JP2727674B2 - 低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物

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    • C08L67/06Unsaturated polyesters
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は靭性のある低収縮性不飽和ポリエステル樹脂
組成物に関し、更に詳しくは硬化時の収縮が極めて小さ
く、かつ寸法安定性、表面性、耐衝撃性の優れた成形品
を作製することができる低収縮性不飽和ポリエステル樹
脂組成物に関する。
〈従来の技術〉 不飽和ポリエステル樹脂にガラス繊維などの繊維補強
材を含有させ、硬化させた繊維強化プラスチック(FR
P)は優れた機械的強度、耐薬品性、耐熱性及び耐水性
を有するため、浴槽、浄化槽、水タンクパネル等の住宅
関連製品、自動車部品、電気部品及び工業機材等広範な
分野に使用されている。
近年、自動車の軽量化、デザインの多様化の動きが活
発化するに連れ、エンジンフード、ルーフ、トランクリ
ッド等の自動車外板部品やスポイラー、エアインテーク
等の外装部品にFRPを採用する試みが盛んに行なわれて
いる。これらの用途に対しては、作業性及び成形加工性
に優れたシートモールディングコンパウンド(SMC)あ
るいはバルクモールディングコンパウンド(BMC)の材
料形態で成形されるのが一般的であるが、前記材料を成
形することによって得られた成形品には従来にも増して
高い寸法安定性、耐衝撃性及び表面性の要求があり、そ
の改良が重要な技術課題となっている。
ところで、不飽和ポリエステル樹脂は一般に硬化時に
大きな収縮を示し、これに伴って成形品にクラック、反
り、波打ち及び補強用に使用したガラス繊維の浮き出し
等の現象が発生しやすい。そして、これらの欠点を改良
する目的で、不飽和ポリエステル樹脂にポリスチレン、
ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性
樹脂を低収縮剤として配合することが広く行なわれてい
る。
更に従来から不飽和ポリエステル樹脂の耐衝撃性及び
表面性を改善する試みは多数行なわれているが、基本的
にはスチレン−ブタジエンブロック共重合体に代表され
る熱可塑性エラストマーを不飽和ポリエステル樹脂に配
合する方法に集約される。例えば、特開昭48−34289号
公報、特開昭49−30480号公報には、スチレン−ブタジ
エンブロック共重合体を配合する方法が開示されてい
る。しかし、これらの方法では、各種材料の配合時ある
いはSMC等成形材料とした場合において、熱可塑性エラ
ストマーの急速な分離が起こりこれが原因で種々の問題
が発生する。即ち、組成の不均一化により結果的に前記
目的を達成できないばかりか、分離エラストマーにより
金型汚染、成形物表面のスカミングの発生等が起こり、
一般的には実用が極めて困難であった。
かゝる欠点を改良する試みとして、特開昭52−148588
号公報、特開昭54−130653号公報において、分子末端に
カルボキシル基あるいはその塩を含有するスチレン−ブ
タジエンブロック共重合体を配合する方法が、特公昭62
−16202号公報、特公昭62−16222号公報において、スチ
レン−ブタジエンブロック共重合体にジカルボン酸基及
び、又はその誘導体基が結合した変性ブロック共重合体
を配合する方法が提案されている。しかしながら、これ
らの方法でも熱可塑性エラストマー成分と不飽和ポリエ
ステル成分の層分離問題の本質的な解決にはならない。
又、熱可塑性エラストマー成分と不飽和ポリエステル
成分の層分離問題を第三成分として相溶化剤を用いる方
法により解決する提案もされている。例えば、特開昭55
−135120号公報には、スチレン−ブタジエンブロック共
重合体にポリスチレン(幹)−飽和ポリエステル(枝)
あるいはポリブタジエン(幹)−飽和ポリエステル
(枝)の櫛型共重合体を併用する方法が提案されてい
る。しかし、この方法では層分離問題を殆ど解決できな
い。
かゝる現状に鑑み、本発明者らも特開昭58−189214号
公報において、ポリ酢酸ビニルとポリ(スチレン+メタ
クリル酸)のブロック共重合体を相溶化剤として用い、
熱可塑性エラストマーの層分離問題を解決する方法を提
案した。この方法は層分離防止にある程度の効果は認め
られるものの、相溶化剤として靭性の乏しい多量のブロ
ック共重合体を必要とするため、結果的に耐衝撃性及び
表面性の改善された成形品を得る組成物をうることはで
きなかった。
〈発明が解決しようとする課題〉 従って、耐衝撃性及び表面性が改善され、寸法安定性
の良好な成形品を得るのに好適な、即ち硬化時の収縮性
が極めて小さく、しかも低収縮剤を配合した靭性の付与
できる低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物の開発が
要望されていた。
〈課題を解決するための手段〉 本発明は、上記に鑑み完成されたもので、不飽和ポリ
エステル樹脂組成物に一方のセグメントにゴム成分、即
ちアクリル酸ブチルを含有する特定のブロック共重合体
を配合することにより、そのブロック共重合体の不飽和
ポリエステル樹脂との相溶性が良好で、硬化時の収縮が
極めて小さく、且つ耐衝撃性と表面性の優れた成形品を
与えることのできる低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組
成物を提供するものである。
即ち、本発明は、 (イ)不飽和ポリエステル、 (ロ)該不飽和ポリエステル(イ)と共重合が可能な単
量体及び、 (ハ)前記不飽和ポリエステル(イ)と単量体(ロ)と
の総量100重量部に対して3〜27重量部のAセグメント
とBセグメントとは重量比で95:5〜5:95の範囲にある低
収縮剤であるA−B型ブロック共重合体からなり、 前記A−B型ブロック共重合体におけるAセグメント
は、酢酸ビニル単量体が25〜95重量%と、アクリル酸ブ
チル単量体が75〜5重量%とからなる単量体混合物に基
づく構成単位からなり、Bセグメントは、スチレン単量
体が70〜100重量%と、上記スチレン単量体との共重合
が可能な単量体が30〜0重量%とからなる単量体若しく
は単量体混合物に基づく構成単位からなり、 かつA−B型ブロック共重合体の数平均分子量が10,0
00〜200,000であることを特徴とする低収縮性不飽和ポ
リエステル樹脂組成物に関するものである。
上記した本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組
成物に用いられる不飽和ポリエステル(イ)としては、
通常の不飽和ポリエステルであり、α、β−不飽和二塩
基酸、飽和二塩基酸及びグリコール類から製造される。
こゝで、α、β、−不飽和二塩基酸は、例えば無水マ
レイン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、テトラ
コン酸、イタコン酸あるいはこれらのアルキルエステル
類等である。
又、飽和二塩基酸は、例えば無水フタル酸、オルトフ
タル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフ
タル酸、ハロゲン化無水フタル酸、アジピン酸、コハク
酸、セバシン酸あるいはこれらのアルキルエステル類等
である。
更に、グリコール類は、例えばエチレングリコール、
ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロ
ピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチル
グリコール、ヘキシレングリコール、水素化ビスフェノ
ールA、2,2′−ジ(4−ヒドロキシプロポキシフェニ
ル)プロパン、2,2′−ジ(4−ヒドロキシエトキシフ
ェニル)プロパン、エチレンオキシドあるいはプロピレ
ンオキシド等である。
上記した不飽和ポリエステル(イ)と共重合が可能な
単量体(ロ)としては、例えばスチレン、α−メチルス
チレン、t−ブチルスチレンのようなアルケニル芳香族
単量体、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエ
ステル、酢酸ビニル等が用いられるが、これらの中でも
特にスチレンが好ましい。
上記した不飽和ポリエステル(イ)と、単量体(ロ)
との配合割合は、通常不飽和ポリエステル20〜70重部、
単量体80〜30重量部である。
又、本発明における低収縮剤であるA−B型ブロック
共重合体(ハ)において、Aセグメントは、酢酸ビニル
単量体及びアクリル酸ブチル単量体とからなる単量体混
合物に基づく構成単位からなり、Aセグメント中の酢酸
ビニル単量体に基づく重合体部分の割合は、25〜95重量
%の範囲である。25重量%未満の場合には、このA−B
型ブロック共重合体(ハ)の不飽和ポリエステル樹脂中
における分散安定性が不良となり、このA−B型ブロッ
ク共重合体を配合した不飽和ポリエステル樹脂組成物か
ら作製される成形品の表面スカミングや金型曇りが発生
するばかりでなく、成形品の耐衝撃性も悪化する。又、
95重量%を越える場合には、作製される成形品の耐衝撃
性及び表面性が悪化する。
又、Bセグメントは、スチレン単量体単独あるいはス
チレン単量体及びこれと共重合が可能な単量体とからな
る単量体混合物に基づく構成単位からなる。
上記したスチレン単量体と共重合が可能な単量体とし
ては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチ
ル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n
−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、スチレ
ン誘導体、フマル酸あるいはマレイン酸の誘導体からな
る群の1種あるいは2種以上より選択されることが好ま
しいが、その中でも(メタ)アクリル酸が最も好まし
い。
又、上記したスチレン単量体と共重合が可能な単量体
の使用量は、Bセグメント中の30重量%以下に制限され
る。30重量%を越える場合には、このA−B型ブロック
共重合体(ハ)を配合した不飽和ポリエステル樹脂組成
物から作製される成形品の機械的強度が不十分となる。
又前記A−B型ブロック共重合体(ハ)は、Aセグメ
ント5〜95重量%とBセグメント95〜5重量%から構成
される。Aセグメントの割合は5重量%未満の場合に
は、A−B型ブロック共重合体(ハ)の不飽和ポリエス
テル樹脂中における分散安定性が不良となり、そのため
不飽和ポリエステル樹脂組成物から作製される成形品の
表面スカミングや金型曇りが発生するばかりでなく、成
形品の寸法安定性、耐衝撃性及び表面性も悪化する。
又、95重量%を越える場合には、作製される成形品の耐
衝撃性が悪化する。
又、A−B型ブロック共重合体(ハ)の数平均分子量
は、10,000〜200,000であり、好ましくは30,000〜100,0
00である。10,000未満の場合には、不飽和ポリエステル
樹脂組成物から作製される成形品の寸法安定性、耐衝撃
性及び表面性が不十分であり、200,000を越える場合に
は、このA−B型ブロック共重合体(ハ)を配合して得
られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなり
過ぎ、実用上使用困難となる。
更に、A−B型ブロック共重合体(ハ)は、不飽和ポ
リエステル(イ)とこれと共重合が可能な単量体(ロ)
との総量100重量部に対して3〜27重量部の範囲で使用
することができる。3重量部未満の場合には、A−B型
ブロック共重合体(ハ)を配合した不飽和ポリエステル
樹脂組成物から作製される成形品の寸法安定性、耐衝撃
性及び表面性が不十分であり、27重量部を越える場合に
は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなり過
ぎ、実用上使用困難となる。
本発明におけるA−B型ブロック共重合体は、前記A
或はBセグメントを構成する単量体或は単量体混合物を
ポリメリックペルオキシド(特開昭53−149918号公報記
載)を用い、公知の製造プロセス(特公昭60−3327号公
報記載)で塊状重合法、懸濁重合法或は乳化重合法等に
より二段重合することによって容易に製造することがで
きる。この場合、A或はBセグメントを構成する単量体
或は単量体混合物の第一段重合反応により生じた重合体
は、分子内にペルオキシ結合を有するものであり、中間
体として反応系から取り出して次のブロック共重合体製
造の原料にすることもできるし、反応系から取り出すこ
となく引き続いてブロック共重合させることもできる。
本発明に用いる前記ポリメリックペルオキシドは、例
えば次の構造式(I)(II)(III) 等で示されるポリメリックペルオキシドである。
これらポリメリックペルオキシドをA−B型ブロック
共重合体の製造に使用する際の使用量は、前記A或はB
セグメントを構成する単量体或は単量体混合物100重量
部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好まし
い。
また重合温度は、第一段重合反応については40〜80
℃、第二段重合反応については60〜120℃であることが
好ましいが第一段重合反応における重合温度は第二段重
合反応における重合温度より低いことが望ましい。
一方、Aセグメントを構成する単量体混合物の仕込み
方法には一括仕込み、分割仕込み或は連続仕込み等があ
り、特に制限されるものではないが、分割仕込み或は連
続仕込みであることが好ましい。連続仕込みの際の仕込
み時間はAセグメントを構成する2種類の単量体の構成
比率によって異なるが、15〜90分の範囲であることが好
ましい。そして、重合時間は使用する単量体の種類やそ
の使用量によって異なるが、第一段重合反応及び第二段
重合反応いずれも2〜10時間の範囲であることが好まし
い。
ところで、A−B型ブロック共重合体の製造時に各単
量体の単独重合体或は単量体混合物による任意共重合体
が副生することもあるが、本発明中の不飽和ポリエステ
ル樹脂の低収縮剤として使用する際には、特に精製する
必要なくそのまま用いることができる。
又、Aセグメントを構成する酢酸ビニル単量体とアク
リル酸ブチル単量体から共重合体を製造する際に、一方
の単量体による単独重合体が生成し、結果的に前記一方
の単量体から構成されるAセグメントとスチレン単量体
を主要構成単位とするBセグメントからなるA−B型ブ
ロック共重合体が一部副生することもあるが、本発明中
の不飽和ポリエステル樹脂の低収縮剤として使用する際
には、特に精製する必要なくそのまま用いることができ
る。
前記した製造法に従って合成した全重合物中に占める
ブロック共重合体の割合、即ちブロック率は、上記した
単独重合体及び任意共重合体のような非ブロック共重合
体を分別抽出により分離した後の抽出残分の全重合物中
に占める重量比より求めることができる。
又、酢酸ビニル単量体とアクリル酸ブチル単量体が共
重合してAセグメントを構成していることの確認は以下
のようにして行なった。即ち、Aセグメントを構成する
単量体混合物の第一段重合反応により生成した分子内に
ペルオキシ結合を有する重合物を反応系から取り出し、
トルエン中熱処理してペルオキシ結合を開裂させる。こ
うして処理した重合物を核磁気共鳴分光分析により分析
し、酢酸ビニルとアクリル酸ブチルの配列を推定した。
この推定に当たっては、β位に2つのアセトキシ基を有
するメチレンプロトンの化学シフト計算値が2.06ppm、
β位に2つのブチルエステル基を有するメチレンプロト
ンの化学シフト計算値が1.82ppm、そしてβ位に1つの
アセトキシ基と1つのブチルエステル基を有するメチレ
ンプロトンの化学シフト計算値が1.94ppmであることを
利用し、1.94ppmに相当するシグナル核磁気共鳴分光分
析で見出すことにより酢酸ビニル単量体とアクリル酸ブ
チル単量体が共重合していることの確認とした。
更に、抽出残分であるA−B型ブロック共重合体中の
AセグメントとBセグメントの含有割合は核磁気共鳴分
光分析により求めた。即ち、Aセグメントを構成する酢
酸ビニル単量体の指標となるシグナルとアクリル酸ブチ
ル単量体の指標となるシグナルの積分値の和とBセグメ
ントを構成するスチレンを主要成分とする単量体の指標
となるシグナルの積分値との比率により求めることがで
きる。
又、本発明の低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物
は、各種公知の硬化剤を用いてそのままで種々の用途に
使用することができるが、SMC等成形材料として使用す
る際には、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、無水珪
酸粒子、珪石粉、クレー等の充填剤、酸化マグネシウ
ム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カル
シウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物或は
イソシアネート化合物等の増粘剤、ステアリン酸亜鉛、
ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、ガラス繊維、
炭素繊維等の繊維強化材のほか、用途に応じて顔料、染
料等の着色剤を併用することもでき、例えば高い表面性
と耐衝撃性が要求される自動車外板、外装部品等の製造
用等に最適である。
〈発明の効果〉 以上説明したように、本発明の低収縮性不飽和ポリエ
ステル樹脂組成物は靭性付与を目的として配合した低収
縮剤の不飽和ポリエステル樹脂中における分散安定性が
良好で、硬化時の収縮が極めて小さく、且つ耐衝撃性と
表面性が大きく改善された成形品を作製することができ
る等、種々の効果を奏するものである。
〈実 施 例〉 以下、参考例、実施例及び比較例により本発明を更に
詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定される
ものではない。尚、これらの例において、部及び%は特
に断わらない限りそれぞれ重量部及び重量%を表す。
参考例 1 〔A−B型ブロック共重合体の製造例1〕 温度計、撹拌機及びコンデンサーを備えたガラス製反
応器に1.0%のポリビニルアルコール水溶液250部を仕込
んだ。次に前記構造式(I)で示されるポリメリックペ
ルオキシド2.4部を前記水溶液に室温下1時間分散させ
た後、反応器内を窒素で置換しながら65℃まで昇温し、
撹拌下酢酸ビニル45部とアクリル酸ブチル3部の混合物
を約30分かけて滴下し、そのままの温度で3時間重合
(第一段重合反応)させた。その後、室温まで冷却し、
反応器にスチレン52部を加え、室温下1時間含浸操作を
行なった後、撹拌下80℃で4時間重合(第二段重合反
応)を行なった。室温まで冷却した後、得られた重合物
を濾別してよく水洗した後、真空乾燥して白色パール状
の重合物92部を得た。
こうして得られた重合物の一部をソックスレー抽出器
により、初めにシクロヘキサンを溶媒として24時間、次
にメタノールを溶媒として24時間抽出した。シクロヘキ
サン抽出による重量減少量をポリスチレンの含有量と
し、メタノール抽出による重量減少量をポリ酢酸ビニ
ル、ポリアクリル酸ブチル及び酢酸ビニルとアクリル酸
ブチルの共重合体の混合物の含有量とし、抽出残分を該
A−B型ブロック共重合体の含有量とした。こうしてブ
ロック率を求めたところ、77%であった。
そして、抽出残分の数平均分子量をゲルパーミュエー
ションクロマトグラフィー(以下GPCと略記す)により
測定したところ、ポリスチレン換算で56,000であった。
又、抽出残分の核磁気共鳴分光分析を行ない、酢酸ビニ
ル構成単位中のアセチルプロトンに相当するシグナル
(化学シフトδ=2.06ppm)とアクリル酸ブチル構成単
位中のブチルエステル基のメチルプロトンに相当するシ
グナル(化学シフトδ=0.96ppm)の積分値の和とスチ
レン構成単位のベンゼン環プロトンに相当するシグナル
(化学シフトδ=6.0〜7.2ppm)の積分値との比率から
該A−B型ブロック共重合体中のAセグメントとBセグ
メントの含有割合(以下「A/B」と略記す)を求めたと
ころ、およそ50/50であった。
更に、第一重合反応で生成した重合物の一部を濾別
し、真空乾燥させたものをトルエン中熱処理してペルオ
キシ基を分解させた。そして、この分解生成物の核磁気
共鳴分光分析を行なったところ、化学シフト1.94ppm付
近にシグナルが検出された。このシグナルはβ位に1つ
のアセトキシ基と1つのブチルエステル基を有するメチ
レンプロトンに相当するものであり、酢酸ビニルとアク
リル酸ブチルが共重合していることが確認された。
参考例 2〜12 ポリメリックペルオキシド、酢酸ビニル、アクリル酸
ブチル、スチレンの使用量を表1に示すように代えた以
外(参考例5ではスチレンの他にメタクリル酸3部を使
用)はすべて参考例1と同様にしてA−B型ブロック共
重合体を製造し、参考例1と同様に白色パール状の重合
物を得た。この重合物について参考例1と同様にしてA
−B型ブロック共重合体のブロック率、数平均分子量及
びブロック共重合体中のAセグメントとBセグメントの
含有割合、即ちA/Bを求めた。その結果を表1に示す。
又、各参考例において、参考例1と同様にAセグメン
トを構成する酢酸ビニルとアクリル酸ブチルが共重合し
ていることを確認した。
参考例 13 〔不飽和ポリエステル樹脂の製造〕 無水マレイン酸800部、イソフタル酸200部、プロピレ
ングリコール1100部を通常の方法でエステル化し、得ら
れた不飽和ポリエステルをスチレンで希釈して固形分濃
度が65%になるように調整し、酸価が18.0の不飽和ポリ
エステル樹脂を得た。
参考例 14 〔比較用低収縮剤の調製〕 (A)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合
体 シェル化学(株)製のスチレン−ブタジエン−スチレ
ンブロック共重合体(クレイトンD1300X)をその濃度が
30%になるようにスチレンに溶解し、比較用低収縮剤
(A)とした。
(B)末端カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンブ
ロック共重合体 n−ブチルリチウムを重合触媒とし、シクロヘキサン
溶媒中でスチレンとブタジエンを逐次重合して得たリビ
ングポリマーに炭酸ガスを反応させ、次いで塩酸で処理
して末端カルボキシル基をポリマー中に1個含有するス
チレン含有量40%、数平均分子量65,000の末端カルボキ
シル基含有スチレン−ブタジエンブロック共重合体を得
た。そして、固形分濃度が30%になるようにスチレンに
溶解し、比較用低収縮剤(B)とした。
(C)無水マレイン酸変性水素添加スチレン−ブタジエ
ン−スチレンブロック共重合体 シェル化学(株)製の無水マレイン酸変性水素添加ス
チレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(クレ
イトンFG1901X)をその濃度が30%になるようにスチレ
ンに溶解し、比較的低収縮剤(C)とした。
参考例 15 〔相溶化剤の調製〕 (a)酸基含有スチレン−酢酸ビニルブロック共重合体 日本油脂(株)製の酸基含有スチレン−酢酸ビニルブ
ロック共重合体(モディパーSV50A、酸価29.8)をその
濃度が30%になるようにスチレンに分散し、相溶化剤
(a)とした。
(b)ポリスチレン(幹)−飽和ポリエステル(枝)の
櫛型共重合体 クラレ(株)製の分散安定剤(クラパールS−25、乳
濁色粘性液体)を相溶化剤(b)とした。
実施例 1〜8 参考例1〜8で得られたA−B型ブロック共重合体を
それぞれ濃度が30%になるようにスチレンに分散させた
分散液とし、これらを参考例13で得られた不飽和ポリエ
ステル樹脂と混合し、表2に示す配合条件でSMCを作製
した。
上記の配合条件で作製したSMCを40℃で24時間熟成
し、その後成形圧力100kg/cm2、成形温度140℃、成形時
間6分でプレスにより圧縮成形し、200×150×14mmの成
形物を得た。得られたそれぞれの成形物について、次に
示す方法により、成形収縮率、アイゾット衝撃強さ及び
表面うねりを測定した。その結果を表3に示す。
成形収縮率の測定法 JIS−K6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に
基づいて直径90mm、厚さ11mmの円盤状成形物を別途プレ
スによる圧縮成形で作製し、金型の内径と成形物の寸法
から次式により成形収縮率を求めた。
アイゾット衝撃強さの測定法 JIS−K6911(前出)に基づいて上記成形物から試験片
を切出し、(株)東洋精機製作所製のアイゾット衝撃試
験機を使用してこの試験片のアイゾット衝撃強さ(ノッ
チ付き)を測定した。
表面うねりの測定法 JIS−B0610(表面うねりの定義と表示)に基づいて上
記成形物の表面うねりを東京精密(株)製のサーフコム
554Aにより測定した。尚、表示法はJIS法の中でろ波最
大うねりを採用した。
金型曇り 成形後の金型の表面状態を目視により観察し、金型曇
りの程度を「激しい」、「有り」、「無し」の3段階に
より評価した。
実施例 9〜16 不飽和ポリエステル樹脂の配合量を50部(不飽和ポリ
エステル32.5部、スチレン17.5部)、A−B型ブロック
共重合体のスチレン分散液の配合量を50部(A−B型ブ
ロック共重合体15部、スチレン35部)に代えた以外は表
2の配合条件に従ってSMCを作製し、実施例1〜8のと
ころで記載した方法に従って成形物(試験片)を作製し
て各種試験を行ない、表4の結果を得た。
実施例 17〜18 不飽和ポリエステル樹脂の配合量を90部(不飽和ポリ
エステル58.5部、スチレン31.5部)、A−B型ブロック
共重合体のスチレン分散液の配合量を10部(A−B型ブ
ロック共重合体3部、スチレン7部)に代えた以外は表
2の配合条件に従ってSMCを作製し、実施例1〜8のと
ころで記載した方法に従って成形物(試験片)を作製し
た各種試験を行なった。結果を表5に示す。
実施例 19〜20 不飽和ポリエステル樹脂の配合量を30部(不飽和ポリ
エステル19.5部、スチレン10.5部)、A−B型ブロック
共重合体のスチレン分散液の配合量を70部(A−B型ブ
ロック共重合体21部、スチレン49部)に代えた以外は表
1の配合条件に従ってSMCを作製し、実施例1〜8のと
ころで記載した方法に従って成形物(試験片)を作製し
て各種試験を行なった。結果を表5に示す。
比較例 1 不飽和ポリエステル樹脂の配合量を94部(不飽和ポリ
エステル61.1部、スチレン32.9部)、A−B型ブロック
共重合体のスチレン分散液の配合量を6部(A−B型ブ
ロック共重合体1.8部、スチレン4.2部)に代えた以外は
表2の配合条件に従ってSMCを作製し、実施例1〜8の
ところで記載した方法に従って成形物(試験片)を作製
して各種試験を行なったところ、表6に結果を示したよ
うに成形収縮率及び表面うねりが大きく、寸法安定性及
び表面性が不十分であるばかりでなく、アイゾット衝撃
強さが小さく、耐衝撃性が不十分であることが分かっ
た。
比較例 2 不飽和ポリエステル樹脂の配合量を20部(不飽和ポリ
エステル13部、スチレン7部)、A−B型ブロック共重
合体のスチレン分散液の配合量を80部(A−B型ブロッ
ク共重合体24部、スチレン56部)に代えた以外は表2の
配合条件に従ってSMCを作製しようとしたが、不飽和ポ
リエステル樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、ガラス繊
維を除いた材料の混合物をガラス繊維に含浸させること
ができず、実用的にSMCを作製することができなかっ
た。
比較例 3 参考例9で得られたA−B型ブロック共重合体のスチ
レン分散液を用いた以外は表2の配合条件に従ってSMC
を作製した。このSMCを40℃で24時間熟成したところ、
A−B型ブロック共重合体のスチレン分散液の表面への
浮き出しが見られた。その後、実施例1〜8のところで
記載した方法に従って成形物を作製したところ、成形物
の表面スカミングと共に金型曇りが見られた。
更に、この成形物(試験片)を用いて実施例1〜8の
ところで記載した各種試験を行なったところ、表6に結
果を示したようにアイゾット衝撃強さが小さく、耐衝撃
性が不十分であることが分かった。
比較例 4 参考例10で得られたA−B型ブロック共重合体のスチ
レン分散液を用いた以外は表2の配合条件に従ってSMC
を作製し、実施例1〜8のところで記載した方法に従っ
て成形物(試験片)を作製して各種試験を行なったとこ
ろ、表6に結果を示したように表面うねりが大きく、か
つアイゾット衝撃強さが小さく、表面性及び耐衝撃性が
不十分であることが分かった。
比較例 5 参考例11で得られたA−B型ブロック共重合体のスチ
レン分散液を用いた以外は表2の配合条件に従ってSMC
を作製した。このSMCを40℃で24時間熟成したところ、
A−B型ブロック共重合体のスチレン分散液の表面への
浮き出しが見られた。その後、実施例1〜8のところで
記載した方法に従って成形物を作製したところ、成形物
の表面スカミングと共に金型曇りが見られた。
更に、この成形物(試験片)を用いて実施例1〜8の
ところで記載した各種試験を行なったところ、表6に結
果を示したように成形収縮率及び表面うねりが大きく、
寸法安定性及び表面性が不十分であるばかりでなく、ア
イゾット衝撃強さが小さく耐衝撃性が不十分であること
が分かった。
比較例 6 参考例12で得られたA−B型ブロック共重合体のスチ
レン分散液を用いた以外は表2の配合条件に従ってSMC
を作製し、実施例1〜8のところで記載した方法に従っ
て成形物(試験片)を作製して各種試験を行なったとこ
ろ、表6に結果を示したように成形収縮率及び表面うね
りに関しては十分であるが、アイゾット衝撃強さが小さ
く、耐衝撃性が不十分であることが分かった。
比較例 7〜9 A−B型ブロック共重合体のスチレン分散液に代え
て、参考例14で得られた比較用低収縮剤(A)〜(C)
を用いた以外は表2の配合条件に従ってSMCを作製し
た。このSMCを40℃で24時間熟成したところ、比較用低
収縮剤(A)を用いた場合には、表面への浮き出しが激
しく、成形後の成形物表面のスカミング及び激しい金型
曇りが発生した。そして、この成形物(試験片)を用い
て実施例1〜8のところで記載した各種試験を行なった
ところ、表7に結果を示すように表面うねりが大きく、
且つアイゾット衝撃強さが小さく、表面性及び耐衝撃性
の改善が不十分であることが分かった。
一方、比較用低収縮剤(B)及び(C)を用いた場合
には、SMCの熟成中における層分離はある程度抑えられ
たように見えたが、このSMCを成形したところ、やはり
成形物表面にスカミングが発生した。そして、実施例1
〜8のところで記載した各種試験を行なったところ、表
7に結果を示したようにやはり表面性及び耐衝撃性の改
善が不十分であることが分かった。
比較例 10〜11 A−B型ブロック共重合体のスチレン分散液30部に代
えて、参考例14で得られた比較用低収縮剤(A)を15部
用い、更に参考例15で得られた相溶化剤(a)を15部用
いた以外は表2の配合条件に従ってSMCを作製した。こ
のSMCを40℃で24時間熟成したところ、表面への浮き出
しは見られず、成形後の金型曇り、成形物表面のスカミ
ングもほとんど発生しなかった。しかし、この成形物
(試験片)を用いて実施例1〜8のところで記載した各
種試験を行なったところ、表8に結果を示したように表
面うねりが大きく、且つアイゾット衝撃強さが小さく、
表面性及び耐衝撃性の改善が不十分であることが分かっ
た。
一方、A−B型ブロック共重合体のスチレン分散液30
部に代えて、参考例14で得られた比較用低収縮剤(A)
を30部用い、更に参考例15で得られた相溶化剤(b)を
4部用いた以外は表2の配合条件に従ってSMCを作製し
た。このSMCを40℃で24時間熟成したところ、表面への
浮き出しが見られ、成形後の成形物表面のスカミング及
び金型曇りが発生した。そして、この成形物(試験片)
を用いて実施例1〜8のところで記載した各種試験を行
なったところ、表8に結果を示したように表面うねりが
大きく、且つアイゾット衝撃強さが小さく、表面性及び
耐衝撃性が不十分であることが分かった。
以上のように実施例1〜20の結果(表3〜5)と比較
例1〜11の結果(表6〜8)を比較すると、本発明の低
収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物を使用することに
より、硬化時の収縮が極めて小さく、且つ表面性と耐衝
撃性の優れた成形品が得られることは明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−141058(JP,A) 特開 昭62−283148(JP,A) 特開 昭56−79113(JP,A) 特開 昭57−80413(JP,A) 特開 昭57−164114(JP,A) 特開 昭58−189214(JP,A) 特開 昭59−113011(JP,A) 特開 昭59−152918(JP,A) 特開 昭60−141753(JP,A) 特開 昭60−141754(JP,A) 特開 昭60−141755(JP,A) 特開 昭61−293255(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(イ)不飽和ポリエステル、 (ロ)該不飽和ポリエステル(イ)と共重合が可能な単
    量体及び、 (ハ)前記不飽和ポリエステル(イ)と単量体(ロ)と
    の総量100重量部に対して3〜27重量部のAセグメント
    とBセグメントとは重量比で95:5〜5:95の範囲にあるA
    −B型ブロック共重合体からなり、 前記A−B型ブロック共重合体におけるAセグメント
    は、酢酸ビニル単量体が25〜95重量%と、アクリル酸ブ
    チル単量体が75〜5重量%とからなる単量体混合物に基
    づく構成単位からなり、Bセグメントは、スチレン単量
    体が70〜100重量%と、上記スチレン単量体との共重合
    が可能な単量体が30〜0重量%とからなる単量体若しく
    は単量体混合物に基づく構成単位からなり、 かつA−B型ブロック共重合体の数平均分子量が10,000
    〜200,000であることを特徴とする低収縮性不飽和ポリ
    エステル樹脂組成物。
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