JP3581617B2 - 感熱孔版印刷原紙用フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱孔版印刷原紙用フィルムに関し、さらに詳しくは印刷感度が高く、鮮明な印刷が可能で、耐久性や保存性に優れた感熱孔版印刷原紙用フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、キセノンフラッシュランプ、サーマルヘッド、あるいはレーザー光線等のパルス照射などによる熱を受けることにより、穿孔製版される原紙を用いた感熱孔版印刷が注目されている。この製版方法の原理は、例えば特公昭41−7623号公報、特開昭55−103957号公報、特開昭59−143679号公報などに記載されている。
【0003】
すなわち、感熱印刷原紙用フィルムと多孔性支持体を貼り合せた感熱孔版印刷原紙に、閃光照射やサーマルヘッドにより文字や画像等を穿孔して原版を作成し、これを用いて印刷を行う方式である。感熱フィルムの穿孔の過程は、下記の三段階に分けることができる。
(1)サーマルヘッドとの接触、または電磁波(キセノンフラッシュランプ光、レーザーパルス等)照射により熱エネルギーが印加された部分が軟化・溶融し、孔のきっかけが出来る。
(2)熱エネルギーが印加され、軟化した孔のきつかけの周囲のポリマーが拡散された熱エネルギーによって熱収縮し、孔を広げる。
(3)軟化したポリマーが熱収縮力により孔の周辺に引き寄せられ、自然冷却・放熱により固化し、孔端部が形成されることにより孔の形が維持される。
【0004】
従来、かかる感熱孔版印刷に用いる原紙としてフィルムと多孔性支持体とを接着剤または熱によりラミネートしたものが使用され、このフィルムとして塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体フィルムやポリプロピレンフィルム、高結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルムが使用され、さらに多孔性支持体としては薄葉紙やポリエステル紗などが使用されてきた。しかし、これらには次のような欠点があった。
(a)塩化ビニルや塩化ビニリデン共重合体フィルムを用いた場合、印刷後の文字が鮮明に出ない。
(b)ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートフィルムでは、文字の鮮明なものが得られるが、ベタ印刷(記号または図形でインキの付着面積の大きいもの)は鮮明なものが得られない。
(c)いずれも印刷部分に濃淡が出る。
(d)部分的に文字の太さのムラを生じる。
(e)感度が悪く、黒色のうすい文字等が出ない。
【0005】
これらの欠点を解消する方法として、特開昭62−149496号公報には結晶融解エネルギーの小さいフィルムを使用することが記載されている。しかし、フィルムを製造する工程中においてポリマーチップ乾燥時のブロッキング、テンター式横延伸機のクリップヘの縦延伸フィルムエッジの粘着等の製造上の問題点があり、またサーマルヘッドに穿孔時軟化したポリマーが付着しやすく、連続製版した際、ポリマー付着物に起因した筋状の白抜け斑が発生する等の印刷品質上の問題がある。これらの問題を解決するため例えば特許第2507612号公報にDSC昇温測定において二つ以上の融解ピークを示すフィルムを使用することが開示され、実用に供されているが、高速印刷向けのハード機器においては感熱孔版印刷原紙としての感度が不足する場合がある。また、感熱孔版印刷原紙として皺が発生し易い場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記欠点を解消し、文字の印刷やベタ印刷がともに鮮明であり、印刷の太さ斑がなく、濃淡斑が出ず、皺が発生し難い、耐久性や保存性に優れた感熱孔版印刷用のフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、厚さ0.2〜7μmの二軸延伸フィルムであって、該フィルムは、テレフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを主たる構成成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し5〜10mol%含むポリエステル(A)0.1〜15重量%、テレフタル酸および1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とするポリエステル(B)25〜49重量%、およびテレフタル酸およびエチレングリコールを主たる構成成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し12〜15mol%含むポリエステル(C)35〜65重量%を含む組成物からなり、かつ該フィルムの融点(Tm)が下記式(1)を満足し、かつ該組成物のエステル交換率が3%以上13.2%以下であることを特徴とする感熱孔版印刷原紙用フィルムである。
(Tm(b)+Tm(c))/2-50(℃)≦Tm(℃)≦(Tm(b)+Tm(c))/2-10(℃) ・・(1)
(上記式中、Tm(b)、Tm(c)、Tmはそれぞれポリエステル(B)の融点、ポリエステル(C)、フィルムの融点を表わす。なお、フィルムが2つ以上の融解ピークを有する場合、最も高温側の融解ピークの温度をフィルムの融点と定義する。)
【0008】
本発明の感熱フィルムは、構成ポリエステルの種類と成分範囲と融点範囲とエステル交換率を特定することにより、高感度で耐久性のある感熱孔版印刷用原紙が得られることを特徴とする。
【0009】
<組成物>
本発明のフィルムを構成する組成物は、次の3種類のポリエステルを含む。
(1)テレフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを主たる構成成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し5〜10mol%含むポリエステル(A)(以下ポリエステル(A)と略することがある。)
(2)テレフタル酸および1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とするポリエステル(B)(以下ポリエステル(B)と略することがある。)
(3)テレフタル酸およびエチレングリコールを主たる構成成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し12〜15mol%含むポリエステル(C)(以下ポリエステル(C)と略することがある。)
なお、上記各ポリエステルにおいて、「主たる構成成分」とは、主たる酸成分(例えばテレフタル酸)の割合が全ジカルボン酸成分に対して70モル%以上、好ましくは80モル%以上を占め、かつ主たるグリコール成分(例えばエチレングリコール)の割合が全グリコール成分に対して90モル%以上、好ましくは100モル%を占めることを表わす。
【0010】
ポリエステル(A)
本発明においてポリエステル(A)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、1,6−ヘキサンジオールを主たるグリコール成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し5〜10mol%含むポリエステルである。テレフタル酸と1,6−ヘキサンジオール以外の共重合成分の例としては、2個のエステル形成性官能基を有する芳香族化合物、例えばフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸が挙げられる。またこれらの低級アルキルエステル、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸およびその低級アルキルエステルが挙げられる。これらの中では共重合酸成分としてはイソフタル酸を好ましく用いることができる。なお、グリコール成分としては、1,6−ヘキサンジオールのみを使用することが好ましい。ポリエステル(A)の組成物に対する割合は、0.1重量%以上15重量%以下である。この割合が0.1重量%未満では、穿孔感度が低下するので好ましくない。また、上限より多い20重量%を超えると、穿孔時に軟化したポリマーがサーマルヘッドに付着し易く、連続製版した際ポリマー付着物に起因した筋状の白抜け斑が発生する等の印刷品質上の問題が生じる。
【0011】
ポリエステル(B)
本発明においてポリエステル(B)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。ポリエステル(B)はホモポリマーであっても共重合体であっても用いることができる。テレフタル酸と1,4−ブタンジオール以外の共重合成分の例としては、2個のエステル形成性官能基を有する芳香族化合物、例えばフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸が挙げられる。2個のエステル形成性官能基を有する脂肪族としてはアジピン酸が挙げられる。またこれらの低級アルキルエステル、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸およびその低級アルキルエステルも用いることができる。これらの中では酸成分としてはイソフタル酸、アジピン酸が好ましく用いることができる。なお、グリコール成分としては、1,4−ブタンジオールのみを使用することが好ましい。ポリエステル(B)の組成物に対する割合は25重量%以上49重量%以下である。ポリエステル(B)の割合が下限より少ない20重量%未満であると、ポリエステル(A)とポリエステル(C)との混合性が向上せず、穿孔感度が向上しない。また、ポリエステル(B)の割合が49重量%を超えると、フィルムの結晶化が進行し易くなり、穿孔感度の低下を招くため好ましくない。
【0012】
ポリエステル(C)
本発明においてポリエステル(C)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し12〜15mol%含むポリエステルである。テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分の例としては、2個のエステル形成性官能基を有する芳香族化合物、例えばフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸が挙げられる。またこれらの低級アルキルエステル、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸およびその低級アルキルエステルも用いることができる。これらの中では酸成分としてはイソフタル酸が好ましく用いることができる。なお、グリコール成分としては、主たる成分がエチレングリコールであり、その他の成分としてジエチレングリコールを含むことが好ましい。特にジエチレングリコールを全グリコール成分に対し0.5〜2mol%含むことが好ましい。ポリエステル(C)の組成物に対する割合は、35重量%以上65重量%以下である。ポリエステル(C)の割合が35重量%未満であると、機械的強度が不足し、低温(60℃)での熱収縮が大きくなり、印刷原紙に加工した後に皺やカールが大きくなるので好ましくない。また、65重量%を超えると、穿孔感度が低下するので好ましくない。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、組成物にポリエステル以外の樹脂を含んでもよい。
【0013】
<フィルム融点>
本発明の感熱フィルムは、その融点(Tm)が、下記(1)式を満足することが必要である。
(Tm(b)+Tm(c))/2−50(℃)≦Tm(℃)≦(Tm(b)+Tm(c))/2−10(℃) ・・(1)(上記式中、Tm(b)、Tm(c)、Tmはそれぞれポリエステル(B)の融点、ポリエステル(C)、フィルムの融点を表わす。なお、フィルムが2つ以上の融解ピークを有する場合、最も高温側の融解ピークの温度をフィルムの融点と定義する。)融点(Tm)が、上記(1)式の下限値未満であると、穿孔時に軟化したポリマーがサーマルヘッドに付着し易く、連続製版した際ポリマー付着物に起因した筋状の白抜け斑が発生する等の印刷品質上の問題が生じる。また、諧調の出ない画像となり易い。その上、耐刷性が低下するので好ましくない。一方、フィルム融点(Tm)が、上記(1)式の上限値を超えると、穿孔感度が低下するので好ましくない。
【0014】
<ヤング率>
本発明の感熱フィルムのヤング率は2450MPa以上、4900MPa以下であることが望ましい。感熱フィルムのヤング率が2450MPa未満であるとフィルムと和紙を貼りあわせて原紙を作る際に皺になりやすく好ましくない。4900MPaを超えると穿孔時にフィルムが収縮しにくくなり感度が低下するので好ましくない。ここでいうフィルムのヤング率とはいずれも縦、横方向の平均値で表わしたものをいう。
【0015】
<エステル交換率>
本発明において、フィルムを構成する組成物のエステル交換率は3%以上13.2%以下である。エステル交換率が3%以上であることにより穿孔感度が向上するが、3%未満になると穿孔感度が著しく低下し、印刷時に鮮明性に欠けるので好ましくない。またエステル交換率が上限より高い30%を超えると結晶性が著しく低下し、穿孔部の形状が保てなくなるので好ましくない。
【0016】
エステル交換率は、フィルムから該当するポリエステル組成物を約10mg削り取り、CDCl3:CF3COODの混合溶媒に溶解後、600MHz 1H−NMRにて測定する。検出されたエチレングリコール−イソフタル酸−エチレングリコール分子配列に対応するイソフタル酸のベンゼン環プロトンのうち2位のプロトンに対応するピークをピークA、エチレングリコール−イソフタル酸−ジエチレングリコール分子配列に対応するイソフタル酸のベンゼン環プロトンのうち2位のプロトンに対応するピークをピークB、エチレングリコール−イソフタル酸−1,4−ブタンジオール分子配列に対応するイソフタル酸のベンゼン環プロトンのうち2位のプロトンに対応するピークをピークCとし、それぞれのピークの波形をローレンツ・ガウス曲線にて分離しそれぞれの積分値を求め、以下の式によりエステル交換率Xを求める。
X=Sc/(Sa+Sb+Sc)
(Sa,Sb,Scはそれぞれピーク分離後のピークA,ピークB,ピークCの積分値である。)
【0017】
<添加剤>
感熱フィルムには、閃光照射する光源の波長域に吸収ピークをもつ添加剤等を添加しても良い。また、多孔性支持体との接着性を向上させるため、感熱フィルムの表面を、空気、炭酸ガスまたは窒素ガス中で、コロナ放電処理をしたものでも良い。さらに、本発明の感熱孔版印刷原紙用フィルムに、潤滑剤、界面活性剤を塗布または練り込んだ場合、原紙との離型性が改されるため、好適である。
【0018】
また、感熱フィルムの滑り性を改良するため有機、無機の添加剤を含有させてもよい。本発明においては、延伸倍率を比較的大きくするため、添加粒子の平均粒径が大きいと製膜時に破断が発生しやすい。添加粒子の最大(複数種の添加粒子が存在する場合)平均粒径は3μm以下、さらには2μm以下が好ましい。また、例えば球状シリカ粒子のような球状滑剤の添加が好ましく、該滑剤の平均粒径のうち一種類は1.5±0.5μm程度、他の一種類は0.3±0.2μm程度の2種類の大きさのものであることがより一層好ましい。
【0019】
<多孔質支持体>
本発明の感熱フィルムと貼り合せる多孔質支持体としては、特に限定されないが、和紙、天具帖、合成繊維抄造紙、各種織布、不織布などをその代表例として挙げることができる。また、使用する多孔質支持体の坪量は、特に限定されないが、通常は2〜20g/m2、好ましくは5〜15g/m2程度のものが使用される。また、メッシュ状シートを用いる場合は、20〜60μmの太さの繊維を織ったものを使用するのが、また格子間隔としては20〜250μmのものを使用するのが好ましい。本発明の感熱フィルムと多孔質支持体を貼り合せるのに使用される接着剤としては、特に限定されないが、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂をその代表例として挙げることができる。
【0020】
<製造方法>
次に本発明の感熱孔版印刷原紙用フィルムの製造方法について説明する。
本発明のフィルムは、前述した3種類の樹脂原料に前記滑剤を適量添加して混合し、十分乾燥した後、押出機に供給し、スリット状ダイ(例えばT−ダイ)により、またはインフレーションキャスト法などにより溶融製膜した後、二軸延伸することによりフィルムは得られる。二軸延伸の方法は、特に限定されるものではないが、逐次二軸延伸や同時二軸延伸(ステンター法、チューブ法)を用いることができる。また、このようにして得られた二軸延伸フィルムは適宜熱処理を施してもよい。熱処理条件は特に限定されないが、80〜200℃で弛緩率20%以下の範囲で行なうのが好ましい。
【0021】
<フィルム厚み>
本発明においては、二軸延伸フィルムの厚みは0.2〜7μmであることが必要であり、好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは0.8〜3.5μmである。厚みが0.2μm未満のものでは多孔性支持体との貼り合わせが困難になり、印刷が不鮮明で濃淡斑が出やすく、耐刷性も低下する。一方、厚みが7μmを超えるものでは感度が低く、印刷に欠落部を生じたり、太さの斑となるため、好ましくない。
【0022】
<熱収縮率>
本発明の感熱フィルムは、100℃10分における縦横各々の熱収縮率が縦方向熱収縮率(SMD)と横方向熱収縮率(STD)の各々が10〜25%であることが好ましい。さらに好ましくは12〜23%である。熱収縮率が10%未満ではフィルムの製版感度が悪くなるため実用上問題を生じることがある。逆に25%を超えると孔の形状の維持が困難となり、過大なインクの消費量となり好ましくない。また、感熱孔版原紙の保存時の予期しない高温(50℃以上)による皺やカールの発生または顕在化を防止するために、50℃120分の熱収縮を2%以下にすることが好ましい。
【0023】
<固有粘度>
本発明の感熱フィルムの固有粘度は0.48以上0.85未満であることが好ましい。さらに好ましくは0.58以上0.80未満である。0.85を超えるとフィルムの粘度が高いため結晶化し難くなり穿孔形状の維持が悪くなる方向になる。また逆に、0.48未満では著しく製膜性が難しくなる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明における種々の物性値および特性は以下の如く測定されたものであり、また定義される。
【0025】
(1)フィルム融点(Tm)
フィルム10mgをTA Instruments Thermal Analyst 2100型を用い、N2気流中で20℃/minの昇温速度で加熱し、該フィルムの融解にともなう吸熱挙動を1次微分で解析し、1次微分の値が0になるところを融解ピーク温度(Tm)として決定した。また主融解ピークの範囲の中でDSC曲線の傾きが正領域にある1次微分曲線の谷となるところをショルダー温度として決定した。なお、融解ピーク温度が2つ以上存在する場合は、最も高温側の融解ピーク温度を融点とした。また、ポリエステル(A)〜(C)についても、原料チップ10mgをそれぞれ上記と同じ方法で測定して求めた。
【0026】
(2)フィルム厚さ
フィルムの厚さt(μm)は、幅W(m)、長さl(m)のフィルムの重さをG(kg)、密度をd(kg/m3)としたとき、次式で計算して求めた。
【0027】
t=G/Wld × 106
【0028】
(3)固有粘度([η])
o−クロロフェノールを溶媒として用い、25℃で測定した値で、単位は100cc/gである。
【0029】
(4)熱収縮率
所定の温度に設定したギヤーオーブン中に縦横にそれぞれn=5の30cmの標点印を付けたフィルムサンプルを投入し、所定時間放置後の標点距離を測定し、下記式により求めた値の平均値を熱収縮率とした。
熱収縮(%)=(30cm−処理後の標点距離cm)/30cm×100
【0030】
(5)文字印刷の評価
(5−1)文宇の鮮明さの評価
感熱孔版用フィルムにポリエステル紗でできた多孔性支持体を貼り合せて作成した感熱転写リボンを用い、JIS第1水準の文字を、文字サイズ2.0mm□で印刷して下記の基準で評価した。なお、印刷は閃光照射方式(「RISO名刺ごっこ」、理想科学工業株式会社製)およびサーマルヘッド穿孔方式(「SS950」、リコー株式会社製)それぞれについて行い、判定結果の悪い方を最終評価とした。
評価は肉眼判定でA,B,Cの3段階とし、Aは原稿と同様に見えるもの、Bは原稿と異なり線が部分的に切れたりくっついたりしているが判読は可能なもの、Cはほとんど判読が出来ない状態まで切れたりついたりしているものである。
【0031】
(5−2)文字の欠落の評価
(5−1)と同様の製版、印刷を行い、文宇の欠け方を評価した。文字の欠落がないものを○、明らかに欠けた部分のあるものを使用不能とし×印で示した。また、完全な欠落状態ではないが、わずかに(判読可能な範囲で)欠落が認められるものを△印で示した。
【0032】
(5−3)文字の太さ斑の評価
(5−1)と同様の製版、印刷機を用いて、文字サイズ5.0mm□の文字を印刷し、その印刷状態を内眼で評価した。原稿の文宇に比べ、明らかに文字の太さ斑のあるものを外観が悪く使えないものとして×印、太さ斑のないものを外観が良く、使用可能として○印で示した。
【0033】
(5−4)文宇の太さの評価
(5−3)と同じように製版、印刷し、文字の太さの変化について、肉眼で評価した。原稿の文字の太さと比較し、明らかに太くなったり、細くなったりしているものを使用できないものとして×印で示し、太さの変化のないものを○印で示した。また、わずかに太くなったり、細くなったりしているが使用可能なものを△印で示した。
【0034】
(6)ベタ印刷の評価
(6−1)ベタ印刷の鮮明さの評価
1〜5mmφの黒丸(丸で中が黒くぬりつぶされたもの)を原稿として用いて、前述と同様の製版、印刷したものを次のように評価した。原稿のサイズを基準として、その輪郭の凹凸(部分的な)で判定した。原稿のサイズより200μm以上凹凸のできたものを外観悪く不鮮明とし×印で、50μm以下の凹凸のものを鮮明なものとし○印で示した。この中間のものを△印で示した。使い方によっては△でも使用可能である。
【0035】
(6−2)ベタ印刷の原稿サイズ再現性
(6−1)と同様に印刷し、全方向(0°と180°、45°と225°、90°と270°、135°と315°の位置で)のサイズを評価し、原稿のサイズとの大きさの対応性を評価した。原稿サイズに比べ500μm以上異なるもの(大きい時も小きい時もある)を対応性が悪いものとして×印で示し、50μm以下のものを対応性が良いものとして○印で示した。その中間のものを△印で示したが、用途によっては使用可能なものである。
【0036】
(6−3)ベタ印刷の濃淡斑の評価
(6−1)と同様に印刷し、ベタ印刷の濃淡の斑があるか、ないかを肉眼で評価した。濃淡斑のあるものを×印で示し、わずかにあるものを△印で示し、ないものを○で示した。
【0037】
(7)感度の評価
鉛筆硬度5H、4H、3H、2HおよびHの5種類を用意し、押付け圧130gで文字を書いたものを原稿とし、この原稿を用いて、その文字が判読できるか否かで評価した。5Hで書いた最も淡色の字が判読できるものが最も高感度であり、より濃色の鉛筆で書いた文字しか判読できないもの程低感度であると判定する。
【0038】
(8)耐久性の評価
前述した印刷機で感熱フィルムが破損するまでに刷れる枚数(以下、耐刷枚数という。)で表した。
【0039】
(9)皺の評価
試料を二つに分け、一つは通常の方法でポリエステル紗と貼り合せた。他の一つはA4版が採れる程度の狭幅にスリットし、両端を幅出しローラーでニップするなどして皺を極力入らないように入念にポリエステル紗と貼り合せた。両者の感度評価を上記(7)の方法で実施し、感度差を以下の基準で評価した。感度差が大きいほど皺の程度が不良と判定する。
◎:感度差なし
○:感度差が1段階あり
△:感度差が2段階あり
×:感度差が3段階以上あり
【0040】
(10)保存性の評価
貼り合わせ加工済みの原紙を60℃のギヤーオーブン中に2時間放置した後に皺とカールを目視評価し、次の基準で判定した。
○:放置前後で実用上支障のある変化が生じなかったもの。
×:放置前後で実用上支障のある変化が生じたもの。
【0041】
(11)エステル交換率
フィルムから該当するポリエステル組成物を約10mg削り取り、CDCl3:CF3COODの混合溶媒に溶解後、600MHz 1H−NMRにて測定した。検出されたエチレングリコール−イソフタル酸−エチレングリコール分子配列に対応するイソフタル酸のベンゼン環プロトンのうち2位のプロトンに対応するピークをピークA、エチレングリコール−イソフタル酸−ジエチレングリコール分子配列に対応するイソフタル酸のベンゼン環プロトンのうち2位のプロトンに対応するピークをピークB、エチレングリコール−イソフタル酸−1,4−ブタンジオール分子配列に対応するイソフタル酸のベンゼン環プロトンのうち2位のプロトンに対応するピークをピークCとし、それぞれのピークの波形をローレンツ・ガウス曲線にて分離しそれぞれの積分値を求め、以下の式によりエステル交換率Xを求める。
X=Sc/(Sa+Sb+Sc)
(Sa,Sb,Scはそれぞれピーク分離後のピークA,ピークB,ピークCの積分値である。)
【0042】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
熱可塑性ポリエステル樹脂原料として、イソフタル酸共重合ポリエチレンヘキサメチレンテレフタレート(共重合比:3,5,10mol%、固有粘度はそれぞれ1.30)、ポリブチレンテレフタレート(固有粘度は1.10)、アジピン酸15モル%共重合ポリブチレンテレフタレート(固有粘度は0.90)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合比:10,12,15mol%、固有粘度はそれぞれ0.65)を表1に示すように用い、十分乾燥した後、押出機に供給し、使用した樹脂組成に適した温度を245〜310℃から選択して溶融押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃のキャスティングドラムにて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。尚比較例4は実施例1の押出温度より20℃高い温度でかつ押出系での滞留時間が2倍になる条件で押出した。この未延伸フィルムを、使用した樹脂組成に適した延伸温度を50〜130℃から選択して縦方向に3.2〜4.0倍、横方向に3.5〜4.5倍の倍率で逐次二軸延伸を施した後、一旦冷却した後100〜150℃で2%弛緩しつつ熱処理を施した。このようにして得られた厚さ1.6μm(比較例4は7.1μm)の二軸延伸フィルムをポリエステル紗(ポリエチレンテレフタレート繊維よりなる)と貼り合わせ、製版・印刷機にかけ評価した。その評価結果を表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明の感熱孔版印刷原紙用フィルムは、次のような優れた作用効果を発現する。すなわち、該フィルムを用いた原紙は、
(1)文字およびベタ印刷のいずれにも鮮明な製版、印刷が可能である。
(2)文字およびベタ印刷で太さ斑、濃淡斑のない製版、印刷が可能である。
(3)感度が著しく高い。しかも適切な文字濃度で、耐刷性に優れており、適切なインキの消費量である。
(4)皺が無く、安定して高感度を得られる。
(5)カールが少なく、保存性が優れている。
Claims (1)
- 厚さ0.2〜7μmの二軸延伸フィルムであって、該フィルムは、テレフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを主たる構成成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し5〜10mol%含むポリエステル(A)0.1〜15重量%、テレフタル酸および1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とするポリエステル(B)25〜49重量%、およびテレフタル酸およびエチレングリコールを主たる構成成分とし、さらにイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し12〜15mol%含むポリエステル(C)35〜65重量%を含む組成物からなり、かつ該フィルムの融点(Tm)が下記式(1)を満足し、かつ該組成物のエステル交換率が3%以上13.2%以下であることを特徴とする感熱孔版印刷原紙用フィルム。
(Tm(b)+Tm(c))/2-50(℃)≦Tm(℃)≦(Tm(b)+Tm(c))/2-10(℃) ・・(1)
(上記式中、Tm(b)、Tm(c)、Tmはそれぞれポリエステル(B)の融点、ポリエステル(C)、フィルムの融点を表わす。なお、フィルムが2つ以上の融解ピークを有する場合、最も高温側の融解ピークの温度をフィルムの融点と定義する。)
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