JP2737001B2 - 感熱穿孔性フィルムおよびそれを用いた感熱孔版用原紙 - Google Patents

感熱穿孔性フィルムおよびそれを用いた感熱孔版用原紙

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は感熱穿孔製版などの印刷に用いる熱穿孔性が
優れた感熱穿孔性フィルム、および該フィルムを用いた
高解像度の感熱孔版用原紙に関する。
〔従来の技術〕
従来より、感熱穿孔性フィルムと多孔質状支持体とを
積層して感熱孔版用原紙とし、サーマルヘッドやキセノ
ンフラッシュ、ハロゲンランプ、フラッシュバルブなど
の閃光照射、或いはレーザー(ガスレーザー、固体レー
ザー、半導体レーザー)などを熱源として、16dot/mm程
度の高品質製版を得る技術が知られている(特開昭62−
282983号公報)。
また従来公知のこれらの製版には多くの場合結晶性の
ポリエステルを2軸延伸して成膜したフィルムが感熱穿
孔用フィルムとして用いられている。例えば特開昭63−
312192号公報には結晶性のポリエチレンテレフタレート
を2軸延伸したものが開示されているが、低熱源の感熱
穿孔では穿孔感度が不十分であり高画質の印刷物が得ら
れないという問題点を有していた。
また、特開昭62−282983号公報及び特開昭63−286396
号公報には高感度感熱穿孔性フィルムが記載されている
が、これらのフィルムを用いると低熱源での穿孔性は確
かに改良されているものの熱穿孔時には若干開孔部が広
がり過ぎる傾向があり、印刷物も16dot/mm以上の高密度
の画像を持つ高解像度のものは得られなかった。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記した従来の高感度フィルムは穿孔感度を高めるた
めにフィルムに感度の配向をかけていたのでフィルムの
熱収縮特性が大きくなっていた。そのため穿孔孔時に大
きな収縮応力が急激にフィルムにかかり、開孔部が広が
り過ぎる傾向にあった。従って得られた印刷物の解像度
もあまり良くなかった。
そればかりでなく、この高度な配向は感熱孔版用原紙
にした際、フィルムのカールの原因にもなっていた。
本発明は、これらの課題を解決し感熱穿孔製版原紙に
した際に、高感度で且つ16dot/mm以上の高密度画像が再
現性よく得られる高解像度感熱穿孔性フィルムを提供す
ることを課題とするものである。
〔課題を解決するための手段および作用〕
本発明者らは上述の課題を解決すべく研究した結果、
フィルムを構成する熱可塑性樹脂の熱特性、フィルムの
厚み及び加熱収縮特性を特性することにより、16dot/mm
以上の解像度をもつ穿孔性フィルムが得られること及び
カールの発生を押さえられることを見出だし、本発明に
到達した。
すなわち、本発明はビカット軟化点が20〜150℃の範
囲内であり且つ結晶化度が30%以下である熱可塑性樹脂
からなる加熱収縮率の最大値Xmaxが5〜50%の範囲内で
加熱収縮応力の最大値Ymaxが5〜150g/mm2の範囲内であ
り且つ温度Tdにおける加熱収縮応力Ypeakが100g/mm2
下で、厚みが0.2〜0.3μの範囲内である感熱穿孔性フィ
ルム、およびそれに多孔質状支持体をはりあわせた感熱
孔版用原紙を提供するものである。(但し上記において
Xmax〔%〕は温度に対する加熱収縮率の最大値を表わ
し、Ymax(g/mm2)は温度に対するYpeakの最大値を表わ
し、Td〔℃〕はY10がTmaxより高温で初めて2g/mm2以下
となる温度を表わし、Ypeak〔g/mm2〕は測定条件下で加
熱収縮応力の発現開始後20秒間の時間に対する最大値を
表わす。またY10〔g/mm2〕は測定条件下で加熱収縮応力
の発現開始後10秒後の値を表わし、Tmax〔℃〕はYpeak
が最大値(Ymax)となる温度を表わす。)次にフィルム
を構成する熱可塑性樹脂のビカット軟化点は、一般に結
晶化度或いは混合する他の重合体、添加剤などに影響さ
れ、フィルムの特に解像度と穿孔性の因子となってい
る。本発明において上記樹脂のビカット軟化点は20〜15
0℃の範囲内になければならず、好ましくは30〜140℃、
より好ましくは140〜120℃、最も好ましくは45〜100℃
の範囲である。
すなわち、上記範囲の上限を越えるとフィルムに加工
(特に延伸)する場合の温度が高くなり、結晶性樹脂で
結晶化が高度に進みやすくなって耐熱性が付与されるの
で、低熱源穿孔性の面からは好ましくはない。また下限
より低いとフィルムの寸法安定性、経時的な特性の安定
性、解像度に悪い影響を与えるばかりでなく、フィルム
の製膜性の問題、穿孔時のフィルムの変形、フラッシュ
穿孔時の原稿とフィルムとの熱融着、サーマルヘッドで
の穿孔時のスティック発生等の問題を生じ好ましくな
い、又そのような問題を結果として解像度も低下する。
次にフィルムの結晶性について説明する。
本発明のフィルムの低熱源のサーマルヘッドなどを用
いて感熱穿孔製版することをおもな目的とするものであ
るから、使用する熱可塑性樹脂もそのような低熱源で感
熱穿孔するようなものが望ましい。そのような熱可塑性
樹脂としては、その結晶化度が実質的に非晶質なレベル
から30%以下までのものでなければならない。好ましく
は20%以下、より好ましくは10%、最も好ましくは実質
的に非晶質なレベルが望ましい。このような低結晶性あ
るいは非晶質のフィルムは、感熱穿孔時に熱溶融する際
に結晶部分の融解エネルギーが非常に小さいために低熱
源で良好に穿孔されるのである。
本発明のフィルムの作製に用いられる熱可塑性樹脂は
フィルムに成膜した際のビカット軟化点、結晶化度が上
述の特性範囲にはいっていればその種類は問わない。こ
れらは単一成分からなる必要はなく数種類の熱可塑性樹
脂からなるコポリマーや混合物であってもよい、またこ
れらの熱可塑性樹脂のグリセリンエステルなどの添加
剤、シリコーン、シリカなどの滑剤、可塑剤、オリゴマ
ーなどを添加・混合、或いは表面に塗布したものでもよ
い。
フィルムに成膜された際これらの条件を満たす熱可塑
性樹脂としては、例えば非結晶性から低結晶性までの、
ポリエステル(特に非晶質のイーストマンコダック社の
PETG6763相当品)、共重合ナイロン(好ましくは非結晶
性)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポ
リマー、塩化ビニリデン系共重合樹脂などが好ましい。
本発明のフィルム成膜法は公知の方法が用いられ、例
えば、テンター法による同時または逐次2軸延伸、チュ
ーブラ法、溶液流延法、ダイレクトインフレーション
法、Tダイキャスト法などの方法、あるいはそれらの方
法で成膜したフィルムに延伸処理、熱処理及び表面処理
など施したものでも良い。いずれにしてもそのフィルム
の最終段階で前記の請求項に記載した条件を満足してい
ればよいのである。
つぎに、本発明の高解像度感熱穿孔性フィルムは、Y
peak(後述)の温度変化をとったとき(図2参照)の最
大値Ymax〔g/mm2〕が5〜150g/mm2の範囲内、好ましく
は5〜100g/mm2、最も好ましくは10〜80g/mm2の範囲内
であることが必要である。Ymaxとは、各測定温度に設定
されたシリコーンバス中にサンプルを浸漬直後から20秒
間の間に観測される加熱収縮応力の最大値(Ypeak〔g/m
m2〕)を各温度Tに対してグラフ化した際の、Tに対す
るYpeakの最大値である(図1,図2参照)。
又、本発明のフィルムが該最大値Ymaxを示す温度であ
るTmaxは50〜180℃の範囲内であることが好ましく、よ
り好ましくは60〜160℃、最も好ましくは70〜130℃であ
る。この温度Tmaxは、ビカット軟化点、ガラス転移点等
の樹脂固有の性質と、フィルムの延伸、熱処理等の工程
の条件に依存するものである。Tmaxが上記温度範囲より
も高いと熱収縮応力の発現温度が高く、低熱源に対する
穿孔性が劣る傾向にある。又該値が上記温度範囲よりも
低いと寸法安定性が劣る傾向にある。
また加熱収縮率(X〔%〕)は、その温度変化に対す
る最大値Xmaxが5〜50%の範囲内であることが必要で、
好ましくは10〜40%より好ましくは12〜35%、最も好ま
しくは12〜30%の範囲内である。
ここで、加熱収縮特性(Ymax・Xmax)が本発明の範囲
より小さければ感熱穿孔の際、熱溶融したフィルムを周
囲に広げる力が小さくなるので、例えば多孔質状支持体
上のフィルムの穿孔カスがあまり収縮しないで大きく残
ったり、或いは開孔部も完全に開孔しきらなかったりし
て開孔部上にフィルムが残る。残ったフィルムは印刷時
のインクの通りを妨げ、いわゆる「白ヌケ」のある画像
(本来全面にインクが着いて印刷されるべき画面「黒ベ
タ」に、インクが着いていない部分が白く残って印刷さ
れているような画像)になってしまい良好な画像が得ら
れない。また上記特性が本発明の範囲より大きいと、穿
孔の際の開孔部が広がり過ぎて高密度穿孔が行えなくな
る。
しかし本発明のような高密度穿孔が可能な高解像性能
を持つ感熱穿孔性フィルムは以上のように加熱収縮特性
を押さえるだけではまだ得られない。本発明者らは、実
際の穿孔時の温度条件において極短時間にフィルムにか
かる熱収縮応力が大きいほど開孔部が広がり過ぎる傾向
にあるという点に着目し、高密度穿孔が可能になるため
には熱穿孔時にフィルムにかかる応力が小さいだけでな
く、特定の性質を持つ必要があることを見出した。そこ
で、その点で更に検討の結果この熱穿孔時の応力の特定
の性質とは次に述べるような加熱収縮応力の性質で表さ
れることをつきとめた。なお特にレーザー、LED等の手
段で非接触又は軽接触で穿孔する場合、孔部の広がりが
重要な問題となり、サーマルヘッドで高押圧で穿孔する
場合より影響が大きい。本発明は好ましくは、後者のみ
ならず、前者の場合のように、非接触ないし軽接触で極
短時間穿孔(例えばμsec,nsecオーダー)に特に有効で
ある。
次に、各測定温度における加熱収縮応力の測定開始後
10秒後の値(Y10)がTmaxよりも高温で初めて2g/mm2
なる温度をTdとし、該温度でのYpeakが100g/mm2以下で
あることが必要で、好ましくは80g/mm2以下、さらに好
ましくは60g/mm2以下、最も好ましくは40g/mm2以下であ
るのがよい。
つまり加熱収縮応力の測定の際、フィルムが感熱穿孔
するぐらいの高温(結晶性のポリマーならその融点、非
結晶性のポリマーならそれが溶融してしまう温度近く)
まで加熱すると、本発明に用いられるようなポリマーで
は測定開始後10秒後の加熱収縮応力の値Y10は2g/mm2
下となる。これはこのような高温では加熱収縮応力は発
生するが直ぐに脱応力してしまうためと考えられる。い
まこの温度をTd〔℃〕とする。従来のフィルムはこの温
度Tdにおいて加熱収縮応力を測定した際、測定時間中に
現れる最大値Ypeakは浸漬直後に発現し、値が大きいも
のであった。このようなフィルムは熱穿孔の時サーマル
ヘッドなどで高温に急加速される際にも同じような急激
な応力がかかり開孔部が広がり過ぎるのである。
本発明者らはこのような開孔部の広がり過ぎを防ぐた
めには、本発明で使用されるようなポリマーの溶融特性
では、温度Tdにおいて該応力Ypeakが100g/mm2以下でな
くてはならないことを見出した。このような特性を満た
すようなフィルムであれば熱穿孔時に急激に応力がかか
らず開孔部が広がり過ぎないのである。
また高感度で高解像度穿孔を可能にするためにはフィ
ルム厚み(d〔μm〕)は0.2〜3.0μmの範囲内にある
ことが必要で、好ましくは0.3〜2.5μm、より好ましく
は0.4〜2.0μm、最も好ましくは0.5〜1.8μmの範囲内
である。該厚みの上限3μmよりも厚いものは穿孔感度
が大きく低下し、またサーマルヘッドなどの熱源からの
信号(熱)に正確に反応しにくくなる。下限は加工性
(延伸、巻取、ラミネートなど)、耐刷性、フィルム強
度、フィルム取扱いやすさなどから制限される。
本発明の感熱孔版用原紙は、上記に示された感度穿孔
性フィルムを多孔質状支持体に貼り合せることにより得
られる。ここで使用される多孔質状支持体とは印刷イン
クの透過が可能で、フィルムが穿孔されるような加熱条
件では実質的に熱変形を起こさない天然繊維、再生繊
維、合成繊維又はこれ等の混合体などを原料にした多孔
質状支持体である。そのようなものには不織布、織布な
どまたはその他のインク透過性多孔体などが用いられ
る。薄葉紙状の不織布の場合は3〜30g/m2の目付のもの
が好ましく、4〜15g/m2のものがさらに好ましい。メッ
シュ状の織布の場合は、15〜500メッシュ、好ましくは5
0〜300メッシュ、より好ましくは80〜250メッシュであ
る。これらはインクの通り易さも考慮して適当なものを
選んで使用すれば良い。
感熱穿孔性フィルムと多孔質状支持体との貼り合わせ
はフィルムの穿孔特性を妨げないならば特に限定される
ものではなく、一般的には接着剤などを用いて行う。そ
の場合は、接着剤を溶媒に溶かしてラミネートするか、
またはホットメルト型、エマルジョン・ラテックス型、
反応型、粉末型など各種の接着剤を通常公知の方法でラ
ミネートすればよい。好ましい接着剤量は0.1〜8g/m2
より好ましくは0.4〜4g/m2、さらに好ましくは0.6〜4g/
m2、最も好ましくは0.6〜3g/m2である。又接着剤を用い
ずに、本発明のフィルムを構成する熱可塑性樹脂を上記
多孔質状支持体上に溶融流延法、押出ラミネート法等に
より直接積層する方法によって形成しても良い。但し、
該樹脂層が本発明の特性を有するものである。
本発明のフィルムに用いられる熱可塑性樹脂に関する
好ましい場合の溶融粘度の温度係数(ΔT/Δlog VI)
は、剪断速度が6.08sec-1の条件で測定した樹脂の溶融
粘度(VI〔poise〕)の対数値(log VI:この場合VIの単
位は考えず係数部分のみを考える)が5から4に変化す
るのに要する温度差(ΔT〔℃〕)をその溶融粘度の差
(Δlog VI〔−〕この場合は1になる)で除したもので
ある。ただしこの場合のように“係数”と表示する場合
は慣例により単位は省略する。本発明のフィルムに用い
られる熱可塑性樹脂において好ましいΔT/Δlog VIはこ
の値が3〜250、もしくは5〜150の範囲内のものであ
る。これらの上限値はシャープな熱穿孔に必要なフィル
ムの流動性及びフィルムの成膜、加工性などによって制
限され、下限値は本来、ポリマーの分子構造や重合度に
由来し、フィルム押し出し、延伸などの加工性が阻害さ
れない程度であり、またフィルム強度が実用的にラミネ
ート、穿孔、印刷に耐え得る範囲までであり、取り扱い
やすさに関わってくるものである。
また上記条件でlog VI=5を与える測定温度条件が90
℃〜300℃の範囲内にあることが好ましく、より好まし
くは120〜280℃の範囲内である。あまり上限温度が高い
とサーマルヘッドおよびレーザー、特に半導体レーザー
などのような低熱源での穿孔には適さない。また下限は
フィルムが感熱穿孔時にノイズを拾わないこと、低温で
の寸法安定性が良いことなどにより制限される。
<測 定 方 法> 以下に前記の各項目の測定法についてのべる。
フィルムの結晶化度 測定方法はX線法で結晶化度を明確に固定したサンプ
ルを標準とし密度法で求めるか、または上記標準サンプ
ルと被測定サンプルをDSC法で測定し、両者の溶融エネ
ルギーの面積比で求めても良い。ただしこのときは10℃
/minの速度で昇降温して測定するものとする。一般にポ
リエチレンテレフタレート(PET)の場合の結晶化度(X
C〔%〕)は加工条件にり異なり、25℃での密度(ρ〔g
/cm3〕)と結晶化度との関係式としては ρ=0.0147XC+0.01331(100−XC) であることが知られており、実施例ではこれに測定密度
(ρ)を代入して算出した。ここではフィルム密度はJI
S K−7112に準じて密度勾配管法により23℃で測定し温
度換算して上記式に代入した。
ビカット軟化点 ASTM D1525−82により測定した(荷重1kg,2℃/分の
昇温スピードで測定)。
溶融粘度の温度係数 (株)東洋精機製作所製キャピログラフ(毛管流動性
試験機・キャピラリー径1.0mm・長さ10.0mm(形成E
型))を用いて、加熱温度を10℃ビッチで変化させ、各
温度における溶融粘度(VI〔poise〕)を剪断速度が6.0
8sec-1(押し出し速度0.5mm/sec-1)の条件で測定し、
樹脂の溶融粘度の対数値と加熱温度の関数をグラフ化
し、そのグラフからlog VIが5.0から4.0に変化するのに
要した温度差(ΔT)を溶融粘度の温度勾配として読み
取った。
加熱収縮応力 フィルムを縦方向、及びそれに垂直な方向にそれぞれ
20mm幅でサンプリングしチャック間50mmでストレインゲ
ージにセットした。それをあらかじめ各温度に加熱して
おいたシリコーンバス中に10cm/secの速度で浸漬し、発
生した荷重〔g〕を横河北辰電機製バーチカルペンレコ
ーダー(type3056及びミネベア株式会社製U−GAGE typ
e UT)で記録した。チャート速度は60cm/min、加熱収縮
応力の測定はサンプルの1部でもシリコーンバスに浸漬
した瞬間から20秒間行う。加熱収縮応力はこの値から算
出した。
なお、測定温度は、60,80,100,120,140,160,180℃と
した。
加熱収縮率 該フィルムを40mm×40mmにサンプリングする。あらか
じめ測定温度に加熱しておいたシリコーンオイルバスに
浸漬し、その開始10秒後の寸法変化量をもって加熱収縮
率の値とする。こちらも縦横2方向の平均をとった。
穿孔感度 1)サーマルヘッド製版 実施例1〜4の感熱孔版用原紙を理想科学工業社製リ
ソグラフ007〜DPE(印刷スピード目盛り「4」)を用い
て製版・印刷を行なった。この画像を肉眼及び顕微鏡で
観察しその溶像度を調べ、本発明の目的である16dot/mm
以上の溶像度が得られるかどうかを評価した。また穿孔
感度に関しては製版エネルギーを0.07mj/dotに調整し
て、製版し、印刷を行ない、印刷部分の黒ベタ部(6mm
四方程度の正方形の面積の全面を穿孔し)の濃度が十分
であるかどうかで判断した。以上の解像度と穿孔感度を
指標として感熱孔版用原紙の性能を評価した。そのラン
クは以下のようにした。
穿孔感度(黒ベタ部の濃度)に関して ◎(良好):濃度が濃く非常に良好。
○(十分):◎ほどではないが通常の印刷なら十分
な濃度を持つ。
△(可能):ややかすれているが判別可能である。
×(不可):かすれがひどく判別不可能である。
高解像性に関して A:16dot/mm以上の解像度が得られる。
B:16dot/mm以上の解像度が得られなかった。
このうち穿孔感度に関しては◎,○,△を合格とし、
高解像性に関してはAを合格とした。
2)レーザー製版 波長1.064μmのYEGレーザー(ビーム径:3mmφ)を用
いて、半導体レーザー並みの低エネルギーにしてパルス
穿孔を行なった。パルス時間は、10nsec、1パルスの照
射面積を20μm×20μmとし1mm当り40ドットの照射を
行ない、エネルギーを変えてサーマルヘッド製版と同様
に印刷後評価を行なった。
〔実 施 例〕
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限
定されるものではない。
実施例 1 酸成分としてテレフタル酸を主体とし、ジオール成分
として、1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%、
エチレングリコール70モル%を主体とした成分よりなる
実質的に非晶質な共重合ポリエステル(ビカット軟化
点:82℃、Tg:81℃、密度:1.27g/cm3、平均分子量2600
0、極限粘度0.75、イーストマンコダック社のPETG6763
相当品)をインフレーションダイによる押出操作により
いったん原反を作製した後、これをチューブラー法によ
り114℃で同時2軸延伸してフィルムを成膜した。延伸
倍率は縦3倍、横3倍で、厚みは、1.3μmであった。
フィルムのビカット軟化点はポリマーの該値と変わらず
フィルム成膜による結晶化もなかった。
加熱収縮率の最大値は35%、または加熱収縮応力の最
大値Ymaxは150g/mm2であり、さらに加熱収縮応力がYmax
となる温度Tmaxが、85℃、Tdが151℃、TdにおけるYpeak
は80g/mm2であった。
このフィルムに支持体として目付8g/m2のマニラ麻製
繊維を主体とする薄葉紙を、酢酸ビニル系接着剤のメタ
ノール溶液(固形成分が2g/m2となるように濃度、塗布
量を調整)を用いて貼り合わせ、乾燥させて感熱孔版原
紙とした。前述の方法で測定した、この感度孔版用原紙
の穿孔感度は◎、高解像性はAであった。
実施例 2 実施例1と同じ熱可塑性樹脂を用い実施例と同様な条
件下でインフレーション法により厚み25μmのフィルム
を成膜した。
該フィルムのビカット軟化点は、ポリマーの該値と変
わらずまた結晶化もしていなかった。
加熱収縮率の最大値は30%、加熱収縮応力の最大値Y
maxは117g/mm2であり、さらに加熱収縮応力がYmaxとな
る温度Tmaxが85℃、Tmaxよりも高温のY10が2g/mm2以下
となる温度(Td)が145℃でそのときのYpeakは40g/mm2
であった。
このフィルムを用いて実施例1と同様の方法で感熱孔
版用原紙を得た。この感熱孔版用原紙の穿孔感度は△、
高解像性はAであった。
実施例 3 実施例1と同じ熱可塑性樹脂をこの樹脂に対して良溶
媒であるクロロホルムに溶解し10重量%溶液を調製し
た。これを平滑面上に流延し高速乾燥してフィルムを成
膜した。
該フィルムのビカット軟化点はポリマーの該値と変わ
らず、また結晶化はしていなかった。
加熱収縮応力の最大値Ymaxは17g/mm2また加熱収縮率
の最大値は14%であり、さらに加熱収縮応力がYmaxとな
る温度Tmaxが80℃、Tdが130℃、TdにおけるYpeakは9g/m
m2であった。またフィルム厚みは0.5μm/1μm/2μmに
なるように調製した。
このフィルムを用いて実施例1と同様の方法で感熱孔
版用原紙を得た。この感熱孔版用原紙の穿孔感度は0.5
μm/1μm/2μmの順に◎/○/△、高解像性はすべてA
であった。
実施例 4 熱可塑性ポリマーとしてポリ塩化ビニル(ビカット軟
化点:74℃、非晶質、平均分子量64000)をこの樹脂に対
して良溶媒であるTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し1
0重量%溶液を調製した。これを平滑面上に流延し高速
乾燥してフィルムを成膜した。
該フィルムのビカット軟化点はポリマーの該値と変わ
らず、また実質的に非晶質であった。
該フィルムの加熱収縮応力の最大値Ymaxは18g/mm2
また加熱収縮率の最大値は25%であり、さらに加熱収縮
応力がYmaxとなる温度Tmaxが82℃、Tdが138℃、そのと
きのYpeakは10g/mm2であった。またフィルム厚みは0.5
μm/1μm/2μmになるように調製した。
このフィルムを用いて実施例3と同様の方法で感熱孔
版用原紙を作製した。この感熱孔版用原紙の穿孔感度は
0.5μm/1μm/2μmの順に◎/○/△、高解像性はすべ
てAであった。
実施例 5 熱可塑性ポリマーとして塩化ビニル90wt%、酢酸ビニ
ル10wt%の共重合ポリマー(ビカット軟化点:65℃、非
晶質)をこの樹脂に対して良溶媒であるTHF(テトラヒ
ドロフラン)に溶解し10重量%溶液を調製した。これを
平滑面上に流延し高速乾燥(100℃、10秒)してフィル
ムを成膜した。
該フィルムのビカット軟化点はポリマーと変わらず、
また実質的に非晶質であった。
このフィルムの加熱収縮応力の最大値Ymaxは15g/m
m2、また加熱収縮率の最大値は28%であり、さらに加熱
収縮応力がYmaxとなる温度Tmaxが78℃、Tdが128℃、そ
のときのYpeakは8g/mm2であった。またフィルム厚みは
0.5μm/1μm/2μmになるように調製した。
このフィルムを用いて実施例3と同様の方法で感熱孔
版用原紙を作製した。この感熱孔版用原紙の穿孔感度は
0.5μm/1μm/2μmの順に◎/○/△、高解像性はすべ
てAであった。
実施例 6 熱可塑性ポリマーとして実施例1と同じポリマーを用
いて、これをTダイキャスト法にて押出し成膜した。フ
ィルム厚みは1.3μm/2.4μmであった(押出し温度230
℃、チルロール温度60℃)。
該フィルムのビカット軟化点、結晶化度はポリマー自
身の値と変わらなかった。
このフィルムの加熱収縮応力の最大値Ymaxは1.3/2.4
μの順に110/45g/mm2、また加熱収縮率の最大値はいず
れも35%であり、さらに加熱収縮応力がYmaxとなる温度
Tmaxが80℃、Tdが130℃、そのときのYpeakは1.3/2.4μ
の順に15/10g/mm2であった。
これを用いてて実施例1と同様の方法で原紙を作製し
た。この感熱孔版用原紙の穿孔感度は1.3μm/2.4μmの
順に◎/○、高解像性はすべてAであった。
実施例 7 熱可塑性ポリマーとして実施例1と同じポリマーを用
いて、これをインフレーション法にて縦横それぞれ5倍
に延伸成膜(延伸温度115℃)したフィルムを、170℃で
10分間緊張下熱風処理を施した。該フィルムのビカット
軟化点はポリマーの該値と変わらず、また実質的に非晶
質であった。該フィルムの厚みは、0.5μm/1μm/2μm
に調製した。
このフィルムの加熱収縮応力の最大値Ymaxは18g/m
m2、また加熱収縮率の最大値は18%であり、さらに加熱
収縮応力がYmaxとなる温度Tmaxが125℃、Tdが165℃、そ
のときのYpeakは2g/mm2であった。
これを用いて実施例1と同様の方法にて感熱孔版用原
紙を作製した。この感熱孔版用原紙の穿孔感度は0.5μm
/1μm/2μmの順に◎/○/△、高解像性はすべてAで
あった。
実施例 8 熱可塑性ポリマーとして実施例1と同じポリマーにア
セチレンブラックを3%添加したものを同時2軸延伸法
にて100℃で縦横それぞれ4倍に延伸し成膜したフィル
ムを170℃で10分間緊張下熱風処理を施した。該フィル
ムのビカット軟化点はポリマー自身の値と変わらず、ま
た実質的に非晶質であった。該フィルムの厚みは1μm/
3μmに調製した。
このフィルムの加熱収縮応力の最大値Ymaxは18g/m
m2、また加熱収縮率の最大値は18%であり、さらに加熱
収縮応力がYmaxとなる温度Tmaxが125℃、Tdが165℃、そ
のときのYpeakは2g/mm2であった。
これを用いて実施例1と同様の方法にて感熱孔版用原
紙を作製した。この原紙を用いてレーザー製版を行なっ
たところ、穿孔感度は1μm/2μmの順に◎/◎、高解
像性はすべてAであった。
比較例 1 熱可塑性ポリマーとして実施例1と同じポリマーを用
いて、これをインフレーション法にて105℃で縦横それ
ぞれ5倍に延伸しフィルムを成膜した。
該フィルムのビカット軟化点、結晶化度はポリマー自
身の値とほぼ同じであった。
Ymaxは450g/mm2であり、加熱収縮率の最大値は75%、
さらにYが温度に対して最大値Ymaxとなる温度Tmaxは88
℃、Tdが156℃、そのときYpeakは250g/mm2であった。フ
ィルム厚みは0.5μm/1μm/2μmであった。
このフィルムを用いて実施例1と同様の方法にて原紙
を作製した、この感熱孔版用原紙の穿孔感度は0.5μm/1
μm/2μmの順に◎/◎/◎、高解像性については、通
常の文字や記号に関しては十分であったが16dot/mm以上
の高解像という点ではすべてBであった。
比較例 2 フィルム厚みを3.5μm/5μmとしたほかは実施例1と
同じ熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様の方法でフィ
ルムを作製した。ビカット軟化点、結晶化度、加熱収縮
特性の各値などは実施例1と変わらなかった。
このフィルムを実施例1と同様の方法で作製した感熱
孔版用原紙の穿孔感度は3.5μm/5μmの順に○/△、高
解像性については通常の文字や記号に関しても十分とは
いえずすべてBであった。
比較例 3 フィルム厚みを3.5μm/5μmとしたほかは実施例3と
同様に行なった。
ビカット軟化点、結晶化度、加熱収縮特性の各値など
は実施例3と変わらなかった。
このフィルムを用いて実施例3と同様の方法で感熱孔
版原紙を作製した。この原紙の穿孔感度は3.5μm/5μm
ともに×、印刷物の濃度が薄く、従って解像度はともに
Bであった。
比較例 4 フィルム厚みを3.5μm/5μmとした他は実施例7と同
様の方法でフィルムを成膜した。ビカット軟化点、結晶
化度、加熱収縮特性の各値などは実施例7と変わらなか
った。
このフィルムを用いて感熱孔版用原紙を作製した。こ
の原紙の穿孔感度は3.5μm/5μmの順に×/×、従って
これも印刷物の濃度が薄く、従って解像度はともにBで
あった。
比較例 5 熱可塑性ポリマーとして実施例1と同様なポリマーに
アセチレンブラックを3wt%添加したものを100℃で縦横
夫々4倍に同時2軸延伸を行ない、フィルムを成膜し
た。該フィルムのビカット軟化点はポリマー自身の値と
変わらず、また実質的に非晶質であった。該フィルムの
厚みは1μm/3μmに調製した。
このフィルムの加熱収縮応力の最大値Ymaxは400g/m
m2、また加熱収縮率の最大値は67%であり、さらに加熱
収縮応力がYmaxとなる温度Tmaxが85℃、Tdが155℃、そ
のときのYpeakは220g/mm2であった。
これを用いて実施例1と同様の方法にて感熱孔版用原
紙を作製した。この原紙を用いてレーザー製版を行ない
印刷したところ、穿孔感度は1μm/3μmの順に◎/◎
であったが孔が広がる傾向に有り、従って印刷物の高解
像性はすべてBであった。
〔発明の効果〕
本発明の感熱穿孔性フィルムは、感熱孔版用原紙に用
いられたとき低エネルギーの製版機でも高エネルギーの
製版機でも高感度かつ高密度穿孔が可能であり、従って
高品質画像の印刷物が得られる。
また、レーザー等により微細且つ高密度に穿孔された
該フィルムは光学フィルター、透気性フィルムとして使
用され、本発明フィルムを使用することにより安価で且
つ高精度に製造することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
図1は加熱収縮応力Yの時間変化をとったときの各値Y
peak,Y10の関係を図示したものであり、 図2は加熱収縮応力の温度変化をとったときのYpeak,Y
10の挙動、及びYmax,Tmaxさらに、Tmaxよりも高温で初
めてY10≦2となる温度Tdとそのときの応力を図示した
ものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ビカット軟化点が20〜150℃の範囲内であ
    り且つ結晶化度が30%以下である熱可塑性樹脂からなる
    加熱収縮率の最大値Xmaxが5〜50%の範囲内で、加熱収
    縮応力の最大値Ymaxが5〜150g/mm2の範囲内であり、且
    つ温度Tdにおける加熱収縮応力Ypeakが100g/mm2以下
    で、厚みが0.2〜3.0μmの範囲内である感熱穿孔性フィ
    ルム。 (但し、上記において Xmax〔%〕は温度に対する加熱収縮率の最大値を表わ
    し、 Ymax〔g/mm2〕は温度に対するYpeakの最大値を表わし、 Td〔℃〕はY10がTmaxより高温で初めて2g/mm2以下とな
    る温度を表わし、 Ypeak〔g/mm2〕は測定条件下で加熱収縮応力の発現開始
    後20秒間の時間に対する最大値を表わす。 また、 Y10〔g/mm2〕は測定条件下で加熱収縮応力の発現開始後
    10秒後の値を表わし、 Tmax〔℃〕はYpeakが最大値(Ymax)となる温度を表わ
    す。)
  2. 【請求項2】請求項1記載の感熱穿孔性フィルムに、多
    孔質状支持体をはりあわせた感熱孔版用原紙。
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