JP2708684B2 - ピッチ系炭素繊維束 - Google Patents

ピッチ系炭素繊維束

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JP2708684B2 JP4312696A JP31269692A JP2708684B2 JP 2708684 B2 JP2708684 B2 JP 2708684B2 JP 4312696 A JP4312696 A JP 4312696A JP 31269692 A JP31269692 A JP 31269692A JP 2708684 B2 JP2708684 B2 JP 2708684B2
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健 小林
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はピッチ系炭素繊維束に関
するものであり、特に繊維径が従来のピッチ径炭素繊維
に比べて細く、かつフィラメント数が非常に多いピッチ
系炭素繊維束に関する。
【0002】特に、従来のピッチ系炭素繊維の特徴であ
る高弾性率であって、かつ繊維のハンドリング性に優れ
るという相反する長所を合わせ持ち、しかもコンポジッ
ト製品あるいはその中間品を製造するのに好適な繊度す
なわちフィラメント数を保有することで、生産性に優れ
る使用法を提供するピッチ系炭素繊維束に関する。
【0003】
【従来の技術】炭素繊維は、比強度および比弾性率の高
い材料で、近年、航空宇宙分野、自動車工業、その他の
工業分野で、強くて軽い素材として注目を浴びている。
【0004】このような分野では、高強度、高弾性率で
ありながら安価な材料が望まれている。
【0005】現在、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル
(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、ピッチ類
を原料とするピッチ系炭素繊維が製造されているが、現
状では高強度、高弾性率の高性能炭素繊維としては、主
にPAN系炭素繊維が使用されている。
【0006】しかしながら、PAN系炭素繊維で600
GPa以上の高弾性率を得ることは非常な困難が伴い、
特に650GPa以上の高弾性率な炭素繊維を工業的に
製造することは殆ど不可能である。
【0007】近年、弾性率が600GPaを越えるよう
な炭素繊維としては、高弾性率化が容易なメソフェーズ
ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維が主に製造され使
用される現状にある。
【0008】繊維は、高弾性になるにしたがい繊維糸条
が剛直となり、繊維のハンドリング時に毛羽が発生した
りあるいは繊維糸条が折れる等の問題が生じる。
【0009】このため繊維のハンドリングが容易な、よ
り細径な炭素繊維が求められている。
【0010】一方コンポジット製品あるいはこの中間品
を作る際には、使用する炭素繊維のボビン数を減らす目
的で繊度の大きな、すなわちフィラメント数が多い炭素
繊維が要求されている。
【0011】しかしながらピッチ系炭素繊維で、平均繊
維径が8μm以下で、かつフィラメントが1000本以
上の繊維から構成されるマルチフィラメント連続繊維は
製造が困難で、得られ難いものであった。
【0012】ピッチ系炭素繊維では細径な繊維を製造す
るには、細径のピッチ繊維を製造する必要がある。
【0013】しかしながらピッチ繊維は非常に脆弱であ
り紡糸が困難なため、フィラメント数が1000以上と
なる紡糸を行なうことは非常に困難であった。
【0014】これは多ホール化によって、紡糸時に発生
する随伴流の影響によりノズルプレート直下の雰囲気温
度は内周が高温になること、また、随伴気流の速度が非
常に大きくなり、この気流のために細径繊維の紡糸が安
定して行なわれないためである。
【0015】フィラメント数を低下させることにより、
細径のピッチ繊維の紡糸は若干容易となるが、得られた
ピッチ繊維束は脆弱で、次工程におけるハンドリングが
困難であった。
【0016】特開平1―229820号公報には、フィ
ラメント数が1000未満のピッチ系炭素繊維に関して
記載がなされており、その中にフィラメント数が100
0未満のピッチ繊維糸条を得、これを複数本合糸する方
法が開示されている。
【0017】しかしながら、フィラメント数が1000
未満で、かつ炭素繊維の繊維径が8μm以下となるよう
な細径なピッチ繊維では、糸条の強度が著しく小さく、
このため合糸の際に必要な張力も充分に与えることが困
難で、糸の揃いが不十分な炭素繊維しか得られなかっ
た。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高弾
性率でありながら、繊維のハンドリング性に優れ、かつ
コンポジットなどの成形加工に使用するにあたって、生
産性が優れた高品質な炭素繊維束を提供することにあ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、平均繊維径が
4〜8μmで、1000〜100000本の連続繊維が
無合糸で構成されていることを特徴とするピッチ系炭素
繊維束である。
【0020】また、上記の繊維束を構成するフィラメン
トの引張強度が3.0GPa以上、弾性率が600GP
a以上であることが好ましい。さらに、繊維束の屈曲強
度Bが、次式を満足するものであることが望ましい。
【0021】
【数2】
【0022】B=屈曲強度(MPa) TM=引張弾性率(GPa)
【0023】以下、本発明の炭素繊維束について詳細に
説明する。
【0024】本発明の炭素繊維束は、平均繊維径が4〜
8μmであり1000〜100000本の連続繊維が無
合糸で構成される。
【0025】さらに繊維束を構成するフィラメントの引
張強度が3.0GPa以上、弾性率が600GPa以上
と優れた物性を有し、繊維束の屈曲強度が上記の式を満
足するようなハンドリング性に優れるピッチ系炭素繊維
束である。
【0026】本発明において平均繊維径、引張強度、弾
性率、屈曲強度とは次のように求めた値をいう。
【0027】(平均繊維径)炭素繊維の平均繊維径Dは
次式から求められるものである。
【0028】
【数3】
【0029】W=単位長さ当りの繊維束の重さ N=フィラメント数(単糸本数) ρ=繊維の密度
【0030】(フィラメントの引張強度、弾性率)JI
S R7601に規定する樹脂含浸ストランド試験法に
したがって引張強度を求めた。
【0031】また、引張弾性率は、直接読み取り法によ
り破断荷重の10〜30%の範囲における引張弾性率を
求めた。
【0032】(屈曲強度)長さ1mの炭素繊維束を取り
出し、炭素繊維束17の両端を揃えてタブ18を接着剤
で取り付けたループ状繊維束のループ部に、図14に示
すように直径1mmの針金19を引っかけ、針金あるい
はタブを0.2m/minの速度で引っ張り、ループが
針金部で破断した際の荷重計20で測定した荷重を炭素
繊維束1本の断面積で割った値を屈曲強度とした。
【0033】平均繊維径が8μm超では600GPaを
越す高弾性率でかつハンドリング性に優れるという相反
する両方の特性を具備することができず、4μm未満の
直径では連続繊維を製造することは事実上困難である。
【0034】コンポジット製品やその中間材を加工する
際の生産性を向上させるには、繊維束のフィラメント数
は1000以上好ましくは2000以上は必要であり、
フィラメント数が1000未満では炭素繊維束の繊度は
小さく、生産性が損なわれる。
【0035】また、フィラメント数が100000超で
は事実上無合糸で繊維束を製造することは困難である。
【0036】また、引張強度は3.0GPa好ましくは
3.5GPaさらに好ましくは4.0GPa以上である
ことが好ましく、3.0GPa未満では繊維の伸びが極
端に小さく繊維束の取扱が困難となる。
【0037】屈曲強度は弾性率により大きく変化する
が、例えば弾性率600GPaのときに400MPa未
満、弾性率700GPaのときに32MPa未満、弾性
率800GPaのときに17MPa未満では、繊維束の
ハンドリング性は著しく損なわれる。
【0038】本発明の繊維束は、無合糸であることを特
徴とするが、これはピッチ系炭素繊維の製造において、
ピッチ繊維束を一旦得た後、ピッチ繊維の状態で、ある
いは不融化後あるいは炭化後に合糸を行なって、繊度の
大きな繊維束を得ても、合糸する前の繊維束ごとに分割
してしまい、繊維束を使用する際のハンドリングが著し
く低下することによる。
【0039】したがって、本発明の繊維束の前駆体であ
るピッチ繊維は合糸することなく、紡糸段階でフィラメ
ント数が1000〜100000で製造されることが必
要である。
【0040】本発明の黒鉛化繊維を得るための製法の一
例について以下に説明する。
【0041】図1は溶融紡糸ノズル断面図で溶融紡糸ノ
ズル12はノズルプレート2を具備し、該ノズルプレー
ト2には複数のキャピラリ9が配置されている。
【0042】キャピラリー9は同心円上に3〜20列配
置している。同心円状に配置されるキャピラリー位置の
最外周半径は50〜250mmが好ましい。
【0043】キャピラリーの配置する列数は3列未満で
は単一のノズルプレートに1000個以上のキャピラリ
ーを配置することが困難であったり、あるいはノズルプ
レートが非常に大きなものとなる。
【0044】また、列数が20列超では列中央部の雰囲
気温度が外周列あるいは内周列の雰囲気温度に較べ高温
となり安定した紡糸が困難となる。
【0045】また、図2および図3〜図8に示されるよ
うにキャピラリーの配置箇所は2個以上のブロックに分
割されている必要がある。
【0046】キャピラリーとキャピラリーの間隔は好ま
しくは1〜6mm、さらに好ましくは2〜3mmが適当
である。
【0047】ブロックとブロックの間隔は扇型に分割し
た場合(図3〜図6)角度で10〜30°の間隔をあけ
るか、あるいは最狭部で10mm以上の間隔をあけるこ
とが好ましい。
【0048】また、キャピラリー径は直径50μm〜1
10μm、好ましくは70μm〜100μmである。
【0049】キャピラリー径が110μm超では細径な
ピッチ繊維の紡糸が不安定となり、50μm未満ではキ
ャピラリーの加工が非常に困難となったり、ノズルの整
備が煩雑となり好ましくない。
【0050】キャピラリーが配置されている箇所が分割
されずに連続した同心円状となると、ノズル中央への雰
囲気ガスの導入が不十分となり、ノズル中央部の雰囲気
が高温となり安定した紡糸の継続が困難となる。
【0051】また、ノズルプレート下部に高さ20mm
以上好ましくは30〜150mmの円柱状の突起物3を
設けることが肝要である。
【0052】円柱状突起物3はキャピラリーを配置した
ブロックとブロックの間隙を流れる気流を制御する役割
を担い、この突起部3が無い場合、あるいはこの高さが
20mm未満の場合、ブロックとブロックの間隙を流れ
る気流がノズル中央部でぶつかり、ノズル中央部で気流
が非常に乱れ、このためノズル中央付近(ノズル最内周
付近に配置するキャピラリー付近)での紡糸の安定化が
極めて困難となる。
【0053】この円柱状突起物とキャピラリーの配置を
ブロックごとに分割することにより、ノズル内周部の冷
却と随伴流の制御による安定紡糸化の両方の効果をもた
らすことが可能となる。
【0054】円柱状突起物3は図9〜12に示すように
円柱に限定されるものではなく、円柱の一端が縮小して
いたり角が丸められたものであっても、効果に顕著な差
はみられず、図9〜12に示した高さHが20mm以
上、好ましくは30〜150mmであればよい。
【0055】以上の要件を満足するのであれば、1ノズ
ル当り、1000以上、好ましくは1500〜1000
0キャピラリー、さらに好ましくは1500〜5000
キャピラリーという、従来の紡糸装置では全く不可能と
考えられていたキャピラリー数を有するノズルであって
も安定した紡糸が初めて可能となる。
【0056】しかしながら、ピッチ繊維を溶融紡糸する
場合、溶融紡糸時にピッチから発生するベーパー、ある
いは分解物によりノズルプレート面が著しく汚れる。
【0057】このため、安定した紡糸の継続期間がノズ
ルプレートの汚れのために、限定せざるを得なかった。
【0058】そこで紡糸時に生じる随伴流を、ノズルプ
レート近傍にまで接近させることで、ノズルプレート直
下の雰囲気の置換が良好となり、ノズルの汚れが著しく
減じることを見いだした。
【0059】具体的には、キャピラリー配置部の外周、
ノズルプレート下部に円周状にスリットを設け、ここか
ら雰囲気ガスを吸気することにより、紡糸によって生じ
る随伴流がノズルプレート直下を流れるようになる。
【0060】この時スリットは、キャピラリー配置部の
最外周部より20mm以上好ましくは50〜200mm
とすることがよく、また、スリットの幅は5〜30mm
が好ましい。
【0061】同心円に配置されるキャピラリー位置の最
外周半径が100mmを超えると、1箇所の吸気位置で
スリット全体にわたって均一に吸引を行なうことが困難
となるため、必要に応じ2個以上好ましくは4〜8箇所
に分割し、吸引量が均一となるように制御することによ
り、安定した紡糸が可能となる。
【0062】このときの気流の流れは、図1に示すよう
に吸引用スリット4の吸引により、随伴流の開始位置は
全体的にノズルプレート2側に引き寄せられ、ノズルプ
レート直下を流れることとなる。
【0063】また、キャピラリーが配置されたブロック
とブロックの間隙を通る気流は円柱状突起物3により下
方向の流れが与えられ、気流は乱れることなく安定的に
流れ、このため安定した紡糸が可能となる。
【0064】本発明の炭素繊維束に使用する紡糸用ピッ
チの原料は、コールタール、コールタールピッチ等の石
炭系ピッチ、石炭液化ピッチ、エチレンタールピッチ、
流動接触触媒分解残査油から得られるデカントオイルピ
ッチ等の石油系ピッチ、あるいはナフタレン等から触媒
などを用いて作られる合成ピッチ等、各種のピッチを包
含するものである。
【0065】本発明の炭素繊維束に使用されるメソフェ
ーズピッチは、前記のピッチを公知の方法でメソフェー
ズを発生させたものである。
【0066】メソフェーズピッチは、紡糸した際のピッ
チ繊維の配向性が高いものが望ましく、このためメソフ
ェーズ含有量は40%以上、より好ましくは70%以
上、さらに好ましくは90%以上含有するものが望まし
い。
【0067】また、メソフェーズピッチは軟化点が20
0〜400℃、より好ましくは250〜350℃のもの
がよい。
【0068】得られたピッチは紡糸に先だって絶対濾過
精度が3μm以下であるフィルター、あるいはこのフィ
ルターと同等あるいはそれ以上の濾過精度が得られる濾
過方法によりピッチ中の異物を取り除くことが必要であ
る。ピッチ中に3μm以上の固形異物が存在すると糸切
れが頻発することとなる。
【0069】上記メソフェーズピッチを先の紡糸ノズル
で紡糸する条件としては例えば、粘度200〜900ポ
イズを示す温度で、圧力10〜100kg/cm2程度
で押し出しながら100〜1000m/min、好まし
くは300〜600m/minの引き取り速度で延伸
し、所定の繊維径のピッチ繊維を得る。
【0070】このときに、キャピラリーを1000以上
有する紡糸ノズルを単独で使用してピッチ繊維を得ても
よいし、当該紡糸ノズルを2個以上、図13のごとく本
発明の紡糸ノズルを複数個ならべた紡糸装置において、
当該紡糸ノズルから押し出されるピッチ繊維を、単一の
ロールで延伸し、マルチフィラメントのピッチ繊維を得
てもよい。
【0071】このときに並べる紡糸ノズルの数は、10
個以下が好ましく、これより数が多いと、各ノズル間の
調整が煩雑になったり、また、紡糸ノズルの間隔が広が
り単一のロールで延伸することが困難となり、糸の揃い
のよいマルチフィラメント炭素繊維の製造が困難とな
る。
【0072】前記した紡糸ノズルによりフィラメント数
が1000以上の細径炭素繊維を用ピッチ繊維を得るこ
とができるが、不融化工程において繊維束全体を均一に
反応させるにはフィラメント数の上限は100000
本、好ましくは50000本となる。
【0073】ピッチ繊維の繊維径は、ピッチ繊維を不融
化、炭化、黒鉛化することにより繊維径の収縮が生じる
ので、この分を考慮してピッチ繊維の繊維径を決定すれ
ばよく通常、ピッチ繊維で直径5〜11μmに紡糸する
ことで繊維径4〜8μmの細径炭素繊維を得ることがで
きる。
【0074】つぎに得られたピッチ繊維は、従来公知の
方法で不融化、炭化、黒鉛化を行うことで、繊維径が4
〜8μmフィラメント数が1000〜100000本の
細径繊維より構成されるピッチ系炭素繊維束が得られ
る。
【0075】
【実施例】
【0076】
【実施例1】原料としてキノリン不溶分を除去した軟化
点80℃のコールタールピッチを、触媒を用い直接水素
化を行った。
【0077】この水素化処理ピッチを常圧下480℃で
熱処理した後、低沸点分を除きメソフェーズピッチを得
た。このピッチは、軟化点が300℃、メソフェーズ含
有量が95%であった。
【0078】このピッチを濾過精度3μmのステンレス
ファイバー製のフィルターを用いて温度340℃で濾過
を行い、ピッチ中の異物を取り除き、精製ピッチを得
た。
【0079】この精製ピッチを紡糸原料とし、直径22
0mmのノズルプレートにキャピラリー径100μm、
キャピラリー長さ150μm、キャピラリー数2000
のノズルパックを用いて紡糸を行なった。
【0080】キャピラリーの配置は図5の形式であり、
最外周に配置するキャピラリー位置は半径100mm、
最内周は半径75mmで、同心円状に11列のキャピラ
リーを配置したブロックは23°の角度の間隔をもって
4分割されている。
【0081】ノズル中央には、高さ50mm、直径12
0mmの図9の断面形状の円柱突起物を取り付けた。
【0082】また、ノズルプレート外周部には直径30
0mm幅15mmのスリットを設け、4方向から分割し
て吸引を行なった。
【0083】ノズルプレート表面温度316℃、紡糸粘
度600ポイズ、キャピラリー当りのピッチ流量を0.
043g/minとして、紡糸速度が400m/min
となるよう、ロールを回転させ延伸し、得られたピッチ
繊維を吸引ノズルで引き取りケンスに収納した。
【0084】このとき6時間の長時間にわたり糸切れが
なく、平均繊維径が9.8μm、フィラメント数が20
00のピッチ繊維を得た。
【0085】つぎにピッチ繊維をケンスに収納した状態
で、空気に二酸化窒素ガスを5体積%添加した酸化ガス
をケンス下部から吹き込みながら150℃から300℃
まで1℃/minで昇温し、そのまま300℃に30分
保持して不融化繊維を得た。
【0086】この不融化繊維をケンスに収納した状態で
窒素ガス雰囲気下で不融化繊維を10℃/minで昇温
し、390℃まで昇温しその温度で30min保持し炭
化を行なった。
【0087】つぎにこの炭化糸を内温1100℃、窒素
ガス雰囲気の炉にケンスから繊維糸条を繰り出しながら
線状に焼成しボビンに巻とった。
【0088】得られたボビンから炭化繊維糸条を巻き返
しながら2400℃の温度で黒鉛化を行い、黒鉛化繊維
を得た。
【0089】この黒鉛化繊維は平均繊維径7.0μm、
引張強度4.2GPa、引張弾性率620GPa、フィ
ラメント数2000、屈曲強度680MPaの糸揃いの
よい美麗なものであった。
【0090】
【実施例2】実施例1で得られた炭化繊維を温度260
0℃の温度で黒鉛化を行い、黒鉛化繊維を得た。
【0091】この黒鉛化繊維は平均繊維径6.9μm、
引張強度4.1GPa、引張弾性率800GPa、フィ
ラメント数2000、屈曲強度50MPaであった。
【0092】
【実施例3】実施例1で用いたノズルでキャピラリー径
を80μm、キャピラリー長さを120μmとした以外
は全く同じ構造を有する紡糸ノズルを用いて、ノズルプ
レート表面温度323℃、紡糸粘度400ポイズ、キャ
ピラリー当りのピッチ流量を0.022g/minとし
て、紡糸速度が400m/minとなる条件で紡糸を行
なった。
【0093】このとき2時間の長時間にわたり糸切れが
なく、平均繊維径が7.0μm、フィラメント数が20
00のピッチ繊維を得た。
【0094】このピッチ繊維を実施例1と同じ条件で、
不融化、炭化を行ない、2500℃の温度で黒鉛化をし
た。
【0095】得られた黒鉛化繊維は平均繊維径4.9μ
m、引張強度4.7GPa、弾性率620GPa、フィ
ラメント数2000、屈曲強度1200MPaであっ
た。
【0096】
【実施例4】実施例1で用いた紡糸ノズル3台を直線状
に並列にならべ、このうち中央に配置する紡糸ノズルの
下部に位置するロール1台で3台のノズルから押し出さ
れるピッチ繊維を同時に延伸し紡糸した。
【0097】このときの紡糸条件は、ノズルプレート表
面温度316℃、紡糸粘度600ポイズ、キャピラリー
当りのピッチ流量を0.035g/minとして、紡糸
速度が400m/minとなるよう、ロールを回転させ
延伸し、得られたピッチ繊維を吸引ノズルで引き取りケ
ンスに収納した。
【0098】このとき2時間の長時間にわたり糸切れな
く、平均繊維径が8.8μm、フィラメント数6000
のピッチ繊維を得た。
【0099】このピッチ繊維を実施例1と同じ条件で、
不融化、炭化を行い、2500℃の温度で黒鉛化をして
得られた黒鉛化繊維は平均繊維径6.3μm、引張強度
4.2GPa、弾性率710GPa、フィラメント数6
000、屈曲強度250MPaであった。
【0100】この繊維束を用いてフィラメントワインデ
ィング法により、炭素繊維複合材による円筒ロールを常
法に従い試作したところ、毛羽の発生や糸切れが生じる
ことなく安定して、高弾性率を保有するコンポジット製
品を製造できた。
【0101】
【比較例1】実施例1で用いたノズルでキャピラリー径
を130μmとし、キャピラリー当りのピッチ流量を
0.069g/minとした以外は、実施例1と同じ条
件で紡糸を行ない、平均繊維径が12.9μm、フィラ
メント数が2000のピッチ繊維を得た。
【0102】このピッチ繊維を実施例1と同じ条件で、
不融化、炭化、黒鉛化をして得られた黒鉛化繊維は平均
繊維径9.8μm、引張強度3.9GPa、弾性率62
0GPa、フィラメント数2000、屈曲強度240M
Paであった。
【0103】
【比較例2】比較例1で得られた炭化繊維を温度250
0℃で黒鉛化を行った。実施例1と同様に不融化、炭
化、黒鉛化を行い黒鉛化繊維を得た。
【0104】黒鉛化繊維は平均繊維径9.7μm、引張
強度3.8GPa、弾性率710GPa、フィラメント
数2000、屈曲強度25MPaであった。
【0105】この繊維束を用いて実施例4と同様なコン
ポジット製品を試作したところ、毛羽立ちが多く、また
製造途中で繊維束の断糸が生じた。
【0106】
【比較例3】比較例1で得られた炭化繊維を温度260
0℃で黒鉛化を行った。実施例1と同様に不融化、炭
化、黒鉛化を行い黒鉛化繊維を得た。
【0107】黒鉛化繊維は平均繊維径9.7μm、引張
強度3.6GPa、弾性率805GPa、フィラメント
数2000、屈曲強度5MPaであった。
【0108】
【比較例4】市販されるA社製ピッチ系炭素繊維はフィ
ラメント数2000、平均繊維径9.7μm、引張強度
2.2GPa、弾性率700GPaであり、屈曲強度は
1MPa以下で測定不能なほど小さな値であった。
【0109】
【発明の効果】本発明の細径繊維より構成されるピッチ
系炭素繊維束は、従来のピッチ系炭素繊維の特徴である
高弾性率であって、かつ繊維のハンドリング性に優れる
という相反する長所を合わせ持つ炭素繊維束であり、し
かもコンポジット製品あるいはその中間品を製造するの
に好適な繊度すなわちフィラメント数を保有するため
に、生産性に優れる使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融紡糸ノズルの断面図。
【図2】溶融紡糸ノズルの底面図。
【図3】ノズルのキャピラリー配置図。
【図4】ノズルキャピラリー配置図。
【図5】ノズルのキャピラリー配置図。
【図6】ノズルのキャピラリー配置図。
【図7】ノズルのキャピラリー配置図。
【図8】ノズルキャピラリー配置図。
【図9】円柱状突起物の側面図。
【図10】円柱状突起物の側面図。
【図11】円柱状突起物の側面図。
【図12】円柱状突起物の側面図。
【図13】溶融紡糸装置の模式図。
【図14】屈曲強度測定の模式図。
【符号の説明】
1 溶融ピッチ 2 ノズルプレート 3 円柱状突起物 4 吸引用スリット 6 吸引量調整ダンパー 8 ピッチ繊維 9 キャピラリー 10 ノズルプレート押え 11 キャピラリー配置ブロック 12 溶融紡糸装置 13 延伸ロール搬送ロール 14 ピッチ繊維搬送ロール 15 ピッチ繊維束吸引ノズル 16 ピッチ繊維収納ケンス 17 炭素繊維束 18 タブ 19 直径1.0mmの針金 20 荷重計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三浦 邦夫 姫路市広畑区富士町1番地 新日本製鐵 株式会社 広畑製鐵所内 (72)発明者 田所 寛之 姫路市広畑区富士町1番地 新日本製鐵 株式会社 広畑製鐵所内 (56)参考文献 特開 平1−229820(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均繊維径が4〜8μmで、1000〜
    100000本の連続繊維が無合糸で構成されてなる
    ッチ系炭素繊維束であり、該繊維束を構成するフィラメ
    ントの引張強度が3.0GPa以上、弾性率が600G
    Pa以上であり、かつ該繊維束の屈曲強度Bが次式を満
    足することを特徴とするピッチ系炭素繊維束。 【数1】 B=屈曲強度(MPa) TM=引張弾性率(GPa)
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