JP2753388B2 - スタンパの製造方法 - Google Patents

スタンパの製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、光ディスク用基板を複製する際に用いるス
タンパの製造方法に係り、特に忠実にスタンパ形状を転
写して光ディスク用基板を成形できるスタンパの製造方
法に間する。
〔従来の技術〕
再生専用の光ディスク用基板を複製する際に用いる従
来のスタンパの製造方法について、第9図を用いて説明
する。先ず、ガラス盤上に感光剤を塗布し、これに情報
を記録するためにレーザ光による所定の露光を施す。そ
してこれを現像し微細な凹凸面を有する原盤を作成す
る。この原盤を用いてスタンパを製造するために、基板
全面にスパッタ法により約600ÅのNi膜を形成する。こ
のNi薄膜を表面の導体化層とし、これを電解めっきの陰
電極としてNiを所定量電着させ、これを原盤より剥離
(離型とも称す)し、原盤に記録した凹凸を反転したパ
ターンを有するスタンパを得る。この剥離後のスタンパ
表面には、感光剤の付着があるためこれを取り除くため
に酸素プラズマ照射によるアッシングを行なう。こうし
て作成したスタンパを光ディスク製造用の射出成形機の
金型に取付け、光ディスク用基板を複製する。
なお、これら従来技術に関連するものとしては、例え
ば特開昭57−103107号公報及び日本工業技術センター発
行の「光ディスクプロセスの要点No.5」がある。
また、特開昭63−255849号公報にみられるように、酸
素プラズマ照射によるアッシング処理の後に、窒素ガス
を主成分とする反応ガスを真空層内に供給して、窒素ガ
スプラズマ中でスタンパの窒化を行い長寿命化を実現し
ようと云う提案もなされている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術は、ディスク成形時におけるスタンパと
成形樹脂との剥離性が悪く、再生信号が劣化するという
問題があった。即ち、原盤から剥離したあとのスタンパ
表面には感光剤の残留付着がある。この付着レジストの
除去を、酸素プラズマ照射によるアッシング処理で行な
っている。これによりスタンパ表面の残留感光剤は完全
に除去でき、微細な凹凸を有する表面が完全に露出され
る。しかしながら、この酸素プラズマ照射により、スタ
ンパ表面には化学的に酸素が導入されるという問題が生
じてきた。このため、スタンパ表面におけるプラスチッ
クとの親和力が向上し、成形時の離型性が低下する。そ
してこの現象は、細かい凹凸を転写するプラスチック基
板の転写状態を劣化させる。即ち、スタンパ表面とプラ
スチックとの密着性が良いと離型の際スタンパ表面の凹
みにプラスチックが付着残留し、次ぎの成形時にはこの
付着残留物が作用してスタンパの凹凸を忠実に転写でき
ず再生信号が劣化するという問題があった。
この様子について詳しく述べると、スタンパによりそ
の信号を転写した基板には、第7図に示すように基板側
にスタンパ製造時の原盤同様の凹のピットが形成され
る。このようなピット列の形成された面に反射膜として
アルミ膜が成膜される。そしてこのピットを直径1μm
程度に収束されたレーザビームにより基板側からトレー
スした場合、その反射光量は第6図に示すようになる。
ピット部分ではそのエッジ部分で光が回折され、反射光
量は減少する。この時の反射光量の変化比が信号対雑音
比(以下S/N)に相当する。
スタンパ表面に酸素が導入され成形するプラスチック
との親和力の高いスタンパで基板成形を行なった場合、
スタンパのエッジ部分にプラスチックが残留し、転写ピ
ット形状が第10図に示すように台形状になる。即ち、成
形の際250℃程度に加熱し流動性を帯びた樹脂を金型に
流し込み加圧してスタンパ形状を転写させ、樹脂を冷却
し基板を得るが、金型から固化した樹脂を剥離する際、
樹脂とスタンパの密着力が大きいと樹脂がスタンパに残
留付着する。この現象は主にスタンパの形状から付着力
の集中するピットのエッジ部分で起こる。結果的に第10
図に示すように台形状のピットを転写することになる。
この様なピットでは、ピットエッジにおける回折効果が
小さくなり、かつ、有効反射面積が大きくなるために、
ピットからの反射光量は多くなる。このため特に小ピッ
トにおいて、反射光量の変化が検出できず、これが信号
欠陥となる。この様子は先に示した第6図からも明白で
ある。即ち、ピット形状が矩形から台形状になることか
ら、その反射光量は多くなり、S/Nが小さくなる。
また、前述したように、スタンパ表面を酸素プラズマ
照射によりアッシング処理した後に、窒素ガスを主成分
とする反応ガスを真空槽内に供給して、窒素ガスプラズ
マ中でスタンパ表面を窒化処理する方法も提案されてい
る。しかし、この方法は窒化処理でスタンパ表面を硬化
し強度を増強させるという点では有効であっても、スタ
ンパ表面を窒素プラズマで反応させるため酸素プラズマ
照射によるアッシングで導入された酸素を除去する点で
は、なお不十分であり、S/N特性を向上させるためには
更に改善が必要であった。
したがって、本発明の目的は上記従来の問題点を解消
することにあり、原盤に忠実なスタンパを製造し、良質
の光ディスクを成形することのできるスタンパの製造方
法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、従来のスタンパ製造工程
の酸素プラズマアッシングの後に、新たに不活性ガスに
よるプラズマ処理工程を付加したスタンパの製造方法と
したものである。この不活性ガスによるプラズマ処理工
程としては、ガス種が異なるだけでガス圧等については
略酸素プラズマアッシングに類似した工程をとる。した
がって、酸素プラズマアッシング工程に引き続き、プラ
ズマガスを不活性ガスに切り替えるだけでよく、工程上
複雑になることはない。
上記不活性ガスとしてはスタンパ表面と反応しない周
期率表のゼロ族元素、即ち、Ar、Kr、Xe、Ne、Rn等のガ
スが使用でき、これらのガス組成は単独でも2種以上の
混合系でもよい。処理時間は処理装置の立上りを考慮し
て実用的には1分以上が好ましい。上限はガス種により
多少の差はあるが8〜12分程度が望ましい。処理時間が
長すぎるとスタンパの表面がスパッタエッチングされ逆
効果となるのでそれを考慮して上限を設定することが望
ましい。
〔作用〕
第2図は、スタンパ表面の酸素除去に不活性ガスプラ
ズマ処理工程が如何に有効であるかを説明するための特
性曲線図を示したもので、比較例として酸素プラズマ照
射後の酸素信号強度、さらに不活性ガスプラズマ照射処
理した本発明のスタンパ表面の酸素信号強度を深さ方向
のオージェ分析結果としてそれぞれ示したものである。
この分析結果から、酸素プラズマ照射によるアッシング
により表面から約50Åの深さまで酸素が高濃度で侵入し
ていることが分かる。そしてこれに例えばArの如き不活
性ガスプラズマを照射することによりスタンパ表面にお
ける濃度を低減でき、侵入深さも約20Åにまで抑えるこ
とができる。
即ちこの結果から、基板成形のプラスチックとの親和
力を左右する酸素の濃度が、不活性ガスプラズマを照射
することにより低下し、成形の際の微細部分に着目した
ときの剥離性(離型性)が向上し微細な欠陥が減少する
ものと推考する。事実、本発明者等は、これを実際に確
認しており、以下にこの実験結果について述べる。
従来法に従いスタンパ製造の最終工程で酸素プラズマ
照射して得たスタンパを試料とし、これに不活性ガスプ
ラズマとしてArプラズマ照射を行なったスタンパを用い
てアクリル樹脂で基板を成形した。光ディスクの構成
は、第5図に示すように、この試料基板1上にアルミ膜
2、保護膜3、接着膜4を順次形成し、これと同じ構成
のものを貼りあわせた構造とした。比較例として不活性
ガスプラズマ処理を行なわないものをも準備し、これら
両者を再生機により再生し、画面上の欠陥をカウントし
た。この結果を第3図に示す。図中、比較例のArプラズ
マ照射時間ゼロの試料は、酸素プラズマ照射しか行なっ
ていないスタンパを用いて成形した基板での結果であ
る。
この結果から、Arプラズマ照射処理を施したスタンパ
を用い基板成形を行なうことにより、欠陥の少ない光デ
ィスクが提供できることがわかった。しかし、このArプ
ラズマ照射時間には、後の実施例の項でも触れるが、実
用上許容できる上限がある。これは以下に述べるよう
に、必要以上に処理時間を長く過剰にすると再生信号の
S/Nが低下するためである。即ち、スタンパ上の微細な
凸部は過剰な処理を受けると、プラズマ中のイオン衝突
によりエッチングされる。このエッチングはピットのエ
ッジ部でまず顕著に生じ、ピット形状が矩形であったも
のが台形状に変形してしまう。そしてこのスタンパを用
いて基板を成形した場合、基板に転写されるピットの形
状は第8図に示すようになる。つまり、エッジ部がこの
ように台形状に変形してしまったピットでは、レーザ光
の有効反射面積が増加することになり、反射光量も増加
する。このため凸部と平坦部の反射光量比が小さくな
り、結果としてS/Nが低下する。このように過剰な処理
は弊害をもたらすので、適切な条件下で行なうことが望
ましい。
上述のように、不活性ガスプラズマ処理によりスタン
パ表面形状を大きく変化させること無く、スタンパ表面
に導入された酸素を除去することにより、信号欠陥の少
ない光ディスクが供給できる。
〔実施例〕
以下、図面に従い本発明の一実施例を説明する。
第1図は、本発明によるスタンパ製造の工程図を示し
たものである。
先ず、ガラス基板上に感光性樹脂を塗布し、次いで光
ディスクに記録すべき所定の情報に基づきレーザビーム
により微細な露光を施し、これを現像し、微細な画像情
報に対応した凹凸を持つ基板表面を作成した。次ぎに、
この凹凸を持つ基板表面にめっきの下地処理として、ス
パッタ法によりNiを約600Å形成し表面の導体化を図っ
た。次いで、このNi薄膜を電極にして更に電解めっきに
よりNiをこの表面に電着させた。そして、Niを約0.3mm
電着後、これをガラス基板から剥離してスタンパとし
た。この剥離したNiスタンパには、ガラス基板側の感光
性樹脂が残留しているため、従来法に従ってこれを酸素
プラズマ照射(通称、アッシング)により除去した。こ
の酸素プラズマアアッシングの処理条件は、初期真空度
5×10-3Pa以下、RFパワー300w、スパッタガス圧0.3P
a、照射時間5分とした。
かくして得られた試料スタンパ表面に対し、比較例1
としてN2ガスプラズマを照射することにより、先の酸素
プラズマアッシング処理時にスタンパ表面に導入された
酸素を除去した。このN2ガスプラズマ処理は、酸素プラ
ズマ照射処理に引き続いて行ったもので、その処理条件
は、初期真空度5×10-3Pa以下、RFパワー300w、スパッ
タガス圧0.3Pa、照射時間3分とした。このようにして
作成したスタンパを光ディスクを製造する射出成形機に
取付け、アクリル樹脂を用い基板を成形した。
上述の様にして作成したスタンパを用い成形したアク
リル基板上に、反射膜として真空蒸着法によりアルミ膜
を約700Å形成した。この際の条件は、初期真空度2×1
0-3Pa以下、成膜速度1Å/secとした。この上にホット
メルト系の保護膜及び接着膜をロールコートによりそれ
ぞれ約20μm形成した。そしてこれを2枚貼りあわせて
光ディスクとした。
このようにして作成した光ディスクを再生装置にかけ
てN2プラズマ照射時間を変化させた場合の再生信号強度
の変化(S/N特性)を第4図に示す。この図からN2プラ
ズマ照射により、S/N特性の向上はある程度認められ
る。しかし、このN2プラズマ照射によって窒素がスタン
パ表面のNiと反応して窒化物を生成するため、酸素プラ
ズマアッシング処理による前工程によってスタンパ表面
に導入された酸素を十分に除去できないと云う問題が残
る。
次いで比較例2として比較例1の酸素ガスプラズマ照
射処理のみとし、N2プラズマ照射処理を施さないスタン
パを用いて成形した基板からなる光ディスクを作成し
た。1画面当りの欠陥数は0.1個であり、S/Nが著しく低
下した。
一方、本実施例では不活性ガスとしてArを用い、その
他の製造工程は比較例1と同様にして光ディスクを作成
した。Arプラズマ照射の条件は、初期真空度5×10-3Pa
以下、RFパワー500w、スパッタガス圧0.3Pa、照射時間
5分であった。
この場合の光ディスクの特性を第3図及び第4図に示
した。Arを用いた場合のプラズマ照射時間と再生信号強
度の関係から、実用的な照射時間は第4図に示したよう
に1〜12分が望ましいことが分かった。本実施例による
Arガスプラズマ照射は、比較例1で示したN2プラズマ照
射とは異なり、反応を伴わず物理的にスタンパ表面から
酸素を効果的に除去することができた。
なお、実施例では不活性ガスの代表例として、Arにつ
いて例示したが、その他のKr、Xe、Ne、Rn等の不活性ガ
スについても同様であり、照射時間の実用的に好ましい
上限についてはガス種により多少の差はあるが何れにお
いても、酸素プラズマアッシング処理によってスタンパ
表面に導入された酸素の除去については同様の効果が認
められた。勿論これらの不活性ガスは、単独でも2種以
上を混合使用してもよく、同様の効果が得られることは
云うまでもない。
〔発明の効果〕
本発明によれば、スタンパの微細な凹凸を忠実に転写
するディスク基板が成形でき、信号欠陥の少ない光ディ
スクの製造を可能とする。具体的には、酸素プラズマア
ッシング処理によってスタンパ表面に導入された酸素
を、反応を伴わずに効果的に除去できると云う効果を有
している。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明によるスタンパ製造の工程図、第2図は
スタンパの表面の酸素濃度分析結果を示す特性曲線図、
第3図は不活性ガスプラズマ照射時間と欠陥数との関係
を示した特性図、第4図はプラズマ照射処理時間とS/N
との関係を示した特性図、第5図は光ディスクの断面構
成図、第6図はピット形状と反射光波形との関係を示し
た説明図、第7図は基板上のピット形状を示した説明
図、第8図はプラズマ照射が過剰な場合の基板上のピッ
ト形状を示した説明図、第9図は従来のスタンパ製造工
程図、そして第10図は基板成形時におけるスタンパの離
型後の状態と、基板のピット断面形状との関係を示した
説明図である。 <符号の説明> 1……基板、2……アルミ膜、 3……保護膜、4……接着膜。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小西 捷雄 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地 株式会社日立製作所家電研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−255849(JP,A) 特開 昭61−82346(JP,A) 特開 昭61−214159(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 7/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス基板上に感光剤を塗布する工程と、
    この塗布膜に所定の情報に基づく記録をレーザビームの
    露光により形成し、これを現像して微細な凹凸の形成さ
    れた表面を有する原盤を形成する工程と、前記原盤表面
    に導電膜を形成し、これを電極として所定厚さの金属を
    めっきする工程と、前記微細な凹凸を転写した導電膜及
    び金属めっきにより形成されたスタンパを前記原盤から
    剥離する工程と、この剥離されたスタンパ表面を酸素プ
    ラズマアッシングする工程とを備えたスタンパの製造方
    法において、前記スタンパ表面を酸素プラズマアッシン
    グする工程に引き続き、Ar、Kr、Xe、Ne及びRnの群から
    選ばれる少なくとも1種の不活性ガスによるプラズマ照
    射処理工程を付加し、前記スタンパ表面の酸素を除去低
    減するようにして成るスタンパの製造方法。
  2. 【請求項2】上記不活性ガスによるプラズマ照射処理工
    程における処理時間が、少なくとも1分以上で、かつ12
    分以下として成る請求項1項記載のスタンパの製造方
    法。
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JPS6182346A (ja) * 1984-09-29 1986-04-25 Fujitsu Ltd スタンパ製造方法
JPS61214159A (ja) * 1985-03-20 1986-09-24 Hitachi Maxell Ltd 記録媒体用金型の製造方法
JPS63255849A (ja) * 1987-04-14 1988-10-24 Hitachi Maxell Ltd 光記録媒体用スタンパ及びその製造方法

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