JP2739165B2 - 石壁パネル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄製ネットを張設
した支持枠体の前面に主に不定形の板石からなる石ブロ
ック群を取着した構成よりなり、建物の壁または擁壁に
使用される石壁パネルに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、河川の擁壁等はその表面に主に不
定形の石ブロックを１個ずつ積み上げて構築している。
そこで、近時は積み上げの手間を略いて作業性を向上さ
せるべく、前面に不定形の複数の板石を並設したコンク
リート製の石壁パネルを形成し、該石壁パネルを地面上
に複数並設し、その後側に型枠パネルを配設し、石壁パ
ネルと型枠パネルとの間にコンクリートを打設して構築
するようにしたものが有る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の不定形の石ブロックを１個ずつ積み上げて製
作される石壁パネルは板石とコンクリート板とからなる
ために非常に重量が嵩み取り扱かいにくく、作業がしず
らかった。さらに、経年的にコンクリート板と該コンク
リート板の裏側に打ち込んだコンクリートとの間に隙間
ができ、その中に水が入って結露し、接合面が剥離を起
こし易いといった重大な問題があった。そこで、本発明
は、このような従来技術にみられる課題を解決すべくな
されたもので、軽量化することにより作業性に優れ、ま
た従来のような接合面の剥離を心配する必要のない石壁
パネルを提供することを目的とするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに本発明に係る石壁パネルは、Ｌ型鋼材を方形状に枠
組みすると共に、その前面に鉄筋を網目状に交絡して形
成される鉄製ネットを張設して支持枠体を形成する。そ
して、鉄製ネットの前面に、平面形状が不定形をなす複
数個の板石を壁状に多段に積み重ねた石ブロック群を一
定の間隔離して配設する。前記石ブロック群の各石板
は、その裏面に固着される複数本のアンカーボルトを前
記鉄製ネットの適宜位置に溶接することにより固着され
る。これにより、石壁パネルの軽量化が図られ、取扱か
いが容易となり、また裏側に打ち込んだコンクリートが
支持枠体やアンカーボルトに交絡し、さらに各板石の裏
面によく馴染んで強固に一体接合された石壁パネルが形
成される。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る石壁パネルの
実施の形態を図面と共に説明する。図１は石壁パネルの
前面側の斜視図、図２はその裏面側の斜視図である。図
において１は平面形状が不定形で、しかも大小不揃いに
造られた板石であり、２はこれらの板石１を壁状に多段
に積み重ねて固定させるための支持枠体である。各板石
１の裏面には図３に示されるように適宜位置に斜めに穿
設された盲穴３が複数（通常２〜４個）設けられ、これ
ら盲穴３にアンカーボルト４の基端部を埋め込んで固定
させる。前記支持枠体２は所定の長さ、例えば６００，
９００，１２００，１８００ｍｍのＬ型鋼材を四側辺に
配して、（縦×横）が６００×１８００，９００×１８
００，１２００×１８００ｍｍといった定格寸法の長方
形をなすフレーム５を形成し、このフレーム５の裏面に
鉄製ネット６を固定させる。前記Ｌ型鋼材は（縦×横×
厚さ）が６０×６０×６ｍｍ程度のものを使用し、鉄製
ネット６は直径１２ｍｍ程度の鉄筋を縦横１００ｍｍ程
度の間隙を離して網目状に組み合わせて形成される。

【０００６】前記板石１は適宜の大きさのものを選んで
支持枠体２の前面に配置され、各アンカーボルト４の先
端部を鉄製ネット６に溶接して取着される。この際、各
板石１の裏面と支持枠体２の鉄製ネット６との間は図４
に示すように所要の間隔Ｓ（例えば３０〜５０ｍｍ程
度）離して各アンカーボルト４を鉄製ネット６に固定す
る。ただ、アンカーボルト４と鉄製ネット６の鉄筋の位
置とが離れているときは溶接できないので、図３に示す
ように縦横の鉄筋に対し溶接できるよう補助的に鉄筋６
ａを斜めに溶接してアンカーボルト４に接触させて溶接
し取着される。これにより、支持枠体２の前面に複数の
板石１を積み重ねた石ブロック群７を配設した石壁パネ
ルＰが形成される。なお、鉄製ネット６は、板石１の重
量が嵩むときは鉄骨を網目状に形成しても良い。

【０００７】このように形成される石壁パネルＰは、不
定形で大きさがまちまちの板石１を組み合わせて使い、
工場でしかも熟練した職人でなくても容易に製作するこ
とができる。そして、鉄製ネット６を主体とする支持枠
体２を使用することで、従来のコンクリート板を使った
石壁より軽くて取り扱かい易いものとすることができ
る。

【０００８】図５はこのようにして形成された石壁パネ
ルＰを地面Ｅ上に所定間隔開けて列設配置して擁壁を構
築する一例を示している。この施工例では共に石ブロッ
ク群７の面を外向きにした石壁パネルＰ，Ｐを互いに起
立させ、支持枠体２のフレーム５の所定個所にステーＴ
の一端を溶接し、これらの各ステーＴの他端を地面Ｅの
ほぼ中間位置に打ち込んだ固定金具Ｆに溶接する。そし
て、固定させた石壁パネルＰ，Ｐ間の空間にコンクリー
トを打ち込む。このように打ち込まれたコンクリートは
各石壁パネルＰの各板石１と支持枠体２の鉄製ネット６
の隙間Ｓに充填されて交絡し、さらに各板石１の裏面に
馴染んで強固に接合する。さらに支持枠体２の全体がコ
ンクリートに覆われて錆を生じさせないからフレーム５
や鉄筋に腐敗が起こりにくい。

【０００９】また、石壁パネルＰを上記のように横に複
数・連接させて長い石壁や、縦に複数連接させて高い石
壁を施工するときは、上下に隣り合う支持枠体２の対向
するフレーム５どうしを溶接したり、ボルトで連結した
りすることで強固に連結できる。なお、各フレーム５ど
うしに適宜に連通孔を設けておくと、これらの連通孔に
コンクリートが詰って交絡し、結合を強化させることも
できる。

【００１０】そして、例えば石壁パネルＰを横に連接さ
せる施工に際して、図６に示すように支持枠体２の両側
部に板石１を取り付けない石壁パネルＰ′を使用し、図
７に示すように該各石壁パネルＰ′・・・を複数連接した
後、各石壁パネルＰ′，Ｐ′の境界部分に跨がらせて適
宜の形状や大きさをした板石１を図８に示すように取り
付けるようにすれば、１枚１枚の石壁パネルＰ′は境い
目がわからないようになり、恰も一体の広い面積の石壁
のように施工することができる。

【００１１】また、図９に示すように施工現場で端部の
石壁パネルＰが岩Ｒなどの障害物により据置できないと
きは、その施工現場に合わせて支持枠体２のフレーム５
と鉄製ネット６の一部を切断して除去することで容易に
対応させることができる。

【００１２】さらに、本発明に係わる石壁パネルＰは前
記した全体がフラットな形状のものに限られることはな
い。即ち、図１０に示されるように支持枠体２のフレー
ム５を湾曲させて前面が凸弧状曲面に膨出した形状も簡
単に製作することができるし、逆に凹弧状曲面にも簡単
に形成することができる。これは特に、建築物の壁であ
って、曲面形状の壁の成形に効果的である。

【００１３】図１１乃至図１３は石壁の直交するコーナ
ーを形成するためのコーナーパネルＣが示される。該コ
ーナーパネルＣは例えばＬ型鋼材を（横×縦）が２００
×９００ｍｍの長方形の支持枠体２ａを２組を使って、
図１３に示すように平面Ｌ形に組み合わせ、各支持枠体
２ａ，２ａに前記石壁パネルＰの支持枠体２と同様に縦
横１００ｍｍの間隔で鉄筋を組んだ鉄製ネット（図示さ
れない）を張設し、これらの鉄製ネットに対して同じよ
うに板石１のアンカーボルト３の先端部を溶接等により
固定して直交する二側面に板石１を固定した形に形成さ
れる。

【００１４】図１４乃至図１６は他の実施の形態を示す
ものである。図１４に示したものは、大きさは大小異な
るが何れも平面形状がほぼ方形をなす板石１ａを組み合
わせて、乱層野石積の形に形成している。図１５に示し
たものは平面形状が正六角の板石１ｂを中心に配し、上
下の天ば石や根石に平面形状が五角形の板石１ｂを組み
合わせて、亀甲積みの形に形成している。また、図１６
に示したものは長方形の板石１ｃを横に長く重ね、かつ
上下で互いに位置を違えた切り石積みの形に形成してい
る。なお、本実施の形態においては、専ら擁壁など土木
用の石壁パネルについて説明したが、軽量かつ頑丈であ
ることから建築用として利用できること勿論である。

【００１５】

【発明の効果】以上に述べたように本発明に係る石壁パ
ネルは、鉄製ネットを張設したＬ型鋼材よりなる支持枠
体の前面に、アンカーボルトを介して石板を多段に積み
重ねた石ブロック群を配置固定した構成よりなるので、
例えば、不定形でしかも大きさが大小さまざまの板石を
乱積みする場合極めて有効であり、しかも、制作が簡単
であり、このため工場生産が可能となる。また、鉄製ネ
ットを主体にした支持枠体からなるので軽量化が図ら
れ、このため取り扱かい易く、クレーンを使って施工も
でき、結果、施工期間が短縮でき、施工コストも軽減で
きる。更に施工後はコンクリートが板石の裏側と支持枠
体の間に設けた隙間も充填され、板石とコンクリートと
が馴染んで剥がれにくく、また、コンクリートが鉄製ネ
ットやアンカーボルトに交絡し支持枠体をコンクリート
で覆うことになるので錆が発生するようなこともないと
いう効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる石壁パネルの斜視図。

【図２】同裏面斜視図。

【図３】同一部拡大斜視図。

【図４】石壁パネルの平面図。

【図５】擁壁の施工状態を示す側面断面図。

【図６】支持枠体の周辺に板石を固定させない石壁パネ
ルの斜視図。

【図７】同石壁パネルＰ′を連接して施工する状態の斜
視図。

【図８】同石壁パネルＰ′を連接して施工した状態の斜
視図。

【図９】支持枠体の一部を切除した石壁パネルの施工状
態を示す正面図。

【図１０】平面形状を凸弧状曲面に形成した石壁パネル
の平面図。

【図１１】コーナーパネルの側面図。

【図１２】同側面断面図。

【図１３】同平面図。

【図１４】各板石を乱層野石積みした石壁パネルの正面
図。

【図１５】各板石を亀甲積みした石壁パネルの正面図。

【図１６】各板石を切り石積みした石壁パネルの正面
図。

【符号の説明】

１ 板石 ２ 支持枠体 ４ アンカーボルト ６ 鉄製ネット Ｐ，Ｐ′ 石壁パネル

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋼材により方形状に枠組みされ、その前
   面に網目状の鉄製ネットを張設してなる支持枠体と、平
   面形状が不定形をなす複数個の板石を壁状に多段に積み
   重ね、前記支持枠体の前面に一定の間隔を離して配設さ
   れる石ブロック群とからなり、 前記石ブロック群の各石板は、その裏面に固着される複
   数本のアンカーボルトを前記鉄製ネットの適宜位置に溶
   接して取着されることを特徴とする石壁パネル。