そして、各自由側連結部9には緩み止めナット本体2の軸心と平行にねじ孔11が設けてあり、そのねじ孔11には押し側連結部8の内側の側面を押すための押しねじ12が取り付けられており、緩み止めナット本体2と所定の数の押しねじ12とによって転がり軸受け用緩み止めナット1とされている。また、緩み止めナット本体2の外周面6には緩み止めナット本体2を回し締めするための切り溝13が設けてあり、押し付け側側面の外周側には転がり軸受けの玉保持器や外輪側面への接触を回避するための逃げ段部14が設けてある。
【0017】
このように構成された転がり軸受け用緩み止めナット1を図4に示すように回転軸20に設けられている雄ねじ20bに組み込んでやり、回転軸20の所定の軸段部に組み込まれている転がり軸受け21の内輪の側面、或いは間にスペーサ22が介在されているときにはそのスペーサ22の側面に対して緩み止めナット本体2の外周に設けられている切り溝13を利用して普通の方法で押し付けてやる。このとき、緩み止めナット本体2の自由側連結部9に取り付けられている押しねじ12の先端は押し側連結部8の内側側面に接触しないように少し離しておく。
【0018】
次に、各押しねじ12を押し側連結部8の内側側面に接触させた後、各押しねじ12を所定の量だけねじ込んでやることにより押し側連結部8に力を加えると同時に自由側連結部9を反力によってスリット7が広がる方向に引いてやり、押し側連結部8の雌ねじと自由側連結部9の雌ねじとの張りによって、緩み止めナット本体2を回転軸20の雄ねじ20bに強力に固定して回り止め効果を得る。その後回転軸20の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」S−Sをダイヤルゲージ等の測定器具によって測定しながらそのスラスト方向の振れを修正するのに必要とされる部分の押しねじ12を必要な量だけ押し込みながら「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」を取り除いてゆく。
【0019】
ここで、上述した実施の形態においては、緩み止めナット本体2の円周方向の4箇所にスリット7を設けて押し側連結部8及び自由側連結部9をそれぞれ4個とし、それぞれの自由側連結部9には2個の押しねじ12を備えた転がり軸受け用緩み止めナット1について説明したが、円周方向でのスリット7の数や自由側連結部9に設けられる押しねじ12の数はこの実施の形態に限定されるものでなく、例えば図5に一部断面図で示すように緩み止めナット本体2の円周方向の6箇所にスリット7を設け、各自由側連結部9にはそれぞれ1個の押しねじ12を備えるようにした転がり軸受け用緩み止めナット1とすることも出来る
【0020】
図6は、前記の転がり軸受け用緩み止めナット1を上下の回転軸に用いたスリッター装置30の要部を示す図であり図において上側基準プレート37の所定の位置にボルトにより固定されている左右の上軸受け箱39a、39b、にはそれぞれスリーブユニット41a、41b、が組み込まれており、各スリーブユニット41a、41b、に内嵌されている少なくとも各1個の転がり軸受け21、21によって上回転軸31が回転自在に支持されており、その上回転軸31の刃物取り付け軸部31aには薄丸刃33とその薄丸刃33を軸心方向の一方向に付勢するための皿ばね34とを段部に嵌装している刃物ホルダー36が所定の数だけ同一方向を向いて連続して組み込まれている。また、同様に下側基準プレート38の所定の位置にボルトにより固定されている左右の下軸受け箱40a、40b、にはそれぞれスリーブユニット42a、42bが組み込まれており、各スリーブユニット42a、42b、に内嵌されている少なくとも各1個の転がり軸受け21,21によって下回転軸32が回転自在に支持されており、その下回転軸32の刃物取り付け軸部32aには一方の側面の外周側に逃げ段部43を備えている円筒状の丸刃35が刃先を同一方向に向けて所定の数だけ連続して組み込まれ、この円筒状の丸刃35の刃先と薄丸刃33の刃先とによってフイルム等の被切断ウエブを所定の条数でスリットすることができるようになっている。
【0021】
そして、このスリッター装置30においては各スリーブユニット41a、41b、42a、42b、に内嵌されている転がり軸受け21を上下の各回転軸31、32の所定の組み込み軸段部に締め付け固定するための転がり軸受け用緩み止めナット1として前記した本願第1発明の転がり軸受け用緩み止めナットが用いられ、各回転軸31、32、の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」はサブμmオーダーで調整されている。
【0022】
尚、上下各回転軸31、32、の刃物取り付け軸部31a、32a、に組み込まれる刃物ホルダー36や円筒状の丸刃35の内径、及び刃物押さえユニット44の内径は刃物挿入側(図面上では右側)のスリーブユニット41b、42b、の外径よりも大きい寸法とされているので刃物挿入側の軸受け箱39b、40b、を外すことによって刃物ホルダー36や円筒状の丸刃35の組み込みが行えるようになっている。
【0023】
【発明の効果】
本発明の転がり軸受け用緩み止めナットによれば、回転軸の軸段部に組み込まれている転がり軸受けの内輪を締着した後の緩み止め効果が十分に発揮され、その上軸心と平行な方向への押し込み力の調整がそれぞれの押し側連結部ごとで行なうことが出来、それが他の押し側連結部には影響を及ぼさないので回転軸の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」をサブμmオーダーで調整することが可能になり、回転軸の「工具組み込み軸段部側面のスラスト振れ」の精度を飛躍的に向上させることが出来るようになる。また、この転がり軸受け用緩み止めナットをスリッター装置に組み込まれている転がり軸受けを締着する緩み止めナットとして採用することにより、上下の回転軸に組み込まれている円筒状の丸刃や薄丸刃の刃先のスラスト方向の振れも容易にサブμmオーダーに抑えることが出来るようになるので被切断ウエブのスリット精度をμmオーダーで仕上げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなる転がり軸受け用緩み止めナットの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の側面図で一部を断面で示した図である。
【図3】図2におけるA−A矢視の断面図である。
【図4】本発明を適用してなる転がり軸受け用緩み止めナットを回転軸に組み付けた状態を示す図である。
【図5】本発明を適用してなる転がり軸受け用緩み止めナットの別の実施の形態を示す正面図である。
【図6 】本発明を用いたスリッター装置の一実施の形態を示す概略図である。
【図7】従来の転がり軸受け用緩み止めナットを示す図である。
【図8】従来の転がり軸受け用緩み止めナットを示す図である。
【図9】従来の転がり軸受け用緩み止めナットを示す図である。
【符号の説明】
1 転がり軸受け用緩み止めナット
2 緩み止めナット本体
3 押し付け側側面
4 自由側側面
5 内周面
6 外周面
7 スリット
8 押し側連結部
9 自由側連結部
10 本体肉部
11 ねじ孔
12 押しねじ
30 スリッター装置
31 上回転軸
32 下回転軸
33 薄丸刃
34 皿ばね
35 円筒状の丸刃
36 刃物ホルダー
39a、39b 上軸受け箱
40a、40b 下軸受け箱
41a、41b スリーブユニット
42a、42b スリーブユニット
44 刃物押えユニット
Claims (1)
- 内周面に雌ねじが設けられている中空状円板の一方の側面が押し付け側側面とされ、他方の側面が自由側側面とされている緩み止めナット本体からなる転がり軸受け用緩み止めナットにおいて、前記緩み止めナット本体に該緩み止めナット本体の軸心に対して直角な面内で該緩み止めナット本体の外周面側より内周面側に延びて該内周面を突き抜けるスリットを円周方向に複数個設けてやることによって各スリットの幅方向の両側を枠板状の連結部とし、該両側の連結部のうち前記押し付け側側面の方の押し側連結部を前記スリット毎にそれぞれ独立して変形可能な肉厚とし、前記自由側側面の方の自由側連結部は前記押し側連結部よりも厚肉とすると共に、各自由側連結部に前記緩み止めナット本体の軸心と平行に少なくとも1個のねじ孔を設け、該ねじ孔に押しねじを設け、前記押し付け側側面の外周側に、前記押し付け側側面が前記転がり軸受けの玉保持器や外輪側面への接触を回避して前記転がり軸受けの内輪側面に当接可能になるように、逃げ段部を設けたことを特徴とする転がり軸受け用緩み止めナット。
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JP2002338541A JP4330867B2 (ja) | 2002-11-21 | 2002-11-21 | 転がり軸受け用緩み止めナット |
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