JP2728495B2 - コポリイミド繊維の製造法 - Google Patents

コポリイミド繊維の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、宇宙・航空分野或は電子材料分野等におい
て有用な、耐熱性及び機械的性質に優れた繊維を売るコ
ポリイミド繊維の製造方法に関するものである。
(従来の技術) 従来、ポリイミドは耐熱性・機械的特性・電気的特性
・耐候性等の優れた繊維、フイルムその他の成形品の原
料として有用であることが知られている。例えば、4,
4′−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸ジ
酸無水物より製造されるポリイミドからは優れた耐熱性
を有するフイルムが得られ、電気絶縁用途等に広く利用
されている。
また、耐熱性繊維・フイルムの分野では、アラミド系
の繊維や合成紙、ポリイミド系のフイルム等が使用され
ているが、宇宙・航空機用途の先端素材の高度化等によ
って、より高い耐熱性と高強力・高モジュラス等の機械
的特性を有するものが近年要求されるようになってい
る。そこで、耐熱性に優れるポリイミドの機械的特性を
向上せしめるために、剛直骨格ポリイミドの重要性が認
識されつつある。
ところで、ポリイミドの一般的な製法としては、ポリ
イミドは不溶・不融のものが多いことからその前駆体で
あるポリアミック酸からなる成形用ドープを乾式または
湿式成形し、その成形過程においてポリアミック酸を閉
環せしめ、ポリイミド成形体を得る方法が採用されてい
る。
この際、以下のような問題点がある。
1.ポリ−p−フェニレン(或は4,4′−ビフェニレン)
ピロメリットイミドの如き完全剛直骨格を形成するもの
は、その剛直性ゆえにイミド化の過程で結晶化が急速に
進行するために熱延伸性に劣り、その結果高度な機械的
性質が発現されない。更には、分子鎖のモビリティーの
低さゆえイミド化及びそれに伴う結晶化の過程で内部応
力が増大し、フイルム製造の際に亀裂・割れが生じる。
2.ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、湿式成
形において、一般に凝固性が悪く、物性発現の妨げの要
因となっている。
1に関して例を挙げると、繊維学会誌Vol.40 No.12、
T-480〜T-487にも記載されているように、ポリ−4,4′
−ビフェニレンピロメリットイミドからは初期弾性率1,
000g/de以上、強度10g/de以上といった高弾性率,高強
度の繊維は得られず、同時に、このようなポリイミドか
らは実用上使用不可能な脆いフイルムしか得ることがで
きないことが広く知られている。
上記の問題点を考慮して、分子鎖の剛直性を極度に低
下させることなく結晶性を低下せしめ成形性を向上させ
ることにより、良好な機械的性質を示すポリイミドが種
々提案されている。
例えば、特開昭60-97834号公報,特開昭62-77921号公
報,特開昭62-117815号公報等では、ポリイミドを構成
する酸成分或はジアミン成分に屈曲鎖を有するモノマー
を一部共重合するコポリイミドが開示されている。これ
らのコポリイミドからは、確かに高強度の成形体を得る
ことができるが、屈曲鎖の存在により高弾性率を達成す
ることは困難である。また、該コポリイミドの前駆体は
どれも凝固性に劣る。
また、特開昭61-188127号公報,特開昭62-79227号公
報等によれば、2種以上の剛直ジアミンを用い、且つそ
の少なくとも1種は核塩素置換剛直ジアミンであるコポ
リピロメリットイミドが開示されている。これらは、前
記のものと比較して高弾性率を達成できるものである。
しかし、必須成分である核塩素置換剛直ジアミンは反応
性に劣り、その結果、高重合度のポリイミドを得ること
はできず、耐疲労性等に問題を残すものである。また、
該ジアミンは一般に高価なものが多く、工業上の使用に
有利な安価な材料を提供することは困難である。更に、
上記ポリイミドは塩素を含有しており、燃焼時及び廃却
に際して環境汚染の問題を有している。なお、これらの
コポリイミドの前駆体も凝固性に劣るものである。
ところで、剛直骨格を有するポリイミドは、半導体分
野での絶縁コーティング用途においても低熱膨張性とい
う観点から注目を集めており、各種ポリイミドが提案さ
れている。
例えば、特開昭62-253621号公報では、剛直ジアミン
を用いるポリイミドが開示されている。しかし、該公報
によれば、より好ましい実施態様として酸成分に屈曲部
を有する3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸
(誘導体)の25モル%以上の使用が明記されており、ま
た機械的性質,湿式成形時の凝固性という点については
全く触れられていない。また、特開昭63-191830号公報
にも、3,3′−ジメチルベンジジン並びにp−フェニレ
ンジアミン誘導体の剛直ジアミンからなるコポリイミド
が提案されているが、該コポリイミド繊維の前駆体の組
成では、やはり凝固性に劣る。
以上、上記全てのポリイミドにおいて、2の問題につ
いては全く改善されていないといえる。即ち、上記ポリ
イミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液は、最も取
扱の簡便な水系凝固浴中で良好な凝固性を示さない。
2の問題を改善すべく、以下の方法が提案されてい
る。
即ち、特開昭60-65112号公報によれば、酸成分に3,
3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸(誘導体)を
主成分とする可溶性ポリイミドを用いて、該ポリイミド
からなる成形用溶液を凝固させる方法が開示されてい
る。この成形用溶液は、良好な凝固性を示すが、この際
凝固浴としては、メタノール等のアルコール系溶液が使
用されており、取扱の簡便さに欠ける。また、該ポリイ
ミドは、上記酸成分を主体としているため高弾性率化が
達成されないという問題も有している。
また、特開昭59-157319号公報によれば、ポリアミッ
ク酸を無水酢酸等により部分的にイミド化し、その凝固
性を改善する方法が提案されている。この方法は、ほぼ
全てのポリアミック酸に適用可能であるが、成形用溶液
が多成分系になること、及びイミド化が経時的に進行す
るためその制御が困難で均一な成形用溶液を安定して提
供できないという問題を内包している。
この点に鑑みて、本発明者等は以前、特願昭63-22634
4号にて、成形用溶液にアミン類及び/またはpKa4.3以
上の酸の金属塩を添加することにより該溶液の凝固性を
改善する方法を提案した。この方法は経時的変化のない
安定な溶液を提供できるものであるが、やはり成形用溶
液が多成分系となる。
以上の如く、前述の2つの問題を同時に解決し、優れ
た機械的特性を有するポリイミド成形体を簡便なプロセ
スにて与えることのできるポリアミック酸は、未だ存在
しないといえる。
ところで、本発明者等は以前、特願昭63-87312号に
て、ピロメリット酸(誘導体)と剛直ジアミンからなる
ホモポリイミドの高弾性率繊維の製造方法を、また特願
昭63-87313号にて、2,2′−ジメチルベンジジンを主体
とするポリイミドホモポリマーを提案した。この際、ジ
ミアン成分として3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−
ジメトキシベンジジン及び2,2′−ジメチルベンジジン
を用いたポリアミック酸は水系凝固浴中において良好な
凝固性を示すことを知った。また、該ポリアミック酸よ
り得られたポリイミド繊維は優れた機械的性質を示す。
しかしながら、該ポリイミドはホモポリマーゆえ高結晶
性であり、そのため伸度がやや不足しており、折れ易く
取り扱い性等に問題を残すものであった。
(発明の目的) 本発明の目的は、上述の問題点を解決し、優れた耐熱
性、及び機械的性質すなわち高弾性率,高強度且つ適度
な伸度を有するコポリイミド繊維の製造方法を提供する
ことにある。
(発明の構成) 本発明者等は、上記目的を達成せんとしてポリイミド
の化学構造及び紡糸条件の両面から鋭意研究した結果、
特定の化学構造を有するコポリイミドは、コポリマーで
ありながらホモポリマーに劣らない高弾性率を発揮し、
且つ適度な伸度を有していて、更に驚くべきことには、
水系凝固浴を用いる湿式成形において良好な凝固性を示
すこと、また前記特性を有する繊維を得るためには、そ
の成形過程の初期において分子配向を高めておくことが
不可欠であることを知り、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、実質的に下記構成単位
(I)〜(III)より形成され、かつ下記A式を満足す
るコポリアミック酸を含有してなる成形用ドープからポ
リイミド繊維を製造するに際し、該成形用ドープを一旦
不活性雰囲気中に吐出した後、水系凝固浴中に導入する
ことを特徴とするコポリイミド繊維の製造法が提供され
る。
から選ばれる少なくとも1種。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるコポリアミック酸は、実質的に酸
成分としてはピロメリット酸無水物及び/またはその誘
導体IA、ジアミン成分としては、アルキルまたはアルコ
キシ核置換ベンジジン(塩酸塩)II A及び下記III Aよ
り選ばれる少なくとも1種の剛直ジアミン(塩酸塩)と
から通常の溶液重合により合成される。ここで、“実質
的に”とは、上記コポリアミック酸の酸成分の95モル%
以上が上記IAであり、ジアミン成分の95モル%以上が上
記II AもしくはIII Aであることを意味し、他の構成成
分がその範囲を逸脱して含まれるような場合には、得ら
れるコポリイミド繊維の機械的性質が低下する等の問題
が生じ、本発明の目的を達成することはできない。
本発明の目的を達成するためには上記の共重合組成を
満足する必要があるが、上記の範囲を越えてIII Aを用
いると、湿式成形性,弾性率が大巾に低下し、上記の範
囲を下回ってIII Aを用いると伸度が低下する。また、
好ましくは、 m2/m3:95/5〜85/15 更に好ましくは、 m2/m3:95/5〜90/10 の範囲を満足してII A及びIII Aが存在するとき、得ら
れる繊維の機械的特性はより優れたものとなる。
次に、本発明で凝固性においても最も重要なジアミン
成分II Aとして次のものが挙げられる。
3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジエチルベンジ
ジン、3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン、3,3′−
ジメトキシベンジジン、2,2′−ジメチルベンジジン また、ジアミン成分としてII Aと併用されるIII Aの
芳香族ジアミンについては次のようなものが挙げられ
る。
4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミ
ノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルス
ルフォン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,
4′−ジアミノベンゾフェノン、1、4−ビス(4−ア
ミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノ
フェノキシ)ビフェニル及びこれらの塩酸塩 なお、本発明の範囲を逸脱しない範囲で他の酸成分、
ジアミン成分を使用しても差し支えない。
例えば酸成分としては次のようなものが挙げられる。
[芳香族ジ酸無水物] 3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸ジ酸無水
物、2,3,3′,4′−ジフェニルテトラカルボン酸ジ酸無
水物、3,3′,4,4′−ジフェニルオキシテトラカルボン
酸ジ無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカル
ボン酸ジ無水物、 3,3,4,4′−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸
ジ酸無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルアルキレンテト
ラカルボン酸ジ酸無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキ
シフェノキシ)ベンゼンジ酸無水物、1,3−ビス(3,4−
ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジ酸無水物、p−フ
ェニレン−ビス−トリメリテートジ酸無水物。
[芳香族テトラカルボン酸誘導体] テトラカルボン酸類のジエステルジ酸クロリド、テト
ラカルボン酸類のジエステル、テトラカルボン酸類の
塩。
またジアミン成分としては次のようなものが挙げられ
る。
[ジアミン] p−フェニレンジアミン、2−メチル−p−フェニレ
ンジアミン、2−エチル−p−フェニレンジアミン、2
−メトキシ−p−フェレンジアミン、2−エトキシ−p
−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレ
ンジアミン、2,6−ジメチル−p−フェニレンジアミ
ン、2,6−ジメトキシ−p−フェニレンジアミン、2,3,5
−トリメチル−p−フェニレンジアミン、2,3,5−トリ
メトキシ−p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラ
メチル−p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメ
トキシ−p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトル
エン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルメ
タン、2,2−ビス(アミノフェニル)プロパン、1,4−ビ
ス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3
−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(アミノ
フェノキシ)ジフェニルエーテル、4,4−ビス(アミノ
フェノキシ)ジフェニルスルフォン、2,2−ビス{(ア
ミノフェノキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス
{(アミオノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプ
ロパン、ジアミノナフタレン及びこれらの塩酸塩。
本発明で用いるコポリアミック酸は、上述の酸成分I
A,ジアミン成分II A及びIII Aを溶媒中で溶液重合する
ことによって得られるが、この時使用される溶媒につい
て以下に述べる。
溶媒は、使用するモノマーと非反応性で、且つ前駆体
を高濃度で溶解するものならば何でもよいが、取扱の簡
便さから下記の溶液が好ましく用いられる。
[溶媒] N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−
2−ピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルホルムアミド
(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−
ジエチルアセトアミド(DEAc)、N,N−ジメチルプロピ
オンアミド(DMPr)、N,N−ジメチルブチルアミド(NMB
A)、N,N−ジメチルイソブチルアミド(NMIB)、N−メ
チルカプロラクタム(NMC)、N,N−ジメチルメトキシア
セトアミド、N−アセチルピロリジン(NAPr)、N−ア
セチルピペリジン、N−メチルピペリドン−(NMPD)、
N,N′−ジメチルエチレン尿素、N,N′−ジメチルプロピ
レン尿素、N,N,N′,N′−テトラメチルマロンアミド、
N−アセチルピロリドン、N,N,N′,N′−テトラメチル
尿素(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサ
メチルホスホルアミド(HMPA)。
等がある。
溶液重合に関しては、ポリアミック酸の重合で用いら
れる通常の方法が適用されるが、後掲の実施例1に示す
ように、3,3′−ジメチルベンジジン及び4,4′−ジアミ
ノジフェニルエーテルを溶解したNMP溶液を−10℃に保
ちながら、ピロメリット酸無水物を上記ジアミンのほぼ
当量添加し、激しく撹拌すると、溶液は次第に粘度を増
し、更に撹拌を続けると高粘度の溶液が得られ、固有粘
度を測定したところ5.3であり、高重合度のコポリアミ
ック酸が生成されていることが確認された。固有粘度
(ηinh)の測定はNMP中35℃,濃度0.5g/dlでオストワ
ルド粘度計を用い、1/C[1n(t/t0)]により算出し
た。
また、テトラカルボン酸類のジエステルジ酸クロリド
或はジアミンの塩酸塩を用いる場合も同様に溶液重合を
実施すればよいが、その際3級アミン等の脱塩化水素剤
を加えておいてもよい。
かくして得られるコポリアミック酸は、次いで以下の
方法によりポリイミド繊維となす。
[成形用ドープの調製] 成形用ドープの調製は、溶液重合を行ったコポリアミ
ック酸溶液を形成に適した粘度となるようポリマー濃度
を調製し、該溶液をそのまま成形用ドープとしてもよい
し、また非溶媒との混合等によりポリマーを一旦単離
後、適当な溶媒に再溶解し、それを成形用ドープとする
こともできる。本発明では何れの方法も採用できるが、
工業的には前者の方法が好ましい。また、本発明におい
ては、水系凝固浴中にて優れた凝固性を示すので、成形
用ドープはそのまま使用可能であるが、更に凝固性を改
善する目的で、本発明者等が以前特願昭63-226344号に
て提案したポリアミック酸溶液にアミン類及び/または
弱酸の金属塩を添加する方法、あるいはポリアミック酸
溶液に化学環剤を添加し該溶液中のポリアミック酸を部
分的にイミド化する方法を用いても無論差し支えない。
[繊維製造方法] 本発明においては、先に述べたように、成形の初期に
おいて分子配向を高めることにより最終的に高度な繊維
物性を得るものである。これは上記のコポリアミック酸
からなる成形用ドープを紡糸する際、一旦不活性雰囲気
中に吐出した後、水系凝固浴中に導入し湿式成形を行う
ことにより達成できる。かくすることにより紡糸ドラフ
トの増大が可能となり、分子配向は高まるとともに、繊
維表面の凝固状態も緻密となるためにボイド等の欠陥部
の発生が抑制される。その結果、高度な繊維物性となる
のである。
ここでいう不活性雰囲気とは、窒素,アルゴン,空気
等実質的にドープと非反応性のものを指し、使用上の簡
便さから空気を用いるのが好ましい。通常の湿式紡糸で
は吐出と同時に凝固剤との接触が行われ、紡糸ドラフト
を大きく取ることが困難であり、且つ固化した表面が引
き延ばされるために繊維方向への縦筋状の溝の発生、及
びボイドの発生等がみられる。これらは、分子配向を充
分に進めることを困難にするだけでなく、力学的物性の
向上に対して好ましくない欠陥部を生じせしめ、更には
フィブリル化の原因となる。本発明は、この両者を同時
に解決するものである。
なお、本発明の製造方法は全てのポリイミド繊維に適
用できるが、特に本発明の目的とする優れた機械的性質
を有する繊維を得るためには、ポリイミド前駆体として
前記特定のポリアミック酸を用いる必要がある。
例えば、ジアミン成分がp−フェニレンジアミン、ペ
ンジジン等の剛直ジアミンであるピロメリットイミドの
前駆体に本発明の製糸法を適用した場合、凝固した糸条
の配向及び物性は向上するが、一方では、その後の熱延
伸が殆ど不可能になり、高度の力学物性は期待できず、
且つ低伸度の折れやすい糸条しか得ることはできない。
更に該前駆体は凝固性が悪いため、凝固した糸条はボイ
ド等により失透している。
本発明では最も簡便なプロセスの追求を目的としてお
り、従って凝固浴として水系のものを用いるが、これは
特公昭57-37687号公報に開示されているようなアルコー
ル系凝固浴を用いる方法に比べて、取扱の簡便さから水
系に優るものはないからである。水系凝固浴について更
に詳しく説明すると、水または水と前駆体溶液を構成す
る溶媒とからなることが好ましく、凝固性を改善する目
的で無機化合物を含有させても差し支えない。
凝固した糸条は、その後適当なプロセスを経た後、熱
延伸及び熱処理、あるいは両者を兼ねた熱延伸を行い最
終的に優れた機械的性質を有する繊維を得る。
上記プロセスの例を挙げると、 (1)凝固糸を熱延伸する。
(2)凝固糸を空中または水系の浴中で延伸後、熱延伸
する。
(3)凝固糸をイミド化後、熱延伸する。
(4)凝固糸を空中または水系の浴中で延伸後イミド化
し、熱延伸する。
等があり、どの様な実施しても差し支えないが、基本的
にはできるだけ高張力下で熱延伸を行うことが物性の向
上につながることから、熱延伸前の繊維強度を高めてお
くことが重要であり、この意味では上記(4)の手法が
好ましいといえるが、熱延伸前の繊維強度をある程度高
めかつ簡略なプロセスを追求するためには(2)の手法
を取ることができる。イミド化に関しては、加熱による
熱イミド化法、後述の化学環化剤を用いる化学イミド化
法とがあり、どちらを採用しても良いが、結晶化の抑制
という意味では化学イミド化法が好ましく、プロセスの
簡略化という意味では熱イミド化法が適している。
次に上記の化学イミド化法について説明する。
[化学イミド化法] これは、無水酢酸等の脱水剤によりポリアミック酸の
閉環イミド化を進行せしめることをいい、この際触媒と
してピリジン等の3級アミンを併用してイミド化速度を
大きくすることもできる。糸条のイミド化においては、
具体的には、凝固後一旦糸条をボビンに巻き取った後ボ
ビンごと上記の化学環化剤中に浸漬、或は凝固後の糸条
を化学環化剤を配した浴中を通過させる等の手法によ
り、糸条と化学環化剤とを接触せしめればよく、その手
法に関しては特に限定されるものではない。浸漬時間は
数秒以上12時間以下である。またこの際に、以前本発明
者等が特願昭62-272342号、及び特願昭63-226344号に提
案した糸条のイミド化促進手法を用いるならば、より効
率的にイミド化を進行せしめることができる。
本発明のコポリイミド繊維は、核置換ベンジジンの置
換基効果、及び共重合効果によりホモポリマーに比較し
て熱延伸性が改善されており分子配向を高度に高めるこ
とができる。延伸された糸条は、結晶化の促進により更
なる物性の向上のために高温の熱処理を実施されること
が好ましく、張力下にて400〜650℃、好ましくは450℃
〜550℃で処理する。
以上の如く得られた繊維は、コポリマーでありながら
高度な弾性率を発揮し、更に適度な伸度を有している。
(発明の作用・効果) 本発明で得られるコポリイミド繊維の最大の特徴は、
種々の機械的特性において有利な高重合度ポリマーから
形成され、かつコポリマーでありながら高弾性率を発揮
し更に適度な伸度を有している点である。該繊維は、先
進複合材料(A.C.M.)等の分野にて優れた性能を発揮す
るものである。
更に本発明の製造法においては、湿式の成形プロセス
において最も取扱の容易な水系凝固浴中での凝固性に特
異的に優れており、凝固性を改善する種々方法を用いる
必要がなく、その結果プロセスは最も簡便なものとな
る。
(実施例) 以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
先ず、本発明にて用いた成形原液の調製、紡糸方法、
熱処理方法について説明しておく。
[成形原液の調製] 少なくとも1種の芳香族ジアミン成分をモレキュラー
シブスで脱水したN−メチルピロリドン(NMP)150mlに
乾燥窒素気流中で溶解し、このアミン溶液を−10℃に外
部冷却した後、ピロメリット酸無水物(PMDA)をジアミ
ンのほぼ当量加え高速撹拌下に重合反応せしめる。得ら
れた高粘度のコポリアミック酸溶液の一部を取し出して
0.5g/dlの濃度に希釈してηinhを測定する。
[乾湿式紡糸(紡糸A法)] 上記の如くして得られたコポリアミック酸溶液を直ち
に、孔径0.1mm,孔数12のノズルを通して吐出速度3m/min
で空中に吐出し、厚さ10mmの空気層を通過させた後、水
/NMP(容積比90/10)からなる凝固浴中に導入し、浴内
を約3m通過させた後、水/NMP(容積比95/5)からなる延
伸浴中で約2倍で延伸した後空中に取り出し、巻取速度
約20m/minで巻取る。(以下、これを紡糸A法と呼
ぶ。) [湿式紡糸(紡糸B法)] 上記のコポリアミック酸溶液を、空気層を通過させな
いことを除いてはすべて紡糸A法と同様に行う。(以
下、これを紡糸B法と呼ぶ。) [化学イミド化−熱処理(熱処理A法)] 巻取った糸条を、速かにボビンごと別の無水酢酸/ピ
リジン(容積比70/30)よりなる浴中に1時間浸漬しイ
ミド化を進行せしめ、該糸条を水洗・乾燥したあ、250
℃,450〜600℃(使用したコポリアミック酸により最適
値を選択)のプレート上で段階昇温熱処理を行い、コポ
リイミド繊維を得る。この際、安定に巻き取れる倍率で
延伸を行う。(以下、これを熱処理A法という。) [熱イミド化(熱処理B法)] 上記の紡糸A法及びB法において、糸条を巻取る際に
約100℃に加熱したホットローラーを通過させ、乾燥し
た糸条を250℃,450〜600℃(使用したコポリアミック酸
により最適値を選択)のプレート上で段階昇温熱処理を
行う。この際、安定に巻き取れる倍率で延伸を行い、コ
ポリイミド繊維を得る。(以下、これを熱処理B法とい
う。) なお実施例中、固有粘度(ηinh)はポリマー濃度0.5
g/dlとなるよう前駆体溶液を溶媒で希釈して、35℃にお
いて測定した値である。また引張り特性は東洋(株)製
テンシロンを用い、試長100mm引張り速度50mm/minでヤ
ーンについて測定した。なお、単糸とヤーンでは引張り
特性に最大2割程度の差がみられた。
なお実施例中の略号は下記に示す。
PMDA:ピロメリット酸ジ酸無水物 BPDA:3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸ジ酸無
水物 o-TOL:3,3′−ジメチルベンジジン m-TOL:2,2′−ジメチルベンジジン DSB:3,3′−ジメトキシベンジジン 4DAPE:4,4′−ジアミノジフェニルエーテル 3DAPE:3,4′−ジアミノジフェニルエーテル TPE-Q:1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン BAPB:4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル 3CBZ:3,3′−ジクロルベンジジン 2CBZ:2,2′−ジクロルベンジジン 2CP:2−クロル−p−フェニレンジアミン 25CBZ:2,2′,5,5′−テトラクロルベンジジン 3DAS:3.3′−ジアミノスルフォン 3BAS:4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニル
スルフォン TPE-M:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 3DABA:3,3′−ジアミノベンズアニリド MPDA:m−フェニレンジアミン 実施例1 3,3′−ジメチルベンジジン(o-Tol)4,49g、4,4′−
ジアミノジフェニルエーテル(4DAPE)0.22g(モル比95
/5)、PMDA4.86gを上述の成形原液の調製法により重合
しポリアミック酸成形原液を得た。該溶液のηinhは5.8
であり高重合度のポリアミック酸が重合された。以下、
ジアミン成分を種々変更し、各種コポリアミック酸を重
合した。その結果を表−1に示した。
次いで、コポリアミック酸溶液1〜12を上述の紡糸A
法にて乾湿式紡糸し、熱処理A法,B法それぞれの方法で
熱処理を行いコポリイミド繊維を得た。得られた繊維の
物性値を表−2に示した。(熱処理温度は種々変化さ
せ、最高の物性を示したものについて記した。以下、同
様)何れの繊維も強度15g/de以上、初期弾性率1200g/de
以上、破断伸度1.5%以上と優れた物性値を示した。な
お、紡糸時の凝固性も良好で、ほぼ透明であった。
比較例1 酸成分としてPMDA,ジアミン成分として核塩素置換し
た芳香族ジアミンを併用した表−1記載のジアミンを使
用し、上述の方法にしたがってコポリアミック酸を得
た。結果を表−1に記したが、実施例1に比較して重合
度は低いものであった。
コポリアミック酸溶液3〜7を上述の紡糸A法にて乾
湿式紡糸し、熱処理A法,B法それぞれの方法で熱処理を
行いコポリイミド繊維を得た。得られた繊維の物性値を
表−2に併記した。実施例1のコポリイミド繊維に比較
して明らかに物性値は劣っていた。また紡糸した糸条は
実施例1のそれと比較してすべて凝固性が悪く、失透し
ていた。
比較例2 実施例1のコポリアミック酸について、紡糸B法,熱
処理A法を採用しコポリイミド繊維を得、結果を表−3
に示した。実施例1と比較して、物性値は格段に劣って
いた。
比較例3 本発明にて使用する酸成分,ジアミン成分を用いた各
種ホモポリアミック酸を上述の方法にしたがって得、紡
糸A法,熱処理A法によって対応するポリイミド繊維を
得た。ポリアミック酸の固有粘度並びに繊維物性を表−
4に示した。重合度の高いポリアミック酸が得られ、高
弾性率を有する繊維を得たが、実施例1に比較して伸度
が不足していた。
比較例4 酸成分としてPMDAを用い、ジアミンの共重合比を本発
明の範囲外としたコポリアミック酸溶液を得、紡糸A
法,熱処理A法にてコポリイミド繊維を得、その物性値
を表−5に記した。共重合比が本発明の範囲を逸脱する
ほど物性値が低下することが明らかとなった。特に共重
合成分の比率が多くなるほど凝固性が悪化し、紡糸した
糸条の失透現象は大となった。
比較例5 本発明で規定した以外のジアミン、及びPMDAを用いて
コポリアミック酸溶液を製造し、紡糸A法,熱処理A法
にてコポリイミド繊維を得、その物性値を表−6に記し
た。実施例1に比較してバランスの崩れた物性値を示し
た。
実施例3 実施例1で得た各コポリアミック酸溶液にピリジンを
アミド酸単位0.3当量添加混合し、得られた溶液を成形
用ドープして用い、紡糸A法,熱処理A法にてそれぞれ
対応するコポリイミド繊維を得た。物性値を表−7に示
した。凝固性が更に改善され、実施例1と比較して物性
は向上していた。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的に下記構成単位(I)〜(III)よ
    り形成され、かつ下記A式を満足するコポリアミック酸
    を含有してなる成形用ドープからポリイミド繊維を製造
    するに際し、該成形用ドープを一旦不活性雰囲気中に吐
    出した後、水系凝固浴中に導入することを特徴とするコ
    ポリイミド繊維の製造法。 から選ばれる少なくとも1種。
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