JP2735569B2 - 光ディスク原盤の製造方法 - Google Patents

光ディスク原盤の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、光ディスクの複製に使用される光ディスク
原盤の製造方法に関するものである。
(従来の技術) 良質のディジタル・オーディオやビデオの再生システ
ムとして、光ディスク・システムが普及している。この
光ディスクの製造に際しては、まず原盤が製造され、こ
の原盤から多数の光ディスクが複製される。
従来、光ディスク原盤の製造は、第2図に示すような
工程によって行われている。
まず、準備されたガラス円板11の表面が研磨され洗浄
され(工程A)、この表面に塗布によりフォトレジスト
層12が形成され(工程B)、レーザカッティング・マシ
ンにより記録信号パターンに対応した明暗のパターンの
光ビームが照射される(工程C)。次に、現像機におい
てフォトレジスト層12内の露光部分又は非露光部分が選
択的に溶解・除去されることによりフォトレジスト層12
の凹凸を有する記録原盤が作成される(工程D)。引き
続き、所定の複製パターンに従ってフォトレジスト層12
が残留する記録原盤上に、蒸着やスパッタリングにより
電鋳の下地となる金属の薄膜13が形成され(工程E)、
電鋳によって相当な厚みのニッケル層14が形成される
(工程F)。最後に、上記ニッケル層14をガラス円板11
から剥離することにより(工程G)、ニッケル層14の原
盤が得られる。
(発明が解決しようとする課題) 上述した従来の光ディスク原盤の製造方法において
は、電鋳の前段階における蒸着やスパッタリングのため
の真空環境の形成と、その後のニッケル電鋳の工程に長
時間を必要とする。このため、製造時間が長引くととも
に、歩留りも低下するといった課題があった。また、従
来の製造方法により製造された光ディスク原盤は、ガラ
ス円板11から剥離させたニッケル層14からなるものであ
り、凹凸パターンを有するフォトレジスト層12が形成さ
れた記録原盤そのものを光ディスク原盤としたものでは
ない。これは、ただ単にフォトレジスト層12を残留させ
たガラス円板11は、耐久性に乏しく、そのままではスタ
ンパとして繰り返し使用するのに相応しくないという理
由からであった。
一方また、特開昭49−93002号「円盤状情報キャリア
およびその製造方法」には、ガラス基板上にシリコン酸
化物SiOx(x=1〜2)層の基層を蒸着形成し、さらに
スパッタ処理によりクロミウム等の金属薄膜を被覆し、
さらにフォトレジスト層を被覆し、記録信号に応じてフ
ォトレジスト層を露光し、現像処理により露光部分又は
非露光部分を除去し、最後に腐食処理を施してフォトレ
ジスト層に覆われていない部分の薄膜及び基層を除去す
ることにより、円盤状情報キャリアを製造する光ディス
ク原盤の製造方法が開示されている。
しかしながら、この種の原盤製造方法は、フォトレジ
ストの露光・現像以外にシリコン酸化物層や他の補助膜
を全面塗布し、順次除去処理を施す必要があり、製造工
程が非常に複雑であるといった課題があった。また、情
報パターンを形成するシリコン酸化物SiOx(x=1〜
2)は、真空室内で蒸着によりガラス基板上に塗布され
るが、蒸着によりガラス基板上に塗布されたシリコン酸
化物は、化学的結合によるものではないため、ガラス基
板との密着性が十分ではなく、スタンパとしての繰り返
し使用回数に限界がある等の課題を抱えるものであっ
た。
また、特開昭57−30130号「ビデオディスクスタイラ
ス用溝付研磨皿原盤」には、プラスチック円板をプレス
成型し、研磨材(SiO2)を被着して研磨皿を作成し、こ
の研磨皿を回転させながらスタイラス溝を刻設して原盤
を製造するようにした原盤製造方法が開示されている。
しかしながら、プラスチック円板に対する研磨材(Si
O2)の被着は、化学的結合によるものでないため、プラ
スチック円板との密着性が弱く、スタンパとしての繰り
返し複製の耐用回数に限界がある等の課題があった。
さらにまた、特開昭59−3731号「情報原盤の製造方
法」には、ガラス基板上にシリコン酸化物よりなる凹凸
情報形成層を形成し、その上に有機物質よりなる補助層
および金属層を形成した後、金属層に情報により強度変
調された収束光を照射して金属層の所定部分を穿孔除去
し、さらに金属層除去部分を窓として補助層をエッチン
グし、次に補助層除去部分を窓として補助層は実質的に
エッチングせずに凹凸情報形成層のみをエッチングし、
凹凸情報形成層に凹凸よりなる情報を形成し、最後に補
助層および金属層を除去して原盤を製造するようにした
原盤製造方法が開示されている。
しかしながら、こうした原盤製造方法は、製造工程が
非常に複雑であり、しかも製造された情報原盤は、その
情報形成面上にニッケル層を形成し、このニッケル層を
情報原盤から取り外し、基台上に接着してスタンパとす
るように、スタンパのための原盤でしかなく、光ディス
ク等のための最終原盤とはなり得ないものであった。こ
れは、凹凸情報形成層を形成してシリコン酸化物を付着
させたガラス基板が、シリコン酸化物とガラス基板との
密着強度が保証されないためであり、それ自体をスタン
パとして用いるほどの耐久性をもたないからであった。
(課題を解決するための手段) 本発明は上記課題を解決したものであり、基板上にポ
リシランを主成分とするフォトレジスト層を塗布する塗
布工程と、前記フォトレジスト層内の所定箇所に選択的
に光ビームを照射する露光工程と、前記フォトレジスト
層内の露光部分又は非露光部分のみを選択的に溶解し除
去する現像工程と、該現像工程を経て前記基板上に残留
するフォトレジスト層を空気中で焼き締める焼き締め工
程とを含むことを特徴とするものである。
(実施例) 以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細
に説明する。第1図は、本発明の一実施例に係わる光デ
ィスク原盤の製造方法を、製造途中の原盤の断面図によ
って示す工程図である。
まず、ガラス、石英、サファイア、シリコン結晶、ア
ルミニュウム合金、ステンレス鋼、表面にニッケル燐
(NiP)合金層が形成されたアルミニュウム−マグネシ
ュウム合金などを素材とする円板1が準備され、その表
面が研磨され洗浄される(研磨・洗浄工程A)。
次に、このガラス円板1の表面に、ポリシランを主成
分とするフォトレジスト層2が、スピンナーなどを利用
した塗布により、化学的に結合した状態で形成される
(塗布工程B)。このポリシランとしては、応用物理第
55巻(1986年)第11号に掲載された「ポリシラン合金」
と題する古河らの論文に記載されているような、 ジメチルポリシラン [Si(CH3x,x〜103 メチルプロピルポリシラン (SiCH3C3H7x,x〜104 ポリシラスチレン ([Si(CH3(SiCH3C6H5x,x〜104 或いは、日経ニューマテリアルズ1987年8月3日号の
第60乃至61頁に記載されたフェノール置換ポリシロキサ
ンや、シルセスキオキサン(ラダーシリコーン)など適
宜なものが使用される。
続いて、レーザカッティング・マシンにより記録信号
パターンに対応した明暗のパターンの光ビームが照射さ
れ、フォトレジスト層2の露光が行われる(露光工程
C)。この後、現像機においてフォトレジスト層2内の
露光部分又は非露光部分が選択的に溶解・除去されるこ
とにより、フォトレジスト層2の除去の有無に応じた凹
凸を有する記録原盤が作成される(現像工程D)。引き
続き、この記録原盤が恒温槽内で10分間から数時間の期
間にわたって400℃から100℃程度の温度に保持され、ポ
リシランを主体とする残留フォトレジスト層の焼き締め
(熱分解及び酸化)が行われる(焼き締め工程E)。
残留フォトレジスト層の主体となるポリシランは、珪
素(Si)、水素(H)、炭素(C)などを含む重合体と
なっており、恒温槽内で加熱されると熱分解し、水素成
分は、そのまま或いは大気中の酸素と化合し水蒸気(H2
O)となって蒸発、散逸する。一方また、炭素成分は、
大気中の酸素と化合して一酸化炭素(CO)や二酸化炭素
(CO2)となって蒸発、散逸する。さらにまた、残留フ
ォトレジスト層は、大気中の酸素と結合して酸化され、
SiOx(1<x<2)という硬質の非晶質シリコン酸化物
層に変成される。この非晶質シリコン酸化物層の膜厚が
700〜800Å(オングストローク)となるように、塗布時
のフォトレジスト層の厚みが調整されており、この焼き
締めにより、目的とする光ディスク記録原盤が完成す
る。
このように、上記光ディスク原盤は、基板1上にポリ
シランを主成分とするフォトレジスト層2を塗布する塗
布工程Bと、フォトレジスト層2内の所定箇所に選択的
に光ビームを照射する露光工程Cと、フォトレジスト層
2内の露光部分又は非露光部分のみを選択的に溶解し除
去する現像工程Dと、現像工程Dを経て基板1上に残留
するフォトレジスト層2を空気中で焼き締める焼き締め
工程Eとを踏んで製造されるが、塗布工程Bにおいて基
板1上に塗布したポリシランを主成分とするフォトレジ
スト層2が、基板1に対して化学的に結合して強固に接
着されるため、このフォトレジスト層2を選択的に露光
して現像し、残留フォトレジスト層2を焼き締めたとき
に、そのまま或いは水蒸気となって蒸発する水素成分
(H)や、大気中の酸素と化合して一酸化炭素や二酸化
炭素となって蒸発する炭素成分(C)を除き、シリコン
成分(Si)だけをシリコン酸化物として基板上に焼き締
めることができる。従って、残留フォトレジスト層を確
実にSiOx(1<x<2)の組成をもった硬質の非晶質シ
リコン酸化物層に変成させることができ、しかもこの非
晶質シリコン酸化物層は、スパッタリング等により基板
に蒸着されたSiOx等と異なり、基板1に対する密着性は
きわめて強固であるから、出来上がった原盤をニッケル
電鋳等によりニッケル板等に複写しなくとも、そのまま
スタンパとして光ディスクの製造に供することができ
る。また、従来の長時間を要する蒸着やスパッタリング
や電鋳等の工程が不要になるので、製造時間が大幅に短
縮されるとともに、歩留りが向上する。
なお、ポリシランを主体とするフォトレジスト層とし
ては、ネガ型、ポジ型のいずれもが使用できる。ネガ型
では、記録データのパターンでそのまま露光すれば、こ
の露光部分が現像によって溶解、除去されるので反転パ
ターンの原盤が容易に得られる。ポジ型のポリシランを
用いる場合には、記録データのパターンを反転したもの
が露光時のパターンとして使用される。
(発明の効果) 以上詳細に説明したように、本発明の光ディスク原盤
の製造方法によれば、基板上にポリシランを主成分とす
るフォトレジスト層を塗布する塗布工程と、前記フォト
レジスト層内の所定箇所に選択的に光ビームを照射する
露光工程と、前記フォトレジスト層内の露光部分又は非
露光部分のみを選択的に溶解し除去する現像工程と、該
現像工程を経て前記基板上に残留するフォトレジスト層
を空気中で焼き締める焼き締め工程とを含むため、塗布
工程において基板上に塗布したポリシランを主成分とす
るフォトレジスト層が、基板に対して化学的に結合して
強固に接着され、このためこのフォトレジスト層を選択
的に露光して現像し、残留フォトレジスト層を焼き締め
たときに、そのまま或いは水蒸気となって蒸発する水素
成分や、大気中の酸素と化合して一酸化炭素や二酸化炭
素となって蒸発する炭素成分を除き、シリコン成分だけ
をシリコン酸化物として基板上に焼き締めることがで
き、これにより残留フォトレジスト層を確実にSiOx(1
<x<2)の組成をもった硬質の非晶質シリコン酸化物
層に変成させることができ、しかもこの非晶質シリコン
酸化物層は、スパッタリング等により基板に蒸着された
SiOx等と異なり、基板に対する密着性はきわめて強固で
あるから、出来上がった原盤をニッケル電鋳等によりニ
ッケル板等に複写しなくとも、そのままスタンパとして
光ディスクの製造に供することができ、また従来の長時
間を要する蒸着やスパッタリングや電鋳等の工程が不要
になるので、製造時間が大幅に短縮されるとともに、歩
留りが向上する等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の光ディスク原盤の製造方法の一実施
例を製造途中の原盤の断面図によって示す工程図、第2
図は、従来の光ディスク原盤の製造方法の一例を製造途
中の原盤の断面図によって示す工程図である。 1……ガラスなどの円板(基板) 2……ポリシランを主体とするフォトレジスト層

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上にポリシランを主成分とするフォト
    レジスト層を塗布する塗布工程と、前記フォトレジスト
    層内の所定箇所に選択的に光ビームを照射する露光工程
    と、前記フォトレジスト層内の露光部分又は非露光部分
    のみを選択的に溶解し除去する現像工程と、該現像工程
    を経て前記基板上に残留するフォトレジスト層を空気中
    で焼き締める焼き締め工程とを含むことを特徴とする光
    ディスク原盤の製造方法。
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